説明

耐火処理材

【課題】配線・配管材と共に即座に焼失してしまうことを防止することができ、配線・配管材との間を閉鎖して耐火機能を発揮することができる耐火処理材を提供する。
【解決手段】耐火処理材11は、防火区画壁に形成された貫通部と該貫通部内に挿通された配線・配管材との間の隙間に充填される。耐火処理材11はクッション性及び不燃性を有するブロック体12を、軟質の合成樹脂材料を主体とした、耐火性能を有するとともに熱により膨張する材料よりなる袋状の外装部材13内に収容して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の防火区画部に形成された貫通部と該貫通部内に挿通された配線・配管材との間に充填される耐火処理材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物における防火区画部としての防火区画壁に配線・配管材を貫通させるために、防火区画壁には貫通孔が形成されている。そして、防火区画壁において貫通孔と配線・配管材との間に耐火処理が施されている。この耐火処理は、例えば、防火区画壁を挟んだ一方の壁表側で火災等が発生したとき、貫通孔を経由して他方側に火炎、煙、有毒ガスが流入するのを阻止するために設けられている。すなわち、耐火処理は、火災等の発生時、貫通孔と配線・配管材との間を閉鎖することで、火炎、煙、有毒ガスの火災発生側と反対側への流入を阻止するようになっている。
【0003】
このような耐火処理として、貫通孔と配線・配管材との間に耐火処理材を充填して施されるものがある。耐火処理材としては、例えば、特許文献1に開示される防火処理用充填材が挙げられる。この防火処理用充填材は、貫通孔と配線・配管材との間に詰め込むのに適当な大きさに形成したセラミックファイバブランケットに、軟質熱膨張性耐火材シートを積層し、この積層体を合成樹脂布又はフィルムで包んでなるものである。
【特許文献1】特開2002−247735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示の防火処理用充填材において、積層体を包む合成樹脂布又はフィルムは、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン等の可燃材料製である。このため、火災等の発生時、配線・配管材が燃焼してしまうと、該配線・配管材とともに合成樹脂布又はフィルムも即座に焼失してしまう。また、火災等の熱により配線・配管材(例えばケーブル)の表面温度が高くなると、配線・配管材の熱により合成樹脂布又はフィルムが着火して合成樹脂布又はフィルムが焼失してしまう。すると、合成樹脂布又はフィルムの焼失により配線・配管材と防火処理用充填材との間に隙間が形成されてしまい、該隙間が火炎、煙、有毒ガスの流入経路になって耐火機能を発揮できない虞がある。また、合成樹脂布又はフィルムが焼失すると、セラミックファイバブランケットと軟質熱膨張性耐火材シートの積層状態が維持できなくなり、貫通孔からセラミックファイバブランケット及び軟質熱膨張性耐火材シートが崩れ落ちてしまい、貫通孔と配線・配管材との間を閉鎖できなくなる虞がある。
【0005】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、配線・配管材と共に即座に焼失してしまうことを防止することができ、配線・配管材との間を閉鎖して耐火機能を発揮することができる耐火処理材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、建築物の防火区画部に形成された貫通部と該貫通部内に挿通された配線・配管材との間に充填される耐火処理材であって、クッション性及び不燃性を有するブロック体を、軟質の合成樹脂材料を主体とした、耐火性能を有するとともに熱により膨張する材料よりなる袋状の外装部材内に収容して形成したことを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の耐火処理材において、前記ブロック体は、前記外装部材内から脱落不能に外装部材によって包まれていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の耐火処理材において、前記外装部材には、空気孔が形成されていることを要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の耐火処理材において、前記外装部材の外面には、複数の目盛りが設けられていることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の耐火処理材において、前記耐火処理材の切断端部から露出したブロック体を覆うために、前記切断端部に外装される蓋体を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配線・配管材と共に即座に焼失してしまうことを防止することができ、配線・配管材との間を閉鎖して耐火機能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した耐火処理材の一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
図1に示すように、耐火処理材11は、防火区画部としての防火区画壁Wに形成された貫通部34に充填して使用されるものである。図2及び図3に示すように、耐火処理材11は、直方体状に形成されている。そして、耐火処理材11は、直方体状に形成されたブロック体12(図3参照)の略全体が、耐火性能を有するとともに熱により膨張する材料よりなる四角箱状の外装部材13内に収容されて形成されている。すなわち、ブロック体12は外装部材13によって略全体が包まれることにより、外装部材13から脱落不能になっており、ブロック体12と外装部材13は分離不能に一体化されている。
【0011】
耐火処理材11を形成する前記ブロック体12は、セラミックウール、ロックウール等の不燃性を有する材料によって直方体状に形成されるとともに、ブロック体12自身はクッション性を有し、所要の弾性を有する。すなわち、ブロック体12は圧縮変形可能であるとともに、圧縮変形した状態から原形状に復帰可能である。
【0012】
耐火処理材11を形成する外装部材13は、軟質の合成樹脂材料を主体とし、さらに、この軟質の合成樹脂材料に無機質材料及び膨張材を混入した難燃材料よりなり、耐火性能を有するとともに熱により膨張する材料よりなる。軟質の合成樹脂材料としては、オレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)等が挙げられ、無機質材料としては炭酸カルシウムが、膨張材としては120℃以上の熱を受けると体積が加熱前の3倍以上に膨張する黒鉛が挙げられる。そして、このような難燃材料は、例えば、軟質の合成樹脂材料を難燃材料における全体重量の40%、無機質材料を40%、膨張材を20%の比率で調整されるものが使用される。
【0013】
外装部材13は、ブロック体12の外形形状と対応する四角箱状に形成されている。そして、外装部材13を形成する六つの面のうち互いに対向する最も大きい二つの面の外面(図2及び図3では一つの面のみ図示)には、外装部材13の長さ方向に直交する方向へ延びる目盛り13aが、外装部材13の長さ方向に沿って等間隔おきに複数設けられている。また、前記二つの面には外装部材13の内側と外側とを連通する空気孔13bが複数箇所(本実施形態では四箇所)に形成されている。
【0014】
そして、ブロック体12と外装部材13を用いて耐火処理材11を製造するには、まず、図2に示すような四角箱状の外装部材13を製造する。次に、図2の2点鎖線に示す位置から外装部材13の長さ方向における一側部を切断する。すなわち、外装部材13を、開口部を有する袋状の部材と、該開口部を閉鎖する蓋部材とに分離する。そして、袋状の部材の開口部からその内側にブロック体12を収容し、前記蓋部材を袋状の部材に溶着する。すると、外装部材13が四角箱状に成形され、ブロック体12の略全体が外装部材13によって包まれるとともに、ブロック体12と外装部材13とが一体化される。なお、外装部材13によってブロック体12の略全体が包まれるとしたのは、空気孔13bからブロック体12の一部が外装部材13から露出しているためである。
【0015】
次に、耐火処理材11を用いて防火区画壁Wに耐火処理を施す方法について説明する。まず、図4に示すように、防火区画壁Wに配線・配管材33を貫通させるための貫通部34を形成する。貫通部34は、防火区画壁Wを厚み方向に貫通し、防火区画壁Wの一方の壁表側と他方の壁表側とを連通している。そして、貫通部34に配線・配管材支持ラック20を配設する。次に、前記配線・配管材支持ラック20に複数の配線・配管材33を支持させるとともに、防火区画壁Wに配線・配管材33を貫通させる。なお、配線・配管材33とは、建築物内に配設される配線(制御用ケーブル、同軸ケーブル、光ケーブル等)及び配管材(合成樹脂製可撓電線管、鋼製電線管等)の総称のことである。
【0016】
そして、図1に示すように、貫通部34の内周面と配線・配管材33の外面との間に多数の耐火処理材11を充填する。すなわち、貫通部34の横方向へのサイズに合わせて耐火処理材11を複数充填し、貫通部34の縦方向へのサイズに合わせて耐火処理材11を複数充填する。貫通部34の縦方向及び横方向に隣接する耐火処理材11同士は、隙間を無くすために互いが縦方向及び横方向に圧接している。
【0017】
耐火処理材11は、ブロック体12がクッション性を有するため圧縮変形可能であり、外装部材13も軟質の合成樹脂材料を主体とするため、変形可能である。さらに、外装部材13には、該外装部材13内の空気を外装部材13外へ逃がす空気孔13bが形成されている。そして、耐火処理材11は圧縮変形可能となっており、その圧縮変形状態で貫通部34内に充填されている。このため、貫通部34に充填された耐火処理材11は、圧縮変形状態から原形状への復帰力によって縦方向及び横方向に隣接する耐火処理材11の外面となる外装部材13に圧接している。さらに、圧接した外装部材13同士が互いに滑りにくくなっており、貫通部34に充填された耐火処理材11が位置ずれすることが防止される。そして、配線・配管材33の外面に対して耐火処理材11の外装部材13の外面が圧接している。
【0018】
また、貫通部34の縦方向及び横方向において、耐火処理材11同士の間や貫通部34の内周面と配線・配管材支持ラック20との間に該耐火処理材11のサイズよりも小さい隙間が形成された場合は、該隙間の大きさに合わせた耐火処理材11が充填される。すなわち、耐火処理材11を所要のサイズに切断して用いられる。耐火処理材11の切断の際、目盛り13aを指標として耐火処理材11の切断作業を行うことができる。切断された耐火処理材11が貫通部34に充填される際、ブロック体12の露出面に対して隣接する耐火処理材11の外装部材13が圧接するように耐火処理材11が貫通部34に充填される。また、配線・配管材支持ラック20と配線・配管材33との間や配線・配管材33同士の間に形成される僅かな隙間には熱膨張性耐熱シール材(図示せず)が充填される。
【0019】
さて、防火区画壁Wに耐火処理が施された建築物において、防火区画壁Wの一方の壁表側で火災等が発生し、配線・配管材33が燃焼したとする。このとき、配線・配管材33の外面に圧接するのは耐火処理材11の外装部材13となっている。そして、外装部材13は、耐火性能を有するとともに熱により膨張する性質を有する難燃材料よりなる。このため、火災等で発生した熱や配線・配管材33から発生する熱によって外装部材13が即座に焼失してしまうことはなく、外装部材13は熱を受けて膨張する。また、ブロック体12は不燃性を有する材料より形成されているため、外装部材13が膨張したとき、ブロック体12は燃焼することがない。
【0020】
すると、加熱された外装部材13は配線・配管材33に向けて膨張するとともに、熱によって溶融し、隣接する外装部材13同士が熱溶着して複数の耐火処理材11が一つの塊状となり、一つの塊状をなす耐火処理体によって、配線・配管材33と貫通部34との間が密封閉鎖される。すなわち、配線・配管材33の外面と貫通部34との間の隙間が火炎、煙、有毒ガス、熱の経路となり、防火区画壁Wの他方の壁表側へ火炎、煙、有毒ガス、熱が伝わることが防止され、耐火処理材11によって耐火機能が発揮される。
【0021】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)耐火処理材11は、不燃性のブロック体12が、軟質の合成樹脂材料を主体とした、耐火性能を有するとともに熱により膨張する材料(難燃材料)よりなる外装部材13で包まれて形成されている。このため、耐火処理材11を用いてなる耐火処理を施した防火区画壁Wで火災等が発生した時、配線・配管材33が燃焼したり、配線・配管材33の表面温度が高くなっても該配線・配管材33に接触している外装部材13が配線・配管材33と共に即座に焼失してしまうことを防止することができる。そして、外装部材13は火災等の熱により膨張し、貫通部34と配線・配管材33との間を密封閉鎖して隙間が形成されることを防止する。また、耐火処理材11が加熱されると、隣接する外装部材13同士が熱溶着して複数の耐火処理材11が一体化されて一つの塊状となる。このため、外装部材13が即座に焼失することがないため、外装部材13内のブロック体12が貫通部34から脱落したり、崩れ落ちたりすることが防止される。よって、耐火処理材11により、貫通部34が火炎、煙、有毒ガス、熱の流入経路になることを防止することができ、防火区画壁Wにおける耐火機能を確実に発揮することができる。
【0022】
(2)耐火処理材11が加熱されると、隣接する外装部材13同士が熱溶着して複数の耐火処理材11が一体化されて一つの塊状となる。このため、耐火処理材11が加熱された際には、隣接する耐火処理材11同士の間の隙間を完全に無くして、配線・配管材33と貫通部34との間を完全に密封閉鎖することができる。また、耐火処理材11それぞれが熱により膨張する際、隣接する耐火処理材11同士が互いに押圧され、耐火処理材11が貫通部34内から脱落する方向への力が作用する虞がある。しかし、隣接する耐火処理材11の外装部材13同士が熱溶着し、複数の耐火処理材11が一体化されるため、耐火処理材11が押圧されても貫通部34内から脱落することを防止することができる。
【0023】
(3)耐火処理材11は、クッション性を有するブロック体12が、軟質の合成樹脂材料を主体とした、耐火性能を有するとともに熱により膨張する材料(難燃材料)製の外装部材13で包まれて形成されている。このため、耐火処理材11を圧縮変形させることができ、貫通部34への充填状態では耐火処理材11の原形状への復帰によって隣接する耐火処理材11同士を圧接させることができる。さらに、外装部材13は軟質であり、外装部材13同士が接触した状態では互いに滑りにくくなっている。よって、貫通部34に充填された耐火処理材11が貫通部34内からずれ落ちたり位置ずれしたりすることを防止でき、耐火処理構造を維持することができる。
【0024】
(4)外装部材13には空気孔13bが形成されている。このため、空気孔13bから外装部材13内の空気を外装部材13外へ排出することができ、耐火処理材11を容易に圧縮変形させることができるとともに、原形状への復帰を可能とすることができる。
【0025】
(5)外装部材13の外面には目盛り13aが表示されている。このため、目盛り13aを指標として利用することにより耐火処理材11を所望する長さに切断することができる。したがって、目盛り13aが表示されず、定規等を利用して耐火処理材11を所望する長さに切断する場合に比して耐火処理材11の切断作業を行いやすくすることができる。
【0026】
(6)ブロック体12と外装部材13とは接着されていない。このため、外装部材13内でブロック体12は自由に変形することができ、耐火処理材11を容易に圧縮変形させることができる。
【0027】
(7)耐火処理材11は、不燃性を有するブロック体12が、耐火性能を有するとともに熱により膨張する材料(難燃材料)製の外装部材13により包まれている。このため、耐火処理材11全体は火災等によっても一気に焼失してしまうことがなく、貫通部34の耐火機能を十分に発揮させることができる。
【0028】
(8)耐火処理材11は、外装部材13で、不燃性を有するブロック体12そのものを包んだ構成であり、背景技術のようにセラミックファイバブランケットと軟質熱膨張性耐火材シートとの積層体を合成樹脂布又はフィルムで包んだ構成に比して部品点数が少なくてすむ。また、外装部材13は軟質の合成樹脂材料を主体とし、無機質材料及び膨張材を混入してなる材料である。このため、外装部材13として例えば、ガラス繊維、カーボン繊維等を使用する場合に比して耐火処理材11を安価に製造することができる。
【0029】
(9)耐火処理材11は、ブロック体12が外装部材13によって全体が覆われている。このため、耐火処理材11が加熱された際、ブロック体12が外装部材13外へ飛び出すことを防止することができる。
【0030】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 耐火処理材11を所要のサイズに切断して用いる場合、図5に示すように、耐火処理材11の切断端部に蓋体40を外装してもよい。蓋体40は、一面に開口する有底四角箱状に形成されている。また、蓋体40は、耐火処理材11の外装部材13と同じ材料で形成されている。このように構成することにより、耐火処理材11の切断端部から露出するブロック体12を蓋体40によって覆うことができる。また、火災等の発生時には、蓋体40も加熱されると膨張するとともに、隣接する外装部材13や蓋体40に熱溶着するため、他の耐火処理材11とともに一つの塊状となり、貫通部34と配線・配管材33との間を密封閉鎖することができる。なお、耐火処理材11を長さ方向に沿って切断するか、長さ方向に直交する方向に沿って切断するかによって、切断端部の大きさが異なるため、切断端部の大きさに合わせて大きさの異なる2種類の蓋体40を製作する。
【0031】
○ 実施形態に示した耐火処理材11の製造方法を、図6に示すように変更してもよい。すなわち、外装部材13を、外装部材13を形成する六つの面のうち長辺側の一側面が開口する四角箱状に形成するとともに、開口縁に折り畳み片13cを延設する。そして、外装部材13の一側面からブロック体12を外装部材13の内側に収容する。その後、各折り畳み片13cを折り畳みながら外装部材13の一側面の開口を閉じる。すると、外装部材13が四角箱状に成形され、ブロック体12の略全体が外装部材13によって包まれるとともに、ブロック体12と外装部材13とが一体化される。ブロック体12を収容するために、外装部材13に形成する開口の位置は変更してもよい。
【0032】
なお、図6に示す形態において、外装部材13の外面はシボ加工が施されており、ざらつき感が出されている。このため、耐火処理材11を把持し易くなっているとともに、貫通部34内で外装部材13の外面同士が接触した状態では互いに滑りにくくなっている。
【0033】
また、外装部材13の外面にシボ加工が施された耐火処理材11において、目盛り13aは以下のようにして形成される。すなわち、外装部材13の外面において、目盛り13aを形成する位置はシボ加工を施さず、目盛り13aを形成しないその他の外面にはシボ加工を施す。すると、外装部材13の外面において、シボ加工が施されていない部位は、外装部材13の長さ方向に直交する方向へ沿って平滑面状に形成され、この平滑面状をなす部位によって目盛り13aが形成される。
【0034】
また、図6に示す形態において、空気孔13bは、外装部材13を形成する六つの面のうち、最も大きい二つの面のうちの一つの面の中央部に一つだけ形成されている。
○ 図7に示すように、建築物の防火区画部として、防火区画床Vに形成された平面視矩形状の貫通部Vaと該貫通部Va内に挿通された配線・配管材33との間に耐火処理材11を充填して、防火区画床Vに耐火処理を施してもよい。なお、貫通部Vaの深さは、耐火処理材11において、長さ方向に直交する方向に沿った長さと同じになっている。このように構成する場合、貫通部Va内を横断するように、防火区画床Vに架設部材50を架設し、その架設部材50上に支持板(図示せず)を支持させる。なお、架設部材50は、支持板を支持する部位が、防火区画床Vの下面と同じ高さに位置するように防火区画床Vに架設される。
【0035】
そして、耐火処理材11を、その長さ方向が貫通部Vaの長さ方向へ延びるように、配線・配管材33と貫通部Vaとの間に充填しつつ、支持板上に支持させる。すると、支持板上に支持された多数の耐火処理材11は、その長さ方向に延びる一側面(上面)が全て同じ高さに位置するとともに、防火区画床Vの上面と同じ高さに位置するように配設される。
【0036】
そして、防火区画床Vの下側で火災等が発生したとき、外装部材13は熱を受けて膨張するとともに隣接する外装部材13同士が熱溶着して複数の耐火処理材11が一つの塊状となり、一つの塊状をなす耐火処理体によって、配線・配管材33と貫通部Vaとの間が密封閉鎖される。また、一つの塊状となって膨張した耐火処理体は、その膨張によって貫通部Vaの内面に圧接するとともに、架設部材50に支持されるため、塊状の耐火処理体が貫通部Vaから防火区画床Vの下方へ脱落することが防止される。よって、塊状となった耐火処理体によって、貫通部Vaと配線・配管材33との間が密封閉鎖され、貫通部Vaが火炎、煙、有毒ガスの流入経路になることを防止することができ、防火区画床Vにおける耐火機能を確実に発揮することができる。
【0037】
○ 図8に示すように、防火区画部として、空洞部を有する防火区画壁Hに形成された円孔状をなす貫通部51と、該貫通部51内に挿通された配線・配管材33との間に耐火処理材11を充填して防火区画壁Hに耐火処理を施してもよい。防火区画壁Hは、複数本の軽量形鋼材(図示せず)と、軽量形鋼材を挟むようにして立設された複数対の間仕切り壁(石膏ボード)53とから構築されている。軽量形鋼材を挟んで相対向する間仕切り壁53同士の間には空洞部(図示せず)が形成されている。
【0038】
防火区画壁Hにおいて、貫通部51内には、貫通部51の周面に沿うように円筒状のスリーブ55が配設されている。そして、貫通部51に配線・配管材33が挿通されるとともに、貫通部51内における配線・配管材33の周囲とスリーブ55との間に耐火処理材11が充填される。このような構成において、火災等の発生時、耐火処理材11の外装部材13が膨張したとき、スリーブ55によって外装部材13が空洞部へ向けて膨張することが防止される。また、耐火処理材11は、クッション性を有するブロック体12が、軟質の合成樹脂材料を主体とした、耐火性能を有するとともに熱により膨張する材料(難燃材料)製の外装部材13で包まれて形成されている。このため、耐火処理材11を貫通部51の周面に沿うように圧縮変形させたり、耐火処理材11同士の隙間に押し込むために圧縮変形させたりすることを容易に行うことができ、耐火処理材11の貫通部51への充填作業を容易に行うことができる。
【0039】
○ ブロック体12と外装部材13とは接着剤によって接着されていてもよい。
○ 目盛り13aは削除してもよい。
○ 耐火処理材11において、外装部材13からブロック体12が脱落しない状態であれば、外装部材13に開口部を形成し、ブロック体12を外装部材13外へ露出させてもよい。
【0040】
○ 耐火処理材11は直方体状でなくてもよく、球状、八面体状、三角錐状のように形状を変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態の耐火処理を施した防火区画壁を示す正面図。
【図2】実施形態の耐火処理材を示す斜視図。
【図3】実施形態の耐火処理材を示す断面図。
【図4】耐火処理を施す前の防火区画壁を示す正面図。
【図5】耐火処理材の切断端部及び蓋体を示す分解斜視図。
【図6】耐火処理材の別例を示す分解斜視図。
【図7】防火区画床に耐火処理を施した状態を示す平面図。
【図8】耐火処理を施した防火区画壁を示す正面図。
【符号の説明】
【0042】
H,W…防火区画部としての防火区画壁、V…防火区画部としての防火区画床、11…耐火処理材、12…ブロック体、13…外装部材、13a…目盛り、13b…空気孔、33…配線・配管材、34,51,Va…貫通部、40…蓋体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の防火区画部に形成された貫通部と該貫通部内に挿通された配線・配管材との間に充填される耐火処理材であって、
クッション性及び不燃性を有するブロック体を、軟質の合成樹脂材料を主体とした、耐火性能を有するとともに熱により膨張する材料よりなる袋状の外装部材内に収容して形成した耐火処理材。
【請求項2】
前記ブロック体は、前記外装部材内から脱落不能に外装部材によって包まれている請求項1に記載の耐火処理材。
【請求項3】
前記外装部材には、空気孔が形成されている請求項2に記載の耐火処理材。
【請求項4】
前記外装部材の外面には、複数の目盛りが設けられている請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の耐火処理材。
【請求項5】
前記耐火処理材の切断端部から露出したブロック体を覆うために、前記切断端部に外装される蓋体を備える請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の耐火処理材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−278736(P2009−278736A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126110(P2008−126110)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】