説明

耐熱性セパレーターおよびそれを用いた電気電子部品

本発明は、300℃で45分間加熱処理前後の下式(1):(内部抵抗値)={(電解液の電気伝導度)/(セパレーターに電解液を注入したときの電気伝導度)}×(セパレーターの厚み)ここで、(セパレーターに電解液を注入したときの電気伝導度)は、電解液をセパレーターに注入した状態で2枚の電極に挟み、測定した交流インピーダンスから算出した電気伝導度である、で表される内部抵抗値の増加率が25%以内であることを特徴とする電気電子部品用のセパレーターを提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、コンデンサー、キャパシター、電池などの電気・電子部品内において導電部材間を隔離し、電解質もしくはイオンなどのイオン種を通過させるセパレーター、並びにそれを使用した電気・電子部品に関する。特に、リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、水素イオンなどを電流のキャリアーとして使用する電気・電子部品における電極間の隔離板として有用なセパレーターに関する。
【背景技術】
携帯通信機器や高速情報処理機器などの最近の進歩に象徴されるように、エレクトロニクス機器の小型軽量化、高性能化には目覚しいものがある。なかでも、小型、軽量、高容量で長期保存にも耐える高性能な電池、コンデンサーへの期待は大きく、幅広く応用が図られ、部品開発が急速に進展している。これに応えるため、部材、例えば電極間の隔壁材料であるセパレーターに関しても技術・品質開発の必要性が高まっている。
セパレーターに要求されるさまざまな特性の中でも、次の三つの特性項目が特に重要であると認識されている。
1)電解質を保持した状態での導電性が良いこと、
2)高い電極間遮蔽性を有すること、
3)機械的強度に優れていること。
従来、電気・電子部品用のセパレーターとして、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系ポリマーを用いて製膜した多孔質シート(特開昭63−273651公報参照)、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系ポリマー繊維を用いてシート化した不織布(特開2001−11761公報参照)、ナイロン繊維を用いてシート化した不織布(特開昭58−147956公報参照)などが広く使用されている。このようなセパレーターは1層または複数層あるいはロール状に巻いて電池内に用いられる。
他方、電極に使用される部材は、アルミ電解コンデンサーではアルミ箔電極をエッチングし、また、電気二重層キャパシターでは活性炭を電極とするなどして、その表面に微細孔を作製し、表面積を増大することにより高容量化を達成している。
【発明の開示】
上記の微多孔膜及び不織布はセパレーターとして良好な物性を有しているが、近年、電気自動車用のコンデンサー、キャパシター、電池などに要求されている高容量化や大出力化には必ずしも十分な対応ができていない。
高容量、大出力が要求されるコンデンサー、キャパシター、電池などの電気・電子部品用のセパレーターは、
1)電解質を保持した状態での導電性が良いこと、
2)高い電極間遮蔽性を有すること、
3)機械的強度に優れていること、
4)化学的・電気化学的に安定であること、
5)高温の乾燥に耐えうること(耐熱性)、
の五つの特性を同時に満たすことが必要とされている。
特に、耐熱性は、
1)大電流を使用する、例えば電気自動車用の駆動電源としての電池のような電気・電子部品において導電部材間の短絡等を防ぐ、
2)電気電子部品の製造工程中、アルミニウム箔および活性炭など電極の微細孔中の水分を十分に乾燥する
ために極めて重要であると考えられる。
本発明者らは、かかる状況に鑑み、高容量化・大出力化による大電流に耐え、製造工程中の高温乾燥にも耐えうる高耐熱性セパレーター用材料を開発すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明は、300℃で45分間加熱処理前後の下式(1):
(内部抵抗値)={(電解液の電気伝導度)/(セパレーターに電解液を注
入したときの電気伝導度)}×(セパレーターの厚み)
・・・・・・式(1)
ここで、(セパレーターに電解液を注入したときの電気伝導度)は、電解液をセパレーターに注入した状態で2枚の電極に挟み、測定した交流インピーダンスから算出した電気伝導度である、
で表される内部抵抗値の増加率が25%以内であることを特徴とする電気電子部品用のセパレーターを提供するものである。
本発明は、また、上記セパレーターを導電部材間の隔離板として用いてなることを特徴とするコンデンサー、キャパシター、電池などの電気電子部品を提供するものである。
本発明は、さらに、製造工程中に200℃以上の温度で加熱処理された上記セパレーターを導電部材間の隔離板として用いてなることを特徴とするコンデンサー、キャパシター、電池などの電気電子部品を提供するものである。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
〈内部抵抗値〉
本発明におけるセパレーターの内部抵抗は下式(1)により算出される。
(内部抵抗値)={(電解液の電気伝導度)/(セパレーターに電解液を注
入したときの電気伝導度)}×(セパレーターの厚み)
・・・・・・・式(1)
ここで、「電解液」とは、溶媒中に電解質が溶解した液体を意味する。
上記電解液に使用しうる溶媒、電解質及び電解質の濃度等には特に制限はないが、溶媒としては、例えば、エチレンカーボーネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートエチルメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、グルタロニトリル、アジポニトリル、アセトニトニル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、3−メチルスルホラン、ニトロエタン、ニトロメタン、リン酸トリメチル、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N’−シメチルイミダゾリジノン、アミジン、水、これらの2種もしくはそれ以上の混合物などが挙げられる。
また、電解質としては、例えばイオン性の物質が包含され、以下のカチオンとアニオンの組み合わせを挙げることができる。
1)カチオン:例えば、第4級アンモニウムイオン、第4級ホスホニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、水素イオンとその混合物など。
2)アニオン:例えば、過塩素酸イオン、ホウフッ化イオン、六フッ化リン酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオンとその混合物など。
また、上記式(1)の(セパレーターに電解液を注入したときの電気伝導度)は、上記電解液をセパレーターに注入した状態で2枚の電極に挟み、測定した交流インピーダンスから算出した電気伝導度である。該交流インピーダンスの測定周波数には、特に制限はないが、通常、1kHz〜100kHzの範囲内が好ましい。
本発明のセパレーターは、上記式(1)で表わされる内部抵抗値の増加率が25%以内であり、特に15%以内であることが望ましい。
〈セパレーターの形態〉
本発明において、セパレーターの形態としては、前記の
1)電解質を保持した状態での導電性が良いこと、
2)高い電極間遮蔽性を有すること、
3)機械的強度を有すること、
4)化学的・電気化学的に安定であること、及び
5)高温の乾燥に耐えうること(耐熱性)
の五つの特性を同時に満足する限り、特に制限はないが、一般には、シートの形態が適しており、特に、多孔構造体である織布、不織布、紙、微多孔フィルムなどの形態が好ましい。
〈セパレーター構成部材〉
セパレーターを構成する部材としては、耐熱性が高く、250℃以上の温度に加熱処理しても寸法変化の小さいもの、例えば、アラミド、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリアゾ化合物、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアミドイミド、ポリイミド、ビスマレイミド・トリアジン、ポリマミノビスマレイミド、ポリテトラフルオロエチレン、セラミック、アルミナ、シリカ、アルミナシリカ、ガラス、ロックウール、チッ化ケイ素、炭化ケイ素、炭素、ジルコニア、チタン酸カリウム、マグネシウムオキシサルフェート、合成ケイ酸カルシウムなどの中の少なくとも1種の材料を主成分とするものが好ましい。これらの中でも、特に、アラミドが好適である。
〈セパレーターの製造〉
本発明のセパレーターは、例えば、上記のセパレーター構成部材を通常の方法で、例えば繊度が0.05〜25デニールで且つ長さが1〜50mm程度の短繊維状に加工し、それを適当な抄紙機でシート状に成形し、得られるシートを金属製カレンダーロールなどにより、例えば温度100〜400℃及び線圧50〜400kg/cmで熱圧加工することにより製造することができる。
〈加熱処理〉
本発明のセパレーターを使用した電気・電子部品は、その製造工程中に、例えば、微細孔を含むアルミ箔、活性炭などの電極とともに捲回した後に加熱処理することができ、それによって、微細孔中の残存水分を除去することができる。セパレーターの加熱処理は、200℃以上の温度で、例えば、セパレーターをその周囲の温度が300℃±10℃の範囲内にある雰囲気下で45分間程度保持することにより行うことができる。このときの周囲の雰囲気は、セパレーターと化学反応を起こさないガス雰囲気、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気など、または真空中が好ましい。
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、これらの実施例は、単なる例示であり、本発明の範囲を限定するためのものではない。
〈測定方法〉
(1)シートの坪量、厚みの測定
JIS C2111に準じて実施した。
(2)電気伝導度の測定
セパレーターを直径20mmの円に切り出し、2枚のSUS電極に挟み、60kHzでの交流インピーダンスから算出した。このとき、測定温度は25℃とした。測定には、電解液として1M ホウフッ化リチウムのエチレンカーボネート/プロピレンカーボネート(1/1重量比)溶液を用いた。
〈原料の調製〉
特公昭52−151624号公報に記載のステーターとローターの組み合わせで構成される湿式沈殿機を用いる方法で、ポリメタフェニレンイソフタルアミドのファイブリッドを製造した。これを、離解機、叩解機で処理し重量平均繊維長を1.2mmに調節した。
一方、デュポン社製メタアラミド繊維(ノーメックス(登録商標)、短繊維の繊度2.0デニール)を長さ40mm及び6mmにそれぞれ切断し、また、帝人社製ポリエステル短繊維(テトロン(登録商標)、短繊維繊度0.1デニール)を長さ5mmに切断し、セパレーター用原料とした。
[実施例1]
(セパレーターの製造)
調製したメタアラミド短繊維(長さ40mm)を水中で分散しスラリーを作製した。このスラリーを用い、タッピー式手抄き機(断面積325cm)にてシート状物を作製した。次いで、これを金属製カレンダーロールにより、温度295℃及び線圧300kg/cmで熱圧加工し、セパレーターを得た。
(加熱処理)
上記セパレーターを熱風乾燥機を用い、大気中で300℃にて45分間加熱処理した。このとき、形態保持のため、上記セパレーターに幅あたりの張力が0.5g/mmとなるように重りをつけて鉛直状態で保持した。
かくして得られたセパレーターの主要特性値を表1に示す。

但し、電解液の電気伝導度 4.6(mS/cm)であった。
[実施例2]
(セパレーターの製造)
調製したアラミドファイブリッドとアラミド短繊維(長さ6mm)をおのおの水中で分散しスラリーを作製した。これらのスラリーを、ファイブリッドとアラミド短繊維の配合比率(重量比)が5/95となるようにして混合し、タッピー式手抄き機(断面積325cm)にてシート状物を作製した。次いで、これを金属製カレンダーロールにより、温度350℃及び線圧100kg/cmで熱圧加工し、セパレーターを得た。
(加熱処理)
上記セパレーターを熱風乾燥機を用い、大気中で300℃にて45分間加熱処理した。このとき、形態保持のため、上記セパレーターに幅あたりの張力が0.5g/mmとなるように重りをつけて鉛直状態で保持した。
かくして得られたセパレーターの主要特性値を表2に示す。

但し、電解液の電気伝導度 4.6(mS/cm)であった。
上記実施例1、2のセパレーターは、表1および表2に示すとおり、300℃で45分加熱処理後も内部抵抗が増加せず、イオン種透過性も十分であると考えられることから、コンデンサー、キャパシター、電池等の電気・電子部品中の導電部材間の隔離板として有用である。
比較例1
(セパレーターの製造)
調製したアラミドファイブリッド、メタアラミド短繊維(長さ6mm)及びテトロン短繊維をおのおの水中で分散しスラリーを作製した。これらのスラリーをファイブリッド、アラミド短繊維及びテトロン短繊維が表2に示す配合比率となるようにして混合し、タッピー式手抄き機(断面積325cm)にてシート状物を作製した。次いで、これを金属製カレンダーロールにより温度230℃及び線圧300kg/cmで熱圧加工し、セパレーターを得た。
かくして得られたセパレーターの主要特性値を表3に示す。

但し、電解液の電気伝導度 4.6(mS/cm)であった。
上記比較例のセパレーターは、表3に示すとおり、300℃で45分加熱処理後も内部抵抗の増加が著しく、イオン種透過性が十分でないと考えられる。
【産業上の利用可能性】
本発明のセパレーターは、300℃で45分加熱処理後も内部抵抗が増加せず、イオン種透過性も十分であると考えられることから、コンデンサー、キャパシター、電池等の電気・電子部品中の導電部材間の隔離板として有用である。また、本発明のセパレーターを使用したコンデンサー、キャパシター、電池等の電気・電子部品は、その製造工程中、微細孔を含むアルミ箔、活性炭などの電極とともに高温での乾燥が可能であり、残存水分によるコンデンサー、キャパシター、電池等の電気・電子部品の電気特性に対する悪影響は見られないという効果を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
300℃で45分間加熱処理前後の下式(1):
(内部抵抗値)={(電解液の電気伝導度)/(セパレーターに電解液を注
入したときの電気伝導度)}×(セパレーターの厚み)
・・・・・・・式(1)
ここで、(セパレーターに電解液を注入したときの電気伝導度)は、電解液をセパレーターに注入した状態で2枚の電極に挟み、測定した交流インピーダンスから算出した電気伝導度である、
で表される内部抵抗値の増加率が25%以内であることを特徴とする電気電子部品用のセパレーター。
【請求項2】
織布、不織布、紙又は微多孔フィルムの形状であることを特徴とする請求項1に記載のセパレーター。
【請求項3】
アラミド、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリアゾ化合物、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアミドイミド、ポリイミド、ビスマレイミド・トリアジン、ポリマミノビスマレイミド、ポリテトラフルオロエチレン、セラミック、アルミナ、シリカ、アルミナシリカ、ガラス、ロックウール、チッ化ケイ素、炭化ケイ素、炭素、ジルコニア、チタン酸カリウム、マグネシウムオキシサルフェート及び合成ケイ酸カルシウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の材料を主成分とする構成材料からなることを特徴とする請求項1または2に記載のセパレーター。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のセパレーターを導電部材間の隔離板として用いてなることを特徴とする電気電子部品。
【請求項5】
製造工程中に200℃以上の温度で加熱処理された請求項1〜3のいずれかに記載のセパレーターを導電部材間の隔離板として用いてなることを特徴とする電気電子部品。

【国際公開番号】WO2005/057689
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516067(P2005−516067)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016197
【国際出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(596001379)デュポン帝人アドバンスドペーパー株式会社 (26)
【Fターム(参考)】