説明

耐熱水性を有した金属蒸着積層布及びその製造方法

【課題】 布帛や不織布表面に金属蒸着層を設けてなる金属蒸着積層体であって、基体となる布帛等と金属蒸着層との間に存在する層間密着力を維持しつつ、さらには金属蒸着層の白化や脱離を抑制出来る、金属蒸着積層体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 表面に核付金属を付着させてなる基材の、核付金属付着面に金属又は金属合金を金属蒸着層として蒸着してなり、前記金属蒸着層のさらに表面にトップコート層を積層してなる金属蒸着積層体であって、前記基材が不織布又は布帛であり、前記金属又は金属合金がアルミニウム、銀、銅、チタン、スズ又はニッケルであり、前記核付金属が、周期表における第4周期第4族から同第12族に属するいずれかの金属、若しくは当該範囲内の金属同士による合金であること、を特徴とする、金属蒸着積層体とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属蒸着積層布及びその製造方法に関するものであって、具体的には、金属層の密着性を確保しつつ熱水等により白化等の現象が生じることを抑制した金属蒸着積層布及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりアルミニウムなどの金属を蒸着した布帛や不織布は、蒸着した金属による金属光沢による意匠を利用した布地や、その他農業用シートや断熱シートなどの、加飾、遮熱、保温といった用途に用いられることが多い。
【0003】
しかし単純に一般的な布帛の表面にアルミニウムなどの金属を金属蒸着層として積層しても、布帛と金属蒸着層との間の層間密着力が不十分であり問題であった。また布帛そのものの有する可撓性が原因で単純に金属を蒸着するだけでは不十分であった。
【0004】
そこで層間密着力を向上させるために、例えば特許文献1に見られるように、布帛表面に目止めとしての樹脂層を塗布することで積層した後、布帛表面に金属を蒸着させる、という方法が広く行われている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−241298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし特許文献1に記載されたように、不織布表面に合成樹脂層を設け、その表面に金属蒸着処理を行ったとしても、十分な密着力は得られずそれが原因で金属蒸着層が剥離離脱し、当初期待されていた金属光沢による意匠性が喪失してしまう、等の問題を呈していた。さらに単純に金属蒸着層を積層しただけであるので、その表面に生じるクラックやピンホール近傍から金属蒸着層の白化が始まることで金属蒸着層による金属光沢が消失する、という問題を呈していた。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、布帛や不織布表面に金属蒸着層を設けてなる金属蒸着積層体であって、基体となる布帛等と金属蒸着層との間に存在する層間密着力を維持しつつ、さらには金属蒸着層の白化や脱離を抑制出来る、金属蒸着積層体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願発明の請求項1に記載の発明は、表面に核付金属を付着させてなる基材の、核付金属付着面に金属又は金属合金を金属蒸着層として蒸着してなり、前記金属蒸着層のさらに表面にトップコート層を積層してなる金属蒸着積層体であって、前記基材が不織布又は布帛であり、前記金属又は金属合金がアルミニウム、銀、銅、チタン、スズ又はニッケルであり、前記核付金属が、周期表における第4周期第4族から同第12族に属するいずれかの金属、若しくは当該範囲内の金属同士による合金であること、を特徴とする。
【0009】
本願発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の金属蒸着積層体であって、前記基材表面に核付金属を付着させる前に、前記基材表面を、水酸化ナトリウム水溶液に、90℃以上150℃以下の状態で15分以上40分以下の時間、曝す浸漬処理を施してなること、を特徴とする。
【0010】
本願発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の金属蒸着積層体であって、前記核付金属がグロー放電により前記基材表面に付着してなること、を特徴とする。
【0011】
本願発明の請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の金属蒸着積層体であって、前記核付金属が真空蒸着法、又はスパッタリング法により前記基材表面に付着してなること、を特徴とする。
【0012】
本願発明の請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の金属蒸着積層体であって、前記核付金属が鉄であり、なおかつ鉄が前記基材表面において単位面積あたり1Å以上5Å以下となるように付着していること、を特徴とする。
【0013】
本願発明の請求項6に記載の発明は、基材の表面に核付金属を付着させる核付金属付着工程と、前記基剤表面の核付金属付着面に金属又は金属合金を金属蒸着層として蒸着してなる金属蒸着工程と、前記金属蒸着層のさらに表面にトップコート層を積層してなるトップコート層積層工程と、を備えてなる金属蒸着積層体の製造方法であって、前記基材が不織布又は布帛であり、前記金属又は金属合金がアルミニウム、銀、銅、チタン、スズ又はニッケルであり、前記核付金属が、周期表における第4周期第4族から同第12族に属するいずれかの金属、若しくは当該範囲内の金属同士による合金であること、を特徴とする。
【0014】
本願発明の請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の金属蒸着積層体の製造方法であって、前記基材表面に核付金属を付着させる前に、前記基材表面を、水酸化ナトリウム水溶液に、90℃以上150℃以下の状態で15分以上40分以下の時間、曝す浸漬処理を施してなること、を特徴とする。
【0015】
本願発明の請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載の金属蒸着積層体の製造方法であって、前記核付金属付着工程がグロー放電であること、を特徴とする。
【0016】
本願発明の請求項9に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載の金属蒸着積層体の製造方法であって、前記核付金属付着工程が真空蒸着法、又はスパッタリング法であること、を特徴とする。
【0017】
本願発明の請求項10に記載の発明は、請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載の金属蒸着積層体の製造方法であって、前記核付金属が鉄であり、なおかつ鉄が前記基材表面において単位面積あたり1Å以上5以下となるように付着していること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、不織布又は布帛などに直接、又は目止め剤としての樹脂層を積層したその表面に金属を蒸着積層していた従来の金属蒸着積層体では、密着力が確保できず、その箇所から金属蒸着層の劣化、金属光沢の消失という現象が生じていたところ、本願発明にかかる金属蒸着積層体では、必要最小限の核付金属を利用することにより、必要な層間密着力を確保すると同時に、核付金属を由来とする白化やピンホールを抑制することが出来るようになるので、その結果金属蒸着積層体が備える機能を維持することが容易に可能となるのである。よって、例えば金属光沢を意匠性に利用する為の布帛、不織布に用いたり、さらには金属層を設けていることによる効果が期待される農業用シートや断熱材としても広く利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
本願発明に係る耐熱水性を有した金属蒸着積層体(以下単に「積層体」とも言う。)及びその製造方法に関して、第1の実施の形態として説明する。
【0021】
本実施の形態にかかる積層体は、表面に核付金属を付着させてなる基材の、核付金属付着面に金属又は金属合金を金属蒸着層として蒸着してなり、金属蒸着層のさらに表面に金属層を保護するためのトップコート層を積層してなる構成を有する。そして基材は織物又は不織布であり、金属又は金属合金がアルミニウム、銀、銅、チタン、スズ又はニッケルであり、核付金属が、周期表における第4周期第4族から同第12族に属するいずれかの金属、若しくは当該範囲内の金属同士による合金であること、を特徴とする。
【0022】
以下、順次説明をする。
本実施の形態における基材としては、織物や不織布を用いるが、ここでは不織布を用いることとする。
【0023】
本実施の形態で用いられる基材の厚みは特段制限するものではないが、本実施の形態においては後述するような、GDプラズマ処理等の前処理を直接基材に施しても破損しない程度の厚みは必要である。
【0024】
次に、本実施の形態における金属蒸着層につき説明する。
本実施の形態にかかる積層体は、基材の表面に金属蒸着層を積層しており、本実施の形態では先述の通りアルミニウムを積層しているものとする。
【0025】
基材を不織布としてこれにアルミニウムを蒸着してなる積層体の用途としては例えば農業用シートや断熱シート等があげられる。
【0026】
アルミニウムが広く用いられるのは、アルミニウムが安価に入手できる素材であること、また層状又は箔状となったアルミニウムは遮光性、遮熱性にも優れているので、これを積層した布を例えば農業用シートとして野外で用いても効果が持続できる、という効果が期待できるからである。
【0027】
尚、アルミニウムと同等の作用効果を期待できる金属又は金属合金であれば同様に本願発明を利用可能であることにつき、予め断っておく。
【0028】
次に、本実施の形態におけるトップコート層につき説明する。
本実施の形態においてトップコート層はアルミニウム蒸着層の表面に対し従来公知の手法によって積層される。例えばパディング加工やバーコーター法等の周知な手法であってよい。また、積層される厚みは特段制限するものではないが、その機能に応じて必要とされる厚みであって良い。このトップコート層を積層することにより、アルミニウム蒸着層が直接外気と触れることによる変質、表面の摩耗などにより金属層が脱離してしまうことを防ぐことが可能となる。
【0029】
次に、本実施の形態における核付金属につき説明する。
これは基材の表面に散在させるものであるが、本来の核付金属の目的は、基材とその表面に積層する層、本実施の形態においては金属蒸着層、との層間密着力を確保するためのものである。
【0030】
本実施の形態では、基材である不織布の表面にアルミニウムを蒸着するのであるが、従来、基材とその表面に積層されるアルミニウム層との間の層間密着力を強固なものにするためには鉄を用いることが効果的であることは周知であり、実際広く用いられている。
【0031】
しかし単純に、本実施の形態のように基材として不織布を選択した場合であって、基材の表面に層状に鉄を積層しその表面にアルミニウムを積層して金属蒸着積層体としようとする場合、例えばこれを農業用シートとして用いた場合、鉄の量が多いことにより、鉄と水分とが反応してしまい、その箇所から変色が始まってしまう、という問題も生じてしまう。
【0032】
また金属光沢を利用した意匠性に着目した機能材としてこれを用いる場合、即ち金属光沢が失われないようにする必要がある利用方法にあっては、アルミニウムの呈する金属光沢を計算に入れた外観を呈するようになされるのが常であるところ、アルミニウムの呈する金属光沢が消失することで外観が全く違った物となってしまい、また金属光沢により期待されていた機能を消失することになってしまう。即ちアルミニウム層の白化という現象が好ましくないものであることを意味する。要するに、金属光沢による外観を重視する場合、その機能が消失しないようにするためには、金属層の脱離や変化が生じないようにこれを保護することは必然であるが、従来の不織布を基材とする金属蒸着積層体では実現困難なものであった。
【0033】
そこで本実施の形態では、前述した鉄を用いて層間密着力を確保する方法を用いることが出来ないか検討したものである。しかし単純に核付金属としての鉄を「層状」として設けてしまうと、確かに積層直後には充分な層間密着力を確保できるかもしれないが、可撓性等の点で好ましいものとはなり得ない。
【0034】
そこで、本願発明にかかる発明者は、基材表面に散在させる核付金属であって、その層間密着力を確保するために必要な最小限を探り、同時に積層物を変質させない最大量の核付金属を探った結果、単位面積あたり蛍光X線の換算膜厚が1Å以上5Å以下、より好ましくは2Å以上4Å以下となる状態で鉄が基材の表面に散在すると好適であることを見いだした。この値は実質的には鉄原子が基材表面にあたかも「まぶされている」かのように散在している、と表現できるものであり、実際には鉄原子の拡散運動により鉄原子同士が凝集するので、鉄原子はクラスター化し分散して存在しているものと考えられる。
【0035】
さらに述べると、基材表面における単位面積あたりの蛍光X線の換算膜厚が1Å未満の状態では鉄原子の凝集力が小さすぎるため、核付金属の効果として期待される密着強度は発現しないことが確認され、また基材表面における単位面積あたりの蛍光X線の換算膜厚が5Åを超えた状態では鉄原子の凝集力が大きくなり、そのため鉄原子が必要以上な大きさのクラスター状態となってしまい、その結果当該クラスター部分があたかも異物が層間に存在してしまうかのような状態となってしまい、例えば層間密着力の発生をかえって阻害してしまう、鉄とアルミニウムとの応力が異なることより隙間が生じてしまう、そしてその隙間がH2Oによる酸化反応の起点となってしまう、等の現象が生じていることが想像される。
【0036】
しかし基材表面における単位面積あたりの蛍光X線の換算膜厚が1Å以上5Å以下の状態であれば、鉄原子はクラスター状態とはなるもののその状態は適度なものであり、そして鉄の適度な凝集力により密着力が発現するが、酸化還元反応は発生しない事が判ったのである。
【0037】
よって、本実施の形態において、基材表面において、その表面の単位面積あたり1Å以上5Å以下の鉄原子を散在させることとしたのである。尚、ここでは詳述しないが、2Å以上4Å以下とすると、より一層好適なものとすることが出来る。
【0038】
そこでその方法につき説明する。尚、本実施の形態ではグロー放電(GD放電)を利用することとするが、結果として上述したように基材表面における単位面積あたりの鉄原子量が1Å以上5Å以下の状態を現出できるのであればGD放電以外の方法、例えば真空蒸着法やスパッタリング法等であっても構わないことを断っておく。
【0039】
本実施の形態では、基本的には基材となる不織布を準備し、その表面に対しターゲットをSUSとしたGDプラズマ処理を行う事によりGD放電を実行するのであるが、GD放電を行う際のGD放電出力量の大小により、SUSから放出され基材表面に付着する鉄原子の量に差があることを本願発明の発明者は見いだした。
【0040】
つまり、GD放電の出力量を調整することで、基材表面における鉄原子の付着量が、単位面積あたりの蛍光X線の換算膜厚が1Å以上5Å以下と出来るのである。
【0041】
このGD放電それ自体は周知の手段・手法によるものであって構わないが、要すればGD放電を実行する際の出力を制御することによって、所望の核付、即ち基材表面に単位面積あたりの蛍光X線の換算膜厚が1Å以上5Å以下となる状態が実現できるのである。そしてその状態の現出のためにGD放電の出力量を調整すれば良いのである。
【0042】
以上のように、本実施の形態では基材表面に単位面積あたりの蛍光X線の換算膜厚が1Å以上5Å以下の状態となるように、より好ましくは2Å以上4Å以下となるように、鉄原子を核付金属として用いることで、必要最小限の層間密着力を確保出来、なおかつ鉄原子の酸化を原因とする積層体の白化等の現象が生じることを抑制出来るようになるのである。
【0043】
(実施の形態2)
次に、先に説明した第1の実施の形態において基材に金属を蒸着し積層する金属蒸着工程を実行する前に、金属蒸着層を積層するための前処理として基材表面に付着している脱脂や汚れなどの不純物を落とすための処理を行うことにより得られる積層体に関し、これを第2の実施の形態として以下簡単に説明する。なお、第1の実施の形態と同一のものについてはその説明を省略する。
【0044】
本願発明において基材として布帛や不織布等を用いるのであるが、実際に布帛などを基材として、その直接に金属層を積層しようとしても、例えば織機時のオイルや汚れにより金属を綺麗に蒸着出来ず、変色・金属脱離の原因となる場合がある。つまり、表面に異物が存在している状態で金属を蒸着しようとしても、異物が層間密着力の維持を阻害する存在となってしまい、ひいては異物の存在故に金属蒸着層が剥離、脱落してしまう、ということが生じてしまっていた。
【0045】
そこで本実施の形態では、第1の実施の形態において説明した、基材表面に核付金属を付着させる核付金属付着工程を実行する前に、基材表面を、水酸化ナトリウム水溶液に、90℃以上150℃以下の状態で15分以上40分以下の時間、曝す浸漬処理を施してなることとした。
【0046】
この浸漬処理につき、さらに説明をする。
まず最初にそもそも本実施の形態における蒸着布帛のベースとして利用する布帛であるが、これは特段制限するものではなく、ごく一般的な布帛であってよい。
【0047】
但し後述するように蒸着作業を行う関係上、例えばポリエステルなどのような水分吸水率の低い繊維により得られる布帛であることが望ましい。さらに当然ながら後述のように水酸化ナトリウム溶液に曝すことで布帛そのものが溶融してしまうような素材の布帛を用いることは当然ながら出来ないことを付言しておく。
【0048】
次にこの布帛の表面を水酸化ナトリウム溶液に曝す、という浸漬処理を実行する。浸漬処理の具体的な方法として好ましいのは、これを90℃以上150℃以下の雰囲気下でこの溶液に布帛を15分以上40分以下の時間をかけて浸すことである。尚、水酸化ナトリウム水溶液は具体的に制限するものではないが、好ましくは1重量%以上10重量%以下の水酸化ナトリウム溶液を用いることである。
【0049】
尚、ここでは浸漬としているが、90℃以上150℃以下の雰囲気下で15分以上40分以下の時間にわたり布帛表面に噴霧する、という方法であっても構わない。
【0050】
このように浸漬処理を施すことで、布帛表面のクリーニングがなされることとなるのであるが、さらに別途微細に観察すれば、布帛を水酸化ナトリウム溶液に曝されることで布帛表面がいわゆる「荒れた」状態となり、その結果上記効果に加えてより一層層間密着力を確保することが出来るようになるものと考えられる。
【0051】
また、ここでは水酸化ナトリウム溶液を用いて布帛表面の不純物を除去することにつき説明したが、これ以外にも精練剤などの処理剤を用いて、蒸着の密着を阻害する油分を取り除くことも可能であるが、これについては詳述は省略する。
【0052】
このように、核付金属を用いると同時に、いわゆる前処理としての浸漬処理を施すことにより、より一層層間密着力を確保することが出来るようになるのである。
【0053】
尚、以上、本願発明にかかる実施の形態に付き説明したが、これら以外にも例えば基材表面に目止め剤を積層してなる構成を有する金属蒸着積層体とすることも考えられる。この場合、目止め剤としては例えば合成樹脂を用いることが好適である。ここで用いる合成樹脂は特段制限するものではなく、最終的に本実施の形態にかかる積層体の利用目的に応じたものであれば良い。
【0054】
目止め剤による層を基材表面に設けるためには、例えば基材をこれに含浸させることにより行っても良いし、基材表面に目止め剤を塗布することにより層を形成しても構わない。そしてこのように合成樹脂による目止め剤を基材表面に塗布した後、先述のように目止め剤層の表面に核付金属を散在させ、さらにアルミニウムなどの金属蒸着層を積層するのである。
【0055】
このように目止め剤による層を基材表面に積層することにより、基材の疎の部分が目止め剤により埋められることになるので、より一層緻密な外観を呈する金属蒸着層を得ることが出来るのである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明した本願発明にかかる金属蒸着積層体及びその製造方法であれば、必要最小限の核付金属を布帛や不織布などの基材表面に散在させておくことで、耐熱水性を有する積層体を得ることが出来る。その結果、従来に比して金属光沢を確実に維持できるようになるので、例えば農業用シートや断熱シート、金属特有の光沢を生かした意匠性、遮熱性を利用したインテリア用途に利用出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に核付金属を付着させてなる基材の、核付金属付着面に金属又は金属合金を金属蒸着層として蒸着してなり、
前記金属蒸着層のさらに表面にトップコート層を積層してなる金属蒸着積層体であって、
前記基材が不織布又は布帛であり、
前記金属又は金属合金がアルミニウム、銀、銅、チタン、スズ又はニッケルであり、
前記核付金属が、周期表における第4周期第4族から同第12族に属するいずれかの金属、若しくは当該範囲内の金属同士による合金であること、
を特徴とする、金属蒸着積層体。
【請求項2】
請求項1に記載の金属蒸着積層体であって、
前記基材表面に核付金属を付着させる前に、前記基材表面を、水酸化ナトリウム水溶液に、90℃以上150℃以下の状態で15分以上40分以下の時間、曝す浸漬処理を施してなること、
を特徴とする、金属蒸着積層体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の金属蒸着積層体であって、
前記核付金属がグロー放電により前記基材表面に付着してなること、
を特徴とする、金属蒸着積層体。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の金属蒸着積層体であって、
前記核付金属が真空蒸着法、又はスパッタリング法により前記基材表面に付着してなること、
を特徴とする、金属蒸着積層体。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の金属蒸着積層体であって、
前記核付金属が鉄であり、なおかつ鉄が前記基材表面において単位面積あたり1Å以上5Å以下となるように付着していること、
を特徴とする、金属蒸着積層体。
【請求項6】
基材の表面に核付金属を付着させる核付金属付着工程と、
前記基剤表面の核付金属付着面に金属又は金属合金を金属蒸着層として蒸着してなる金属蒸着工程と、
前記金属蒸着層のさらに表面にトップコート層を積層してなるトップコート層積層工程と、
を備えてなる金属蒸着積層体の製造方法であって、
前記基材が不織布又は布帛であり、
前記金属又は金属合金がアルミニウム、銀、銅、チタン、スズ又はニッケルであり、
前記核付金属が、周期表における第4周期第4族から同第12族に属するいずれかの金属、若しくは当該範囲内の金属同士による合金であること、
を特徴とする、金属蒸着積層体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の金属蒸着積層体の製造方法であって、
前記基材表面に核付金属を付着させる前に、前記基材表面を、水酸化ナトリウム水溶液に、90℃以上150℃以下の状態で15分以上40分以下の時間、曝す浸漬処理を施してなること、
を特徴とする、金属蒸着積層体の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の金属蒸着積層体の製造方法であって、
前記核付金属付着工程がグロー放電であること、
を特徴とする、金属蒸着積層体の製造方法。
【請求項9】
請求項6又は請求項7に記載の金属蒸着積層体の製造方法であって、
前記核付金属付着工程が真空蒸着法、又はスパッタリング法であること、
を特徴とする、金属蒸着積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載の金属蒸着積層体の製造方法であって、
前記核付金属が鉄であり、なおかつ鉄が前記基材表面において単位面積あたり1Å以上5以下となるように付着していること、
を特徴とする、金属蒸着積層体の製造方法。

【公開番号】特開2013−43349(P2013−43349A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182190(P2011−182190)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000235783)尾池工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】