脊椎固定用手術器具
【課題】椎骨に固定されるアンカーが不用意に外れることを抑制することができ、且つ、脊椎固定用のロッドを容易にアンカーに取り付けることができる、脊椎固定用手術器具を提供する。
【解決手段】手術器具1は、内筒4と外筒5とを備える。内筒4は、内筒本体と、一対の第1側壁12,13と、脊椎アンカー2を保持するために一対の第1側壁12,13の先端に形成された一対の保持部18,18と、を含む。外筒5は、外筒本体と、一対の第2側壁38,39と、を含む。一対の第2側壁38,39は、一対の挟持部41,41を含む。一対の挟持部41,41は、外筒本体から遠ざかるに従い外筒5の中心軸線L2に向かって互いに近接しながら延びるように設けられ、かつ、一対の保持部18,18を挟持可能である。
【解決手段】手術器具1は、内筒4と外筒5とを備える。内筒4は、内筒本体と、一対の第1側壁12,13と、脊椎アンカー2を保持するために一対の第1側壁12,13の先端に形成された一対の保持部18,18と、を含む。外筒5は、外筒本体と、一対の第2側壁38,39と、を含む。一対の第2側壁38,39は、一対の挟持部41,41を含む。一対の挟持部41,41は、外筒本体から遠ざかるに従い外筒5の中心軸線L2に向かって互いに近接しながら延びるように設けられ、かつ、一対の保持部18,18を挟持可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎の椎骨同士を固定する手術等において用いられる、脊椎固定用手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎を手術する脊椎外科手術において、最小侵襲性の手術器具を用いる場合がある(例えば、特許文献1参照)。手術器具として特許文献1に記載されている経皮的アクセス装置は、概ね細長い円筒状に形成されており、内部に内腔を有している。このアクセス装置の先端部は、アンカーに結合される。より具体的には、アクセス装置の先端部には、スナップ式の結合部等、アンカーとの結合要素が設けられている。アンカーは、アクセス装置の先端部に取り付けられた状態で、患者の脊椎の椎骨にねじこまれる。
【0003】
複数の椎骨のそれぞれにアンカーが固定された後、アンカー同士が、棒状の脊椎固定要素によって結合される。具体的には、特許文献1に記載の構成では、脊椎固定要素は、アクセス装置内に挿入され、アクセス装置と平行な第1の方向へ変位される。脊椎固定要素の一端が患者の皮下に到達すると、脊椎固定要素は、第1の方向とは異なる第2の方向へ変位し、アクセス装置に形成された開口部を通して、アクセス装置の外側へ突出する。そして、脊椎固定要素は、隣接するアクセス装置の開口部に挿入され、患者の体内において、2つのアンカーに結合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−513739号公報([0016]、[0021]、[0035]〜[0039])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のアクセス装置は、患者の背部を切開して形成された切開部を通して、患者の体内に挿入される。最小侵襲性の手術では、この切開部の長さは、アクセス装置の直径と同程度で短く、患者の体内に挿入されたアクセス装置の先端部は、術者には直接目視することができない。このため、アクセス装置を皮下の椎骨にまで挿入する際に、アンカーが椎骨の設置位置と異なる位置等に強く接触し、その結果、アンカーがアクセス装置から外れてしまう虞がある。また、脊椎固定要素をアンカーに装着する際、脊椎固定要素を直接目視することができないので、脊椎固定要素を、アンカーに強く押し当ててしまう場合がある。また、椎骨同士の固定力を高めるために、隣り合うアンカー間の距離を短くすべく、隣り合うアクセス装置同士を強い力で近接させ、この状態で、近接したアンカー同士を脊椎固定要素によって繋ぐ場合がある。これらの場合、アクセス装置とアンカーとの結合部分に大きな力が作用し、その結果、アンカーがアクセス装置から外れる虞がある。
【0006】
特許文献1に記載の構成では、アクセス装置とアンカーとは、スナップ式の結合構造等を用いて結合力が高くなるようにされており、一見、上記の外れ現象を抑制できるように思われる。しかしながら、特許文献1に記載の構成では、アクセス装置の先端は、二股状に形成されており、剛性が低い。このため、アクセス装置の先端部においては、アンカーを介して外力を受けると、小さい力でも先端部間の間隔が拡がってしまう。このため、アクセス装置の先端部に保持されたアンカーは、皮下において、アクセス装置から外れやすい。脊椎固定要素をアンカーに結合し終える前にアンカーからアクセス装置が外れてしまうと、脊椎固定要素を用いた椎骨同士の固定が困難になる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、椎骨に固定されるアンカーが不用意に外れることを抑制することができ、且つ、脊椎固定用のロッドを容易にアンカーに取り付けることができる、脊椎固定用手術器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1発明に係る脊椎固定用手術器具は、内筒と、前記内筒と嵌合可能な外筒と、を備え、前記内筒は、内筒本体と、当該内筒本体から前記内筒の軸方向に沿って延び、互いの間にロッドを挿通可能なスリットを形成する一対の第1側壁と、患者の脊椎に固定され前記ロッドと結合される脊椎アンカーを保持するために一対の前記第1側壁の先端に形成された一対の保持部と、を含み、前記外筒は、外筒本体と、当該外筒本体から前記外筒の軸方向に沿って延び、互いの間に前記ロッドを挿通可能なスリットを形成する一対の第2側壁と、を含み、一対の前記第2側壁は、前記外筒本体から遠ざかるに従い前記外筒の中心軸線に向かって互いに近接しながら延びるように設けられ、かつ、一対の前記保持部を挟持可能な一対の挟持部を含むことを特徴とする。
【0009】
この発明によると、外筒の一対の挟持部によって、内筒の一対の保持部を強力に挟持することができる。これにより、一対の保持部と、当該一対の保持部に保持された脊椎アンカーとの結合力を、格段に大きくすることができる。したがって、脊椎アンカーを保持した内筒と外筒との結合体であるユニットの先端側部分を患者の体内に挿入しても、脊椎アンカーが一対の保持部から不用意に外れることを確実に抑制できる。また、内筒および外筒には、それぞれ、ロッドを挿通可能なスリットが形成されている。これにより、術者は、ロッドを、スリットを通して脊椎アンカーまで容易に運ぶことができる。より具体的には、まず、ロッドを、スリットを通るようにして内筒の軸方向と平行な第1方向側へ変位させることで、患者の体内に挿入する。さらに、ロッドを、スリットに案内された状態で、内筒の軸方向と直交する第2方向側へ変位させることができる。これにより、ロッドを、互いに隣接する複数の脊椎アンカーに容易に結合させることができる。
【0010】
従って、本発明によると、脊椎アンカーが不用意に外れることを抑制でき、且つ、ロッドを容易に脊椎アンカーに取り付けることができる、脊椎固定用手術器具を提供することができる。
【0011】
第2発明に係る脊椎固定用手術器具は、第1発明の脊椎固定用手術器具において、一対の前記第2側壁は、前記外筒の中心軸線に対する傾きが互いに同じであることを特徴とする。
【0012】
この発明によると、一対の挟持部が、外筒の中心軸線を中心とした対称な形状に形成される。これにより、一方の挟持部が一方の保持部に付与する力と、他方の挟持部が他方の保持部に付与する力とを、より均等にすることができる。その結果、一対の保持部は、脊椎アンカーを安定した姿勢で保持することができる。したがって、一対の保持部に対する脊椎アンカーの向きが不用意に変化することを、より確実に抑制することができる。
【0013】
第3発明に係る脊椎固定用手術器具は、第1発明又は第2発明の脊椎固定用手術器具において、前記外筒は、金属材料を用いて形成されており、一対の前記第2側壁は、前記外筒本体に対する曲げ加工と、焼きなまし処理とが施されることで形成されていることを特徴とする。
【0014】
この発明によると、一対の第2側壁、特に、一対の第2側壁と外筒本体と接続部分について、曲げ加工の際の加工硬化による内部歪みを除去することができる。これにより、外筒の耐久性を高くすることができる。
【0015】
第4発明に係る脊椎固定用手術器具は、第1発明乃至第3発明の何れかの脊椎固定用手術器具において、各前記保持部は、前記第1側壁から延設され、前記脊椎アンカーを弾性的に保持可能な弾性片部を含むことを特徴とする。
【0016】
この発明によると、一対の保持部は、一対の挟持部に挟持されていない状態において、脊椎アンカーを弾性的に保持することができる。このため、脊椎アンカーを保持した一対の保持部を、一対の挟持部で挟持するまでの間において、一対の保持部から脊椎アンカーが外れてしまうことを抑制できる。したがって、術者は、手術作業を行い易い。
【0017】
第5発明に係る脊椎固定用手術器具は、第1発明乃至第4発明の何れかの脊椎固定用手術器具において、各前記保持部は、前記脊椎アンカーに形成された孔部に嵌合可能な凸部を含むことを特徴とする。
【0018】
この発明によると、一対の保持部に形成された一対の凸部によって、脊椎アンカーを保持することができる。このため、脊椎アンカーを保持した一対の保持部を一対の挟持部で挟持する作業の際に、一対の保持部から脊椎アンカーが外れてしまうことを抑制できる。したがって、術者は、手術作業を行い易い。特に、一対の凸部が、一対の保持部の弾性片部に取り付けられている場合には、脊椎アンカーを弾性的に挟持することができるので、一対の保持部からの脊椎アンカーの脱落を、より確実に抑制することができる。
【0019】
第6発明に係る脊椎固定用手術器具は、第1発明乃至第5発明の何れかの脊椎固定用手術器具において、各前記第1側壁は、前記保持部と前記内筒本体との間に配置され前記脊椎アンカーが前記内筒本体側へ変位することを規制するストッパを含むことを特徴とする。
【0020】
この発明によると、例えば、脊椎アンカーを椎骨に固定する作業において、脊椎アンカーが椎骨の表面に接触した場合に、脊椎アンカーが内筒のストッパに受けられてそれ以上内筒本体側に変位することを抑制でき、脊椎アンカーの不用意な変位をより確実に抑制できる。また、例えば、内筒の一対の保持部に保持された脊椎アンカーに操作部材を係合し、内筒を、外筒の一対の第2側壁側から外筒本体側へ変位させることで、一対の保持部を一対の挟持部間に配置する場合において、内筒に対する脊椎アンカーの変位を、ストッパで規制することができる。これにより、脊椎アンカーが内筒の一対の保持部から不用意に外れてしまうことを、より確実に抑制できる。
【0021】
第7発明に係る脊椎固定用手術器具は、第1発明乃至第6発明の何れかの脊椎固定用手術器具において、前記内筒を挿通可能に構成され、前記内筒に係合し前記内筒を前記外筒に対して変位させるための操作部材をさらに備えることを特徴とする。
【0022】
この発明によると、操作部材を用いることにより、外筒に対する内筒の変位操作を、より容易に行うことができる。
【0023】
第8発明に係る脊椎固定用手術器具は、第7発明の脊椎固定用手術器具において、前記操作部材は、一対の前記保持部に保持された前記脊椎アンカーを介して前記内筒に係合することを特徴とする。
【0024】
この発明によると、内筒の一対の保持部は、脊椎アンカーを保持する機能と、操作部材に係合する機能と、を兼ねることができる。これにより、内筒に、操作部材のための専用の係合部を設ける必要が無く、内筒の構成を、より簡素にできる。
【0025】
第9発明に係る脊椎固定用手術器具は、第1発明乃至第8発明の何れかの脊椎固定用手術器具において、前記内筒と前記外筒との軸方向の相対位置を規定するための位置決め機構をさらに備えることを特徴とする。
【0026】
この発明によると、一対の挟持部が一対の保持部を挟持している状態と、この挟持が解除された状態とを、位置決め機構によって確実に切り替えることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、脊椎アンカーが不用意に外れることを抑制でき、且つ、ロッドを容易に脊椎アンカーに容易に取り付けることができる、脊椎固定用手術器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態に係る脊椎固定用手術器具と、脊椎アンカーと、患者の脊椎等を示す側面図である。
【図2】(a)は、内筒の側面図であり、(b)は、図2(a)の矢印IIb方向から見た、内筒の側面図である。
【図3】(a)は、図2(b)のIIIa−IIIa線に沿う断面図であり、(b)は、図3(a)の主要部の拡大図である。
【図4】(a)は、外筒の側面図であり、図4(b)は、図4(a)の矢印IVb方向から見た、外筒の側面図である。
【図5】(a)は、図4(b)のVa−Va線に沿う断面図であり、(b)は、図5(a)の主要部の拡大図であって、内筒の一部を想像線で示している。
【図6】(a)及び(b)は、それぞれ、内筒の一対の挟持部が脊椎アンカーの頭部を挟持する力について説明するための模式図である。
【図7】(a)及び(b)は、それぞれ、脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図8】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図9】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図10】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図11】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図12】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図13】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図14】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図15】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図16】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図17】本発明の変形例について説明するための主要部の模式図である。
【図18】(a)及び(b)は、それぞれ、本発明の変形例について説明するための主要部の模式図である。
【図19】(a)及び(b)は、それぞれ、本発明の別の変形例について説明するための主要部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、患者の脊椎の椎骨同士を固定する手術において用いられる、脊椎固定用手術器具として広く適用することができる。
【0030】
図1は、本発明の一実施の形態に係る脊椎固定用手術器具1と、脊椎アンカー2と、患者100の脊椎101等を示す側面図である。図1に示すように、脊椎固定用手術器具1は、例えば、椎間板ヘルニア等、脊椎101に関連する疾患を有する患者に対して、変性等を生じた椎間板に代えて人工骨等の代替骨を設置する手術の際に用いられる。この手術では、脊椎固定用手術器具1は、病変した椎間板に代えて、人工骨等が設置された箇所に隣接する、椎骨102,103同士を固定するために用いられる。このように、椎骨102,103同士が結合されることにより、患者100の脊椎101の姿勢を安定させることができる。
【0031】
より具体的には、脊椎固定用手術器具1は、脊椎アンカー2と、ロッド3とを患者100の体内に設置するために用いられる。脊椎アンカー2は、頭部2aと、雄ねじ部2bと、を有している。頭部2aは、小片状に形成されており、略円筒状の外周面を有している。また、頭部2aには、当該頭部2aの一側面から他側面側に向かう、凹部2cが設けられている。凹部2cは、ロッド3が挿通される部分として設けられており、内周に、雌ねじ部(図1では図示せず)が形成されている。雄ねじ部2bは、頭部2aの他側面から延びる細長い部材である。
【0032】
また、頭部2a及び雄ねじ部2bには、脊椎アンカー2の軸方向に貫通する貫通孔(図示せず)が形成されており、ガイド用のワイヤー(図1では図示せず)を挿通可能である。ロッド3は、2つの脊椎アンカー2,2の凹部2c,2c同士を結合するために設けられた、棒状部材である。
【0033】
脊椎固定用手術器具1(以下、単に手術器具1ともいう)は、内筒4と、外筒5と、操作部材6と、を備えている。
【0034】
内筒4および外筒5は、互いに嵌合されることにより、ユニット7を形成している。ユニット7は、筒状に形成されている。ユニット7の軸方向S1、径方向R1及び周方向C1は、それぞれ、内筒4の軸方向、径方向及び周方向であり、外筒5の軸方向、径方向及び周方向でもある。
【0035】
内筒4は、脊椎アンカー2を保持する保持部材として設けられている。内筒4は、脊椎アンカー2を保持する保持力を、外筒5によって高めることが可能に構成されている。内筒4は、外筒5と嵌合可能である。内筒4の直径は、例えば、10mm〜15mm程度であり、全長は、100mm〜150mm程度である。
【0036】
図2(a)は、内筒4の側面図であり、図2(b)は、図2(a)の矢印IIb方向から見た、内筒4の側面図である。図3(a)は、図2(b)のIIIa−IIIa線に沿う断面図であり、図3(b)は、図3(a)の主要部の拡大図である。
【0037】
図2(a)、図2(b)および図3(a)に示すように、内筒4は、一部が円筒状に形成され、一部が二股状に形成された細長い部材であり、中心軸線L1を有している。内筒4は、内筒本体10と、第1二股状部11と、を含んでいる。
【0038】
内筒本体10は、円筒状の部分として設けられている。内筒本体10における内径及び外径はそれぞれ一定である。内筒本体10(内筒4)は、例えばSUS630等の、医療用途に適し、且つ、剛性に優れた金属材料を用いて形成されている。内筒本体10は、内筒4のうち、基端側の略半部を構成している。内筒本体10の基端部の内周面には、雌ねじ部10aが形成されている。雌ねじ部10aは、操作部材6(図1参照)と螺合するために設けられている。軸方向S1における雌ねじ部10aの長さは、例えば、5mm程度である。内筒4の先端部に、第1二股状部11が配置されている。
【0039】
第1二股状部11は、脊椎アンカー2を弾性的に保持するために設けられている。第1二股状部11は、中心軸線L1を挟んで配置された一対の弾性片部としての一対の第1側壁12,13を有している。各第1側壁12,13は、内筒本体10の先端部から、軸方向S1に沿って延びており、内筒本体10に片持ち支持されている。一対の第1側壁12,13は、軸方向S1と直交する断面において、円弧状をなしている。各第1側壁12,13は、外力が作用していない状態としての自由状態において、互いに平行に延びている。
【0040】
図2(a)に示すように、一対の第1側壁12,13の間に中心軸線L1が配置されるように内筒4を見たとき、一対の第1側壁12,13は、中心軸線L1を中心に対称な形状を有している。また、図2(b)に示すように、一方の第1側壁12の外周面側から内筒4を見たとき、一対の第1側壁12,13は、互いの位置が重なるように配置される。図2(a)及び図2(b)に示すように、第1側壁12,13は、それぞれ、細幅部14と、太幅部15と、を有している。
【0041】
各細幅部14は、周方向C1における長さが、周方向C1における太幅部15の長さよりも小さい部分として設けられている。各細幅部14の厚み(径方向R1の長さ)は、内筒本体10の厚みと同じとされている。各細幅部14の外周面は、内筒本体10の外周面と滑らかに連続しており、各細幅部14の内周面は、内筒本体10の内周面と滑らかに連続している。各細幅部14の基端部は、内筒本体10の先端部に接続されており、軸方向S1に沿って内筒本体10から遠ざかるに従い、周方向C1の幅が狭くなっている。各細幅部14の中間部は、横幅が一定であり、軸方向S1に沿って延びている。各細幅部14の先端部は、内筒本体10から遠ざかるに従い幅広となっている。各細幅部14の先端部に、太幅部15が接続されている。
【0042】
各太幅部15は、図2(b)に示すように、一対の第1側壁12,13が重なり合うように見たときに、径方向R1における長さが内筒本体10の直径と略同じである部分として設けられている。また、各太幅部15は、第1側壁12,13の先端部として設けられている。図2(a),図2(b)及び図3(b)に示すように、各太幅部15の厚みT1(径方向R1の長さ)は、内筒本体10の厚みT2よりも大きくされている。一対の太幅部15,15の内径D11は、細幅部14の内周面に隣接している部分において、内筒本体10の内径と同じであり、先端側において、内筒本体10の内径よりも大きい。これにより、各太幅部15の内周面には、径方向R1に延びるストッパ16が形成されている。ストッパ16は、脊椎アンカー2の頭部2aを受けるために設けられている。一対の太幅部15の外径は、内筒本体10の外径よりも大きい。各太幅部15の外周面と、対応する細幅部14の外周面との間には、段部17が形成されている。軸方向S1に関して、各太幅部15の長さは、各細幅部14の長さよりも短い。
【0043】
一対の太幅部15,15は、一対の保持部18,18を含んでいる。一対の保持部18,18は、脊椎アンカー2の頭部2aを保持するために設けられている。各保持部18は、当該保持部18が形成されている太幅部15のうち、ストッパ16に対して太幅部15の先端側に位置する部分によって形成されている。上記の構成により、一対の保持部18,18は、脊椎アンカー2の頭部2aの外周面を保持することが可能である。なお、一対の保持部18,18における一対の太幅部15,15の内径は、脊椎アンカー2の頭部2aの外径と略同じに設定されている。各保持部18の内周面には、凸部19が形成されている。
【0044】
凸部19は、脊椎アンカー2の頭部2aの外周面に形成された孔部2dに嵌合するために設けられている。脊椎アンカー2の孔部2dは、脊椎アンカー2の頭部2aの外周面に形成されており、例えば、脊椎アンカー2の頭部2aの周方向に180度離隔して、2つ配置されている。凸部19は、各保持部18の内周面から、径方向R1に沿って中心軸線L1に向かって延びる小片状に形成されている。凸部19,19は、周方向C1に180度離隔して配置されている。本実施形態では、凸部19,19は、一対の第1側壁12,13とは別部材を用いて形成されているけれども、一対の第1側壁12,13と単一の材料を用いて一体に形成されていてもよい。
【0045】
これにより、一対の保持部18,18が脊椎アンカー2の頭部2aを挟持している場合に、一対の凸部19,19は、対応する孔部2d,2dに嵌合する。また、この場合、脊椎アンカー2の頭部2aの一側面は、各ストッパ16によって受けられ、それ以上、軸方向S1に沿って内筒本体10側へ変位することが規制される。すなわち、各ストッパ16は、対応する保持部18と内筒本体10との間に配置されており、脊椎アンカー2が内筒本体10側へ変位することを規制している。
【0046】
上記の構成を有する一対の第1側壁12,13によって、第1スリット20が形成されている。即ち、一対の第1側壁12,13は、互いの間に第1スリット20を形成している。第1スリット20は、ロッド3を挿通可能に構成されている。より具体的には、第1スリット20は、一対の第1側壁12,13の基端部間から、軸方向S1の一方である、第1方向D1に沿って延びている。また、第1スリット20は、一対の第1側壁12,13の先端において、第1方向D1側に開放されており、且つ、第1方向D1と直交する第2方向D2側に開放されている。尚、第2方向D2は、一対の第1側壁12,13が向かい合う方向に対しても直交している。
【0047】
図2(a)に示すように、側面視において、第1スリット20は、一対の第1側壁12,13の基端部においては、第1方向D1に進むに従い幅広となっており、一対の第1側壁12,13の中間部においては、幅が略一定である。また、第1スリット20は、一対の第1側壁12,13の細幅部14,14の先端部側において第1方向D1に進むに従い幅が狭くなっており、太幅部15,15間において、幅が略一定である。第1スリット20の幅は、太幅部15,15間において、最も狭くされているけれども、ロッド3の直径よりは大きい。
【0048】
図1に示すように、上記の構成を有する内筒4は、外筒5に対して着脱可能である。外筒5は、内筒4の先端部を挟持することにより、内筒4と脊椎アンカー2との結合力を増す部材として設けられている。外筒5の外径の最大値は、例えば、20mm程度(本実施形態において、18mm)であり、全長は、100mm〜150mm程度である。
【0049】
図4(a)は、外筒5の側面図であり、図4(b)は、図4(a)の矢印IVb方向から見た、外筒5の側面図である。図5(a)は、図4(b)のVa−Va線に沿う断面図であり、図5(b)は、図5(a)の主要部の拡大図であって、内筒4の一部を想像線で示している。
【0050】
図4(a)、図4(b)および図5(a)に示すように、外筒5は、一部が円筒状に形成され、一部が二股状に形成された細長い部材であり、中心軸線L2を有している。外筒5は、外筒本体30と、第2二股状部37と、を含んでいる。
【0051】
外筒本体30は、円筒状の部分として設けられている。外筒本体30(外筒5)は、SUS630等の、医療用途に適し、且つ、剛性に優れた金属材料を用いて形成されている。本実施形態では、外筒本体30の材料は、内筒本体10の材料と同じである。外筒本体30は、外筒5のうち、基端側の略半部を構成している。
【0052】
外筒本体30は、外径が一定の部分と、外径が変化する部分とを有している。具体的には、外筒本体30は、第1部分31と、第2部分32と、第3部分33と、を有している。第1部分31、第2部分32及び第3部分33は、上記の順に、外筒5の軸方向S1に沿って並んでいる。第1部分31は、外筒本体30の基端部を含んでおり、内径及び外径が略一定の円筒状に形成されている。第1部分31の基端部の外周面には、雄ねじ部31aが形成されている。雄ねじ部31aは、雌ねじ部を有する筒状の部材(図示せず)などを用いて保持可能に構成されている。軸方向S1における雄ねじ部31aの長さは、例えば、25mm程度である。第1部分31の先端部に、第2部分32が配置されている。
【0053】
第2部分32は、軸方向S1の一方である第1方向D1に進むに従い、外径が大きくなる部分として設けられている。第2部分32における外筒5の内径は、第1部分における外筒5の内径と略同じである。軸方向S1において、第2部分32の長さは、第1部分31の長さよりも短い。第2部分32に、第3部分33が連続している。
【0054】
第3部分33は、外筒本体30の先端部として設けられているとともに、第2二股状部37の基礎部分として設けられている。第3部分33は、内径及び外径が略一定の円筒状に形成されている。第3部分33から、第2二股状部37が延びている。
【0055】
第2二股状部37は、内筒4の第1二股状部11を弾性的に保持するために設けられている。第2二股状部37は、中心軸線L2を挟んで配置され一対の弾性片部としての一対の第2側壁38,39を有している。各第2側壁38,39は、軸方向S1に沿って延びており、外筒本体30に片持ち支持されている。各第2二股状部37は、軸方向S1と直交する断面において、円弧状をなしている。一対の第2側壁38,39は、外筒本体30から軸方向S1に沿って延びおり、互いの間に第2スリット40を形成している。第2スリット40は、ロッド3を挿通可能な幅を有している。
【0056】
図4(a)に示すように、一対の第2側壁38,39の間に中心軸線L2が配置されるように外筒5を見たとき、一対の第2側壁38,39は、中心軸線L2を中心に対称な形状を有している。また、図4(b)に示すように、一方の第2側壁38の外周面側から外筒5を見たとき、一対の第2側壁38,39は、互いの位置が重なるように配置されている。
【0057】
図4(a)及び図4(b)に示すように、第2側壁38,39は、それぞれ、第4部分34と、第5部分35と、第6部分36と、を有している。第4部分34と、第5部分35と、第6部分36は、軸方向S1に沿って上記の順に並んでいる。
【0058】
図4(a)及び図5(a)に示すように、各第4部分34は、外径が一定で、且つ、内径が一定の部分として設けられている。また、各第4部分34は、第1方向D1に進むに従い、周方向C1の長さが連続的に大きくなる形状に形成されている。各第4部分34の内周面及び外周面は、それぞれ、第3部分33の内周面及び外周面と連続している。第4部分34には、第5部分35が接続されている。
【0059】
各第5部分35は、第4部分34と同様に、外径が一定で、且つ、内径が一定の部分として設けられている。各第5部分35は、軸方向S1の何れの箇所においても、周方向C1の長さが一定である。各第5部分35の内周面及び外周面は、それぞれ、対応する第4部分34の内周面及び外周面と連続している。第5部分35には、第6部分36が接続されている。
【0060】
各第6部分36は、第1方向D1に進むに従い外径が連続的に小さくなる部分として設けられており、外筒5を患者100の体内に挿入し易くされている。各第6部分36の内周面は、対応する第5部分35の内周面と滑らかに連続している。各第6部分36には、挟持部41が設けられている。
【0061】
図5(a)及び図5(b)に示すように、一対の第6部分36,36に、一対の挟持部41が設けられている。一対の挟持部41は、内筒4の一対の保持部18,18を弾性的に挟持するために設けられている。各挟持部41は、対応する第6部分36の先端側の一部に形成されており、外筒5の先端に開放されている。各挟持部41の内周面は、第6部分36の内周面を窪ませることで形成されている。一対の挟持部41,41における内径D13は、内筒4の一対の保持部18,18の外径と概ね同じである。一対の挟持部41,41は、第1方向D1に沿って外筒本体30から遠ざかるに従い、中心軸線L2に向かって互いに近接しながら延びるように設けられている。
【0062】
より具体的には、一対の第2側壁38,39は、それぞれ、第1方向D1に沿って外筒本体30から遠ざかるに従い、中心軸線L2に向かって互いに近接しながら(寄せられながら)延びるように設けられている。本実施形態では、一対の第2側壁38,39は、外筒本体30に対する曲げ加工と、焼きなまし処理とが施されることにより、このような傾斜状に形成されている。中心軸線L2に対する一方の第2側壁38の傾斜角度と、中心軸線L2に対する他方の第2側壁39の傾斜角度とは、互いに同じとされている。例えば、各第2側壁38,39の傾斜角度は、それぞれ、中心軸線L2に対する第4部分34の外周面の傾斜角度である。
【0063】
上記の構成により、第2スリット40の幅W1(中心軸線L2を通る切断面におけるスリットの幅)は、一対の第4部分34,34の間において、第1方向D1に進むに従い狭くなり、また、一対の第5部分35,35の間において、第1方向D1に進むに従い狭くなっている。また、第2スリット40の幅W1は、一対の第6部分36,36の間において、挟持部41が設けられていない部分では、第1方向D1に進むに従い狭くなっている。また、第1方向D1に進むに従い、第2スリット40の幅W1は、一対の挟持部41,41の基端部間で、一度広くなり、再び、第1方向D1に進むに従い連続的に狭くなっている。尚、軸方向S1における第2スリット40の長さは、約70mmである。また、図4(a)に示す側面視において、第2スリット40の幅W2の最大値は、約9mm程度である。第2スリット40の幅W2は、少なくとも第5部分35及び第6部分36の間において、ロッド3を挿通可能な大きさとされている。
【0064】
図6(a)及び図6(b)は、内筒4の一対の挟持部41,41が脊椎アンカー2の頭部2aを挟持する力について説明するための模式図である。図6(a)に示すように、一対の第2側壁38’,39’が中心軸線L2側に近接するように寄せられていない点のみが外筒5と異なる構成の外筒5’を考える。この外筒5’の一対の挟持部41’,41’によって、脊椎アンカー2を保持している内筒4の一対の保持部18,18を挟持した場合、内筒4の一対の保持部18,18は、所定の保持力F1’で脊椎アンカー2の頭部2aを保持する。保持力F1’は、例えば、約3200Nである。尚、保持力F1’と同じ力を力F1’とは反対向きに一対の第2側壁38’,39’に作用させることで、一対の第2側壁38’、39’間の間隔が開いて、脊椎アンカー2との保持が解除される。
【0065】
一方で、図6(b)に示すように、外筒5の一対の挟持部41,41によって、一対の保持部18,18を挟持している場合、内筒4の一対の保持部18,18は、所定の保持力F1で脊椎アンカー2の頭部2aを保持することができる。例えば、各第2側壁38,39の先端部の一対の挟持部41,41の内周面が、中心軸線L2と平行な平行状態から中心軸線L2側に0.5mm変位するように各第2側壁38,39を曲げ加工した場合、すなわち、一対の第2側壁38,39の先端部が1mm近づくように曲げ加工された場合、保持力F1は、保持力F1’の約2倍の約6400Nとなる。尚、保持力F1の定義は、保持力F1’の定義と同様である。
【0066】
また、各第2側壁38,39の先端部の一対の挟持部41,41の内周面が、中心軸線L2と平行な状態から中心軸線L2側に1.0mm変位するように各第2側壁38,39を曲げ加工した場合、すなわち、一対の第2側壁38,39の先端部が2mm近づくように曲げ加工された場合、保持力F1は、保持力F1’の約3倍の約9600Nとなる。
【0067】
また、各第2側壁38,39の先端部の一対の挟持部41,41の内周面が、中心軸線L2と平行な状態から中心軸線L2側に1.5mm変位するように各第2側壁38,39を曲げ加工した場合、すなわち、一対の第2側壁38,39の先端部が3mm近づくように曲げ加工された場合、保持力は、保持力F1’の約4倍の約12800Nとなる。
【0068】
次に、図1に示す操作部材6について説明する。操作部材6は、内筒4の径方向内側の空間を挿通可能に、且つ、内筒4に係合することで、内筒4を外筒5に対して変位可能となるように構成されている。操作部材6は、内筒4と同様の金属材料を用いて形成されている。操作部材6は、把持部51と、軸部52と、を有している。
【0069】
把持部51は、術者が把持するために設けられている。把持部51は、例えば、細長い円環状に形成されている。把持部51から直線状に、軸部52が延びている。軸部52は、丸棒状に形成されている。軸部52の外径は、外筒5の外筒本体30の内径よりも小さい。軸部52の全長は、内筒4の全長よりも長く、また、外筒5の全長よりも長い。軸部52の先端には、雄ねじ部52aが形成されている。雄ねじ部52aは、内筒本体10に形成された雌ねじ部10aに螺合可能である。
【0070】
次に、手術器具1を用いた手術動作について説明する。図7(a)に示すように、手術器具1を取扱う際には、まず、内筒4と外筒5とを嵌め合わせる。また、操作部材6の雄ねじ部52aを、内筒4の雌ねじ部10aに螺合する。そして、内筒4を、外筒5に対して第1方向D1側へ突出させた状態とする。この状態で、脊椎アンカー2を内筒4に保持させる。
【0071】
具体的には、図7(b)に示すように、脊椎アンカー2の頭部2aを、内筒4の一対の第1側壁12,13の保持部18,18間に配置させ、これら一対の保持部18,18によって弾性的に挟持させる。これにより、脊椎アンカー2の孔部2d,2dは、一対の保持部18,18の対応する凸部19,19に嵌合する。また、脊椎アンカー2の頭部2aは、ストッパ16によって受けられ、第1方向D1とは反対方向D3への移動が規制される。
【0072】
次に、図8に示すように、術者が操作部材6を第1方向D1とは反対方向D3に引くことにより、内筒4を、外筒5に対して反対方向D3に変位させる。これにより、内筒4の一対の保持部18,18は、外筒5の一対の挟持部41,41によって弾性的に挟持され、脊椎アンカー2の頭部2aとの結合力が高められる。次に、操作部材6を内筒4に対して回転させることにより、図9に示すように、操作部材6を内筒4から取り外し、ユニット7の状態にする。
【0073】
そして、図10に示すように、患者100の脊椎101の椎骨102と、脊椎アンカー2が結合されたユニット7とを向かい合わせる。
【0074】
尚、この場合において、患者100の皮膚104のうち、椎骨102と対向する部分は、予め切開されている。そして、椎骨102には、下孔105が形成されており、この下孔105に繋がるワイヤー106が通されている。同様に、患者100の皮膚104のうち、椎骨102と隣接する椎骨103に対向する部分は、予め切開されている。そして、椎骨103には、下孔107が形成されており、この下孔107に繋がるワイヤー108が通されている。
【0075】
術者は、ワイヤー106に、脊椎アンカー2の孔部(図示せず)と、ユニット7とを挿通する。そして、図11に示すように、ワイヤー106に沿って、脊椎アンカー2と、ユニット7の先端側の一部とを変位させ、患者100の皮膚104の孔部を通して、患者100の体内に挿入する。そして、下孔106(図10参照)に、脊椎アンカー2の雄ねじ部2bをねじ込む。
【0076】
次いで、図12に示すように、脊椎アンカー2が結合された別のユニット7を用意し、患者100の脊椎101の所定の椎骨103と、当該ユニット7とを向かい合わせる。
【0077】
術者は、ワイヤー108に、脊椎アンカー2の孔部(図示せず)と、ユニット7とを挿通する。そして、図13に示すように、ワイヤー108に沿って脊椎アンカー2と、ユニット7の先端側の一部とを変位させ、患者100の皮膚104の孔部を通して、患者100の体内に挿入する。そして、下孔107(図10参照)に、脊椎アンカー2の雄ねじ部2bをねじ込む。
【0078】
次に、図14に示すように、ロッド3を用意する。そして、ロッド3を、患者100に対して斜めに傾けた状態で第1方向D1側に変位する。これにより、ロッド3を、椎骨102に取り付けられた一方のユニット7のスリット20,40に挿入する。そして、ロッド3が患者100の体内に挿入された後に、図15に示すように、ロッド3を、第2方向D2側に向けて変位させ、ロッド3を、椎骨103に固定されたユニット7のスリット20,40にも挿通する。
【0079】
これにより、ロッド3は、脊椎アンカー2の頭部2aの凹部2c(図15では図示せず)に嵌め込まれる。次いで、固定ナット42,42を、器具(図15では図示しない)で保持し、各ユニット7の内側を挿通させて、対応する脊椎アンカー2の頭部2aの凹部2cの雌ねじ部にねじ込む。これにより、ロッド3は、各脊椎アンカー2に固定される。
【0080】
次に、図16に示すように、内筒4,4の雌ねじ部10a,10aのそれぞれに、操作部材6,6の雄ねじ部52a,52aを螺合させる。そして、術者は、操作部材6を介して内筒4を保持した状態で、外筒5を把持し反対方向D3に引き上げる。これにより、外筒5の一対の挟持部41,41による、内筒4と脊椎アンカー2との保持力の向上が解除される。その結果、内筒4を脊椎アンカー2から小さい力で取り外すことができる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態の手術器具1によると、外筒5の一対の挟持部41,41は、外筒本体30から遠ざかるに従い中心軸線L2に向かって互いに近接しながら延びるように設けられている。これにより、外筒5の一対の挟持部41,41によって、内筒4の一対の保持部18,18を強力に挟持することができる。このため、一対の保持部18,18と、当該一対の保持部18,18に保持された脊椎アンカー2との結合力を、格段に大きくすることができる。したがって、脊椎アンカー2を保持した内筒4と、外筒5との結合体であるユニット7の先端側部分を患者100の体内に挿入しても、脊椎アンカー2が一対の保持部18,18から不用意に外れることを確実に抑制できる。また、内筒4および外筒5には、それぞれ、ロッド3を挿通可能なスリット20,40が形成されている。これにより、術者は、ロッド3を、スリット20,40を通して脊椎アンカー2まで容易に運ぶことができる。より具体的には、まず、ロッド3を、スリット20,40を通るようにして内筒4の軸方向S1と平行な第1方向D1側へ変位させることで、患者100の体内に挿入する。さらに、ロッド3を、スリット20,40に案内された状態で、内筒4の軸方向S1と直交する第2方向D2側へ変位させることができる。これにより、ロッド3を複数の脊椎アンカー2,2に容易に結合させることができる。
【0082】
従って、手術器具1によると、脊椎アンカー2が不用意に外れることを抑制でき、且つ、ロッド3を容易に脊椎アンカー2に取り付けることができる。
【0083】
また、手術器具1によると、内筒4による脊椎アンカー2の保持力を高めるために、外筒5という1つの部品を用いればよく、部品点数を少なくできる。
【0084】
また、手術器具1によると、一対の第2側壁38,39は、中心軸線L2に対する傾きが互いに同じである。これにより、一対の挟持部41,41が、中心軸線L2を中心とした対称な形状に形成されている。このため、一方の挟持部41が一方の保持部18に付与する力と、他方の挟持部41が他方の保持部18に付与する力とを、より均等にすることができる。その結果、一対の保持部18,18は、脊椎アンカー2を安定した姿勢で保持することができる。したがって、一対の保持部18,18に対する脊椎アンカー2の向きが不用意に変化することを、より確実に抑制することができる。
【0085】
また、手術器具1によると、外筒5の一対の第2側壁38,39は、外筒本体30に対する曲げ加工と、焼きなまし処理とが施されることで形成されている。これにより、一対の第2側壁38,39、特に、一対の第2側壁38,39と外筒本体30と接続部分について、曲げ加工の際の加工硬化による内部歪みを除去することができる。これにより、外筒の耐久性を高くすることができる。
【0086】
また、手術器具1によると、各保持部18は、脊椎アンカー2に形成された孔部2dに嵌合可能な凸部19を含む。これにより、一対の保持部18,18に形成された一対の凸部19,19によって、脊椎アンカー2を保持することができる。このため、脊椎アンカー2を保持した一対の保持部18,18を一対の挟持部41,41で挟持する作業の際に、一対の保持部18,18から脊椎アンカー2が外れてしまうことを抑制できる。したがって、術者は、手術作業を行い易い。
【0087】
また、手術器具1によると、各第1側壁12,13は、ストッパ16を含む。これにより、脊椎アンカー2を椎骨102,103に固定する作業において、脊椎アンカー2が椎骨102,103の表面に接触した場合に、脊椎アンカー2が内筒4のストッパ16に受けられてそれ以上反対方向D3側(内筒本体10側)に変位することを抑制でき、脊椎アンカー2の不用意な変位をより確実に抑制できる。
【0088】
また、手術器具1によると、操作部材6を用いることにより、外筒5に対する内筒4の変位操作を、より容易に行うことができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0090】
(1)前述の実施形態では、一対の保持部18,18は、対応する第1側壁12,13自体によって形成される構成を説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、図17に示すように、一対の保持部18A,18Aを、第1側壁12,13から突出する弾性片部によって形成してもよい。一対の保持部18A,18Aは、一対の第1側壁12,13から、中心軸線L1に向けて延設され、脊椎アンカー2を弾性的に保持可能である。一対の保持部18A,18Aは、第1側壁12,13と同一材料でもよいし、別材料を用いて形成されてもよい。尚、以下では、上記実施の形態と異なる点について主に説明し、同様の構成には図に同一の符号を付して説明を省略する。
【0091】
このように、一対の保持部18A,18Aは、対応する第1側壁12,13から延設され、脊椎アンカー2を弾性的に保持可能な弾性片部を含む。これにより、一対の保持部18A,18Aは、一対の挟持部41,41に挟持されていない状態において、脊椎アンカー2を弾性的に保持することができる。このため、脊椎アンカー2を保持した一対の保持部18A,18Aを、一対の挟持部41,41で挟持するまでの間に、一対の保持部18A,18Aから脊椎アンカー2が外れてしまうことを抑制できる。したがって、術者は、手術作業を行い易い。
【0092】
(2)前述の実施形態では、操作部材6は、内筒4に直接結合する形態を例にとって説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、図18に示すように、操作部材6Bの雄ねじ部52aは、一対の保持部18,18に保持された脊椎アンカー2を介して、内筒4に係合してもよい。この場合、雄ねじ部52aは、脊椎アンカー2の頭部2aの凹部2cの内周の雌ねじ部2eに螺合する。
【0093】
この場合、内筒4の一対の保持部18,18に保持された脊椎アンカー2に操作部材6Bを係合し、内筒4を、外筒5の一対の第2側壁38,39側から外筒本体30側へ変位させることで、一対の保持部18,18を一対の挟持部41,41間に配置する場合において、内筒4に対する脊椎アンカー2の変位を、ストッパ16で規制することができる。これにより、脊椎アンカー2が内筒4の一対の保持部18,18から不用意に外れてしまうことを、より確実に抑制できる。
【0094】
また、この場合、内筒4の一対の保持部18,18は、脊椎アンカー2を保持する機能と、操作部材6Bに係合する機能と、を兼ねることができる。これにより、内筒4に、操作部材6Bのための専用の係合部を設ける必要が無く、内筒4の構成を、より簡素にできる。
【0095】
(3)また、図19(a)及び図19(b)に示すように、内筒4と外筒5との軸方向S1の相対位置を規定するための位置決め機構55を更に備えてもよい。位置決め機構55は、外筒5の外筒本体30に形成され軸方向S1に延びる長孔部56と、内筒本体10の外周面から突出し長孔部56に挿通された突出部57とを含む。内筒4に対する外筒5の変位とともに、突出部57は、長孔部56内を軸方向S1に変位する。そして、突出部57が長孔部56の縁部に接触することで、内筒4に対する外筒5の軸方向S1の変位が規制される。
【0096】
これにより、一対の挟持部41,41が一対の保持部18,18を挟持している状態と、この挟持が解除された状態とを、位置決め機構55によって確実に切り替えることができる。
【0097】
(4)上記の実施形態で説明した形態に加えて、適宜、内筒4及び外筒5に、軽量化のための孔部を形成してもよい。これにより、ユニット7の取り扱いを、より容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、脊椎の椎骨同士を固定する手術等において用いられる、脊椎固定用手術器具として、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 脊椎固定用手術器具
2 脊椎アンカー
3 ロッド
4 内筒
5 外筒
10 内筒本体
12,13 第1側壁
18 保持部
20,40 第1スリット
30 外筒本体
38,39 第2側壁
41 挟持部
100 患者
101 脊椎
L1 中心軸線
S1 軸方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎の椎骨同士を固定する手術等において用いられる、脊椎固定用手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎を手術する脊椎外科手術において、最小侵襲性の手術器具を用いる場合がある(例えば、特許文献1参照)。手術器具として特許文献1に記載されている経皮的アクセス装置は、概ね細長い円筒状に形成されており、内部に内腔を有している。このアクセス装置の先端部は、アンカーに結合される。より具体的には、アクセス装置の先端部には、スナップ式の結合部等、アンカーとの結合要素が設けられている。アンカーは、アクセス装置の先端部に取り付けられた状態で、患者の脊椎の椎骨にねじこまれる。
【0003】
複数の椎骨のそれぞれにアンカーが固定された後、アンカー同士が、棒状の脊椎固定要素によって結合される。具体的には、特許文献1に記載の構成では、脊椎固定要素は、アクセス装置内に挿入され、アクセス装置と平行な第1の方向へ変位される。脊椎固定要素の一端が患者の皮下に到達すると、脊椎固定要素は、第1の方向とは異なる第2の方向へ変位し、アクセス装置に形成された開口部を通して、アクセス装置の外側へ突出する。そして、脊椎固定要素は、隣接するアクセス装置の開口部に挿入され、患者の体内において、2つのアンカーに結合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−513739号公報([0016]、[0021]、[0035]〜[0039])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のアクセス装置は、患者の背部を切開して形成された切開部を通して、患者の体内に挿入される。最小侵襲性の手術では、この切開部の長さは、アクセス装置の直径と同程度で短く、患者の体内に挿入されたアクセス装置の先端部は、術者には直接目視することができない。このため、アクセス装置を皮下の椎骨にまで挿入する際に、アンカーが椎骨の設置位置と異なる位置等に強く接触し、その結果、アンカーがアクセス装置から外れてしまう虞がある。また、脊椎固定要素をアンカーに装着する際、脊椎固定要素を直接目視することができないので、脊椎固定要素を、アンカーに強く押し当ててしまう場合がある。また、椎骨同士の固定力を高めるために、隣り合うアンカー間の距離を短くすべく、隣り合うアクセス装置同士を強い力で近接させ、この状態で、近接したアンカー同士を脊椎固定要素によって繋ぐ場合がある。これらの場合、アクセス装置とアンカーとの結合部分に大きな力が作用し、その結果、アンカーがアクセス装置から外れる虞がある。
【0006】
特許文献1に記載の構成では、アクセス装置とアンカーとは、スナップ式の結合構造等を用いて結合力が高くなるようにされており、一見、上記の外れ現象を抑制できるように思われる。しかしながら、特許文献1に記載の構成では、アクセス装置の先端は、二股状に形成されており、剛性が低い。このため、アクセス装置の先端部においては、アンカーを介して外力を受けると、小さい力でも先端部間の間隔が拡がってしまう。このため、アクセス装置の先端部に保持されたアンカーは、皮下において、アクセス装置から外れやすい。脊椎固定要素をアンカーに結合し終える前にアンカーからアクセス装置が外れてしまうと、脊椎固定要素を用いた椎骨同士の固定が困難になる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、椎骨に固定されるアンカーが不用意に外れることを抑制することができ、且つ、脊椎固定用のロッドを容易にアンカーに取り付けることができる、脊椎固定用手術器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1発明に係る脊椎固定用手術器具は、内筒と、前記内筒と嵌合可能な外筒と、を備え、前記内筒は、内筒本体と、当該内筒本体から前記内筒の軸方向に沿って延び、互いの間にロッドを挿通可能なスリットを形成する一対の第1側壁と、患者の脊椎に固定され前記ロッドと結合される脊椎アンカーを保持するために一対の前記第1側壁の先端に形成された一対の保持部と、を含み、前記外筒は、外筒本体と、当該外筒本体から前記外筒の軸方向に沿って延び、互いの間に前記ロッドを挿通可能なスリットを形成する一対の第2側壁と、を含み、一対の前記第2側壁は、前記外筒本体から遠ざかるに従い前記外筒の中心軸線に向かって互いに近接しながら延びるように設けられ、かつ、一対の前記保持部を挟持可能な一対の挟持部を含むことを特徴とする。
【0009】
この発明によると、外筒の一対の挟持部によって、内筒の一対の保持部を強力に挟持することができる。これにより、一対の保持部と、当該一対の保持部に保持された脊椎アンカーとの結合力を、格段に大きくすることができる。したがって、脊椎アンカーを保持した内筒と外筒との結合体であるユニットの先端側部分を患者の体内に挿入しても、脊椎アンカーが一対の保持部から不用意に外れることを確実に抑制できる。また、内筒および外筒には、それぞれ、ロッドを挿通可能なスリットが形成されている。これにより、術者は、ロッドを、スリットを通して脊椎アンカーまで容易に運ぶことができる。より具体的には、まず、ロッドを、スリットを通るようにして内筒の軸方向と平行な第1方向側へ変位させることで、患者の体内に挿入する。さらに、ロッドを、スリットに案内された状態で、内筒の軸方向と直交する第2方向側へ変位させることができる。これにより、ロッドを、互いに隣接する複数の脊椎アンカーに容易に結合させることができる。
【0010】
従って、本発明によると、脊椎アンカーが不用意に外れることを抑制でき、且つ、ロッドを容易に脊椎アンカーに取り付けることができる、脊椎固定用手術器具を提供することができる。
【0011】
第2発明に係る脊椎固定用手術器具は、第1発明の脊椎固定用手術器具において、一対の前記第2側壁は、前記外筒の中心軸線に対する傾きが互いに同じであることを特徴とする。
【0012】
この発明によると、一対の挟持部が、外筒の中心軸線を中心とした対称な形状に形成される。これにより、一方の挟持部が一方の保持部に付与する力と、他方の挟持部が他方の保持部に付与する力とを、より均等にすることができる。その結果、一対の保持部は、脊椎アンカーを安定した姿勢で保持することができる。したがって、一対の保持部に対する脊椎アンカーの向きが不用意に変化することを、より確実に抑制することができる。
【0013】
第3発明に係る脊椎固定用手術器具は、第1発明又は第2発明の脊椎固定用手術器具において、前記外筒は、金属材料を用いて形成されており、一対の前記第2側壁は、前記外筒本体に対する曲げ加工と、焼きなまし処理とが施されることで形成されていることを特徴とする。
【0014】
この発明によると、一対の第2側壁、特に、一対の第2側壁と外筒本体と接続部分について、曲げ加工の際の加工硬化による内部歪みを除去することができる。これにより、外筒の耐久性を高くすることができる。
【0015】
第4発明に係る脊椎固定用手術器具は、第1発明乃至第3発明の何れかの脊椎固定用手術器具において、各前記保持部は、前記第1側壁から延設され、前記脊椎アンカーを弾性的に保持可能な弾性片部を含むことを特徴とする。
【0016】
この発明によると、一対の保持部は、一対の挟持部に挟持されていない状態において、脊椎アンカーを弾性的に保持することができる。このため、脊椎アンカーを保持した一対の保持部を、一対の挟持部で挟持するまでの間において、一対の保持部から脊椎アンカーが外れてしまうことを抑制できる。したがって、術者は、手術作業を行い易い。
【0017】
第5発明に係る脊椎固定用手術器具は、第1発明乃至第4発明の何れかの脊椎固定用手術器具において、各前記保持部は、前記脊椎アンカーに形成された孔部に嵌合可能な凸部を含むことを特徴とする。
【0018】
この発明によると、一対の保持部に形成された一対の凸部によって、脊椎アンカーを保持することができる。このため、脊椎アンカーを保持した一対の保持部を一対の挟持部で挟持する作業の際に、一対の保持部から脊椎アンカーが外れてしまうことを抑制できる。したがって、術者は、手術作業を行い易い。特に、一対の凸部が、一対の保持部の弾性片部に取り付けられている場合には、脊椎アンカーを弾性的に挟持することができるので、一対の保持部からの脊椎アンカーの脱落を、より確実に抑制することができる。
【0019】
第6発明に係る脊椎固定用手術器具は、第1発明乃至第5発明の何れかの脊椎固定用手術器具において、各前記第1側壁は、前記保持部と前記内筒本体との間に配置され前記脊椎アンカーが前記内筒本体側へ変位することを規制するストッパを含むことを特徴とする。
【0020】
この発明によると、例えば、脊椎アンカーを椎骨に固定する作業において、脊椎アンカーが椎骨の表面に接触した場合に、脊椎アンカーが内筒のストッパに受けられてそれ以上内筒本体側に変位することを抑制でき、脊椎アンカーの不用意な変位をより確実に抑制できる。また、例えば、内筒の一対の保持部に保持された脊椎アンカーに操作部材を係合し、内筒を、外筒の一対の第2側壁側から外筒本体側へ変位させることで、一対の保持部を一対の挟持部間に配置する場合において、内筒に対する脊椎アンカーの変位を、ストッパで規制することができる。これにより、脊椎アンカーが内筒の一対の保持部から不用意に外れてしまうことを、より確実に抑制できる。
【0021】
第7発明に係る脊椎固定用手術器具は、第1発明乃至第6発明の何れかの脊椎固定用手術器具において、前記内筒を挿通可能に構成され、前記内筒に係合し前記内筒を前記外筒に対して変位させるための操作部材をさらに備えることを特徴とする。
【0022】
この発明によると、操作部材を用いることにより、外筒に対する内筒の変位操作を、より容易に行うことができる。
【0023】
第8発明に係る脊椎固定用手術器具は、第7発明の脊椎固定用手術器具において、前記操作部材は、一対の前記保持部に保持された前記脊椎アンカーを介して前記内筒に係合することを特徴とする。
【0024】
この発明によると、内筒の一対の保持部は、脊椎アンカーを保持する機能と、操作部材に係合する機能と、を兼ねることができる。これにより、内筒に、操作部材のための専用の係合部を設ける必要が無く、内筒の構成を、より簡素にできる。
【0025】
第9発明に係る脊椎固定用手術器具は、第1発明乃至第8発明の何れかの脊椎固定用手術器具において、前記内筒と前記外筒との軸方向の相対位置を規定するための位置決め機構をさらに備えることを特徴とする。
【0026】
この発明によると、一対の挟持部が一対の保持部を挟持している状態と、この挟持が解除された状態とを、位置決め機構によって確実に切り替えることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、脊椎アンカーが不用意に外れることを抑制でき、且つ、ロッドを容易に脊椎アンカーに容易に取り付けることができる、脊椎固定用手術器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態に係る脊椎固定用手術器具と、脊椎アンカーと、患者の脊椎等を示す側面図である。
【図2】(a)は、内筒の側面図であり、(b)は、図2(a)の矢印IIb方向から見た、内筒の側面図である。
【図3】(a)は、図2(b)のIIIa−IIIa線に沿う断面図であり、(b)は、図3(a)の主要部の拡大図である。
【図4】(a)は、外筒の側面図であり、図4(b)は、図4(a)の矢印IVb方向から見た、外筒の側面図である。
【図5】(a)は、図4(b)のVa−Va線に沿う断面図であり、(b)は、図5(a)の主要部の拡大図であって、内筒の一部を想像線で示している。
【図6】(a)及び(b)は、それぞれ、内筒の一対の挟持部が脊椎アンカーの頭部を挟持する力について説明するための模式図である。
【図7】(a)及び(b)は、それぞれ、脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図8】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図9】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図10】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図11】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図12】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図13】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図14】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図15】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図16】脊椎の手術を行う場合の手術器具の動作を説明するための主要部の図である。
【図17】本発明の変形例について説明するための主要部の模式図である。
【図18】(a)及び(b)は、それぞれ、本発明の変形例について説明するための主要部の模式図である。
【図19】(a)及び(b)は、それぞれ、本発明の別の変形例について説明するための主要部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、患者の脊椎の椎骨同士を固定する手術において用いられる、脊椎固定用手術器具として広く適用することができる。
【0030】
図1は、本発明の一実施の形態に係る脊椎固定用手術器具1と、脊椎アンカー2と、患者100の脊椎101等を示す側面図である。図1に示すように、脊椎固定用手術器具1は、例えば、椎間板ヘルニア等、脊椎101に関連する疾患を有する患者に対して、変性等を生じた椎間板に代えて人工骨等の代替骨を設置する手術の際に用いられる。この手術では、脊椎固定用手術器具1は、病変した椎間板に代えて、人工骨等が設置された箇所に隣接する、椎骨102,103同士を固定するために用いられる。このように、椎骨102,103同士が結合されることにより、患者100の脊椎101の姿勢を安定させることができる。
【0031】
より具体的には、脊椎固定用手術器具1は、脊椎アンカー2と、ロッド3とを患者100の体内に設置するために用いられる。脊椎アンカー2は、頭部2aと、雄ねじ部2bと、を有している。頭部2aは、小片状に形成されており、略円筒状の外周面を有している。また、頭部2aには、当該頭部2aの一側面から他側面側に向かう、凹部2cが設けられている。凹部2cは、ロッド3が挿通される部分として設けられており、内周に、雌ねじ部(図1では図示せず)が形成されている。雄ねじ部2bは、頭部2aの他側面から延びる細長い部材である。
【0032】
また、頭部2a及び雄ねじ部2bには、脊椎アンカー2の軸方向に貫通する貫通孔(図示せず)が形成されており、ガイド用のワイヤー(図1では図示せず)を挿通可能である。ロッド3は、2つの脊椎アンカー2,2の凹部2c,2c同士を結合するために設けられた、棒状部材である。
【0033】
脊椎固定用手術器具1(以下、単に手術器具1ともいう)は、内筒4と、外筒5と、操作部材6と、を備えている。
【0034】
内筒4および外筒5は、互いに嵌合されることにより、ユニット7を形成している。ユニット7は、筒状に形成されている。ユニット7の軸方向S1、径方向R1及び周方向C1は、それぞれ、内筒4の軸方向、径方向及び周方向であり、外筒5の軸方向、径方向及び周方向でもある。
【0035】
内筒4は、脊椎アンカー2を保持する保持部材として設けられている。内筒4は、脊椎アンカー2を保持する保持力を、外筒5によって高めることが可能に構成されている。内筒4は、外筒5と嵌合可能である。内筒4の直径は、例えば、10mm〜15mm程度であり、全長は、100mm〜150mm程度である。
【0036】
図2(a)は、内筒4の側面図であり、図2(b)は、図2(a)の矢印IIb方向から見た、内筒4の側面図である。図3(a)は、図2(b)のIIIa−IIIa線に沿う断面図であり、図3(b)は、図3(a)の主要部の拡大図である。
【0037】
図2(a)、図2(b)および図3(a)に示すように、内筒4は、一部が円筒状に形成され、一部が二股状に形成された細長い部材であり、中心軸線L1を有している。内筒4は、内筒本体10と、第1二股状部11と、を含んでいる。
【0038】
内筒本体10は、円筒状の部分として設けられている。内筒本体10における内径及び外径はそれぞれ一定である。内筒本体10(内筒4)は、例えばSUS630等の、医療用途に適し、且つ、剛性に優れた金属材料を用いて形成されている。内筒本体10は、内筒4のうち、基端側の略半部を構成している。内筒本体10の基端部の内周面には、雌ねじ部10aが形成されている。雌ねじ部10aは、操作部材6(図1参照)と螺合するために設けられている。軸方向S1における雌ねじ部10aの長さは、例えば、5mm程度である。内筒4の先端部に、第1二股状部11が配置されている。
【0039】
第1二股状部11は、脊椎アンカー2を弾性的に保持するために設けられている。第1二股状部11は、中心軸線L1を挟んで配置された一対の弾性片部としての一対の第1側壁12,13を有している。各第1側壁12,13は、内筒本体10の先端部から、軸方向S1に沿って延びており、内筒本体10に片持ち支持されている。一対の第1側壁12,13は、軸方向S1と直交する断面において、円弧状をなしている。各第1側壁12,13は、外力が作用していない状態としての自由状態において、互いに平行に延びている。
【0040】
図2(a)に示すように、一対の第1側壁12,13の間に中心軸線L1が配置されるように内筒4を見たとき、一対の第1側壁12,13は、中心軸線L1を中心に対称な形状を有している。また、図2(b)に示すように、一方の第1側壁12の外周面側から内筒4を見たとき、一対の第1側壁12,13は、互いの位置が重なるように配置される。図2(a)及び図2(b)に示すように、第1側壁12,13は、それぞれ、細幅部14と、太幅部15と、を有している。
【0041】
各細幅部14は、周方向C1における長さが、周方向C1における太幅部15の長さよりも小さい部分として設けられている。各細幅部14の厚み(径方向R1の長さ)は、内筒本体10の厚みと同じとされている。各細幅部14の外周面は、内筒本体10の外周面と滑らかに連続しており、各細幅部14の内周面は、内筒本体10の内周面と滑らかに連続している。各細幅部14の基端部は、内筒本体10の先端部に接続されており、軸方向S1に沿って内筒本体10から遠ざかるに従い、周方向C1の幅が狭くなっている。各細幅部14の中間部は、横幅が一定であり、軸方向S1に沿って延びている。各細幅部14の先端部は、内筒本体10から遠ざかるに従い幅広となっている。各細幅部14の先端部に、太幅部15が接続されている。
【0042】
各太幅部15は、図2(b)に示すように、一対の第1側壁12,13が重なり合うように見たときに、径方向R1における長さが内筒本体10の直径と略同じである部分として設けられている。また、各太幅部15は、第1側壁12,13の先端部として設けられている。図2(a),図2(b)及び図3(b)に示すように、各太幅部15の厚みT1(径方向R1の長さ)は、内筒本体10の厚みT2よりも大きくされている。一対の太幅部15,15の内径D11は、細幅部14の内周面に隣接している部分において、内筒本体10の内径と同じであり、先端側において、内筒本体10の内径よりも大きい。これにより、各太幅部15の内周面には、径方向R1に延びるストッパ16が形成されている。ストッパ16は、脊椎アンカー2の頭部2aを受けるために設けられている。一対の太幅部15の外径は、内筒本体10の外径よりも大きい。各太幅部15の外周面と、対応する細幅部14の外周面との間には、段部17が形成されている。軸方向S1に関して、各太幅部15の長さは、各細幅部14の長さよりも短い。
【0043】
一対の太幅部15,15は、一対の保持部18,18を含んでいる。一対の保持部18,18は、脊椎アンカー2の頭部2aを保持するために設けられている。各保持部18は、当該保持部18が形成されている太幅部15のうち、ストッパ16に対して太幅部15の先端側に位置する部分によって形成されている。上記の構成により、一対の保持部18,18は、脊椎アンカー2の頭部2aの外周面を保持することが可能である。なお、一対の保持部18,18における一対の太幅部15,15の内径は、脊椎アンカー2の頭部2aの外径と略同じに設定されている。各保持部18の内周面には、凸部19が形成されている。
【0044】
凸部19は、脊椎アンカー2の頭部2aの外周面に形成された孔部2dに嵌合するために設けられている。脊椎アンカー2の孔部2dは、脊椎アンカー2の頭部2aの外周面に形成されており、例えば、脊椎アンカー2の頭部2aの周方向に180度離隔して、2つ配置されている。凸部19は、各保持部18の内周面から、径方向R1に沿って中心軸線L1に向かって延びる小片状に形成されている。凸部19,19は、周方向C1に180度離隔して配置されている。本実施形態では、凸部19,19は、一対の第1側壁12,13とは別部材を用いて形成されているけれども、一対の第1側壁12,13と単一の材料を用いて一体に形成されていてもよい。
【0045】
これにより、一対の保持部18,18が脊椎アンカー2の頭部2aを挟持している場合に、一対の凸部19,19は、対応する孔部2d,2dに嵌合する。また、この場合、脊椎アンカー2の頭部2aの一側面は、各ストッパ16によって受けられ、それ以上、軸方向S1に沿って内筒本体10側へ変位することが規制される。すなわち、各ストッパ16は、対応する保持部18と内筒本体10との間に配置されており、脊椎アンカー2が内筒本体10側へ変位することを規制している。
【0046】
上記の構成を有する一対の第1側壁12,13によって、第1スリット20が形成されている。即ち、一対の第1側壁12,13は、互いの間に第1スリット20を形成している。第1スリット20は、ロッド3を挿通可能に構成されている。より具体的には、第1スリット20は、一対の第1側壁12,13の基端部間から、軸方向S1の一方である、第1方向D1に沿って延びている。また、第1スリット20は、一対の第1側壁12,13の先端において、第1方向D1側に開放されており、且つ、第1方向D1と直交する第2方向D2側に開放されている。尚、第2方向D2は、一対の第1側壁12,13が向かい合う方向に対しても直交している。
【0047】
図2(a)に示すように、側面視において、第1スリット20は、一対の第1側壁12,13の基端部においては、第1方向D1に進むに従い幅広となっており、一対の第1側壁12,13の中間部においては、幅が略一定である。また、第1スリット20は、一対の第1側壁12,13の細幅部14,14の先端部側において第1方向D1に進むに従い幅が狭くなっており、太幅部15,15間において、幅が略一定である。第1スリット20の幅は、太幅部15,15間において、最も狭くされているけれども、ロッド3の直径よりは大きい。
【0048】
図1に示すように、上記の構成を有する内筒4は、外筒5に対して着脱可能である。外筒5は、内筒4の先端部を挟持することにより、内筒4と脊椎アンカー2との結合力を増す部材として設けられている。外筒5の外径の最大値は、例えば、20mm程度(本実施形態において、18mm)であり、全長は、100mm〜150mm程度である。
【0049】
図4(a)は、外筒5の側面図であり、図4(b)は、図4(a)の矢印IVb方向から見た、外筒5の側面図である。図5(a)は、図4(b)のVa−Va線に沿う断面図であり、図5(b)は、図5(a)の主要部の拡大図であって、内筒4の一部を想像線で示している。
【0050】
図4(a)、図4(b)および図5(a)に示すように、外筒5は、一部が円筒状に形成され、一部が二股状に形成された細長い部材であり、中心軸線L2を有している。外筒5は、外筒本体30と、第2二股状部37と、を含んでいる。
【0051】
外筒本体30は、円筒状の部分として設けられている。外筒本体30(外筒5)は、SUS630等の、医療用途に適し、且つ、剛性に優れた金属材料を用いて形成されている。本実施形態では、外筒本体30の材料は、内筒本体10の材料と同じである。外筒本体30は、外筒5のうち、基端側の略半部を構成している。
【0052】
外筒本体30は、外径が一定の部分と、外径が変化する部分とを有している。具体的には、外筒本体30は、第1部分31と、第2部分32と、第3部分33と、を有している。第1部分31、第2部分32及び第3部分33は、上記の順に、外筒5の軸方向S1に沿って並んでいる。第1部分31は、外筒本体30の基端部を含んでおり、内径及び外径が略一定の円筒状に形成されている。第1部分31の基端部の外周面には、雄ねじ部31aが形成されている。雄ねじ部31aは、雌ねじ部を有する筒状の部材(図示せず)などを用いて保持可能に構成されている。軸方向S1における雄ねじ部31aの長さは、例えば、25mm程度である。第1部分31の先端部に、第2部分32が配置されている。
【0053】
第2部分32は、軸方向S1の一方である第1方向D1に進むに従い、外径が大きくなる部分として設けられている。第2部分32における外筒5の内径は、第1部分における外筒5の内径と略同じである。軸方向S1において、第2部分32の長さは、第1部分31の長さよりも短い。第2部分32に、第3部分33が連続している。
【0054】
第3部分33は、外筒本体30の先端部として設けられているとともに、第2二股状部37の基礎部分として設けられている。第3部分33は、内径及び外径が略一定の円筒状に形成されている。第3部分33から、第2二股状部37が延びている。
【0055】
第2二股状部37は、内筒4の第1二股状部11を弾性的に保持するために設けられている。第2二股状部37は、中心軸線L2を挟んで配置され一対の弾性片部としての一対の第2側壁38,39を有している。各第2側壁38,39は、軸方向S1に沿って延びており、外筒本体30に片持ち支持されている。各第2二股状部37は、軸方向S1と直交する断面において、円弧状をなしている。一対の第2側壁38,39は、外筒本体30から軸方向S1に沿って延びおり、互いの間に第2スリット40を形成している。第2スリット40は、ロッド3を挿通可能な幅を有している。
【0056】
図4(a)に示すように、一対の第2側壁38,39の間に中心軸線L2が配置されるように外筒5を見たとき、一対の第2側壁38,39は、中心軸線L2を中心に対称な形状を有している。また、図4(b)に示すように、一方の第2側壁38の外周面側から外筒5を見たとき、一対の第2側壁38,39は、互いの位置が重なるように配置されている。
【0057】
図4(a)及び図4(b)に示すように、第2側壁38,39は、それぞれ、第4部分34と、第5部分35と、第6部分36と、を有している。第4部分34と、第5部分35と、第6部分36は、軸方向S1に沿って上記の順に並んでいる。
【0058】
図4(a)及び図5(a)に示すように、各第4部分34は、外径が一定で、且つ、内径が一定の部分として設けられている。また、各第4部分34は、第1方向D1に進むに従い、周方向C1の長さが連続的に大きくなる形状に形成されている。各第4部分34の内周面及び外周面は、それぞれ、第3部分33の内周面及び外周面と連続している。第4部分34には、第5部分35が接続されている。
【0059】
各第5部分35は、第4部分34と同様に、外径が一定で、且つ、内径が一定の部分として設けられている。各第5部分35は、軸方向S1の何れの箇所においても、周方向C1の長さが一定である。各第5部分35の内周面及び外周面は、それぞれ、対応する第4部分34の内周面及び外周面と連続している。第5部分35には、第6部分36が接続されている。
【0060】
各第6部分36は、第1方向D1に進むに従い外径が連続的に小さくなる部分として設けられており、外筒5を患者100の体内に挿入し易くされている。各第6部分36の内周面は、対応する第5部分35の内周面と滑らかに連続している。各第6部分36には、挟持部41が設けられている。
【0061】
図5(a)及び図5(b)に示すように、一対の第6部分36,36に、一対の挟持部41が設けられている。一対の挟持部41は、内筒4の一対の保持部18,18を弾性的に挟持するために設けられている。各挟持部41は、対応する第6部分36の先端側の一部に形成されており、外筒5の先端に開放されている。各挟持部41の内周面は、第6部分36の内周面を窪ませることで形成されている。一対の挟持部41,41における内径D13は、内筒4の一対の保持部18,18の外径と概ね同じである。一対の挟持部41,41は、第1方向D1に沿って外筒本体30から遠ざかるに従い、中心軸線L2に向かって互いに近接しながら延びるように設けられている。
【0062】
より具体的には、一対の第2側壁38,39は、それぞれ、第1方向D1に沿って外筒本体30から遠ざかるに従い、中心軸線L2に向かって互いに近接しながら(寄せられながら)延びるように設けられている。本実施形態では、一対の第2側壁38,39は、外筒本体30に対する曲げ加工と、焼きなまし処理とが施されることにより、このような傾斜状に形成されている。中心軸線L2に対する一方の第2側壁38の傾斜角度と、中心軸線L2に対する他方の第2側壁39の傾斜角度とは、互いに同じとされている。例えば、各第2側壁38,39の傾斜角度は、それぞれ、中心軸線L2に対する第4部分34の外周面の傾斜角度である。
【0063】
上記の構成により、第2スリット40の幅W1(中心軸線L2を通る切断面におけるスリットの幅)は、一対の第4部分34,34の間において、第1方向D1に進むに従い狭くなり、また、一対の第5部分35,35の間において、第1方向D1に進むに従い狭くなっている。また、第2スリット40の幅W1は、一対の第6部分36,36の間において、挟持部41が設けられていない部分では、第1方向D1に進むに従い狭くなっている。また、第1方向D1に進むに従い、第2スリット40の幅W1は、一対の挟持部41,41の基端部間で、一度広くなり、再び、第1方向D1に進むに従い連続的に狭くなっている。尚、軸方向S1における第2スリット40の長さは、約70mmである。また、図4(a)に示す側面視において、第2スリット40の幅W2の最大値は、約9mm程度である。第2スリット40の幅W2は、少なくとも第5部分35及び第6部分36の間において、ロッド3を挿通可能な大きさとされている。
【0064】
図6(a)及び図6(b)は、内筒4の一対の挟持部41,41が脊椎アンカー2の頭部2aを挟持する力について説明するための模式図である。図6(a)に示すように、一対の第2側壁38’,39’が中心軸線L2側に近接するように寄せられていない点のみが外筒5と異なる構成の外筒5’を考える。この外筒5’の一対の挟持部41’,41’によって、脊椎アンカー2を保持している内筒4の一対の保持部18,18を挟持した場合、内筒4の一対の保持部18,18は、所定の保持力F1’で脊椎アンカー2の頭部2aを保持する。保持力F1’は、例えば、約3200Nである。尚、保持力F1’と同じ力を力F1’とは反対向きに一対の第2側壁38’,39’に作用させることで、一対の第2側壁38’、39’間の間隔が開いて、脊椎アンカー2との保持が解除される。
【0065】
一方で、図6(b)に示すように、外筒5の一対の挟持部41,41によって、一対の保持部18,18を挟持している場合、内筒4の一対の保持部18,18は、所定の保持力F1で脊椎アンカー2の頭部2aを保持することができる。例えば、各第2側壁38,39の先端部の一対の挟持部41,41の内周面が、中心軸線L2と平行な平行状態から中心軸線L2側に0.5mm変位するように各第2側壁38,39を曲げ加工した場合、すなわち、一対の第2側壁38,39の先端部が1mm近づくように曲げ加工された場合、保持力F1は、保持力F1’の約2倍の約6400Nとなる。尚、保持力F1の定義は、保持力F1’の定義と同様である。
【0066】
また、各第2側壁38,39の先端部の一対の挟持部41,41の内周面が、中心軸線L2と平行な状態から中心軸線L2側に1.0mm変位するように各第2側壁38,39を曲げ加工した場合、すなわち、一対の第2側壁38,39の先端部が2mm近づくように曲げ加工された場合、保持力F1は、保持力F1’の約3倍の約9600Nとなる。
【0067】
また、各第2側壁38,39の先端部の一対の挟持部41,41の内周面が、中心軸線L2と平行な状態から中心軸線L2側に1.5mm変位するように各第2側壁38,39を曲げ加工した場合、すなわち、一対の第2側壁38,39の先端部が3mm近づくように曲げ加工された場合、保持力は、保持力F1’の約4倍の約12800Nとなる。
【0068】
次に、図1に示す操作部材6について説明する。操作部材6は、内筒4の径方向内側の空間を挿通可能に、且つ、内筒4に係合することで、内筒4を外筒5に対して変位可能となるように構成されている。操作部材6は、内筒4と同様の金属材料を用いて形成されている。操作部材6は、把持部51と、軸部52と、を有している。
【0069】
把持部51は、術者が把持するために設けられている。把持部51は、例えば、細長い円環状に形成されている。把持部51から直線状に、軸部52が延びている。軸部52は、丸棒状に形成されている。軸部52の外径は、外筒5の外筒本体30の内径よりも小さい。軸部52の全長は、内筒4の全長よりも長く、また、外筒5の全長よりも長い。軸部52の先端には、雄ねじ部52aが形成されている。雄ねじ部52aは、内筒本体10に形成された雌ねじ部10aに螺合可能である。
【0070】
次に、手術器具1を用いた手術動作について説明する。図7(a)に示すように、手術器具1を取扱う際には、まず、内筒4と外筒5とを嵌め合わせる。また、操作部材6の雄ねじ部52aを、内筒4の雌ねじ部10aに螺合する。そして、内筒4を、外筒5に対して第1方向D1側へ突出させた状態とする。この状態で、脊椎アンカー2を内筒4に保持させる。
【0071】
具体的には、図7(b)に示すように、脊椎アンカー2の頭部2aを、内筒4の一対の第1側壁12,13の保持部18,18間に配置させ、これら一対の保持部18,18によって弾性的に挟持させる。これにより、脊椎アンカー2の孔部2d,2dは、一対の保持部18,18の対応する凸部19,19に嵌合する。また、脊椎アンカー2の頭部2aは、ストッパ16によって受けられ、第1方向D1とは反対方向D3への移動が規制される。
【0072】
次に、図8に示すように、術者が操作部材6を第1方向D1とは反対方向D3に引くことにより、内筒4を、外筒5に対して反対方向D3に変位させる。これにより、内筒4の一対の保持部18,18は、外筒5の一対の挟持部41,41によって弾性的に挟持され、脊椎アンカー2の頭部2aとの結合力が高められる。次に、操作部材6を内筒4に対して回転させることにより、図9に示すように、操作部材6を内筒4から取り外し、ユニット7の状態にする。
【0073】
そして、図10に示すように、患者100の脊椎101の椎骨102と、脊椎アンカー2が結合されたユニット7とを向かい合わせる。
【0074】
尚、この場合において、患者100の皮膚104のうち、椎骨102と対向する部分は、予め切開されている。そして、椎骨102には、下孔105が形成されており、この下孔105に繋がるワイヤー106が通されている。同様に、患者100の皮膚104のうち、椎骨102と隣接する椎骨103に対向する部分は、予め切開されている。そして、椎骨103には、下孔107が形成されており、この下孔107に繋がるワイヤー108が通されている。
【0075】
術者は、ワイヤー106に、脊椎アンカー2の孔部(図示せず)と、ユニット7とを挿通する。そして、図11に示すように、ワイヤー106に沿って、脊椎アンカー2と、ユニット7の先端側の一部とを変位させ、患者100の皮膚104の孔部を通して、患者100の体内に挿入する。そして、下孔106(図10参照)に、脊椎アンカー2の雄ねじ部2bをねじ込む。
【0076】
次いで、図12に示すように、脊椎アンカー2が結合された別のユニット7を用意し、患者100の脊椎101の所定の椎骨103と、当該ユニット7とを向かい合わせる。
【0077】
術者は、ワイヤー108に、脊椎アンカー2の孔部(図示せず)と、ユニット7とを挿通する。そして、図13に示すように、ワイヤー108に沿って脊椎アンカー2と、ユニット7の先端側の一部とを変位させ、患者100の皮膚104の孔部を通して、患者100の体内に挿入する。そして、下孔107(図10参照)に、脊椎アンカー2の雄ねじ部2bをねじ込む。
【0078】
次に、図14に示すように、ロッド3を用意する。そして、ロッド3を、患者100に対して斜めに傾けた状態で第1方向D1側に変位する。これにより、ロッド3を、椎骨102に取り付けられた一方のユニット7のスリット20,40に挿入する。そして、ロッド3が患者100の体内に挿入された後に、図15に示すように、ロッド3を、第2方向D2側に向けて変位させ、ロッド3を、椎骨103に固定されたユニット7のスリット20,40にも挿通する。
【0079】
これにより、ロッド3は、脊椎アンカー2の頭部2aの凹部2c(図15では図示せず)に嵌め込まれる。次いで、固定ナット42,42を、器具(図15では図示しない)で保持し、各ユニット7の内側を挿通させて、対応する脊椎アンカー2の頭部2aの凹部2cの雌ねじ部にねじ込む。これにより、ロッド3は、各脊椎アンカー2に固定される。
【0080】
次に、図16に示すように、内筒4,4の雌ねじ部10a,10aのそれぞれに、操作部材6,6の雄ねじ部52a,52aを螺合させる。そして、術者は、操作部材6を介して内筒4を保持した状態で、外筒5を把持し反対方向D3に引き上げる。これにより、外筒5の一対の挟持部41,41による、内筒4と脊椎アンカー2との保持力の向上が解除される。その結果、内筒4を脊椎アンカー2から小さい力で取り外すことができる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態の手術器具1によると、外筒5の一対の挟持部41,41は、外筒本体30から遠ざかるに従い中心軸線L2に向かって互いに近接しながら延びるように設けられている。これにより、外筒5の一対の挟持部41,41によって、内筒4の一対の保持部18,18を強力に挟持することができる。このため、一対の保持部18,18と、当該一対の保持部18,18に保持された脊椎アンカー2との結合力を、格段に大きくすることができる。したがって、脊椎アンカー2を保持した内筒4と、外筒5との結合体であるユニット7の先端側部分を患者100の体内に挿入しても、脊椎アンカー2が一対の保持部18,18から不用意に外れることを確実に抑制できる。また、内筒4および外筒5には、それぞれ、ロッド3を挿通可能なスリット20,40が形成されている。これにより、術者は、ロッド3を、スリット20,40を通して脊椎アンカー2まで容易に運ぶことができる。より具体的には、まず、ロッド3を、スリット20,40を通るようにして内筒4の軸方向S1と平行な第1方向D1側へ変位させることで、患者100の体内に挿入する。さらに、ロッド3を、スリット20,40に案内された状態で、内筒4の軸方向S1と直交する第2方向D2側へ変位させることができる。これにより、ロッド3を複数の脊椎アンカー2,2に容易に結合させることができる。
【0082】
従って、手術器具1によると、脊椎アンカー2が不用意に外れることを抑制でき、且つ、ロッド3を容易に脊椎アンカー2に取り付けることができる。
【0083】
また、手術器具1によると、内筒4による脊椎アンカー2の保持力を高めるために、外筒5という1つの部品を用いればよく、部品点数を少なくできる。
【0084】
また、手術器具1によると、一対の第2側壁38,39は、中心軸線L2に対する傾きが互いに同じである。これにより、一対の挟持部41,41が、中心軸線L2を中心とした対称な形状に形成されている。このため、一方の挟持部41が一方の保持部18に付与する力と、他方の挟持部41が他方の保持部18に付与する力とを、より均等にすることができる。その結果、一対の保持部18,18は、脊椎アンカー2を安定した姿勢で保持することができる。したがって、一対の保持部18,18に対する脊椎アンカー2の向きが不用意に変化することを、より確実に抑制することができる。
【0085】
また、手術器具1によると、外筒5の一対の第2側壁38,39は、外筒本体30に対する曲げ加工と、焼きなまし処理とが施されることで形成されている。これにより、一対の第2側壁38,39、特に、一対の第2側壁38,39と外筒本体30と接続部分について、曲げ加工の際の加工硬化による内部歪みを除去することができる。これにより、外筒の耐久性を高くすることができる。
【0086】
また、手術器具1によると、各保持部18は、脊椎アンカー2に形成された孔部2dに嵌合可能な凸部19を含む。これにより、一対の保持部18,18に形成された一対の凸部19,19によって、脊椎アンカー2を保持することができる。このため、脊椎アンカー2を保持した一対の保持部18,18を一対の挟持部41,41で挟持する作業の際に、一対の保持部18,18から脊椎アンカー2が外れてしまうことを抑制できる。したがって、術者は、手術作業を行い易い。
【0087】
また、手術器具1によると、各第1側壁12,13は、ストッパ16を含む。これにより、脊椎アンカー2を椎骨102,103に固定する作業において、脊椎アンカー2が椎骨102,103の表面に接触した場合に、脊椎アンカー2が内筒4のストッパ16に受けられてそれ以上反対方向D3側(内筒本体10側)に変位することを抑制でき、脊椎アンカー2の不用意な変位をより確実に抑制できる。
【0088】
また、手術器具1によると、操作部材6を用いることにより、外筒5に対する内筒4の変位操作を、より容易に行うことができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0090】
(1)前述の実施形態では、一対の保持部18,18は、対応する第1側壁12,13自体によって形成される構成を説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、図17に示すように、一対の保持部18A,18Aを、第1側壁12,13から突出する弾性片部によって形成してもよい。一対の保持部18A,18Aは、一対の第1側壁12,13から、中心軸線L1に向けて延設され、脊椎アンカー2を弾性的に保持可能である。一対の保持部18A,18Aは、第1側壁12,13と同一材料でもよいし、別材料を用いて形成されてもよい。尚、以下では、上記実施の形態と異なる点について主に説明し、同様の構成には図に同一の符号を付して説明を省略する。
【0091】
このように、一対の保持部18A,18Aは、対応する第1側壁12,13から延設され、脊椎アンカー2を弾性的に保持可能な弾性片部を含む。これにより、一対の保持部18A,18Aは、一対の挟持部41,41に挟持されていない状態において、脊椎アンカー2を弾性的に保持することができる。このため、脊椎アンカー2を保持した一対の保持部18A,18Aを、一対の挟持部41,41で挟持するまでの間に、一対の保持部18A,18Aから脊椎アンカー2が外れてしまうことを抑制できる。したがって、術者は、手術作業を行い易い。
【0092】
(2)前述の実施形態では、操作部材6は、内筒4に直接結合する形態を例にとって説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、図18に示すように、操作部材6Bの雄ねじ部52aは、一対の保持部18,18に保持された脊椎アンカー2を介して、内筒4に係合してもよい。この場合、雄ねじ部52aは、脊椎アンカー2の頭部2aの凹部2cの内周の雌ねじ部2eに螺合する。
【0093】
この場合、内筒4の一対の保持部18,18に保持された脊椎アンカー2に操作部材6Bを係合し、内筒4を、外筒5の一対の第2側壁38,39側から外筒本体30側へ変位させることで、一対の保持部18,18を一対の挟持部41,41間に配置する場合において、内筒4に対する脊椎アンカー2の変位を、ストッパ16で規制することができる。これにより、脊椎アンカー2が内筒4の一対の保持部18,18から不用意に外れてしまうことを、より確実に抑制できる。
【0094】
また、この場合、内筒4の一対の保持部18,18は、脊椎アンカー2を保持する機能と、操作部材6Bに係合する機能と、を兼ねることができる。これにより、内筒4に、操作部材6Bのための専用の係合部を設ける必要が無く、内筒4の構成を、より簡素にできる。
【0095】
(3)また、図19(a)及び図19(b)に示すように、内筒4と外筒5との軸方向S1の相対位置を規定するための位置決め機構55を更に備えてもよい。位置決め機構55は、外筒5の外筒本体30に形成され軸方向S1に延びる長孔部56と、内筒本体10の外周面から突出し長孔部56に挿通された突出部57とを含む。内筒4に対する外筒5の変位とともに、突出部57は、長孔部56内を軸方向S1に変位する。そして、突出部57が長孔部56の縁部に接触することで、内筒4に対する外筒5の軸方向S1の変位が規制される。
【0096】
これにより、一対の挟持部41,41が一対の保持部18,18を挟持している状態と、この挟持が解除された状態とを、位置決め機構55によって確実に切り替えることができる。
【0097】
(4)上記の実施形態で説明した形態に加えて、適宜、内筒4及び外筒5に、軽量化のための孔部を形成してもよい。これにより、ユニット7の取り扱いを、より容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、脊椎の椎骨同士を固定する手術等において用いられる、脊椎固定用手術器具として、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 脊椎固定用手術器具
2 脊椎アンカー
3 ロッド
4 内筒
5 外筒
10 内筒本体
12,13 第1側壁
18 保持部
20,40 第1スリット
30 外筒本体
38,39 第2側壁
41 挟持部
100 患者
101 脊椎
L1 中心軸線
S1 軸方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と、
前記内筒と嵌合可能な外筒と、を備え、
前記内筒は、内筒本体と、当該内筒本体から前記内筒の軸方向に沿って延び、互いの間にロッドを挿通可能なスリットを形成する一対の第1側壁と、患者の脊椎に固定され前記ロッドと結合される脊椎アンカーを保持するために一対の前記第1側壁の先端に形成された一対の保持部と、を含み、
前記外筒は、外筒本体と、当該外筒本体から前記外筒の軸方向に沿って延び、互いの間に前記ロッドを挿通可能なスリットを形成する一対の第2側壁と、を含み、
一対の前記第2側壁は、前記外筒本体から遠ざかるに従い前記外筒の中心軸線に向かって互いに近接しながら延びるように設けられ、かつ、一対の前記保持部を挟持可能な一対の挟持部を含むことを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【請求項2】
請求項1に記載の脊椎固定用手術器具であって、
一対の前記第2側壁は、前記外筒の中心軸線に対する傾きが互いに同じであることを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の脊椎固定用手術器具であって、
前記外筒は、金属材料を用いて形成されており、
一対の前記第2側壁は、前記外筒本体に対する曲げ加工と、焼きなまし処理とが施されることで形成されていることを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の脊椎固定用手術器具であって、
各前記保持部は、前記第1側壁から延設され、前記脊椎アンカーを弾性的に保持可能な弾性片部を含むことを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の脊椎固定用手術器具であって、
各前記保持部は、前記脊椎アンカーに形成された孔部に嵌合可能な凸部を含むことを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の脊椎固定用手術器具であって、
各前記第1側壁は、前記保持部と前記内筒本体との間に配置され前記脊椎アンカーが前記内筒本体側へ変位することを規制するストッパを含むことを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の脊椎固定用手術器具であって、
前記内筒を挿通可能に構成され、前記内筒に係合し前記内筒を前記外筒に対して変位させるための操作部材をさらに備えることを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【請求項8】
請求項7に記載の脊椎固定用手術器具であって、
前記操作部材は、一対の前記保持部に保持された前記脊椎アンカーを介して前記内筒に係合することを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の脊椎固定用手術器具であって、
前記内筒と前記外筒との軸方向の相対位置を規定するための位置決め機構をさらに備えることを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【請求項1】
内筒と、
前記内筒と嵌合可能な外筒と、を備え、
前記内筒は、内筒本体と、当該内筒本体から前記内筒の軸方向に沿って延び、互いの間にロッドを挿通可能なスリットを形成する一対の第1側壁と、患者の脊椎に固定され前記ロッドと結合される脊椎アンカーを保持するために一対の前記第1側壁の先端に形成された一対の保持部と、を含み、
前記外筒は、外筒本体と、当該外筒本体から前記外筒の軸方向に沿って延び、互いの間に前記ロッドを挿通可能なスリットを形成する一対の第2側壁と、を含み、
一対の前記第2側壁は、前記外筒本体から遠ざかるに従い前記外筒の中心軸線に向かって互いに近接しながら延びるように設けられ、かつ、一対の前記保持部を挟持可能な一対の挟持部を含むことを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【請求項2】
請求項1に記載の脊椎固定用手術器具であって、
一対の前記第2側壁は、前記外筒の中心軸線に対する傾きが互いに同じであることを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の脊椎固定用手術器具であって、
前記外筒は、金属材料を用いて形成されており、
一対の前記第2側壁は、前記外筒本体に対する曲げ加工と、焼きなまし処理とが施されることで形成されていることを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の脊椎固定用手術器具であって、
各前記保持部は、前記第1側壁から延設され、前記脊椎アンカーを弾性的に保持可能な弾性片部を含むことを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の脊椎固定用手術器具であって、
各前記保持部は、前記脊椎アンカーに形成された孔部に嵌合可能な凸部を含むことを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の脊椎固定用手術器具であって、
各前記第1側壁は、前記保持部と前記内筒本体との間に配置され前記脊椎アンカーが前記内筒本体側へ変位することを規制するストッパを含むことを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の脊椎固定用手術器具であって、
前記内筒を挿通可能に構成され、前記内筒に係合し前記内筒を前記外筒に対して変位させるための操作部材をさらに備えることを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【請求項8】
請求項7に記載の脊椎固定用手術器具であって、
前記操作部材は、一対の前記保持部に保持された前記脊椎アンカーを介して前記内筒に係合することを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の脊椎固定用手術器具であって、
前記内筒と前記外筒との軸方向の相対位置を規定するための位置決め機構をさらに備えることを特徴とする、脊椎固定用手術器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−111260(P2013−111260A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260193(P2011−260193)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(504418084)京セラメディカル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(504418084)京セラメディカル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
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