説明

脱塩処理装置および塩水の脱塩処理方法

【課題】塩水を効率良く脱塩処理し、淡水の回収率を向上させること。
【解決手段】脱塩処理装置1は、多孔質板211によって内部空間が上側空間E11と下側空間E13とに仕切られた脱塩槽20と、上側空間E11に塩水を導入する塩水ライン71と、上側空間E11および下側空間E13に高圧のゲストガスを導入する圧力ポンプ30と、上側空間E11の塩水をクラスレート生成温度に冷却する冷却コイル23と、圧力ポンプ30を制御し、クラスレートの生成時には高圧のゲストガスを下側空間E13に導入させて上側空間E11の圧力をクラスレート生成圧力に調整し、固液分離時には、高圧のゲストガスを上側空間E11に導入させる制御部90とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩水を脱塩処理して淡水を得る脱塩処理装置および塩水の脱塩処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、クラスレートハイドレート(以下、単に「クラスレート」と呼ぶ。)の生成を利用して海水を淡水化する技術が提案されている(例えば、非特許文献1,2を参照)。ここで、海水の淡水化(脱塩処理)では、先ず、ゲストガスがクラスレートを生成する温度および圧力の下で海水とゲストガスとを接触させて、クラスレートを生成する。そして、生成したクラスレートと、このクラスレートの生成に伴い生成した濃縮塩水とを固液分離した後、クラスレートを分解する。
【0003】
また、特許文献1には、ハイドレート生成槽を多段に接続し、海水を繰り返し脱塩処理する構成が開示されている。ここで、特許文献1では、クラスレートと固液分離された濃縮塩水は、ドレンとして系外に排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−319805号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本エネルギー学会大会講演要旨集,ハイドレート生成による塩水の淡水化に関する研究,吉岡裕之,P52-P53
【非特許文献2】Solar Engineering,Conceptual design of otec plants producing desalinated water with the gas hydrate method.,SYED M A,P625〜P631
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、固液分離したクラスレートをそのまま分解してしまうと、クラスレートと分離しきれずに周囲に残存する濃縮塩水によって、得られる脱塩水の塩分濃度が高くなってしまい、効率良く脱塩処理が行えない場合がある。このため、クラスレートと濃縮塩水とを固液分離した後、クラスレートを分解する前には、クラスレートを洗浄する工程が必要である。このクラスレートの洗浄は、一般に、回収された淡水を用いて行われており、淡水の回収率を低下させるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑み為されたものであって、塩水を効率良く脱塩処理し、淡水の回収率を向上させることができる脱塩処理装置および塩水の脱塩処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる脱塩処理装置は、所定のゲストガスのクラスレート生成温度およびクラスレート生成圧力の下で塩水と前記ゲストガスとを接触させてクラスレートを生成し、前記クラスレートと該クラスレートの生成に伴い生成した濃縮塩水とを固液分離して淡水を得る脱塩処理装置であって、少なくとも一部が多孔質板で形成された仕切り部材によって内部空間が上側空間と下側空間とに仕切られた脱塩槽と、前記上側空間に塩水を導入する塩水導入手段と、前記上側空間および前記下側空間に高圧のゲストガスを導入するゲストガス導入手段と、前記上側空間の前記塩水を前記クラスレート生成温度に冷却する冷却手段と、前記クラスレートの生成時には、前記ゲストガス導入手段によって前記高圧のゲストガスを前記下側空間に導入して前記下側空間の圧力を前記上側空間の圧力よりも高くした状態で、前記上側空間の圧力を前記クラスレート生成圧力に調整し、前記固液分離時には、前記ゲストガス導入手段によって前記高圧のゲストガスを前記上側空間に導入して前記上側空間の圧力を前記下側空間の圧力よりも高くする圧力調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる脱塩処理装置は、上記の発明において、前記上側空間と連通し、前記クラスレートを回収する回収槽と、前記多孔質板の上面近傍に設けられ、前記クラスレートを前記回収槽に搬送する搬送手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる脱塩処理装置は、上記の発明において、前記上側空間に前記淡水を導入する淡水導入手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる塩水の脱塩処理方法は、所定のゲストガスのクラスレート生成温度およびクラスレート生成圧力の下で塩水と前記ゲストガスとを接触させてクラスレートを生成し、前記クラスレートと該クラスレートの生成に伴い生成した濃縮塩水とを固液分離して淡水を得る塩水の脱塩処理方法であって、少なくとも一部が多孔質板で形成された仕切り部材によって内部空間が上側空間と下側空間とに仕切られた脱塩槽の前記下側空間に高圧のゲストガスを導入して前記下側空間の圧力を前記上側空間の圧力よりも高くした状態で、前記上側空間に前記塩水を導入し、前記多孔質板によって前記ゲストガスを前記塩水内に散気させるとともに、前記上側空間の圧力を前記クラスレート生成圧力に調整しながら前記塩水を前記クラスレート生成温度に冷却することで、前記クラスレートを生成するクラスレート生成工程と、前記上側空間に前記高圧のゲストガスを導入して前記上側空間の圧力を前記下側空間の圧力よりも高くし、前記多孔質板によって前記上側空間の前記クラスレートおよび前記濃縮塩水をろ過して固液分離する固液分離工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる塩水の脱塩処理方法は、上記の発明において、前記固液分離された前記上側空間内の前記クラスレートを前記脱塩槽外に搬送して回収するクラスレート回収工程を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる塩水の脱塩処理方法は、上記の発明において、前記上側空間に淡水を導入し、前記固液分離された前記上側空間内の前記クラスレートを前記淡水によって洗浄しつつ分解するクラスレート分解工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、クラスレートの生成時には、下側空間にゲストガスを導入することで下側空間の圧力を上側空間の圧力よりも高い状態を維持しつつ、上側空間の圧力をクラスレート生成圧力に調整することができる。そして、上側空間に塩水を導入し、上側空間内の塩水をクラスレート生成温度に冷却することで、クラスレート生成温度およびクラスレート生成圧力の下で塩水とゲストガスとを接触させてクラスレートを生成することができる。また、固液分離時には、上側空間にゲストガスを導入することで上側空間の圧力を下側空間の圧力よりも高くし、クラスレートとこのクラスレートの生成に伴い生成した濃縮塩水とを固液分離することができる。これによれば、クラスレートの生成時には、多孔質板が散気板となり、下側空間に導入されたゲストガスを上側空間の塩水内に散気させることができるので、塩水とゲストガスとを効率良く接触させてクラスレートを迅速に生成することができる。一方、固液分離時には、多孔質板がろ過板となり、クラスレートの生成時に調整した上側空間のクラスレート生成圧力を利用してクラスレートおよび濃縮塩水を加圧ろ過することができるので、クラスレートと濃縮塩水とを高精度に固液分離することができる。したがって、塩水を効率良く脱塩処理し、淡水の回収率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施の形態1における脱塩処理装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、実施の形態1における脱塩処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】図3は、実施の形態1におけるクラスレート生成工程を説明する説明図である。
【図4】図4は、実施の形態1における固液分離工程を説明する説明図である。
【図5】図5は、実施の形態1における固液分離工程を説明する説明図である。
【図6】図6は、実施の形態1におけるクラスレート回収・分解工程を説明する説明図である。
【図7】図7は、実施の形態1におけるクラスレート回収・分解工程を説明する説明図である。
【図8】図8は、実施の形態2における脱塩処理装置の構成を示す模式図である。
【図9】図9は、実施の形態2における脱塩処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、実施の形態2におけるクラスレート生成工程を説明する説明図である。
【図11】図11は、実施の形態2における固液分離工程を説明する説明図である。
【図12】図12は、実施の形態2における固液分離工程を説明する説明図である。
【図13】図13は、実施の形態2におけるクラスレート洗浄・分解工程を説明する説明図である。
【図14】図14は、実施の形態3における塩水の脱塩処理システムの全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明を実施するための形態について説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における脱塩処理装置1の構成を示す模式図である。図1に示すように、脱塩処理装置1は、前処理によって濁質分が除去された塩水(海水)を貯留する海水タンク11と、海水タンク11の塩水(海水)を脱塩処理(淡水化処理)するための脱塩槽20と、不図示のゲストガスタンクに貯蔵されたゲストガスGを高圧化して圧送する圧力ポンプ30と、脱塩槽20から排出されたゲストガス(アウトガス)を回収するためのゲストガスホルダ40と、脱塩槽20で生成・固液分離されるクラスレートを回収する回収槽50と、クラスレートを脱塩槽20から回収槽50に搬送する搬送手段としての搬送部60と、回収槽50で得られる淡水を貯留する淡水タンク12と、脱塩槽20での脱塩処理に伴い生成した濃縮塩水を貯留する濃縮塩水タンク13と、海水タンク11の塩水(海水)SWを脱塩槽20に供給する塩水導入手段としての塩水ライン71、圧力ポンプ30によって圧送されたゲストガスGを脱塩槽20に供給するゲストガスライン72、淡水WWを淡水タンク12に導入する淡水ライン73、濃縮塩水DWを濃縮塩水タンク13に導入する濃縮塩水ライン74、およびアウトガスをゲストガスホルダ40に導入するアウトガスライン75の各ラインにそれぞれ設けられた制御弁81〜86と、脱塩処理装置1の各部を制御して装置全体の動作を統括制御する制御部90とを備える。
【0018】
脱塩槽20は、その内部空間の下方に配設された仕切り部材としての疎水性の多孔質板211を備え、この多孔質板211によって内部空間が上下2つの空間E11,E13に仕切られて構成されている。以下、多孔質板211によって仕切られた脱塩槽20内部の上側の空間E11を「上側空間E11」と呼び、下側の空間E13を「下側空間E13」と呼ぶ。
【0019】
また、脱塩槽20は、上側空間E11に導入された塩水(海水)を攪拌するための攪拌装置22と、この上側空間E11に導入された塩水(海水)を冷却するための冷却手段としての冷却コイル23とを備える。この脱塩槽20は、断熱性を有する。
【0020】
搬送部60は、一端が回収槽50の上部と連通し、他端が脱塩槽20の上側空間E11と連通して上側空間E11と回収槽50との間のクラスレートの通路を形成する搬送路61と、多孔質板211の上面に沿って延設され、一端が搬送路61に挿通された搬送スクリュー62と、この搬送スクリュー62の一端側に設けられ、搬送スクリュー62を回転駆動するモータ63と、搬送スクリュー62の回転駆動によって搬送路61を通過し、回収槽50の上部に搬送されたクラスレートを2段階で落下させて回収槽50に導入する二重ダンパ64とを備える。
【0021】
ここで、脱塩槽20と海水タンク11との間に配管される塩水ライン71は、脱塩槽20の上部に接続され、海水タンク11と上側空間E11との間を連通する。
【0022】
また、脱塩槽20と不図示のゲストガスタンクとの間に配管されるゲストガスライン72は、一端側が2股に分岐しており、一方の分岐ライン721が脱塩槽20の上面近傍に接続され、他方の分岐ライン722が脱塩槽20の底部に接続されている。また、ゲストガスライン72の他端が不図示のゲストガスタンクと接続されており、一方の分岐ライン721によってゲストガスタンクと上側空間E11との間を連通し、他方の分岐ライン722によってゲストガスタンクと下側空間E13との間を連通する。圧力ポンプ30は、2つの分岐ライン721,722の分岐点よりもゲストガスタンク方向の他端側に設けられており、ゲストガスライン72とともにゲストガス導入手段として機能する。ここで、ゲストガスは、適宜選ぶこととしてよいが、例えば、二酸化炭素ガス(CO2)、キセノンガス(Xe)、HFC等の代替フロン等が挙げられる。
【0023】
また、脱塩槽20と濃縮塩水タンク13との間に配管される濃縮塩水ライン74は、脱塩槽20の底部に接続され、濃縮塩水タンク13と下側空間E13との間を連通する。また、脱塩槽20とゲストガスホルダ40との間に配管されるアウトガスライン75は、脱塩槽20の上部に接続され、ゲストガスホルダ40と上側空間E11との間を連通する。また、淡水ライン73は、回収槽50と淡水タンク12との間に配管され、これらの間を連通する。
【0024】
以上のように構成される脱塩処理装置1は、クラスレートを生成し、生成したクラスレートとこのクラスレートの生成に伴い生成した濃縮塩水とを固液分離した後、クラスレートを分解することで脱塩処理を行う。ここで、クラスレートとは、水分子が作る籠型構造(ケージ)によってゲスト分子が包接された氷状の固体結晶であり、低温かつ高圧の条件下で生成される。具体的な温度および圧力の条件は、ゲストガスの種類によって異なる。例えば、二酸化炭素ガスを用いる場合、温度が0℃〜3℃程度、圧力が2MPa〜3MPa程度の条件下でクラスレートが生成する。一方、キセノンガスを用いる場合、温度が0℃〜5℃程度、圧力が0.2MPa程度の条件下でクラスレートが生成する。このクラスレートの生成に必要な所定の温度(クラスレート生成温度)およびクラスレートの生成に必要な所定の圧力(クラスレート生成圧力)の下で塩水(海水)とゲストガスとを接触させると、水分子のケージにゲストガスが取り込まれてクラスレートが生成する。また、クラスレートの生成に伴い濃縮塩水が生成する。このクラスレートを濃縮塩水と固液分離し、クラスレートを分解すると、淡水が得られる。
【0025】
図2は、実施の形態1の脱塩処理装置1によって実現される脱塩処理の手順を示すフローチャートである。脱塩処理装置1は、図2の各工程を行うことで、塩水の脱塩処理方法を実施する。なお、各工程での脱塩処理装置1の動作は、制御部90が装置各部を制御することで実現される。
【0026】
図2に示すように、脱塩処理装置1は先ず、脱塩槽20の上側空間E11において、ゲストガスのクラスレート生成条件下、具体的には、クラスレート生成温度およびクラスレート生成圧力の下で塩水(海水)とゲストガスとを接触させて、クラスレートを生成する(ステップS11;クラスレート生成工程)。
【0027】
図3は、実施の形態1におけるクラスレート生成工程を説明する説明図であり、脱塩槽20を含む脱塩処理装置1の一部の構成を示している。クラスレート生成工程では、不図示のゲストガスタンクのゲストガスGをゲストガスライン72の分岐ライン722を介して下側空間E13に導入しながら、塩水ライン71を介して海水タンク11の塩水(海水)SWを上側空間E11に所定量導入することで、上側空間E11の圧力をクラスレート生成圧力に調整する。
【0028】
具体的には、制御部90は、圧力調整手段として、先ず、制御弁82を閉止した状態で制御弁83を開放し、圧力ポンプ30を駆動して下側空間E13へとゲストガスGを圧送することで下側空間E13へのゲストガスGの導入を開始する。なお、このとき、制御弁81,86や、図3では不図示の制御弁85(図1を参照)は、閉止されている。
【0029】
そして、制御部90は、下側空間E13に高圧のゲストガスGを導入することで上側空間E11と下側空間E13とに圧力差(上側空間E11の圧力P1<下側空間E13の圧力P2)を生じさせた後、制御弁81を開放し、塩水ライン71に設けられた不図示のポンプによって海水タンク11から所定量の塩水(海水)SWを上側空間E11に導入する。このとき、上側空間E11と下側空間E13との間に生じさせた圧力差(P1<P2)によって多孔質板211の供給側(上面側)から透過側(下面側)への塩水(海水)の流れが抑止されるため、上側空間E11に導入された所定量の塩水(海水)は、下側空間E13へと流れ出さずに上側空間E11に留まる。一方で、下側空間E13に導入されたゲストガスは、多孔質板211の透過側から供給側へと気泡として放出され、上側空間E11の塩水(海水)内に散気される。このように、クラスレートの生成時には、多孔質板211は、上側空間E11の塩水(海水)内にゲストガスを散気させる散気板となる。
【0030】
所定量の塩水(海水)を上側空間E11に導入したならば、制御部90は、不図示のポンプの駆動を停止し、制御弁81を閉止する。その後は、制御部90は、上側空間E11の圧力P1よりも下側空間E13の圧力P2の方が高い状態を維持しつつ、上側空間E11の圧力P1がクラスレート生成圧力となるように、不図示の圧力計の計測値をもとに圧力ポンプ30を制御するとともに制御弁86を適宜開閉し、上側空間E11の圧力を調整する。制御弁86を開放した際に上側空間E11から排出されたゲストガス(アウトガス)は、アウトガスライン75を介してゲストガスホルダ40に導入されて回収される。
【0031】
また、制御部90は、冷却コイル23を駆動して上側空間E11内の塩水(海水)を冷却し、クラスレート生成温度に調整しながら、攪拌装置22を駆動して上側空間E11内の塩水(海水)とこの塩水(海水)内に多孔質板211によって散気されたゲストガスとを混合する。この結果、上側空間E11では、図3に示すように、塩水(海水)とゲストガスとがクラスレート生成温度およびクラスレート生成圧力の下で接触して固体結晶のクラスレート100が生成し、生成したクラスレート100が、このクラスレート100の生成によって濃縮された濃縮塩水中に浮遊する。
【0032】
以上のようにしてクラスレート生成工程を実施したならば、続いて、図2に示すように、クラスレートと濃縮塩水とを固液分離する(ステップS13;固液分離工程)。図4および図5は、実施の形態1における固液分離工程を説明する説明図であり、脱塩槽20を含む脱塩処理装置1の一部の構成を示している。
【0033】
固液分離工程では、制御部90は、圧力ポンプ30の駆動を停止するとともに制御弁83を閉止し、下側空間E13へのゲストガスGの導入を停止する。続いて、制御部90は、制御弁82を開放するとともに圧力ポンプ30を再度駆動し、ゲストガスライン72の分岐ライン721を介して上側空間E11へとゲストガスGを圧送して上側空間E11へのゲストガスGの導入を開始する。また、制御部90は、制御弁85を開放する。ここで、分岐ライン721は、そのゲストガスGの導入位置が、上側空間E11に導入される所定量の塩水(海水)の液面の高さよりも高くなるように接続されている。
【0034】
そして、上側空間E11に高圧のゲストガスGを導入することで上側空間E11と下側空間E13との圧力差を逆転させ(上側空間E11の圧力P1>下側空間E13の圧力P2)、上側空間E11内のクラスレート100および濃縮された濃縮塩水を多孔質板211によって加圧ろ過する。この結果、図4に示すように、クラスレート100が上側空間E11に残る一方、濃縮塩水は、多孔質板211を透過して下側空間E13へと流れ、最終的に、図5に示すように、クラスレート100が濃縮塩水と固液分離される。このように、固液分離時には、多孔質板211は、ろ過板となる。下側空間E13へと流れた濃縮塩水DWは、濃縮塩水ライン74を介して濃縮塩水タンク13に導入される。その後、制御部90は、圧力ポンプ30の駆動を停止するとともに制御弁82を閉止し、上側空間E11へのゲストガスの導入を停止する。
【0035】
なお、クラスレートと濃縮塩水とを固液分離した後、クラスレート100を洗浄する目的で淡水タンク12(図1を参照)に貯留されている淡水の一部(少量)を上側空間E11に導入するようにしてもよい。このようにすることで、クラスレートの周囲に残存する濃縮塩水を洗い流すことができる。すなわち、クラスレートの周囲の濃縮塩水を導入した淡水によって押し流すことで多孔質板211を透過させて下側空間E13に流出させることができ、クラスレートの周囲の濃縮塩水を淡水に置き換えることができる。この場合に導入する淡水の量は、クラスレートを洗浄するのに必要な量として予め設定しておけばよいが、固液分離工程では、加圧ろ過によってクラスレートと濃縮塩水とを固液分離しており、クラスレートの周囲に残存する濃縮塩水は微量であるため、その量は少量でよい。したがって、淡水を用いてクラスレートを洗浄することとしても、洗浄に使用する淡水の使用量を削減できるので、淡水の回収率の低下を抑制できる。
【0036】
以上のようにして固液分離工程を実施したならば、続いて、図2に示すように、濃縮塩水と固液分離したクラスレートを回収槽50に搬送して回収し、回収したクラスレートを分解して淡水を得る(ステップS15;クラスレート回収・分解工程)。図6および図7は、実施の形態1におけるクラスレート回収・分解工程を説明する説明図であり、脱塩槽20を含む脱塩処理装置1の一部の構成を示している。
【0037】
クラスレート回収・分解工程では、制御部90は、搬送部60のモータ63を駆動して搬送スクリュー62を回転駆動させる。これにより、多孔質板211上のクラスレート100は、図6に示すように搬送スクリュー62によって漸次搬送され、搬送路61を通過して回収槽50の上部に移動案内される。また、制御部90は、二重ダンパ64を駆動して二段のダンパを交互に開閉させる。これにより、回収槽50の上部に移動したクラスレート100が二重ダンパ64を経て段階的に落下し、回収槽50に導入される。
【0038】
ここで、回収槽50は、クラスレート生成条件下ではなく例えば常温・常圧下としており、導入されたクラスレート100は、図7に示すように回収槽50において自然に分解し、淡水が得られる。このクラスレート回収・分解工程では、制御部90は、制御弁84を開放し、クラスレート100が分解して得られた淡水WWを淡水ライン73に設けられた不図示のポンプによって淡水タンク12に導入する。なお、回収槽50の周囲に温水管を配置し、例えば常温以上の加温水(例えば海水)を送り込むことで回収槽50の周囲を常温以上に加温して回収槽50内のクラスレート100を積極的に分解するようにしてもよい。
【0039】
また、以上のようにしてクラスレート回収・分解工程において多孔質板211上のクラスレート100の回収槽50への搬送を終えたならば、制御部90は、制御弁86を開放し、脱塩槽20内に残存するゲストガス(アウトガス)をアウトガスライン75を介してゲストガスホルダ40に導入して回収する。なお、ゲストガスホルダ40に回収されたゲストガスは、脱塩処理装置1での別の脱塩処理で再利用される。
【0040】
以上説明したように、実施の形態1によれば、クラスレートの生成時には、下側空間E13に高圧化したゲストガスを導入することで上側空間E11と下側空間E13とに圧力差を生じさせるとともに、上側空間E11の圧力をクラスレート生成圧力に調整することができる。そして、上側空間E11に塩水(海水)を導入し、上側空間E11内の塩水(海水)をクラスレート生成温度に冷却することで、クラスレート生成温度およびクラスレート生成圧力の下で塩水(海水)とゲストガスとを接触させてクラスレートを生成することができる。これによれば、クラスレートの生成時には、多孔質板211が散気板となり、下側空間E13に導入されたゲストガスを上側空間E11の塩水(海水)内に散気させることができるので、塩水(海水)とゲストガスとを効率良く接触させてクラスレートを迅速に生成することができる。一方、固液分離時には、上側空間E11と下側空間E13との圧力差を逆転させ、クラスレートと濃縮塩水とを固液分離することができる。これによれば、固液分離時には、多孔質板211がろ過板となり、クラスレートの生成時に調整した上側空間E11のクラスレート生成圧力を利用してクラスレートおよび濃縮塩水を加圧ろ過することができるので、クラスレートと濃縮塩水とを高精度に固液分離することができる。
【0041】
また、上側空間E11内でクラスレートを生成し、このクラスレートの生成に伴い生成した濃縮塩水を下側空間E13へと透過させることでクラスレートと濃縮塩水とを固液分離することができ、この間にクラスレートが存在する上側空間E11の圧力を開放しないため、クラスレートを生成した後、固液分離する過程でクラスレートが自然に分解し、濃縮塩水とともに排出される事態を抑制できる。
【0042】
以上のように、実施の形態1によれば、塩水を効率良く脱塩処理し、淡水の回収率を向上させることができる。
【0043】
(実施の形態2)
図8は、実施の形態2における脱塩処理装置1bの構成を示す模式図である。なお、図8において、実施の形態1と同様の構成には同一の符号を付している。図8に示すように、脱塩処理装置1bは、海水タンク11と、脱塩槽20bと、圧力ポンプ30と、ゲストガスホルダ40と、淡水タンク12と、濃縮塩水タンク13と、塩水ライン71、ゲストガスライン72、淡水ライン73b、濃縮塩水ライン74、アウトガスライン75、および淡水タンク12の淡水WWの一部(少量)を洗浄水として脱塩槽20bに供給する淡水導入手段としての洗浄水ライン76の各ラインにそれぞれ設けられた制御弁81〜87と、脱塩処理装置1bの各部を制御して装置全体の動作を統括制御する制御部90とを備える。
【0044】
脱塩槽20bは、その内部空間の下方に配設された仕切り部材21を備え、この仕切り部材21によって内部空間が上側空間E11と下側空間E13とに仕切られて構成されている。この仕切り部材21は、中央部が平坦で、外周部が中央部に向かって下向きに傾斜した形状を有し、平坦な中央部が疎水性の多孔質板211で形成されている。
【0045】
ここで、実施の形態2では、淡水ライン73bは、脱塩槽20bと淡水タンク12との間に配管され、淡水タンク12と上側空間E11との間を連通する。この淡水ライン73bは、その上側空間E11側の端部が、仕切り部材21の中央部を形成する多孔質板211の上面近傍に配置されている。また、脱塩槽20bと淡水タンク12との間に配管される洗浄水ライン76は、脱塩槽20bの上部に接続され、淡水タンク12と上側空間E11との間を連通する。
【0046】
図9は、実施の形態2の脱塩処理装置1bによって実現される脱塩処理の手順を示すフローチャートである。脱塩処理装置1bは、図9の各工程を行うことで、塩水の脱塩処理方法を実施する。なお、各工程での脱塩処理装置1bの動作は、制御部90が装置各部を制御することで実現される。
【0047】
図9に示すように、脱塩処理装置1bは先ず、脱塩槽20bの上側空間E11において、ゲストガスのクラスレート生成条件下、具体的には、クラスレート生成温度およびクラスレート生成圧力の下で塩水(海水)とゲストガスとを接触させて、クラスレートを生成する(ステップS21;クラスレート生成工程)。
【0048】
図10は、実施の形態2におけるクラスレート生成工程を説明する説明図であり、脱塩槽20bを含む脱塩処理装置1bの一部の構成を示している。このクラスレート生成工程は、実施の形態1と同様の要領で行い、不図示のゲストガスタンクのゲストガスGをゲストガスライン72の分岐ライン722を介して下側空間E13に導入しながら、塩水ライン71を介して海水タンク11の塩水(海水)SWを上側空間E11に所定量導入することで、上側空間E11の圧力をクラスレート生成圧力に調整する。
【0049】
具体的には、制御部90は、先ず、制御弁82を閉止した状態で制御弁83を開放し、圧力ポンプ30を駆動して下側空間E13へとゲストガスGを圧送することで下側空間E13へのゲストガスGの導入を開始する。なお、このとき、制御弁81,86や、図10では不図示の制御弁84,85,87(図8を参照)は、閉止されている。そして、制御部90は、下側空間E13に高圧のゲストガスGを導入することで上側空間E11と下側空間E13とに圧力差(上側空間E11の圧力P1<下側空間E13の圧力P2)を生じさせた後、制御弁81を開放し、塩水ライン71に設けられた不図示のポンプによって海水タンク11から所定量の塩水(海水)SWを上側空間E11に導入する。このとき、上側空間E11に導入された所定量の塩水(海水)は、実施の形態1で説明したのと同様に、下側空間E13へと流れ出さずに上側空間E11に留まる一方、下側空間E13に導入されたゲストガスは、上側空間E11の塩水(海水)内に散気される。このように、クラスレートの生成時には、多孔質板211は、上側空間E11の塩水(海水)内にゲストガスを散気させる散気板となる。
【0050】
所定量の塩水(海水)を上側空間E11に導入したならば、制御部90は、不図示のポンプの駆動を停止し、制御弁81を閉止する。その後は、制御部90は、上側空間E11の圧力P1よりも下側空間E13の圧力P2の方が高い状態を維持しつつ、上側空間E11の圧力P1がクラスレート生成圧力となるように、不図示の圧力計の計測値をもとに圧力ポンプ30を制御するとともに制御弁86を適宜開閉し、上側空間E11の圧力を調整する。
【0051】
また、制御部90は、冷却コイル23を駆動して上側空間E11内の塩水(海水)を冷却し、クラスレート生成温度に調整しながら、攪拌装置22を駆動して上側空間E11内の塩水(海水)とこの塩水(海水)内に多孔質板211によって散気されたゲストガスとを混合する。この結果、上側空間E11では、図10に示すように、塩水(海水)とゲストガスとがクラスレート生成温度およびクラスレート生成圧力の下で接触して固体結晶のクラスレート100が生成し、生成したクラスレート100が、このクラスレート100の生成によって濃縮された濃縮塩水中に浮遊する。
【0052】
以上のようにしてクラスレート生成工程を実施したならば、続いて、図9に示すように、クラスレートと濃縮塩水とを固液分離する(ステップS23;固液分離工程)。図11および図12は、実施の形態2における固液分離工程を説明する説明図であり、脱塩槽20bを含む脱塩処理装置1bの一部の構成を示している。
【0053】
この固液分離工程は、実施の形態1と同様の要領で行い、制御部90は、先ず、圧力ポンプ30の駆動を停止するとともに制御弁83を閉止し、下側空間E13へのゲストガスGの導入を停止する。続いて、制御部90は、制御弁82を開放するとともに圧力ポンプ30を再度駆動し、ゲストガスライン72の分岐ライン721を介して上側空間E11へとゲストガスGを圧送して上側空間E11へのゲストガスGの導入を開始する。また、制御部90は、制御弁85を開放する。
【0054】
そして、上側空間E11に高圧のゲストガスGを導入することで上側空間E11と下側空間E13との圧力差を逆転させ(上側空間E11の圧力P1>下側空間E13の圧力P2)、上側空間E11内のクラスレート100および濃縮された濃縮塩水を多孔質板211によって加圧ろ過する。このとき、仕切り部材21の外周部に位置する濃縮塩水は、外周部の下向きの傾斜によって多孔質板211に向けてその流動が案内される。この結果、図11に示すように、クラスレート100が上側空間E11に残る一方、濃縮塩水は、多孔質板211を透過して下側空間E13へと流れ、最終的に、図12に示すように、クラスレート100が濃縮塩水と固液分離される。このように、固液分離時には、多孔質板211は、ろ過板となる。下側空間E13へと流れた濃縮塩水DWは、濃縮塩水ライン74を介して濃縮塩水タンク13に導入される。その後、制御部90は、圧力ポンプ30の駆動を停止するとともに制御弁82を閉止し、上側空間E11へのゲストガスの導入を停止する。
【0055】
以上のようにして固液分離工程を実施したならば、続いて、図9に示すように、濃縮塩水と固液分離したクラスレートを分解し、淡水を得る(ステップS25;クラスレート洗浄・分解工程)。図13は、実施の形態2におけるクラスレート洗浄・分解工程を説明する説明図であり、脱塩槽20bを含む脱塩処理装置1bの一部の構成を示している。
【0056】
図13に示すように、このクラスレート洗浄・分解工程では、制御部90は、制御弁87を開放し、淡水タンク12の淡水WWを洗浄水ライン76に設けられた不図示のポンプによって上側空間E11に導入する。これにより、多孔質板211上のクラスレート100が洗浄されてクラスレート100の周囲に残存する濃縮塩水が洗い流される。すなわち、クラスレート100の周囲の濃縮塩水が導入された淡水によって押し流されることで多孔質板211を透過して下側空間E13に流出し、その結果、クラスレート100の周囲の濃縮塩水が淡水と置き換えられる。また、ここで導入される淡水は、脱塩処理装置1bで脱塩処理されて淡水タンク12に貯留されていたものであり、常温程度の温度となっている。したがって、導入された淡水により、低温であるクラスレート生成温度で生成したクラスレート100が加温されて分解し、淡水が得られる。制御部90は、制御弁84を開放し、クラスレート100が分解して得られた淡水WWを、淡水ライン73bに設けられた不図示のポンプによって淡水タンク12に導入する。
【0057】
なお、導入する淡水の量は、クラスレートを洗浄し、分解するのに必要な量として予め設定しておけばよいが、実施の形態1の変形例として説明したように、クラスレートの周囲に残存する濃縮塩水は微量であるため、その量は少量でよい。したがって、クラスレートを洗浄するための洗浄水として使用する淡水の量を削減できるので、淡水の回収率の低下を抑制できる。
【0058】
その後、制御部90は、制御弁86を開放し、脱塩槽20b内に残存するゲストガス(アウトガス)をアウトガスライン75を介してゲストガスホルダ40に導入して回収する。
【0059】
以上説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を奏することができるとともに、実施の形態2の脱塩処理装置1bは、実施の形態1の脱塩処理装置1の構成と比べて簡単な装置構成で実現できる。
【0060】
(実施の形態3)
図14は、実施の形態3における塩水の脱塩処理システム2cの全体構成を示す模式図である。なお、図14において、実施の形態1と同様の構成には同一の符号を付して示している。図14に示すように、実施の形態3の塩水の脱塩処理システム2cは、塩水(海水)を脱塩処理するための複数(n個)の脱塩処理装置1c(1c−1,2,・・・,n)が多段に接続されて構成される。この塩水の脱塩処理システム2cでは、これらn個の脱塩処理装置1cが、最前段の脱塩処理装置1c−1から順番に海水タンク11の塩水(海水)を繰り返し脱塩処理することで、塩水(海水)の塩分濃度を段階的に低下させて最終的に塩分濃度が十分に低い淡水を得る。
【0061】
最前段の脱塩処理装置1c−1は、塩水ライン71c−1を介して海水タンク11と接続され、脱塩処理装置1c−2〜1c−nは、それぞれ塩水ライン71c−2〜71c−nを介して前段の脱塩処理装置1cと接続されている。また、脱塩処理装置1c−1は、濃縮塩水ライン74cを介して濃縮塩水タンク13と接続されている。また、脱塩処理装置1c−1〜1c−(n−1)は、洗浄水ライン76c−1〜76c−(n−1)を介して後段の脱塩処理装置1cと接続され、脱塩処理装置1c−nは、洗浄水ライン76c−nを介して淡水タンク12と接続されている。そして、脱塩処理装置1c−nは、淡水ライン73cを介して淡水タンク12と接続されている。
【0062】
この塩水の脱塩処理システム2cでは、先ず、海水タンク11に貯留されている例えば塩分濃度4%の塩水(海水)SWが、塩水ライン71c−1を介して最前段の脱塩処理装置1c−1に供給される。脱塩処理装置1c−1は、供給された塩水(海水)SWを脱塩処理し、塩分濃度が4%よりも低い脱塩水(脱塩処理された塩水:塩分濃度C1%)PW−1を生成する。この脱塩処理装置1c−1での脱塩処理によって生成する脱塩水PW−1は、塩水ライン71c−2を介して不図示の処理水タンクに貯留された後、後段の脱塩処理装置1c−2に供給される。一方、脱塩処理に伴い生成した濃縮塩水DW−1(塩分濃度C1´%)は、濃縮塩水ライン74cを介して濃縮塩水タンク13に排出される。
【0063】
続いて、脱塩処理装置1c−2は、前段の脱塩処理装置1c−1から供給された脱塩水をさらに脱塩処理し、脱塩水(塩分濃度C2%)PW−2を生成する。この脱塩処理装置1c−2での脱塩処理によって生成する脱塩水PW−2は、塩水ライン71c−3を介して不図示の処理水タンクに貯留された後、後段の脱塩処理装置1c−3に供給される。一方、脱塩処理装置1c−2での脱塩処理に伴い生成した濃縮塩水(塩分濃度C´2%)DW−2は、洗浄水ライン76c−1を介して不図示の洗浄水タンクに排出・貯留された後に前段の脱塩処理装置1c−1に供給され、脱塩処理装置1c−1での脱塩処理時に洗浄水として利用されるようになっている。なお、この脱塩処理装置1c−2での脱塩処理時には、後段の脱塩処理装置1c−3での脱塩処理に伴い生成され、不図示の洗浄水タンクに貯留された濃縮塩水(塩分濃度C´3%)DW−3が洗浄水ライン76c−2を介して供給されるようになっており、洗浄水として利用される。
【0064】
その後、脱塩処理装置1c−3以降の後段の脱塩処理装置1cが、順次同様にして前段の脱塩処理装置1cから供給された脱塩水を脱塩処理する。また、この脱塩処理時において、後段の脱塩処理装置1cから供給された濃縮塩水が洗浄水として利用される。
【0065】
そして、最後段の脱塩処理装置1c−nには、前段の脱塩処理装置1c−(n−1)での脱塩処理によって生成される脱塩水(塩分濃度Cn-1%)PW−(n−1)が、不図示の処理水タンクから塩水ライン71c−nを介して供給される。この最後段の脱塩処理装置1c−nは、供給された脱塩水を脱塩処理し、上水のレベル(例えば塩分濃度0.1%)の淡水WWを生成する。生成した淡水WWは、淡水ライン73cを介して淡水タンク12に導入されて貯留される。また、脱塩処理装置1c−nでの脱塩処理に伴い生成する濃縮塩水(塩分濃度C´n%)DW−nは、洗浄水ライン76c−(n−1)を介して不図示の洗浄水タンクに排出・貯留された後、前段の脱塩処理装置1c−(n−1)に供給される。なお、脱塩処理装置1c−nでの脱塩処理時には、洗浄水ライン76c−nを介して淡水タンク12に貯留されている所定量(少量)の淡水WWが供給される。すなわち、塩水の脱塩処理システム2cでの淡水WWの収量のうちの一部(少量)が、脱塩処理装置1c−nでの脱塩処理において洗浄水として利用される。
【0066】
このように、本実施の形態の塩水の脱塩処理システム2cにおいて、最前段の脱塩処理装置1c−1には、塩水ライン71c−1によって海水タンク11の塩水(海水)SWが供給され、脱塩処理装置1c−2〜1c−nには、塩水ライン71c−2〜71c−nによって前段の脱塩処理装置1cからの脱塩水PW−1〜PW−(n−1)が供給される。また、脱塩処理装置1c−1〜1c−(n−1)には、洗浄水ライン76c−1〜76c−(n−1)によって後段の脱塩処理装置1cから排出された濃縮塩水DW−2〜DW−nが供給され、脱塩処理装置1c−nには、洗浄水ライン76c−nによって淡水タンク12の淡水WWが供給される。ここで、各脱塩処理装置1c−1〜1c−nで生成される脱塩水PW−1〜PW−(n−1)および淡水WWの塩分濃度は、脱塩水PW−1の塩分濃度(C1%)>脱塩水PW−2の塩分濃度(C2%)>脱塩水PW−3の塩分濃度(C3%)>・・・>脱塩水PW−(n−1)の塩分濃度(Cn-1%)>淡水WWの塩分濃度(0.1%)である。また、脱塩処理装置1c−2〜1c−nでの脱塩処理時に生成されて前段の脱塩処理装置1c−1〜1c−(n−1)での脱塩処理時に洗浄水として利用される濃縮塩水DW−2〜DW−nの塩分濃度、および脱塩処理装置1c−nでの脱塩処理時に洗浄水として利用される淡水WWの塩分濃度は、濃縮塩水DW−2の塩分濃度(C´2)>濃縮塩水DW−3の塩分濃度(C´3)>濃縮塩水DW−4の塩分濃度(C´4)>・・・>濃縮塩水DW−nの塩分濃度(C´n)>淡水WWの塩分濃度(0.1%)である。
【0067】
ここで、脱塩処理装置1cは、実施の形態1の構成を適用してもよいし、実施の形態2の構成を適用してもよい。例えば、実施の形態1の脱塩処理装置1を適用する場合には、図1の淡水ライン73を図14の塩水ライン71c−2〜71c−nとし、不図示の処理水タンクを間に配してその脱塩槽の上側空間を後段の脱塩処理装置1c(詳細には後段の脱塩処理装置1cの脱塩槽の上側空間)と接続する。なお、実施の形態1の構成を適用する場合には、図14の洗浄水ライン76c−1〜76c−nによる脱塩処理装置1c間(詳細には前段の脱塩処理装置1cの脱塩槽の上側空間と後段の脱塩処理装置1cの脱塩槽の下側空間との間)の接続や、脱塩処理装置1c(詳細にはその脱塩槽の上側空間)と淡水タンク12との間の接続は不要である。ただし、実施の形態1で変形例として説明したように、クラスレートと濃縮塩水を固液分離した後にクラスレートを洗浄する場合には、洗浄水ライン76c−1〜76c−(n−1)によって、不図示の洗浄水タンクを間に配してその脱塩槽の下側空間を前段の脱塩処理装置1c(詳細にはその脱塩槽の上側空間)と接続すればよい。また、洗浄水ライン76c−nによって、その脱塩層の上側空間を淡水タンク12と接続すればよい。
【0068】
一方、実施の形態2を適用する場合には、図8の淡水ライン73bを図14の塩水ライン71c−2〜71c−nとし、不図示の処理水タンクを間に配してその脱塩槽の上側空間を後段の脱塩処理装置1c(詳細にはその脱塩槽の上側空間)と接続する。また、図8の洗浄水ライン76を図14の洗浄水ライン76c−1〜76c−(n−1)とし、不図示の洗浄水タンクを間に配してその脱塩槽の下側空間を前段の脱塩処理装置1c(詳細にはその脱塩槽の上側空間)と接続する。
【0069】
以上説明したように、実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の効果を奏することができるとともに、多段に接続された脱塩処理装置1cによって海水に対する脱塩処理を繰り返し行うことができるので、塩分濃度が十分に低い淡水を得ることができる。また、個々の脱塩処理装置1cにおいて脱塩処理を効率良く行うことができるので、脱塩処理装置1cを多段に接続して脱塩処理を繰り返し行う場合であっても、塩水の脱塩処理システム2cの段数(脱塩処理装置1cの数)を減らすことが可能となる。
【0070】
また、最後段の脱塩処理装置1c−n以外の各脱塩処理装置1cでは、クラスレートと濃縮塩水とを固液分離した後、その脱塩処理装置1cより後段の脱塩処理装置1cで生成されて排出された濃縮塩水を洗浄水として用いてクラスレートを洗浄し、周囲に残存する濃縮塩水を洗い流すことができる。ここで、後段の脱塩処理装置1cからの濃縮塩水は、クラスレートの周囲に残存する濃縮塩水、すなわち、その脱塩処理装置1cでの脱塩処理に伴い生成される濃縮塩水よりも塩分濃度が低く、洗浄効果がある。
【0071】
なお、実施の形態3では、最後段の脱塩処理装置1c−nを除く各脱塩処理装置1cでの脱塩処理において、1つ後ろの脱塩処理装置1cで生成した濃縮塩水を洗浄水として利用することとした。これに対し、洗浄水として用いる濃縮塩水は、その脱塩処理装置1cでの脱塩処理に伴い生成する濃縮塩水よりも塩分濃度の低いものであればよく、1つ後ろの脱塩処理装置1cで生成した濃縮塩水に限らず、後段のいずれかの脱塩処理装置1cで生成したものであればよい。このとき、離れた脱塩処理装置1cで生成された濃縮塩水ほど塩分濃度が低い。このため、より離れた脱塩処理装置1cで生成された濃縮塩水を洗浄水として用いるほど、クラスレートの洗浄効果をより向上させることができる。これによれば、脱塩処理をより効率良く行うことができるので、塩水の脱塩処理システム2cの段数(脱塩処理装置1cの数)を減らすことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明の脱塩処理装置および塩水の脱塩処理方法は、塩水を効率良く脱塩処理し、淡水の回収率を向上させるのに適している。
【符号の説明】
【0073】
1,1b,1c−1〜1c−n 脱塩処理装置
11 海水タンク
12 淡水タンク
13 濃縮塩水タンク
20,20b 脱塩槽
211 多孔質板
21 仕切り部材
22 攪拌装置
23 冷却コイル
30 圧力ポンプ
40 ゲストガスホルダ
50 回収槽
60 搬送部
61 搬送路
62 搬送スクリュー
63 モータ
64 二重ダンパ
71,71c−1〜71c−n 塩水ライン
72 ゲストガスライン
721,722 分岐ライン
73,73b,73c 淡水ライン
74,74c 濃縮塩水ライン
75 アウトガスライン
76,76c−1〜76c−n 洗浄水ライン
81〜87 制御弁
90 制御部
2c 塩水の脱塩処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のゲストガスのクラスレート生成温度およびクラスレート生成圧力の下で塩水と前記ゲストガスとを接触させてクラスレートを生成し、前記クラスレートと該クラスレートの生成に伴い生成した濃縮塩水とを固液分離して淡水を得る脱塩処理装置であって、
少なくとも一部が多孔質板で形成された仕切り部材によって内部空間が上側空間と下側空間とに仕切られた脱塩槽と、
前記上側空間に塩水を導入する塩水導入手段と、
前記上側空間および前記下側空間に高圧のゲストガスを導入するゲストガス導入手段と、
前記上側空間の前記塩水を前記クラスレート生成温度に冷却する冷却手段と、
前記クラスレートの生成時には、前記ゲストガス導入手段によって前記高圧のゲストガスを前記下側空間に導入して前記下側空間の圧力を前記上側空間の圧力よりも高くした状態で、前記上側空間の圧力を前記クラスレート生成圧力に調整し、前記固液分離時には、前記ゲストガス導入手段によって前記高圧のゲストガスを前記上側空間に導入して前記上側空間の圧力を前記下側空間の圧力よりも高くする圧力調整手段と、
を備えることを特徴とする脱塩処理装置。
【請求項2】
前記上側空間と連通し、前記クラスレートを回収する回収槽と、
前記多孔質板の上面近傍に設けられ、前記クラスレートを前記回収槽に搬送する搬送手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の脱塩処理装置。
【請求項3】
前記上側空間に前記淡水を導入する淡水導入手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の脱塩処理装置。
【請求項4】
所定のゲストガスのクラスレート生成温度およびクラスレート生成圧力の下で塩水と前記ゲストガスとを接触させてクラスレートを生成し、前記クラスレートと該クラスレートの生成に伴い生成した濃縮塩水とを固液分離して淡水を得る塩水の脱塩処理方法であって、
少なくとも一部が多孔質板で形成された仕切り部材によって内部空間が上側空間と下側空間とに仕切られた脱塩槽の前記下側空間に高圧のゲストガスを導入して前記下側空間の圧力を前記上側空間の圧力よりも高くした状態で、前記上側空間に前記塩水を導入し、前記多孔質板によって前記ゲストガスを前記塩水内に散気させるとともに、前記上側空間の圧力を前記クラスレート生成圧力に調整しながら前記塩水を前記クラスレート生成温度に冷却することで、前記クラスレートを生成するクラスレート生成工程と、
前記上側空間に前記高圧のゲストガスを導入して前記上側空間の圧力を前記下側空間の圧力よりも高くし、前記多孔質板によって前記上側空間の前記クラスレートおよび前記濃縮塩水をろ過して固液分離する固液分離工程と、
を含むことを特徴とする塩水の脱塩処理方法。
【請求項5】
前記固液分離された前記上側空間内の前記クラスレートを前記脱塩槽外に搬送して回収するクラスレート回収工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の塩水の脱塩処理方法。
【請求項6】
前記上側空間に淡水を導入し、前記固液分離された前記上側空間内の前記クラスレートを前記淡水によって洗浄しつつ分解するクラスレート分解工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の塩水の脱塩処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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