説明

脱水装置

【課題】ろ過体での目詰まりを低減し、メンテナンス性を向上させることができる脱水装置を提供する。
【解決手段】脱水装置10は、無端状に構成されたろ過体16、18を走行させることにより、このろ過体16、18で処理対象物を搬送しながら脱水する脱水装置であって、ろ過体16、18は、その走行方向と直交する方向の回転軸32によって軸支された状態で該走行方向に沿って配列された複数のプレート24によって形成されると共に、隣接する各プレート24の一部が前記走行方向で順に積層するように設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状に構成されたろ過体で汚泥等の処理対象物を搬送しながら脱水する脱水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、処理対象物である下水や工場排水等の汚泥等を脱水処理する脱走装置として、遠心式、ベルトプレス式、スクリュー式等が使用されており、このうち、ベルト式のもの(ベルトプレス脱水装置)は、消費電力が小さく、通常汚泥の脱水に優れるという特性を有している。
【0003】
例えば、特許文献1には、周回移動する無端状に構成されたろ布ベルト間で加圧脱水し、その含水率を低下させるベルトプレス脱水装置において、ろ布ベルト間で汚泥を加圧脱水する1次脱水部と、この1次脱水部で脱水処理された汚泥をろ布ベルトと押圧ローラとを用いてさらに脱水する2次脱水部とを備えた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−42312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のベルトプレス脱水装置では、無端状に構成されたろ布ベルトを用いて汚泥等の処理対象物を加圧し、分離された液体分(分離液)を、ろ布ベルトに形成された微小な孔部(ろ過孔)を通して外部に排出することでろ過脱水する。このため、微小なろ過孔への処理対象物の目詰まりを防ぐことはできず、この目詰まりを取り除くために、大掛かりな洗浄作業等が必要となっており、メンテナンス作業に要する手間とコストが大きく、また、ろ布ベルトの定期的な交換も必要となっていた。
【0006】
本発明は、上記従来の問題を考慮してなされたものであり、ろ過体での目詰まりを低減し、メンテナンス性を向上させることができる脱水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る脱水装置は、無端状に構成されたろ過体を走行させることにより、該ろ過体で処理対象物を搬送しながら脱水する脱水装置であって、前記ろ過体は、その走行方向と直交する方向の回転軸によって軸支された状態で該走行方向に沿って配列された複数のプレートによって形成されると共に、隣接する各プレートの一部が前記走行方向で順に積層するように設置されていることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、回転軸によって軸支された複数のプレートを順に積層してろ過体を形成し、このろ過体で汚泥等の処理対象物を脱水する。これにより、各プレート間の隙間をろ過孔して利用して分離液を円滑に外部へと排出することができる。しかも、ろ過体の軌道が大きく曲がっている部分では各プレート間のろ過孔の開度が広がることから、該ろ過孔に詰まった固形分等が脱落除去されるため、ろ過体での目詰まりを低減し、メンテナンス性を向上させることができる。
【0009】
前記プレートは、前記回転軸によって回転自由な状態で軸支されているとよい。そうすると、脱水運転中には処理対象物からの圧力によってろ過孔の開度が狭くなり、分離液のみが円滑に排出される一方、ろ過体の軌道が折り返し部分にある場合や運転停止中には、前記圧力が作用しなくなるため、ろ過孔の開度が広くなり、これによって当該ろ過孔に詰まった固形分を容易に取り除くことができる。
【0010】
前記プレートは、前記処理対象物の搬送面の幅方向両端側に起立した壁部を有すると、該壁部が、各プレートの搬送面から幅方向側方へと処理対象物が流出し、脱落することを防止するための流出防止板、換言すれば、無端帯状に配列された各プレートの搬送面上に処理対象物を保持しておくための側面保持板として機能するため、処理対象物の流出を抑制することができる。
【0011】
前記プレートには、隣接するプレートの表面に当接することで該隣接するプレートとの間に形成される隙間の高さを規定するスペーサが設けられるとよい。そうすると、プレートの対向面同士が密着し、ろ過孔となるプレート間の隙間が閉塞されることを確実に防止することができる。
【0012】
また、当該脱水装置は、当該脱水装置は、前記ろ過体を一対備え、一方の前記ろ過体を複数のローラ間に架け渡して無端状に周回させた第1ループ部と、該第1ループ部の下方に配置され、他方の前記ろ過体を複数のローラ間に架け渡して無端状に周回させた第2ループ部とが設けられ、前記第1ループ部の上面部分によって前記処理対象物を重力脱水する重力脱水部が構成されると共に、対向配置された前記第1ループ部の下面部分と前記第2ループ部の上面部分とによって前記処理対象物を加圧脱水する加圧脱水部が構成されており、前記重力脱水部で脱水処理された処理対象物が、前記第1ループ部の端から前記第2ループ部の上面部分へと落下した後、前記加圧脱水部へと投入される構成であると、複数段の脱水部を有する装置構成を処理対象物の搬送方向でコンパクトに構成することができる。
【0013】
この場合、前記ろ過体は、前記複数のローラ間に架け渡されて周回駆動される可撓性部材と、該可撓性部材に設けられた前記回転軸によって軸支される前記複数のプレートとを有する構成とすると、プレートを無端軌道で円滑に走行させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転軸によって軸支された複数のプレートを順に積層してろ過体を形成し、このろ過体で汚泥等の処理対象物を脱水する。これにより、各プレート間の隙間をろ過孔として利用して分離液を円滑に外部へと排出することができる。しかも、ろ過体の軌道が大きく曲がっている部分では各プレート間のろ過孔の開度が広がることから、該ろ過孔に詰まった固形分等が脱落除去されるため、ろ過体での目詰まりを低減し、メンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る脱水装置の全体構成図である。
【図2】図2は、ろ過体の一部省略斜視図である。
【図3】図3は、脱水装置の正面図である。
【図4】図4は、ろ過体を構成する各プレートの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る脱水装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る脱水装置10の全体構成図である。本実施形態に係る脱水装置10は、下水汚泥等の処理対象物を、ろ過体を用いた1次脱水部12と2次脱水部14とで順に搬送しながら脱水処理し、脱水ケーキとして排出する装置であり、脱水機のみならず濃縮機として用いても勿論よい。
【0018】
図1に示すように、脱水装置10は、無端軌道(無限軌道)で走行するろ過体(上ろ過体、第1ループ部)16を用いて処理対象物を重力脱水する1次脱水部12と、1次脱水部12で脱水処理された処理対象物をろ過体16とろ過体(下ろ過体、第2ループ部)18との間で加圧脱水する2次脱水部14とを備える。
【0019】
1次脱水部12は、複数(本実施形態では2個)のローラ(ロール)20、22に巻き掛けられ、一方向に周回駆動される無端状に構成されたろ過体16を備え、ろ過体16の走行方向(矢印A方向)に向かって上方に傾斜した上面部分16aが、重力脱水部として機能する。
【0020】
図2は、ろ過体16の一部省略斜視図であり、ろ過体16の無端軌道上に複数配列され、当該ろ過体16の無端帯状の外面(ろ過ベルト)を形成するプレート24のうちの一部を図示したものである。図3は、脱水装置10の正面図であり、ローラ22側から1次脱水部12及び2次脱水部14を見た構成図である。また、図4は、ろ過体16、18を構成する各プレート24の動作説明図であり、ローラ22周辺を拡大した側面図である。
【0021】
ろ過体16が巻き掛けられるローラ20は、図1〜図3に示すように、細い駆動軸26の両端にそれぞれ設けられ、該駆動軸26によって回転する一対の円板である。他方のローラ22も、ローラ20と略同様であり、駆動軸28の両端にそれぞれ設けられ、該駆動軸28によって回転する一対の円板である。本実施形態では、ローラ20にローラ22より大径なものを使用している。
【0022】
ろ過体16は、図1〜図4に示すように、左右のローラ20、22間にそれぞれ巻き掛けられた一対の走行ベルト30、30を備え、これら走行ベルト30、30間に、その走行方向(延在方向)に沿って複数(図1では31枚の構成を例示)のプレート24が配列されることで、各プレート24によって当該ろ過体16の外面(外周面)が形成されている。走行ベルト30は、ローラ20、22に巻き掛けられて循環走行可能な可撓性部材である。
【0023】
プレート24は、その長手方向が左右の走行ベルト30、30間に渡る方向、つまり処理対象物の搬送方向である走行ベルト30の走行方向に直交する方向に配置されると共に、各走行ベルト30、30の内面にそれぞれ突設された回転軸32、32によって長手方向両端面が軸支されている。各プレート24は、回転軸32を軸中心として回転自由な状態で両走行ベルト30、30間に設置されている。一対の回転軸32、32は、互いの軸方向が同軸上となる位置に設けられ、その軸方向は走行ベルト30の走行方向と直交している。
【0024】
このような各プレート24は、隣接するプレート24の一部同士、つまり短辺方向で一端側となる前方部位と後方部位とが、走行方向で順に積層するように配置されている。この積層により、各プレート24の回転軸32を中心とする回転範囲が規制されると共に、隣接するプレート24間に形成される隙間(クリアランス)34が、当該ろ過体16の無端帯状の内外面間を連通し、処理対象物からの分離液(ろ液)を外部に排出するろ過孔(孔部)34として機能する。各プレート24は、処理対象物の移動方向に対して、脱水された分離液の出口方向が常に順方向となるように構成されており、円滑な排水が確保されている。
【0025】
各プレート24が回転可能であるため、ろ過孔34の開度は可変に構成されており、その開度(プレート24の積層方向での隙間34の高さ)は、例えば、0.5mm〜5mm程度の範囲に設定される。また、プレート24は、例えば、ステンレス鋼等からなる金属製で長方形の薄板(例えば、板厚2mm程度)で形成される。図1及び図4に示すように、ろ過体16の各プレート24は、脱水運転時の走行方向Aで前方方向に向かって順に積層されつつ、走行ベルト30のローラ20、22への巻き掛け方向に沿って1周するように配置されている。
【0026】
図1〜図4に示すように、各プレート24における処理対象物の搬送面(外面)の幅方向両端側には、プレート状の壁部(側壁部)35がそれぞれ起立している。壁部35は、各プレート24の搬送面から幅方向側方へと処理対象物が流出し、脱落することを防止するための流出防止板、つまり無端帯状に配列された各プレート24の搬送面上に処理対象物を保持しておくための側面保持板であり、ろ過体16の側部を1周するように並んでいる。
【0027】
図2〜図4に示すように、各プレート24間の互いに重なり合う部位の端部には、コの字形のスペーサ36が着脱可能に取り付けられている。なお、図1では、図面の見易さを確保するため、スペーサ36の図示を省略している。
【0028】
スペーサ36は、隣接するプレート24の表面に当接することで隙間34(ろ過孔34)の高さを規定するものである。つまり、スペーサ36は、当該脱水装置10の脱水運転時における処理対象物からの押圧力によって、積層された各プレート24の対向面(表面)同士が当接・密着し、ろ過孔34が閉塞されることを防止する。なお、各プレート24は回転軸32によって回転自由に軸支されており、処理対象物からの押圧力によって揺動動作するため、スペーサ36を設置しなくてもろ過孔34は十分に確保可能であるが、スペーサ36を設けることにより、ろ過孔34をより確実に確保することができ、しかも所望の開度(開口寸法)に規定することが可能となる。
【0029】
回転軸32は、走行ベルト30の内面に突設され、複数(プレート24の設置枚数と同数)が該走行ベルト30の延在方向に沿って配列されたピン形状の固定軸である。各回転軸32の先端が、プレート24の長手方向の各端面にそれぞれ形成された軸穴38に回転可能な状態で挿入されることで、プレート24は、各回転軸32、32によって左右の走行ベルト30、30の対向面間で回転自由に軸支されている。本実施形態では、回転軸32が挿入される軸穴38をプレート24の端面の中心に形成した構成を例示したが(図4等参照)、回転軸32は、プレート24の端面において、該端面の長手方向で中心よりも両端側に寄った位置に設けられてもよい。
【0030】
なお、回転軸32は、プレート24の各端面にそれぞれ固定された状態で、各走行ベルト30の内面に形成された図示しない軸穴に回転可能な状態で挿入される構成であってもよく、また、プレート24の各端面及び各走行ベルト30の内面にそれぞれ図示しない軸穴を設け、回転軸32の両端がそれぞれの軸穴に回転可能な状態で挿入される構成等であってもよい。
【0031】
このようなろ過体16では、走行ベルト30が十分な張力で各ローラ20、22に巻き掛けられており、図示しないモータ等の駆動源により、駆動軸26、28を介して走行ベルト30及びこれに軸支された各プレート24を図1中の矢印A方向に走行(移動)させることができる。
【0032】
1次脱水部12において、ろ過体16の上面部分16aによって構成される重力脱水部は、上部のローラ20、22間に張られたろ過体16の外面(表面)、つまり積層された各プレート24の搬送面に処理対象物が載置されることで、該処理対象物に含まれる水分を重力によってろ過分離する。すなわち、上面部分16aの上流側(ローラ22側)のろ過体16上に投入された処理対象物は、該ろ過体16によって下流側(ローラ20側)へと搬送されつつ、水分のみが重力によって各プレート24間のろ過孔34を通過してろ過脱水される。ろ過された水分(分離液、ろ液)は、ろ過体16の内面側(裏面側)へと流出・落下した後、ろ液受皿40によって回収される。
【0033】
次に、2次脱水部14は、複数のローラ(ロール)42、44に巻回され、一方向に周回駆動される無端状に構成されたろ過体18と、前記ろ過体16とを備え、ろ過体16とろ過体18との外面(表面)同士を近接させて対向配置した部分、つまりろ過体16の下面部分16bとろ過体18の上面部分18aとが加圧脱水部(プレス部)として機能する。
【0034】
ろ過体18が巻き掛けられるローラ42、44は、ろ過体16のローラ20、22と同様な構成であり、図1及び図3に示すように、それぞれ駆動軸46、48の両端に設けられた一対の円板である。
【0035】
ろ過体18は、ろ過体16と同様、左右のローラ42、44間にそれぞれ巻き掛けられた一対の走行ベルト50、50を備え、これら走行ベルト50、50間に、その走行方向(延在方向)に沿って複数(図1では47枚の構成を例示)のプレート24が配列されることで、各プレート24によって当該ろ過体18の外面(外周面)が形成されている。
【0036】
このようなろ過体18についても、上記ろ過体16と同様に、可撓性部材である走行ベルト50が十分な張力で各ローラ42、44に巻き掛けられており、図示しないモータ等の駆動源により、駆動軸46、48を介して走行ベルト50及びこれに軸支された各プレート24を図1中の矢印B方向に走行(移動)させることができる。なお、本実施形態では、ろ過体16の走行速度よりもろ過体18の走行速度を低く設定している。
【0037】
ろ過体18は、ろ過体16と走行経路や距離等が異なる以外は、実質的に同様な構成であるため、ろ過体16と同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。なお、ろ過体18では、各プレート24の幅方向両端側に起立形成される壁部(流出防止板、側面保持板)52が、ろ過体16の壁部35との干渉を防止するために、該壁部35よりも多少内側となる位置に設けられている(図3及び図4参照)。
【0038】
2次脱水部14において、ろ過体16の下面部分16bと、ろ過体18の上面部分18aとを対向配置して構成される加圧脱水部では、これらろ過体16とろ過体18とを同一方向(矢印A、B方向)へと移動させ、両ろ過体16、18の外面間で処理対象物を挟持・加圧することで、該処理対象物に含まれる水分をろ過分離する。
【0039】
すなわち、1次脱水部12を構成するろ過体16の上面部分16aの端(ローラ20側端部)から落下した処理対象物は、ろ過体18の上面部分18aの上流側(ローラ42側)に着地した後、該ろ過体18によって搬送され、ろ過体16の下面部分16bとろ過体18の上面部分18aとの対向面間に引き込まれる。この際、下面部分16bと上面部分18aとの対向面間の距離が、下流側に向かって漸次小さくなることで、処理対象物はこの対向面間で挟持・加圧された状態で下流側へと搬送されつつ、水分のみが両ろ過体16、18による加圧力によってろ過体18を構成する各プレート24間のろ過孔34を通過してろ過脱水される。ろ過された水分は、2次脱水部14を構成するろ過体18の内面側(裏面側)へと流出・落下し、さらにろ過体18の下面部分18bも通過した後、ろ液受皿54によって回収される。
【0040】
次に、以上のように構成される脱水装置10の動作について説明する。
【0041】
先ず、1次脱水部12の上流側に投入された処理対象物(以下、処理対象物として汚泥を例に説明する)は、ろ過体16の上面部分16aで搬送されつつ重力脱水(自然脱水)される。汚泥は、図示しない凝集混合槽によって所定の凝集剤と混合された凝集汚泥として1次脱水部12に投入するとよい。
【0042】
この場合、脱水運転の開始前には、各プレート24には外力が作用していないことから、各プレート24の回転軸32を中心とする回転位相は自由位置にある。従って、各プレート24間の隙間34(ろ過孔34)は、例えば、ある程度大きな開度を持った状態等となっている。
【0043】
そして、脱水運転が開始されると、図4に示すように、ろ過体16の上面部分16aでは、汚泥が移動方向Aの移動力を受けるため、各プレート24の回転軸32よりも下流側に位置した下流側部位24aの外面が、汚泥によって押圧力P1で押圧される。これにより、各プレート24は、図4で時計方向(矢印θ1参照)に回転され、下流側部位24aに設けられたスペーサ36が、重なり合って隣接する後方のプレート24の上流側部位24b(回転軸32よりも上流側に位置した部位)の外面と当接し、該スペーサ36の高さ分の開度に一律に規定されたろ過孔34(隙間34)が形成される。従って、汚泥から重力脱水された分離液は、各プレート24間に形成されたろ過孔34を介してろ液受皿40へと排出される(図4中の上面部分16aでの矢印L参照)。
【0044】
続いて、1次脱水部12で重力脱水された汚泥は、ろ過体16の上面部分16aのローラ20側の端(下流側端部)から落下し、ろ過体18の上面部分18aの上流側へと着地する。そこで、この汚泥は、ろ過体18によって走行方向Bへと搬送されて2次脱水部14に投入されると共に、ろ過体16、18間で挟持・加圧されて脱水され、その含水率が所望の値まで低下された後、脱水ケーキとして2次脱水部14から外部に排出される。
【0045】
この場合、脱水運転の開始前には、各プレート24には外力が作用していないことから、上記1次脱水部12を構成するろ過体16の上面部分16aの場合と同様に、各プレート24の回転軸32を中心とする回転位相は自由位置にある。このため、2次脱水部14において、ろ過体16の下面部分16bとろ過体18の上面部分18aを構成する各プレート24間の隙間34(ろ過孔34)は、例えば、ある程度大きな開度を持った状態等となっている。
【0046】
そして、脱水運転が開始されると、図4に示すように、ろ過体16の下面部分16bでは、汚泥が移動方向Aの移動力と、対向する上面部分18aとの間での加圧力とを受けるため、各プレート24の下流側部位24aの外面が、汚泥によって押圧力P2で押圧される。これにより、各プレート24は、図4で時計方向(矢印θ1参照)に回転し、下流側部位24aに設けられたスペーサ36が、重なり合って隣接する後方のプレート24の上流側部位24bの外面と当接する。
【0047】
一方、ろ過体18の上面部分18aでは、脱水運転時、図4に示すように、汚泥が移動方向Bの移動力と、対向する下面部分16bとの間での加圧力とを受けるため、各プレート24の下流側部位24aの外面が、汚泥によって押圧力P3で押圧される。これにより、各プレート24は、図4で反時計方向(矢印θ2参照)に回転し、下流側部位24aに設けられたスペーサ36が、重なり合って隣接する後方のプレート24の上流側部位24bの外面と当接し、該スペーサ36の高さ分の開度に一律に規定されたろ過孔34(隙間34)が形成される。従って、汚泥から加圧脱水された分離液は、下面部分18aを構成する各プレート24間に形成されたろ過孔34を介してろ液受皿54へと排出される(図4中の上面部分18aでの矢印L参照)。
【0048】
この際、本実施形態では、ろ過体16の走行速度よりもろ過体18の走行速度を低く設定しているため、2次脱水部14において、汚泥は移動方向A(B)へと搬送されるが、天面となるろ過体16の下面部分16bよりも、底面となるろ過体18の上面部分18aの移動速度が遅く、下面部分16bへの押圧力P2よりも上面部分18aへの押圧力P3が強くなるため、上面部分18aを構成する各プレート24を確実に矢印θ2方向へと回転させて所望の開度からなるろ過孔34を確実に形成することができる。
【0049】
また、図1及び図4に示すように、脱水運転時に無端軌道で周回するろ過体16、18は、その折り返し位置となるローラ20、22、42、44部分では、汚泥等からの外力が作用せず、しかも軌道が大きく曲がっているため、回転軸32に回転自由に軸支された各プレート24が大きく揺動し(図4中の矢印θ参照)、隣接するプレート24間の隙間34の開度が拡大する。このため、1次脱水部12や2次脱水部14において、仮にろ過体16、18のろ過孔34に固形物等が詰まった場合であっても、前記折り返し位置でのろ過孔34の開度の拡大により、詰まった固形物は容易に該ろ過孔34から脱落するため、目詰まりを除去するメンテナンス作業をなくすことができ、又は大幅に軽減することができる。つまり、脱水装置10は、実質的にメンテナンスフリーな状態で脱水運転を継続することができる。さらに、メンテナンス作業を行う場合には、例えば、ろ過体16、18の走行方向を通常運転時とは逆方向とする等の操作を行うだけで、各プレート24が逆方向に回転され、ろ過孔34の開度が変動するため、詰まった固形物を一層確実に落とすことができ、作業を大幅に軽減できる。
【0050】
しかも、2次脱水部14では、ろ過体16、18の下面部分16bと上面部分18aとの間にある程度の間隔を設けて加圧脱水部を形成しているため、従来のベルトプレス装置に比べて、加圧脱水部での汚泥(処理対象物)の保持量を増加させることができ、脱水処理量や脱水効率を向上させることができる。この際、各プレート24には、壁部35、52が幅方向側部に立設されているため、互いに離間した下面部分16bと上面部分18aとの間の側部から外部へと汚泥が流出することを防止できる。なお、2次脱水部14が狭い場合や汚泥量が少ない場合は壁部を設置しなくとも良い。
【0051】
以上のように、本実施形態に係る脱水装置10によれば、無端状に構成されたろ過体16、18を走行させることにより、該ろ過体16、18で処理対象物を搬送しながら脱水する脱水装置であって、ろ過体16、18は、その走行方向と直交する方向の回転軸32によって軸支された状態で該走行方向に沿って配列された複数のプレート24によって形成されると共に、隣接する各プレート24の一部が前記走行方向で順に積層するように設置されている。
【0052】
このように、回転軸32によって軸支された複数のプレート24を順に積層してろ過体16、18を形成し、このろ過体16、18で汚泥等の処理対象物を重力脱水又は加圧脱水することにより、各プレート24間の隙間34をろ過孔34として利用して分離液を円滑に外部へと排出することができ、しかも、ろ過体16、18の軌道が曲がっている部分では各プレート24間のろ過孔34の開度が広がるため、該ろ過孔34に詰まった固形分等が脱落除去される。すなわち、仮にろ過孔34に固形物が詰まったとしても、該固形物は脱水装置10の運転中に除去されることから、メンテナンス作業が不要となり、又は大幅に軽減される。
【0053】
当該脱水装置10は、一対のろ過体16、18を備え、一方のろ過体16を複数のローラ20、22間に架け渡して無端状に周回させた第1ループ部と、該第1ループ部の下方に配置され、他方のろ過体18を複数のローラ42、44間に架け渡して無端状に周回させた第2ループ部とが設けられ、前記第1ループ部の上面部分16aによって処理対象物を重力脱水する重力脱水部が構成されると共に、対向配置された前記第1ループ部の下面部分16bと前記第2ループ部の上面部分18aとによって処理対象物を加圧脱水する加圧脱水部が構成されており、前記重力脱水部で脱水処理された処理対象物が、前記第1ループ部の端から前記第2ループ部の上面部分18aへと落下した後、前記加圧脱水部へと投入される構成とされている。このため、複数段の脱水部を有する装置構成を処理対象物の搬送方向でコンパクトに構成することができる。
【0054】
勿論、1次脱水部12と2次脱水部14とを処理対象物の搬送方向に直列に並べた構成としてもよい。この場合、2次脱水部では、1次脱水部と同様に、処理対象物は重力脱水される。このような直列配置とすると、装置構成が処理対象物の搬送方向に長尺化することにはなるが、高さ方向での設置スペースを抑え、装置構成を簡素化することができるという利点がある。また、1次脱水部と2次脱水部とを個別に駆動可能とすれば、ろ布速度の変更が容易となり、2次脱水部のろ布速度を低下させることにより、脱水ケーキ含水率をさらに低下させることができる。
【0055】
また、各プレート24が回転軸32によって回転自由な状態で軸支されていると、2次脱水部14(加圧脱水部)において、脱水運転中には処理対象物からの圧力によってろ過孔34の開度が狭くなり、分離液のみが円滑に排出される一方、ろ過体16、18の軌道が折り返し部分にある場合や運転停止中には、前記圧力が作用しなくなるため、ろ過孔34の開度が広くなり、これによって当該ろ過孔34に詰まった固形分を容易に取り除くことができる。
【0056】
各プレート24は、処理対象物の搬送面の幅方向両端側に起立した壁部35、52を有する。このため、図1及び図4に示すように、ろ過体16の下面部分16bとろ過体18の上面部分18aとの間が互いに離間して形成された2次脱水部14(加圧脱水部)であっても、加圧挟持された処理対象物が、各プレート24の搬送面から幅方向側方へと流出することを防止できる。この際、図3に示すように、ろ過体16側の壁部35と、ろ過体18側の壁部52とは、互いに干渉しない位置で起立しているため、ろ過体16、18間が最も近接する位置(2次脱水部14の下流位置)においても両者が干渉せず、円滑な運転が可能となっている(図4参照)。
【0057】
各プレート24には、隣接するプレート24の表面に当接することで該隣接するプレート24との間に形成される隙間34の高さを規定するスペーサ36が設けられるとよい。そうすると、プレート24の対向面同士が密着し、ろ過孔34となる隙間34が閉塞されることを確実に防止することができる。この場合、スペーサ36をプレート24に対して着脱可能に構成すると、該スペーサ36を所望の高さを持つものに交換するだけで、ろ過孔34の開度を容易に規定・制御することができ、処理対象物の性状や処理量等に応じた最適な開度のろ過孔34を容易に形成することができる。
【0058】
なお、図1では、1次脱水部12として、重力脱水部によって処理対象物を重力脱水する構成を例示したが、該1次脱水部12についても、2次脱水部14と同様に、一対のプレート24間で処理対象物を挟持・加圧するプレス構造(ベルトプレス構造)としてもよい。このように構成する場合には、例えば、図1中に2点鎖線で示すように、複数のローラに巻き掛けられたろ過体60を設置してもよい。ろ過体60は、上記のろ過体16、18と同様な構造とするとよい。
【0059】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0060】
例えば、上記実施形態では、1次脱水部と2次脱水部の2段で処理対象物を脱水処理するシステムを例示したが、3段以上に分けて脱水処理するシステムとして構成しても勿論よい。
【0061】
また、上記実施形態では、ろ過体16、18を構成する各プレート24の積層方向が、処理対象物の移動方向に対して分離液の出口方向が常に順方向となる構成を例示したが、この出口方向は逆方向に構成されても勿論よく、処理対象物の性状や装置の仕様等に応じて適宜設計すればよい。
【符号の説明】
【0062】
10 脱水装置
12 1次脱水部
14 2次脱水部
16、18、60 ろ過体
16a、18a 上面部分
16b、18b 下面部分
24 プレート
30、50 走行ベルト
32 回転軸
34 隙間、ろ過孔
35、52 壁部
36 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に構成されたろ過体を走行させることにより、該ろ過体で処理対象物を搬送しながら脱水する脱水装置であって、
前記ろ過体は、その走行方向と直交する方向の回転軸によって軸支された状態で該走行方向に沿って配列された複数のプレートによって形成されると共に、隣接する各プレートの一部が前記走行方向で順に積層するように設置されていることを特徴とする脱水装置。
【請求項2】
請求項1記載の脱水装置において、
前記プレートは、前記回転軸によって回転自由な状態で軸支されていることを特徴とする脱水装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の脱水装置において、
前記プレートは、前記処理対象物の搬送面の幅方向両端側に起立した壁部を有することを特徴とする脱水装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱水装置において、
前記プレートには、隣接するプレートの表面に当接することで該隣接するプレートとの間に形成される隙間の高さを規定するスペーサが設けられることを特徴とする脱水装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱水装置において、
当該脱水装置は、前記ろ過体を一対備え、一方の前記ろ過体を複数のローラ間に架け渡して無端状に周回させた第1ループ部と、該第1ループ部の下方に配置され、他方の前記ろ過体を複数のローラ間に架け渡して無端状に周回させた第2ループ部とが設けられ、
前記第1ループ部の上面部分によって前記処理対象物を重力脱水する重力脱水部が構成されると共に、対向配置された前記第1ループ部の下面部分と前記第2ループ部の上面部分とによって前記処理対象物を加圧脱水する加圧脱水部が構成されており、
前記重力脱水部で脱水処理された処理対象物が、前記第1ループ部の端から前記第2ループ部の上面部分へと落下した後、前記加圧脱水部へと投入されることを特徴とする脱水装置。
【請求項6】
請求項5記載の脱水装置において、
前記ろ過体は、前記複数のローラ間に架け渡されて周回駆動される可撓性部材と、該可撓性部材に設けられた前記回転軸によって軸支される前記複数のプレートとを有することを特徴とする脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−107049(P2013−107049A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254949(P2011−254949)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】