説明

腐食促進試験用噴霧装置

【課題】金属材料への腐食促進液の噴霧を効率的に行うことのできる腐食促進試験用噴霧装置を提供する。
【解決手段】本発明の腐食促進試験用噴霧装置は、腐食促進液噴霧室3を形成する装置本体1と、腐食促進液噴霧室3に複数個の試験片2を搭載した試験片台7を搬送する試験片台搬送機構6と、試験片台搬送機構6により試験片台7と共に腐食促進液噴霧室3に搬送された試験片2の表面に腐食促進液を吹き付ける腐食促進液吹付ノズル8とを備え、さらに、試験片台搬送機構により腐食促進液噴霧室3に搬送される前の複数個の試験片2を搭載した試験片台7を複数段に収納しておく試験片台収納ストッカ9と、試験片台収納ストッカ9に収納された試験片台7を試験片台搬送機構6の上に1台ずつ供給する試験片台供給機構10とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩水噴霧試験、キャス(CASS:Copper-Accelerated Acetic Acid Salt Spray)試験などの金属材料へ腐食促進液を噴霧するときに用いられる腐食促進試験用噴霧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩水噴霧試験は鋼などの金属からなる試験片の表面に所定濃度の塩溶液を噴霧して金属材料の耐食性を試験する方法であり、キャス試験は試験片の表面に噴霧される塩溶液として5%塩化ナトリウム溶液に塩化第二銅、酢、酸を添加した酸性塩水を用いて金属材料の耐食性を試験する方法である。
このような金属材料へ腐食促進液を噴霧するときに用いられる腐食促進試験用噴霧装置として、例えば特許文献1には、噴霧塔を中央部に有する試験槽と、この試験槽の上部開口を開閉する開閉カバーとを備え、噴霧塔の上端部から放射状に噴霧された塩溶液などの腐食促進液を噴霧塔の周囲に置かれた複数個の試験片表面に付着させるものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−194302号公報(0002−0010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような腐食促進試験用噴霧装置によると、噴霧塔の周囲に置かれた複数個の試験片に対して腐食促進液をほぼ均一に付着させることができるが、噴霧塔から腐食促進液を噴霧する前に複数個の試験片を噴霧塔の周囲に手作業によって載置したり、噴霧塔の周囲に載置された複数個の試験片を腐食促進液の噴霧が終了する度に試験槽から手作業によって取り出したりしなければならないため、効率が悪いという問題点があった。
本発明は上述した問題点を解決すべくなされたものであり、その目的は、金属材料への腐食促進液の噴霧を効率的に行うことのできる腐食促進試験用噴霧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、金属からなる複数個の試験片に対して腐食促進液を噴霧するための腐食促進液噴霧室を形成する装置本体と、該装置本体により形成された前記腐食促進液噴霧室に複数個の試験片を搭載した試験片台を搬送する試験片台搬送機構と、該試験片台搬送機構により前記試験片台と共に腐食促進液噴霧室に搬送された試験片の表面に腐食促進液を吹き付ける腐食促進液吹付ノズルとを備えた腐食促進試験用噴霧装置であって、前記試験片台搬送機構により前記腐食促進液噴霧室に搬送される前の前記複数個の試験片を搭載した試験片台を複数段に収納しておく試験片台収納ストッカと、該試験片台収納ストッカに収納された試験片台を前記試験片台搬送機構の上に1台ずつ供給する試験片台供給機構とを、さらに備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の腐食促進試験用噴霧装置において、前記試験片台搬送機構により前記腐食促進液噴霧室から搬出された試験片台を前記試験片台収納ストッカの反対側で複数段に収納する試験片台収納棚を、さらに備えたことを特徴とする。
本発明の請求項3に係る発明は、請求項2に記載の腐食促進試験用噴霧装置において、前記試験片台収納棚の最上段部に空の棚板を供給する棚板供給機構と、該棚板供給機構により前記試験片台収納棚の最上段部に供給された棚板の上に前記試験片台を割り付ける試験片台割付機構とを、さらに備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の腐食促進試験用噴霧装置において、前記腐食促進液吹付ノズルを水平面内で互いに直交する二軸方向に移送するノズル移送機構を、さらに備えたことを特徴とする。
本発明の請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の腐食促進試験用噴霧装置において、前記試験片台の上に載置された試験片の表面を水により洗浄する水洗浄装置と、前記試験片台の上に載置された試験片の表面の水を純水で置換する純水置換装置と、前記試験片台の上に載置された試験片の表面にエアーを吹き付けて前記試験片の表面を水切りする水切装置と、前記試験片台の上に載置された試験片の表面に温風を吹き付けて前記試験片の表面を乾燥処理する温風乾燥装置とを、さらに備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の腐食促進試験用噴霧装置において、前記試験片を吸着する複数の試験片吸着体を、前記試験片台に設けたことを特徴とする。
本発明の請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の腐食促進試験用噴霧装置において、前記試験片に対して乾湿繰返試験を行う乾湿繰返試験機を、さらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、腐食促進液の噴霧が終了する度に試験片台の上に複数個の試験片を手作業で載置しなくても腐食促進液噴霧室に複数個の試験片を試験片台と共に自動的に供給することができる。従って、金属材料への腐食促進液の噴霧を効率的に行うことができる。また、試験片毎に腐食促進液の種類や付着状態を変えることもできる。
請求項2に係る発明によれば、試験片台収納ストッカから腐食促進液噴霧室に搬送された試験片台を試験片台収納ストッカに戻すことなく腐食促進液を試験片の表面に噴霧することができる。従って、金属材料への腐食促進液の噴霧をより効率的に行うことができる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、腐食促進液を吹き付けられた試験片や試験片台を試験片台収納ストッカに戻すことなく多数の試験片に腐食促進液を比較的短時間で噴霧することができる。
請求項4に係る発明によれば、試験片台の上に置かれた複数個の試験片に対して腐食促進液をミスト状に且つ均一に噴霧することができる。従って、金属材料への腐食促進液の噴霧を精度よく行うことができる。
【0011】
請求項5に係る発明によれば、乾湿繰返試験が終了して、試験片台の上に載置された複数個の試験片に対して水洗・乾燥を自動的に行うことができる。
請求項6に係る発明によれば、複数個の試験片を搭載した試験片台を試験片台搬送機構により腐食促進液噴霧室に搬送するときに試験片が振動などによって位置ずれを起こすことを防止することができる。
請求項7に係る発明によれば、腐食促進液の付着状態の異なる試験片の乾湿繰返試験を1つの乾湿繰返試験機を用いて行うことができる。また、乾湿繰返試験機を複数用いれば、条件の異なる乾湿繰返試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る腐食促進試験用噴霧装置の概略構成を示す図である。
【図2】試験片台の一例を示す平面図である。
【図3】図2のA−A断面を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る腐食促進試験用噴霧装置の試験片台収納ストックに収納された試験片台が試験片台供給機構により試験片台搬送機構の上に供給された状態を示す図である。
【図5】試験片台搬送機構の上に供給された試験片台が腐食促進液噴霧室に搬送された状態を示す図である。
【図6】試験片台と共に腐食促進液噴霧室に搬送された試験片の表面に腐食促進液が吹き付けられている状態を示す図である。
【図7】複数個の試験片を搭載した試験片台が腐食促進液噴霧室から試験片台収納ストッカの反対側に搬送された状態を示す図である。
【図8】試験片台収納ストッカの反対側に搬送された試験片台が試験片台収納棚の最上段部に位置する棚板の上に割り付けられた状態を示す図である。
【図9】試験片台収納棚の最上段部に空の棚板が棚板供給機構から供給された状態を示す図である。
【図10】試験片台収納棚に収納された試験片台の1つが試験片台割付機構によって試験片台搬送機構の上に戻された状態を示す図である。
【図11】試験片台搬送機構の上に戻された試験片台が水洗浄装置の下方位置に搬送された状態を示す図である。
【図12】水洗浄装置により洗浄された試験片が試験片台と共に純水置換装置の下方位置に搬送された状態を示す図である。
【図13】純水置換装置により純水置換された試験片が試験片台と共に水切装置の下方位置に搬送された状態を示す図である。
【図14】水切装置により水切り処理された試験片が試験片台と共に温風乾燥装置の下方位置に搬送された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図14を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る腐食促進試験用噴霧装置の概略構成を示す図であって、本発明の一実施形態に係る腐食促進試験用噴霧装置は、装置本体1、試験片台搬送機構6、腐食促進液吹付ノズル8、試験片台収納ストッカ9、試験片台供給機構10、試験片台収納棚11、棚板供給機構13、試験片台割付機構14、ノズル移送機構15、水洗浄装置16、純水置換装置17、水切装置18および温風乾燥装置19を備えている。
【0014】
装置本体1は鋼などの金属からなる複数個の試験片2に対して塩溶液などの腐食促進液を噴霧するための腐食促進液噴霧室3を形成するものであって、腐食促進液噴霧室3を開閉する開閉扉4,5を両側に有している。
試験片台搬送機構6は装置本体1により形成された腐食促進液噴霧室3に複数個の試験片2を搭載した試験片台7を搬送するものであって、例えば多数の搬送ローラから構成されている。
【0015】
腐食促進液吹付ノズル8は試験片台搬送機構6により試験片台7と共に腐食促進液噴霧室3に搬送された試験片2の表面に腐食促進液を吹き付けるものであって、気液噴出口(図示せず)を下向きにして腐食促進液噴霧室3に設けられている。
試験片台収納ストッカ9は試験片台搬送機構6により腐食促進液噴霧室3に搬送される前の複数個の試験片2を搭載した試験片台7を複数段に収納しておくものであって、例えば装置本体1の図中左側に設置されている。
【0016】
試験片台供給機構10は試験片台収納ストッカ9に収納された試験片台7を試験片台搬送機構6の上に1台ずつ供給するものであって、例えば試験片台収納ストッカ9の近傍に設けられている。
試験片台収納棚11は試験片台搬送機構6により腐食促進液噴霧室3から搬出された複数個の試験片2を搭載した試験片台7を試験片台収納ストッカ9の反対側で複数段に収納するものであって、例えば装置本体1の図中右側に設置されている。
【0017】
棚板供給機構13は試験片台収納棚11の最上段部に空の棚板12を供給するものであって、例えば試験片台収納棚11の図中右側に設けられている。なお、棚板供給機構13により試験片台収納棚11の最上段部に供給された棚板12は図示しない棚板昇降機構により上下方向に一段ずつ昇降駆動されるようになっている。
試験片台割付機構14は棚板供給機構13により試験片台収納棚11の最上段部に供給された棚板12の上に試験片台7を割り付けるものであって、試験片台収納棚11の上方に設けられている。なお、試験片台割付機構14は試験片台搬送機構6により試験片台収納ストッカ9の反対側に搬送された試験片台7を棚板12の上に割り付けるように構成されている。
【0018】
ノズル移送機構15は腐食促進液吹付ノズル8を水平面内で互いに直交する二軸方向(例えば図中左右方向と紙面に垂直な方向)に移送するものであって、図示を省略したが、例えば水平面内で互いに直交する二軸方向に腐食促進液吹付ノズル8をガイドする二つのリニアガイドと、これらリニアガイドの各スライダをボールねじ等を介してスライド駆動する二つの駆動モータなどから構成されている。
【0019】
水洗浄装置16は試験片台7の上に載置された試験片2の表面を水により洗浄するものであって、例えば腐食促進液噴霧室3と試験片台収納棚11との間に設けられている。
純水置換装置17は試験片台7の上に載置された試験片2の表面の水を純水で置換するものであって、例えば腐食促進液噴霧室3と水洗浄装置16との間に設けられている。
水切装置18は試験片台7の上に載置された試験片2の表面にエアーを吹き付けて試験片2の表面を水切りするものであって、例えば腐食促進液噴霧室3と純水置換装置17との間に設けられている。
【0020】
温風乾燥装置19は試験片台7の上に載置された試験片2の表面に温風を吹き付けて試験片2の表面を乾燥処理するものであって、例えば装置本体1と試験片台収納ストッカ9との間に設けられている。
図2は試験片台の一例を示す平面図、図3は図2のA−A断面を示す図であって、図1に示した試験片台7は、図2及び図3に示すように、試験片2を吸着する複数の試験片吸着体22を有している。これらの試験片吸着体22は例えば円柱状の永久磁石からなり、試験片台7の上面部に所望の間隔で固着されている。この間隔は試験片2の寸法、形状により任意に変えることができる。
【0021】
なお、試験片台搬送機構6、試験片台供給機構10、棚板供給機構13、試験片台割付機構14、腐食促進液吹付ノズル8、ノズル移送機構15、水洗浄装置16、純水置換装置17、水切装置18および温風乾燥装置19等は図示しない制御装置により制御される。また、各試験片に対応する腐食促進液の噴霧条件、洗浄条件、乾燥条件などを制御装置に予め入力しておく。これにより、運転開始ボタンを押下することにより、自動的に腐食促進試験用噴霧装置を稼動できる。
【0022】
図4〜図14は本発明の一実施形態に係る腐食促進試験用噴霧装置の作用を示す図であって、以下、これらの図を参照して腐食促進液吹付工程、乾湿繰返試験工程および洗浄工程について説明する。
[腐食促進液吹付工程]
例えば図示しない運転開始ボタンを押下すると、試験片台供給機構10が作動し、図4に示すように、試験片台収納ストッカ9に収納された複数の試験片台7のうち1台の試験片台7が複数個の試験片2と共に試験片台搬送機構6の上に供給される。
試験片台7が試験片台搬送機構6の上に供給されると、開閉扉4が所定位置まで上昇する。そして、開閉扉4が所定位置まで上昇すると、試験片台搬送機構6が作動し、図5に示すように、複数個の試験片2を搭載した試験片台7が腐食促進液噴霧室3に搬送される。
【0023】
複数個の試験片2を搭載した試験片台7が腐食促進液噴霧室3に搬送されると、開閉扉4が所定位置まで下降すると共に試験片台搬送機構6の作動が一旦停止する。また、このとき試験片台供給機構10が再び作動し、複数個の試験片2を搭載した別の試験片台7が試験片台搬送機構6の上に供給される。
開閉扉4が所定位置まで下降すると、図6に示すように、腐食促進液吹付ノズル8から試験片2の表面に腐食促進液がミスト状に吹き付けられる。また、このときノズル移送機構15が作動し、ノズル移送機構15の作動によって腐食促進液吹付ノズル8が水平面内を互いに直交する二軸方向に移動する。なお、腐食促進液の切替は、オフラインで液の流路を洗浄し、所定時間切替えた液を噴霧して、置換する。
【0024】
腐食促進液吹付ノズル8から試験片2の表面全体に腐食促進液がミスト状に吹き付けられると、開閉扉4と反対側の開閉扉5が所定位置まで上昇する。そして、開閉扉5が所定位置まで上昇すると、試験片台搬送機構6が再び作動し、図7に示すように、複数個の試験片2を搭載した試験片台7が腐食促進液噴霧室3から試験片台収納ストッカ9の反対側に搬送される。
【0025】
複数個の試験片2を搭載した試験片台7が腐食促進液噴霧室3から試験片台収納ストッカ9の反対側に搬送されると、開閉扉5が所定位置まで下降すると共に開閉扉4が所定位置まで上昇する。そして、開閉扉4が所定位置まで上昇すると、図8に示すように、試験片台供給機構10により試験片台搬送機構6の上に供給された別の試験片台7が試験片台搬送機構6によって腐食促進液噴霧室3に搬送される。
【0026】
また、このとき試験片台割付機構14が作動し、図8に示すように、試験片台搬送機構6により試験片台収納ストッカ9の反対側に搬送された試験片台7が試験片台収納棚11の最上段部に位置する棚板12の上に割り付けられる。そして、試験片台収納棚11の最上段部に位置する棚板12の上に複数の試験片台7が割り付けられる。
試験片台収納棚11の最上段に位置する棚板12の上に複数の試験片台7が割り付けられると、図示しない棚板昇降機構が作動し、最上段に位置する棚板12が一段ずつ下降する。また、このとき棚板供給機構13が作動し、図9に示すように、試験片台収納棚11の最上段部に空の棚板12が供給される。
【0027】
[乾湿繰返試験工程]
試験片2に対して乾湿繰返試験を実施する場合は、複数個の試験片2が搭載された試験片台7を試験片台収納棚11の棚板群と共に手動で自然乾燥場へ運ぶ。そして、試験片2を自然乾燥処理した後、試験片台7を棚板群と共に乾湿繰返試験機に手動でセットし、乾湿繰返試験を行う。乾湿繰返試験機は、1台でも複数台でもよい。
【0028】
[洗浄工程]
乾湿繰返試験機で乾湿繰返試験が実施された試験片2と試験片台7を棚板12と共に乾湿繰返試験機から取り出す。そして、試験片2と試験片台7を棚板12と共に試験片台収納棚11に手動で再び収納した後、例えば図示しない洗浄開始ボタンを押下する。そうすると、試験片台割付機構14が作動し、図10に示すように、試験片台収納棚11に収納された複数台の試験片台7のうち1台の試験片台7が試験片台搬送機構6の上に戻される。
【0029】
試験片台割付機構14により試験片台7が試験片台搬送機構6の上に戻されると、開閉扉5が所定位置まで上昇する。そして、開閉扉5が所定位置まで上昇すると、試験片台搬送機構6が作動し、図11に示すように、複数個の試験片2を搭載した試験片台7が水洗浄装置16の下方位置に搬送される。
試験片台7が水洗浄装置16の下方位置に搬送されると、試験片台搬送機構6の作動が一旦停止する。そして、水洗浄装置16が作動し、試験片台7の上に置かれた試験片2の表面に水が水洗浄装置16から散水され、水洗浄装置16からの水によって試験片2の表面が洗浄処理される。
【0030】
試験片台7の上に置かれた試験片2の表面が水洗浄装置16によって洗浄されると、試験片台搬送機構6が作動し、図12に示すように、複数個の試験片2を搭載した試験片台7が純水置換装置17の下方位置に搬送される。そして、試験片台7が純水置換装置17の下方に搬送されると、試験片台搬送機構6の作動が一旦停止する。そして、純水置換装置17から純水が供給され、試験片2の表面の水を純水に置換する。
【0031】
試験片台7の上に置かれた試験片2の表面の水が純水置換装置17によって純水に置換されると、試験片台搬送機構6が再び作動し、図13に示すように、複数個の試験片2を搭載した試験片台7が水切装置18の下方位置に搬送される。そして、試験片台7が水切装置18の下方位置に搬送されると、試験片台搬送機構6の作動が一旦停止する。また、このとき水切装置18が作動し、水切装置18から試験片2の表面に吹き付けられるエアーによって試験片2の表面が水切りされる。
【0032】
試験片2の表面が水切装置18によって水切りされると、開閉扉4が所定位置まで上昇する。そして、試験片台搬送機構6が作動し、図14に示すように、水切装置18で水切り処理された試験片2が試験片台7と共に温風乾燥装置19の下方位置に搬送される。
試験片2が試験片台7と共に温風乾燥装置19の下方位置に搬送されると、温風乾燥装置19が作動する。そして、温風乾燥装置19から試験片2の表面に温風が送風され、試験片2の表面が乾燥処理される。
【0033】
温風乾燥装置19で乾燥処理された試験片2は、試験片台7と共に試験片台収納ストッカ9の下方位置に試験片台搬送機構6によって搬送される。そして、試験片台収納ストッカ9の下方位置に搬送された試験片2は試験片台7と共に試験片台収納ストッカ9に試験片台供給機構10によって収容される。
上述した本発明の一実施形態では、試験片台搬送機構6により腐食促進液噴霧室3に搬送される前の複数個の試験片2を搭載した試験片台7を複数段に収納しておく試験片台収納ストッカ9と、この試験片台収納ストッカ9に収納された試験片台7を試験片台搬送機構6の上に1台ずつ供給する試験片台供給機構10とを備えたことで、腐食促進液の噴霧が終了する度に試験片台7の上に複数個の試験片2を手作業で載置しなくても装置本体1により形成された腐食促進液噴霧室3に複数個の試験片2を試験片台7と共に自動的に供給することができる。従って、金属材料への腐食促進液の噴霧を効率的に行うことができる。
【0034】
また、試験片台搬送機構6により腐食促進液噴霧室3から搬出された試験片台7を試験片台収納ストッカ9の反対側で複数段に収納する試験片台収納棚11を備えたことで、試験片台収納ストッカ9から腐食促進液噴霧室3に搬送された試験片台7を試験片台収納ストッカ9に戻すことなく腐食促進液を試験片2の表面に噴霧することができる。従って、金属材料への腐食促進液の噴霧をより効率的に行うことができる。
【0035】
また、試験片台収納棚11の最上段部に空の棚板12を供給する棚板供給機構13と、この棚板供給機構13により試験片台収納棚11の最上段部に供給された棚板12の上に試験片台7を割り付ける試験片台割付機構14とを備えたことで、腐食促進液を吹き付けられた試験片2や試験片台7を試験片台収納ストッカ9に戻すことなく多数の試験片2に比較的短時間で腐食促進液を噴霧することができる。
【0036】
また、腐食促進液吹付ノズル8を水平面内で互いに直交する二軸方向に移送するノズル移送機構15を備えたことで、試験片台7の上に置かれた複数個の試験片2に対して腐食促進液をミスト状に且つ均一に噴霧することができる。従って、金属材料への腐食促進液の噴霧を精度よく行うことができる。
また、試験片台7の上に載置された試験片2の表面を水により洗浄する水洗浄装置16と、試験片台7の上に載置された試験片2の表面の水を純水で置換する純水置換装置17と、試験片台7の上に載置された試験片2の表面にエアーを吹き付けて試験片2の表面を水切りする水切装置18と、試験片台7の上に載置された試験片2の表面に温風を吹き付けて試験片2の表面を乾燥処理する温風乾燥装置19とを備えたことで、試験片台7の上に載置された複数個の試験片2に対して乾湿繰返試験をしたものの洗浄・乾燥を自動的に行うことができる。
【0037】
また、試験片2を吸着する複数の試験片吸着体22を試験片台7に設けたことで、複数個の試験片2を搭載した試験片台7を試験片台搬送機構6により腐食促進液噴霧室3に搬送するときに試験片2が振動などによって位置ずれを起こすことを防止することができる。
なお、上述した本発明の一実施形態では、装置本体1により形成された腐食促進液噴霧室3に複数個の試験片2を搭載した試験片台7を搬送する試験片台搬送機構6として、多数の搬送ローラからなるものを例示したが、これに限られるものではなく、試験片台搬送機構6を例えば複数のベルトコンベヤから構成してもよい。
【0038】
また、上述した本発明の一実施形態では、試験片台7の上に置かれた複数個の試験片2に対して乾湿繰返試験を行うときに試験片台収納棚11に収納された試験片台7を棚板12と共に試験片台収納棚11から取り出し、手作業によって乾湿繰返試験機にセットするようにしたが、試験片台収納棚11に収納された試験片台7を乾湿繰返試験機に自動的にセットするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…装置本体
2…試験片
3…腐食促進液噴霧室
4,5…開閉扉
6…試験片台搬送機構
7…試験片台
8…腐食促進液吹付ノズル
9…試験片台収納ストッカ
10…試験片台供給機構
11…試験片台収納棚
12…棚板
13…棚板供給機構
14…試験片台割付機構
15…ノズル移送機構
16…水洗浄装置
17…純水置換装置
18…水切装置
19…温風乾燥装置
22…試験片吸着体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる複数個の試験片に対して腐食促進液を噴霧するための腐食促進液噴霧室を形成する装置本体と、該装置本体により形成された前記腐食促進液噴霧室に複数個の試験片を搭載した試験片台を搬送する試験片台搬送機構と、該試験片台搬送機構により前記試験片台と共に腐食促進液噴霧室に搬送された試験片の表面に腐食促進液を吹き付ける腐食促進液吹付ノズルとを備えた腐食促進試験用噴霧装置であって、
前記試験片台搬送機構により前記腐食促進液噴霧室に搬送される前の前記複数個の試験片を搭載した試験片台を複数段に収納しておく試験片台収納ストッカと、該試験片台収納ストッカに収納された試験片台を前記試験片台搬送機構の上に1台ずつ供給する試験片台供給機構とを、さらに備えたことを特徴とする腐食促進試験用噴霧装置。
【請求項2】
請求項1に記載の腐食促進試験用噴霧装置において、前記試験片台搬送機構により前記腐食促進液噴霧室から搬出された前記複数個の試験片を搭載した試験台を前記試験片台収納ストッカの反対側で複数段に収納する試験片台収納棚を、さらに備えたことを特徴とする腐食促進試験用噴霧装置。
【請求項3】
請求項2に記載の腐食促進試験用噴霧装置において、前記試験片台収納棚の最上段部に空の棚板を供給する棚板供給機構と、該棚板供給機構により前記試験片台収納棚の最上段部に供給された棚板の上に前記試験片台を割り付ける試験片台割付機構とを、さらに備えたことを特徴とする腐食促進試験用噴霧装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の腐食促進試験用噴霧装置において、前記腐食促進液吹付ノズルを水平面内で互いに直交する二軸方向に移送するノズル移送機構を、さらに備えたことを特徴とする腐食促進試験用噴霧装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の腐食促進試験用噴霧装置において、前記試験片台の上に載置された試験片の表面を水により洗浄する水洗浄装置と、前記試験片台の上に載置された試験片の表面の水を純水で置換する純水置換装置と、前記試験片台の上に載置された試験片の表面にエアーを吹き付けて前記試験片の表面を水切りする水切装置と、前記試験片台の上に載置された試験片の表面に温風を吹き付けて前記試験片の表面を乾燥処理する温風乾燥装置とを、さらに備えたことを特徴とする腐食促進試験用噴霧装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の腐食促進試験用噴霧装置において、前記試験片を吸着する複数の試験片吸着体を、前記試験片台に設けたことを特徴とする腐食促進試験用噴霧装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の腐食促進試験用噴霧装置において、前記試験片に対して乾湿繰返試験を行う乾湿繰返試験機を、さらに備えたことを特徴とする腐食促進試験用噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−93184(P2012−93184A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239899(P2010−239899)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(591006298)JFEテクノリサーチ株式会社 (52)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(000107583)スガ試験機株式会社 (28)
【Fターム(参考)】