説明

膜厚むら検査装置

【課題】検査対象物が大きくなっても、同じ撮像条件で得られた画像情報に基づいて膜厚むらの検査ができ、微妙な膜厚むらに対しても精度の高い検査ができる装置を提供する。
【解決手段】表面に皮膜が形成された検査対象物10の、皮膜形成面の少なくとも一部を撮像し、得られた画像情報に基づいて検査対象物上の皮膜の膜厚むらを検査する膜厚むら検査装置であって、検査対象物又は撮像部4の少なくとも一方を移動させる移動部2と、移動中に撮像部で撮像された所定範囲の画像を移動位置毎に移動位置情報を付加して登録する画像登録部と、移動位置情報が付加された所定範囲の画像を移動位置の順に並べ全体画像として合成する画像合成部と、合成された全体画像の画像情報に基づいて検査対象物の色むらを検出する色むら検出部とを具備し、撮像部で撮像された画像の所定範囲は、撮像部に対して同じ角度で観察された範囲であることを特徴とする膜厚むら検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルターの製造工程などにおけるガラスや透光性の樹脂材などの基板上に形成された、カラー皮膜や透明電極膜の厚みむら(いわゆる、膜厚むら)を検査するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶モニタなどに用いられるカラーフィルターの製造工程などにおいては、顔料分散の不均一や、成分凝集、膜厚変動による色むらが発生する事が知られている。その色むらが生じたままで製造作業を継続するという不都合の発生を防止するために、カメラと透過照明とを用いて、色むらの有無、程度などを検査することが行われていた(例えば、特許文献1)。
【0003】
さらに、膜厚むらの検査精度を高めるために、画像取得時の範囲を限定する、シェーディング補正と呼ばれる補正が行われている(例えば特許文献2)。
【0004】
シェーディング補正をする際、厳密な膜厚むらの検出をしない場合や、検査対象が小型の基板であれば、真横から見たときの角度を所定の範囲内に設定して取得画像を分割し、それらを並べ直して繋ぎ合わせて全面画像を生成すれば、検査のために十分な画像が得られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−234470号公報
【特許文献2】特開平9−210790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の液晶モニタの大型化に伴い、カラーフィルタ自体も大型化が進む一方である。さらに、表示画像のクオリティに対する要求も高く、カラーフィルタ全面の膜厚むらを同じ基準で検出することが求められている。
しかし、検査対象となる基板が大きくなると、図8に示すように、撮像範囲の中央部と両端部とでは、真横から見たときの角度(いわゆる、外見上の取付角度)が同じでも、撮像範囲の各部位と観察カメラとのなす角度(つまり、実際の観察における観察角度)が異なってしまう。つまり、所定のエリア51z内の各場所10z1〜10z6の基板10とカメラ40zとのなす角度θ1〜θ6が異なり、カメラ40zで観察する観察角度が異なることになる。
【0007】
そうすると、撮像エリア内の各部を同じ基準で検査しているとは言い難く、観察領域の中央部と両端部とで前記観察角度が大きく異なることに起因して、膜厚むらを検出する結果に差異が生じていた。さらに、この課題は、基板が大きくなり、1つのカメラで撮像する画角が広くなるにつれて、顕著に表れることになる。
【0008】
そこで本発明は、撮像する画角を広くしても、撮像領域のどの部分かにに関わらず、同様の検査結果を得ることができる、膜厚むら検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
表面に皮膜が形成された検査対象物の、前記皮膜形成面の少なくとも一部を撮像部により撮像し、得られた画像情報に基づいて、前記検査対象物上の皮膜の膜厚むらを検査する膜厚むら検査装置であって、
前記検査対象物又は前記撮像部の少なくとも一方を移動させる移動部と、
前記検査対象物と前記撮像部との相対位置を検出する位置検出部と、
前記移動中に前記撮像部で撮像された所定範囲の部分画像を記録する画像記録部と、
前記部分画像が撮像された前記相対位置を前記部分画像と関連付けて記録する画像撮像位置記録部と、
前記部分画像を前記相対位置の順に並べて全面画像として生成する全面画像生成部と、
合成された前記全面画像に基づいて前記検査対象物の膜厚むらを検出する膜厚むら検出部とを具備し、
前記部分画像が、前記検査対象物上の円弧状の範囲を撮像された画像であることを特徴とする膜厚むら検査装置である。
【0010】
上記膜厚むら検査装置を用いるので、
検査対象物が大きくなっても、撮像領域の中央部であるとか両端部であるとかどの部分であるかに影響されず、所定の円弧状の範囲であれば同じ観察角度で撮像されたものとして取り扱うことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、
前記画像記録部では、前記部分画像に加えて、前記部分画像が撮像された角度とは別の所定の角度をなす円弧状の範囲を撮像された別角度部分画像が記録され、
前記画像撮像位置記録部では、前記別角度部分画像が撮像された前記相対位置が前記別角度部分画像と関連付けて記録され、
前記画像生成部では、前記別角度部分画像が前記相対位置の順に並べて別角度全面画像として生成され、
前記膜厚むら検出部では、前記別角度全面画像に基づいて膜厚むらが検出されることを特徴とする、請求項1に記載の膜厚むら検査装置である。
【0012】
上記膜厚むら検査装置を用いれば、
エリアセンサーを用いて撮像した画像に基づいて、一度に複数の別角度全面画像を生成でき、それらの複数の別角度全面画像に基づいて膜厚むらを検出することができる。
そのため、形成された皮膜の代表膜厚が予定されていたものと異なっていた場合でも、一度の相対移動動作中に取得して生成された画像から、適宜別画像全面画像を選択して、膜厚むらの検出を行える。そうすることで、撮像部の角度を変更させたり、前記相対移動を繰り返したりして、あらためて膜厚むらの検出に最適な角度で撮像し直す必要がなくなるので、迅速に検査を完了させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、
前記全面画像と前記別角度全面画像のいずれを用いて膜厚むらを検出するかを選択する検査画像選択部をさらに備え、
前記膜厚むら検出部では、前記検査画像選択部で選択された前記全面画像又は前記別角度全面画像に基づいて膜厚むらが検出されることを特徴とする、請求項2に記載の膜厚むら検査装置である。
【0014】
上記膜厚むら検査装置を用いれば、
微妙な膜厚むらを含む検査対象物に対して、取得した前記全面画像と複数取得した前記別角度全面画像の中からよりコントラストが大きい全面画像を選択して、その選択した全面画像に基づいて膜厚むらの検出をすることができる。そのため、より高感度の膜厚むら検出を行うことができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、
前記全面画像と前記別角度全面画像とを多重合成する多重合成部をさらに備え、
前記膜厚むら検出部では、前記多重合成画像に基づいて膜厚むらが検出されることを特徴とする、請求項2に記載の膜厚むら検査装置である。
【0016】
上記膜厚むら検査装置を用いれば、前記全面画像又は前記別角度全面画像のいずれかにノイズ成分が含まれていたとしても、観察角度の異なる複数の全面画像を多重合成することで、ノイズ成分は強調されずに、膜厚むら部分のみを強調した状態の多重合成画像が得られる。そのため、前記多重合成された画像に基づいて、膜厚むらの検出を行えば、ある一つの条件で撮像して得られた前記全面画像又は前記別角度全面画像に基づいてコントラストを強調するなどの処理をして膜厚むらを検出しようとする場合に比べて、ノイズ成分の影響を抑えることができる。そのため、微妙なコントラストの膜厚むらであっても、誤検出を防ぎつつ、的確に膜厚むらを検出することができる。
そして、従来の装置では膜厚むらかどうかの自動判断が難しかった様な、微妙なコントラストの膜厚むらであっても、より精度の高い膜厚むらの検出を迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
検査対象物を撮像する画角を広くしても、撮像領域のどの部分かにに関わらず、同様の検査結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明を具現化する形態の一例を示す平面図である。
【図1B】本発明を具現化する形態の一例を示す側面図である。
【図2】本発明を適用させて基板上の所定範囲を撮像する様子を示す概念図である。
【図3】本発明を具現化する形態の一例を示すシステム構成図である。
【図4】本発明を適用させて基板上の所定範囲を撮像する様子を示す斜視図である。
【図5】本発明を適用させて生成した複数の全体画像を示す斜視図である。
【図6A】本発明を具現化する形態の一例で得られた全面画像の一部の輝度分布を示すイメージ図である。
【図6B】本発明を具現化する形態の一例で得られた別角度全面画像の一部の輝度分布を示すイメージ図である。
【図6C】本発明を具現化する形態の一例で得られた全面画像の一部の輝度分布の増幅状態を示すイメージ図である。
【図6D】本発明を具現化する形態の一例で得られた多重合成画像の一部の輝度分布を示すイメージ図である。
【図7】本発明を具現化する形態の一例を示すフロー図である。
【図8】従来技術の形態で基板を撮像した様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態について、図を用いながら説明する。
図1Aは、本発明を具現化する形態の一例を示す平面図である。
図1Bは、本発明を具現化する形態の一例を示す側面図である。
各図において直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、XY平面を水平面、Z方向を鉛直方向
とする。特にZ方向は矢印の方向を上とし、その逆方向を下と表現する。
【0020】
膜厚むら検査装置1は、基板移動部2と、照明部3と、撮像部4と、検査部と、制御部9とを含んで、構成されている。ここでは、検査対象の基板として、ガラスにカラー皮膜が塗布された基板10を例示して説明する。
【0021】
基板移動部2は、装置フレーム11に取り付けられたコンベアフレーム21と、コンベアフレーム21に取り付けられたコンベアシャフト22と、コンベアシャフト22に取り付けられたコンベアローラ23と、コンベアローラ23を回転駆動させるためのコンベア駆動モータ24(図示せず)とを含んで構成されている。
【0022】
光源部3は、基板10に向けて検査用照明光を照射する照明ユニット31と、照明ユニット31から発せされる照明光33の明るさを調節するための照明光量調節ユニット30とを含んで構成されている。
照明ユニット31は、基板10の走行方向(つまり、X方向)及び幅方向(前記走行方向と直交する方向。つまり、Y方向)に所定の幅及び長さを有する発光部32を備えている。さらに、照明ユニット31は、基板10に対して斜め方向から照明光33を照射し、基板10の表面で反射した光50が撮像部4に入射されるように取り付けられている。
照明ユニット31としては、LED、ハロゲン、白熱電球、蛍光灯その他の発光体を含んで備えているものが例示できる。さらに、後述する撮像部4の感度波長や感度特性に合わせた所定の波長を含む光線を放射するもので、その所定の波長が、基板10の表面に形成された皮膜に一部吸収され、一部反射又は一部通過する波長であれば良い。
【0023】
撮像部4は、3台のカメラ40a〜40cを含んで構成されている。カメラ40a〜40cは、基板10の移動方向10vと概ね直交する方向に並べて配置されている。カメラ40a〜40cは、基板10の表面に対して斜め方向から平面視するように配置されており、照明ユニット31の発光部32から基板10に向けて照射された照明光33が、基板10の表面で反射し、その反射光50を基板10表面に合焦させた状態で撮像することができるように配置されている。
【0024】
それぞれのカメラ40a〜40cは、2次元のエリアセンサを用いることができ、基板10上の少なくとも一部を含む、長方形や台形状の範囲を撮像することができる。そして、前記長方形や台形状の範囲の内、円弧状の範囲を部分画像として記録する。
上述では、3台のカメラ40a〜40cを用いて、3ライン同時に撮像できる形態を例示したが、基板10の幅、カメラの画角などに応じて、適宜設定すれば良い。
【0025】
図2は、本発明を適用させて基板上の所定範囲を撮像する様子を示す概念図であり、上述のカメラ40aにより基板10a上の円弧状の所定範囲51a〜53aを撮像する様子を示している。カメラ40aは、ある時刻では基板10上の一部の範囲しか撮像できないが、基板10を矢印10vの方向に移動させることで、移動方向の所定領域55a(ライン状の領域)内を時系列的に撮像することができる。
【0026】
カメラ40aの撮像視野42aにおいて、ある時刻で撮像された画像を原画像とし、原画像のうち、円弧状の所定範囲51a〜53aの画像をそれぞれ部分画像と呼ぶ。また、前記部分画像は、基板10と反射光50とが同じ角度をなす領域となる円弧状の所定範囲51aの部分画像と、前記所定範囲51より遠方に位置する別の角度の円弧状の所定範囲52aの部分画像と、前記所定範囲51より近方に位置するさらに別の角度の円弧状の所定範囲53aの部分画像として表わすことができる。
【0027】
これら同じ観察角度で観察できる円弧状の所定範囲51a〜53aは、円弧状の範囲として規定され、原画像から切り出し処理を行って、部分画像とする。さらに前記部分画像は、斜め方向から撮像されているので、あおり補正が行われ、時系列順に並べられて基板1枚分の全面画像として生成される。
【0028】
膜厚むら検査装置1は、撮像部2として、上述のカメラ40aの他に、同様の構成のカメラ40b,40cが含まれて構成されている。そのため、基板10の表面の各部位は、矢印10vの方向に移動することで、いずれかの時刻において、カメラ40a〜40cの撮像視野42a〜42cのいずれかで撮像されるように構成されている。
【0029】
前記円弧状の範囲は、同じ観察角度で観察できる円弧状の所定範囲を、特定の角度±5度以内の範囲(或いは、特定の角度±3度以内の範囲)といったように規定し、それぞれ同じ角度の円弧状の所定範囲51a〜53aとして取り扱う。つまり、膜厚むらの検出において、撮像する角度の差が許容できる範囲(例えば、±5度以内、或いは±3度以内など)で同じ角度とする。そうすれば、原画像から部分画像の切り出しを行うための事前設定が容易にでき、膜厚むらの検出精度を損なうことなく、検査を行うことができる。
【0030】
さらに、前記円弧状の範囲をより厳密に規定(例えば、所定の角度±2度以内の範囲や、所定の角度±1度以内の範囲など)し、同心円の細い円弧状の範囲に限ることがより好ましい。そうすれば、微妙なコントラストの膜厚むらが、基板10上の中央または端のどの部分にあったとしても、同様の検出結果を得ることができ、十分信頼性の高い膜厚むらの検出を行うことができる。
【0031】
上述の同じ観察角度で観察できる円弧状の所定範囲は、検査対象物に形成された皮膜の厚さや種類により異なるので、検査品種毎に設定される検査用レシピファイルでの設定事項とする。また、上述の説明では、カメラの台数は3台としたが、これに限定されず、少なくとも1台以上あれば、本発明を適用させることができる。さらにカメラが複数になれば、撮像範囲の分解能を高くすることができ、より小さな膜厚むらの検出も容易になる。
【0032】
カメラ40a〜40cとしては、1次元のラインセンサや、2次元のエリアセンサが例示でき、この受光部がY方向に長く1列に並んでいるものや、Y方向に所定の長さを有するものを複数用い、それらをX方向及びY方向に所定の間隔を設けて複数列を互い違いに(いわゆる千鳥格子のように)配置したものが例示できる。
【0033】
そのため、後述で詳細及び変形例を説明をするが、基板10と撮像部4とを、移動部2によりX方向に相対移動させながら、基板10上の所定範囲の撮像を繰り返して部分画像を取得し、取得した部分画像から全面画像を生成し、基板10の全面を撮像したものとして取り扱うことができる。
【0034】
また上述では、基板の形態としてガラス基板を例示したが、塩ビ系、アクリル系又はポリカーボネート系などの透光性樹脂材基板であっても適用できる。
【0035】
[システム構成]
図3は、本発明を具現化する形態の一例を示すシステム構成図である。図3に示すように、上述した基板移動部2、光源部3、撮像部4の各機器は、制御部9の各機器と接続されている。
【0036】
制御部9には、制御用コンピュータ90と、情報入力手段91と、情報出力手段92と、発報手段93と、情報記録手段94と、機器制御ユニット95と、画像処理ユニット96が接続されて含まれている。
【0037】
制御用コンピュータ90としては、マイコン、パソコン、ワークステーションなどの、数値演算ユニットが搭載されたものが例示される。
情報入力手段91としては、キーボードやマウスやスイッチなどが例示される。
情報出力手段92としては、画像表示ディスプレイやランプなどが例示される。
【0038】
発報手段93としては、ブザーやスピーカ、ランプなど、作業者に注意喚起をすることができるものが例示される。
情報記録手段94としては、メモリーカードやデータディスクなどの、半導体記録媒体や磁気記録媒体や光磁気記録媒体などが例示される。
機器制御ユニット95としては、プログラマブルコントローラやモーションコントローラと呼ばれる機器などが例示される。
【0039】
制御用コンピュータ90には、画像処理ユニット96を介して、撮像部4から出力された映像信号が入力される。前記入力画像は、画像処理部として機能する画像処理ユニット96で、膜厚むらの検査に適した画像処理が施される。
【0040】
その後、画像の輝度信号の差や変化度合いなどから、検査部において膜厚むらの候補を検出し、膜厚むらとして検出するかどうかの判断を行う検査が行われる。さらに画像処理ユニット96では、複数のカメラを用いてライン状の領域内を撮像した画像を時系列に繋ぎ合わせて基板1枚分の全面画像として合成する時系列合成処理をしたり、複数枚の画像を重ね合わせる多重合成処理をしたり、画像のコントラスト調節をしたりすることができる。
【0041】
この膜厚むらの検査部で検査をする際に用いられる画像処理部としては、上述の画像処理ユニット96に限らず、入手可能な画像処理機能を有する機器を採用することができる。例えば、一般にGPU(グラフィックプロセッシングユニット)と呼ばれ、制御用コンピュータ90の外部に設置される形態のものや、制御用コンピュータ90の筐体内に接続される形態のもの、制御用コンピュータ90の画像処理機能を利用したものなどが例示できる。また、上述の制御用コンピュータ90と画像処理ユニット96が、本発明における検査部を構成している。
【0042】
機器制御ユニット95は、膜厚むら検査装置1を構成する各制御機器(図示せず)と接続されており、それらに対して制御用信号を与えることにより、各機器を動作させたり静止させたりすることができるようになっている。
【0043】
[部分画像の取得と全体画像の生成]
図4は、本発明を適用させて基板上の所定範囲を撮像する様子を示す斜視図であり、図1Aを用いて説明した、基板10と、カメラ40a〜40cで撮像される
ある時刻t1〜t3の位置における、基板10t1〜10t3と撮像部で撮像される所定範囲を示している。
【0044】
図4(a)には、ある時刻t1の位置における、基板10t1上の所定範囲51aと別の角度の所定範囲52aとさらに別の角度の所定範囲53aとをカメラ40aにより撮像し、基板10t1上の所定範囲51bと別の角度の所定範囲52bとさらに別の角度の所定範囲53bとをカメラ40bにより撮像し、基板10t1上の所定範囲51cと別の角度の所定範囲52cとさらに別の角度の所定範囲53cとをカメラ40cにより撮像している状態が示されている。
【0045】
図4(b)には、ある時刻t1よりも後のある時刻t2の位置における、基板10t2上の所定範囲51aと別の角度の所定範囲52aとさらに別の角度の所定範囲53aとをカメラ40aにより撮像し、基板10t2上の所定範囲51bと別の角度の所定範囲52bとさらに別の角度の所定範囲53bとをカメラ40bにより撮像し、基板10t2上の所定範囲51cと別の角度の所定範囲52cとさらに別の角度の所定範囲53cとをカメラ40cにより撮像している状態が示されている。
【0046】
図4(c)には、ある時刻t2よりも後のある時刻t3の位置における、基板10t3上の所定範囲51aと別の角度の所定範囲52aとさらに別の角度の所定範囲53aとをカメラ40aにより撮像し、基板10t3上の所定範囲51bと別の角度の所定範囲52bとさらに別の角度の所定範囲53bとをカメラ40bにより撮像し、基板10t3上の所定範囲51cと別の角度の所定範囲52cとさらに別の角度の所定範囲53cとをカメラ40cにより撮像している状態が示されている。
【0047】
各時刻で取得されたそれぞれの部分画像は、画像記録部に記録されるとともに、位置検出部で得られた相対位置情報を前記部分画像と関連付けて、画像撮像位置記録部に記録される。前記部分画像と、前記相対位置の情報は、本発明の画像記録部として機能する情報記録手段94に保存される。
【0048】
図5は、本発明を適用させて生成した複数の全体画像を示す斜視図であり、ある角度で撮像された全面画像10a1と、別の角度で撮像されたものとして取り扱うことができる複数の別角度全面画像10a2,10a3が示されている。
画像処理ユニット96は、本発明の全面画像生成部として機能し、情報記録手段94に保存された各部分画像を、相対位置情報に基づいて相対位置の順に並べ、全面画像として生成する。併せて、別角度全面画像も生成する。前記全面画像及び前記別角度全面画像は、制御コンピュータ90を介して、情報記録手段94に保存したり、情報記録手段94から読み出したりすることができる。
【0049】
膜厚むら検査装置1は、基板移動部2の上流側に代表膜厚センサ48が配置されており、代表膜厚センサ48を用いて通過する基板10の代表膜厚を測定することができるように構成されている。代表膜厚センサ48で測定した代表膜厚の情報は、制御部9の機器制御ユニット95に出力される。膜厚むらの検出に用いる前記全面画像の元になる前記部分画像の範囲並びに、前記別角度全面画像の元になる前記別角度部分画像の範囲は、前記代表膜厚と膜厚むらの検出感度との関係を予め把握しておき、前記検査用レシピファイルの設定情報として設定しておく。
【0050】
代表膜厚センサ48としては、基板の最上面に形成された皮膜の上面と下面との寸法を測定するものが例示できる。例えば、基板表面に対して斜めから光を照射し、上面からの反射光と下面からの反射光とを三角測量法により測定すれば、厚みを算出することができる。代表膜厚センサ48は、基板上の1ヶ所についてピンポイントで計測する形態のものに限らず、基板上の数カ所や、所定の長さ又は範囲を測定したり、基板移動中の膜厚を連続的に又は断続的に測定したりして、平均値を出力するものが好ましい。そうすることで、基板上に形成された皮膜の代表膜厚の情報として出力できる。
【0051】
制御用コンピュータ90から機器制御ユニット95に対して各機器の制御パラメータが送信される。前記検査用レシピファイルは、膜厚むら検査する皮膜の種類(例えば、色違い、メーカ違い、品種違いなど)に応じて複数登録され、膜厚と観察角度及び照明の照射角度との最適条件を設定したプロファイル情報や、観察に用いる照明の光量などについての検査条件が登録されている。そのため、機器制御ユニット95では、前記検査用レシピファイルの設定情報と、前記代表膜厚情報に基づいて照明の光量を調節することができる。
また、前記検査用レシピファイルには、予め設定された全面画像と複数の別角度全面画像とを取得し、前記代表膜厚情報に基づいて、前記全面画像と複数の別角度全面画像のうちいずれか1つを選択して膜厚むらの検出に用いるような設定をしても良い。
【0052】
[多重合成画像の生成]
さらに前記検査用レシピファイルには、前記全面画像及び前記別角度全面画像を多重合成した、多重合成画像に基づいて膜厚むらの検出に用いるような設定をしても良い。
画像処理ユニット96は、情報記録手段94に保存された全面画像と別角度全面画像とを多重合成して多重合成画像を生成することができ、本発明の多重合成生成部として機能する。前記多重合成画像は、制御コンピュータ90を介して、情報記録手段94に保存したり、情報記録手段94から読み出したりすることができる。さらに検査部では、この多重合成画像に基づいて膜厚むらの検出を行うことができる。
【0053】
図6Aは、本発明を具現化する形態の一例で得られた全面画像の一部の輝度分布を示すイメージ図であり、全面画像10a1の位置Xにおける輝度分布45a1を示している。このイメージ図では、縦軸を輝度I、横軸を基板の幅方向の位置yとして表され、輝度分布45a1の中には、膜厚むらに起因の輝度変化部分46aと、ノイズ起因の輝度変化部分47aが含まれている様子を示している。
【0054】
図6Bは、本発明を具現化する形態の一例で得られた別角度全面画像の一部の輝度分布を示すイメージ図であり、別角度全面画像10a2,10a3の位置Xにおける輝度分布45a2,45a3を示している。このイメージ図では、縦軸を輝度I、横軸を基板の幅方向の位置yとして表され、輝度分布45a2,45a3の中には、膜厚むらに起因の輝度変化部分46aのみが含まれている様子を示している。
【0055】
図6Cは、本発明を具現化する形態の一例で得られた全面画像の一部の輝度分布の増幅状態を示すイメージ図であり、全面画像10a1の位置Xにおける輝度分布45a1を増幅して得られた輝度分布45Sを示している。このイメージ図では、縦軸を輝度I、横軸を基板の幅方向の位置yとして表され、輝度分布45Sの中には、同一全面画像を元に強調された膜厚むら起因の輝度変化部分46bと、同一全面画像を元に強調されたノイズ起因の輝度変化部分47bが含まれている様子を示している。
また、ノイズ起因の輝度変化部分47bは、輝度分布45a1、45s’、45Sと増幅されるにつれて、徐々に大きくなっている様子が示されている。
このように、1つの全面画像に含まれる輝度分布を増幅すると、膜厚むら起因の輝度変化部分が増幅されて検出しやすくなる一方、ノイズ起因の輝度変化部分も同時に増幅されてしまい、自動検査の判定が難しくなったり、後で作業者による判断が必要になったりする。
【0056】
図6Dは、本発明を具現化する形態の一例で得られた多重合成画像の一部の輝度分布を示すイメージ図であり、全面画像10a1に別角度全面画像10a2,10a3を多重合成して得られた多重合成画像の位置Xにおける輝度分布45Mを示している。このイメージ図では、縦軸を輝度I、横軸を基板の幅方向の位置yとして表され、輝度分布45Mの中には、同一全面画像を元に強調された膜厚むら起因の輝度変化部分46cと、同一全面画像を元に強調されたノイズ起因の輝度変化部分47cが含まれている様子を示している。複数の別角度全面画像を多重合成した場合、図6Cを用いて説明した場合(単純に増幅する場合)と異なり、別角度全面画像10a2,10a3の位置Xにおける輝度分布45a2,45a3には、膜厚むらに起因の輝度変化部分46aのみが含まれているため、膜厚むら起因の輝度変化部分は増幅されるが、ノイズ起因の輝度変化部分47cは増幅されない。なお、輝度分布45m’は、輝度分布45a1と45a2とを合成した状態を示している。
【0057】
[検査フロー]
図7は、本発明を具現化する形態の一例を示すフロー図である。図7では、基板10の上に形成されたカラー皮膜の膜厚むらを観察し検査する一連のフローが、ステップ毎に示されている。検査に先立ち、上述の検査用レシピファイルは予め設定しておく。
【0058】
先ず、基板10を、膜厚むら検査装置1の基板移動部2の上流側に設定した基板載置位置10aに載置し(s101)、下流側へ搬送移動させる(s102)。
次に、代表膜厚センサ48を用いて、基板10の上に形成されたカラー皮膜の代表膜厚を測定する(s103)。次に、前記代表膜厚情報に基づいて、検査用レシピファイルの登録情報とプロファイル情報とを参照し、撮像条件や撮像範囲を設定する。
【0059】
次に、設定した前記撮像条件及び前記撮像範囲に基づいて、基板10上の所定範囲を撮像(s104)し、撮像された部分の画像を記録する(s105)。
基板10上の全ての部位に対して撮像が終了したかどうかを判断し(s106)、撮像が終わっていなければ、基板10の搬送を続けながら、前記ステップs104へ戻り、上記動作を繰り返す。前記ステップs106で撮像が終了したと判断されれば、記録された部分画像に基づいて全体画像を生成し(s107)、前記全体画像に基づいて膜厚むらの検出を行う(s108)。
【0060】
次に、検査用レシピファイルに予め登録された任意設定に応じて、記録された別角度の部分画像に基づいて図5に示すような複数の別角度全体画像を生成し(s121)、前記別角度全体画像に基づいて膜厚むらの検出を行う(s122)。
【0061】
次に、検査用レシピファイルに予め登録された別の任意設定に応じて、生成された前記全体画像と別角度全体画像とを合成して合成画像を生成し(s126)、前記合成画像に基づいて膜厚むらの検出を行う(s127)。
【0062】
基板10が基板移動部2の下流側に設定した基板取り出し位置10bに到達すれば、コンベア駆動モータ24の回転を止めて、基板10の移動を停止し(s109)、基板移動部2から基板10を取り出す(s110)。
【0063】
上述のように、円弧状の範囲から部分画像を取得することで、撮像領域の中央も端も、同様の角度で撮像されたものして取り扱うことができる。
したがって、基板10が大型化しても、従来の技術のように長方形領域を繋ぎ合わせて全面画像として生成した場合に比べ、信頼性の高い検査結果を得ることができる。
【0064】
また、本発明に基づく検査では、必要に応じて上述のステップ121〜s127を行うことができる。ステップs121,s122を行うことにより、撮像角度の異なる画像を再度取得する必要がなく、撮像済画像の中から適宜選択して検査に用いることができる。そうすることで、ステップs108では判別できなかった、微妙なコントラストの膜厚むらを検出することができる。
さらに、代表膜厚センサ48の代表膜厚情報に基づいて、どの角度の全面画像を最初の検査対象とするかを適宜選択するようにすることができる。そうすれば、取得した全ての全面画像に対して(いわゆる、総当たりの)検査をする必要がなくなり、少ない枚数の別角度全面画像を使って、迅速に検査を完了させることができる。
【0065】
さらに、本発明に基づく検査では、ステップs126,s127を行うことで、上述のステップs108やステップs122の検査では検出が難しかった、極めて微妙なコントラストの膜厚むらを検出することができる。
この理由として、上述のステップs108やステップs122の検査では、生成された1枚分の全面画像に基づいて膜厚むらを強調しようとすると、本来検査したい膜厚むらの部分だけでなく、撮像の際に含まれるノイズ成分も強調処理されてしまう可能性がある。そうすると、極めて微妙なコントラストの膜厚むらは、検出が難しい場合があった。また、検出結果の信頼性を確かめるために、熟練者が画像を再確認する場合などもあった。
【0066】
しかし、前記観察角度の異なる複数の全面画像を多重合成する処理を行うことで、ノイズ成分は強調されずに、膜厚むら部分のみを強調した状態の合成画像が得られる。
そのため、前記多重合成された画像に基づいて、膜厚むらの検出を行えば、ある一つの条件で撮像して得られた全面画像に基づいてコントラストを強調するなどの処理をして膜厚むらを検出しようとする場合に比べて、ノイズ成分の影響を抑えることができ、極めて微妙なコントラストの膜厚むらであっても、的確に検出することができる。そして、従来の装置では膜厚むらかどうかの自動判断が難しかった様な、微妙なコントラストの膜厚むらであっても、より精度の高い膜厚むらの検出を迅速に行うことができる。
【0067】
[バリエーション]
上述した膜厚むら検査装置1とは別の形態の膜厚むら検査装置1aについて例示する。
別の形態の膜厚むら検査装置1aでは、本発明を構成する移動部として、基板10を静止させた状態で撮像部3を移動させる形態の構成とする。具体的には、装置フレーム11上にX方向に長さを有するレールを取り付け、前記レール上を自在に移動及び静止できるスライド駆動ユニットを搭載し、前記スライド駆動ユニットに照明ユニット31と撮像部4とを連結して取り付け、前記スライド駆動ユニットを走行移動させる。
【0068】
或いは、前記スライド駆動ユニットを2つ搭載し、それぞれに照明ユニット31と撮像部4を搭載し、それぞれのスライド駆動ユニットを所定の間隔を保って走行移動させる。そのため、別の形態の膜厚むら検査装置1aでは、基板10を静止させたまま、照明ユニット31と撮像部4とがX方向に走行移動するので、基板10と撮像部3とが相対移動できる構成とすることができる。
【0069】
上述では、ガラスにカラー皮膜が塗布されたものを検査対象物として例示し説明をしたが、検査対象物としては、透光性の樹脂材料であっても良い。また、カラー皮膜以外の材料(例えば透明電極膜)であっても、本発明を適用して膜厚むらの検査することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 膜厚むら検査装置
2 基板移動部
3 光源部
4 撮像部
9 制御部
10 基板
10a 基板載置位置
10b 基板取出位置
10v 移動方向を示す矢印
10a1〜10a3 生成された全面画像
10t1〜10t3 移動中に表面の所定範囲を撮像されている基板
11 装置フレーム
21 コンベアフレーム
22 コンベアシャフト
23 コンベアローラ
24 コンベア駆動モータ
30 照明光量調節ユニット
31 照明ユニット
32 発光部
33 照明光
40 カメラ
42 撮像視野
45a1 全面画像10a1の輝度分布
45a2 別角度全面画像10a2の輝度分布
45a3 別角度全面画像10a3の輝度分布
45S 全面画像を合成した輝度分布
45M 多重合成した画像の輝度分布
46a 膜厚むらに起因の輝度変化部分
46b 同一全面画像を元に強調された膜厚むら起因の輝度変化部分
46c 多重合成して強調された膜厚むら起因の輝度変化部分
47a ノイズ起因の輝度変化部分
47b 同一全面画像を元に強調されたノイズ起因の輝度変化部分
47c 多重合成して強調されたノイズ起因の輝度変化部分
48 代表膜厚センサ
50 反射光
51 撮像される円弧状の所定範囲
52 撮像される円弧状の所定範囲
53 撮像される円弧状の所定範囲
55 移動方向の所定領域(ライン状)
90 制御用コンピュータ
91 情報入力手段
92 情報出力手段
93 発報手段
94 情報記録手段
95 制御ユニット
96 画像処理ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に皮膜が形成された検査対象物の、前記皮膜形成面の少なくとも一部を撮像部により撮像し、得られた画像情報に基づいて、前記検査対象物上の皮膜の膜厚むらを検査する膜厚むら検査装置であって、
前記検査対象物又は前記撮像部の少なくとも一方を移動させる移動部と、
前記検査対象物と前記撮像部との相対位置を検出する位置検出部と、
前記移動中に前記撮像部で撮像された所定範囲の部分画像を記録する画像記録部と、
前記部分画像が撮像された前記相対位置を前記部分画像と関連付けて記録する画像撮像位置記録部と、
前記部分画像を前記相対位置の順に並べて全面画像として生成する全面画像生成部と、
合成された前記全面画像に基づいて前記検査対象物の膜厚むらを検出する膜厚むら検出部とを具備し、
前記部分画像が、前記検査対象物上の円弧状の範囲を撮像された画像であることを特徴とする膜厚むら検査装置。
【請求項2】
前記画像記録部では、前記部分画像に加えて、前記部分画像が撮像された角度とは別の所定の角度をなす円弧状の範囲を撮像された別角度部分画像が記録され、
前記画像撮像位置記録部では、前記別角度部分画像が撮像された前記相対位置が前記別角度部分画像と関連付けて記録され、
前記画像生成部では、前記別角度部分画像が前記相対位置の順に並べて別角度全面画像として生成され、
前記膜厚むら検出部では、前記別角度全面画像に基づいて膜厚むらが検出されることを特徴とする、請求項1に記載の膜厚むら検査装置。
【請求項3】
前記全面画像と前記別角度全面画像のいずれを用いて膜厚むらを検出するかを選択する検査画像選択部をさらに備え、
前記膜厚むら検出部では、前記検査画像選択部で選択された前記全面画像又は前記別角度全面画像に基づいて膜厚むらが検出されることを特徴とする、請求項2に記載の膜厚むら検査装置。
【請求項4】
前記全面画像と前記別角度全面画像とを多重合成する多重合成部をさらに備え、
前記膜厚むら検出部では、前記多重合成画像に基づいて膜厚むらが検出されることを特徴とする、請求項2に記載の膜厚むら検査装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−88128(P2013−88128A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225785(P2011−225785)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】