説明

自動分析方法

【課題】専用の分析装置を備えることなく、Immuno−PCR法を測定原理とする分析が可能な自動分析方法を提供することにある。
【解決手段】免疫分析ユニットAU1において、反応容器11に、検体及び第1の試薬を分注し、恒温槽で反応させることにより、検出対象物に一次抗体および二次抗体が結合した複合体を形成させる。洗浄工程の終了した溶液を、遺伝子分析ユニットAU2に搬送する。遺伝子分析ユニットAU2において、反応容器に、洗浄工程の終了した溶液を分注し、第2の試薬を分注し、温度サイクル機構27により、標的核酸の熱変性,標的核酸に対するプライマー核酸のアニール,プライマー核酸の伸長反応の為の温度条件を繰り返すことで標的核酸を増幅する。その後、蛍光検出機構29により、増幅核酸量に依存する蛍光を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清や尿等の検体を自動的に分析する自動分析方法に係り、特に、免疫分析ユニットと遺伝子分析ユニットとを備える自動分析システムを用いた自動分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
検体中の極微量生体物質を測定する手法として、免疫学的な特異的結合に基づく免疫反応と、遺伝子増幅反応を利用するImmuno−PCR (Polymerase Chain Reaction)法(例えば、非特許文献1参照)やFACTT(Fluorescent amplification catalyzed by T7 polymerase technique)法(例えば、非特許文献2参照)等の分析方法が知られている。
【0003】
ここで、例えば、Immuno−PCR法は、検出対象に結合可能な一次抗体と、検出対象に結合可能で且つ核酸で標識化された二次抗体によって、検出対象物に一次抗体および二次抗体が結合した複合体を形成させ、未反応の二次抗体を除去した後に、二次抗体に標識した核酸をPCRによって増幅させ、鋳型核酸量,即ち、検出対象物の濃度に依存する増幅産物を定量することにより、検出対象物を分析する方法である。このImmuno−PCR法では、例えば、二次抗体を酵素で標識するELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法(例えば、非特許文献3参照)に比較すると、検出感度が10〜10000倍に向上して、fmol/Lオーダー以下の検出が可能であるとされている。
【0004】
臨床検査における体外診断分野では、自動分析装置としては、腫瘍マーカー,感染症,ホルモン等の生体物質を測定対象として、前述の免疫学的な特異的結合に基づくEIA(酵素免疫測定法),CLIA(化学発光免疫測定法),ECLIA(電気化学発光免疫測定)等を測定原理とする免疫分析ユニットが用いられている。
【0005】
また、免疫分析法において検出感度が不足する感染症項目については、自動分析装置としては、病原体由来の遺伝子を測定対象として、PCR(Polymerase Chain Reaction)による遺伝子増幅反応を測定原理とする遺伝子分析ユニットが用いられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Science 258, 120-122 (1992)
【非特許文献2】Nature medicen 12, 473-475 (2006)
【非特許文献3】Immunochemistry 8, 871-874 (1971)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既存の免疫分析装置(免疫分析ユニットを備えた自動分析装置)は、EIA(酵素免疫測定法),CLIA(化学発光免疫測定法),ECLIA(電気化学発光免疫測定)等を測定原理として、測定対象物を含む検体、および検出対象に結合可能な一次抗体と、検出対象に結合可能且つ発光物質で標識化された二次抗体を含む試薬を、反応容器に分注し、検出対象物に一次抗体および二次抗体が結合した複合体を形成させ、一次抗体に結合した磁性体に対して磁気分離することで未反応の二次抗体を除去し、発光物質による発光を検出するものである。従って、二次抗体に標識した核酸をPCRによって増幅させる工程を含むImmuno−PCR法を測定原理とする分析項目を適用することはできないものである。
【0008】
一方、遺伝子分析装置(遺伝子分析ユニットを備えた自動分析装置)は、蛍光色素と消光物質を利用して増幅遺伝子を定量する定量PCRを原理として、標的核酸を含む精製溶液、および核酸の増幅領域に相補的なプライマー核酸、核酸増幅に必要な核酸伸長酵素と基質を含む試薬を、反応容器に分注し、標的核酸の熱変性,標的核酸に対するプライマー核酸のアニール,プライマー核酸の伸長反応の為の温度条件を繰り返すことで標的核酸を増幅し、併せて増幅核酸量に依存する蛍光を検出するものである。従って、検出対象物に一次抗体および二次抗体が結合した複合体を形成させ、未反応の二次抗体を除去する工程を含むImmuno−PCR法を測定原理とする分析項目を適用することはできないものである。
【0009】
即ち、従来の免疫分析装置または遺伝子分析装置の各々単体では、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目を実施することはできないものである。従って、臨床検査室の運営においては、Immuno−PCR法の工程を実施する為の機構を備える専用の分析装置が必要となり、経済的負担を伴うものである。
【0010】
本発明の目的は、専用の分析装置を備えることなく、Immuno−PCR法を測定原理とする分析が可能な自動分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、免疫分析ユニットと、遺伝子分析ユニットと、検体投入部から前記免疫分析ユニットや遺伝子分析ユニットに検体容器を保持した検体ラックを搬送する検体搬送部とを有し、前記免疫分析ユニットは、恒温機構に設置された反応容器に、前記検体ラックにより搬送された検体容器中の検体を分注する検体分注機構と、前記恒温機構に設置された反応容器に、免疫試薬保管部に保持された試薬ボトルから所定の試薬を分注する試薬分注機構と、前記恒温機構において所定温度で所定時間の反応が経過した反応溶液から、磁性体を磁気的に分離して溶液置換する洗浄機構と、該洗浄機構による洗浄工程を終えた反応溶液に含まれる発光標識の発光を検出する発光検出機構と、前記洗浄機構による洗浄工程を終えた反応容器を前記検体搬送部まで移送する反応容器移送機構とを有し、前記遺伝子分析ユニットは、反応容器収納部に保持された反応容器を、反応容器設置部に設置する反応容器設置機構と、前記反応容器設置部に設置された反応容器に、前記検体ラックにより搬送された検体容器中の検体を分注する検体分注機構と、前記反応容器設置部に設置された反応容器に、遺伝子試薬保管部に保持された試薬ボトルから所定の試薬を分注する試薬分注機構と、検体と試薬が分注された反応容器を所定温度で所定時間保持するサイクルを繰り返す温度サイクル機構と、該温度サイクル機構により所定の温度サイクルが繰り返された反応溶液に含まれる蛍光標識の蛍光を検出する蛍光検出機構とを有する自動分析システムを用い、前記検体を自動的に分析する自動分析方法であって、前記免疫分析ユニットの前記免疫試薬保管部に保持された、測定対象物を含む検体、および検出対象に結合可能な一次抗体と、検出対象に結合可能且つ発光物質で標識化された二次抗体を含む第1の試薬と、前記遺伝子分析ユニットの前記遺伝子試薬保管部に保持された、二次抗体の標的核酸の増幅領域に相補的なプライマー核酸、核酸増幅に必要な核酸伸長酵素と基質を含む第2の試薬とを用い、前記免疫分析ユニットにおいて、前記恒温機構に設置された反応容器に、前記検体分注機構により検体を分注し、前記試薬分注機構により前記第1の試薬を分注し、前記恒温槽で反応させることにより、前記検出対象物に前記一次抗体および前記二次抗体が結合した複合体を形成させ、前記洗浄機構により、前記一次抗体に結合した磁性体に対して磁気分離することで未反応の二次抗体を除去し、洗浄工程の終了した溶液を、前記反応容器移送機構により、前記検体搬送部まで移送するとを有し、前記検体搬送部により、前記洗浄工程の終了した溶液を、前記遺伝子分析ユニットに搬送し、前記遺伝子分析ユニットにおいて、前記検体分注機構により、前記反応容器設置部に設置された反応容器に、前記洗浄工程の終了した溶液を分注し、前記試薬分注機構により、前記反応容器設置部に設置された反応容器に、前記遺伝子試薬保管部に保持された前記第2の試薬を分注し、前記温度サイクル機構により、標的核酸の熱変性,標的核酸に対するプライマー核酸のアニール,プライマー核酸の伸長反応の為の温度条件を繰り返すことで標的核酸を増幅し、前記蛍光検出機構により、増幅核酸量に依存する蛍光を検出することにより、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目を分析するようにしたものである。
かかる方法により、専用の分析装置を備えることなく、Immuno−PCR法を測定原理とする分析が可能となる。
【0012】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記免疫分析ユニットにおいて、第1及び第2の反応容器にそれぞれ同じ検体を分注し、前記第1の反応容器に、免疫分析項目の試薬を分注し、前記第2の反応容器に、前記第1の試薬を分注し、前記第1及び第2の反応容器を、前記恒温機構にて洗浄した後、前記第1の反応容器を、前記発光検出機構において分析し、分析結果が、前記免疫分析項目の測定範囲よりも低値であった場合は、前記第2の反応容器は、前記検体搬送機構により、前記遺伝子分析ユニットに搬送され、前記遺伝子分析ユニットにおいて、前記第2の試薬を用いて、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目を分析するようにしたものである。
【0013】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記免疫分析ユットにおいて、第1の反応容器に、検体を分注し、検体分注を終えた検体容器に収納された検体が架設された検体ラックを、バッファ部に移送し、前記第1の反応容器に、免疫分析項目の試薬を分注し、前記第1の反応容器を、前記恒温機構にて洗浄した後、前記第1の反応容器を、前記発光検出機構において分析し、分析結果が、前記免疫分析項目の測定範囲よりも低値であった場合は、前記バッファ部に待機した検体ラックが、再検搬送部により検体搬送部のスタート位置に搬送され、前記免疫分析ユニットにおいて、第2の反応容器に、検体を分注し、前記第2の反応容器に、前記第1の試薬を分注し、前記第2の反応容器を、前記恒温機構にて洗浄した後、前記検体搬送機構により、前記遺伝子分析ユニットに搬送され、前記遺伝子分析ユニットにおいて、前記第2の試薬を用いて、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目を分析するようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、専用の分析装置を備えることなく、Immuno−PCR法を測定原理とする分析が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による自動分析方法を用いる自動分析システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1を用いて、本発明の一実施形態による自動分析方法を用いる自動分析システムの構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による自動分析方法を用いる自動分析システムの構成を示すブロック図である。
【0017】
本分析システムは、免疫分析ユニットAU1と、遺伝子分析ユニットAU2と、検体投入部4と、検体搬送部5と、再検搬送部8と、待機バッファ6と、検体回収部7と、制御部1とから構成される。
【0018】
検体投入部4には、検体ラック2が投入される。検体ラック2には、複数の検体容器3が保持されている。検体容器3には、それぞれ分析対象の検体が収納されている。
【0019】
検体投入部4に投入された検体ラック2は、検体搬送部5によって、免疫分析ユニットAU1や遺伝子分析ユニットAU2に搬送される。検体ラック2に保持された検体容器3に収納された検体は、免疫分析ユニットAU1や遺伝子分析ユニットAU2によって分析される。検体ラック2は、検体搬送部5によって、待機バッファ6や検体回収部7に搬送される。待機バッファ6には、再検査の要否等が判定されるまで待機される。再検査が必要と判定されると、検体ラック2は、再検搬送部8によって、検体搬送部5のスタート位置(図示の左側の位置)まで戻され、再び、検体搬送部5によって、疫分析ユニットAU1や遺伝子分析ユニットAU2に搬送される。一方、疫分析ユニットAU1や遺伝子分析ユニットAU2によって分析の終了した検体は、検体回収部7で回収される。
【0020】
制御部1は、免疫分析ユニットAU1,遺伝子分析ユニットAU2,検体投入部4,検体搬送部5,再検搬送部8などの各部の動作を制御する。
【0021】
免疫分析ユニットAU1は、検体分注機構10と、反応容器設置機構12と、試薬分注機構13と、免疫試薬保管部14と、洗浄機構16と、反応容器移送機構17と、恒温機構18と、発光検出機構19とから、主として構成される。
【0022】
反応容器設置機構12は、反応容器収納部に保持された複数の反応容器11の中から任意の反応容器11を把持して、恒温機構18の所定位置に移動し、設置する。
【0023】
検体分注機構10は、検体投入部4から検体搬送部5を経由して供給される検体ラック2に保持された検体容器3から、所定量の検体を吸引する。そして、検体分注機構10は、恒温機構18に設置された反応容器11に、吸引した検体を吐出して、分注する。
【0024】
免疫試薬保管部14には、複数の試薬ボトル15が保持されている。複数の試薬ボトル15には、それぞれ免疫分析ユニットAU1で使用される試薬が収納されている。試薬分注機構13は、所定の試薬ボトル15から所定の試薬を吸引して、さきほど検体が分注された反応容器11に吐出する。
【0025】
恒温機構18は、検体および試薬が分注された反応容器11を、所定温度で所定時間保持する。洗浄機構16は、恒温機構18において所定温度で所定時間の反応が経過した反応溶液から、磁性体を磁気的に分離して溶液置換する。発光検出機構19は、洗浄機構16による洗浄工程を終えた反応溶液に含まれる発光標識の発光を検出する。
【0026】
反応容器移送機構17は、洗浄機構16による洗浄工程を終えた反応容器を検体搬送部5まで移送する。
【0027】
遺伝子分析ユニットAU2は、検体分注機構20と、反応容器設置機構22と、試薬分注機構23と、遺伝子試薬保管部24と、反応容器搬送機構27と、反応容器設置部28と、蛍光検出機構29と、温度サイクル機構30とから、主として構成される。
【0028】
反応容器設置機構27は、反応容器収納部に保持された複数の反応容器21の中から任意の反応容器21を把持して、反応容器設置部28の所定位置に移動し、設置する。
【0029】
検体分注機構20は、検体投入部4から検体搬送部5を経由して供給される検体ラック2に保持された検体容器3から、所定量の検体を吸引する。そして、検体分注機構20は、反応容器設置部28に設置された反応容器21に、吸引した検体を吐出して、分注する。
【0030】
遺伝子試薬保管部24には、複数の試薬ボトル25が保持されている。複数の試薬ボトル25には、それぞれ遺伝子分析ユニットAU2で使用される試薬が収納されている。試薬分注機構23は、所定の試薬ボトル25から所定の試薬を吸引して、さきほど検体が分注された反応容器21に吐出する。
【0031】
温度サイクル機構30は、検体と試薬または試薬が分注された反応容器21を所定温度で所定時間保持するサイクルを繰り返す。蛍光検出機構29は、温度サイクル機構30により所定の温度サイクルが繰り返された反応溶液に含まれる蛍光標識の蛍光を検出する。
【0032】
次に、上記の分析システムを用いて、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目の第1の分析方法について説明する。
【0033】
Immuno−PCR法により分析を行うために、2種類の試薬を用いる。第1の試薬は、検出対象に結合可能且つ磁性粒子と結合した一次抗体と、検出対象に結合可能且つ核酸標識化された二次抗体を含む試薬である。第1の試薬を収納した試薬ボトル15は、免疫分析ユニットAU1の免疫試薬保管部14に設置される。
【0034】
第2の試薬は、二次抗体の標的核酸の増幅領域に相補的なプライマー核酸、核酸増幅に必要な核酸伸長酵素と基質を含む試薬である。第2の試薬を収納した試薬ボトル25は、遺伝子分析ユニットAU2の遺伝子試薬保管部24に設置される。
【0035】
本実施形態の分析方法では、先ず、測定対象物を含む検体、および検出対象に結合可能な一次抗体と、検出対象に結合可能且つ発光物質で標識化された二次抗体を含む第1の試薬を、反応容器に分注し、検出対象物に一次抗体および二次抗体が結合した複合体を形成させ、一次抗体に結合した磁性体に対して磁気分離することで未反応の二次抗体を除去する工程を免疫分析用ユニットで実施する。次いで、この工程を終了した溶液を試料搬送機構によって遺伝子分析ユニットへと移送し、二次抗体の標的核酸の増幅領域に相補的なプライマー核酸、核酸増幅に必要な核酸伸長酵素と基質を含む第2の試薬を、反応容器に分注し、標的核酸の熱変性、標的核酸に対するプライマー核酸のアニール、プライマー核酸の伸長反応、の為の温度条件を繰り返すことで標的核酸を増幅し、増幅核酸量に依存する蛍光を検出する工程を遺伝子分析ユニットで実施するものである。
【0036】
以下、自動分析システムの各部の構成を用いて、上記方法を実施するための具体的な自動分析の第1の方法について、以下説明する。
【0037】
オペレーターは、制御部1から分析項目の依頼を実施し、測定対象とする血清あるいは尿等の検体を収納した検体容器3を架設した検体ラック2を、検体投入部4に投入し、分析を開始する。
【0038】
検体容器3に収納された検体は、検体搬送部5により、検体投入部4から免疫分析ユニットAU1の検体分注機構10の近傍位置まで搬送される。検体分注機構10は、検体容器3に収納された検体から所定量の検体を吸引し、反応容器設置機構12によって恒温機構18の所定位置に設置された反応容器11に吐出する。次いで、試薬分注機構13によって免疫試薬保管部14に架設された試薬の内、前述の第1の試薬が所定量吸引され、反応容器11に吐出される。この反応容器11を恒温機構18において所定時間保持することにより、免疫反応が進行し、検出対象物に一次抗体および二次抗体が結合した複合体が形成される。なお、一次抗体には磁性粒子が結合しており、二次抗体には標識核酸が結合している。
【0039】
反応容器移送機構17は、免疫反応を完了した反応容器11を、洗浄機構16に移設する。洗浄機構16では、反応液中の磁性粒子と液相を磁気的に分離し、溶液置換することにより、測定対象物を介して磁性粒子を含む一次抗体と結合し得なかった二次抗体を液相から除去する。洗浄機構16による洗浄工程を終えた反応容器11は、反応容器搬送機構17によって免疫分析ユニットAU1から検体搬送部5まで搬送され、検体ラック2の空ポジションに設置される。
【0040】
なお、従来の免疫分析項目では、洗浄機構16による洗浄工程を終えた反応容器11は、発光検出機構19において二次抗体に標識された発光標識の発光が検出される。
【0041】
次に、検体搬送部5は、検体ラック2の空ポジションに反応容器11が設置された検体ラック2を、遺伝子分析ユニットAU2の検体分注機構20の近傍に搬送する。検体分注機構20は、反応容器11から所定量の反応液を吸引し、反応容器設置機構22によって反応容器設置部28に設置された反応容器21に吐出する。
【0042】
次いで、試薬分注機構23は、遺伝子試薬保管部24に架設された試薬ボトル25から、前述の第2の試薬を所定量吸引し、反応容器21に吐出する。次いで、反応容器21は、反応容器搬送機構27によって、温度サイクル機構30に設置され所定の温度サイクルが実施される。併せて、蛍光検出機構29は、増幅核酸量に依存する蛍光量を検出する。そして、温度サイクル数と蛍光測定値の結果は、制御部1に送られ、検体に含まれる測定対象物を定量または定性分析する。
【0043】
次に、上記の分析システムを用いて、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目の他の分析方法について説明する。この第2の分析方法においては、従来の免疫分析項目の分析結果に基づいて、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目の分析を実施する。
【0044】
上述のように、免疫分析項目とImmuno−PCR法に基づく分析項目では、測定対象物と一次抗体および二次抗体の複合体を生成する工程は共通であり、二次抗体の標識物質と検出方法が異なる分析方法である。従って、二次抗体の標識を発光物質にした場合は通常の免疫分析感度において、一方、二次抗体の標識を核酸にした場合はImmuno−PCR法による高感度において、同一物質を検出対象として分析することが可能である。
【0045】
分析システムの制御部1は、同一の測定対象物に対する免疫分析項目およびImmuno−PCR法を測定原理とする分析項目の分析を実施する分析が依頼された場合は、先ず、免疫分析項目の分析を実行し、この分析結果に基づいて、より高感度な分析が必要であると判断した場合に、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目の分析を実行する。
【0046】
この免疫分析項目とImmuno−PCR法を測定原理とする分析項目を実施する分析においては、分析結果出力の「迅速性」の観点による第2の分析方法、或いは、試薬消費量抑制による「経済性」の観点による第3の分析方法を選択可能である。
【0047】
最初に、分析結果出力の迅速性を優先する場合の第2の分析方法について以下説明する。
【0048】
オペレーターは、免疫分析項目の試薬、およびImmuno−PCR法を測定原理とする分析項目に必要な前述の第1の試薬を含む試薬ボトル15を免疫試薬保管部14に設置する。また、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目に必要な試薬のうち、前述の第2の試薬を含む試薬ボトル25を遺伝子試薬保管部24に架設する。
【0049】
分析が開始されると、免疫分析ユニットAU1において、反応容器移送機構17によって、二つの反応容器11が恒温機構18の所定位置に設置され、検体分注機構10によって各々の反応容器に検体容器3に収納された同一の検体が分注される。次いで、第1の反応容器11には免疫分析項目の試薬が分注され、第2の反応容器にはImmuno−PCR法を測定原理とする分析項目の試薬(前述の第1の試薬)が分注される。各々の反応容器11は、恒温機構18において所定時間保持された後に、洗浄機構16において洗浄工程が実施される。
【0050】
その後、免疫分析項目の試薬が分注された反応容器11は、発光検出機構19において分析され、免疫分析項目の分析結果が制御部1に出力される。
【0051】
そして、免疫分析項目の分析結果が、免疫分析項目の測定範囲内であれば、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目の分析をキャンセルされる。すなわち、既に、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目の試薬(前述の第1の試薬)が分注され、また、洗浄機構16における洗浄工程が行われた反応容器11は廃棄される。
【0052】
一方、免疫分析項目の分析結果が、免疫分析項目の測定範囲よりも低値であった場合は、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目の分析を再開される。すなわち、既に、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目の試薬(前述の第1の試薬)が分注され、洗浄機構16における洗浄工程が行われた反応容器11は、反応容器搬送機構17によって免疫分析ユニットAU1から検体搬送部5まで搬送され、検体ラック2の空ポジションに設置される。反応容器11は、検体搬送機構4により、遺伝子分析ユニットAU2へと搬送される。
【0053】
そして、遺伝子分析ユニットAU2において、検体分注機構20は、反応容器11から所定量の反応液を吸引し、反応容器設置機構22によって反応容器設置部28に設置された反応容器21に吐出する。次に、試薬分注機構23は、遺伝子試薬保管部24に架設された試薬ボトル25から、前述の第2の試薬を所定量吸引し、反応容器21に吐出する。次いで、反応容器21は、反応容器搬送機構27によって、温度サイクル機構30に設置され所定の温度サイクルが実施される。併せて、蛍光検出機構29は、増幅核酸量に依存する蛍光量を検出する。そして、温度サイクル数と蛍光測定値の結果は、制御部1に送られ、検体に含まれる測定対象物を定量または定性分析する。
【0054】
従って、この第2の分析方法においては、免疫分析項目の分析結果判断によってImmuno−PCR法を測定原理とする分析項目が必要となった場合は、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目の分析結果を迅速に報告することが可能である。
【0055】
次に、試薬消費量抑制による経済性を考慮する場合の第3の分析方法について以下説明する。
【0056】
オペレーターは、免疫分析項目の試薬、およびImmuno−PCR法を測定原理とする分析項目に必要な前述の第1の試薬を含む試薬ボトル15を免疫試薬保管部14に設置する。また、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目に必要な試薬のうち、前述の第2の試薬を含む試薬ボトル25を遺伝子試薬保管部24に架設する。
【0057】
分析が開始されると、先ず、免疫分析ユニットAU1において、免疫分析項目のみが分析される。反応容器移送機構17によって、反応容器11が恒温機構18の所定位置に設置され、検体分注機構10によって反応容器に検体容器3に収納された検体が分注される。ここで、検体分注を終えた検体容器3に収納された検体が架設された検体ラック2は、バッファ部6に移送され、免疫分析項目の分析結果に基づく判断が提示されるまで待機させる。
【0058】
次に、反応容器11には免疫分析項目の試薬が分注される。反応容器11は、恒温機構18において所定時間保持された後に、洗浄機構16において洗浄工程が実施される。その後、免疫分析項目の試薬が分注された反応容器11は、発光検出機構19において分析され、免疫分析項目の分析結果が制御部1に出力される。
【0059】
そして、免疫分析項目の分析結果が制御部1に出力され、この分析結果が免疫分析項目の測定範囲内であれば、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目の分析依頼はキャンセルされる。
【0060】
一方、免疫分析項目の分析結果が、免疫分析項目の測定範囲よりも低値であった場合は、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目の分析が開始される。すなわち、バッファ部6に待機した検体ラック2は、再検搬送部8により検体搬送部4のスタート位置に搬送される。そして、免疫分析ユニットAU1において、反応容器移送機構17によって、反応容器11が恒温機構18の所定位置に設置され、検体分注機構10によって反応容器に検体容器3に収納された検体が分注される。次いで、反応容器11にはImmuno−PCR法を測定原理とする分析項目の試薬(前述の第1の試薬)が分注される。反応容器11は、恒温機構18において所定時間保持された後に、洗浄機構16において洗浄工程が実施される。
【0061】
既に、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目の試薬(前述の第1の試薬)が分注され、洗浄機構16における洗浄工程が行われた反応容器11は、反応容器搬送機構17によって免疫分析ユニットAU1から検体搬送部5まで搬送され、検体ラック2の空ポジションに設置される。反応容器11は、検体搬送機構4により、遺伝子分析ユニットAU2へと搬送される。
【0062】
そして、遺伝子分析ユニットAU2において、検体分注機構20は、反応容器11から所定量の反応液を吸引し、反応容器設置機構22によって反応容器設置部28に設置された反応容器21に吐出する。次に、試薬分注機構23は、遺伝子試薬保管部24に架設された試薬ボトル25から、前述の第2の試薬を所定量吸引し、反応容器21に吐出する。次いで、反応容器21は、反応容器搬送機構27によって、温度サイクル機構30に設置され所定の温度サイクルが実施される。併せて、蛍光検出機構29は、増幅核酸量に依存する蛍光量を検出する。そして、温度サイクル数と蛍光測定値の結果は、制御部1に送られ、検体に含まれる測定対象物を定量または定性分析する。
【0063】
従って、この第3の分析方法においては、免疫分析項目の分析結果判断によってImmuno−PCR法を測定原理とする分析項目の依頼がキャンセルされた場合、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目の試薬消費を回避することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…制御部
2…検体ラック
3…検体
4…検体投入部
5…検体搬送部
6…待機バッファ
7…検体回収部
8…再検搬送部
AU1…免疫分析ユニット
10,20…検体分注機構
11,21…反応容器
12,22…反応容器設置機構
13,23…試薬分注機構
14…免疫試薬保管部
15…免疫試薬ボトル
16…洗浄機構
17,27…反応容器搬送機構
18…恒温機構
19…発光検出機構
AU2…遺伝子分析ユニット
24…遺伝子試薬保管部
25…遺伝子試薬ボトル
28…反応容器設置部
29…蛍光検出機構
30…温度サイクル機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫分析ユニットと、遺伝子分析ユニットと、検体投入部から前記免疫分析ユニットや遺伝子分析ユニットに検体容器を保持した検体ラックを搬送する検体搬送部とを有し、
前記免疫分析ユニットは、
恒温機構に設置された反応容器に、前記検体ラックにより搬送された検体容器中の検体を分注する検体分注機構と、
前記恒温機構に設置された反応容器に、免疫試薬保管部に保持された試薬ボトルから所定の試薬を分注する試薬分注機構と、
前記恒温機構において所定温度で所定時間の反応が経過した反応溶液から、磁性体を磁気的に分離して溶液置換する洗浄機構と、
該洗浄機構による洗浄工程を終えた反応溶液に含まれる発光標識の発光を検出する発光検出機構と、
前記洗浄機構による洗浄工程を終えた反応容器を前記検体搬送部まで移送する反応容器移送機構とを有し、
前記遺伝子分析ユニットは、
反応容器収納部に保持された反応容器を、反応容器設置部に設置する反応容器設置機構と、
前記反応容器設置部に設置された反応容器に、前記検体ラックにより搬送された検体容器中の検体を分注する検体分注機構と、
前記反応容器設置部に設置された反応容器に、遺伝子試薬保管部に保持された試薬ボトルから所定の試薬を分注する試薬分注機構と、
検体と試薬が分注された反応容器を所定温度で所定時間保持するサイクルを繰り返す温度サイクル機構と、
該温度サイクル機構により所定の温度サイクルが繰り返された反応溶液に含まれる蛍光標識の蛍光を検出する蛍光検出機構とを有する自動分析システムを用い、
前記検体を自動的に分析する自動分析方法であって、
前記免疫分析ユニットの前記免疫試薬保管部に保持された、測定対象物を含む検体、および検出対象に結合可能な一次抗体と、検出対象に結合可能且つ発光物質で標識化された二次抗体を含む第1の試薬と、
前記遺伝子分析ユニットの前記遺伝子試薬保管部に保持された、二次抗体の標的核酸の増幅領域に相補的なプライマー核酸、核酸増幅に必要な核酸伸長酵素と基質を含む第2の試薬とを用い、
前記免疫分析ユニットにおいて、
前記恒温機構に設置された反応容器に、前記検体分注機構により検体を分注し、前記試薬分注機構により前記第1の試薬を分注し、
前記恒温槽で反応させることにより、前記検出対象物に前記一次抗体および前記二次抗体が結合した複合体を形成させ、
前記洗浄機構により、前記一次抗体に結合した磁性体に対して磁気分離することで未反応の二次抗体を除去し、
洗浄工程の終了した溶液を、前記反応容器移送機構により、前記検体搬送部まで移送するとを有し、
前記検体搬送部により、前記洗浄工程の終了した溶液を、前記遺伝子分析ユニットに搬送し、
前記遺伝子分析ユニットにおいて、
前記検体分注機構により、前記反応容器設置部に設置された反応容器に、前記洗浄工程の終了した溶液を分注し、
前記試薬分注機構により、前記反応容器設置部に設置された反応容器に、前記遺伝子試薬保管部に保持された前記第2の試薬を分注し、
前記温度サイクル機構により、標的核酸の熱変性,標的核酸に対するプライマー核酸のアニール,プライマー核酸の伸長反応の為の温度条件を繰り返すことで標的核酸を増幅し、
前記蛍光検出機構により、増幅核酸量に依存する蛍光を検出することにより、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目を分析することを特徴とする自動分析方法。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析方法において、
前記免疫分析ユニットにおいて、第1及び第2の反応容器にそれぞれ同じ検体を分注し、
前記第1の反応容器に、免疫分析項目の試薬を分注し、
前記第2の反応容器に、前記第1の試薬を分注し、
前記第1及び第2の反応容器を、前記恒温機構にて洗浄した後、前記第1の反応容器を、前記発光検出機構において分析し、
分析結果が、前記免疫分析項目の測定範囲よりも低値であった場合は、前記第2の反応容器は、前記検体搬送機構により、前記遺伝子分析ユニットに搬送され、
前記遺伝子分析ユニットにおいて、前記第2の試薬を用いて、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目を分析することを特徴とする自動分析方法。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析方法において、
前記免疫分析ユニットにおいて、
第1の反応容器に、検体を分注し、
検体分注を終えた検体容器に収納された検体が架設された検体ラックを、バッファ部に移送し、
前記第1の反応容器に、免疫分析項目の試薬を分注し、
前記第1の反応容器を、前記恒温機構にて洗浄した後、前記第1の反応容器を、前記発光検出機構において分析し、
分析結果が、前記免疫分析項目の測定範囲よりも低値であった場合は、前記バッファ部に待機した検体ラックが、再検搬送部により検体搬送部のスタート位置に搬送され、前記免疫分析ユニットにおいて、第2の反応容器に、検体を分注し、
前記第2の反応容器に、前記第1の試薬を分注し、
前記第2の反応容器を、前記恒温機構にて洗浄した後、前記検体搬送機構により、前記遺伝子分析ユニットに搬送され、
前記遺伝子分析ユニットにおいて、前記第2の試薬を用いて、Immuno−PCR法を測定原理とする分析項目を分析することを特徴とする自動分析方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−255664(P2012−255664A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127569(P2011−127569)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】