説明

自動分析装置および磁性粒子移動方法

【課題】流体を泡立てることなく流体中に含まれる磁性粒子の攪拌を行なうことができる試薬保存庫を有した自動分析装置を提供すること。
【解決手段】磁性粒子を含む試薬を収容する第1試薬容器25を収納し、試薬を保存する第1試薬保存庫24を備えた自動分析装置1において、第1試薬保存庫24内の第1試薬容器25に対応する壁面に設けられ、磁力によって磁性粒子を移動させる電磁石と、電磁石に通電させて磁性粒子を段階的に上方に移動させた後、通電を解除して磁性粒子を自然拡散させる通電制御部31aと、を備えることによって、流体を泡立てることなく、流体中に含まれる磁性粒子を移動させて、磁性粒子の攪拌を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬との反応物の光学的特性を測定して検体の分析処理を行う自動分析装置の試薬保存庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の試料を自動的に分析する装置として、試薬が分注された反応容器に試料を加え、反応容器内の試薬と試料の間で生じた反応を光学的に検出する分析装置が知られている。このような分析装置では、使用する試薬をたとえば12℃以下に保冷できる試薬保存庫内に設置して、室温での試薬の変性を抑制し分析精度を保持している。この試薬保存庫は、内部が中空である二重壁構造の保冷容器を有し、この保冷容器内部に冷却液を環流させることで、試薬保存庫内を保冷している。
【0003】
ところで、試薬保冷庫内に収納される試薬容器内には、粒子として磁性粒子等を含む試薬を収容する場合がある。試薬容器内に収容される粒子は、液体と比して比重が重く、経時的に試薬容器底部に沈降してしまうため、試薬を吸引する前に攪拌を行なう必要がある。この攪拌を効率よく行うため、試薬容器を各々収納するホルダがそれぞれ回転して、各試薬容器を攪拌する自動分析装置が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−196006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す自動分析装置は、磁性粒子のみならず、比較的泡立ち易い試薬を収容した場合にも回転による攪拌を行なうため、使用時に泡立った試薬を使用してしまい、分析精度が低下するという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、流体を泡立てることなく流体中に含まれる磁性粒子の攪拌を行なうことができる試薬保存庫を有した自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、磁性粒子を含む試薬を収容する試薬容器を収納し、該試薬を保存する試薬保存庫を備えた自動分析装置において、前記試薬保存庫内の前記試薬容器に対応する壁面に設けられ、磁力によって前記磁性粒子を移動させる電磁石と、前記電磁石に通電させて前記磁性粒子を鉛直上方に移動させた後、通電を解除して該磁性粒子を自然拡散させる通電制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記電磁石は、前記試薬容器に対して上部または/および下部に設けられ、前記通電制御部は、前記電磁石の通電を切り替えて前記磁力を変化させることによって、前記試薬容器に収容された前記磁性粒子を上方に移動させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記電磁石は、前記磁力の磁力線に対して鉛直方向の内部空間の形状が、前記試薬容器の形状に対応するように形成されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記電磁石は、前記試薬容器に対して少なくとも一方の側面側の上下方向に複数設けられ、前記通電制御部は、前記電磁石の通電を下方側の電磁石から上方側の電磁石に向かって段階的に切り替えることによって、前記試薬容器に収容された前記磁性粒子を該試薬容器の側面側に引き付けながら鉛直上方に移動させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる磁性粒子移動方法は、上記の発明において、磁性粒子を含む試薬を収容した試薬容器を、電磁石が発する磁力に対応する位置に配置する配置ステップと、前記電磁石に通電し、該通電によって発生する磁力によって前記磁性粒子を鉛直上方に移動させる磁性粒子移動ステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる磁性粒子移動方法は、上記の発明において、前記磁性粒子移動ステップは、前記試薬容器に対して、相対する方向から発せられる磁力によって、磁性粒子を移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、試薬保存庫内の試薬容器の側壁に対応する壁面に電磁石を配置して、電磁石が発する磁力によって試薬容器が収容する流体内の磁性粒子を移動させて、磁性粒子を流体内に拡散させるようにしたので、各反応容器に均等に磁性粒子を分注でき、分析精度を安定化させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示す試薬保存庫の断面を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1にかかる電磁石を示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1にかかる磁性粒子の移動方法を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態1にかかる集磁部の配置例を示す模式図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態1にかかる試薬保存庫の変形例1を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態1にかかる試薬保存庫の変形例2を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態2にかかる試薬保存庫を模式的に示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態2にかかる電磁石の形状を示す模式図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態2にかかる磁性粒子の移動方法を示す模式図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態2にかかる集磁部の配置例を示す模式図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態2にかかる試薬保存庫の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である自動分析装置について、被検血液の抗原抗体反応などの免疫検査を行なう自動分析装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる自動分析装置1は、検体と試薬との間の反応物の作用による発光基質の発光量を測定する測定機構2と、測定機構2を含む自動分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構2における測定結果の分析を行なう制御機構3とを備える。自動分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の免疫学的な分析を自動的に行なう。
【0017】
まず、測定機構2について説明する。測定機構2は、大別して検体移送部21、検体分注部221、免疫反応テーブル231、BFテーブル232、第1試薬保存庫24、第2試薬保存庫26、第1試薬分注部222、第2試薬分注部223、酵素反応テーブル233、測光部29、第1反応容器移送部281および第2反応容器移送部282を備える。測定機構2の各構成部位は、所定の動作処理を行なう単数または複数のユニットを備える。
【0018】
検体移送部21は、検体を収容した複数の検体容器21aを保持し、図中の矢印方向に順次移送される複数の検体ラック21bを備える。検体容器21aに収容された検体は、検体の提供者から採取した血液または尿などである。
【0019】
検体分注部221は、検体の吸引および吐出を行なうチップが先端部に取り付けられ鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。検体分注部221は、検体移送部21によって所定位置に移動された検体容器21a内の検体をチップによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル232によって所定位置に搬送された反応容器に分注して検体を所定タイミングでBFテーブル232上の反応容器内に移送する。
【0020】
チップ格納部22aは、複数のチップを整列したチップケースを設置しており、このケースからチップを供給される。このチップは、分析項目測定時のキャリーオーバー防止のため、検体分注部221のノズル先端に装着され、検体分注ごとに交換されるディスポーザブルのサンプルチップである。
【0021】
免疫反応テーブル231は、それぞれ配置された反応容器内で検体と分析項目に対応する所定の試薬とを反応させるための反応ラインを有する。免疫反応テーブル231は、免疫反応テーブル231の中心を通る鉛直線を回転軸として反応ラインごとに回動自在であり、免疫反応テーブル231に配置された反応容器を所定タイミングで所定位置に移送する。免疫反応テーブル231においては、図1に示すように、前処理、前希釈用の外周ライン231a、検体と固相担体試薬との免疫反応用の中周ライン231bおよび検体と標識試薬との免疫反応用の内周ライン231cを有する3重の反応ライン構造を形成してもよい。
【0022】
BFテーブル232は、所定の洗浄液を吸引吐出して検体または試薬における未反応物質を分離するBF(bound−free)分離を実施するBF洗浄処理を行なう。BFテーブル232は、BFテーブル232の中心を通る鉛直線を回転軸として反応ラインごとに回動自在であり、BFテーブル232に配置された反応容器を所定タイミングで所定位置に移送する。BFテーブル232は、BF分離に必要な磁性粒子を集磁する集磁機構と、BF希釈溶液を反応容器内に吐出・吸引してBF分離を実施するBF洗浄ノズルを有するBF洗浄部232aと、集磁された磁性粒子を分散させる攪拌機構とを有する。このBFテーブル232におけるBF洗浄処理として、第1BF洗浄処理および第2BF洗浄処理が行われる。なお、BF洗浄部232aは、複数のBF液吐出ノズルと、各BF液吐出ノズルに対応する複数のBF液吸引ノズルとを有する。
【0023】
第1試薬保存庫24は、BFテーブル232に配置された反応容器内に分注される第1試薬が収容された第1試薬容器25を複数収納できる。第2試薬保存庫26は、BFテーブル232に配置された反応容器内に分注される第2試薬が収容された第2試薬容器27aを複数収納できる。第1試薬保存庫24および第2試薬保存庫26は、図示しない駆動機構が駆動することによって、時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器を第1試薬分注部222または第2試薬分注部223による試薬吸引位置まで移送する。第1試薬は、分析対象である検体内の抗原または抗体と特異的に結合する反応物質を固相した不溶性担体である磁性粒子を含む試薬である。第2試薬は、磁性粒子と結合した抗原または抗体と特異的に結合する標識物質(たとえば酵素)を含む試薬である。また、第2試薬保存庫26は、標識物質との酵素反応によって発光する基質を含む基質液が収容された基質液容器27bを収納し、時計回りまたは反時計回りに回動して所定の基質液容器27bを第1試薬分注部222による基質液吸引位置まで搬送する。
【0024】
第1試薬分注部222は、第1試薬の吸引および吐出を行なうプローブが先端部に取り付けられ鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。第1試薬分注部222は、第1試薬保存庫24によって所定位置に移動された第1試薬容器25内の試薬をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル232によって第1試薬吐出位置に搬送された反応容器に分注する。また、第1試薬分注部222は、第2試薬保存庫26によって所定位置に移動された基質液容器27b内の基質液をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって基質液吐出位置に搬送された反応容器に分注する。なお、コンタミネーションを防止するため、図示しないプローブ洗浄部によってプローブの洗浄を行う。
【0025】
第2試薬分注部223は、第1試薬分注部と同様の構成を有し、第2試薬保存庫26によって所定位置に移動された試薬容器内の試薬をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル232によって所定位置に搬送された反応容器に分注する。なお、第1試薬分注部222同様、コンタミネーションを防止するため、図示しないプローブ洗浄部によってプローブの洗浄を行う。
【0026】
酵素反応テーブル233は、反応容器内に注入された基質液内の基質が発光可能となる酵素反応処理を行なうための反応ラインである。測光部29は、反応容器内の反応液内の基質から発する発光を測定する。測光部29は、たとえば、化学発光で生じた微弱な発光を検出する光電子倍増管を有し、カウント法を用いて発光量を測定する。また、測光部29は、光学フィルターを保持し、発光強度に応じて光学フィルターにより減光された測定値によって真の発光強度を算出する。
【0027】
第1反応容器移送部281は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行ない、液体を収容した反応容器を所定タイミングで、免疫反応テーブル231、BFテーブル232、酵素反応テーブル233、図示しない反応容器供給部および図示しない反応容器廃棄部の所定位置に移送するアームを備える。また、第2反応容器移送部282は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行ない、液体を収容した反応容器を所定タイミングで、酵素反応テーブル233、測光部29、図示しない反応容器廃棄部の所定位置に移送するアームを備える。
【0028】
つぎに、制御機構3について説明する。制御機構3は、制御部31、入力部32、分析部33、記憶部34、出力部35および送受信部36を備える。測定機構2および制御機構3が備えるこれらの各部は、制御部31に電気的に接続されている。
【0029】
制御部31は、CPU等を用いて構成され、自動分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行ない、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行なう。また、制御部31は、通電制御部31aを備え、図2以降に示す電磁石に対する通電の制御を行なう。
【0030】
入力部32は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部33は、測光部29によって測定された吸光度に基づいて検体の成分分析等を行なう。
【0031】
記憶部34は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部34は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。
【0032】
出力部35は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。また、出力部35は、図示しない通信ネットワークを介し、外部装置に検体の分析結果を含む諸情報を出力してもよい。送受信部36は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行なうインターフェースとしての機能を有する。
【0033】
以上のように構成された自動分析装置1では、第1試薬分注処理、検体分注処理、第1BF洗浄処理、第2試薬分注処理、第2BF洗浄処理、基質液分注処理、測定処理および分析処理が行われる。
【0034】
ここで、図1に示す第1試薬保存庫24について、図2を参照して説明する。図2は、図1に示す第1試薬保存庫24の断面を模式的に示す断面図である。図2に示す第1試薬保存庫24は、下部に第1試薬容器25の開口部25aが配置されるように試薬取出口241aが形成された蓋241で上部開口部が封鎖された筐体242が、支持部材243によって支持されている。また、支持部材243は、第1試薬容器25が回転する際の軸となる、柱状部材である支柱244を支持する。支柱244は、ベアリング246aを介して回転部材246と接続され、制御部31の制御のもとに駆動するモータ245の回転の動力が回転部材246に伝えられた場合に、回転部材246は、支柱244を軸として、回転する。回転部材246の回転によって、ホルダ247が連動して回転し、ホルダ247に収納された第1試薬容器25が所望の位置に配置される。なお、第1試薬容器25の内部には、磁性粒子Bを含む流体F1が試薬として収容されている。
【0035】
また、蓋241の底面には、集磁部40が設けられ、集磁部40は、コイル状の電磁石41を有する。電磁石41は、蓋241内部を介して外部と電気的に接続され、通電制御部31aの制御のもと、通電が制御される。電磁石41に通電されると、その電流の向きによって、上方または下方に向いた磁力が発生し、この磁力によって第1試薬容器25内の流体F1中の磁性粒子Bを上方に移動させる。
【0036】
さらに、電磁石について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施の形態1にかかる電磁石を示す斜視図である。図3に示す電磁石41は、略台形に形成される内部空間を有するコイルであって、内部空間は、第1試薬容器25に対応した形状に形成されている。各端部は、蓋241等を介して外部に接続される。なお、内部空間は、第1試薬容器25内の各磁性粒子Bに対して磁力の効力を与えることが可能であれば、円形であっても、楕円形であっても、角形であってもよい。
【0037】
つぎに、磁性粒子Bの移動方法について、図4を参照して説明する。図4は、本発明の実施の形態1にかかる磁性粒子Bの移動方法を示す模式図である。まず、攪拌対象の磁性粒子Bを含む流体F1を収容した第1試薬容器25を集磁部40の下部に配置する(図4(a))。第1試薬容器25が配置されると、通電制御部31aによって集磁部40の電磁石41に通電され、磁場の発生とともに、磁性粒子Bを上部に引き付ける磁力P1が生ずる(図4(b))。これにより、磁性粒子Bが流体F1内で上方に移動し、流体F1の液面まで引き付けられる(図4(c))。このとき、通電による電流を段階的に大きくすることでより確実に各磁性粒子Bを上方に移動させることができる。
【0038】
磁性粒子Bが流体F1の上面まで引き付けられると、通電制御部31aは、電磁石41への通電を解除する(図4(d))。電磁石41への通電が解除されると、磁性粒子Bは、流体F1の抵抗を受けながら流体F1内を移動し、流体F1内に自然拡散された状態となる(図4(e))。
【0039】
上述した第1試薬保存庫24と磁性粒子Bの移動方法とによって、磁性粒子Bのみを鉛直上方に移動させて磁性粒子の拡散を行なうことができるため、流体F1が泡立ちやすい場合においても、流体F1を泡立てずに、磁性粒子の拡散を行なうことが可能となる。特に、装置立ち上げ時に上述した磁性粒子の移動を行なうことによって、分析中に攪拌操作を行なうことなく、分析処理を実行することも可能である。なお、第2試薬保存庫26においても同様の構成を適用することができる。
【0040】
ここで、集磁部40は、所定位置に配置されるものでもよく、複数配置してもよい。図5は、本発明の実施の形態1にかかる集磁部40の配置例を示す模式図である。図5は、蓋241を下方から見た模式図であって、図1に示す第1試薬保存庫24の第1試薬容器25の配置に対応して集磁部40がそれぞれ設けられている。なお、試薬取出口241aが配置されている場所に集磁部40は設けていない。この配置例によって、分注を行なう試薬容器以外の試薬容器に収容された磁性粒子を流体内に拡散させることができる。
【0041】
また、集磁部40への通電は、第1試薬保存庫24の蓋241と支柱244によって制御されてもよい。図6は、本発明の実施の形態1にかかる試薬保存庫24の変形例1を示す断面図である。図6に示す第1試薬保存庫24aは、蓋241および支柱244にそれぞれコネクタ241b,244aを設け、蓋241の開閉によって通電が制御される。コネクタ241b,244aは、接触によって電気的に接続可能であり、蓋241が閉められた場合に接触する。コネクタ241b,244aが接触されている場合にのみ通電制御部31bからの通電指示による電磁石41への通電が行なわれる。通電を制御することで、磁性粒子の移動のほか、蓋241の開閉確認を行なうことができる。
【0042】
さらに、第1試薬保存庫24内に配置される集磁部は、筐体242底部に配置されてもよい。図7は、本発明の実施の形態1にかかる第1試薬保存庫24の変形例2を示す断面図である。図7に示す第1試薬保存庫24bは、集磁部50を筐体242の底部であって、第1試薬容器25に対応する位置に配置している。変形例2では、通信制御部31cの制御のもと、各磁性粒子Bが上方に移動するように電磁石51が発する磁力の向きが調節される。上方に移動させた後は、図4に示したように、流体F1の抵抗を受け、自然拡散する。
【0043】
なお、集磁部40,50を用いて、試薬容器25の上下方向から磁性粒子Bに磁力を与えてもよい。この場合、通電によって電磁石41,51から発せられる磁力の方向が同一の向きになるよう調節される。集磁部を上下に配置することによって、一層確実に磁性粒子を上方に移動させることができる。また、下方側の集磁部の電磁石から通電させて磁性粒子Bを上方に移動させた後に、上方側の集磁部の電磁石に通電させるようにしてもよい。
【0044】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2にかかる試薬保存庫について説明する。図8は、本発明の実施の形態2にかかる第1試薬保存庫24cを模式的に示す断面図である。図8に示す第1試薬保存庫24cは、第1試薬保存庫24cの壁面であって、第1試薬容器25の側面側に集磁部60が設けられ、集磁部60は、壁面の上下方向に第1集磁部61a、第2集磁部62a、第3集磁部63aを有し、それぞれ電磁石61,62,63を備える。
【0045】
集磁部60は、通電制御部31dの制御のもと、第1集磁部61a、第2集磁部62a、第3集磁部63aの順序で通電が切り替えられ、流体F2内において、下方から順に磁性粒子が引き付けられて、段階的に上方に移動する。
【0046】
また、各電磁石61について、図9を参照して説明する。図9は、本発明の実施の形態2にかかる電磁石61の形状を示す模式図である。図9に示すように内部に形成される内部空間の形状が円形となるように形成される。また、実施の形態1と同様に、磁性粒子Bを引き付けることができれば、内部空間は、如何なる形状でもよい。なお、電磁石62,63についても同様である。
【0047】
続いて、磁性粒子の移動方法について、図10を参照して説明する。図10は、本発明の実施の形態2にかかる磁性粒子の移動方法を示す模式図である。まず、攪拌対象の磁性粒子Bを含む流体F2を収容した第1試薬容器25の側面が集磁部60に対応するよう配置する(図10(a))。第1試薬容器25が配置されると、通電制御部31dによって集磁部60の電磁石61に通電され、磁場の発生とともに、磁性粒子Bを第1試薬容器25の側面側に引き付ける磁力P2が生ずる(図4(b))。これにより、磁性粒子Bが流体F2内で第1集磁部61a近傍に移動する。その後、通電制御部31dは、電磁石62に通電した後、電磁石61への通電を解除して、電磁石62が発する磁力P3によって磁性粒子Bを第2集磁部62a近傍に移動させる(図10(c))。第2集磁部62aへの集磁後、通電制御部31dは、電磁石63に通電した後、電磁石62への通電を解除し、電磁石63が発する磁力P4によって磁性粒子Bを第3集磁部63a近傍に移動させる(図10(d))。
【0048】
磁性粒子Bが流体F2の上面付近まで引き付けられると、通電制御部31dは、電磁石63への通電を解除する(図10(e))。電磁石63への通電が解除されると、磁性粒子Bは、流体F2の抵抗を受けながら流体F2内を移動し、流体F2内に自然拡散された状態となる(図10(f))。
【0049】
上述した実施の形態2によって、試薬容器の側面の底部から磁性粒子を引き付け、段階的に上方に移動させることが可能なため、沈降した磁性粒子を確実に上方に移動させて流体内に拡散させることができる。
【0050】
また、集磁部60は、実施の形態1と同様に、各第1試薬容器25に対応した位置に複数配置されてもよい。図11は、本発明の実施の形態2にかかる集磁部60の配置例を示す模式図である。図11に示す配置例は、筐体242を上方から見た図であって、筐体242の側壁に、集磁部60が配置されている。なお、各集磁部60の配置は、図1に示す第1試薬保存庫24の第1試薬容器25の配置に対応している。また、集磁部60は、任意の位置に配置されるものであってもよい。
【0051】
ここで、本発明の実施の形態2にかかる第1試薬保存庫24cの変形例について、図12を参照して説明する。図12は、本発明の実施の形態2にかかる第1試薬保存庫24cの変形例を示す断面図である。図12に示す第1試薬保存庫24dにおいては、支柱244に新たに集磁部70が設けられ、集磁部70は、第1集磁部71a、第2集磁部72a、第3集磁部73aを有する。第1集磁部71a、第2集磁部72a、第3集磁部73aが有する電磁石71,72,73は、通電制御部31eの制御のもと、電磁石61,62,63に対応して通電が切り替えられ、磁性粒子を引き付けて段階的に上方に移動させる。このとき、電磁石61,62,63と電磁石71,72,73との磁力の方向は、互いに逆向きとなり、電磁石61,62,63と電磁石71,72,73とは、別個に付近の磁性粒子Bを引き付ける。
【0052】
第1試薬容器25の両側面から磁性粒子を引き付けることによって一層確実に磁性粒子を上方に移動させることが可能であり、両側面側から自然拡散させることで、分散効率も向上する。なお、集磁部70の配置は、図11に示す配置例の集磁部60に対応して設けられてもよく、任意の位置に配置してもよい。
【0053】
上述した実施の形態1,2によって、試薬容器に沈降した磁性粒子を上方に移動させて、自然拡散によって試薬容器に収容された流体内に分散させることができるため、各反応容器に分注される磁性粒子の濃度を安定化させることで、一層精度の高い分析処理を行うことができる。
【0054】
また、生化学分析等、磁性粒子を含まない試薬を用いる分析処理と、上述した磁性粒子を含む試薬を用いる免疫分析等の分析処理とを行う統合分析装置に適用した場合、磁性粒子を含む試薬容器のみを拡散し、磁性粒子を含まない試薬容器を撹拌しないよう制御できるため、泡立った試薬を使用することなく分析処理を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明にかかる自動分析装置は、磁性粒子を攪拌する場合に有用であり、特に、泡立ちやすい流体中に収容された磁性粒子を攪拌する場合に適している。
【符号の説明】
【0056】
1 自動分析装置
2 測定機構
3 制御装置
21 検体移送部
21a 検体容器
21b 検体ラック
22a チップ格納部
24 第1試薬保存庫
25 第1試薬容器
26 第2試薬保存庫
27a 第2試薬容器
27b 基質液容器
29 測光部
31 制御部
31a,31b,31c,31d 通電制御部
32 入力部
33 分析部
34 記憶部
35 出力部
36 送受信部
40,50,60,70 集磁部
41,51,61,62,63,71,72,73 電磁石
61a,71a 第1集磁部
62a,72a 第2集磁部
63a,73a 第3集磁部
221 検体分注部
222 第1試薬分注部
223 第2試薬分注部
231 免疫反応テーブル
232 BFテーブル
232a BF洗浄部
233 酵素反応テーブル
281 第1反応容器移送部
282 第2反応容器移送部
241 蓋
241a 試薬取出口
241b,244a コネクタ
242 筐体
243 支持部材
244 支柱
245 モータ
246 回転部材
247 ホルダ
B 磁性粒子
F1,F2 流体
P1〜P4 磁力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子を含む試薬を収容する試薬容器を収納し、該試薬を保存する試薬保存庫を備えた自動分析装置において、
前記試薬保存庫内の前記試薬容器に対応する壁面に設けられ、磁力によって前記磁性粒子を移動させる電磁石と、
前記電磁石に通電させて前記磁性粒子を鉛直上方に移動させた後、通電を解除して該磁性粒子を自然拡散させる通電制御部と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記電磁石は、前記試薬容器に対して上部または/および下部に設けられ、
前記通電制御部は、前記電磁石の通電を切り替えて前記磁力を変化させることによって、前記試薬容器に収容された前記磁性粒子を上方に移動させることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記電磁石は、前記磁力の磁力線に対して鉛直方向の内部空間の形状が、前記試薬容器の形状に対応するように形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記電磁石は、前記試薬容器に対して少なくとも一方の側面側の上下方向に複数設けられ、
前記通電制御部は、前記電磁石の通電を下方側の電磁石から上方側の電磁石に向かって段階的に切り替えることによって、前記試薬容器に収容された前記磁性粒子を該試薬容器の側面側に引き付けながら鉛直上方に移動させることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
磁性粒子を含む試薬を収容した試薬容器を、電磁石が発する磁力に対応する位置に配置する配置ステップと、
前記電磁石に通電し、該通電によって発生する磁力によって前記磁性粒子を鉛直上方に移動させる磁性粒子移動ステップと、
を含むことを特徴とする磁性粒子移動方法。
【請求項6】
前記磁性粒子移動ステップは、前記試薬容器に対して、相対する方向から発せられる磁力によって、磁性粒子を移動させることを特徴とする請求項5に記載の磁性粒子移動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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