説明

自動分析装置の検定方法

【課題】自動分析装置に対する検定精度を向上させる。
【解決手段】第1及び第2の色素液(赤色及び青色)を用いた色素法により対象液量測定をした検定対象液19Aの液量に対して、基準液量測定をした上記検定対象液19Aの液量を求めることにより判定した判定結果を、重量法(40、46)による対象値測定結果を用いて確認するようにしたことにより、自動分析装置R0に対する検定結果の検定精度を一段と高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動分析装置の検定方法に関し、例えば血液成分を臨床生化学的に検査するような臨床生化学検査自動分析装置の検定に適用できるものである。
【背景技術】
【0002】
従来広く普及している血液成分の臨床検査生化学自動分析装置は、血清中の化学物質を標準として分析結果の校正を行っているので、絶対値としては精度確認が不完全となる問題点がある。
【0003】
この点を改善する1つの方法として、いくつかの団体行っている盲検によって、多数の試験結果と基準との差を求めて校正する手法があり、これは汎社会的な基準として用いることができるが、精度の確認法としては未だ不十分である。
【0004】
近年の検証法体系と装置の認証精度は、世界基準の真実性を確立する理論体系として原器において得られる分析結果を真値として、これに対する真度を要件として求めており、当該認証要請に合致する検定(以下バリデーションとも呼ぶ)手法を実現することは有効である。
【0005】
これに対して、従来、自動分析対象の液量を基準の検定(バリデーション)方法によって決められている液量(例えば1〔μl〕〜1000〔μl〕)を検査対象液から分注して、色素法に基づいて検定することにより、蒸発の影響が少ない分校正精度を向上させる検定手法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−261788公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
色素法による検定(バリデーション)手法は、吸光度検出容器に第1の波長を吸光する所定の液量の第1の色素成分を含む基準液を入れてその波長成分の吸光度を測定した後、当該基準液に第2の波長の光を吸光する第2の色素成分を含む検出液を入れてその波長成分の吸光度を測定する。
【0008】
このようにして測定された基準液の吸光度と検出液の吸光度の比率は、検出液の液量に対応する値になることから、基準液の液量に基づいて、検出液の液量を検定できる(標準規格ISO8655−7の規定に基づいて)。
【0009】
この色素法による血液分析結果の精度決定の要素は、第1に光学分析用のセルの光路長を検定し、第2に反応試薬分注精度を検定し、第3に生体試料(血清)の分注精度を検定し、第4に反応層の高温精度を検定する、ことにより検定(バリデーション)精度を確立することができる。
【0010】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、検定対象である自動分析装置において使用される分注装置の分注液量を高い検定(バリデーション)精度で検定できるようにしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明においては、請求項1について、複数の光学分析セル2に対して、自動分析対象液19Aを分析対象液投入部17によってそれぞれ分注して、順次自動分析する自動分析装置R0を検定対象として、複数の光学分析セル2に対して、分析対象液投入部17を用いて、第1の色素液19Aを第1の液保有部19から分注して順次投入し、希釈液分注用ピペッタ21を用いて、第2の色素液23Aを第2の液保有部23から分注すると共に、当該分注状態にある希釈液分注用ピペッタ21の総重量を希釈液秤量部40によって重量法に基づいて秤量した後、希釈液分注用ピペッタ21に分注されている第2の色素液23Aを第1の色素液19Aが投入されている光学分析セル2に投入し、第1及び第2の色素液19A及び23Aが投入された光学分析セル2の液量を、対象液量測定部25によって、色素法に基づいて測定することにより、第1の色素液19Aの液量を対象測定値として求め、第2の色素液23Aを投入した後の希釈液分注用ピペッタ21の重量をピペッタ秤量部46によって重量法に基づいて秤量し、第1及び第2の色素液19A及び23Aが投入されている状態の光学分析セル2から移送用ピペッタ30を用いて基準値測定部32に移送して、色素法に基づいて測定することにより、第1の色素液19Aの液量を基準測定値として求め、色素法に基づいて求めた基準測定値及び対象測定値の偏差と、重量法に基づいて求めたピペッタ評量部46及び希釈液秤量部40の測定結果の偏差とによって、自動分析装置R0の分析対象液投入部17の分注精度を検定するようにする。
【0012】
請求項2について、複数の光学分析セル2に対して、自動分析対象液14Aを第1及び第2の分析対象液投入部12及び17によってそれぞれ分注して、順次自動分析する自動分析装置R0を検定対象として、複数の光学分析セル2に対して、第1の分析対象液投入部12を用いて、第1の色素液14Aを第1の液保有部14から分注して順次投入し、希釈液分注用ピペッタ21を用いて、第2の色素液23Aを第2の液保有部23から分注すると共に、当該分注状態にある希釈液分注用ピペッタ21の総重量を希釈液秤量部40によって重量法に基づいて秤量した後、希釈液分注用ピペッタ21に分注されている第2の色素液23Aを第1の色素液14Aが投入されている光学分析セル2に投入し、第1及び第2の色素液14A及び23Aが投入されている光学分析セル2に対して、第2の分析対象液投入部17を用いて、第2の色素液23Aと同じ色素を有する第3の色素液19Aを第3の液保有部19から分注して投入し、第1、第2及び第3の色素液14A及び23Aが投入された光学分析セル2の液量を、対象液量測定部25によって、色素法に基づいて測定することにより、第1の色素液14Aの液量を対象値測定結果として求め、第2の色素液23Aを投入した後の希釈液分注用ピペッタ21の重量をピペッタ秤量部46によって重量法に基づいて秤量し、第1、第2及び第3の色素液14A及び23Aが投入されている状態の光学分析セル2から移送用ピペッタ30を用いて基準値測定部32に移送して、色素法に基づいて測定することにより、第1の色素液14Aの液量を基準値測定結果として求め、色素法に基づいて求めた基準値測定結果及び対象値測定結果の偏差と、重量法に基づいて求めたピペッタ評量部46及び希釈液秤量部40の測定結果の偏差とによって、自動分析装置R0の分析対象液投入部12の分注精度を検定するようにする第2の検定ステップを具備するようにする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1及び第2の遡及力をもった色素液を用いた色素法により対象液量測定をした検定対象液の液量について、基準液量測定をした上記検定対象液の液量を求めることにより判定した判定結果を、重量法による対象値測定結果を用いて確認するようにしたことにより、自動分析装置に対する検定結果の検定(バリデーション)精度を一段と高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による自動分析装置の検定方法の一実施の形態を示す略線的系統図である。
【図2】図1の吸光度検出部25における吸光度検出動作及び図3の光電変換器43における吸光度検出動作の説明に供する特性曲線図である。
【図3】図1の基準値判定部32の構成を示す略線的系統図である。
【図4】図3の分注精度判定部45の判定結果の説明に供する特性曲線図である。
【図5】第2の実施の形態を示す略線的系統部である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0016】
(1)検定対象
図1において、1は全体として自動分析装置の検定装置を示し、検定装置1が検定対象としている臨床生化学検査自動分析装置R0は、試料作業台16上のサンプルカップ19Aに分析対象でなるサンプル血液を保持し、各サンプルカップ19Aから微少定量のサンプル血液を、第1の分析対象投入部を構成する試料投入部17において、矢印cで示す方向に回動する分注管18によって分注して、光学分析用セル2に投入する。
【0017】
また臨床生化学検査自動分析装置R0は、試薬作業台11上の試薬ボトル14に分析すべき血清成分と常温で反応して赤色に発色する試薬液を保持し、当該微少定量の試薬を、第2の分析対象投入部を構成する試薬投入部12において、矢印bで示す方向に回動する分注管13によって分注して、光学分析用セル2に投入する。
【0018】
光学分析用セル2は、矢印aで示す方向に、間欠的に回転動作するターンテーブル3の周縁部3Aに順次複数個配設されており、これにより試料投入部17及び試薬投入部12の分注管18及び13が所定の投入位置に回動して来たとき、各光学分析用セル2が順次サンプル血液及び発色試薬液の投入を受けるようになされている。
【0019】
かくして検定装置1が検定対象としている臨床生化学検査自動分析装置R0は、複数のサンプルカップ19Aから注入してした血液について、その血清中に含まれている化学成分が光学分析用セル2内において反応することに基づいてサンプル血液を自動分析することができる。
【0020】
(2)検定装置の構成
図1において、自動分析装置の検定装置1は、検定対象である臨床生化学検査自動分析装置R0を検定する際には、本来の自動分析動作時にはサンプル血液を保持する液保有部としてのサンプルカップ19に、第1の色素(赤色)をもつ色素液を試料液19Aとして入れておく。
【0021】
これにより、図1の場合の検査装置1は、試料投入部17の分注量についての検定を行う。
【0022】
検定装置1は、臨床生化学検査自動分析装置R0のターンテーブル3が矢印aで示す方向に間欠的に回転動作したとき、光学分析用セル2を順次、試薬投入位置P1、試料投入位置P2、希釈液投入位置P3及び対象測定位置P4に位置決めさせる。
【0023】
検定装置1は、光学分析用セル2を試料投入位置P2に位置決めさせたとき、試料作業台16上に設けられた試料投入部17の分注管18によって複数のサンプルカップ19から所定量の試料液19Aを吸入させることにより分注して光学分析用セル2に投入する。
【0024】
因に、このときの試料投入部17の分注量は、臨床生化学検査自動分析装置R0が自動分析動作するときのサンプル血液の分注量と等しい量である。
【0025】
試料投入部17は試料作業台16上に配列された複数のサンプルカップ19から試料液19Aを吸入して矢印cで示すように、分注管18をサンプルカップ19の位置から試料投入位置P2まで回転させて当該吸入した試料液19Aを光学分析用セル2に投入した後、分注管18を元のサンプルカップ19の位置に戻す。
【0026】
この実施の形態の場合、試料液19Aは、第1の赤色の色素によって波長520〔nm〕の光成分を吸光する吸光特性を呈する第1の色素液が用いられる。
【0027】
この第1の色素液は、上述の標準規格ISO8655−7に規定されている赤色の色素液に対して、既知の誤差を含む色素液で、これは当該「既知の誤差」を参考にして上述の標準規格に遡及できる特徴があることから、「遡及力をもった第1の色素液」と呼ぶ。
【0028】
検定装置1は、光学分析用セル2を希釈液投入位置P3に位置決めさせたとき、希釈液分注用ピペッタ21から希釈液を投入させる。
【0029】
希釈液分注用ピペッタ21は、当該臨床生化学検査自動分析装置R0の分析作業者が、手作業によって分注作業を行う。
【0030】
当該分注作業において、分注作業者は、希釈液分注用ピペット21を操作して、先ず希釈液作業台22上に配設された液保有部としての希釈液ボトル23から所定量の希釈液23Aを吸引する。
【0031】
この実施の形態の場合、希釈液23Aは、第2の青色の色素によって波長730〔nm〕の光成分を吸光する吸光特性を呈する第2の色素液が用いられている。
【0032】
この第2の色素液は、上述の標準規格ISO8655−7に規定されている青色の色素液に対して、既知の誤差を含む色素液で、これは当該「既知の誤差」を参考にして上述の標準規格に遡及できる特徴があることから、「遡及力をもった第2の色素液」と呼ぶ。
【0033】
検定装置1は、ターンテーブル3の回転によって光学分析用セル2が対象測定位置P4に来たとき、吸光度検出部25によって光学分析用セル2内に入っている測定対象液2bの吸光度を検出し、当該吸光度検出信号S1をマイクロコンピュータ構成の対象測定結果処理部27に与える。
【0034】
この実施の形態の場合、吸光度検出部25は、白色光源25Aから射出された検出光L1を光学分析用セル2を透過させた後、フィルタ25Bによって所定の測定波長範囲の光成分を抽出して、光電変換器25Cに入射させる。
【0035】
この結果検出光L1は、測定対象液26を透過することにより、当該測定対象液26内に混在している色素の吸光特性に対応する波長の光成分が吸光された後、フィルタ25Bに入射する。
【0036】
この実施の形態の場合、測定対象液26は、光学分析用セル2に対して試料投入位置P2において投入された赤色の色素液がもつ520〔nm〕の波長成分と、希釈液投入位置P3において投入された青色の色素液がもつ730〔nm〕の波長成分とを含んでいる。
【0037】
従って対象測定位置P4にある光学分析セル2内の測定対象液26は、当該520〔nm〕及び730〔nm〕の波長成分について、図2に示す吸光度曲線K1に従って当該波長成分を吸光する。
【0038】
これにより、吸光度検出部25は、これら2つの波長成分の吸光度の比率に基づいて
【0039】
【数1】

【0040】
を検定結果処理部27において演算することにより、赤色色素液である試料液19Aの分注液量を、青色色素液である希釈液23Aの分注液量に基づいて、求めることができる。
【0041】
ここで(1)式は、標準規定ISO8655−7によって色素法に基づく液量測定手法として規定されているもので、試料液19Aの分注管18による分注量、すなわち試料液19Aの液量Vは、青色の色素液である希釈液分注用ピペッタ21の分注量、すなわち希釈液23Aの液量Vに対して、希釈液23Aの吸光度Aに対する赤色の色素液である試料液19Aの吸光度Aとの比率を、乗算した値として求めることができることを表している。
【0042】
また、希釈液23Aの吸光度Aに対する試料液19Aの吸光度Aの比は、希釈液23Aに対する試料液19Aの希釈度を表していることから、試料液19Aの注入量Vは、光学分析用セル2に入れられている希釈液23Aの液量に対する試料液19Aの注入量の比として決めることができることを表している。
【0043】
このようにして、吸光度検出部25及び対象測定結果処理部27は、対象測定位置P4にある光学分析用セル2内の測定対象液26に対する対象液量測定部を構成している。
【0044】
当該対象測定位置P4にある光学分析用セル2に投入されている測定対象液26は、矢印dで示すように、その全量が移送用ピペッタ30を用いて分注作業者によって測定対象移送液26Aとして取り出されて、基準値作業台31上に設けられている基準値判定部32の基準値測定用マイクロプレート32Aに移送される。
【0045】
移送用ピペッタ30は、希釈液分注用ピペッタ21について上述したと同様に、分注作業者が手作業で光学分析用セル2から測定対象液26の全量を吸引して、基準値測定用マイクロプレート32Aに設けられた複数の保持溝33の1つに移送される。
【0046】
(3)検定装置の検定動作
検定装置1は、上述の構成に加えて、希釈液作業台22上に、希釈液秤量部40を構成する天秤40Aが設けられている。
【0047】
この希釈液秤量部40の天秤40Aは、分注作業者が希釈液分注用ピペッタ21を用いて希釈液ボトル23から希釈液23Aを分注して、希釈液秤量部40を構成する天秤40Aに乗せることにより、希釈液分注用ピペッタ21と、その分注液23Aとの総重量を秤量する。
【0048】
分注作業者は、この希釈液秤量部40における秤量結果を記録すると共に、当該分注液21Aを保持した希釈液分注用ピペッタ21を希釈液投入位置P3にある光学分析用セル2上に運んで当該分注液23Aを投入する。
【0049】
当該分注作業の後、分注作業者は、今使った希釈液分注用ピペッタ21をピペッタ作業台45上に設けられているピペッタ秤量部46を構成する天秤46Aに乗せる。
【0050】
このときピペッタ秤量部45は、分注液23Aを投入した後の希釈液分注用ピペッタ21自体の重量を秤量し、分注作業者は当該秤量結果を記録する。
【0051】
このようにして、希釈液秤量部40から得た秤量結果と、ピペッタ秤量部46から得た秤量結果とを比較すれば、分注作業者が希釈液投入位置P3において光学分析用セル2に投入した希釈液23Aの重量、従って希釈液分注用ピペッタ21による希釈液23Aの分注液量を重量法によって求める。
【0052】
基準値判定部32は、図3に示すように、基準値測定用マイクロプレート32Aの保持溝33に保持されている測定対象移送液26Aの液量を、色素法を用いた精度の高い基準値として測定する。
【0053】
基準値判定部32は、白色光L2を射出する白色光源41を有し、当該白色光L2を測定対象移送液26Aを透過させた後フィルタ42を対して光電変換器43に入射する。
【0054】
ここで、測定対象移送液62Aは、図2について上述したように、希釈液23Aの青色の波長730〔nm〕の色素成分と試料液19Aの赤色の波長520〔nm〕の色素成分とを、吸光度曲線K1で表すように吸光する吸光度特性をもっており、フィルタ42は当該色素成分を含む波長範囲の光を抽出して光電変換器43に入射させる。
【0055】
光電変換器43は、上述の標準規格ISO8655−7の規定に基づいて、上記(1)式を、既知の誤差を含む、(従って遡及力がある)高い精度で演算するように構成されており、この結果光電変換器43から得られる吸光度検出信号S2は、上述の標準規格の装置と等価な原器による測定結果に近い高い精度で、測定対象移送液26Aに含まれている試料液19Aの液量を表す基準値として、マイクロコンピュータ構成の基準測定結果処理部44に与えられる。
【0056】
かくして基準測定結果処理部44は高い精度で測定対象移送液26Aに含まれる試料液19Aの液量の測定結果を基準値として保持する。
【0057】
基準値判定部32はこのような基準値の測定を基準値測定用マイクロプレート32Aの全ての保持溝33に保持されている測定対象移送液26Aについて求めてこれを基準測定結果処理部44に蓄積する。
【0058】
基準値判定部32の基準測定結果処理部44に蓄積された基準値測定結果は、基準液量信号S21として、検定結果処理部45の分注精度判定部45Aに与えられる。
【0059】
分注精度判定部45Aは、対象測定結果処理部27(図1)から得られる対象液量信号S11を、基準値測定結果処理部44から得られる基準液量信号S21の差分を求めると共に、希釈液秤量部40及びピペッタ秤量部46の秤量結果に基づいて重量法により希釈液分注用ピペッタ21の分注量を検定対象である臨床生化学検査自動分析装置R0の実測限界(不確かさ)を表す検定(バリデーション)結果として確認する。
【0060】
この検定結果は、図4に示すように、横軸に変動係数K1=0〜3.0……〔%〕をとると共に、縦軸に正確度K2=……−0.03〜0〜+0.03……をとることにより、試料投入部17がサンプルカップ19から分注した試料液19Aの分注量についての分注精度が、分注精度曲線DT内に入るかどうかによって表すことができる。
【0061】
ここで変動係数K1は、検定結果のばらつきを表すのに対して、正確度K2は検定された分注量が真値であるときこれを正確度K2=0とすると共に、当該真値K2=0からのばらつきをK2=+0.01、+0.02……又は−0.01、−0.02……として表す。
【0062】
かくして目標の変動係数K1=0〜K10と、目標の正確度K2=+K20〜−K20とを通る分注精度曲線DTによって囲まれる領域内に検定結果が入ったとき、当該検定対象の自動分析装置の分注精度が許容範囲にあると検定する。
【0063】
(4)第2の実施の形態
図5は、第2の実施の形態の検定装置1Xを示し、図1との対応部分に同一符号を付して示す。
【0064】
図5の自動分析装置の検定装置1Xが図1の自動分析装置の検定装置1と相違するのは、図1の検定装置1が青色の第1の色素液である希釈液23Aの分注液量に基づいて、赤色の第2の色素液である試料液19Aの分注液量を、色素法により求めたのに対して、図5の検定装置1Xは、青色の第1の色素液である希釈液23A及び試薬液19Aの分注液量に基づいて、赤色の第2の色素液である試薬液14Aの分注量を求めるようにした点である。
【0065】
すなわち、図5の場合、ターンテーブル3上の光学分析用セル2には、試薬投入位置P11において、試薬投入部12によって試薬ボトル14から分注された試薬液14Aが投入される。
【0066】
この場合、試薬液14Aは、第1の赤色の色素によって波長520〔nm〕の光成分を吸光する吸光特性を呈する第1の色素液が用いられる。
【0067】
続いて光学分析用セル2には、希釈液投入位置P12において、希釈液分注用ピペッタ21によって、分注作業者が、希釈液ボトル23から、手作業で分注した希釈液23Aが投入される。
【0068】
この場合、希釈液23Aは、第2の青色の色素によって波長730〔nm〕の光成分を吸光する吸光特性を呈する第2の色素液が用いられる。
【0069】
ここで、希釈液投入位置P12において希釈液23Aを投入する前に、希釈液23Aを分注した状態の希釈液分注用ピペッタ21は、希釈液秤量部40を構成する天秤40Aに載せられ、その総重量が秤量される。
【0070】
希釈液23Aを投入した後の当該希釈液分注用ピペッタ21は、ピペッタ秤量部46を構成する天秤46Aに載せられて、それ自体の重量が秤量される。
【0071】
続いて光学分析用セル2には、試料投入位置P13において、試料投入部17によってサンプルカップ19から分注された試料液19Aが投入される。
【0072】
この場合、試料液19Aは、上述の希釈液23Aと同じ第2の青色の色素によって、波長730〔nm〕の光成分を吸光する吸光特性を呈する第3の色素液が用いられる。
【0073】
続いて光学分析用セル2は、測定対象位置P14において、吸光度検出部25によって、光学分析用セル2内の測定対象液26の吸光度を検出させる。
【0074】
これと共に、対象測定位置P14において、光学分析用セル2内に投入されている液は、その全量が、矢印dで示すように、移送用ピペッタ30によって基準値判定部32の基準値判定用パレット32Aに移送される。
【0075】
(5)第2の実施の形態の検定動作
図5の構成において、検定装置1Xは、ターンテーブル3によって光学分析用セル2が試薬投入位置P11に来たとき、試薬投入部12の分注管13によって試薬ボトル14から試薬液14Aとなる第1の色素液を分注して光学分析用セル2に投入する。
【0076】
続いて検定装置1Xは、この試薬液14Aが投入された光学分析用セル2に対して、希釈液投入位置P12において、分注作業者によって希釈液ボトル23から希釈液分注用ピペッタ21によって分注された希釈液となる第2の色素液が投入された後、試料投入位置P13において試料投入部17によってサンプルカップ19から分注された試料液となる第3の色素液が光学分析用セル2に投入される。
【0077】
かくして光学分析用セル2には、試薬投入位置P11において投入された第1の色素の赤色の第1の色素液と、希釈液投入位置P12において希釈液分注用ピペッタ21から投入された第2の色素の青色の第2の色素液と、試料投入位置P13において試料投入部17によって投入された第2の色素の青色の第3の色素液とが混合されることにより、吸光度検出部25は、これを測定対象液26として測定対象位置P14において吸光度の検出をする。
【0078】
このとき吸光度検出部25は、上述の(1)式に従って第1の色素でなる赤色の波長成分でなる試薬液14Aの吸光度と、第2の色素でなる青色の波長成分でなる希釈液23A及び試料液19Aの吸光度との比に基づいて、第1の色素でなる赤色の試薬液14Aの液量を、ISO8655−7の規定に基づく色素法により求めて、対象測定結果処理部27に蓄積する。
【0079】
ここで、第2の色素(青色)の液量は、希釈液23Aに対して試料液19Aが投入された分、上述の(1)式における第1の色素(赤色)の液量に誤差が生ずるが、第2の色素(青色)の液量を構成する希釈液23A(すなわち第2の色素液)の液量が既知で、かつ試料液19A(すなわち第3の色素液)の液量が既知であれば、第1の色素の試薬液14A(すなわち第1の色素液)の液量を、色素法に蒸発の影響が少ない高い精度で求めることができる。
【0080】
かくするにつき、図5の場合も、分注作業者は、希釈液秤量部40において試薬液分注用ピペッタ21が希釈液ボトル23から分注した希釈液23Aを含む総重量を秤量すると共に、ピペッタ秤量部46において当該希釈液23Aを試薬液投入位置P12において投入した後の試薬液分注用ピペッタ21の重量を秤量する。
【0081】
かくして、希釈液秤量部40の秤量結果とピペッタ秤量部46の秤量結果との差によって、試薬液分注用ピペッタ21によって分注された希釈液21Aの液量を重量法によって確認できる。
【0082】
これに加えて移送用ピペッタ30によって基準値判定部32の基準値測定用マイクロプレート32Aの保持溝33に移送された測定対象移送液26Aは、図3の基準値判定部32によって、分注量が、色素法に基づく原器に対応する高い精度の基準値として求められる。
【0083】
この基準値の判定結果は、移送用ピペッタ30によって移送されて来た測定対象移送液26Aに含まれる赤色成分の分注量、すなわち試薬投入部12が試薬ボトル14から分注した第1の色素液の試薬液14Aの分注量を表し、これが基準値判定部32の基準値判定結果処理部44に蓄積される。
【0084】
かくして基準値判定部32の検定結果処理部45は、対象測定結果処理部27から得られる対象液量信号S11と、基準値測定結果処理部44から得られる基準液量信号S21を分注精度判定部45Aにおいて比較判定することにより、図4について上述した分注精度曲線DTを求めることができる。
【0085】
その結果、図5の検定装置1Xは、得られた分注精度曲線DTに基づいて、検定対象である臨床生化学検査自動分析装置R0の試薬投入部12の分注精度を検定(バリデーション)することができる。
【0086】
かくするにつき、希釈液秤量部40の秤量結果と、ピペッタ秤量部46による秤量結果に基づいて青色色素成分の液量を重量法によって実測することができ、これが色素法に基づく上記(1)式の演算において青色色素液の液量Vとして重量法に基づいて確認することができることにより、赤色成分の分注量の測定結果に対する確からしさを一段と確実に確認することができる。
【0087】
因に、図1の構成の検定装置1によって、試料投入部17による試料液19Aの分注液量を色素法により求めた後、図5の構成によって試薬投入部12による試薬液14Aの分注液量を色素法により求めるようにすれば、臨床生化学検査自動分析装置R0において分析結果に重要な要素となる、血液の分注を行う試料投入部17の分注量の検定と、発色試薬の分注を行う試薬投入部12の分注量の検定とを、高い精度で行うことができる。
【0088】
(6)他の実施の形態
(6−1)上述の実施の形態においては、血液検査に用いる臨床生化学検査自動分析装置に本発明を適用した実施の形態について述べたが、本発明はこれに限らず、その他の臨床生化学検査自動分析装置に広く適用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は臨床生化学検査自動分析装置の検定に利用できる。
【符号の説明】
【0090】
R0……臨床生化学検査自動分析装置、1、1X……自動分析装置の検定装置、2……光学分析用セル、3……ターンテーブル、3A……周縁部、12……試薬投入部、13……分注管、14……試薬ボトル、14A……試薬液、17……試料投入部、18……分注管、19……サンプルカップ、21……希釈液分注用ピペッタ、23……希釈液ボトル、23A……希釈液、25……吸光度検出部、25A……白色光源、25B……フィルタ、25C……光電変換器、26……測定対象液、27……測定対象結果処理部、30……移送用ピペッタ、32……基準値測定部、32A……基準値測定用マイクロプレート、33……保持溝、41……白色光源、42……フィルタ、43……光電変換器、44……基準値測定結果処理部、45……検定結果処理部、45A……分注精度判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学分析セルに対して、自動分析対象液を第1及び第2の分析対象液投入部によってそれぞれ分注して、順次自動分析する自動分析装置を検定対象として、
上記複数の光学分析セルに対して、上記第1の分析対象液投入部を用いて、第1の色素液を第1の液保有部から分注して順次投入し、
希釈液分注用ピペッタを用いて、第2の色素液を第2の液保有部から分注すると共に、
当該分注状態にある上記希釈液分注用ピペッタの総重量を希釈液秤量部によって重量法に基づいて秤量した後、
上記希釈液分注用ピペッタに分注されている上記第2の色素液を上記第1の色素液が投入されている上記光学分析セルに投入し、
上記第1及び第2の色素液が投入された上記光学分析セルの液量を、対象液量測定部によって、色素法に基づいて測定することにより、上記第1の色素液の液量を対象液量測定結果として求め、
上記第2の色素液を投入した後の上記希釈液分注用ピペッタの重量をピペッタ秤量部によって重量法に基づいて秤量し、
上記第1及び第2の色素液が投入されている状態の上記光学分析セルから移送用ピペッタを用いて基準値測定部に移送して、色素法に基づいて測定することにより、上記第1の色素液の液量を基準液量測定結果として求め、
色素法に基づいて求めた上記基準液量測定結果及び上記対象液量測定結果の偏差と、重量法に基づいて求めた上記ピペッタ評量部及び上記希釈液秤量部の測定結果の偏差とによって、上記自動分析装置の上記分析対象液投入部の分注精度を検定する第1の検出ステップを具備する
自動分析装置の検定方法。
【請求項2】
複数の光学分析セルに対して、自動分析対象液を第1及び第2の分析対象液投入部によってそれぞれ分注して、順次自動分析する自動分析装置を検定対象として、
上記複数の光学分析セルに対して、上記第1の分析対象液投入部を用いて、第1の色素液を第1の液保有部から分注して順次投入し、
希釈液分注用ピペッタを用いて、第2の色素液を第2の液保有部から分注すると共に、
当該分注状態にある上記希釈液分注用ピペッタの総重量を希釈液秤量部によって重量法に基づいて秤量した後、
上記希釈液分注用ピペッタに分注されている上記第2の色素液を上記第1の色素液が投入されている上記光学分析セルに投入し、
上記第1及び第2の色素液が投入されている上記光学分析セルに対して、上記第2の分析対象液投入部を用いて、上記第2の色素液と同じ色素を有する第3の色素液を第3の液保有部から分注して投入し、
上記第1、第2及び第3の色素液が投入された上記光学分析セルの内の測定対象液を、対象液量測定部によって、色素法に基づいて測定することにより、上記第1の色素液の液量を対象液量測定結果として求め、
上記第2の色素液を投入した後の上記希釈液分注用ピペッタの重量をピペッタ秤量部によって重量法に基づいて秤量し、
上記第1、第2及び第3の色素液が投入されている状態の上記光学分析セルから移送用ピペッタを用いて基準値測定部に移送して、色素法に基づいて測定することにより、上記第1の色素液の液量を基準液量測定結果として求め、
色素法に基づいて求めた上記基準液量測定結果及び上記対象液量測定結果の偏差と、重量法に基づいて求めた上記ピペッタ評量部及び上記希釈液秤量部の測定結果の偏差とによって、上記自動分析装置の上記分析対象液投入部の分注精度を検定する
第2の検定ステップを具備する
自動分析装置の検定方法。
【請求項3】
上記第1の色素液は赤色の吸収波長成分を有し、かつ上記第2の色素液は青色の吸収波長成分を有する
請求項1又は2に記載の自動分析装置の検定方法。
【請求項4】
上記基準値判定部はISO8655−7によって規定された原器の検定精度で色素法に基づき上記第1の色素液の液量を求める
請求項1又は2に記載の自動分析装置の検定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−220340(P2012−220340A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86354(P2011−86354)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(511090419)
【Fターム(参考)】