説明

自動分析装置

【課題】
自動分析装置において試薬情報の履歴を残す際、場合によっては記憶保持手段の情報容量がすぐに上限に達してしまう可能性がある。
【解決手段】
試薬情報のうち更新が必要な項目と必要でない項目に分ける。次に情報の更新が必要な項目のうち、頻繁に更新が必要な項目と必要でない項目に分ける。頻繁に更新が必要でない項目は、情報の上書きをせずに履歴を残していく。また頻繁に更新が必要な項目は情報の上書きを行う領域と、情報の上書きを行う領域と共に情報の上書きをせずに履歴を残すサブ領域を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液,尿などの生体サンプルの定性・定量分析を行う自動分析装置に係り、特に試薬容器に試薬識別情報などを記憶する記憶媒体を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液,尿などの生体サンプルの分析を行う自動分析装置では、サンプル中の分析対象成分と反応する試薬をサンプルに添加,混合することで分析を行う。近年、製薬技術の進歩により、多くの種類の分析対象について分析が可能な試薬が市販化されるようになった。このように多くの種類の試薬を使用する自動分析装置では、試薬の取り違えにより間違った分析結果を報告しないよう、試薬容器にバーコードなどの識別IDを付与して、装置が自動的に試薬の種類を識別するような機構を備えるものが主流になっている。より具体的には試薬が入れられた試薬容器にバーコードを付加し、それをバーコードリーダによって読取り、その後試薬情報を装置の記憶保持手段に記憶し、適宜利用している。読取った情報によっては試薬の有効期限が切れているためアラームを発生しユーザに注意を喚起するといったようにシステム上で試薬情報を活用している。試薬情報としては試薬の有効期限の他、試薬の製造ロット番号・シリアル番号,試薬初期容量などがあり、これを上述のバーコード情報として記録した上で試薬容器に貼付けして読取っている。
【0003】
ところで、バーコードは自動認識(ID)の手段として広く普及した技術であり、自動分析装置においても試薬容器の他、検体容器,検体ラック,希釈液容器,洗剤容器といった様々な対象物に付加され、利用されている。バーコードは情報を紙などに印字しバーコードラベルとして使用するため、ランニングコストが安価であるというメリットがあるが、情報の書込みができないというデメリットを持つ。バーコードに入れられた情報は読取ることしかできないため、試薬の有効期限といったあらかじめ定まっているような不変の情報には適しているが、分析によって変化する試薬残量といった情報の更新が必要な項目までは管理することができない。従って情報の更新が必要な項目に関しては、システム上の記憶保持手段で管理しているのが普通である。
【0004】
特許文献1では試薬残量などの情報を記憶媒体上にバックアップしておき、復旧作業後を簡便にする手段を提供しているが、記憶媒体上への具体的な情報書込み方法にまでは言及していない。
【0005】
試薬情報を管理する上で使用履歴を残すことは、分析データの信頼性向上につながる。仮に分析データが不良であった場合、その原因が何によって発生したのか究明が必要となるが、試薬情報がトレース可能であるなら、それが当該試薬によって発生したのか、あるいは試薬以外の他の原因によって発生したのか切り分けて判断できるようになり、原因の早期究明に役立つ。また装置上において、適正な試薬を適正な条件で使用しているかも管理できる。こうした試薬情報のトレーサビリティを確立する上では、使用履歴を可能な限り残しておくことが望ましい。また情報を残す場所は装置のシステム上の他に試薬容器単体に残しておくことが可能であるなら、試薬容器単体でもトレーサビリティに対応可能になる。
【0006】
【特許文献1】特開2002−90369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
試薬情報を管理する上で使用履歴を残すとき、考慮しなくてはならないのが記憶保持手段の情報容量である。記憶保持手段としてはハードディスクドライブやフラッシュメモリあるいはICタグなどを使用するのが一般的であるが、その保持できる情報量は決まっており、情報の更新が頻繁に必要な項目は使用履歴情報が増え、場合によってはすぐに情報量が上限に達してしまう可能性がある。また更新が必要な試薬情報を増やす(例えば試薬残量以外に分注した反応容器番号を追加するなど)場合、一項目ごとに残すことができる情報量が減少してしまうし、より大容量な記憶保持手段を設けようとすると、コストアップにつながってしまう。
【0008】
本発明の第一の目的は試薬の使用履歴を残す上で、情報容量を有効に利用する手段を備えた自動分析装置を提供することにある。
【0009】
さらに、一つの試薬容器を複数の装置で用いる場合を考える。従来はシステム上の記憶保持手段に試薬の使用履歴を残して管理していたため、一方の装置で利用した情報を他方の装置に引き継ぐにはネットワークを利用して情報を共有するしかなかった。ネットワークを利用すれば装置間同士、あるいは外部サーバなどを利用して情報の共有が可能であるが、スタンドアローンタイプでネットワーク環境を想定していない装置や、ネットワーク環境が十分整備できない環境では、試薬の使用履歴を共有することが不可能という別の課題が存在する。
【0010】
本発明の第二の目的は複数台の装置において、試薬の使用履歴を共有することが可能な手段を備えた自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するための本発明の構成は以下の通りである。
【0012】
始めに第一の目的を達成するための構成に関して説明する。まず、試薬情報のうち更新が必要な項目と必要でない項目に分ける。次に情報の更新が必要な項目のうち、頻繁に更新が必要な項目と必要でない項目にわける。頻繁に更新が必要でない項目は、あらかじめ定めておいた情報容量内に、情報の上書きせずに履歴を残していく。また頻繁に更新が必要な項目は、常に情報の上書きを行う領域を設ける。使用履歴は可能な限り残しておくことが望ましいため、情報の上書きを行う領域と共に、情報の上書きをせずに履歴を残すサブ領域とを設ける。このサブ領域が全て埋まった場合は、一旦情報を上書きし、再びサブ領域に順次情報を書込んでいく。またこの際、常に上書きを行う領域とサブ領域に同じ情報を書込むものとする。こうすることによって限られた情報容量の中で有効に履歴を残すことが可能となる。
【0013】
次に第二の目的を達成するための本発明の構成に関して説明する。試薬情報のうち読取り専用項目と読取り/書込み項目に分類する。次に読取り/書込み項目のうち、格納領域が1つの項目と、複数台の装置の使用を想定し、複数台分の格納領域を持つ項目とに分類する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第一の効果として、試薬の使用履歴を残す上で、情報容量を有効に利用する手段を備えた自動分析装置を提供することが可能となる。
【0015】
また本発明の第二の効果として、試薬の使用履歴を共有することが可能な手段を備えた自動分析装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に図面を用いて、RFIDを利用した本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0017】
図1に示したのは自動分析装置の概観図である。操作部1からの指示により、ICタグが付加された試薬容器がICタグの情報を読取りまたは書込みを行う位置へと移動する。そして試薬保冷庫の蓋に設置された読取器/書込器によって試薬容器ごとの個別情報を取得する。次に試料の入った試料容器2が架設された搬送ラック3が分析部に搬送される。分析部に搬送された試料は操作部1から指示された分析を行うため、試料容器2内の測定用液体を試料分注機構4を用いて吸引し、反応ディスク5に架設した反応容器6に注入する。また試薬保冷庫7内に架設した試薬容器8をあらかじめ取得した試薬容器8の情報に基づき、所定の試薬を吸引するため、蓋の開口部の位置に移動し試薬容器8内の試薬を試薬分注機構9により吸引し、反応ディスク5に乗った反応容器6に注入する。反応容器6に注入された試料と試薬は攪拌機構10によって撹袢される。これによる化学反応の発色を光源ランプ,分光用回折格子,光検知器により構成される光度計11で測光し分析を行う。分析後は次の試料を分析するため、反応容器6を洗浄機構12により洗浄する。分析を行うための試料を吸引後、試料容器2を架設した搬送ラック3は分析部から搬出される。図1は試薬保冷庫7の蓋の一部を断面表示し、保冷されている複数の試薬容器8の一部が見えるようにしてある。試薬保冷庫7は試薬を充填した円周上に配置された複数の試薬容器8を保冷し、試薬容器8から試薬を吸引するための少なくとも1つの開口部13を持つことを特徴とする。
【0018】
次に試薬容器8とICタグおよびICタグの情報を読取る読取器/書込器の構成に関して説明する。図2に示したように、試薬保冷庫7内には試薬保持部14と試薬容器8が配置され、試薬保持部14は試薬保持部制御部15によって回転駆動させることができる。試薬保持部制御部15は自動分析装置の中枢制御部16から行い、中枢制御部16は記憶保持手段17とつながっている。記憶保持手段としては、ハードディスクやフラッシュメモリなどを用いればよい。また試薬保冷庫7の上部には試薬保冷庫の蓋18が設置されており、保冷庫内の温度を一定に保っている。試薬保冷庫の蓋18内にICタグを読取る/書込むための読取器/書込器19が配置されており、読取器/書込器19は中枢制御部16と接続されている。読取器/書込器19は複数の受信部/送信部を有し、特に試薬保持部14の内周と外周に架設された試薬容器上面に付加されたICタグ20を読取る/書込むため、ICタグ20の上方にICタグ内周用受信部/送信部21とICタグ外周用受信部/送信部22とを併せ持つ。こうして試薬容器8に付加されたICタグ20を内周・外周において各々一対一で読取るような構成をとるようにする。
【0019】
次に図3を用いて試薬情報の分類について説明する。試薬情報を管理する上で必要となる項目を、更新が必要でない項目23と更新が必要な項目24に分類する。更新が必要でない項目としては試薬製造ロット番号,試薬製造シリアル番号,メーカコード,項目コード,試薬有効期限,試薬容器形状,試薬初期容量,分注量などが挙げられる。こうした項目は情報の更新が必要ないため、バーコードのような読取りのみの情報媒体に入れていたのと同じ項目が入ることになる。また更新が必要な項目24をさらに分類し、頻繁に更新が必要な項目25と頻繁に更新が必要でない項目26とに分類する。頻繁に更新が必要な項目としては試薬残量,分注した反応容器番号,分注回数などが挙げられ、頻繁に更新が必要でない項目26としては試薬使用年月日,試薬使用時刻,装置製造番号,試薬保冷庫内架設ポジション,架設ポジションにおける分注ポジションなどが挙げられる。こうして試薬情報を分類しておき、後に情報を書込む際、限られた情報容量を有効に活用する。
【0020】
次に図4を用いて読取り/書込み動作を説明する。動作の流れとしてはまずICタグの読取りを行い、読取った情報に基づき書込む場所を選択する。その後、ICタグに情報を書込むというものになる。
【0021】
試薬保持部が試薬保持部制御部の動作によってCCW方向回転動作27を開始する。試薬保持部に架設された試薬容器は同心円状に並んでおり、回転動作によって所定の周期で受信部/送信部を通過する。試薬容器数と内周・外周の回転半径、および試薬容器形状やICタグの形状をあらかじめ定めておき、試薬容器が受信部/送信部を通過するタイミングで電波照射を行い、ICタグを読取る。本タイムチャート例では外周に内周の倍の試薬容器8を架設しているため、内周電波照射28の半分の周期で外周電波照射29を実施する。こうして架設された試薬容器数分だけ複数の受信部/送信部から電波を照射し、試薬容器に付加されたICタグを読取る。ICタグを読取った際、読取った情報に基づき書込み行う領域の選択を行うが、詳細に関しては後述する。書込みを行う領域の選択が完了すると、同様のタイムチャートで書込みを実施し、書込み動作を終了する。
【0022】
次に図5を用いて読取器/書込器のICタグ読取り動作フローの詳細に関して説明する。ICタグに試薬容器の使用履歴を書込む場合、トレースが行えるよう書込んだ履歴を可能な限り残すようにする。従って既にICタグに存在している情報を把握した上で、どの領域に情報を書込むかを定める必要がある。よって書込み動作の前には読取り動作を実施するものとする。
【0023】
読取り動作では書込み領域の全情報を取得する。図4で説明したように試薬容器が所定の読取り位置へ移動する。その後中枢制御部から読取器へ書込み領域全情報を取得する読取りコマンドを発行する。その後読取器が送信部を介して電波を照射し、ICタグの読取りを実施する。その後、ICタグは電波を読取器の受信部へ返送し、さらに読取器は受信部を介して書込み領域の全情報を取得する。その後、読取器は中枢制御部へ取得情報を送信し、中枢制御部は書込み領域全情報の取得を完了する。
【0024】
次に図6を用いて試薬情報の領域に関して説明する。上述の通り、更新が必要でない項目23はあらかじめ試薬メーカが販売する前にICタグへ書込んでおくものとし、書込み内容をロックして上書きが不可能であるようにしておく。試薬情報項目30としては試薬製造ロット番号,試薬製造シリアル番号を例として示した。その書込み情報31はICタグへ書込む情報であり、ここでは8桁の(英)数字が扱えるものとして表記してある。また書込み領域番号32と書込み領域数33を各々定める。ここで書込み領域番号32とは書込みを行う領域につけられた通し番号のことであり、書込み領域数33とは書込み情報を入れることが可能な領域がいくつあるかを示すものである。更新が必要でない項目は、書込み領域数を1つずつとして示してある。
【0025】
次に更新が必要な項目に関して説明する。更新が必要な項目のうち、頻繁に更新が必要でない項目26は、領域番号順に履歴を残すことにするが、詳細は後述する。ここでは試薬情報項目として、試薬使用年月日,試薬使用時刻を示した。書込み情報は上述の項目と同じで8桁の(英)数字としてある。各々の項目は書込み領域数として5個領域を確保してあるため、試薬使用年月日は書込み領域番号を11〜15、そして試薬使用時刻としては書込み領域番号を16〜20としてある。
【0026】
次に更新が必要な項目のうち、頻繁に更新が必要な項目25に関して説明する。頻繁に更新が必要な項目は、最初の領域番号を情報を書込むたびに常に上書きし、次番号より領域番号順に履歴を残すものとする。頻繁に情報を書込む項目は、上書きをせずに履歴を残すだけでは、場合によってはすぐに情報容量を超えてしまう可能性があるため、常に上書きを行う領域と、履歴を残す領域を組み合わせて使用することにする。ここでは試薬情報項目として、試薬残量,分注した反応容器番号を示した。書込み情報は上述の項目と同じで8桁の(英)数字としてある。各々の項目は書込み領域として10個領域を確保してあるため、試薬残量の書込み領域番号を61〜70、分注した反応容器番号を71〜80としてある。履歴を残す詳細フローに関しては後述する。
【0027】
次に図7を用いて書込み領域の選択動作フローを説明する。ICタグの情報に関して、ユーザが書込みを行える領域はデフォルトの状態で全て0としておくものとする。
【0028】
まず項目ごとに読取った情報を全て0か0以外の情報があるかで判別する。情報が全て0の場合は項目内における領域番号が最も小さい領域を書込み対象と決定する。0以外の情報がある場合は、全て0の領域を探し出す。全て0の領域が複数ある場合は、領域番号が最も小さい領域を書込み対象と決定する。全て0の領域が1つだけの場合は、その領域を書込み対象と決定する。全て0の領域が1つもない場合はアラームを発生し、ユーザに告知できるようにしておく。書込み領域が全て埋まっている場合は、内容の全消去をユーザ側で操作部より選択可能にしておく。
【0029】
次に図8を用いてより具体的に説明する。まず更新が必要な項目のうち、頻繁に更新が必要ない項目は、領域番号順、すなわち、番号が小さい順番に情報を書込んでいく。ここでは試薬使用年月日の書込み領域番号のうち、11番に情報が入っているため、次に書込む領域は12番となる。
【0030】
また、更新が必要な項目のうち、頻繁に更新が必要な項目は書込み領域番号の1番目(ここでは領域番号61番)の項目を常に上書きし、次番号(ここでは領域番号62番目)より領域番順、すなわち番号が小さい順番に情報を書込んでいく。この際、1番目の領域と次番号以降の履歴を残す領域には同時に同じ情報を書込む。ここでは61番と62番に情報が入れられているため、次の書込み領域は61番と63番となる。
【0031】
次に図9を用いて書込み領域選択終了後の、読取器/書込器のICタグ書込み動作フローの詳細に関して説明する。ICタグの読取り速度と書込み速度が異なる場合、どちらか時間がかかる動作に合わせてタイムチャートを組んでおけば、同等のタイムチャートで読取器/書込器の動作を制御することが可能である。読取り動作と同様に、試薬容器が所定の読取り位置へ移動する。次に中枢制御部から書込器へ先ほど選択した領域へ情報を書込むための書込みコマンドを発行する。次に書込器が送信部を介して電波を照射を行い、ICタグへ書込みを実施する。その後、ICタグが読取器の受信部へ電波を返送し、読取器は書込みが完了情報を取得する。その後、読取器が中枢制御部へ書込み完了情報を送信し、ICタグへの書込み動作を完了する。こうしてICタグの読取り→ICタグ情報を把握し、書込む領域を判断→ICタグへ書込みを行うという一連の動作を行う。
【0032】
次に更新が必要な項目のうち、頻繁に更新が必要な項目に関して、分析動作中に履歴を残すフローについて説明する。頻繁に更新が必要な項目も頻繁に更新が必要ない項目も、上述の通り試薬容器の読取りを行った後に情報の書込みを行う。頻繁に更新が必要な項目はさらに分析動作中にその履歴を残すことを考える。分析動作中に履歴を残すことに関してだが、試薬容器の読取り動作の後に試薬容器は所定の吸引ポジションにて吸引動作を行うため、吸引口の下方に回転移動し、停止する。その吸引ポジションで吸引動作を行っている際に試薬容器はある一定時間その吸引ポジションで停止する。上述の読取器/書込器を吸引ポジションに合わせて配置しておけば、この試薬容器が吸引ポジションで停止している間に試薬情報の書込みを行うことが可能となる。どの試薬容器を吸引ポジションに回転移動させるのかは、装置の中枢制御部が制御を行っているため、そのタイミングに合わせて書込みコマンドを発行すればよい。
【0033】
さらにこの際の書込みフローを図10を用いて説明する。図10では新規の試薬容器を使用した場合の書込みフローの例に関して説明する。分析動作中に書込みを行うため、その回数が多い。このため、図7で説明したように全て0の領域がすぐになくなってしまうことがある。従って分析動作中の書込みに関してはユーザにアラームで告知する動作を省き、全て0の領域がなくなった場合には履歴を残す領域の全てを自動的に0で上書きし、2番目の領域に再び戻って履歴を残す動作を繰返すようにする。履歴を残す領域の全てに0で上書きを行う際、常に上書きを行う1番目の領域は同時に0で上書きを行っても行わなくても良いが、履歴は可能な限り残しておいた方が良いため、ここでは常に上書きを行う1番目の領域は0での上書きを行わないことにする。また書込みを行う領域は上述の通り10個とする。
【0034】
まず、頻繁に更新が必要な項目のうち、1番目と2番目の領域には試薬容器の読取りを行った後に既に情報が書込まれているため、分析動作中に行う書込み回数をN(N:自然数 N=1,2,3,…)と定義すれば、1≦N<8回目の書込み時、1番目と2+N番目の領域に書込みを行う。N=8回目の書込み時、1番目と2+N番目の領域に書込んだ後に、2番目の領域に戻る。その後、次の書込み動作の前に2〜10番目の領域を全て0で上書きを行う。その後書込み動作を継続する。9≦N<17回目の書込み時、1番目とN−7番目に書込みを行う。N=17回目の書込み時、1番目とN−7番目の領域に書込んだ後に、2番目の領域に戻る。その後、次の書込み動作の前に2〜10番目の領域を全て0で上書きを行う。次に、9+9X≦N<17+9X(X:自然数 X=1,2,3,…、18≦N)回目の書込み時、1番目とN−7−9X番目に書込みを行う。このとき、2番目の書込み時に関し、N=9+9Xの関係が成り立つ。N=17+9X回目の書込み時、1番目とN−7−9X番目に書込んだ後に、2番目の領域に戻る。こうした動作を継続して行うが、ここで書込み動作の終了判断があったものとする。すると、書込み動作を終了しない場合は、継続して書込み動作を行う。ここでは2番目の領域に戻った後の動作であるので、次の書込み動作の前に2〜10番目の領域を全て0で上書きする。また、判断時に書込み動作を終了する場合は、書込み情報をそのままにして動作を終了する。
【0035】
以上に述べたことを実施することによって、試薬の使用履歴を残す上で、情報容量を有効に利用する手段を備えた自動分析装置を提供することが可能となる。
【0036】
なお、本発明はRFIDの実施例として述べてきたが、本発明はこれに限定されない。ICタグの他にハードディスクやフラッシュメモリといった記憶保持手段にも適用される。
【実施例2】
【0037】
次に複数台の装置で試薬の使用履歴を共有する発明に関して、RFIDを用いた実施例で説明する。スタンドアローンタイプの自動分析装置がA台(A:自然数 A=1,2,3,…)ある場合において、試薬容器に付加したICタグにA台分の試薬情報を格納する。
【0038】
実施例1で説明した試薬の使用履歴は装置単体で使用した場合を想定しているため、装置がA台分あるとすると、その分だけ同様の情報を収めることが可能なようにA台分だけ同様の領域を設ける。
【0039】
図11を用いて説明する。実施例1と同様に、項目ごとに試薬情報を分類する。ここでは読取り専用項目と読取り/書込み項目とに分類している。また、読取り/書込み項目の中をさらに分類し、格納領域が1つのみの項目34とA台分の格納領域を持つ項目35とに分類する。図11に示したように、格納領域が1つのみの項目は試薬残量,試薬開栓年月日,試薬開栓時刻などである。またA台分の格納領域を持つ項目に関しては試薬使用年月日,試薬使用時刻,装置製造番号などである。また、A台分の格納領域を持つ項目に関しては、さらに情報の更新の頻度に合わせて実施例1のように頻繁に更新が必要な項目と必要でない項目といったような詳細分類を行っても良い。
【0040】
次に図12を用いて説明する。格納領域が1つの項目の例として、試薬開年月日を示した。またA台分の格納領域を持つ項目として分析モジュール番号を示した。A台分の格納領域を持つ項目では、A個の格納領域36を持つ。従って1台で1個の格納領域を利用する。
【0041】
以上に述べたことを実施することで試薬容器を取り出し、別の装置に架設して引き続き試薬を使用する場合にも、その情報はICタグに入っているため、読取ることによって試薬の使用履歴情報を共有できる。すなわち、試薬の使用履歴を共有することが可能な手段を備えた自動分析装置を提供することが可能となる。
【0042】
なお、本発明はRFIDの実施例として述べてきたが、本発明はこれに限定されない。ICタグの他にハードディスクやフラッシュメモリといった記憶保持手段にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】自動分析装置の概観図である。
【図2】試薬保冷庫の内部と試薬容器,ICタグ,読取器/書込器の構成図である。
【図3】試薬情報を項目別に分類した図である。
【図4】試薬保持部と送信部/受信部のタイムチャートである。
【図5】読取り動作における書込み領域取得のフローチャートである。
【図6】試薬情報領域に関して説明した図である。
【図7】書込み領域を選択するフローチャートである。
【図8】書込み領域番号に関して詳細を説明した図である。
【図9】書込み動作におけるフローチャートである。
【図10】頻繁に更新が必要な項目の書込みフローを示したフローチャートである。
【図11】複数台の装置における使用を想定した試薬情報の分類である。
【図12】複数台の装置における使用を想定した試薬情報領域の説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 操作部
2 試料容器
3 搬送ラック
4 試料分注機構
5 反応ディスク
6 反応容器
7 試薬保冷庫
8 試薬容器
9 試薬分注機構
10 攪拌機構
11 光度計
12 洗浄機構
13 開口部
14 試薬保持部
15 試薬保持部制御部
16 中枢制御部
17 記憶保持手段
18 試薬保冷庫の蓋
19 読取器/書込器
20 ICタグ
21 ICタグ内周用受信部/送信部
22 ICタグ外周用受信部/送信部
23 更新が必要でない項目
24 更新が必要な項目
25 頻繁に更新が必要な項目
26 頻繁に更新が必要ない項目
27 CCW方向回転動作
28 内周電波照射
29 外周電波照射
30 試薬情報項目
31 書込み情報
32 書込み領域番号
33 書込み領域数
34 格納領域が1つのみの項目
35 A台分の格納領域を持つ項目
36 格納領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報の書込みが可能な情報記録媒体と、
該情報記録媒体を備えた容器と、
該情報記録媒体に記録された情報の読取りまたは書込みを行う情報読取り/書込み手段と、
を備えた自動分析装置において、
前記情報記録媒体の記憶領域を、書き換えを実施しない領域と、書き換えを実施する領域の少なくとも2つに分けることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記書き換えを実施しない領域に記憶する情報は、合わせて履歴を記憶することを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動分析装置において、
前記履歴を記憶するため同一領域に複数に区分けすることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項3記載の自動分析装置において、
複数の区分け領域に優先順位を付加し、該優先順位に従い情報を記憶することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項3記載の自動分析装置において、
複数の区分け領域のどの領域から情報を記憶するかを決定する決定手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項4記載の自動分析装置において、
情報記憶領域を失った場合は、記憶した情報を消去した後、再度前記優先順位に基づき情報を記憶するように制御する制御手段を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の自動分析装置において、
前記情報記録媒体に記憶する情報は、複数の自動分析装置に係る情報であることを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−139292(P2009−139292A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317832(P2007−317832)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】