説明

自動分析装置

【課題】1つの回転する反応ディスクに複数の光度計を配置する場合において、隣接する光度計からの光源光が迷光となるため、光源同士の距離を離さなくてはならず、極力同時点での反応を測定し、複数の光度計の測定結果を比較検証することが困難であった。
【解決手段】光度計の光源と検出器の位置を反応ディスクの内側・外側の逆に配置することで、お互いの検出器の検出範囲に隣接する光度計の光源光が入ることを防げるため、従来よりもより近くの反応セルの光度計の測定結果を得ることができる光源・検出器の配置とすることができ、反応セルの測定までのタイムロスを低減し、ほぼ同時点での検出結果が得られることで、より信頼性のある結果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の生体サンプル成分を自動で分析する自動分析装置に関わり、特に複数の光度計を配置した自動分析装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置においては、近年作業効率が高く、信頼性の高い装置が求められており、多機能化、小型化が進んでいる。それを実現させる手段の一つとして、1つの反応ディスクに感度や、測定項目が異なる複数の光度計を配置する方法がある。特に、同項目において、高濃度領域を測定する光度計と、低濃度領域を測定する光度計を配置する場合、希望的には同じ反応セル(反応容器)を同時に複数の光度計で測定させることにより、より効率よく、且つそれぞれの光度計での測定データを参照させて妥当性の検証等が可能となる。また、反応ディスクの回転は効率化のため、従来製品より小刻みに回転するパターンが主流となりつつある。例えば、以前は反応セル1周+1セル分を1回分とする回転パターンであったものが、1/2周+1セル分を1回分とするパターンであったり、1/4周+1セル分とする場合が増えている。
【0003】
特許文献1によれば回転する反応ディスク上に測定項目・感度・測定時間の異なる複数の光度計を配置し、それぞれの反応時間に応じて反応セルを回転させることにより、生化学・免疫・血液凝固等の項目を測定できることを開示し、LED光源を反応ディスクの外側に配置し、検出器を内側に配置し、各々の光度計を一定間隔で配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−208760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、同じ反応セルに対して高濃度領域と、低濃度領域の両方を異なる感度の光度計で測定したい場合、配置された間隔の時間だけずれた分のポイントでしか測定できず、出力された反応カーブはそれぞれに異なってしまうことが懸念される。結果、信頼性の高い結果を得るのは困難であるという課題がある。
【0006】
そのため、このように複数の光度計を配置する場合、なるべく近い位置に配置することで、ほぼ同時点での反応を測定可能となり、複数の光度計でのデータを比較、検証することにより、信頼性がより高められる可能性がある。可能であれば隣接し合うセルに配置することが望ましい。
【0007】
その一方で、あまり複数の光度計を近づけてしまうと、通常光は放射状に広がるため、各々の光源からの光が隣接する検出器にとって迷光になってしまい、検体へ照射されて透過した光のみを検出することができなくなるという課題を見出した。自動分析装置は、光量変化から測定対象検体の濃度を算出するため、検体へ照射されて透過した光のみを検出することが必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の代表的なものを挙げると以下のとおりである。
【0009】
本発明は、試料と試薬とを反応させる複数の反応容器を円環状に載置する反応ディスクと、該反応容器に光を照射する第1と第2の光源と、第1の光源から照射された光を検知する第1の検出器と、第2の光源から照射された光を検知する第2の検出器と、第1と第2の検出器から得られる情報から該試料の成分濃度を取得する制御部とを備え、第1の光源と第2の検出器は、円環状に載置された反応容器の内側に配置され、第2の光源と第1の検出器は、円環状に載置された反応容器の外側に配置される自動分析装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1つの反応ディスク上に検出器を複数配置する場合において、全ての検出器の配置を、全ての光源をディスクの内側に配置した場合より、光度計の光源と検出器の1組を隣接する組と逆に配置することで、隣接光源からの迷光を避けられ、より近くに配置可能となる。そのため、同一反応容器の異なる光度計での測定までのタイムロスを低減し、ほぼ同時点での検出結果が得られる。自動分析装置は測定対象物の反応過程を時間を追って計測することで濃度換算をするものであるため、なるべく同時点での検出結果が得られることで、比較・検証が容易となり、より信頼性のある結果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一般的な生化学自動分析装置の分注機構周辺部概略図である。
【図2】感度の異なる2つの光度計での検出結果を比較する場合の一例を示す図である。
【図3】一般的に考えられる1つの反応ディスク上に複数の光度計を配置する場合の一例を示す図である。
【図4】本発明の複数の光度計を配置する場合の一例を示す図である。
【図5】自動分析装置における従来の配置例を示す図である。
【図6】自動分析装置における本発明の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は一般的な生化学自動分析装置の分注機構周辺部概略図を示す。各部の機能は公知のものである為、詳細についての記述は省略する。サンプリング機構1のサンプリングアーム2は上下すると共に回転し、サンプリングアーム2に取付けられたサンプル分注プローブ105を用いて、左右に回転するサンプルディスク102に配置されたサンプル容器101内の試料を吸引し、反応容器106へ吐出するように構成されている。本図からもわかるようにサンプル容器101のサンプルディスク102への配置はサンプルディスク102上へ直接配置する場合や試験管(図示せず)上にサンプル容器101を載せる事も可能なユニバーサルな配置に対応可能な構造のものが一般的である。
【0013】
図1における自動分析装置の構成をさらに説明する。サンプル分注プローブ105は、サンプル用シリンジポンプ107の動作に伴ってサンプルの吸引動作、及び吐出動作を実行する。試薬分注プローブ110は、試薬用シリンジポンプ111の動作に伴って試薬の吸引動作、及び吐出動作を実行する。サンプル用シリンジポンプ107及び、試薬用シリンジポンプ111は微細な動作が可能であり、コンピュータ103により制御され、分注精度の厳しい管理が可能である。
【0014】
各サンプルのために分析すべき分析項目は、キーボード121、又はタッチスクリーン(CRT)118の画面のような入力装置から入力される。この自動分析装置における各ユニットの動作は、コンピュータ103により制御される。
【0015】
サンプルディスク102の間欠回転に伴ってサンプル容器101はサンプル吸引位置へ移送され、停止中のサンプル容器内にサンプル分注プローブ105が降下される。その下降動作に伴ってサンプル分注プローブ105の先端がサンプルの液面に接触すると液面検出回路151から検出信号が出力され、それに基づいてコンピュータ103がサンプリングアーム2の駆動部の下降動作を停止するよう制御する。次にサンプル分注プローブ105内に所定量のサンプルを吸引した後、サンプル分注プローブ105は上死点まで上昇する。サンプル分注プローブ105がサンプルを所定量吸引している間は、サンプル分注プローブ105とサンプル用シリンジポンプ107流路間の吸引動作中の流路内圧力変動を圧力センサ152からの信号を用い圧力検出回路153で監視し、吸引中の圧力変動に異常を発見した場合は所定量吸引されていない可能性が高い為、当該分析データに対しアラームを付加する。
【0016】
次にサンプリングアーム2が水平方向に旋回し反応ディスク109上の反応容器106の位置でサンプル分注プローブ105を下降し反応容器106内へ保持していたサンプルを吐出する。次にサンプルが入った反応容器106は試薬添加位置まで移動される。回転自在な試薬ディスク125上には分析対象となる複数の分析項目に対応する試薬ボトル112が配置されている。可動アームに取付けられた試薬分注プローブ110は、試薬ボトル112から反応容器106へ所定量の試薬を分注する。サンプル、及び試薬が加えられた反応容器内の混合物は、攪拌器113により攪拌される。混合物が収納された反応容器が測定手段である光源114および光度計115位置へ移送され、光度計115により吸光度が測定される。測光信号は、A/D変換器116を経由しインターフェイス104を介してコンピュータ103に入り、分析項目の濃度が計算される。分析結果は、インターフェイス104を介してプリンタ117に印字出力するか、又はタッチスクリーン118に画面出力すると共に、メモリとしてのハードディスク(メモリ)122に格納される。
【0017】
測光が終了した反応容器106は、洗浄機構119の位置にて洗浄される。洗浄用ポンプ120は、反応容器へ洗浄水を供給すると共に、反応容器から廃棄を排出する。図1の例では、サンプルディスク102に同心円状に複数列のサンプル容器101がセットできるように複数列の容器保持部が形成されており、サンプル分注プローブ105によるサンプル吸引位置が各々の列に1個ずつ設定されている。
【0018】
図2に感度の異なる2つの光度計での検出結果を比較する場合の一例を示す。低濃度領域を検出する光度計の結果201と、高濃度領域を検出する光度計の結果202を重ねてみると、時間t1から時間t2にかけての時間領域203において、高濃度領域検出用の光度計202では時間t1から時間t2時点において、低濃度領域での検出感度は低いため、光量変化を検出するのは難しい。一方、低濃度領域測定用の光度計は、低濃度領域では感度が高いため、時間t1から時間t2にかけての時間領域203の領域において光量変化を検出することが可能である。逆に、高濃度検出用の光度計の光量変化が大きく、低濃度検出用の光度計では光量変化があまり見られないような場合、においても同様に同じポイントでの測定が測定データの信頼性向上には必要である。
【0019】
このように、広範囲での測定を目的として、低濃度領域、及び高濃度領域測定用の複数の光度計を配置した自動分析装置にて、測定・検証を行う場合、それぞれの光度計にて極力同じポイントにて検出すること、すなわち、光度計同士を極力近づけ各々の測定開始時間の差を短くすることで、反応カーブの計算結果の差異を小さくすることが可能であり、結果、これらの結果を比較、検証することでより信頼性の高い結果が得られる。
【0020】
図3に一般的に考えられる1つの反応ディスク上に複数の光度計を配置する場合の一例を示す。回転する反応ディスク301に1つめの光度計の光源302を反応ディスクの内側に配置し、検出器303を外側に配置する。次の光度計の光源304を同じく内側に配置し、検出器305を外側に配置する。同様に3つめの光源306も内側に、検出器307を外側に配置する。この場合、隣接する光源光308が他方の検出器にとって迷光となってしまうことを避けるため、検出器の検出角の範囲309に光が届かない位置までそれぞれの光度計を離して配置しなくてならない。また、光はセルに対して正面から照射、および受光しなくてはならないので、光度計は反応ディスクの中心線上に配置する。よって、それぞれの検出器は反応ディスクの中心線上で、他の光源からの光が届かない角度310で、反応ディスクの外側に配置される。そのため、配置する間隔を比較的大きくとらねばならず、出力される反応カーブのずれも大きくなってしまう。
【0021】
図4に本発明の一例を示す。1つめの光度計は従来どおり光源302を反応ディスク301の内側に配置し、検出器303を外側に配置する。2つめの光度計は、1つめの光源光308が迷光になることを避けるため、また、自身の光源光が1つめの光度計の検出器に対して迷光となることを避けるため、光源304を反応ディスクの外側に配置し、検出器305を内側というように、隣接する光度計の光源・検出器を逆に配置する。同様に3つめの高度計の光源306を反応ディスクの内側に配置し、検出器307を外側に配置する。
【0022】
図3では3組の光源と検出器の例で説明しているが、本願発明の最低限の構成は2組あれば足り、少なくとも光源302と検出器305は、円環状に載置された反応容器の内側に配置され、少なくとも光源304と検出器303は、円環状に載置された反応容器の外側に配置されている。さらに3組目を搭載する場合には、図3のように配置すればよい。
【0023】
このように光源と検出器を反応ディスクの内側・外側の逆に配置することにより、図3と比較して、光度計設置距離角度310を小さくすることが可能となり、より近い位置に光度計を配置できる。
【0024】
例えば、検出器303は、高濃度領域を検出する光度計であり、検出器305は、当該高濃度領域よりも低い濃度領域を検出する光度計である。この場合には、光源302と304はランプ光源である。また、検出器303を吸光光度計、検出器305を散乱光光度計とすることもできる。この場合には、光源302はランプ光源、光源304はLED光源である。また、光源と検出器を3組設ける場合には、検出器を、高濃度領域用の光度計、低濃度領域用の光度計、散乱光光度計の組合せを用いることができる。
【0025】
次に一例を挙げて、従来の配置と比較して本発明の自動分析装置の光度計がどの程度近い位置に配置可能であるかを検証する。
【0026】
図5に自動分析装置における従来の配置例として示す。仮に反応ディスク401上の反応容器402のピッチ間隔を5°とする。光源403の光源光404の広がり角度θχ1を60°、検出器405の検出角θχ2の範囲406を60°、セル中心位置直径をφ225mm、光源の配置直径をφ150mm、受光部の配置半径をφ300mmとした場合を検証する。
【0027】
図5の場合、一方の光源光404が他方の検出器の検出角の範囲406内に入らないように配置するためには、2つめの光度計を隣接する光源の照射範囲に入らない角度θχ3である20°だけ離した位置に設置しなくてはならない。よって、反応セル3個分ずらさねばならない。
【0028】
この場合、反応ディスクの回転パターンによっては、反応時間のずれたところで測定せざるを得ないポイントが発生することが想定され、結果、2つの光度計の結果を正確に比較・検証することが困難となり、信頼性の高いデータの提供が難しいと考えられる。
【0029】
また、これらの光度計が例えば一方が高濃度領域の測定を目的とする吸光光度計であり、もう一方が低濃度領域の測定を目的とする散乱光光度計である場合、散乱光光度計は高感度であり、吸光光度計より外乱光の影響が大きく、各々の光源の波長が異なるような場合も考えられ、光度計同士の光源が外乱光になることは絶対に避ける必要がある。よって影響の無い範囲まで距離を離すことは必須である。
【0030】
一方、本発明の一例である図6の場合は、2つの光度計の光源光404が放射される方向が逆であるため、他方の検出器の検出範囲内にかかることがない。結果、セル1個分離せば配置可能であり、隣り合ったセルを測定できるように配置することが可能である。よって、ほぼ同時に目的のセルを測光することが可能となり、光度計同士の検出値を参考に比較検証することで、信頼性の高い測定に有効であると言える。つまり、2つの光源が、前記複数の反応容器のうち隣接する反応容器内の成分濃度を同時に取得できる位置に配置された自動分析装置とすることができる。
【0031】
また、これらの光度計が吸光光度計と散乱光光度計の組み合わせの場合においても、外乱光の影響が少ないためより近くのセルを測定することが可能となり、より近い時間ポイントで測定が可能となり、夫々の光度計での測定結果を比較することで、より正確に広範囲濃度が測定可能な装置が提供可能となる。
【符号の説明】
【0032】
1 サンプリング機構
2 サンプリングアーム
101 サンプル容器
102 サンプルディスク
103 コンピュータ
104 インターフェイス
105 サンプル分注プローブ
106 反応容器
107 サンプル用シリンジポンプ
109、301、401 反応ディスク
110 試薬分注プローブ
111 試薬用シリンジポンプ
112 試薬ボトル
113 攪拌器
116 A/D変換器
114、302、304、306、403 光源
115 光度計
117 プリンタ
118 タッチスクリーン(CRT)
119 洗浄機構
120 洗浄用ポンプ
121 キーボード
122 ハードディスク(メモリ)
125 試薬ディスク
151 液面検出回路
152 圧力センサ
153 圧力検出回路
201 低濃度測定用光度計の測定結果
202 高濃度測定用光度計の測定結果
203 時間t1から時間t2にかけての時間領域
303、305、307、405 検出器
308、404 光源光
309、406 検出角の範囲
310 光度計設置距離角度
402 反応セル(反応容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と試薬とを反応させる複数の反応容器を円環状に載置する反応ディスクと、
該反応容器に光を照射する第1と第2の光源と、
前記第1の光源から照射された光を検知する第1の検出器と、
前記第2の光源から照射された光を検知する第2の検出器と、
前記第1と第2の検出器から得られる情報から該試料の成分濃度を取得する制御部とを備え、
前記第1の光源と前記第2の検出器は、円環状に載置された前記反応容器の内側に配置され、
前記第2の光源と前記第1の検出器は、円環状に載置された前記反応容器の外側に配置されることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記第1の光源と第2の光源とは、前記複数の反応容器のうち隣接する反応容器内の成分濃度を同時に取得できる位置に配置されていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置において、
さらに、第3の光源と第3の検出器とを備え、
前記第3の光源は、円環状に配置された前記反応容器の内側であって、かつ、前記第1の光源とで前記第2の検出器を挟む位置に配置され、
前記第3の検出器は、円環状に配置された前記反応容器の外側であって、かつ、前記第1の検出器とで前記第2の光源を挟む位置に配置されていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記第1の検出器は、所定の濃度領域を検出する検出器であり、前記第2の検出器は、前記所定の濃度領域よりも低い濃度領域を検出する検出器であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記第1の検出器は、吸光光度計であり、前記第2の検出器は、散乱光光度計であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項5記載の自動分析装置において、
前記第1の光源はランプ光源、前記第2の光源はLED光源であることを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−68442(P2013−68442A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205497(P2011−205497)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】