説明

自動改札機

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動改札機に係り、特に、普通乗車券と特急券のように複数の乗車券を処理することのできるものに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば、特開昭58−78280号公報に示されるように、この種の複数乗車券対応型の自動改札機は、自動改札機本体(以下、本体という)の挿入口に挿入された複数枚の乗車券に記録されているデータの演算結果が有効なときに、入場(改札)または出場(集札)を許可するようにドアが開閉制御されるように構成されている。そして、入場が許可された場合は、挿入された複数枚の乗車券に入場データが記録されて挿入口と反対側に設けられた排出口から排出されて利用者(乗客)に渡されるとともに、複数枚の乗車券のうち一枚でも無効券があれば、ドアは入場を阻止するように回動され、全ての乗車券が排出口から排出されて利用者へ返却される。また、出場の際は、挿入された複数枚の乗車券は本体内に回収されるが、定期券等のように返却の必要のある乗車券は排出口から排出されて返却される。そして、複数枚のうち一枚でも無効券があるときは、ドアは出場を阻止するように回動され、全ての乗車券が排出口から返却される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の複数乗車券対応型の自動改札機においては、複数枚のうちの一枚が無効券の場合、全ての乗車券が排出口から返却されるようになっているため、利用客は排出口側へ進入して乗車券を受け取った後、挿入口側へ戻らなければならないという不便があるとともに、先に挿入口へ挿入されて有効と判定された乗車券は、入場データあるいは出場データが記録されているため、そのままでは次回の使用が不可能になる欠点があった。
【0004】そこで、本発明は、このような欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、複数乗車券のうち一枚でも無効券があれば全ての乗車券が挿入口側へ返却されるとともに、有効券は再使用可能にデータの書替が行なわれるようにした自動改札機の提供にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、本体の挿入口と排出口間に設けられた搬送路の途中にデータ読取・書込手段を有し、上記挿入口から挿入された複数の乗車券に記録されているデータを演算処理し、その演算結果により入出場動作を行なう自動改札機において、上記読取・書込手段よりも上記排出口側の上記搬送路途中に設けられた搬送中の乗車券を一時保持するストッパと、上記挿入口に先に挿入された乗車券の演算結果が有効なときにその乗車券を一時保持するように上記ストッパを制御するとともに、上記挿入口に後に挿入された乗車券の演算結果が有効なときに上記ストッパの一時保持を解除するストッパ制御手段と、上記挿入口に後に挿入された乗車券の演算結果が無効のときに上記搬送路の搬送方向を乗車券の演算結果が有効なときと反対向きに制御するとともに、上記ストッパに一時保持されている先に挿入された乗車券を上記挿入口側へ搬送するように制御する搬送路制御手段と、上記搬送路の搬送方向が反対向きのときに搬送される乗車券に上記読取・書込手段を介してデータの書替えを行なうデータ書替手段と、を有することを特徴としている。また、挿入口の近傍に返却口を設けるとともに、搬送路にその返却口に対向した分岐搬送路を設け、かつ挿入口側へ搬送される乗車券をその返却口へ案内する案内手段を設けたことを特徴としている。
【0006】
【作用】上記構成において、挿入口へ最初に挿入された乗車券は、読取・書込手段によりその乗車券に記録されているデータが読取られ、そのデータを基に演算処理が行なわれる。その演算結果により、その乗車券が有効であるときはストッパに一時保持される。次に挿入された乗車券も上述と同様にして演算処理され、全ての乗車券が有効であるときは、ストッパ制御手段はストッパを解放し、これにより全ての乗車券が排出口から返却される。なお、出場の場合は、返却必要な乗車券を除いて本体内に回収される。また、続いて挿入された乗車券の演算結果が無効のときは、搬送路制御手段は搬送路の搬送方向を今までとは逆方向へ動作させ、その無効券のみならず、ストッパに一時保持されていた有効券をも挿入口側へ搬送させる。この搬送の際、有効券に読取・書込手段により記録されていた入場または出場データは、その有効券が本体に挿入される前のデータにデータ書替手段により書替えられる。
【0007】
【実施例】以下、本発明に係る自動改札機を図面に基づいて説明する。図1は、一実施例に係る自動改札機の概略構成図であって、本体1の長手方向の一端側には挿入口2が設けられているとともに、他端側には排出口3が設けられ、かつ挿入口2側の本体1の上面には返却口4が設けられている。
【0008】本体1内には、可逆モータMにより駆動されるベルトコンベアからなる周知の搬送路5が配設されている。この搬送路5は、整列搬送路5aと主搬送路5bと排出搬送路5cと返却搬送路5dとから構成されていて、このうち整列搬送路5aは挿入口2から挿入された乗車券を整列する機能を有するとともに、この整列搬送路5aの後端側に可逆モータMが逆転して搬送方向が排出口3から挿入口2側へ向いたときに乗車券を返却口4側へ向けるウイングW1 が設けられている。また、主搬送路5bと排出搬送路5cとの間には、本体1内に挿入された乗車券を排出口3へ排出することなく回収箱6へ回収するときに作動するウイングW2が設けられている。
【0009】主搬送路5bの搬送路中には、挿入口2から排出口3に向かう搬送方向の上流側から順に、読取・書込手段HとストッパSとが設けられている。このうち読取・書込手段Hは、その搬送方向の上流側から順に、乗車券に記録されている磁気データを読取るための磁気ヘッドH1 と、この磁気ヘッドH1 で読取ったデータをマイクロコンピュータを中心に構成された制御器Cで演算処理し、その演算結果を乗車券に書込むための磁気ヘッドH2 と、書込まれたデータが正しく記録されている否かをチェックするためベリファイヘッドH3 とから構成され、またストッパSは、図2に示されるようなソレノイド7で作動される第1ストッパS1と第2ストッパS2 とが主搬送路5bに直列に設けられている。すなわち、これらストッパS1 ,S2 は、下辺の一端が回動自在に軸支されているとともに、他端部が上方へ突出したL字形を呈したストッパ片8を有するとともに、ソレノイド7がOFFのときはスプリング9により他端部が主搬送路5bの上面位置より突出していて主搬送路5bが搬送中の乗車券を一時保持できるように構成されている。なお、この搬送路5bは左右一対のベルトが間隙を有して設けられているので、その間隙中からストッパ片8の上端部が突出可能に構成されている。また、ソレノイド7がONしたときは、ストッパ片8の先端部が主搬送路5bの下面位置よりも下方に位置して(図2の点鎖線参照)、主搬送路5bによる乗車券の搬送が可能なように構成されている。
【0010】なお、図示しないが、主搬送路5bには、演算結果によりパンチングの必要な乗車券にパンチングするためのパンチングユニットと、演算結果により印字の必要な乗車券に印字するためのサーマルヘッドとを有している。
【0011】図中10は、挿入口2に設けられたシャッタであって、挿入口2への乗車券の挿入を阻止するときに図示しないソレノイドにより作動されるように構成されている。
【0012】図3は、制御器Cの電気的構成を示すブロック図であって、中央処理部(CPU)20はROM21に格納されているシステムプログラムとRAM22に格納されているワーキングデータとを用いて演算処理を行ない、そして、このCPU20は、I/Oユニット23を介して、各磁気ヘッドH1 〜H3 と接続された読取・書込(R/W)ドライバ24と、ウイングW1 ,W2 を駆動するウイングドライバ25と、可逆モータMを駆動するモータドライバ26と、各ストッパS1,S2 を駆動するストッパドライバ27と、シャッタ10を駆動するシャッタドライバ28とが接続されている。なお、このI/Oユニット23には、乗車券の位置を検出するセンサ等の各種のセンサ類や、パンチングユニットあるいは印字ヘッドなどの各種ドライバなどが接続されているが、これらは本発明の説明に直接関係ないので省略されている。
【0013】次に、図4のフロチャートを用いて本実施例に係る自動改札機の動作を説明するが、以下の動作は、乗車券と特急券の二枚で乗車条件を満たす場合を例にして説明する。先ず最初に、二枚とも有効な場合について説明する。
【0014】本体1が入場モードで稼動中であって、シャッタ10が開かれているときに最初に乗車券(以下、乗車券■という)が挿入口2に挿入されたとする(ステップ100肯定,ステップ102肯定。以下、ステップをSとする。)。乗車券■の挿入により可逆モータMは正転し(搬送路5が乗車券を挿入口2から排出口3側へ搬送する方向への回転で、これと逆方向への搬送の回転を逆転という。)、乗車券■は整列搬送路5aを介して主搬送路5bに搬送されてくる。そして、ここで磁気ヘッドH1 で乗車券■のデータが読取られ、このデータを用いてCPU20が演算処理を行ない、その演算結果の入場データが磁気ヘッドH2 を介して書込まれるとともに、その書込が正確に行われたか否かが磁気ヘッドH3 を介して照合されたのち、第1ストッパS1 により一時保持される(S104肯定、S106、S108肯定、S110、S112)。したがって、第2ストッパS2 はソレノイド7がONされてストッパ片8の先端部が降下状態にある。なお、磁気ヘッドH3 による照合不一致のときは、可逆モータMが所定回転数だけ逆転した後、再度正転し書直し処理が行われる。
【0015】次いで、次の特急券(以下、乗車券■という)が挿入口2へ挿入されると、乗車券■と同様に処理されたのち、第2ストッパS2 により一時保持される(S114、S116肯定、S118、S120)。したがって、第2ストッパS2 は、第1ストッパS1 が乗車券■を保持したときにソレノイド7がOFFされてストッパ片8の先端部がスプリング9により主搬送路5bの上面より突出されている。
【0016】乗車券■が有効と判定され、その乗車券■が第2ストッパS2 に一時保持されると、第1ストッパS1 のソレノイド7がONされて乗車券■を排出搬送路5cを介して排出口3へ排出するとともに、第2ストッパS2 のソレノイド7もONされて乗車券■を排出口3へ排出する。これと同時に、ドアDは利用客の入場を許すように作動される(S122肯定、S124肯定、S126、S128)。なお、本体1が出場モードのときは、乗車券■,乗車券■はウイングW2 を介して回収箱6へ回収される。
【0017】ところで、乗車券■の演算結果が入場を許可できないとき、つまり乗車券■が無効券のときは、乗車券■の挿入口2への挿入を阻止するためにシャッタ10が閉じられるとともに、可逆モータMが逆転し、かつウイングW1 が返却口4側に回動される。このため、乗車券■は主搬送路5bから返却搬送路5dに導かれて返却口4から返却される(S108否定、S130、S132、S134肯定、S136)。この場合、もちろんドアDは利用客の通過を阻止するように回動される。
【0018】次に、乗車券■が有効券で、乗車券■が無効券の場合について説明する。この場合は、先ず、次の利用客の乗車券の挿入を阻止するためにシャッタ10が閉じられ、可逆モータMが逆転し、ウイングW1 が返却口4側へ回動されて乗車券■が返却口4へ返却される(S116否定、S138、S140、S142肯定)。可逆モータMの逆転により、第1ストッパS1 に一時保持されていた乗車券■は読取・書込手段Hを通過する際、元のデータに書替えられる(S122否定、S144)。すなわち、乗車券■は磁気ヘッドH2 で入場データ(本体1が出場モードのときは出場データ)が書込まれているが、この状態が磁気ヘッドH3 で読取られたのち、入場前のデータ、つまり乗車券■が本体1に挿入される前のデータが磁気ヘッドH2 により書込まれる。次いで、磁気ヘッドH1 でその書替えられたデータが照合されたのち、ウイングW1,返却搬送路5dを介して返却口4へ返却される。
【0019】以上のように、本実施例に係る自動改札機は、後に挿入される乗車券■が無効券のときは、最初に挿入した有効な乗車券■が返却口4へ返却される際、読取・書込手段Hで元のデータに書替えられるので、その有効な乗車券■はそのまま再使用できるので極めて便利である。また、乗車券■,■は挿入口の近傍に設けられた返却口4から返却されるので、利用者は本体1の進入側で受け取ることができる利益がある。
【0020】なお、上述の実施例では、乗車券を2枚としたが、これを3枚以上としてもよい。この場合は、ストッパSをその枚数に合わせて増加させればよい。さらに、返却口4は挿入口2の近傍に設けたが、挿入口2と兼用するようにしてもよい。しかし、実施例のように返却口4から無効券を返却するようにすると、利用客に無効券の存在が明確になり好都合である。
【0021】
【発明の効果】本発明に係る自動改札機は、後に挿入される乗車券が無効券のときは、最初に挿入した有効な乗車券が返却口へ返却される際、乗車券に読取・書込手段で元のデータに書替えられるので、その有効な乗車券はそのまま再使用できるので極めて便利である。また、乗車券は挿入口の近傍に設けられた返却口から返却されるようにしたときは、利用者は返却乗車券を本体の進入側で受け取ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る自動改札機の概略構成図である。
【図2】ストッパの詳細図である。
【図3】制御器の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】動作状態を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1 自動改札機本体(本体)
2 挿入口
3 排出口
4 返却口
5 搬送路
H 読取・書込手段
S ストッパ
C 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 自動改札機本体の挿入口と排出口間に設けられた搬送路の途中にデータ読取・書込手段を有し、上記挿入口から挿入された複数の乗車券に記録されているデータを演算処理し、その演算結果により入出場動作を行なう自動改札機において、上記読取・書込手段よりも上記排出口側の上記搬送路途中に設けられた搬送中の乗車券を一時保持するストッパと、上記挿入口に先に挿入された乗車券の演算結果が有効なときにその乗車券を一時保持するように上記ストッパを制御するとともに、上記挿入口に後に挿入された乗車券の演算結果が有効なときに上記ストッパの一時保持を解除するストッパ制御手段と、上記挿入口に後に挿入された乗車券の演算結果が無効のときに上記搬送路の搬送方向を乗車券の演算結果が有効なときと反対向きに制御するとともに、上記ストッパに一時保持されている先に挿入された乗車券を上記挿入口側へ搬送するように制御する搬送路制御手段と、上記搬送路の搬送方向が反対向きのときに搬送される乗車券に上記読取・書込手段を介してデータの書替えを行なうデータ書替手段と、を有することを特徴とする自動改札機。
【請求項2】 挿入口の近傍に返却口を設けるとともに、搬送路にその返却口に対向した分岐搬送路を設け、かつ挿入口側へ搬送される乗車券をその返却口へ案内する案内手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の自動改札機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】第2653929号
【登録日】平成9年(1997)5月23日
【発行日】平成9年(1997)9月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−75978
【出願日】平成3年(1991)2月14日
【公開番号】特開平6−176223
【公開日】平成6年(1994)6月24日
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)