説明

自動車用車両構造

【課題】事前に組み立てることが可能な構成部品を収容した組立支持体であって、車両の後部構造を補強することができるを提供する。
【解決手段】スポイラー5の操作・駆動機構などが組み込まれた組立支持体9は、車両の横方向に置かれた状態で車両後部の構造内側の側面部分の間に差し込まれて、後部シュラウド部分と固定するとともに、固定手段14,15,16,17によって、内側の二つの側面部分と接続することにより、組立支持体9が車両の後部構造を補強するための横方向支持体を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念にもとづく自動車用車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1により、空気誘導機器の操作部品のための駆動モーターが支持プレート上に配置された車両用空気誘導機器が知られている。この支持プレートは、打ち抜かれた金属板として構成されており、ねじ込み接続によってトランクリッドと固定されている。更に、引用文献2により、モジュールとして構成された、車体の一部に差し込み可能な支持プレートを有する空気誘導機器が周知であり、例えば、油圧・電気式駆動部などの空気誘導機器の全ての可動部分が、その支持プレート上で支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許公開第102006009048号明細書
【特許文献2】ドイツ特許公開第10309369号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、簡単な構造の手段を用いて、車両後部を補強することができると同時に、起こしたり倒したりすることが可能なスポイラーと更に別の構成部品から成る事前組立ユニットを実現した自動車用車両構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本課題は、本発明にもとづき、請求項1の特徴によって解決される。更に別の有利な特徴は、従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明により得られる主な利点は、車両構造の内側の側面部分の間に固定された組立支持体によって、一方では後部側の強固な構造と、他方では事前に組立可能な構成部品のための収容モジュールとを実現することができることである。それは、本発明にもとづき、車両後部の構造内側の二つの側面部分の間に、事前に組み立てることが可能な構成部品を収容した、後部シュラウド部分と接続することができる組立支持体を車両の横方向に置いた状態で差し込んで、ねじ込み手段によって、これらの内側の二つの側面部分と固く接続して、それにより構造を補強するための横方向支持体を構成することによって達成される。
【0007】
本組立支持体は、その上側、下側及び正面側に、事前に組立可能な構成部品のための取付面を有する。本組立支持体は、その自由端に、それぞれ互いに間隔を開けて配置された、車両構造内側の側面部分との固定手段のための穴を備えており、これらの穴の間には、それぞれ内側の側面部分に対する位置を確定するための位置決めピン又はダウエルピンが配備されている。このような組立支持体の実施形態と車両構造の構造内側の側面部分での固定形態によって、本組立支持体が、車体の補強集合体において強度を高めるための横方向支持体として作用するので、車体の後部側を同時に補強する事前組立ユニットが実現されることとなる。
【0008】
本組立支持体は、後部シュラウド部分の方を向いた水平方向の正面側取付面を有し、その取付面には、固定手段によって、それに対応する後部シュラウド部分の周縁部を接続することが可能である。更に、後部シュラウド部分は、一つの長手領域に渡って、本組立支持体と接続されるとともに、それに続く更に別の長手領域に渡って、保持ストラップと接続されており、その保持ストラップは、組立支持体も固定されている内側の側面部分で支持されたテールライト用のライト本体部上に配置されている。このような実施形態によって、後部シュラウド部分は、本組立支持体にもとづき、車両構造と一層正確な位置で固定することができることとなる。
【0009】
本組立支持体は、その下側の取付面における車両縦方向に延びる中心面内に、駆動シャフトが両側に延びる、スポイラーの操作機構のための事前に組立可能な駆動モーターを有する。更に、走行方向に見て、組立支持体の裏側の別の取付面には、調整可能なトランクリッドのための事前に組立可能な錠が配置されている。更に、本組立支持体の上側に有る取付面には、組立支持体の一方の自由端の近くに、トランクリッドの錠のためのボーデンケーブルを備えた操作部品が配置されている。更に、本組立支持体には、スポイラーのための事前に組立可能な操作機構が、車両縦方向に延びる中心面の両側に配置されるとともに、走行方向Fに見て前方の閉鎖部分のための駆動モジュールが、その片側に配備されている。このように車両に組み込む前に、個々の構成部品を組立支持体に取り付けることによって、構成部品とスポイラーの組立の簡略化が実現されることとなる。そのために、スポイラーの操作機構の一部は、組立支持体の開口部を通って突き抜けて、スポイラーの下方部分と接続されている。
【0010】
本組立支持体は、有利には、アルミニウム製鋳物から構成されるとともに、その横断面において複数の階段部分が形成されており、本組立支持体は、その中心領域に横方向に延びる複数の中空のフィンを有し、それらの中空のフィンは、上方の階段部分又は当該の階段部分の上に周縁側を限定された形で配置されている。このような構成によって、組立支持体全体として最適な強度が実現され、その結果、車両構造内側の側面部分と共に、車体の後部領域の強固な補強集合体が実現されることとなる。それに代わって、本組立支持体は、金属板又は繊維強化プラスチックから構成することもできる。
【0011】
本発明の実施例を図面に図示するとともに、以下において詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】上から見た組立支持体の立体図
【図2】構成部品を取り付けた状態の組立支持体を走行方向の逆側から見た立体図
【図3】構成部品を取り付けた状態の組立支持体を下から見た立体図
【図4】図6の断面線IV−IVにおける車両に組み込んだ組立支持体の断面図
【図5】図7の断面線V−Vにおけるテールライト領域の後部シュラウド部分の断面図
【図6】車両に組み込んだ組立支持体の斜視図
【図7】後部シュラウド部分と組立支持体及びテールライトの底面に配置された保持ストラップとの接続部分の立体図
【発明を実施するための形態】
【0013】
自動車用車両構造の後部には、構造内側の側面部分1,2と後部シュラウド部分3によって取り囲まれたリヤエンジン用の収容空間が有る。そのようなエンジン用の後部側収容空間は、旋回可能なトランクリッド4とそれに繋がるスポイラー5によって上方に対して閉鎖されている。スポイラー5は、起こしたり倒したりすることが可能であり、そのために、駆動モーター6によって駆動される操作機構Mを有する。更に、スポイラー5の後方の閉鎖部分8も一緒に駆動され、前方側には、別の閉鎖部分としての蛇腹8aが配備されている。
【0014】
構造内側の両側に有る側面部分1,2の間には、組立支持体9が差し込まれて、車両の横方向に配置されている。本組立支持体は、例えば、スポイラー5の操作機構M、駆動シャフト6a,6bを備えた駆動モーター6、ボーデンケーブル11aを備えたリッド錠11及び操作機構Mの上のスポイラー5などの事前に組み立てた構成部品を収容している。スポイラー5は、下方部分5aだけを事前に組み立てるか、さもなければ組立支持体9において下方部分5aと上方部分5bを一緒に操作機構Mの上に事前に組み立てることも可能である。
【0015】
組立支持体9は、その自由端12,13をそれぞれ少なくとも二つの固定手段14,15及び16,17によって、内側の側面部分1,2と固く接続される。各側面における固定手段14〜17の間には、側面部分1,2に対する位置を確定するための位置決めピン又はダウエルピン18,19が配置されている。
【0016】
組立支持体9は、その上側O,下側U及び正面側に、事前に組み立てるべき構成部品5,6,M,11,27の固定と位置決めのために、それらに対応する取付面A,A1,A2,A3を有する。
【0017】
組立支持体9は、その走行方向Fに見て後方の横方向に延びる周縁部に、水平方向を向いた取付面20を有し、テールライト3の周縁部21が、その取付面の上に載せられて、その取付面20と接続される。
【0018】
組立支持体9は、その下側Uの取付面Aに、駆動シャフト6a,6bを備えた駆動モーター6を収容している。組立支持体9の裏側の取付面A2には、リッド錠11が配置されている。更に、組立支持体9の下側Uの取付面A1には、スポイラー5の操作機構Mが配備されている。更に、組立支持体9の上側Oの取付面A3には、ボーデンケーブル11aとリッド錠11を備えた操作部品21が配置されている。
【0019】
組立支持体9には、開口部23,23aが設けられており、それらの開口部を通して、操作機構Mの一部又はその機構の操作レバーが突き抜けて、スポイラー5の下方部分5aと接続されている。
【0020】
この実施例では、組立支持体9は、アルミニウム製鋳物から構成されており、横断面において複数の階段部分S,S1を有し、中央領域には、横方向に延びる二つの中空のフィン26,26aを備えている。それに代わって、組立支持体9は、金属板又は繊維強化プラスチックから構成することもできる。組立支持体9に対する更に別の実施形態に関して、車両構造の後部3との更に別の接続部分Vは、テールライト用のライトボックス29の下に配置された保持ストラップ28の所で実現される。
【符号の説明】
【0021】
1,2 構造内側の側面部分
3 車両構造の後部
4 トランクリッド
5 スポイラー
5a スポイラー5の下方部分
5b スポイラー5のアッパープレート
6 駆動モーター
6a,6b 駆動シャフト
8 閉鎖部分
8a 蛇腹
9 組立支持体
11 リッド錠
11a ボーデンケーブル
12,13 組立支持体9の自由端
14〜17 固定手段
18,19 位置決めピン又はダウエルピン
20 取付面
21 リッド錠11を備えた操作部品
23,23a 開口部
26,26a 中空のフィン
27 トランクリッド4の錠11のための操作部品
28 保持ストラップ
29 ライトボックス
A,A1〜A3 取付面
F 走行方向
L 車両縦方向の中心面
M スポイラー5を操作機構
O 上側
S,S1 階段部分
U 下側
V 更に別の接続部分
IV−IV 断面線
V−V 断面線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔を開けて配置された構造内側の側面部分と、これらの内側の側面部分と共に、リヤエンジン用の収容空間を取り囲む外側の後部シュラウド部分とを有する車両後部の自動車用車両構造であって、この収容空間が、操作機構により起こしたり倒したりすることが可能なスポイラーが繋がっている旋回可能なトランクリッドによって閉鎖されている車両構造において、
事前に組み立てることが可能な構成部品(5,6,M,11,27)を収容した、後部シュラウド部分(3)と接続することができる組立支持体(9)が、車両の横方向に置かれた状態で車両後部の構造内側の二つの側面部分(1,2)の間に差し込まれて、固定手段(14,15,16,17)によって、内側の二つの側面部分(1,2)と固く接続され、構造を補強するための横方向支持体を構成することを特徴とする車両構造。
【請求項2】
組立支持体(9)は、その上側(O)、下側(U)及び正面側に、事前に組立可能な構成部品(5,6,M,11,27)のための取付面(A,A1,A2,A3)を有することを特徴とする請求項1に記載の車両構造。
【請求項3】
組立支持体(9)の自由端(12,13)には、それぞれ車両構造内側の側面部分(1,2)との固定手段(14,15,16,17)のための穴が、互いに間隔を開けて配置されており、これらの穴の間には、それぞれ内側の側面部分(1,2)に対する位置を確定するための位置決めピン(18,19)が配備されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両構造。
【請求項4】
組立支持体(9)は、後部シュラウド部分(3)の方を向いた水平方向の正面側取付面(20)を有し、それに対応する後部シュラウド部分(3)の周縁部(21)が、固定手段によって、その取付面と接続することが可能であり、組立支持体(9)の取付面(20)には、固定用の穴が設けられていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の車両構造。
【請求項5】
組立支持体(9)は、その下側取付面(A1)の車両縦方向に延びる中心面(L−L)内に、駆動シャフト(6a,6b)が両側に延びる、スポイラー(5)の操作機構(M)のための事前に組立可能な駆動モーター(6)を有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の車両構造。
【請求項6】
走行方向(F)に見て組立支持体(9)の裏側に有る取付面(A2)には、旋回可能なトランクリッド(4)のための事前に組立可能な錠(11)が配置されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の車両構造。
【請求項7】
組立支持体(9)の上側の取付面(A3)において、組立支持体の自由端(13)の近くには、トランクリッド(4)の錠(11)のためのボーデンケーブル(11a)を備えた操作部品(27)が配置されていることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載の車両構造。
【請求項8】
組立支持体(9)の車両縦方向に延びる中心面(L−L)の両側には、スポイラー(5)のための事前に組立可能な操作機構(M)が配置されており、更に、その片側には、走行方向(F)に見て前方の閉鎖部分(8)のための駆動モジュールが配備されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の車両構造。
【請求項9】
スポイラー(5)の操作機構(M)の一部が、組立支持体(9)の開口部(23,23a)を通って突き抜けて、スポイラー(5)のアッパープレート(5b)と固定されたスポイラー(5)の下方部分(5a)と接続されていることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一つに記載の車両構造。
【請求項10】
組立支持体(9)は、アルミニウム製鋳物から構成されており、その横断面において複数の階段部分(S,S1)が形成されるとともに、その中央領域に、横方向に延びる複数の中空のフィン(26,26a)を有し、これらの中空フィンは、上方の階段部分(S1)上に横方向を限定された形で配置されていることを特徴とする請求項1から9までのいずれか一つに記載の車両構造。
【請求項11】
後部シュラウド部分(3)が、一つの長手領域に渡って、組立支持体(9)と接続されており、それに続く更に別の長手領域に渡って、保持ストラップ(28)によって、組立支持体(9)を固定することが可能な内側の側面部分(1,2)上に支持されたテールライト用のライト本体部(29)と接続されていることを特徴とする請求項1から10までのいずれか一つに記載の車両構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−36893(P2010−36893A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170808(P2009−170808)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】