説明

自己作動性信号発生検出装置及び方法

試料中の特定のターゲットの存在及びその濃度(定性および定量)が、酸化還元反応により増大された閉回路における電位又は電圧のために検出される、高感度で携帯型のアッセイシステムが提供される。酵素酸化還元反応パートナーに捕獲部分を結合させ、その捕獲部分を試料中の任意のターゲットに結合させ、そのように結合した任意のターゲットを洗浄することにより反応が引き起こされる。結合したターゲットは、固定化されていないならば、第二捕獲部分の使用により固定化してもよい。次に、酵素の基質が加えられる。基質に対する酵素の作用は電子を遊離させ、膜により分離されていてもよい陽極と陰極の間に電位を創出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権データ及び参照による組み入れ
本出願は、その全体が参照により組み入れられる、2007年9月17日に提出された米国仮特許出願第60/960,112号及び2008年4月7日に提出された米国仮特許出願第61/123,280号の優先権の利益を請求する。同じ発明者、整理番号:SIOM−0002−UT1、米国特許出願第 号を指定し、本出願と同じ日付に提出された特許出願に、本出願は関係する。
【0002】
発明の背景
発明の分野
以下の論考において、ある主題を背景及び導入の目的で説明する。本明細書に含まれる何物も、従来技術の「容認」と解釈してはならない。必要とみなされるならば、そして適切な場合には、米国特許法の適用可能な法的規定に基づき、本明細書に参照されたいかなる主題も従来技術を構成しないことを実証する権利を、出願人は明白に所有する。
【0003】
本発明は、分析物の検出のための新規な装置に関するものである。その態様は、とりわけインビトロ診断、臨床医学、発生医学、薬学、薬理ゲノミクス、自国の保安、軍事/防衛、農薬、工業化学薬品、化粧品、栄養補助食品、ゲノミクス、毒性学、メタボロミクス、治療学、緊急対応、全人的医療、ホメオパシー、遺伝的スクリーニング、及び一般商品品質保証などを含めた広範囲の分野で有用である。
【0004】
例えば一つ又は複数の以下の性質を示す、新しく改良された検出法の必要性及び要求は増加し続けている:(i)正確、(ii)高度に選択的(すなわち、低いバックグラウンドを有する、ターゲット分子になりうるものと、偽陽性又は偽陰性の結果とを的確に識別することができる)、(iii)高い感度、(iv)迅速な結果、(v)関心が持たれるターゲットに容易に適合する、(vi)費用効率の高さ、及び場合により(vii)携帯(すなわち野外)使用可能。本発明は、これらの要求のそれぞれに取り組み、検出技術において長年感じられ、満たされていない必要を満たす。正確で、信頼でき、高感度の検査法及び検査装置の一般的な要求に加えて、中国で製造される医薬品及びヘルスケア関連製品における最近の品質問題は、品質保証診断向上の必要性を際立たせる。本発明は、とりわけこれらの基準のそれぞれを満たす。
【0005】
背景として、本発明が開発された状況を理解する助けになるように様々な技術の以下の論考を提供する。見出しは、任意の特定の主題の範囲を定めたり、含んだり、又は除外するつもりはなく、その代わりに単に文脈上で読者を助けるために採用するものである。
【0006】
関連技術
本発明は、比較的大きな容積の中のターゲット物質を検出するための材料、装置、システム、及び方法に関する。その容積、すなわち試料は、液体であっても乾燥していてもよいが、最終的に液体の検査環境に置かれる。本明細書に開示及び請求された発明は、特に極めて低濃度で存在するが、それでもなおその検出が必須なターゲットの検出に適する。抗体、胞子、細菌などの様々なターゲットの低初濃度での検出は、検出がその後に延期されるならば利用可能でない予防戦略又は治療戦略の実行を許しうる。本発明は、下記の、確立された各種検出アッセイ及び試薬にその背景を有する。
【0007】
技術の背景
ELISA法
酵素免疫アッセイ(ELISA)は、血清又は尿などの液体中の特定の分子(例えばホルモン又は薬物)の濃度を測定するために広く使用されている方法である。ELISAアッセイは、1971年にEngvall及びPerlmanによって最初に記載された。ELISAアッセイは、それによって示される数多くの欠点及び不完全性に関わらず、広く使用されてきたし、広く使用され続けている。一般に使用されているELISA型アッセイの一例は、例証として典型的には手で持てるサイズのプラスチックハウジング、比色酵素システムを含めた一つ又は複数の試薬を含浸させた吸着材料から成る、いわゆる家庭用妊娠検査である。尿をその装置に直接適用し、液体は、「ラテラルフロー(lateral flow)」形状構成として知られてようになった構成中の吸着材料に沿って移動する。例えば、それぞれその全体が参照により組み入れられる米国特許第4,703,017号、第4,855,240号、第5,356,785号、第5,468,648号、第5,656,503号、第5,766,961号、第5,837,546号、第5,989,921号、第6,475,805号、第6,713,308号、第6,844,200号、第7,045,342号、第7,144,742号を参照されたい。ターゲット分析物(例えば、妊娠検査の場合にヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG))は、そのターゲットに「対して」作製された抗体、すなわちそれが抗原である抗体により検出される。抗体は、(もしも存在するならば)ターゲット分析物を、そして今度は酵素比色システムを固定化するように機能する。ポリクローナル抗体は、一つよりも多いエピトープを認識して結合する。モノクローナル抗体が、多くの場合にそのようなイムノアッセイ用途に使用される。モノクローナル抗体は、一つの特異的抗原決定基すなわちエピトープだけを認識するように、すなわちそのエピトープと反応又は結合するように設計されている。免疫系に見られる多様性、並びに1975年にKohler及びMilsteinによって最初に記載された免疫系の不死化細胞からのモノクローナル抗体製造が原因で(Kohler & Milstein, 1975)、標準的な免疫学的技法により莫大な数の異なる抗原に対する抗体を生み出すことができる。潜在的に任意の因子を、任意の他の因子と反応しない特異的抗体が認識することができる。
【0008】
ELISAは、多くの場合に、検出したい特定の抗原に特異的な、例えばウイルス又は細菌に特異的な抗体をマイクロタイタープレートなどの容器にコーティングすること、特定の抗原又は因子を含有する疑いのある試料を添加すること、その抗体を抗原と結合させること、及び次に、検出したいその因子の別の領域に特異的な少なくとも一つの他の抗体を添加することによって実験室で採用される。二つの抗体のこの使用は、「サンドイッチ」ELISAと呼ばれることがある。検出を助けるために、発色又は蛍光発生レポーター分子でラベルされた第二の抗体又は第三の抗体さえも、よく使用される。この手順は、視覚信号を生成するために抗体とコンジュゲーションした酵素によって必要とされる化学基質を使用することを含みうる。
【0009】
様々な欠点の中で、他の因子と交差反応しない複数の抗体の必要性及びそれに伴うインキュベーション段階は、試料中の一つよりも多い因子を短時間で検出することが困難であることを意味する。追加的に、多重化する能力(すなわち、一つの試料中の複数の因子を同時に検出しようとすること)は、抗体に付属することのできる、したがって異なる因子を識別するために使用することのできるラベルの数によって限定される。感度の問題は、上質の抗体を作製する能力及び正確で再現性のある試料を得るために十分なレベルのターゲット分析物を有することから起こる。例えば、妊娠検査を使用する場合に、陰性の検査は、その個体が妊娠していないことを意味せず、実際には、その個体が数週間にわたり検査を繰り返して、HCGレベルをELISA検査の検出閾値に到達させることが推奨される。
【0010】
核酸検出法
一般に使用される別の検出法は、核酸の存在の検出及び/又は特徴付けに焦点を当てている。様々なPCR及びハイブリダイゼーション技法を含めた、核酸を検出する幾つかの方法が利用可能である。
【0011】
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は、当技術分野で周知であり、例えば、それぞれMullis及びMullisらに付与された米国特許第4,683,195号及び第4,683,202号に記載されている。PCRは、低レベルの特異的核酸配列の増幅及び検出に使用される。PCRは、更に容易に検出されるレベルを達成しようと、低濃度のターゲット核酸配列を増加させるために使用することができる。一般論として、PCRは、所望の二本鎖ターゲット配列の2本の鎖上の配列に相補的な、過剰の二つのオリゴヌクレオチドプライマーを導入することを伴う。ターゲット配列を含有する疑いのある試料を、試料中に存在する任意の二本鎖DNA配列を変性させるために加熱及び/又は他の方法で処理し、続いてプライマーをハイブリダイゼーションさせるために、オリゴヌクレオチドプライマーの存在下で冷却する。ハイブリダイゼーションの後に、相補鎖を形成するようにプライマーをポリメラーゼで伸長させる。変性、ハイブリダイゼーション、及びポリメラーゼ伸長の段階は、比較的高濃度の所望のターゲット配列のセグメントを得るために、必要に応じた回数繰り返すことができる。この技法の変形は、各サイクルの間に一緒にライゲーションするポリヌクレオチドを使用するリガーゼ連鎖反応、すなわちLCRである。他の変形も存在するが、PCRほど広く受け入れられているものはない。PCRは、実験室の条件及び装置、並びに高度に訓練された人材を必要とする。PCRは、屋外使用に適さず、核酸ターゲットにのみ適用可能である。PCRは、多くの場合に非ターゲット配列の非特異的増幅を被る。
【0012】
核酸ハイブリダイゼーション技法は、通常、二つ以上の核酸分子のハイブリダイゼーションを検出することを伴う。そのような検出は、核酸分子をラベルすること及びそのようなラベルから発生した信号を観察することを含めた様々な方法で果たすことができる。例えばノーザンブロット法及びサザンブロット法を含めたハイブリダイゼーションの従来法は、自動化が容易でない放射性ラベルを使用して開発された。大部分のハイブリダイゼーション技法において、放射性ラベルは蛍光ラベルに主として置き換えられた。他のハイブリダイゼーション技法の代表的な形態には、例えば「サイクリングプローブ反応」、分岐DNA法、Invader(商標)アッセイ(Third Wave Technologies, Inc; Madison WI)、及びHybrid Capture(商標)(Digene Corporation; Gaithersburg, MD)が挙げられる。
【0013】
一般に、蛍光に基づく検出システムは全て、入射光源、周囲の光源、又は他の光源によって引き起こされるバックグラウンドの問題に悩んでいる。
【0014】
追加的に、核酸の検出技法は、核酸の検出に使用が限られている。したがって、核酸を含有しないタンパク質、薬物、ホルモン、化学毒素、及びプリオンなどの因子は、これらの核酸ハイブリダイゼーション技法によって検出することができない。
【0015】
バイオセンサ
バイオセンサは、一般に、生物学的相互作用を電子信号に変換可能にするために適した回路系と一体化した、生物及び化学感知要素を組み入れた分析装置として定義することができる。バイオセンサの代表例は、糖尿病のケアに通常使用されるグルコースモニタ装置である。
【0016】
バイオセンサは、多種多様な機構と形態を含む。比較的よく見られるが、普遍的ではないバイオセンサの特徴は、酵素の使用である。そのようなバイオセンサでは、典型的な形状構成は、膜障壁で分離された二つの電極に関連した酵素システムの使用を伴い、その酵素システムは、検出しようとするターゲットに特異的であり(例えば、グルコース検出用のグルコースオキシダーゼ)、その際、酵素−基質相互作用は、その酵素の基質を検出するための分析手段を提供する。
【0017】
無線周波数認識(RFID)
無線周波数認識(RFID)は、RFIDタグ(又はトランスポンダ)と通常呼ばれる装置を使用してデータを保存し、リモート検索することに一部頼る確認法である。RFIDシステムは、典型的には、タグ、移動型又は据置型リーダ、データ入力ユニット、及びシステムソフトウェアを含めた幾つかの構成要素から成る。RFIDは、製品、場所、時間又はトランザクションに関する情報を直ちに、容易に、そしてある要素の人為ミスなしに収集するための自動化法(又は自動化可能な方法)を提供する。RFIDは、視線を必要としないデータリンクであって、バーコードなどの他の自動ID技術を制限する過酷な環境又は汚い環境に比較的影響を受けない非接触データリンクを提供する。加えてRFIDは、単なる確認装置を超えたものを提供することができる。RFIDタグは、データキャリアとして使用することができ、情報は、リアルタイムでタグに書き込み、更新することができる。
【0018】
通常使用されるRFIDタグは、典型的には、追跡及び確認のために製品、動物、又は人物に付属、組み入れ、又は他の様式で関連させることができる方法/形式に形状構成された様々な形状、大きさおよび読み出し範囲で手に入る。代表的なタグには、紙又はプラスチックの間に積層することのできる薄く柔軟な「スマートラベル」、シリコンチップ並びに多くの場合に電波を受信及び/又は送信することのできるある形態のアンテナを含む、チップに基づくRFIDタグが挙げられる。いわゆるパッシブRFIDタグは、内部電源を必要とせず、その代わりに「リーダ」から送信された電波からタグの電源を得る必要がある。いわゆるアクティブRFIDタグは、内部電源を必要とする。タグはまた、「セミアクティブ」(正しく機能するために内部電源と外部電源の両方に頼る)のこともある。
【0019】
RFIDは、多様な産業における様々な用途に適用されてきた。今日、RFIDは車両及び施設のアクセスコントロール、自動車安全(例えば盗難防止)システム、製品及び資産の追跡、並びにサプライチェーン自動化のような用途に使用される。追加的な用途には、支払及びロイヤルティ管理、スポーツの計時、ペット及び家畜の確認、認証及び文書管理が挙げられる。米国特許第7,241,266号は、発電のために筋組織に埋め込まれた電気活性高分子発電機によりRFIDが電力を供給される、RFID技術の一形態を採用するバイオセンサ装置を開示している。
【0020】
RFIDに関係するいくつかの関連用語/概念
アクティブタグ。電池と、(パッシブタグが行うように)タグからリーダに信号を反射し戻すよりもむしろ、RFIDリーダに情報を送る送信機とを含むRFIDタグ。
【0021】
アジャイル(agile)リーダ。異なる周波数または異なる通信プロトコルで動作するタグを読み出すことができるRFIDリーダ。
【0022】
エアーインターフェースプロトコル。RFIDタグ及びリーダがどのように通信するかを支配する規格。
【0023】
衝突防止。衝突防止アルゴリズムは、インターフェースなしに同じRFIDリーダからと同時に、複数のRFIDタグからの情報を収集するために使用される。
【0024】
後方散乱。パッシブRFIDタグとリーダの間の通信方法。リーダから送られたRF信号は、タグからリーダに反射して戻り、それはデータを送信するために変調される。
【0025】
ビーコン。プリセットされた間隔で信号を「ウェイクアップ(wake up)させ」、放送するようにプログラムされたアクティブ又はセミパッシブRFIDタグ。
【0026】
集線装置。複数のRFIDリーダから同時にデータを集めるために使用される装置。
【0027】
誘導結合。それぞれコイルを有するRFIDリーダアンテナ及びタグアンテナ。これらは一緒になって磁界を形成する。RFIDタグは、この磁界からそのマイクロチップに電力を供給する電気エネルギーを引き出す。次に、マイクロチップはタグアンテナの電気的性質を変化させる。これらの変化は、リーダのアンテナにより感知され、RFIDタグ用の一連番号に変換される。
【0028】
インテロゲータ。RFIDリーダの別名。
【0029】
パッシブタグ。電源又は送信機を有さないRIFDタグ。RFIDリーダからの電波は、RFIDタグアンテナから収集され、それはタグの中のマイクロチップに電力を供給する。次に、タグはチップに保存された情報をリーダに送り戻すことができる。
【0030】
共振用コンデンサ。
【0031】
RFIDリーダ。RFIDタグと通信するために使用される装置。リーダは電波を放射しタグから戻って信号を受信する一つ又は複数のアンテナを有する。リーダは、タグに「質問する」ことから、時に質問器とも呼ばれる。
【0032】
RFIDタグ。パッケージの中のアンテナに付属するマイクロチップ。RFIDタグは最低限でも独自の一連番号を含むが、通常は製品に関する他の情報も含む。RFIDタグは、パッシブ、セミパッシブ又はアクティブでありうる。
【0033】
セミパッシブ/セミアクティブタグ。アクティブRFIDタグと同様であるが、電池が、典型的にはリーダに信号を放送するためではなく、RFIDチップに電力を供給するためだけに使用される。
【0034】
トランスポンダ。無線周波送受信機コンボ。RFIDタグの別の呼び名。
【0035】
燃料電池
「燃料電池」という用語は、典型的には化学エネルギーを電気エネルギーに変換するための触媒を利用しようと努めるシステムを表す。多くの有機基質は、酸素中で燃焼を受けるか又は酸化され、エネルギーを放出する。例えばメタノール、エタノール及びグルコースは、豊富な原材料であって、それ自体が燃料電池反応にとって魅力的な候補でありうる。
【0036】
燃料電池の一般概念は、酸化還元部分の使用により触媒反応から電子を吸い上げること(siphoning)を伴う。例えば、燃料原としてメタノールを採用する燃料電池では、陽極でのメタノール酸化は、次式により表すことができ、
CHOH+HO→CO+6H+6e
陰極での酸素の還元は、次式により表すことができる。
+4H+4e→2H
【0037】
したがって、合同した反応は、2個の電子が「過剰」となって進行する。過剰の電子を利用できるならば、そのエネルギーは、とりわけ電池を創出するためなどの他の目的に使用することができる。
【0038】
一般的なクラスの燃料電池のサブセットは、いわゆる「バイオ燃料電池」、すなわち生体触媒(例えば酵素)に頼る燃料電池システムである。(例えばKatz et al., "Biochemical fuel cells", Handbook of Fuel Cells --Fundamentals, Technology and Applications, 1, Ch. 21 (2003); Katz, E. et al., "A Biofuel Cell Based on Two Immiscible Solvents and Glucose Oxidase and Microperoxydase-I I monolayer-functionalized electrodes", New J. Chem., pp. 481-487 (1999); Katz, E. et al., "A non-compartmentalized gucose I O2 biofuel cell by bioengineered electrode surfaces", Journal of Electroanalytical Chemistry, vol. 479, pp. 64-68 (1999); Palmore, G. et al., "Microbial and Enzymatic Biofuel Cells". Enzymatic Conversion of Biomass for Fuels Production, Ch. 14, pp. 271-290 (1994); Palmore, G. et al., "A methanol/dioxygen biofuel cell that uses NAD+-dependent dehydrogenases as catalysts: application of an electro-enzymatic method to regenerate nicotinamide adenine dinucleotide at low overpotentials", Journal of Electroanalytical Chemistry, vol. 443, pp. 155-161 (Feb. 10, 1998); Palmore, G. et al., "Electro-enzymatic reduction of dioxygen to water in the cathode compartment of a biofuel cell", Journal of Electroanalytical Chemistry, vol. 464, pp. 110-117 (1999); Trudeau, F. et al., "Reagentless Mediated Laccase Electrode for the Detection of Enzyme Modulators", Anal. Chem., vol. 69, No. 5, pp. 882-886 (Mar. 1, 1997); Willner, I. et al., "A biofuel cell based on pyrroloquinoline quinone and microperoxydase-II monolayer-functionalized electrodes", Bioelectrochemistry and Bioenergetics, vol. 44, pp. 209-214 (Jan. 1998); Willner, I. et al., "Biofuel cell based on glucose oxydase and microperoxydase-II monolayer-functionalized electrodes", J. Chem. Soc, Perkin Trans 2., vol. 8, pp. 1817-1822 (Aug. 1998); 米国特許第4,581,336号、第4,578,323号、第4,126,934号及び第3,941,135号;米国特許出願第20040245101号参照、これらはそれぞれ参照により組み入れられる)。グルコース、果汁、ソーダなどで作動するバイオ燃料電池の調製を含む、様々な生体システムにおける最近の進歩が公表されている。例えばhttp://www.slu.edu/xl4605.xml.を参照されたい。バイオ燃料電池は、通常は、一つ又は複数の膜によって分離されている電極を含む酸化還元に基づく反応を含む。例えば、米国特許第5,660,940号、第6,500,571号、第6,475,661号を参照されたい。膜を持たない燃料電池の用途の例もまた報告されている。例えば、米国特許第7,238,440号を参照されたい。
【0039】
バイオセンサ又は埋込み可能な装置と併せた「燃料電池」法の使用が、最近報告された。しかし、これらの燃料電池の適用性は、とりわけ実用性(その欠如)、低感度、効果のなさ、検出のための酵素基質への厳密な依存という問題点、及び他の問題が原因で限定されている(例えば、第7,226,442号、第7,236,821号、第7,160,637号、第7,018,735を参照されたい)が、それらの各々が本発明の装置および方法により克服される。
【0040】
生物学的/診断用検出アッセイ
生物学的アッセイは、典型的には多数の化合物を含む相対的に複雑なシステムを伴うことから、現行のスクリーニングアッセイは高価で時間がかかることがある。あるアッセイでは、参照化合物の放射性ラベル化が使用されてきたが、これらのアッセイは高価であり、放射性材料を使用していることから複雑な廃棄プロトコル及び専用の実験区域を必要とする。他のスクリーニングアッセイでは、蛍光ラベルされた材料が使用されてきたが、そのようなアッセイは、多くの場合に、偽陽性の発生、蛍光信号の検出困難、高いバックグラウンド、許容できないSN比、並びに取扱い及び/又は保管時の蛍光化合物の変性を被る。なお他のアッセイでは比色検出が採用されてきた。そのような比色アッセイは、蛍光に基づくアッセイと同じ又は類似の欠点を被る傾向がある。限られた数の異なる放射性ラベル及び蛍光化合物だけが市販されているという事実を考慮すれば、これらの従来方法のそれぞれは、確認に利用できる、限られた数の独自の確認体に左右されることになる。
【0041】
上に言及したように、ラテラルフロー型装置は、そのような生物学的アッセイ/診断用装置のための通常の形態である。例えば、それぞれその全体が参照により組み入れられる米国特許第4,703,017号、第4,855,240号、第5,356,785号、第5,468,648号、第5,656,503号、第5,766,961号、第5,837,546号、第5,989,921号、第6,475,805号、第6,713,308号、第6,844,200号、第7,045,342号、第7,144,742号を参照されたい。
【0042】
理想的な検出アッセイは、全て現在公知の検出法により示される固有の欠陥を克服するとはいえ、抗体の認識の多用途性及び選択性、速度、正確性、感度、広い適用性、多重化能、並びに場合により「野外用途」(例えば、研究所、分析研究室、臨床検査室の領域外)で、及び/又は外部電源若しくは計装の必要なしに該アッセイを行う能力を組み合わせたものであろう。
【0043】
本発明は、これらの目的のそれぞれを満足させ、検出技術の分野における長期間満たされていない一つ又は複数の必要性を満たす。
【0044】
発明の概要
本発明は、とりわけ、増加した感度及び高い選択性を示し、ほとんど又は全くバックグラウンドを示さない一方で、迅速に測定を行うことができる検出装置及び方法を提供する。本発明は、また場合により、「野外用途」(例えば、研究所、分析研究室、臨床検査室の領域外)で、及び/又は外部電源若しくは計装の必要なしに機能するために適し、かつ/又は機能することができる該装置及び方法の態様も提供する。一つ又は複数のターゲット因子を検出するための装置及び方法が教示される。
【0045】
正確で、高感度で、そして迅速な生物学/化学の分析及び/又はアッセイ(そのサブセットは通常「診断アッセイ」と呼ばれる)の需要が増え続けている。迅速性の必要は、明らかに正確性、感度、使用の容易さ及び特定の課題への適用性の必要の次に来るものである。本発明は、とりわけ、従来技術の装置及び方法に比べて増大した感度、高い選択性、及び/又は低下したバックグラウンドを示す検出装置及び方法を提供する。本発明は、また場合により「野外用途」(例えば、研究所、分析研究室、臨床検査室の領域外)で、及び/又は外部電源若しくは計装の必要なしに機能するために適し、かつ/又は機能することができる該装置及び方法の態様も提供する。一つ又は複数のターゲット因子を検出するための装置及び方法が教示される。
【0046】
本発明の態様は、正確で迅速な生物学及び化学の分析及び診断アッセイを提供することのできる自己作動性信号発生(「SASP」)検出装置及び方法(本明細書ではまとめて「SASP診断装置及び方法と呼ぶ」)に向けられている。とりわけ、生物学的状態及び疾患状態の連続モニタリング、インビトロ診断、食品アッセイ/診断、化粧品用途、農薬、工業化学用途、防衛関連用途、自国の保安関連用途などの全ての適用可能な応用分野における全ての分析アッセイ及び診断アッセイを含むというように、この用語を広く解釈させるつもりであることを了解されたい。
【0047】
ターゲット分析物の不在下で信号を発生することのできないSASP装置及び方法を提供することが本発明の目的である。
【0048】
高感度を有するSASP装置及び方法を提供することが本発明の目的である。
【0049】
低いバックグラウンド及び低い偽陽性発生率を有するSASP装置及び方法を提供することが本発明の目的である。
【0050】
低い検出閾値を有するSASP装置及び方法を提供することが本発明の目的である。
【0051】
高い選択性を有するSASP装置及び方法を提供することが本発明の目的である。
【0052】
本発明の好ましい態様には、該信号を発生するために必要なエネルギーの一部又は全てが、生体触媒反応により直接又は間接的に創出されるSASP装置及び方法が含まれる。ある好ましい態様では、該信号は、例えば診断アッセイにおけるターゲット分析物の選択的結合を示す。該信号には、とりわけRF信号(非限定的にRFIDを含む)、電気信号、光電子信号、光反応性信号及び発光が挙げられる。該RFがRFID回路から発生する態様では、該RFIDはパッシブ、アクティブ又はセミアクティブ型でありうる。
【0053】
特に重大なことには、本発明の態様は、所望のターゲット分析物を基質として利用する触媒システムに限定されない。言い換えると、好ましい態様の生体触媒試薬(例えば、酵素、酵素/酸化還元システムなど)は、エネルギーの発生のためにターゲット分析物を使用しない。従来技術の生体触媒診断装置は、基質としてターゲット分析物を利用する酵素システム(例えば、グルコースの検出及び/又はモニタリングのためのグルコースオキシダーゼ及び/又はグルコースデヒドロゲナーゼ)に焦点を当てた。全く対照的に、本発明の好ましい態様の酵素システムは、好ましくはターゲット分析物とは「無関係」であり、好ましい態様では、ターゲット分析物を基質として利用することができない。本発明のこの局面は、とりわけ、(1)ターゲット分析物に関係なく「ユニバーサル」形式のアッセイを開発できることにより、製造コスト、品質管理コスト、最適化時間などを低減すること、(2)それに関する酵素及び/又は酸化還元システムが未知であるか、容易に入手できないか、又は存在しないターゲット分析物のための用途、(3)広いアレイの分析物のために最適化された酵素システムを利用する能力、並びに(4)低いコスト、容易に入手できる燃料基質及び/又は比較的豊富な燃料基質に頼る検出方法及びシステムを開発する能力を含めたいくつかの重大で非限定的な利点を提供する。
【0054】
本発明の装置及び方法には、とりわけ溶液相、流動通過型(flow through)、毛細管流動及びラテラルフロー形式が挙げられる。基礎をなす方法論が、任意の特定の流動形式又はメカニズムに限定されず、その代わりに大部分の分析方法論に適用可能であると認識することが重要である。
【0055】
ある好ましい態様では、SASP装置及び方法には、計装、いわゆる「チップ」(消耗品)並びに自動、半自動及び/又は手動検査計器装置にそれを使用するための方法が含まれる。加えて、好ましい態様には、「携帯型」SASP装置及び方法が含まれる(すなわち、とりわけアッセイ/分析を行うために計器を必要としない態様を含めた、野外用途に適する態様)。電力が利用できない、実際に役立たない、不可能、又は他の障害により妨害され、そして、特に正確さ、感度、特異性及び迅速な検査がコントロールされた環境又は比較的コントロールされた(例えば実験室)環境の外で必要な野外使用に、該携帯型の態様は特に適する。該携帯型の態様は、とりわけ戦場、紛争地帯、救急隊、自国の保安、農村地域、隔離された地域(例えば水質安全検査アッセイを採用しているキャンプ場)、開発途上国、災害地帯(例えば地震、ハリケーンなど)等を含めた状況で高度に有益である。
【0056】
好ましい態様では、触媒システムは、燃料電池型装置の一方又は両方の電極と直接又は好ましくは間接的に関連している。該装置の電極は、回路(例えばRF発生回路)と直接又は間接的に関連することがあり、それにより該触媒システムにより発生した電子は該回路と通信する。該通信は、伝導性、誘導性、無線送信又は他の送信可能な手段によりうる。
【0057】
ある好ましい態様では、該触媒システムの一つ又は複数の酵素は、選択的な化学的関連により該電極と関連する。該化学的関連は、とりわけ核酸部分、抗体部分、配位子部分などのうち一つ又は複数でありうる。
【0058】
好ましい態様では、RF信号は、SASP装置の存在下でターゲット分析物の選択的結合によって創出されることにより、RF(例えばRFID)回路に電力を供給することのできる電子の供給源を創出する。ある好ましい態様では、該選択的結合は、ラテラルフロー分子会合と併せて起こる。
【0059】
埋込み可能な態様では、装置は好ましくは皮下に配置されることがあり、例えば信号を発生するために生理学的溶液を利用できることによって、特定の分子(例えばグルコース、代謝物、ホルモン、タンパク質など)の存在を検出及び/又はそのレベルをモニタリングするための方法を提供する。
【0060】
ある態様では、SASP検出装置及び方法は、とりわけ、採用された酵素システムにより発生する電子信号及び/又はRFパルス周波数の測定により、所望のターゲットのレベル(例えば濃度)をリアルタイムでモニタリングすることができる。例えば、ターゲット分析物の濃度は、ある態様では、検出回路系に配置された酵素システムの濃度に直接比例する。したがって、RFIDに基づく装置及び/又は方法の場合、パルス周波数(すなわち、RFID回路が充電されそのRF信号を放電する速度)は、ターゲット分析物の濃度を示すことができる。好ましい態様では、基準化された参照/対照回路が採用されることによって、ターゲット分析物の正確な定量が可能になる。
【0061】
ある好ましい態様では、SASP検出装置及び方法には、外部電源を使用せずに、とりわけ(i)RF信号(非限定的にRFIDを含む)、(ii)電気信号、(iii)光電子信号、(iv)光反応性信号及び(v)発光のうち一つ又は複数を発生する能力が含まれる。その代わりに、SASP装置及び方法のこれらの態様は、触媒反応、好ましくは生体触媒反応、さらに好ましくは関連する酸化還元反応と併せた生体触媒反応から得られる電子流の発生により信号を提供することができる。ある好ましい態様では、酸化還元反応は関連する生体触媒を含む。ある好ましい態様では、一つ又は複数の電子メディエータ部分がSASP検出装置及び/又は方法に採用される。
【0062】
ある好ましい態様では、試料中のターゲット分析物は、電極及び/又は電極様装置に関連する捕獲部分によって選択的に「捕獲」され、その電極及び/又は電極様装置は、電子回路と直接又は間接的に通信し、その際好ましくは、該回路はターゲットの存在を電子信号の発生により直接又は間接的に決定することができる手段を提供する。
【0063】
本発明のさらなる目的は、所望のターゲット及びそれに関係するシグナリングに関して高度に特異的なSASP検出装置及び方法である。本発明は、それらの固有の設計により与えられる化学/生物学的特異性の両方に関して高度な特異性を提供し、SASP装置及び方法が本質的に混入物による妨害を受けないという事実によってさらに強化される。
【0064】
本発明のさらなる目的は、低い電力出力を示す酵素/酸化還元システムを含むSASP検出装置及び方法である。そのような低い電力出力システムの利点には、とりわけ電極での混入物の酸化還元変換の低減又は排除により選択的なシグナリングを増大させることが含まれる。
【0065】
本発明のSASP検出装置及び方法は、外部電源を必要とする装置を利用することが非実際的又は不可能のいずれかである地域、場所、状況での使用に特に適する。
【0066】
本発明の目的は、酵素触媒反応を受けることができる一つ又は複数の選択された構成要素の存在を検出するための、その量を測定するための、及び/又はそのレベルをモニタリングするための、構成要素の液体混合物中で使用するための酵素電極システムを提供することであり、そのシステムでは、オキシドレダクターゼ酵素が、好ましくは固定化された状態で電極コレクターの表面、好ましくはSASP検出装置/方法に採用することのできるRF回路の電極に関連している。
【0067】
さらなる目的は、本発明のSASP検出装置及び方法と併せて使用するための携帯型検出器を提供することである。
【0068】
本発明の態様は、少なくとも一つ又は複数の前述の目的、態様、性質及び/又は特徴を満たす。本発明は、概要に与えられた記載に限定されず、その代わりに明細書の他の部分に記載された本発明の他の態様、特定の及び/若しくは一般的な局面並びに/又は特定の若しくは一般的な特徴を実際に含む。前述の概要の目的、利点、局面、態様及び/又は特徴並びに本発明の他の目的、態様、利点、局面及び特徴は、明細書、特許請求の範囲及び図面を読み取ると当業者に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
本明細書に組み入れられ、本明細書の部分を構成する添付の図面は、本発明の例証的な態様を例示し、上に示された全般的な説明及び下に示された詳細な説明と一緒に、本発明の特徴を説明するために役立つ。
【0070】
本発明の特徴、利点及び目的が達成される/達成可能な一般的な方法を詳細に理解できるように、上に簡潔に概要された本発明のさらに詳細な説明は、添付の図面に図解された態様を参照することにより得ることができる。しかしながら、添付の図面は本発明のある態様だけを図解することから、本発明の範囲を限定するものと見なしてはならないことに留意すべきである。それは、本発明が本明細書に例示されていない他の態様を認めてもよく、そして明白にそれを含むからである。
【0071】
【図1】関心が持たれる特定のタンパク質をコードするDNAなどのDNAターゲットを検出するための、本発明の用途の略図である。
【図2】関心が持たれる微生物により発現される特定のタンパク質などのタンパク質ターゲットを検出するための、本発明の用途の略図である。
【図3】「流動通過」型態様が採用された、本発明の一態様を示す図である。
【図4】生体触媒酸化還元電極を示す概略図である。
【図5】代替的な生体触媒酸化還元電極を示す概略図である。
【図6】本発明の好ましい態様のための電極を含むディスポーザブル反応チャンバーを示す側面図である。
【図7】図11の反応チャンバーを示す正面図である。
【図8】反応チャンバーカートリッジを収容しその電極の間に生じた電位を検出するための野外展開可能な装置を示す底面図である。
【図9】ディスポーザブル反応チャンバーの電極間に生じた電位を測定するための野外配置可能な装置を示す側面図である。
【0072】
発明の詳細な説明
包括的に具体的な実施例により、下記に本発明を説明する。実施例は、本明細書に添付する特許請求の範囲に具体的に再引用されない限り本発明を限定しようとするものではなく、本発明の限度を確認するものでもない。同じ理由によって、本発明は上記図面に関連して説明される。図面は、単なる代表であって、読者に本発明の大まかな範囲の具体的で詳細な説明を提供しようとするものである。それに続く特許請求の範囲での再引用からそう示されない限り、本発明は、そのように例示されたいかなる態様にも装置にも限定されない。
【0073】
本発明の実施形態
添付の図面を参照して様々な態様を説明する。可能な場合は、同じ又は類似の部分を参照するために複数の図面にわたり同じ参照番号を使用する。上記のように好ましい態様では、本発明は酵素とその基質の間の化学反応に頼っている。下に論じる典型的な酸化還元対は、グルコースオキシダーゼ及びその基質であるグルコースである。酸化還元酵素及びその基質の間に起こる化学反応を説明するために様々な方法がある。酵素はインタクトなままであるが、基質に作用する際に典型的には電子を発生し、基質からある化学部分を「消化」又は「分解」又は除去する。この用語は、本明細書において「作用する」と称する。したがって、電子又は電位を発生する工程において酵素が基質と接触し、それを変化させる場合に、本明細書においてそれは酵素が基質に「作用する」事象として記載される。
【0074】
本発明のある好ましい態様の詳細な説明
概略図による簡潔な概観
本特許出願の発明は、様々な具体的な態様の形態をとるが、基本的な一般要素の参照により一般に特徴付けることができる。本発明は、回路が仕上がった場合に検出可能な信号を提供するように、電子を遊離する試薬の酸化還元対を採用する。広い概要において、試薬の一つは、ターゲットが存在する場合に限り存在する酵素である。それは、その酵素についての基質と組み合わされる。多様な酵素/基質の対を使用することができるが、一般にオキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼが使用される。したがって、グルコースをグルコースオキシダーゼ又はグルコースデヒドロゲナーゼと、ラクトースをラクトースオキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼなどと共に使用することができる。
【0075】
本出願の図1を参照すると、広い概要において本発明のアッセイシステム、方法及び装置は、多様なターゲットを検出するために使用することができる。一つの好まれているターゲットは、特異的な配列又は一次構造のDNAである。この配列は、DNAがどの役割を果たすか、並びにそれがタンパク質をコードするならば、そのタンパク質の同一性及び役割を決定する。したがって、ターゲットDNAの検出は、本発明の共通で重要な局面である。本発明の実施において、非常に少数のDNA部分によって発生する信号の検出が本発明の核心であることから、バックグラウンドノイズの抑制が不可欠である。図1の概略図において、バックグラウンドノイズは、処理された因子を磁石で選択することにより部分的に減少し、その因子は単離された後に繰り返し洗浄される。上に参照されたものを含めた他の捕獲方法が、当業者に思い浮かぶであろう。
【0076】
示したように、本発明の第一段階又は「A」段階において酸化還元反応対のメンバー、好ましくはオキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼがターゲットの存在下で電荷又は電気発生剤として採用される。概略図の特定の態様及び一般に好ましい態様では、グルコースオキシダーゼ(GOx)が採用される。この触媒は、「捕獲オリゴマー」又は「捕獲オリゴ」にカップリング又はコンジュゲーションされる。捕獲オリゴは、当業者に公知の適切な条件でターゲットDNAの一部にハイブリダイゼーションする配列を有する。コンジュゲーションしたGOxは、カラムで精製され、システムの一つの不可欠な反応体を提供する。
【0077】
本発明のシステムのための第二の反応体又は試薬は、本発明の使用法の第二段階又はB段階で調製される。これは、第一の捕獲オリゴマーもまた結合する部分又は配列と異なるターゲットの一部に、ハイブリダイゼーションにより結合する第二の捕獲オリゴマーである。今度は、この第二の捕獲オリゴマーは、当業者に公知の従来法により磁気ビーズに結合される。第二の捕獲オリゴマーは、磁石により収集され、洗浄して精製される。
【0078】
本発明の第三段階又は反応段階は、二つの捕獲オリゴマーを試料と組み合わせることを求める。これらは、熟練者の望み次第で同時に加えても、又は連続して加えてもよい。捕獲オリゴマーが同じハイブリダイゼーション条件でターゲットに結合し、さもなければ存在するいかなるターゲットとのハイブリダイゼーションとも競合も妨害もしない場合に、それらを一緒に加えることが好都合でありうる。ハイブリダイゼーション条件で試料に加える場合に、試料中に任意のターゲットがあるならば、そのターゲットは、この場合グルコースオキシダーゼを提示するオリゴマー及び磁気ビーズに結合しているオリゴマーによって結合されるであろう。磁気ビーズは、精製のための簡便法を提供する。ハイブリダイゼーション混合物が入った試験管、アンプル、マイクロアレイプレートウェルなどでありうる容器に磁石が適用される。材料を洗浄する(3回)。第二の捕獲オリゴマーにより結合された任意のターゲットは、適用された磁界により保持されるであろう。
【0079】
次に、洗浄された捕獲ターゲットは、酸化還元触媒についての基質、この場合はグルコースをロードされた少容積に加えられる。ターゲットの存在は、GOxの存在を確実にし、GOxはグルコースと反応して電子を自由にさせる。したがって、得られた信号(創出された回路を流れる電気)の強度は、存在するターゲットの量に直接関係する(各GOx分子は一つのターゲット部分に結び付けられる)。微少量のターゲットの存在を確認する定量、及び信号の強度により存在するターゲットの量を決定する定量の両方を達成することができる。絶対的には、1:1の信号対ターゲット比とすると(酵素のターンオーバー又はターゲット1分子あたり複数のシグナリング部分を使用すると、より大きな比を達成することができる)、100アトモルのターゲット/1〜3pM濃度の閾値検出は、十分に本発明の能力の範囲内である。
【0080】
図2に示すように、ターゲットDNAの存在を検出する方法に類似して、タンパク質が類似的に検出される。DNAのハイブリダイゼーション能を使用するよりもむしろ異なる種類の結合部分である抗体を利用することができる。上に論じたように、特定のターゲットに対して抗体を作製することができ、すなわち、それらはそのターゲットに優先的に結合する。本発明の実施では、酸化還元パートナー(この実施例では今回もグルコースオキシダーゼ)は、関心が持たれるターゲットに特異的な抗体にコンジュゲーションされる。従来的な精製の後に、この第一捕獲抗体試薬が調製される。
【0081】
DNAターゲットの場合と同様に、第二捕獲試薬が採用される。オリゴマーの代わりに、第二抗体が使用される。この態様では抗体が磁気ビーズにコンジュゲーションされる。前と同様に、磁気ビーズは、ターゲットに結合する前及び後の両方で、バックグラウンドのノイズを抑制して精製を容易にする。他の精製法は、当業者に公知である。この工程の第二期又は「B段階」は、第二捕獲抗体の精製を含む。
【0082】
第一及び第二捕獲抗体は、結合の際の競合又は妨害を回避するためにターゲットの異なる部分(異なるエピトープ)に結合する。二つの捕獲抗体を同時又は連続的に試料と組み合わせる。試料に存在する任意のターゲットは、GOx部分にコンジュゲーションした第一捕獲抗体及びその所与のエピトープと、その所与のエピトープでターゲットに結合する、磁気ビーズと結合した第二捕獲抗体との両方により結合される。結果として生じた抗体−ターゲット−抗体複合体は、磁石の適用により検出試料から分離され、磁石は存在する任意のターゲットを抜き取り、試料の残りは洗浄除去される。
【0083】
酵素の基質、この場合グルコースが、分離された材料に添加される。磁気ビーズに結合した抗体により結合されたターゲットは、第一捕獲抗体にコンジュゲーションしたグルコースオキシダーゼを担持する。グルコースの添加は、反応をドライブし、電子を遊離し、検出可能な信号を生じさせる。その信号をゼロ信号(バックグラウンド)と区別するために、少数の測定サイクル間に回路を閉じることを例えば1〜5分間遅らせることが理想的でありうる。これは電位を蓄積し、その電位は、回路が閉じられた場合に突然の強い信号を提供し、その信号は最初から持続的に測定することにより得られる信号に等しい。遅れた測定の「スパイク」は、持続的な測定の曲線下面積に等しい。
【0084】
上記説明は、試料の残りからのターゲットの分離を必要とする均一相又は液体アッセイの状況を対象とする。別の好ましい態様では、本発明のSASP技術は、その場のターゲット材料検出に使用される。例えば、酸化還元酵素は、被験試料(例えば組織生検試料)内のターゲット種と選択的に結合することのできる、オリゴマー又は抗体などの部分にコンジュゲーションされる。次に、試料は、適切なポリマー膜(たとえばNafthion)を塗布されているか、又は他の方法で陰極が陽極から分離されている適切な検出チャンバー、好ましくは一チャンバー型反応チャンバーの中に入れられる。試料と、前述のコンジュゲート及び基質が反応チャンバー内で接触され、前記実施例と同様にターゲット材料の存在について試験される。同様に、異種試料中のターゲットの存在は、主要な質問(ターゲットが存在するか)でありうる。これらの態様では、単一の捕獲部分、酸化還元酵素を担持又はそれとコンジュゲーションしている第一捕獲部分が使用される。結合したターゲットを分離するために使用される第二の捕獲部分は必要ない。
【0085】
本発明は、正確で迅速な生物学及び化学の検出、分析及び診断アッセイ(本明細書ではまとめて「SASP検出装置及び方法」と呼ぶ)を提供することのできる新規なSASP検出装置及び方法に向けられる。「SASP検出装置及び方法」という用語は、とりわけインビトロ診断、臨床医学、発生医学、薬学、薬理ゲノミクス、自国の保安、防衛、農薬、工業化学薬品、化粧品、健康補助食品、ゲノミクス、毒性学、メタボロミクス、治療学、緊急対応、全人的医療、ホメオパシー、遺伝的スクリーニング、及び一般商品品質保証の用途を含めた、全ての適用可能な使用分野の検出、分析及び診断アッセイを含むと広く解釈させるつもりであることを了解されたい。
【0086】
本発明のSASP検出装置及び方法には、とりわけ、(i)RF信号(非限定的にRFIDを含む)、(ii)電気信号、(iii)光電子信号、(iv)光反応性信号及び/又は(v)発光を非限定的に含む、一つ又は複数の種類の信号を発生する能力が含まれる。好ましい態様では、SASP装置/方法は、シグナリングに必要な電力の全てを提供するために外部電源を必要とせずに、該信号を発生することができる。好ましい態様では、本発明のSASP検出装置及び方法は、触媒、さらに好ましくは生体触媒、さらに好ましくは酸化還元反応及び/又は酸化還元型の反応と併せて、及び/又は他の方法で関連して使用される前述の一つ又は複数から得られる電流の発生により信号を提供することができる。ある好ましい態様では、酸化還元反応は関連する生体触媒を含む。ある好ましい態様では、一つ又は複数の電子メディエータ部分は、酸化還元反応及び/又は生体触媒に関連している。
【0087】
本発明のSASP検出装置及び方法は、一つ又は複数の電子回路を含むが、その回路は、触媒反応、好ましくはとりわけ酵素酸化還元システムを含めた生体触媒反応から該回路への、とりわけ電子の移動により、本明細書に記載されたような信号を発生することができる。ある好ましい態様では、電子回路はRF信号、さらに好ましくはRFID信号を発生することができる。RFID回路系を含む態様では、該RF回路は、パッシブ、アクティブ及び/又はセミアクティブ型のことがあり、ここで、提供される電源の一部又は全ては、とりわけ触媒反応及び/又は酸化還元反応により発生する。
【0088】
ある態様では、酵素反応及び/又は酸化還元反応は、RFID回路の共振コンデンサを直接充電することにより、RFID信号生成に必要な電力を供給することができる。
【0089】
ある態様では、酵素及び/又は酸化還元電子ポテンシャルは、電池又は類似の手段などの提供された電力を補うことができる。他の態様では、酵素及び/又は酸化還元電子ポテンシャルは、スイッチ、FETなどの回路に動力を供給することができるため、SASP装置及び/又は方法により創出されるエネルギーは、RFID回路/装置に電子信号を提供し、次にそのRFID装置は発生したシステム及び/又は従来の発電手段によりシグナリングすることができる(例えばRF、誘導、電池、外部電力供給など)。これらの種類の態様は、ターゲット分析物が低濃度で存在する用途に好ましいことから、提供された電源は、シグナリング事象に必要な電子ポテンシャルの一部を発生することができるが、信号を発生するには十分なエネルギーではない(内因的に不十分であるか、及び/又はコントロールされているかのいずれか(例えば抵抗により))。そのような態様では、低度(例えば濃度)のターゲット結合は、それによってシグナリング事象に必要な電子ポテンシャルを発生することができる。
【0090】
本発明のSASP検出装置及び方法は、その場及び厳密に非限定的な例として、環境、工業、又は臨床起源(例えば生体試料、血液検査、生検、遺伝的材料など)の化学的及び/又は生物学的ターゲット分析物の存在、濃度及び/又は同一性の決定に採用することができる。本発明のSASP検出装置及び方法は、とりわけ感染症、グルコースのモニタリング、遺伝的検査、ガン検査、水質検査、不純物のスクリーニング及び検証、化粧品、発酵工程、緊急対応(例えば有毒物質の流出、事故、汚染、テロリスト活動、化学/生物兵器)などを含めた広範囲の検出/アッセイ用途への使用に適し、それが意図されている。本発明のSASP検出装置及び方法は、とりわけ核酸、タンパク質、及び/又は小分子(例えば毒素、薬物、代謝物、出発物質、混入物など)を含めた大部分の分析物を選択的に検出することができる。
【0091】
SASP検出装置及び方法は、それら固有の設計により与えられる化学/生物学的特異性の両方に関して高度に特異的であり、SASP装置及び方法が本質的に混入物による妨害を受けないという事実によりさらに向上される。
【0092】
ある好ましい態様によると、とりわけ液体媒質に含有されるターゲット分析物の存在、濃度及び/又は同一性を決定するためのシステムは、外部電源を使用せずに、とりわけ(i)RF信号(非限定的にRFIDを含む)、(ii)電気信号(例えば電圧及び/又は電流)、(iii)光電子信号、(iv)光反応性信号及び/又は(v)発光の存在を決定することのできるSASP検出装置/方法及び検出器を含む。好ましい態様では、該信号は、電子移動反応を介して直接又は間接的に該SASP検出装置/方法により発生する。本発明の装置及び方法は、ターゲット分析物が酸化又は還元されている電子移動反応に限定されず、そしてそれ自体広く適用可能であり、数ある詳細の中で現存する方法及びセンサ装置よりも顕著に改良されている。
【0093】
ある好ましい態様では、SASP検出装置/方法は、触媒酸化及び/又は還元を受けることのできる一つ又は複数の触媒システムを含む。ある好ましい態様では、酵素及び/又は酸化還元システムは、一つ又は複数の電極、より好ましくは一つの陽極及び一つの陰極を含む。ある好ましい態様では、一方又は両方の電極は、直接又は間接的に一つ又は複数の触媒(例えば一つ又は複数の酵素)及び/又は酸化還元部分に関連している。該触媒は、一つ若しくは複数の電極に固定化されてもよいし、かつ/又はその他の方法でそれに関連していてもよく(例えば近接して関連、溶液相など)、その際、例えば酵素の場合に、電極の一つに関連する該酵素は、基質が酸化又は還元される酸化又は還元反応を触媒することができ、そして好ましくは基質の存在下で該反応から、それぞれ酸化剤が酸化され、かつ/又は還元剤が還元される反応を触媒することができる電子移動パートナーに一つ又は複数の電子を移動させることができる。
【0094】
本発明のある好ましい態様で採用された陽極及び/又は陰極は、多様な形状、形態及び構造をもつことがあり、多様な材料から作ることができる。例えば、陽極及び/又は陰極は、平板、メッシュ、ワイヤ、チューブ、又は他の形状の導体材料として形成させることができる。(例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,238,442号を参照されたい)。陽極及び/又は陰極はまた、母材の上に形成された導体フィルムであってもよい。該導体フィルムは、例えばスパッタリング、物理的蒸着、プラズマ沈着、化学蒸着、スクリーン印刷、及び他のコーティング法を含めた多様な方法により該母材の上に形成させることができる。
【0095】
本発明のある好ましい態様で採用された陽極及び/又は陰極は、例えば金属、炭素、導体ポリマー、又は金属化合物などの導電材料を使用して形成させることができる。適切な導電材料は、典型的には非腐食性であり、それには例えば金、ガラス質炭素、グラファイト、白金、二酸化ルテニウム、及びパラジウム、並びに当業者に公知の他の材料が含まれうる。導電性フィルムと共に使用するための適切な非導電性母材には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、及びポリエステルなどのプラスチック及びポリマー性材料が挙げられる。任意の特定の態様の陽極及び陰極は同じ材料を使用して必ずしも製作されるわけではないことが了解されよう。
【0096】
導体材料及び/又は随意の非導体母材は、例えば非多孔性、多孔性又は微孔性でありうる。例えば、導電性材料及び随意の非導電性母材は、例えばメッシュ、網目状構造(例えば網目状グラファイト)、微孔性フィルム、又は陽極還元体及び/又は陰極酸化体が透過性のフィルムとして形成されてもよい。電極の表面積はまた、粗面化又は他の微細構造化(texturing)により増大させることができる。陽極及び/又は陰極が網目状、メッシュ、粗面状、多孔性、微孔性、及び/又は繊維状であることから、好ましくは、陽極及び/又は陰極の実際の露出表面積は、顕微鏡的幾何表面積よりも大きい。加えて、導電性材料及び/又は随意の非導電性母材は、イオン選択性膜でありうるし、それを含みうる。
【0097】
適切な電極は、例えば金、白金、パラジウム、銀、炭素、銅、酸化インジウムスズ(ITO)などを含めた一つ又は複数の導体及び/又は半導体材料から成りうる。観血的分析のために、電極は好ましくは生体適合性で無毒の材料/物質から構成される。ある態様については、製作の容易さ及び十分に大きな表面積が原因で、グラファイトペーストが好ましい材料である。ある態様では、酵素と電極の関連は、例えばグラファイト粉末、シロキサン−フェロセンポリマー及びグルコースオキシダーゼを混合すること、並びに結果として生じた混合物をブレンドしてペーストにすることにより達成することができ、そのペーストは、続いて電極のハウジングの基部にあるウェルに詰められるか、又は電極基板表面に適用される。炭素に基づく電極の例は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,970,145号に論じられている。
【0098】
本発明のSASP検出装置及び方法は、好ましくは電極の間の膜の不在下で使用されることによって、使用及び設計の顕著な利益及び容易さを提供する。特定の形状構成について必要なように、あまり好ましくない態様は、一つ若しくは複数の膜及び/又は膜様材料を採用することがある。
【0099】
好ましい態様の電極に関連する触媒/酵素は、必ずではなく、好ましくは酸化還元型であり、好ましくは酸化還元酵素である。幾つかの酸化還元酵素は、例えばフラビンアデニンジヌクレオチドリン酸(FAD)、ピロロキノリンキノン(PQQ)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)、ヘム、鉄−硫黄クラスター他などの補因子に依存するが、補因子の存在又はそれへの依存は、本発明により必要とされないことを認識することが重要である。そのような補因子が必要及び/又は有益である態様では、システムは、好ましくはそのような補因子を含む。
【0100】
ある好ましい態様では、SASP検出装置/方法は、(a)酸素を電解還元できるように形状構成及び/又は方向付けされた陰極並びに(b)水素、アルコール(例えばメタノール)、糖質(例えばグルコース)、カルボン酸(例えばギ酸)又はカルボン酸エステル(例えばギ酸メチル)を電解酸化できるように形状構成及び/又は方向付けされた陽極を含む。
【0101】
ある態様では、システムが一つ又は複数の電解質を含むことが好ましい。そのような電解質が採用される場合に、その電解質は、とりわけ電池、燃料電池、生体燃料電池などの、酸化還元反応に通常使用されるものからとりわけ選択することができる。一般的に言うと、例えばプロトンが陽極で発生する本発明のある態様で採用されるようなシステムにおいて、電解質は、酸化体との反応が起こる陰極へのそれらのプロトンの輸送を促進する。燃料電池を含む膜において、プロトン交換膜は通常は陽極を陰極から分離するために役立ち、場合により一方の電極から他方にプロトンを伝導するために役立つ。膜を持たない燃料電池において、電解質は典型的には必須の電極へのプロトンの移動を容易にする。本発明の態様における使用に適する電解質の例には、非限定的に塩、酸及び塩基が挙げられる。電解質は、溶解した塩、酸又は塩基の形態で導入及び/又は存在することができるし、例えばポリマー塩、酸又は塩基の形態で導入及び/又は存在してもよい。好ましい態様には、電解質、例えば塩が緩衝剤としてもまた機能することができるシステムが挙げられる。例には、非限定的にリン酸、クエン酸及び酢酸を含有する塩が挙げられる。特に好ましいのは、pH範囲が約2〜7の塩緩衝液である。
【0102】
ある態様では、触媒/酸化還元部分の機能は、陽極還元体又は陰極酸化体の電気化学反応の触媒を含む。好ましい酸化還元触媒は、(非限定的に)酵素及び有機金属酸化還元錯体を含めた、電子を可逆的に移動させることができる種から成ってもよい。好ましい酸化還元触媒は酵素である。
【0103】
適切な酵素の代表的な例には、非限定的にグルコースオキシダーゼ(GOx)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、フルクトースデヒドロゲナーゼ、コリンオキシダーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アミノ酸オキシダーゼ、チトクロームなどが挙げられる。
【0104】
例えば、酸素の電解還元のためのラッカーゼ及びチトクロームCオキシダーゼ、並びに過酸化水素の電解還元のためのペルオキシダーゼを含めた、陰極に関連して有用な酵素がいろいろある。同様に、陽極で有用な酵素には、水素の電解酸化のためのヒドロゲナーゼ;メタノール、他のアルコール、グルコース、ラクテート及び他の基質の電解酸化のためのオキシダーゼ及びデヒドロゲナーゼ;メタノールの電解酸化のためのアルコールオキシダーゼ、ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ及びギ酸デヒドロゲナーゼ;D−グルコース、L−ソルボース及びD−キシロースの電解酸化のためのピラノースオキシダーゼ;並びにグルコースの電解酸化のためのグルコースオキシダーゼ、オリゴ糖デヒドロゲナーゼ及びピロロキノリンキノン(PQQ)グルコースデヒドロゲナーゼが挙げられる。本発明に有用な酵素の非限定的な一覧は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,294,281号に示されている。
【0105】
本発明に使用するためのさらに好ましい酵素は、(非限定的に)ラッカーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、チトクロームcオキシダーゼ、マルチ銅オキシダーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、青色銅オキシダーゼ(blue copper oxidase)、アルコールオキシダーゼ、ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ及びギ酸デヒドロゲナーゼ、L−乳酸デヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、微生物ピルビン酸オキシダーゼ、及びカテコールオキシダーゼを含む群であるオキシドレダクターゼ群より選択される酵素である。本明細書における本発明のある態様では、陰極にラッカーゼがより好ましい。
【0106】
一般に、ラッカーゼ(ポリフェノールオキシダーゼ[EC1.10.3.2])は、4個の基質分子の1電子酸化を二酸素から水への4電解還元とカップリングさせるマルチ銅オキシダーゼである。したがってラッカーゼは、SASP検出装置及び方法において二酸素から水への生体触媒還元に有用である。異なるアイソフォームのラッカーゼをコードしているいくつかの遺伝子が単離及び配列決定され(例えばTrametes versicolor、T. pubescens、Coriolus hirsutus及びPleurotus ostreatus);これらの酵素を生化学的に特徴付けるために多くの研究が行われてきた(Galhaup C., et al., Microbiology, 2002 Jul; 148(Pt 7):2159-2169; Leitner C., et al., Appl Biochem Biotechnol. 2002 Spring; 98-100:497-507; Galhaup C., et al., Appl Microbiol Biotechnol. 2001 Jul; 56(1-2):225-232; Gorbatova O. N., et al., Prikl Biokhim Mikrobiol 2000 May-Jun; 36(3):272-277)。
【0107】
本発明に利用される基質は、触媒酸化または還元反応を受けることができる基質である。好ましくは、その基質は普通、有機物である。代表的な基質の例には、とりわけ糖分子(例えばグルコース、フルクトース、スクロース、マンノースなど);ヒドロキシ又はカルボキシ化合物(例えばラクテート、エタノール、メタノール、ギ酸など)、ATP、炭素源、窒素源、リン源、硫黄源、アミノ酸、又は酸化還元反応、さらに好ましくは酸化還元型酵素の基質として役立ち、機能することができる任意の他の有機物が挙げられる。
【0108】
酵素システムが、以下の性質のうち一つ又は複数を示す基質を酸化する能力により選ばれることが特に好ましい:(i)容易に入手できる、(ii)目的の酸化還元反応に容易に供される、そして(iii)SASP装置及び/又は方法のために該酸化還元反応から余剰の電子を回収することができる。
【0109】
ある態様では、好ましい酵素は、酸素非特異性のフラボ−タンパク質又はキノ−タンパク質酵素、特にグルコースオキシダーゼ及びグルコースデヒドロゲナーゼである。他のフラボ−タンパク質酵素には、アルデヒドオキシダーゼ(アルデヒド)、グリコール酸オキシダーゼ(グリコレート)、グルタチオンレダクターゼ(AND(P)H)、乳酸オキシダーゼ(ラクテート)、L−アミノ酸オキシダーゼ(L−アミノ酸)、リポアミドデヒドロゲナーゼ(NADH)、ピルビン酸オキシダーゼ(ピルベート)、サルコシンオキシダーゼ(サルコシン)、コリンオキシダーゼ(コリン)及びキサンチンオキシダーゼ(キサンチン)が挙げられ、ここで、その酵素が特異性を示す基質をカッコ内に示した。
【0110】
他の態様では、好ましい酵素は、例えばメチルアミンデヒドロゲナーゼ(メチルアミン)及びメタノールデヒドロゲナーゼ(メタノール及び他のアルコール)などのキノ−タンパク質酵素である。
【0111】
他の態様では、好ましい酵素は、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ(過酸化水素)、乳酸デヒドロゲナーゼ(ラクテート)及び酵母チトクロームCペルオキシダーゼ(過酸化水素)などの、フェロセンにより酸化されうるヘム含有酵素である。
【0112】
他の態様では、好ましい酵素は、例えばガラクトースオキシダーゼ(ガラクトース)及びメタロフラビンタンパク質酵素である一酸化炭素オキシドレダクターゼ(一酸化炭素)などの銅−タンパク質酵素である。
【0113】
また、酵素は、好熱性生物由来であることにより経時的及び保存時の酵素の安定性を増大させることができる。好熱性酵素が採用される態様では、反応は、場合により高温で行うことができる。高温での作動により、拡散速度決定段階が加速する結果、より大きな感度及び出力を得ることができる。
【0114】
好熱性生物由来の酵素は、通例、耐熱性酵素と呼ばれる。耐熱性酵素の代表的な例には、好熱性真菌myceliophthora thermophilia由来ラッカーゼ、好熱性細菌PS3及びthermus thermophilus由来チトクロームCペルオキシダーゼ、ダイズ由来ペルオキシダーゼ及び白色腐朽菌phlebiopsis gigantea由来ピラノースオキシダーゼが挙げられる。他の市販されている耐熱性酵素には、Bacillus由来L−乳酸デヒドロゲナーゼ、thermus種由来リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、aspergillus由来グルコースオキシダーゼ、微生物ピルビン酸オキシダーゼ、及びbacillus由来尿酸オキシダーゼが挙げられる。より大きい生体分子を電解酸化可能な糖に加水分解する耐熱性酵素には、例えば、bacillus stearothermophilus由来α−アミラーゼ、aspergillus由来β−アミラーゼ、rhizopus niveus由来グルカン−1,4−α−グルコシダーゼ、aspergillus niger由来セルラーゼ、Aspergillus niger由来エンド−1−3(4)−β−グルカナーゼ、leuconostoc mesenteroides由来デキストラナーゼ、Bacillus stearothermophilus由来α−グルコシダーゼ、caldocellum saccharolyticum由来β−グルコシダーゼ、aspergillus由来β−ガラクトシダーゼ、酵母由来β−フルクトフラノシリダーゼ、及びaspergillus oryzae由来N−ラクターゼが挙げられる。
【0115】
加えて、酵素が本質的に耐熱性であろうとなかろうと、好ましい酵素は非導体無機又は有機ポリマーマトリックスに固定化して酵素の耐熱性を増大させることができる。無機ポリマーマトリックスにおける酵素の固定に関する論考は、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,972,199号及びPCT公開公報WO98/35053に見出される。ゾル−ゲル重合工程は、室温で、又はその付近で適切なモノマーの重合により無機ポリマーマトリックス(例えばガラス)の調製のための方法を提供する。適切なモノマーには、例えば金属及び半導体化元素のアルコキシド及びエステルが挙げられ、好ましい金属及び半導体化元素には、Si、Al、Ti、Zr、及びPが挙げられる。そのような好ましいモノマーには、ケイ素が挙げられ、そのモノマーは、約1:2〜約1:4のケイ素対酸素比を有する。
【0116】
例えば、酵素は、テトラメトキシシラン又は一つ若しくは複数のケイ素原子を含む別のポリアルコキシシランの加水分解などのゾル−ゲル工程により作られたシリカポリマーマトリックスに固定化することができる。結果として生じたシラノールを酵素の存在下で縮合させる結果として、酵素の包括が生じる。この工程は、ゾル−ゲル固定化と呼ばれてきた。ゾル−ゲルから形成したシリカ又は他の無機ポリマーマトリックス中に酵素が結合すると、酵素を安定化することができる。シリカゾル−ゲルマトリックスへの糖タンパク質グルコースオキシダーゼの包括は酵素の安定性を大きく改善し、それは、水中で98℃に10分間加熱した場合も活性を保持する。
【0117】
シリカゾルゲルマトリックスにより安定化された酵素は、微粉末に粉砕し、シリコーン中に、好ましくはエラストマー系シリコーン中に、最も好ましくは水性エラストマー系シリコーン前駆体中に分散させることができる。次に、この分散物を酵素の結合剤として陰極に適用する。結合剤には、好ましくは環境から酸素を抽出および貯蔵するための材料が含まれる。シリコーンは、それが酸素を溶解する能力及びその酸素透過性が原因で、この層における好ましい結合剤である。高い酸素溶解性からエラストマー系シリコーンが好ましい。
【0118】
無機ポリマーマトリックス中の酵素の安定性は、少なくとも部分的にはその酵素のイオン性質及び固定化用の、しばしば無機のポリマーマトリックスの性質に依存する。水和シリカゲルは、pH5付近に等電点(pI)を有する(すなわち、分子の実効電荷が0のpH)。pI=3.8を有するグルコースオキシダーゼは、ゾル−ゲル固定化の際にその活性を保持し、水和シリカゲルマトリックスに固定化されると安定化される結果、63℃でその酵素の半減期が約200倍増大しうることが実証された。他方で、乳酸オキシダーゼ(pI=4.6)及びグリコール酸オキシダーゼ(pI≒9.6)は、水和シリカゲルに固定化されると、それらの活性の少なくとも70%をそれぞれ喪失し、これら二つの酵素の安定性はあまり改善しなかった。
【0119】
水和シリカ単独におけるこれらの酵素の活性喪失とは対照的に、水和シリカゲルにおいてアダクトを形成させるためにポリ(1−ビニルイミダゾール)(PVI)(弱塩基)又はポリ(エチレンイミン)(PEI)(強塩基)を使用した場合に、乳酸オキシダーゼ(pI=4.6)の半減期は63℃で100倍超増加し、顕著な活性喪失なしに酵素が固定化されたことが示された。アダクトは、例えばポリ(1−ビニルイミダゾール)が共に溶解した緩衝水溶液に乳酸オキシダーゼを溶解させることにより形成させることができ、乳酸オキシダーゼ−ポリ(1−ビニルイミダゾール)混合物がゾル−ゲル工程によりシリカに固定化され、安定な固定化乳酸オキシダーゼが得られる。安定化された乳酸オキシダーゼは、水の中で90℃に10分間加熱しても、依然として酵素活性を保持することができる。酵素活性を保持する類似のアダクトは、ポリ(エチレンイミン)を用いて形成させることができる。
【0120】
乳酸オキシダーゼ及びグリコール酸オキシダーゼの機能的に必須な、正に荷電した表面残基(例えばアルギニン)は、ゾル−ゲル固定化の際に水和シリカの負に荷電したポリケイ酸陰イオンと相互作用して活性の減少が生じうると考えられている。しかし、酵素表面が柔軟なポリカチオン緩衝液(すなわち、酵素の等電点に応じてPVI及び/又はPEI)に覆われている場合に、ポリケイ酸陰イオンは、酵素の陽イオン残基とではなく、陽イオン性緩衝分子と相互作用することにより、シリカゲルに収容することにより酵素を安定化することができる。したがって、PVI及びPEIは、乳酸オキシダーゼなどの酵素のためにポリカチオン緩衝剤として作用するアダクトを形成すると考えられる。PEIは、また、グリコール酸オキシダーゼなどの酵素のための陽イオン性緩衝剤としても作用する。おそらくグリコール酸オキシダーゼが強塩基であるという事実から、PVIはグリコール酸オキシダーゼにあまり好ましくない緩衝剤と考えられている。
【0121】
一般に、ゾル−ゲル固定化前の、例えばポリ(1−ビニルイミダゾール)又はポリ(エチレンイミン)などのポリカチオンの添加は、酵素を安定化する。好ましくは、添加されたポリカチオンは、酵素よりも塩基性のポリ電解質である。高い等電点を有する酵素は、多くの場合に安定化のためにより塩基性のポリ電解質を必要とする。ポリ(エチレンイミン)は、ポリ(1−ビニルイミダゾール)よりも塩基性である。
【0122】
pH7でポリカチオンの、ポリ(1−ビニルイミダゾール)は、pH7でポリアニオンである乳酸オキシダーゼなどの酵素にこのpHで結合することができる。したがって、特定の酵素への特定のポリマーの添加は、酵素の安定性を増大させることができる。乳酸オキシダーゼの場合に、ポリ(1−ビニルイミダゾール)の代わりに同様にポリ塩基性ポリマーであり、同様にpH7で多重プロトン化されるポリ(エチレンイミン)の添加は、好ましいポリマーであるポリ(1−ビニルイミダゾール)の添加ほどではないが、酵素の安定性を向上させることができる。そのような安定化された酵素は、典型的にはその酵素がゾル−ゲルで単独で固定化された場合に可能であろうよりも高い温度及び/又は長い時間で使用することができる。
【0123】
酵素が固定化及び安定化されたゾルゲルマトリックスは、多くの場合に電子伝導体ではない。しかし、この種類のマトリックスは、多くの場合に共有結合を介して、マトリックス又はその前駆体に酸化還元官能基を結合させることにより改変することができる。適切な酸化還元官能基の例には、とりわけ例えば、一つ又は複数のピリジン環及び/又はイミダゾール環を含む配位子を有するオスミウム、ルテニウム、及びコバルト錯体含めた酸化還元ポリマーに使用するための上記酸化還元種が挙げられる。さらに、そのような構築物の酸化還元官能基には、好ましくは酸化還元官能基の金属陽イオン又は一つの配位子に共有的又は配位的に付属したスペーサアームを挙げることができる。スペーサアームの一端は、例えばマトリックスのケイ素原子に共有結合している。スペーサアームのもう一端は、酸化還元官能基に共有結合又は配位結合している。酵素は、そのようなマトリックスに固定化することができ、電子は、マトリックスにカップリングした酸化還元官能基を使用して酵素と電極の間で交換することができる。
【0124】
いくつかの態様では、特に付属した酸化還元官能基を含むマトリックスについて、マトリックスの伝導率を増大させるために非腐食性の電子伝導粒子がマトリックス内に配置される。該粒子の例には、グラファイト、カーボンブラック、金、及び二酸化ルテニウムが挙げられる。典型的には、これらの粒子は1μm以下の直径及び1m2/g以上、好ましくは10m2/g以上、さらに好ましくは100m2/g以上の表面積を有する。または、VOClを加水分解してポリマーマトリックスを形成させることができ、そのマトリックスは還元されると伝導性である。
【0125】
他の態様では、酵素はゾルゲルマトリックスに固定化及び安定化され、その酵素は化学物質の反応を触媒して生成物を形成し、電極に電気的にカップリングされた第二の酵素の存在下でその生成物は続いて電解酸化又は電解還元される。例えば、グルコースは、ゾルゲルマトリックスに安定化されたグルコースオキシダーゼの存在下で反応することができ、グルコノラクトン及び過酸化水素を形成する。過酸化水素は、ゾルゲルマトリックスから陰極近くまで拡散し、ダイズ・ペルオキシダーゼなどの耐熱性酵素により水に電解還元される。
【0126】
多くの生体システムで典型的に主要な物質輸送媒質である水は、電気絶縁体である。多くの化合物の溶解度は、水において高いが、これらの化合物は、水性媒質を通過する電子の輸送が不在のときに電気分解することができない。これは、例えば酸化還元ポリマー、特に酸化還元ヒドロゲルを使用することを含めた多様な方法により達成することができる。可動性で、分析物と電極の間に電子を運搬することができる活性酸化還元官能基を、酸化還元ポリマーが含むならば、その酸化還元ポリマーは、一般に電子の十分な輸送を提供する。例えば酸化還元ヒドロゲルは、典型的には多量の水を含有する。水溶性反応体及び生成物は、多くの場合に水を通って拡散するのとほぼ同じ速さで酸化還元ヒドロゲルを通過して浸透する。酸化還元ヒドロゲル中の電子伝導は、ポリマーが水和した後に移動する電子がポリマーセグメントの間で交換されることによる。
【0127】
ある好ましい態様では、陽極酸化還元ポリマー及び/又は陰極酸化還元ポリマーは、それぞれ陽極及び陰極に沈着される。一般に、酸化還元ポリマーは、電解還元可能なイオン及び電解酸化可能なイオン、官能基、種又は酸化還元電位を有する他の分子及び/若しくは部分を含む。好ましくは、これらの酸化還元電位は、明確に定義されている。酸化還元ヒドロゲルの酸化還元電位は、典型的には水が電解酸化も電解還元もされない範囲内である。中性pH及び25℃で、この範囲は、基準カロメル電極(SCE)に対して約(−)0.65V〜約(+)0.58Vである(すなわち基準水素電極(SHE)に対して約(−)0.42V〜約(+)0.81V)。陽極酸化還元ポリマーについての酸化還元電位の好ましい範囲は、約−0.65V〜約+0.05V(SCE)である。陰極酸化還元ポリマーについての酸化還元電位の好ましい範囲は、約+0.3V〜約+0.7V(SCE)である。
【0128】
いくつかの態様では、好ましい酸化還元ポリマーには、酸化還元種がポリマーに結合したものであって、今度は作用電極に固定化することのできるものが挙げられる。一般に、本発明での使用に適した酸化還元ポリマーは、試料が分析されている途中の酸化還元種の拡散損失を防止又は実質的に減少させる構造又は電荷を有する。酸化還元種とポリマーの間の結合は、共有結合、配位結合、又はイオン結合であってもよい。有用な酸化還元ポリマー及びそれらの製造方法の例は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,262,035号、第5,262,305号、第5,320,725号、第5,264,104号、第5,264,105号、第5,356,786号、第5,593,852号、及び第5,665,222号に記載されている。任意の有機又は有機金属酸化還元種をポリマーに結合させ、酸化還元ポリマーとして使用することができるが、好ましい酸化還元種には、遷移金属化合物又は錯体が挙げられる。そのような態様では、好ましい遷移金属化合物又は錯体には、オスミウム、ルテニウム、鉄、及びコバルトの化合物又は錯体が挙げられる。好ましい錯体では、遷移金属は一つ又は複数の配位子に配位結合し、少なくとも一つの他の配位子に共有結合している。配位子は、多くの場合に単座、二座、三座、又は四座である。さらに好ましい配位子は、例えばピリジン及び/又はイミダゾール誘導体などの複素環式窒素化合物である。例えば典型的には、多座配位子には、複数のピリジン環及び/又はイミダゾール環が挙げられる。または、ポリマーに結合した例えばフェロセンなどのメタロセン誘導体を使用することができる。この種の酸化還元ポリマーの例は、ポリ(ビニルフェロセン)又は水中での酸化還元ポリマーの膨潤を増大させる機能を持たせたポリ(ビニルフェロセン)誘導体である。
【0129】
別の種類の酸化還元ポリマーは、イオン結合した酸化還元種を含有する。典型的には、この種のメディエータは、反対電荷の酸化還元種にカップリングした荷電ポリマーが挙げられる。この種の酸化還元ポリマーの例には、オスミウム又はルテニウムポリピリジル陽イオンなどの正に複数荷電した酸化還元種にカップリングしたNafion(登録商標)(DuPont)などの負荷電ポリマーが挙げられる。イオン結合したメディエータの別の例は、フェリシアニド又はフェロシアニドなどの負荷電酸化還元種にカップリングした四級化ポリ(4−ビニルピリジン)又はポリ(1−ビニルイミダゾール)などの正荷電ポリマーである。好ましいイオン結合酸化還元種は、反対荷電のポリマー内に結合した、複数荷電した、多くの場合にポリアニオン性の酸化還元種である。
【0130】
電極表面に酸化還元ポリマーを固定化するために多様な方法を使用することができ、本発明の態様は、本明細書に明白に確認されるか、又は他の方法で当業者に公知の任意の特定の方法に限定されない。代表的な一方法は、吸着固定化である。この方法は、比較的高い分子量を有する酸化還元ポリマーに特に有用である。ポリマーの分子量は、例えば架橋により増大させてもよい。酸化還元ポリマーのポリマーは、架橋剤を用いて架橋することのできる、例えばヒドラジド、アミン、アルコール、複素環式窒素、ビニル、アリル、及びカルボン酸基などの官能基を含んでもよい。これらの官能基は、ポリマー又は一つ若しくは複数のコポリマーに提供されてもよい。または、若しくは追加的に、官能基を例えば四級化などの反応により付加してもよい。一例は、ブロモエチルアミン基を用いたPVPの四級化である。
【0131】
または、酵素の耐熱性を増大させるために、その酵素を非導体無機又は有機ポリマーマトリックスに固定化させる。無機ポリマーマトリックスでの酵素の固定化に関する論考は、それぞれが参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,972,199号及びPCT公開公報WO98/35053に見出される。ゾル−ゲル重合工程は、室温又は室温近くで適切なモノマーの重合により無機ポリマーマトリックス(例えばガラス)を調製するための方法を提供する。適切なモノマーには、例えば、金属及び半導体化元素のアルコキシド及びエステルを挙げることができ、好ましい金属及び半導体化元素にはSi、Al、Ti、Zr、及びPが挙げられる。さらに好ましいモノマーには、ケイ素が挙げられ、そのモノマーは約1:2〜約1:4のケイ素対酸素比を有する。
【0132】
例えば酵素は、テトラメトキシシラン又は一つ若しくは複数のケイ素原子を含む別のポリアルコキシシランの加水分解などのゾル−ゲル工程により作られるシリカポリマーマトリックスに固定化することができる。結果として生じたシラノールを酵素の存在下で縮合させる結果として、酵素の包括が生じる。この工程は、ゾル−ゲル固定化と呼ばれる。ゾル−ゲルから形成したシリカ又は他の無機ポリマーマトリックス中に酵素が結合すると、酵素を安定化することができる。シリカゾル−ゲルマトリックスへの糖タンパク質グルコースオキシダーゼの包括は酵素の安定性を大きく改善し、その酵素は、水中で98℃に10分間加熱した場合に活性を保持する。
【0133】
シリカゾルゲルマトリックスにより安定化された酵素は、微粉末に粉砕し、シリコーン中に、好ましくはエラストマーシリコーン中に、最も好ましくは水性エラストマーシリコーン前駆体中に分散させることができる。次に、この分散物を酵素の結合剤として陰極に適用される。結合剤には、好ましくは環境から酸素を抽出及び貯蔵するための材料が挙げられる。シリコーンは、それが酸素を溶解させる能力及びその酸素透過性が原因で、この層における好ましい結合剤である。高い酸素溶解性から、エラストマーシリコーンがこの状況で好ましい。
【0134】
ある好ましい態様では、二つの酵素システムが採用され、該システムは、反応基質RS1から第一反応生成物(RP1)を生成するための反応を触媒する第一酵素(E1)及び反応基質(RS2)から第二反応生成物RP2)を生成するための反応を触媒する第二酵素(E2)を含む。ある好ましい態様では、そのような酵素は、RS1から電極に低い過電圧を有する熱力学的に好都合な電子移動反応を提供する能力で選ぶことができる。E1及びE2部分の相対距離及び方向を限定することが特に好都合である。一般に、相対的な位置づけなしに、反応は、拡散動態、すなわちE1により生成するRP1がE2まで拡散しRS2として機能するためにかかる時間により限定されるであろう。これは、典型的には律速段階である。電子移動/発生反応が方向付けられるために必要な酵素が、全ての必要な反応構成要素の相互作用を最大するように近接していることが好ましい。好ましい方法には、酵素を繋ぎ止める(tethering)ことが含まれる。そのような繋ぎ止め手段は、当業界に公知であり、その手段には、とりわけスペーサ分子、融合タンパク質、複合体形成などの使用が挙げられる。
【0135】
ある好ましい態様では、触媒/酵素は、酵素電極が導体基板及びその導体基板と電気的に接続する酵素を含むように形状構成される。ある態様では、その酵素は、第一反応基質から第一反応生成物を生成させるための化学反応を触媒する第一酵素と、第二基質から第二反応生成物を生成するための化学反応を触媒する第二酵素との融合タンパク質を含み、第一反応生成物の少なくとも一部は第二反応基質の少なくとも一部と同一である。
【0136】
本発明のある好ましい態様では、酵素電極は、基板を検出するための検出部分と関連し、さらに好ましい態様では、導体基板は、電子流がRF生成回路の電子回路系のための電力を提供することができるように、該回路系と直接又は間接的に電気的に通信する。ある態様では、上記構造を有する酵素電極が陽極として使用される。
【0137】
他の好ましい態様では、二つの酵素が採用された酵素電極でE1とE2の間の相対距離が小さい結果として、E1のRS1から電極への電子移動反応は効率的に進行する。
【0138】
ある好ましい態様では、酸化還元種を一つ又は複数の酵素触媒システムと共に、又はその代わりに使用することができる。適切な酸化還元種には、例えば(a)2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン若しくはその誘導体などの二つの二座配位子(これらの二つの配位子は必ずしも同じではない)、(b)2,2’,2”−テルピリジン及び2,6−ジ(イミダゾール−2−イル)−ピリジンなどの一つの三座配位子、又は(c)一つの二座配位子及び一つの三座配位子と錯体を形成したオスミウム陽イオンが挙げられる。適切なオスミウム遷移金属錯体には、例えば[(bpy)OsCl]+/2+、[(dimet)OsCl]+/2+、[(dmo)OsCl]+/2+、[terOsCl+/2+、[trimetOsCl+0/+、及び[(ter)(bpy)Os]+2/+3が挙げられる(式中、bpyは2,2’−ビピリジン、dimetは4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、dmoは4,4’−ジメトキシ−2,2’−ビピリジン、terは2,2’,2”−テルピリジン、そしてtrimetは4,4’,4”−トリメチル−2,2’,2”−テルピリジンである)。
【0139】
酸化還元種は、多くの場合に錯体を迅速に酸化及び/又は還元できるように、相互に及び電極の間で迅速に電子を交換する。一般に、鉄錯体はルテニウム錯体よりも酸化性で、それは今度はオスミウム錯体よりも酸化性である。加えて、酸化還元電位は、一般に配位する複素環の数と共に増加する。
【0140】
典型的には、酸化還元ポリマーのために使用されるポリマーは、酸化還元種への配位子として結合するためのピリジン、イミダゾール、又はその誘導体などの窒素含有複素環を有する。上記遷移金属錯体などの、酸化還元種との錯体形成に適したポリマーには、例えばポリ(1−ビニルイミダゾール)(「PVI」と呼ばれる)及びポリ(4−ビニルピリジン)(「PVP」と呼ばれる)のポリマー及びコポリマー、並びにピリジン及びイミダゾールなどのペンダント型窒素含有複素環の付加により修飾されたポリ(アクリル酸)又はポリアクリルアミドのポリマー及びコポリマーが挙げられる。ポリ(アクリル酸)の修飾は、カルボン酸官能基の少なくとも一部と、4−エチルアミノピリジンなどのアミノアルキルピリジン又はアミノアルキルイミダゾールからアミドを形成させる反応により行ってもよい。PVI、PVP、及びポリ(アクリル酸)の適切なコポリマー置換基には、アクリロニトリル、アクリルアミド、アクリルヒドラジド、及び置換又は四級化N−ビニルイミダゾールが挙げられる。コポリマーは、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーでありうる。
【0141】
遷移金属錯体は、典型的にはポリマーの窒素含有複素環(例えばイミダゾール及び/又はピリジン)と共有結合又は配位結合する。または、遷移金属錯体は、その錯体がビニル複素環、アミド、亜硝酸塩、カルボン酸、スルホン酸、又は他の極性ビニル化合物、特にポリマーが水溶性又は水の中で膨潤することが公知の化合物とコポリマー化することができるビニル官能基を有してもよい。
【0142】
典型的には、オスミウム又はルテニウム遷移金属錯体とイミダゾール及び/又はピリジン基との比は、1:10〜1:1、好ましくは1:2〜1:1、さらに好ましくは3:4〜1:1である。一般に、ヒドロゲルの酸化還元電位は、少なくとも部分的にポリマーに依存し、酸化還元電位の順位はポリ(アクリル酸)<PVK<PVPである。
【0143】
電極表面に酸化還元ポリマーを固定化するために多様な方法を使用してもよい。一方法は、吸着固定化である。この方法は、比較的高い分子量を有する酸化還元ポリマーに特に有用である。ポリマーの分子量は、例えば架橋により増大させてもよい。酸化還元ポリマーのポリマーは、例えば架橋剤を用いて架橋することができるヒドラジド、アミン、アルコール、複素環式窒素、ビニル、アリル、及びカルボン酸基などの官能基を含んでもよい。これらの官能基をポリマー又は一つ若しくは複数のコポリマーに提供してもよい。または若しくは追加的に、官能基は、例えば四級化などの反応により付加してもよい。一例は、ブロモエチルアミン基を用いたPVPの四級化である。
【0144】
適切な架橋剤には、例えば二つ以上のエポキシド(例えばポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(PEGDGE))、アルデヒド、アジリジン、ハロゲン化アルキル、及びアジド官能基又はそれらの組み合わせを有する分子が挙げられる。架橋剤の一例には、アミン又は他の窒素化合物と縮合させるための、カルボン酸又は他の酸官能基を活性化する化合物が挙げられる。これらの架橋剤には、カルボジイミド又は活性N−ヒドロキシスクシンイミド若しくはイミデート官能基を有する化合物が挙げられる。架橋剤のなお他の例は、キノン(例えばテトラクロロベンゾキノン及びテトラシアノキノジメタン)及び塩化シアヌルである。他の架橋剤もまた使用してもよい。いくつかの態様では、追加の架橋剤は必要ない。架橋及び架橋剤のさらなる論考及び例は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,262,035号、第5,262,305号、第5,320,725号、第5,264,104号、第5,264,105号、第5,356,786号、及び第5,593,852号に見出される。
【0145】
別の態様では、酸化還元ポリマーは、電極表面の官能基化及びそれに次ぐ電極表面の官能基への酸化還元ポリマーの化学結合(多くの場合で共有結合)により固定化される。この種の固定化の一例は、ポリ(4−ビニルピリジン)で始まる。ポリマーのピリジン環は、部分的に[Os(bpy)Cl]+/2+(式中、bpyは2,2’−ビピリジンである)のように還元/酸化可能種と錯体化している。ピリジン環の部分は、2−ブロモエチルアミンとの反応により四級化される。次にポリマーは、例えばポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルなどのジエポキシドを使用して架橋される。
【0146】
炭素表面は、例えばジアゾニウム塩の電解還元により酵素/酸化還元種又はポリマーを付属させるために改変することができる。実例として、p−アミノ安息香酸のジアゾ化の際に形成するジアゾニウム塩の還元は、フェニルカルボン酸官能基で炭素表面を改変する。これらの官能基は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)などのカルボジイミドにより活性化することができる。
【0147】
光学的非汚損性コーティングは、典型的にはその他の方法で反応混合物に曝されるであろう、燃料電池の電極の少なくとも一部分に形成させることができる。非汚損性コーティングは、SASP装置の電極への5000ダルトン以上の分子量を有するタンパク質などの高分子の透過を防止又は遅延させる。これは、排除されるべき生体分子よりも小さな孔径を有するか、又は陽イオン若しくは陰イオン性高分子をそれぞれ追い払う陰イオン及び/若しくは陽イオン性官能基を有するポリマー性フィルム又はコーティングを用いて達成することができる。そのような生体分子は、電極及び/又は電気分解層を汚損することにより、SASP装置の有効性を低下させ、望まれる電力発生を変化させるおそれがある。電極の汚損はまた、SASP装置の実動期間を短縮するおそれがある。
【0148】
例えば、SASP装置の電極の外側を、非汚損性コーティングで完全又は部分的にコーティングしてもよい。好ましい非汚損性コーティングは、分析物を含有する液体と平衡化した場合に少なくとも20wt%の液体を含有する、ヒドロゲルなどのポリマーである。適切なポリマーの例は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,593,852号に記載されており、その例には、ポリエチレンオキシドテトラアクリレート及びポリエチレンオキシドジアクリレートなどの架橋ポリエチレンオキシドが挙げられる。例えば、典型的には8〜18キロダルトンのポリエチレンオキシド(「PEO」)鎖は、アクリレート及びメタクリレートなどの反応基で末端修飾されている。加えて、PEOのジエステルを星状デンドリマーであるPEOポリアミンと反応させて、非汚損性コーティングを形成させることができる。
【0149】
酸化還元型酵素の酸化還元中心に共通したアクセス不能の性質があることから、一つ又は複数の電子メディエータを採用することが好ましい。該電子メディエータは、非限定的にそのメディエータを酵素を物理的に混合すること、そのメディエータを直接又は間接的のいずれかで酵素に関連させて反応体又は所望の基質からの電子移動を高めること(電極への酵素複合体)を含めた任意の方法により生成させることができる。
【0150】
基質としてグルコースを利用する酵素システムの適切な電子メディエータの代表的な例には、フェロセン誘導体(例えば米国特許第4,545,382号及び第4,711,245号)、フェラチン及び/又はフェラチン、シスプラチン及び類似化合物、金コロイド化合物及び/又は誘導体、キノン、様々な有機色素、有機酸化還元ポリマー(例えばポリアニリン)、無機酸化還元マトリックス(例えばプルシャンブルー)などの電子受容体が挙げられる。
【0151】
他の好ましい態様では、好ましいメディエータ化合物は、それぞれ共役不飽和を有する二つの有機環状構造、及び環の間にはさまれた金属原子を含むことにより、金属原子が不飽和環と電子共有接触している有機金属化合物であるメタロセンである。フェロセンが広範囲の酵素のために電子移動を仲介できることから、フェロセン及び置換フェロセン化合物が特に適用可能である。
【0152】
フェロセン(ジシクロペンタジエニル鉄)及び置換フェロセン化合物は、pH非依存性の電気化学的に可逆の1電子酸化還元性質、pH非依存性の酸化還元電位、還元型の低速の自己酸化、毒性又は発ガン性の任意の公知の問題の不在、より高い酸化還元電位反応を競合することによる過度の妨害を避けるために十分低い酸化還元電位、酸素による過度の妨害を避けるために十分な酸素非感受性、及びポリマー骨格に共有結合する能力を有する特に有効なメディエータである。好ましい態様では、低分子量フェロセン種は自由に拡散する電子移動メディエータとして作用しうることから、ポリマーにそのような種は存在しない。
【0153】
フェロセンメディエーティング化合物のさらなる利点は、シクロペンタジエニル環の電子供与基又は電子吸引基の置換により広い範囲で酸化還元電位をコントロールする能力である。好ましい置換フェロセンには、非限定的に1,1’−ジメチルフェロセン、ビニルフェロセン、ヒドロキシエチルフェロセン、1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)フェロセン、カルボキシフェロセン、フェロセニルモノカルボン酸、1,1’−ジカルボキシフェロセン、及びトリメチルアミノフェロセンが挙げられる。
【0154】
他の好ましいメディエータ化合物には、ルテノセン、ジベンゼンクロム、フェナジン及びフェナジン誘導体、ビオロゲン、リボフラビン、p−ベンゾキノン、及びナフタキノンが挙げられる。一般に、ポリマー骨格に共有結合でき、SCEに対して−0.2〜0.6Vの範囲の酸化還元電位を有する酸化還元化合物が好ましい。
【0155】
ある好ましい態様では、供与体/受容体リレーは、柔軟なポリマー骨格に共有結合している。本発明の別の局面では、柔軟なポリマー骨格が、シロキサンポリマーにより提供される。回転に事実上エネルギー障壁を有さないポリシロキサン骨格の独特な柔軟性は、これらのリレー部分を酵素分子と密接に相互作用させ、電子移動部分との密な接触を達成させる。
【0156】
一般に、様々な態様に採用される触媒は、+0.4ボルトよりも大きな基準還元電位を有する有機金属陽イオン(電子触媒)を含みうる。例示的な電子触媒は、オスミウム、ルテニウム、鉄、ニッケル、ロジウム、レニウム、及びコバルト錯体などの遷移金属錯体である。これらの錯体を使用した好ましい有機金属陽イオンは、大きな電子自己交換速度を見込む大きな有機芳香族配位子を含む。
【0157】
一般に、電子触媒(電子移動メディエータ又は酸化還元ポリマー)は、電子メディエータの基準還元電位を減少させることにより電子伝導体での電子の放出を促進する物質である。
【0158】
電子触媒は、採用された場合に電子の効率的な移動を促進する濃度で存在することが好ましい。好ましくは、電子触媒は酵素固定化材料に電子を伝導させる濃度で存在する。特に、電子触媒は約100mM〜約3M、さらに好ましくは約250mM〜約2.25M、なおさらに好ましくは約500mM〜約2M、最も好ましくは約1.0M〜約1.5Mの濃度で存在する。
【0159】
他の態様では、電子移動メディエータ(例えばオスミウム若しくはルテニウム錯体、又は芳香族有機陽イオン)を含むようにさらに修飾された、酸化還元ポリマーで修飾されたイオン交換膜を採用することができる。本発明の実施に有用な多くの電子輸送メディエータ又は酸化還元ポリマーは、当業界で公知であり、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,262,035号、第5,262,305号、第5,320,725号、第5,264,105号、第5,356,786号、第5,593,852号、第5,665,222号、第6,294,281号、及び第6,531,239号に記載されている。
【0160】
キノン分子誘導体は、特に適切な電子メディエータである。この目的のために使用される場合に、その分子は、キノン骨格に加えて、それとポリマー又は酵素との関連(「メディエータ複合体」)を可能にできる官能基を有することが好ましい。好ましいキノン骨格は、ナフトキノン分子誘導体を含むことが好ましい。さらに、アントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム(AQS)誘導体又は2−メチル−1,4−ナフトキノン(VK)誘導体から構成されるメディエータがさらに好ましい。追加的に好ましい電子メディエータは、2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)及びその誘導体である。
【0161】
電子メディエータ基と関連するための好ましいポリマーは、柔軟な骨格を有し、例えばポリシロキサン、ポリホスファゼン、ポリ(エチレンオキシド)及びポリ(プロピレンオキシド)であり、並びに/又はアミノ基、カルボキシル基、ホルミル基、ヒドロキシル基、ハロゲン基、ジヒドロ−2,5−フランジオン−1−イル基、及びグリシジル基から成る群より選択される二つ以上の官能基を有する。適切なポリマーの例には、とりわけポリビニルイミダゾール、ポリリシン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、ポリピロール、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリプロピレンと無水マレイン酸のグラフトコポリマー、及びオルトクレゾールノボラックエポキシ樹脂が挙げられる。メディエータは、好ましくはアミノ基、カルボキシル基、クロロホルミル基、スクシンイミドオキシカルボニル基、アルキル金属スルホスクシンイミドオキシカルボニル基、ペンタフルオロフェニルオキシカルボニル基、p−ニトロフェニルオキシカルボニル基、ヒドロキシル基、ホルミル基、ハロゲン基、マレイミド基、イソチオシアネート基、及びオキシラニル基から成る群より選択される官能基で修飾されている。米国特許第4,224,125号は、保持膜を通過して大部分の溶液に拡散するには大きすぎることにより電極表面近くに固定化されたままにするために、水溶性メディエータがポリマー形態である酵素電極を開示している。ポリマー性酸化還元メディエータは、それが含まれる近傍で酵素触媒工程により還元され、電極により再酸化される。
【0162】
有用な酸化還元ポリマー及びそれらの製造方法の例は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,262,035号、第5,262,305号、第5,320,725号、第5,264,104号、第5,264,105号、第5,356,786号、第5,593,852号、及び第5,665,222号に記載されている。
【0163】
採用されたメディエータは、妨害物質、特に酸素の存在に比較的非感受性であることが好ましい。他の好ましい態様では、メディエータは、分析したい溶液にそれを不溶性にすることによりメディエーティング種が電極表面から拡散することを防止するように、電極に付属又はその他の方法で関連する。
【0164】
メディエータ分子(又は下記のメディエータ複合体)は、採用された酵素システムと適正に相互作用するように、必要に応じて親水性又は疎水性でありうる。本発明の効果を損なわずに、2種類以上のメディエータ部分を組み合わせて使用することができる。
【0165】
追加的に、官能基とメディエータ分子の間にスペーサ分子を用意して、両者から適切な距離を維持することができる。スペーサ分子の特定の長さは、メディエータとしての機能を損なわずにメディエータ分子が結合するポリマー又は酵素の種類に応じて適切に変化させることができる。スペーサ分子の例には、炭化水素鎖、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペプチドなどが挙げられる。スペーサ分子は、好ましくは約3〜50個の炭素原子の範囲内の長さを有する。
【0166】
好ましい態様では、陰極は酸化剤、好ましくは酸素から水への還元を触媒することのできる酵素又は酵素集合、及び場合により陰極と酵素の間の電気的接触を高めるメディエータと関連している。そのような酵素又は酵素集合の例は、ラッカーゼ及びチトクロームc/チトクロームオキシダーゼ(COx)から形成される複合体である。例えばラッカーゼの場合、電子は最終的に酸化剤(例えば分子状酸素(O)に移動し、水が回収される。この例では、酵素は4個の電子を貯蔵し、O還元経路に中間体を放出しない。チトクロームc/チトクロームオキシダーゼ(COx)の場合に、チトクロームオキシダーゼへのチトクロームc介在性電子移動の結果として、酸素から水への4電解還元もまた生じる。
【0167】
本明細書に記載された態様は、添付の図面に示されたものを含めて、陽極と陰極の間に膜が存在しても不在であっても動作できることに留意されたい。膜が不在下の動作は、顕著な利点を本発明の態様に与えることができる。
【0168】
SASP検出装置/方法は、とりわけそれが採用された特定の用途に向けた多様な形式で利用することができる。以下に例示される態様は、本発明を例証しようとするものであり、本発明の範囲を何らかの方法で限定するものとみなしてはならない。
【0169】
実施例I
図3を参照するが、この図は場合により計器に使用することができ、流動通過型の「チップ」設計を採用するSASP装置を図示したものである。しかし、本発明の概念に基づく多数の他の組み立て/形式を製作できることを認識および理解しなければならない。
【0170】
図3は、本発明による一種の「流動通過」型態様の尺度によらない代表例を示す。液体は、アクセスポート40(流路30でアクセスポート50(これもまた流路30で連絡する)に連絡する)から流動することができる。
【0171】
流路30に位置するのは、一つ又は複数の反応ゾーン(20)である(その一例を図6に代表的に示す)。反応ゾーン20は、一つ又は複数の電極を備え、その非限定的な代表例を図7に示す。
【0172】
動作では、ターゲット分析物(図示せず)を含有すると疑われる試料を、本発明の酵素/酸化還元反応の不可欠な要素にコンジュゲーションした第一抗体を含有する試薬(図示せず)と接触させる(例えばグルコースオキシダーゼ「GOx」)。場合により、他の試薬を必要により混ぜることができる。存在するターゲット分析物(図示せず)に結合している、GOxとコンジュゲーションした抗体を、アクセスポート40を介してチップ10に導入する。試料の容積は流路30を通り抜けアクセスポート50を通過して出る。そのような通り抜けの間に、試料の容積は反応ゾーン20を通り抜ける。反応ゾーン(20)の数は、行おうとする検査及び該検査が適用される用途に依存し、必要に応じて変動することがある。反応ゾーンの数は、1〜1000の範囲内、好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜25、さらに好ましくは2〜20そして最も好ましくは1〜10若しくは2〜10、又はその代わりに1〜5若しくは2〜5でありうる。
【0173】
反応ゾーン20に達すると、試料に存在する任意のターゲット分析物分子は第二抗体により捕獲されるはずであり、それでそのように生成したラベル化「サンドイッチ」は「固定化」される。それにより、ゾーン20におけるこのサンドイッチ固定化は、ゾーン20内の電極近辺に酵素を位置づけ、それにより酸化還元生体触媒及び電子流の発生を可能にし、それは、今度は酵素基質(図示せず)の存在下でシグナリング事象に直接又は間接的に動力を供給する。好ましくはアクセスポート40を介して酵素基質(図示せず)が添加される。
【0174】
例えば従来技術のグルコースバイオセンサ及び他の診断装置と対照的に、反応ゾーン20における酵素/酸化還元要素のサンドイッチ捕獲は、明白に、捕獲された酵素の基質を検出するためではない。むしろ、この実施例では抗体−コンジュゲーションされたGOxの配置は、グルコースの存在または量を検出するのではなく、その代わりにその場で発生した生体燃料電池として使用され、(例えばアクセスポート40を介して)グルコースが添加された場合に、酵素酸化還元システムが電子流を生成することができることによって、本発明の様々な態様により信号を発生することのできるシステムを直接又は間接的に提示する。したがって、酵素基質の添加の不在下では、シグナリング事象は起こることができない(又はその代わりに、識別可能な信号が可能なように基質が存在する場合に比べて、十分に低レベルで起こる)。
【0175】
好ましい動作では、ターゲット分析物を含有する(又は含有すると疑われる)試料を、採用された特定のシステムに適した緩衝液に懸濁し、流動通過型チップに導入する(手動又は自動手段)。基質は、該RF回路系に関連した捕獲部分により捕獲される。適切な捕獲部分には、RF回路/電極複合体近辺に反応を配置させるようにターゲット/酵素システムを選択的に捕獲できる任意の部分が挙げられる。好ましい捕獲部分には、抗体、より好ましくはモノクローナル抗体が挙げられる。捕獲複合体は、好ましくはターゲット分析物を、電極/回路複合体を有する酵素複合体(又はその構成要素)と関連させるように設計される。好ましい態様では、流動通過型チップは、場合により未結合の試薬を除去するためにフラッシュされる。次に、触媒/酸化還元反応による電子の触媒発生を見込むように、酵素/酸化還元複合体のための特異的基質は、流動通過型チップのポート(50)に加えられる。したがって、ターゲット分析物が存在する場合に、結果として生じる複合体は、電極/RF回路複合体に関連する全ての必要な触媒/酸化還元システムの構成要素を含むことにより、検出可能なRF信号の発生を招くであろう。
【0176】
好ましい態様では、酵素/酸化還元基質は、モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は10倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は100倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は1000倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は10000倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は100000倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は1000000倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は1000000倍モル過剰よりも多く提供される。
【0177】
実施例II
例えば従来技術のグルコースバイオセンサ及び他の診断装置とは対照的に、反応ゾーンにおける酵素/酸化還元要素のサンドイッチ捕獲は、明白に、捕獲された酵素の基質を検出するためではない。むしろ、この実施例では抗体−コンジュゲーションされたGOxの配置はグルコースの存在又は量を検出するのではなく、その代わりにその場で発生した生体燃料電池として使用され、それは、グルコースが添加された場合に、酵素酸化還元システムは電子流を生成することができることによって本発明の様々な態様により信号を発生することのできるシステムを直接又は間接的に提示する。したがって、酵素基質の添加の不在下では、シグナリング事象は起こることができない(又はその代わりに、識別可能な信号が可能なように基質が存在する場合に比べて、十分に低レベルで起こる)。
【0178】
好ましい態様では、反応ゾーンは、酸化還元酵素システムによる基質の該還元/酸化から電子の移動を許すために適した方法でRF回路系に関連する電極を備え、その結果として、電子流が検出可能な信号を生成するためにRF回路系により必要とされるポーザ(poser)を提供するように機能する。
【0179】
好ましい態様では、酵素/酸化還元基質は、モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は10倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は100倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は1000倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は10000倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は100000倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は1000000倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は1000000倍モル過剰よりも多く提供される。
【0180】
好ましい態様では、RF信号は携帯型検出器により検出される。さらに好ましい態様では、RF信号は電池式の携帯型検出器により検出される。さらに好ましい態様では、RF信号は腕時計型検出器により検出される。
【0181】
実施例III
好ましい動作では、ターゲット分析物を含有する(又は含有すると疑われる)試料を、採用された特定のシステムに適した緩衝液に懸濁し、装置本体を通過する流れに導入する(手動又は自動手段)。基質は、直接又は間接的に電極に関連した捕獲部分により反応ゾーン内で捕獲され、電極は今度は電子回路(例えばRF回路系)と直接又は間接的に関連される。適切な捕獲部分には、RF回路/電極複合体近辺に反応を配置するようにターゲット/酵素システムを選択的に捕獲できる任意の部分が挙げられる。好ましい捕獲部分には、核酸及び/又は抗体、より好ましくはモノクローナル抗体が挙げられる。捕獲複合体は、好ましくはターゲット分析物を、電極/回路複合体を有する酵素複合体(又はその構成要素)と関連させるように設計される。
【0182】
好ましい態様では、流動通過型チップは、場合により未結合の試薬を除去するためにフラッシュされる。次に、触媒/酸化還元反応により電子の触媒発生を見込むように、酵素/酸化還元複合体のための特異的基質が、装置を介して加えられる。したがって、ターゲット分析物が存在する場合に、結果として生じた複合体は、電極/RF回路複合体に関連する全ての必要な触媒/酸化還元システムの構成要素を含むことにより、検出可能なRF信号の発生を招くであろう。
【0183】
好ましい態様では、酵素/酸化還元基質は、モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は10倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は100倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は1000倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は10000倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は100000倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は1000000倍モル過剰で提供される。さらに好ましい態様では、基質は1000000倍モル過剰よりも多く提供される。
【0184】
実施例IV
この特定の態様では、グルコースの酸化反応は陽極で進行し、酸素の還元反応は陰極で進行する。グルコース酸化に必要な酵素(この場合グルコースオキシダーゼ(GOx))及びメディエータは、システムからのグルコースの酸化反応から放出された電子を受け取るために陽極で作用する。GOxは、反応ゾーンでSASP反応により陽極と関連している(例えば図1の要素20を参照されたい)。電子は、示された回路を介してシステムから受け取られ、その回路は、とりわけRF信号を含めた、本発明による多様な信号を生成することができる。グルコースは本実施例における「燃料」として使用される。
【0185】
実施例V
この特定の態様では、グルコースの酸化反応は陽極で進行し、酸素の還元反応は陰極で進行する。グルコース酸化に必要な酵素(この場合グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH))、補酵素(NADH)、ジホラーゼ、及びメディエータは、グルコースの酸化反応から放出された電子をシステムから受け取るために陽極で作用する。GDHは、反応ゾーンでSASP反応により陽極と関連している(例えば図1の要素20を参照されたい)。電子は、示された回路を介してシステムから受け取られ、その回路は、とりわけRF信号を含めた、本発明による多様な信号を生成することができる。グルコースは本実施例における「燃料」として使用される。
【0186】
例えば図8及び9のシステムを含めた本発明のSASP装置及び方法の好ましい陽極で、典型的には生体システムで見出される一つ又は複数の糖、アルコール、及び/又はカルボン酸は、電解酸化される。陽極還元体の電解酸化のための好ましい陽極酵素には、例えばグルコースデヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、キノ血液タンパク質アルコールデヒドロゲナーゼ、ピラノースオキシダーゼ、オリゴ糖デヒドロゲナーゼ、及び乳酸オキシダーゼが挙げられる。
【0187】
陽極の一態様は、結合剤としてポリポロピレン又はポリテトラフルオロエチレンを用いた高い表面積のグラファイト繊維/カーボンブラック電極を用いて形成される。次に、陽極酸化還元ポリマー及び陽極酵素が、陽極に配置される。
【0188】
陽極電位は、(a)陽極酵素の酸化還元電位、(b)陽極での陽極還元体の濃度、及び(c)陽極酸化還元ポリマーの酸化還元電位により限定されうる。公知の陽極酵素について報告された酸化還元電位は、基準カロメル電極(SCE)に対して約−0.4V〜約−0.5Vの範囲である。典型的には、好ましい陽極酸化還元ポリマーは、陽極酵素の酸化還元電位から少なくとも約0.1Vプラスの酸化還元電位を有する。したがって、好ましい陽極酸化還元ポリマーは、例えば約−0.3V〜−0.4V(SCE)の酸化還元電位を有しうるが、陽極酸化還元ポリマーの電位は、少なくとも部分的に陽極酸化還元酵素の酸化還元電位に応じて、より高い又はより低いことがある。
【0189】
いくつかの態様では、一つ又は複数の追加の酵素が陽極近辺に提供されるか、又は陽極に配置される。追加の一つ又は複数の酵素はデンプン、セルロース、多糖、オリゴ糖、二糖、及び三糖を、基質として使用される糖、アルコール、及び/又はカルボン酸に分解する。そのような触媒の例には、bacillus stearothermophilus由来α−アミラーゼ、aspergillus由来β−アミラーゼ、rhizopus niveus由来グルカン−1,4−α−グルコシダーゼ、aspergillus niger由来セルラーゼ、aspergillus niger由来エンド−1−3(4)−β−グルカナーゼ、leuconostoc mesenteroides由来デキストラナーゼ、bacillus stearothermophilus由来α−グルコシダーゼ、caldocellum saccharolyticum由来β−グルコシダーゼ、aspergillus由来β−ガラクトシダーゼ、酵母由来β−フルクトフラノシリダーゼ及びaspergillus oryzae由来ラクターゼが挙げられる。
【0190】
実施例VI
側面図及び正面図から、一緒になって本発明のディスポーザブル反応チャンバーカートリッジの一例を示す図6及び7を参照されたい。本発明の特定の特徴が野外における自家動力装置としてそれを採用できることであることを念頭に置くと、ディスポーザブルカートリッジ又は類似の低コストで頑丈な反応チャンバーの使用が重要になる。図6に示すように、反応チャンバーはフランジ150に取り付けられ、フランジに反応チャンバー格納領域130が付属している。格納領域は、フランジ150の前面と一緒に反応チャンバーを確定し、慣例的に低コストの成形プラスチック又は押出しプラスチック製である。
【0191】
図7にさらに十分に示すように、エンクロージャ130及び取り付けフランジ150により確定される反応チャンバーは容積が小さい。本発明の重要な局面は、小容積の試料及びターゲットを検査して検出可能な信号を発生できることである。陰極110及び陽極120は、フランジ150の表面に塗布されるか、又はその他の方法でそこに取り付けられ、反応チャンバーまで延長される。それらを膜140で保護してもよい。好ましい態様では、陰極110は、Nafion(商標)のようなプロトン交換膜から調製されたものなどの、上に噴霧又は塗布できる膜に覆われている。
【0192】
実施例VII
本発明の多くの態様では、図6及び7のディスポーザブル反応チャンバーは、試料が得られる野外で望ましく読み出され、そこでターゲットの存在及び量を反映する信号が取得される。これらのために、必要なハードウェアを含み適切なソフトウェアを含む、図8の下側に示されるもののような、図6及び7のディスポーザブル反応チャンバーを受けるように設計された自家動力装置を展開してもよい。この装置200は、凹凸のプラスチック製であり、類似材料のキャップ(図9の330)により接続され、それらは一緒になって、陰極110と陽極120の間の電位又は電流を検出するためのメータ又は感知装置を含めた、必要なハードウェア、ソフトウェア及びファームウェアを内部に持ち、それらを保護する。このために、検出装置200の下側半分は、ホールディング装置(スクリュー、ボルト、リベットなど)により図9に図示した上面330にしっかりと取り付けられている。図示したように、装置200はポート260を備え、そこから導線をRFID装置240又はコンピュータ(ノート型又はiTouch(商標)又は類似のPDA又は携帯電話)250などの様々な補助装置に接続してもよい。装置200に提供されるメータから直接読み出すことのできる信号を補助装置を介して保存させてもよいし離れた場所に放送してもよい。
【0193】
装置200に、ディスポーザブル反応チャンバー100を入れようとする入れ物又はオープニング220を提供する。示すように、陰極110及び陽極120から電流を受けるように有線電気接触を入れ物又はスロットに容易する。これらをメータ又はギャップ電位測定装置に流してもよいし、前述のように、検出された信号を求めてその後アクセスしてもよいし、信号及び関連するデータを送信することもできるコンピュータなどのさらに洗練された装置、若しくはデータ保存手段をUSBケーブルなどの単純な電子接続により接続してもよい。
【0194】
反応チャンバーに基質を添加したときに信号を受信、測定及び送信するための完全に野外展開可能な装置を図9に示すが、この図に装置300を示す。カートリッジが挿入されている基部320は、図示したように耐損傷性トップ330にしっかりと固定されている。これらは、一般に310に示すように、電位を信号として検出するために必要な配線、ソフトウェア及びハードウェアを含めた装置内部を挟み保護する。補助装置と相互接続するために装置340及び350から導線を延長してもよい。
【0195】
実施例VIII
一態様では、陰極は典型的には生体液に溶解しているか又は空気に由来する気体状Oを還元する。燃料電池の別の態様では、陰極の上又は陰極から離れた非酵素触媒電極反応又は酵素触媒反応において過酸化水素が形成し、次に過酸化水素が陰極で電解還元される。O及びHの還元のために好ましい陰極酵素には、例えばチロシナーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ダイズ・ペルオキシダーゼ、他のペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、及び/又はチトクロームCペルオキシダーゼが挙げられる。
【0196】
陰極の一態様は、陰極の少なくとも一部の上に形成された多孔性膜を含む。多孔性膜は、O及び/又はH透過性の疎水性外面並びにO及びH透過性の親水性内面を有する。別の態様では、陰極は、アルキルトリアルコキシシラン前駆体及びカーボンブラックから形成された、疎水的に改変された多孔性シリケート炭素コンポジットの外層を含む。内層は親水性シリカ−炭素コンポジットである。別の態様では、電極は、微孔性テフロンPTFEが結合したアセチレン/カーボンブラック電極である。内面は、それを親水性にするためにプラズマ処理されている。酸化還元ポリマー及び酵素は、陰極の内面に沈着される。陰極が血液又は体液由来のOに曝される場合に、陰極はOを輸送する生体液と接触する親水性表面だけを含んでいてもよい。
【0197】
陰極電位は、(a)陰極酵素の酸化還元電位、(b)陰極での陰極酸化体の濃度、及び(c)陰極酸化還元ポリマーの酸化還元電位により限定されうる。公知のO還元酵素について報告された酸化還元電位は、基準カロメル電極(SCE)に対して約+0.3V〜約+0.6Vの範囲である。典型的には、好ましい陰極酸化還元ポリマーは、酵素の酸化還元電位から少なくとも約0.1Vマイナスの酸化還元電位を有する。したがって、好ましい酸化還元ポリマーは、例えば約+0.4〜+0.5V(SCE)の酸化還元電位を有するが、陰極酸化還元ポリマーの電位は、少なくとも部分的に陰極酸化還元酵素の酸化還元電位に応じて、より高い又はより低いことがある。
【0198】
陰極酸化還元ポリマーとして使用されるオスミウム錯体について、中心のオスミウム原子の可能な配位部位のうち典型的には少なくとも4個、通常は少なくとも5個、多くの場合に6個全てが窒素原子により占有されている。または、陰極酸化還元ポリマーとして使用されるルテニウム錯体について、典型的には可能な配位部位のうち4個以下、通常は3個以下が窒素で占有されている。
【0199】
架橋した酸化還元ポリマーに基づく酵素電極システムの利点がいくつかある。第一に、電極表面に架橋フィルムを使用することは、多くの場合に従来のシステムで電極表面に近接した小さな容積に酵素を制限するために必要とされる膜の必要性を排除する。したがって、架橋酸化還元フィルムの使用は、酵素電極の設計及び製造を簡素化する傾向にある。第二に、電極が生産される工程は比較的単純で、再現性があり、容易に自動化することができる。第三に、酵素はそれとポリマーマトリックスとの相互作用により安定化されることにより、熱変性を遅延させることができる。また、酵素は、ポリマーフィルムを通過して拡散するには大きすぎる、溶液中のプロテアーゼによる攻撃から物理的に保護されうる。第四に、これらの材料の多用途性は、特定の用途のために性質を合わせることを可能にする。例えば、酸化還元電位、親水性及びポリマーの電荷は、架橋法でできるように調整することができる。第五に、ポリマーの適切な設計により、電極表面への妨害電子反応性物質の輸送及び/又はこれらの表面へのそれらの吸着を遅延させることができる。第六に、結果として生じた電極は、一般に機械的に凹凸にされており、保存時に典型的には優れた安定性を示す。第七に、酵素は多数の表面で急速に変性することが知られているが、ポリマーは見たところ電極表面から酵素を保護する傾向にある。したがって、事実上任意の電極表面をこれらの酵素電極のために使用することができる。追加的に、そのようなポリマーは、一般に実質的に生体適合性と思われる。
【0200】
好ましい一態様では、水溶性架橋剤であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEG−DGE、図3)は、アミン官能基を有する酸化還元化合物との、そして酵素のリシン基のアミン官能基との反応に使用される。エポキシドとアミンの間の反応は、(1)低分子量種を放出せず;(2)局所pHを大きくは変化させず;(3)酸化還元化合物または酵素のいずれかの電荷を大きくは変化させず;そして(4)いくつかの異なる酵素と適合性であることから、その反応は特に好都合である。PEG−DGEはまた、いくつかの鎖長で市販されている。PEG−DGEとアミンの間の反応は希釈水溶液中で非常にゆっくりと進行する。よって、全ての反応体を適用段階の前にただ一つの溶液中で混合してもよく、これは電極の製造を大きく簡素化する。次に、溶液が電極表面で乾燥する場合に、架橋反応は完了まで進行しうる。フィルムの硬化時間は、室温で24〜48時間である。
【0201】
実施例IX
酵素の、この実施例ではグルコースオキシダーゼの固定化のためのプロトコル例は、以下の通りである。
【0202】
A.カルボジイミド処理
1.Prototech電極材料のシートから適切なサイズの電極片を切り出す。
2.PTFEコーティングされた結合剤及びバッキングが徹底的に湿潤することを確実にするために、電極を約5分間エタノール中に浸す。
3.エタノールから電極を取り出し、それらを蒸留水で徹底的に洗浄し、痕跡量のエタノールを全て除去する。
4.0.1M酢酸緩衝液(pH4.5)に0.15M 1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノ)カルボジイミドp−メチルトルエンスルホン酸溶液を5ml(又はそれ未満)調製し、この中に室温で90分間電極を入れる。機械的振盪機を用いた静かな撹拌を利用してもよい。電極が溶液表面に浮くようならば、電極が十分に湿っていなかったことが原因であるので、段階2から処理を繰り返すべきである。
5.電極を取り出し、それらを蒸留水で徹底的に洗浄する。静かに機械的撹拌しながら、新鮮調製したグルコースオキシダーゼの酢酸緩衝液(pH5.6)溶液(5.0mg/ml)にそれらを室温で90分間入れる。
6.酵素溶液から電極を取り出し、それらを0.1M酢酸緩衝液で徹底的にすすぐ。今や電極は使用できる状態である。
7.電極を0.1M酢酸緩衝液(pH5.6)中で4℃で保存する。
【0203】
B.カルボニルジイミダゾール処理
1.上記段階1を実施し、段階2及び3を省略する。
2.N,N’−カルボニルジイミダゾールの無水ジメチルホルムアミド溶液(40mg/ml)を調製する。
3.所望であれば静かに機械的撹拌しながらこの溶液に電極を室温で90分間入れる。
4.溶液から電極を取り出し、過剰のカルボニルジイミダゾール溶液を乾燥させてから、新鮮調製したグルコースオキシダーゼ溶液にそれらをさらに90分間入れる。
5.上記段階6及び7を実施する。
【0204】
C.DFDNB処理
1.上記Aの段階1〜3を実施する。
2.ホウ酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH8.5)中で電極を徹底的に洗浄する。
3.1,6−ジニトロ−3,4−ジフルオロベンゼンのメタノール溶液(0.1021g/5ml)を調製し、この中に電極を室温で10分間入れる。
4.電極を取り出し、それらをホウ酸緩衝液で徹底的に洗浄してから、グルコースオキシダーゼ溶液にそれらを室温でさらに90分間入れる。
5.上記Aの段階6及び7を実施する。
【0205】
様々な鎖長の二官能性薬剤、例えばジメチルマロンイミデート又はジメチルスベルイミデートなどのジイミデートを含めた他の種類のカップリング剤を固定化工程のために使用してもよい。
【0206】
その代わりに、樹脂に結合した白金化又はパラジウム化された炭素粉末支持体に酵素を単純吸着させること、すなわち架橋を行わないことが、一部の酵素、特にグルコースオキシダーゼの場合に有効なことが見い出された。
【0207】
必ずではなく通常は、固定化酵素の表層は、適切に多孔性の、例えばポリカーボネート製のフィルム又は膜の適用により物理的に保護されている。そのフィルム又は膜は、決定されるべき酵素基質(グルコース)がもちろん透過可能でなければならない。そのような膜は、センサの応答時間を増大させる点では幾分不利であるが、それでもなお、そのような膜を用いても、本センサは、従来の酵素電極と適合性の、そして多くの場合でそれよりも実質的に良好な応答時間が可能である。
【0208】
他の好ましい態様と合わせて利用される代表的な電極の物理的寸法並びに出力及び電圧などの動作上のパラメータは、少なくとも部分的にSASP装置の構成要素の関数である。SASP装置の開回路電圧は、例えば0.5ボルト〜1.2ボルトの範囲でありうるが、本発明のSASP装置はまた、より大きい又はより小さい電圧を生成しうる。最大力点での電圧は、例えば0.4〜0.8ボルトの範囲でありうる。加えて、2個以上の燃料電池を直列及び/又は並列で組み合わせて、より大きい電圧及び/又は電流を有する複合SASP装置を形成させることができる。SASP装置の容量測定出力密度は、例えば約0.5mW/cm3〜約5mW/cm3の範囲のことがあるが、しかし、SASP装置はまた、より高い又はより低い容量測定出力密度で形成することができる。重量測定出力密度は、例えば約5mW/g〜約50W/gの範囲のことがあるが、しかし、燃料電池はまた、より高い又はより低い重量測定出力密度で形成することができる。出力密度は、SASP装置による液体の流動に依存する。一般に、流速を増加させると出力密度が増加する。
【0209】
実施例X
炭化の非限定的な例を以下に提供する。その後の酵素固定化を容易に許す任意の適切な炭素又はグラファイト粉末をカーボン粉末として使用することができ、このために、酵素にわずかしか結合しない、よりガラス質又はガラス状の炭素とは対照的に、カルボン酸エステル、アミノ及びイオウ−含有基などの高密度の官能基を有する炭素粉末を表面に使用すべきである。粒子サイズは3〜50nm、さらに通常は5〜30nmの範囲でありうる。
【0210】
任意の好都合な方法で、例えば蒸着、電気化学沈着又はコロイド懸濁液からの単純吸着(これはある態様では好ましい)で、白金(又はパラジウム)を炭素粒子に沈着させて、炭素の重量に対して1〜20重量%、好ましくは5〜15%の白金群金属のロードを得てもよい。しかし、これらの限度は、決定的というよりもむしろ実際的である。約1%未満の白金群金属で、出力信号は、実際問題として、非常に高感度の器具を除くと低すぎて測定できないレベルまで降下する。約20%を超えると、白金群金属のロードは非経済的になり、応答時間、感度などに関して追加的な利益をほとんど有さない。実際に、極端に高い金属ロードでは、感度は降下し始める。好ましい技法では、炭素粉末は、炭素粉末の存在下でクロロ白金酸などの白金化合物若しくはパラジウム化合物の、又はなおさらに好ましくは白金若しくはパラジウムと酸化可能な配位子との錯体の酸化的分解により白金化又はパラジウム化されることにより、例えば、GB-A-1,357,494、米国特許第4,044,193号及び第4,166,143号に教示される方法で炭素粒子表面に直接コロイドサイズの白金又はパラジウムを沈着させる。
【0211】
白金化又はパラジウム化の後で、適切な撥水性ボンディングレジン、好ましくはポリテトラフルオロエチレンなどの、フルオロカーボン樹脂を使用して、白金化又はパラジウム化された炭素粉末を成形し、該樹脂に結合した白金化若しくはパラジウム化炭素粉末粒子から本質的に成る完全自己支持性多孔質成形構造、又はさらに通常は、例えば金属、炭素若しくはグラファイトの電気導体支持体に結合した該樹脂結合粒子の多孔質成形表面層のいずれかを形成させる。成形された、樹脂に結合した白金化炭素層に特に好ましい支持体材料は、米国特許第4,229,490号により教示されるようなカーボン紙又は米国特許第4,293,396号により教示される通気孔カーボンクロスである。最大多孔度を維持するために、結合剤として使用される樹脂の量は、機械的完全性及び電極層の安定性を与えるために必要な最小量であるべきであり、さらに大きな厚さを採用してもよいとはいえ、該層は通常は約0.1〜0.5mmを超えない厚さを有する。構造的完全性、機械的強度及び多孔度の必要性を仮定すると、バインディングレジンの量は重大ではなく、白金化又はパラジウム化炭素粉末の量に対して最小で5又は10重量%〜最大で80重量%の範囲でありうる、さらに通常には30〜70重量%の範囲の量を有する。導体又は半導体の樹脂を含めた様々な樹脂を使用することができるが、好ましいのは合成フルオロカーボン樹脂、特にポリエトラフルオロエチレン(polyetrafluoroethylene)である。酸化工程に酸素が少しであるが必ず必要であることを考慮すると、結合剤が酸素透過性であることが不可欠である。
【0212】
米国特許第4,293,396号に開示された代替では、白金化炭素粒子は予備成形された多孔質カーボンクロスに含浸され、フルオロカーボン樹脂、好ましくはポリテトラフルオロエチレンを使用してそれに結合される。しかし、本発明はPrototech材料の使用に限定されるのではなく、樹脂結合及び成形された白金化又はパラジウム化炭素粉末を含む他の類似の支持体材料を包含することを了解されたい。特に、カーボン紙支持体メンバーを含む種類のいわゆるカーボン紙電極である、米国特許第4,229,490号の燃料電池電極として開示された種類の材料を使用してもよいことが考えられており、その支持体メンバーは、好ましくはポリテトラフルオロエチレンなどの撥水性樹脂を含浸され、その上に白金黒と、撥水性樹脂に、好ましくはここでもポリテトラフルオロエチレンに結合した炭素又はグラファイト粒子との均一混合物を含む、樹脂に結合した触媒層が例えばスクリーン印刷により沈着されている。
【0213】
樹脂に結合した、白金化又はパラジウム化炭素支持体表面への酵素の固定化は、多様な十分に確立された固定化技法、例えばカルボジイミド又はカルボニルジイミダゾール試薬との共有結合形成、1,6−ジニトロ−3,4−ジフルオロベンゼン(DFDNB)との共有結合形成、又はグルタルアルデヒドとの架橋形成を使用して実施することができる。
【0214】
実施例XI
捕獲2オリゴヌクレオチド#100003_15_アミノ(5’アミノを修飾された15ヌクレオチド長)は、標準的なホスホルアミダイト化学反応(TriLink BioTechnologies, Inc. San Diego, CA)を使用して合成する。
【表1】

【0215】
次に、NAP−5カラム(NaHCO/NaClの0.1M/0.15M緩衝液、pH8.3)を使用してこのオリゴヌクレオチドを精製する。0.2mlの100μMオリゴヌクレオチド#100003_15_アミノ水溶液をカラムにロードする。最初に溶出した0.3mlの後に0.8mlの溶出液を収集及び定量する。A260の読み取りに基づき90%を超える回収率が観察される。続いて精製されたオリゴヌクレオチドをスクシンイミジル4−ホルミル安息香酸(C6−SFB)を使用して化学修飾する。790μlの精製オリゴヌクレオチド及び36μlのC6−SFB(20mMのDMF溶液)を混合し(1:40の比)、室温で2時間インキュベーションする。
【0216】
5ml HiTrap(GE)脱塩カラムを使用して反応生成物を清浄にし、溶出液1.5mlを収集する。A260の読み取りに基づき、80%を超えるオリゴヌクレオチド−C6−SFBの回収率が観察される。
【0217】
Aspergillus niger由来グルコースオキシダーゼ(Fluka, 49180)をNAP−5カラム(1×PBS緩衝液、pH7.2)を使用して精製する。
【0218】
0.25mlのグルコースオキシダーゼ(5mg/ml)をカラムにロードする。最初に溶出した0.25mlの後に1mlの溶出液を収集及び定量する。A280の読み取りに基づき、1.25mg/ml(7.8μM)のグルコースオキシダーゼの回収が観察される。
【0219】
続いて、精製されたグルコースオキシダーゼをスクシンイミジル4−ヒドラジノニコチオネートアセトンヒドラゾン(C6−SANH)を使用して化学修飾する。950μlの7.8μMグルコースオキシダーゼ及び10.4μlのC6−SANH(10mMのDMF溶液)を混合し(1:20の比)、室温で30分間インキュベーションする。5ml HiTrap(GE)脱塩カラムを使用して反応生成物を清浄にし、溶出液1.25mlを収集する。BCA/BSA(Pierce製BCAアッセイ、カタログ番号23225/23227; Pierce製Bradfordアッセイ、カタログ番号23236)アッセイを使用して、回収されたグルコースオキシダーゼ−C6−SANHの濃度を決定する(典型的には約1mg/ml、95%を超える回収率)。
【0220】
グルコースオキシダーゼ及びオリゴヌクレオチドのコンジュゲーションは、典型的には1010μlのグルコースオキシダーゼ−C6−SANHと750μlのオリゴヌクレオチド−C6−SFBを1:2のモル比で混合することにより達成され、室温で一晩インキュベーションされる。結果として生じたコンジュゲートをTBE/尿素ゲルで分析し、MiniQ FPLCを使用して精製する。標準的な勾配アプローチは、MiniQ 4.6/50 PEカラム(GE Healthcare、カタログ番号17-5177-01)、流速0.25ml/min、検出280nm、緩衝液A:20mM Tris/HCl(pH8.1)、緩衝液B:20mM Tris/HCl、NaCl 1M(pH8.1)を使用して利用する。回収されたグルコースオキシダーゼ−捕獲2オリゴヌクレオチドコンジュゲートの濃度を決定するために、BCA/BSAアッセイが使用される(溶出液約3ml、0.15mg/ml)。
【0221】
実施例XII
DNA−酵素コンジュゲートの調製
標準的なホスホルアミダイト化学反応(TriLink BioTechnologies, Inc. San Diego, CA)を使用して捕獲2オリゴヌクレオチド#100003_15_アミノ(5’アミノ修飾された15ヌクレオチド長)を合成する。
【表2】

【0222】
次に、NAP−5カラム(0.1M/0.15M NaHCO/NaCl緩衝液(pH8.3))を使用してオリゴヌクレオチドを精製する。0.2mlの100μMオリゴヌクレオチド#100003_15_アミノ水溶液をカラムにロードする。最初に溶出した0.3mlの後に0.8mlの溶出液を収集及び定量する。A260の読み取りに基づき90%を超える回収率が観察される。続いて、市販のLightning-Linkグルコースオキシダーゼコンジュゲーションキット(Innova Biosciences Ltd, Cambridge, UK.、カタログ番号706-0010)を製造業者のプロトコルを幾分改変したものに準じて使用して、精製されたオリゴヌクレオチドをグルコースオキシダーゼとコンジュゲーションさせる。簡潔には、40μlのアミノ修飾オリゴ(50μM水溶液)に4μlの修飾物質を加える。結果として生じた44μlの溶液をLL−Goxの1/2バイアルに加え、暗条件の室温で一晩インキュベーションする。インキュベーション後に、5μlのクエンチャーを反応混合物に加え、暗条件の室温で30分間インキュベーションする。
【0223】
続いて、結果として生じたコンジュゲートをMicron YM-100スピンカラム(Millipore, USA)により精製して、アミノ修飾オリゴヌクレオチドのアクセスを除去する。簡潔には、50μlのコンジュゲートをカラムにロードし、8000rpmで8分間遠心分離する。通過液を廃棄する。200μlの1×(50mM)PBS(50mM、pH7.5)をカラムに加え、8000rpmで8分間遠心分離する。通過液を捨てる。50μlの1×PBS(50mM、pH7.5)をカラムに加え、ボルテックスを用いて数秒間慎重に混合し、2000rpmで2分間遠心分離する。50μlの精製捕獲1オリゴヌクレオチド。酵素コンジュゲートを収集し、将来使用するために4℃で保存する。
【0224】
実施例XIII
DNA固定化−オリゴ(dT)25磁気ビーズの調製
標準的なホスホルアミド化学反応(TriLink BioTechnologies, Inc. San Diego, CA)を使用して捕獲1オリゴヌクレオチド#100003_19_ポリA(36ヌクレオチド長)を合成する。
【表3】

【0225】
次に、NAP−5カラム(0.1M/0.15M NaHCO/NaCl緩衝液、pH8.3)を使用してオリゴヌクレオチドを精製する。0.2mlの100μMオリゴヌクレオチド#100003_15_アミノ水溶液をカラムにロードする。最初に溶出した0.3mlの後に0.8mlの溶出液を収集及び定量する。A260の読み取りに基づき90%を超える回収率が観察される。続いて精製されたオリゴヌクレオチドをオリゴ(dT)25磁気ビーズ(Dynabeads Oligo (dT)25, Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA.、カタログ番号610)を用いてアニーリングする。
【0226】
簡潔には、30μlの磁気ビーズ懸濁液を1×結合緩衝液(20mM Tris−HCl、pH7.5、1.0M LiCl、2mM EDTA)で2回洗浄する。各回にMagnetic Particle Concentrator(Dynal MPC(商標)-S, Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA.、カタログ番号120.20D)を使用して磁気ビーズを分離する。
【0227】
最後の洗浄後に、ビーズを30μlの結合緩衝液に再懸濁し、2.6μlの捕獲1オリゴヌクレオチド#100003_19_ポリA(26pmol)と混合する。水及び0.01% Tween20を加えることにより最終反応容積を45μlの最終容積にし、連続的に回転させながら室温でインキュベーションする(約30〜45分間)。インキュベーション後に、Magnetic Particle Concentratorを使用してアニーリングされた磁気ビーズを分離し、上清を捨てる。続いて洗浄緩衝液B(10mM Tris−HCl、pH7.5、0.15M LiCl、1mM EDTA)で磁気ビーズを洗浄(3回)し、保存緩衝液オリゴ(dT)25(250mM Tris−HCl、pH7.5、20mM EDTA、0.1% Tween−20、0.02% NaN)で1回洗浄し、30μlの保存緩衝液オリゴ(dT)25に再懸濁し、将来使用するために4℃で保存する。
【0228】
実施例XIV
ターゲット因子の結合及び過剰のDNA−酵素コンジュゲートの除去(モデルシステム研究)
DNAターゲット因子であるオリゴヌクレオチド100003_39(39ヌクレオチド長)を標準的なホスホルアミド化学反応(TriLink BioTechnologies, Inc. San Diego, CA)を使用して合成したが、これを実施例XIに記載したように精製する。
【表4】

【0229】
実施例XI又はその代わりに実施例XIIに記載されたコンジュゲーション手順に準じて、捕獲2オリゴヌクレオチド#100003_15_アミノをAspergillus niger由来グルコースオキシダーゼ(Fluka, 49180)にコンジュゲーションする。典型的には0.15mg/mlのコンジュゲートが得られる。
【0230】
並行して、実施例XIIIに記載されたアニーリング手順に準じて捕獲1オリゴヌクレオチド固定化−オリゴ(dT)25磁気ビーズを調製する。
【0231】
モデルシステムの100fmolターゲット因子を再構成するために、オリゴヌクレオチド100003_39を0.5pmolの捕獲2オリゴヌクレオチド−グルコースオキシダーゼコンジュゲートと共に1μgのヒトゲノムDNA(Clontech, Palo Alto, CA.、カタログ番号636401)に加える。合計反応容積は30μl(6×SSPE、0.01% Tween20)である。結果として生じた反応混合物を、0.5pmolの洗浄済み乾燥捕獲1オリゴヌクレオチド固定化−オリゴ(dT)25磁気ビーズが入ったチューブに移し、静かに混合する。連続的に回転させながら室温で1時間、ハイブリダイゼーションを実施する。
【0232】
6×SSPE(0.9M NaCl、60mM NaHPO、6mM EDTA)で洗浄(3回)することにより、未結合の捕獲2オリゴヌクレオチド−グルコースオキシダーゼコンジュゲートを除去する。各回に磁気粒子濃縮器(Dynal MPC(商標)-S, Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA.、カタログ番号120.20D)を使用して磁気ビーズを分離する。最後の洗浄の後に上清を慎重に除去し、残りの磁気ビーズを10μlの2Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に再懸濁し、4℃で保存する。
【0233】
ターゲット因子に結合した捕獲2オリゴヌクレオチド−グルコースオキシダーゼコンジュゲートは磁気ビーズ上に残り、検出のために利用できる。並行して、陰性対照として1μgのヒトゲノムDNAにターゲット因子を加えずに類似の反応を設定する。
【0234】
実施例XV
DNAターゲット因子に結合した磁気ビーズの検出(モデルシステム研究)
実施例XIVに記載された捕獲手順に準じて、DNAターゲット因子と結合した磁気ビーズを調製する。結果として生じた10μlのターゲット因子と結合した磁気ビーズを、100μlの2Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で洗浄する(2回)。
【0235】
各回にMagnetic Particle Concentrator(Dynal MPC(商標)-S, Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA.、カタログ番号120.20D)を使用して磁気ビーズを分離する。最後の洗浄後に上清を慎重に除去し、残った磁気ビーズを2Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)、0.1mM DCPIP(2,6−ジクロロインドフェロール(Dichloroindophelol)、0.1μg/μl BSA)を含む2〜5μlの緩衝液に再懸濁する。
【0236】
並行して検出セルを組み立てる。検出セルはNAFION膜N-117(FuelCellStore, San Diego, USA)により分離された2個の反応チャンバー(陽極及び陰極反応チャンバー、例えば図44参照)を含む。各反応チャンバーには金電極が挿入されている。金電極をTrendCapture付きFluke 289 True-RMS Industrial Logging Multimeter(Fluke, Everett, WA, USA)と接続し、電位差又は電流を測定する。
【0237】
20μlの作用緩衝液(2Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)、0.1mM DCPIP(2,6−ジクロロインドフェロール))を各反応チャンバーに加える。1μlのターゲット結合磁気ビーズを1μlの1Mグルコースと混合し、陽極反応チャンバー(例えば図44に示す装置の上部チャンバー)に移す。電位差測定を連続的又は5分間隔で行う。漸増する電位(1〜55mV範囲)の測定によりDNAターゲット因子の存在を検出する。
【0238】
陰性対照反応(ターゲット因子なし、実施例XIV参照)の測定の間に電位は検出されない。
【0239】
実施例XVI
抗体−酵素コンジュゲートの調製
捕獲抗体2、抗マウスα−ヒトIL−8モノクローナル抗体(ICC用、BD Pharmingenカタログ番号550419)をNAP−5カラム(0.1M/0.15M NaHCO/NaCl緩衝液、pH8.3)を使用して精製し、0.5mlをロードし、最初の0.1mlの後の0.7mlを収集する。A280の読み取りに基づき、0.45mg/mlマウスα−ヒトIL−8モノクローナル抗体の回収を観察する。
【0240】
続いて、スクシンイミジル4−ホルミル安息香酸(C6−SFB)を使用して精製捕獲抗体2を化学修飾する。660μlの精製抗体及び30μlのC6−SFB(20mM DMF溶液)を混合し(1:40の比)、室温で2時間インキュベーションする。5ml HiTrap(GE)脱塩カラムを使用して反応生成物を清浄にし、1.5mlの溶出液を収集する。A260の読み取りに基づき、80%を超える捕獲抗体2−C6−SFBの回収率が観察される。
【0241】
NAP−5カラム(1×PBS緩衝液、pH7.2)を使用してAspergillus niger由来グルコースオキシダーゼ(Fluka, 49180)を精製する。0.25mlのグルコースオキシダーゼ(5mg/ml)をカラムにロードする。最初に溶出した0.25mlの後に1mlの溶出液を収集及び定量する。A280の読み取りに基づき1.25mg/ml(7.8μM)のグルコースオキシダーゼの回収が観察される。
【0242】
続いて、スクシンイミジル4−ヒドラジノニコチオネートアセトンヒドラゾン(C6−SANH)を使用して精製グルコースオキシダーゼを化学修飾する。950μlの7.8μMグルコースオキシダーゼ及び10.4μlのC6−SANH(10mM DMF溶液)を混合し(1:20の比)、室温で30分間インキュベーションする。5ml HiTrap(GE)脱塩カラムを使用して反応生成物を清浄にし、1.25mlの溶出液を収集する。BCA/BSAアッセイ(Pierce製BCAアッセイ、カタログ番号23225/23227; Pierce製Bradfordアッセイ、カタログ番号23236)を使用して、回収されたグルコースオキシダーゼ−C6−SANHの濃度を決定する(典型的には約1mg/ml)。
【0243】
グルコースオキシダーゼ及び捕獲抗体2のコンジュゲーションを、典型的には500μlのグルコースオキシダーゼ−C6−SANHと750μlの捕獲抗体2−C6−SFBをモル比3:1で混合することにより達成し、そして室温で一晩インキュベーションする。結果として生じたコンジュゲートをTBE/UREAゲルで分析し、MiniQ FPLCを使用して精製する。
【0244】
MiniQ 4.6/50 PEカラム(GE Healtcare、カタログ番号17-5177-01)、流速0.25ml/min、検出280nm、緩衝液A:20mM Tris/HCl、pH8.1、緩衝液B:20mM Tris/HCl、NaCl 1M、pH8.1を使用して標準的な勾配アプローチを利用する。BCA/BSAアッセイを使用して、回収されたグルコースオキシダーゼ−捕獲抗体2の濃度を決定する(溶出液約3ml、0.1mg/ml)。
【0245】
実施例XVII
抗体固定化磁気ビーズの調製
NAP−5カラム(0.1M/0.15M NaHCO/NaCl緩衝液、pH8.3)を使用して、0.5mlをロードし、最初の0.1mlの後の0.7mlを収集して、捕獲抗体1、抗マウスα−ヒトIL−8モノクローナル抗体(ELISA捕獲、BD Pharmingen、カタログ番号554716)を精製する。A280の読み取りに基づき、0.45mg/mlマウスα−ヒトIL−8モノクローナル抗体の回収を観察する。
【0246】
並行して、水溶性ホモ二官能性NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミジル)−エステルを用いて製造業者の説明書に準じて一級アミノ−誘導体化磁気ビーズ(Dynabeads(登録商標)M-270アミン、Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA.、カタログ番号610)を活性化する。簡潔には、0.15M NaClを有する0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)に磁気ビーズを再懸濁する。
【0247】
NHS−エステル、DTSSP(3,3’−ジチオビススルホスクシンイミジルプロピオネート)(Pierce, Rockford, IL, USA;カタログ番号21578)を水に溶解させ、ビーズに直接加える。最終容積は、バイアルから本来ピペットで吸い取ったビーズの容積に等しい。反応体を混合し、傾けてゆっくりと回転させながら室温で30分間インキュベーションする。インキュベーション後に、チューブをMagnetic Particle Concentrator(Dynal MPC(商標)-S, Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA.、カタログ番号120.20D)に4分間置き、上清を除去する。磁気ビーズを上記緩衝液でさらに2回洗浄する。最終的にNHS−エステルで活性化された磁気ビーズを氷冷1mM HCl及び氷冷水で連続的に洗浄する。次に、0.7mlの捕獲抗体1を加え、傾けてゆっくりと回転させながら4℃で2時間インキュベーションする。(通常は、固定化されるべき抗体の量に比べて10倍モル過剰のNHS−エステル架橋剤を使用する。Dynabeads(登録商標)M-270アミンの抗体コーティングのために、ビーズ10個あたり純粋な抗体3μg及び終濃度1〜2×10個のビーズ/mlが推奨される)。
【0248】
インキュベーション後に、チューブをMagnetic Particle Concentratorに4分間入れ、上清を除去する。0.05M Tris(pH7)を加え、傾けてゆっくりと回転させながら室温で15分間インキュベーションし、未反応の基をクエンチする。
【0249】
PBSおよび0.5% BSAを含有する緩衝液中で磁気ビーズを洗浄する。最終洗浄後に、コーティングされたビーズをPBS及び0.1% BSAに再懸濁して1×10個のビーズ/mlにする。捕獲抗体1でコーティングされた磁気ビーズの保存のために0.02%アジ化ナトリウムを加え、4℃に保つ。
【0250】
実施例XVIII
ターゲット因子の結合及び過剰の抗体−酵素コンジュゲートの除去(モデルシステム研究)
実施例XVIに記載されたコンジュゲーション手順に準じて、捕獲抗体2、抗マウスα−ヒトIL−8モノクローナル抗体(ICC用、BD Pharmingenカタログ番号550419)をAspergillus niger由来グルコースオキシダーゼ(Fluka, 49180)にコンジュゲーションさせる。実施例XVIIに記載された固定化手順に準じて、捕獲抗体1、抗マウスα−ヒトIL−8モノクローナル抗体(ELISA捕獲、BD Pharmingenカタログ番号554716)固定化アミノ−誘導体化磁気ビーズ(Dynabeads(登録商標)M-270アミン, Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA.、カタログ番号610)を調製する。
【0251】
上に言及したモノクローナル抗体は、リコンビナントヒトIL−8の二つの異なるエピトープを認識する対に相当する。
【0252】
モデルシステムを再構築するために、0.5μgのタンパク質ターゲット因子、リコンビナントヒトIL−8(BD Pharmingenカタログ番号554609、0.1mg/ml)を捕獲抗体2−グルコースオキシダーゼコンジュゲート(典型的には20μgが使用される)と共にFBS(ウシ胎児血清)に加える。
【0253】
捕獲抗体1を固定化された磁気ビーズ15μg(30μl)をウシ胎児血清と共に室温で45分間混合することによりブロッキングする。結果として生じた反応混合物をMagnetic Particle Concentratorに入れ、上清を捨てる。
【0254】
上述の再構成されたモデルシステム(ヒトIL−8及び捕獲抗体2−グルコースオキシダーゼコンジュゲート)を洗浄済み捕獲抗体1−磁気ビーズに加え、反応混合物の容積をPBSで500μlにする。
【0255】
終濃度1mg/mlまでBSAを加えた後の反応混合物を傾けてゆっくりと回転させながら室温でインキュベーションする。
【0256】
PBSで(7回)洗浄することにより、未結合の捕獲抗体2−グルコースオキシダーゼコンジュゲートを除去する。最終の洗浄後に上清を慎重に除去し、残った磁気ビーズを10μlの2Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に再懸濁し、4℃に保つ。
【0257】
ターゲット因子に結合した捕獲抗体2−グルコースオキシダーゼコンジュゲートは磁気ビーズ上に残り、検出に利用できる。
【0258】
並行して、陰性対照としてターゲット因子(ヒトIL−8)をFBS(ウシ胎児血清)に加えない類似の反応を設定する。
【0259】
実施例XIX
タンパク質ターゲット因子に結合した磁気ビーズの検出(モデルシステム研究)
実施例XVIIIに記載された捕獲手順に準じて、タンパク質ターゲット因子に結合した磁気ビーズを調製する。結果として生じたターゲット因子結合磁気ビーズ10μlを100μlの2Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で洗浄する(2回)。
【0260】
各回にMagnetic Particle Concentrator(Dynal MPC(商標)-S, Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA.、カタログ番号120.20D)を使用して磁気ビーズを分離する。最終回の後に上清を慎重に除去し、2Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)、0.1mM DCPIP(2,6−ジクロロインドフェロール0.1μg/μl BSA)を含有する緩衝液2〜5μlに残りの磁気ビーズを再懸濁する。
【0261】
並行して、検出セルを組み立てる。検出セルはNAFION膜N-117(FuelCellStore, San Diego, USA)により分離された2個の反応チャンバー(陽極及び陰極反応チャンバー、例えば図44参照)を含む。
【0262】
各反応チャンバーには金電極が挿入されている。金電極はTrendCaptureを有するFluke 289 True-RMS Industrial Logging Multimeter(Fluke, Everett, WA, USA)に接続され、電位差又は電流が測定される。
【0263】
20μlの作用緩衝液(2Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)、0.1mM DCPIP(2,6−ジクロロインドフェロール))を各反応チャンバーに加える。1μlのターゲット結合磁気ビーズを1μlの1Mグルコースと混合し、陽極反応チャンバーに移す。電位差測定を連続的又は5分間隔で行う。漸増する電位(1〜55mV範囲)の測定によりタンパク質ターゲット因子の存在を検出する。
【0264】
陰性対照反応(ターゲット因子なし、実施例XVIII参照)の測定の間に、電位は検出されない。
【0265】
具体的な作業態様
本発明の実行に関するさらなる情報は、本発明の基本試薬及び手順の論述により得ることができる。上に論じた実施例のそれぞれのように、それは電位の発生に頼り、それは本発明の携帯型検査ユニットの作用セルにより検出することができる。検査ユニットは、膜又は膜を有さない測定チャンバーを含む検査モジュール(ディスポーザブル)を受容することができる。好ましい態様では、検査チャンバーは、垂直フランジに支持されたプラスチックウェルであり、その上に動作距離で分離された2個の電極が塗布され、その電極間の電位は、回路を閉じることにより測定することができる。電極は、検査チャンバーの裏打ちに塗布することができ、好ましくは金でできていてもよい。好ましい態様では、陰極は類似のポリマー材料のNafionフィルムで重層されている。
【0266】
試薬及び検査手順
A.試薬
以下の試薬は、SASP検査に使用される標準試薬である。全ての試薬は市販されている。試料調製(標準的な分子生物学の技法を使用)に必要な時間は、検出アッセイを完了するために必要な時間の95%を占める。自動化及びロボット工学による試料調製の最適化は、アッセイの持続時間を顕著に短縮することができる。オリゴヌクレオチド及び他に挙げられた核酸配列は、モデル/対照試薬として使用しようとするものである。
【0267】
1.第一複合体化(「FC」)オリゴヌクレオチド#100003_19_ポリA(36ヌクレオチド):
【表5】


第二複合体化(「SC」)オリゴヌクレオチド#100003_15_アミノ(5’−NH修飾15ヌクレオチド):
【表6】


ターゲット特異的(「TS」)オリゴヌクレオチド100003_39(39ヌクレオチド)
【表7】


Dynabeads(登録商標)オリゴ(dT)25磁気ビーズ
Dynabeads(登録商標)M-270アミン
Dynal MPC(商標)-S磁気粒子濃縮器
Aspergillus niger由来グルコースオキシダーゼ
D−グルコース
DCPIP(2,6−ジクロロフェノールインドフェノール)
Lightning-Linkグルコースオキシダーゼコンジュゲーションキット
ヒトゲノムDNA
ssM13mp18
NAFION膜N-117
液体Nafion、LIQGUION(商標)溶液
標準緩衝液及び溶液を作るために必要な全ての他の化学物質及び材料は、Sigma-Aldrich、Pierce Biotechnologies及び/又はVWRから購入した。
標準緩衝液:
1. 1×結合緩衝液(20mM Tris−HCl、pH7.5、1.0M LiCl、2mM EDTA)。
2. 洗浄緩衝液B(10mM Tris−HCl、pH7.5、0.15M LiCl、1mM EDTA)。
3. 保存緩衝液(250mM Tris−HCl、pH7.5、20mM EDTA、0.1% Tween−20、0.02% NaN)。
【0268】
B.検査手順。
以下の説明を、「二段階」ハイブリダイゼーションのために提供する。しかし、一段階ハイブリダイゼーション(すなわち、単一の反応容器の中でハイブリダイゼーション段階を行う)が有益でありうると経験的に判定されている。
1. 実験の設定
a. NAP−5カラム(0.1M/0.15M NaHCO/NaCl緩衝液、pH8.3)を使用して製造業者のプロトコルに準じてFCオリゴヌクレオチドを精製する。簡潔には、0.2mlの100μMオリゴヌクレオチド#100003_15_アミノ水溶液をカラムにロードする。最初に溶出した0.3mlの後に0.8mlの溶出液を収集及び定量する。A260の読み取りに基づき90%を超える回収率が観察されるはずである。
b. オリゴ(dT)25磁気ビーズを用いて、精製されたFCオリゴヌクレオチドをアニーリングする。
c. 30μlの前記磁気ビーズ懸濁液を1×結合緩衝液(20mM Tris−HCl、pH7.5、1.0M LiCl、2mM EDTA)で2回洗浄する。各洗浄の後に磁気粒子濃縮器を使用して磁気ビーズを分離する。
d. 最終洗浄の後にビーズを30μlの結合緩衝液に再懸濁し、2.6μlのFCオリゴヌクレオチド(26pmol)と混合する。DDI水/0.01% Tween20の添加により最終反応容積を最終容積45μlに調整し、連続的に回転させながら室温でインキュベーションする(約30〜45分間)。
e. インキュベーション後に、アニーリングされた磁気ビーズを磁気粒子濃縮機を使用して分離し、上清を捨てる。磁気ビーズを洗浄緩衝液B(10mM Tris−HCl、pH7.5、0.15M LiCl、1mM EDTA)で洗浄し(3回)、保存緩衝液オリゴ(dT)25(250mM Tris−HCl、pH7.5、20mM EDTA、0.1% Tween−20、0.02% NaN)で1回洗浄し、30μlの保存緩衝液オリゴ(dT)25に再懸濁する。最終溶液は、将来使用するために4℃で保存することができる。
2. 検査細胞の馴化
検査細胞を予備馴化してdH2O(10×50μl)で細胞を洗浄することにより正のバックグラウンドを除去し、続いて細胞を120秒間「ショート」させる(スクリプティングにより達成)。
3. 試料のアッセイ
a. FCオリゴヌクレオチドについて上記と同じ基本プロトコルを使用してSCオリゴヌクレオチドを精製する。製造業者が推奨するプロトコルを少し改変したものに準じて、市販のLightning-Linkグルコースオキシダーゼコンジュゲーションキットを使用して、精製されたSCオリゴヌクレオチドをグルコースオキシダーゼとコンジュゲーションさせる。簡潔には、4μlの修飾物質を40μlのアミノ−修飾SCオリゴヌクレオチド(50μM水溶液)に加える。結果として生じた溶液を1/2バイアルのLL-Goxと混合し、周囲の光の不在下で室温で一晩インキュベーションする。一晩インキュベーションした後に、5μlのクエンチャーを反応混合物に加え、周囲の光の不在下で室温で30分間インキュベーションする。
b. 結果として生じたコンジュゲートをMicron YM-100スピンカラム(Millipore, USA)に入れて遠心分離することにより精製し、未反応のアミノ修飾オリゴヌクレオチドを除去する。最良の結果のために、結果として生じたコンジュゲート50μlをカラムにロードし、8000rpmで8分間遠心分離する。通過液を捨て、200μlの1×(50mM)PBS(50mM、pH7.5)をカラムに加え、8000rpmで8分間遠心分離する。通過液をもう一度捨て、50μlの1×PBS(50mM、pH7.5)をカラムに加え、ボルテックスを用いて5〜10秒間慎重に混合し、続いて2000rpmで2分間遠心分離する。結果として生じた50μlの精製SCオリゴ−酵素コンジュゲートを収集するが、将来使用するためにこれを4℃で保存することができる。
c. FCオリゴヌクレオチド及びSCオリゴヌクレオチドについて上に記載したものと同様にTSオリゴヌクレオチドを精製する。
d. TSオリゴヌクレオチド(0.5〜100fmol)を0.5pmolのコンジュゲートと共にヒトゲノムDNA(又はssM13mp18プラスミドDNA)1μgに加える。合計反応容積は約30μl(6×SSPE、0.01% Tween20)とする。結果として生じた反応混合物を、0.5pmolの洗浄済み乾燥FC固定化−オリゴ(dT)25磁気ビーズが入ったチューブに移し、静かに混合する。1時間連続的に回転させながらハイブリダイゼーションを室温で行う。
e. 磁場の用意ができた状態で、6×SSPE(0.9M NaCl、60mM NaHPO4、6mM EDTA)で洗浄(3回)することにより未結合のコンジュゲートを除去する。洗浄後に、ピペットで吸い上げて上清を慎重に除去し、ターゲット−磁気ビーズ複合体(「複合体」)を100μlの2Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で洗浄(2回)し、2Mリン酸カリウム緩衝液(pH 6.0)、0.1mM DCPIP(2,6−ジクロロインドフェロール、0.1μg/μl BSA)を含有する緩衝液2〜5μlに再懸濁する。
f. 前記段階と並行して、TSオリゴ及びヒトゲノムDNA(又はssM13mp18プラスミドDNA)を含まずに反応を行う陰性対照を調製する。
g. 検出セル(1型)を使用して、30μlの作用緩衝液(2Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)、0.1mM DCPIP(2,6−ジクロロインドフェノール)を各(陽極及び陰極の)反応チャンバーに加える。ターゲット種の存在(又は不在)をアッセイするために、1μlの複合体及び1μlの1Mグルコースを陽極反応チャンバーに加え、徹底的に混合する。
h. 反応体を5分間インキュベーションさせ、その後30〜180秒間隔で連続的に測定を行う。ターゲット種の存在は、漸増する電位(0.4〜2.2V範囲)の信号により表される(下記図2の代表的なアウトプット参照)。
【0269】
携帯使用のために最適化された器具
すでに述べたように、本発明により可能にされたアッセイは、多様な器具での実施が可能である。特に望ましい器具は、野外展開用の携帯型であろう。該器具の一つを、限定よりもむしろ例示として下に説明する。発明の才能の訓練をされていない当業者に代替が思いつくであろう。
【0270】
化学物質実証ユニットワークステーションソフトウェア(Chemical Demonstration Unit Workstation Software)は測定の計時及び記録をコントロールする。この文書は、ワークステーションのソフトウェアを説明するだけであり、システム全体を説明するものではない。USBを介してPCワークステーションをデータ取得ボード(Data Acquisition DT9812)に接続する。このボードはデジタル出力及びアナログ入力を使用して増幅器回路系への読出しをコントロールする。この回路系はGOXセルが収容されている化学物質セルカートリッジに接続されている。
【0271】
【表8】

【0272】
本発明のワークステーションが満たさねばならない様々な機能的要求又はタスクがある。これらには、増幅器回路系のコントロールが、
−設定及び測定するためにデータ取得ボードからデジタルを使用すること
−特定の時間に測定を行うためにデジタル出力を計時すること
測定が、
−初回ベースラインを測定すること
−確定された時間にセルを測定すること
−ベースライン測定値を用いた実際を測定値を計算すること
ディスプレイ
−ワークステーションは測定活動と同期化するために必要なアクションを行うように、例えば化学物質セルカートリッジを挿入するようにユーザを促すべきである。
−ワークステーションは連続測定及び期間測定データをディスプレイすべきである。
データ
−補正されたデータを得るためにベースラインデータを保管及び記録しなければならない。
−実行データ全体は持続性で、容易に検索できるべきである。
【0273】
本発明の必要性は、明瞭で信頼できる信号を送達するためのハードウェア及びソフトウェアの組み合わせに頼る携帯型システムにより満たされる。最新版はMicrosoft Visual Studio 2005を使用したdotNet 2.0で開発中である。
【0274】
ワークステーションは現在、標準的なUSB2.0を介して接続されたData Translation DT9812データ取得ボードを使用する。データ翻訳は、Windows XPドライバ及びdotNet APIライブラリを提供する。回路ボードは、回路のスイッチをコントロールするためにDT9812デジタル出力を使用し、電圧測定のためにDT9812のアナログ入力を使用する。
【0275】
インストール手順
インストール及びワークステーションの使用は、特定の機能性を必要とする。第一に、ワークステーションは、好ましくはWindows XPサービスパック2で動く必要がある。Windows dotNETバージョン2.0が好ましくはインストールされている必要がある。Data Translationは、Windowsドライバー及びdotNET APIを含むCDを提供si,soreraha共に最初にインストールされている必要がある。次に、システムが装置を認識し、インストールされたドライバーを使用するためにDT9812がプラグインされる必要がある。内部開発仕様のために、ワークステーションの最新版をインターネットウェブサイトhttp://codequest:8080/apps/Box331でチェックする。他のインストールは異なるインストール手順を有するであろう。
【0276】
2006年8月2日に提出され、現在係属中の米国仮特許出願第60/834,951号;2006年10月13日に提出され、現在係属中の米国仮特許出願第60/851,697号;2006年10月23日に提出され、現在係属中の米国仮特許出願第60/853,697号;2006年11月16日に提出され、現在係属中の米国仮特許出願第60/859,441号;2006年12月12日に提出され、現在係属中の米国仮特許出願第60/874,291号;2006年12月21日に提出され、現在係属中の米国仮特許出願第60/876,279号;及び2007年2月7日に提出され、現在係属中の米国仮特許出願第11/703,103号が参照され、これらのそれぞれは、全ての目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0277】
ある態様を参照して本発明を開示したが、添付の特許請求の範囲と同義の本発明の領域及び範囲から逸脱せずに、記載された態様に多数の改変、変更及び変化を加えることが可能である。したがって、本発明は記載された態様に限定されず、以下の特許請求の範囲及びその同等物の言語により定義される全範囲を有することを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料中のターゲットを検出するためのアッセイシステムであって、該アッセイシステムが、該試料に存在する任意のターゲットに結合する、酵素酸化還元反応構成要素と複合体化した第一捕獲部分;該酵素により認識される、該酵素により作用された場合に電子を放出する基質;及び該酵素により消化された場合に該基質からの電子の放出により生じる電位又は電流の存在を検出する回路を含む、アッセイシステム。
【請求項2】
ターゲットがアミノ酸配列を含み、第一捕獲部分が、所与のエピトープで該ターゲットに結合する抗体を含む、請求項1記載のアッセイシステム。
【請求項3】
ターゲットが核酸配列を含み、第一捕獲部分が、該配列の部分にハイブリダイゼーションすることにより該ターゲットに結合する、請求項1記載のアッセイシステム。
【請求項4】
システムが、試料中に存在する任意のターゲットに第一捕獲部分と同時に結合する第二捕獲部分を含み、該第二捕獲部分が、該ターゲットに結合した全ての該第二捕獲部分を収集するための収集部分を担持する、請求項1記載のアッセイシステム。
【請求項5】
収集部分が磁気ビーズを含む、請求項4記載のアッセイシステム。
【請求項6】
収集部分が、第一及び第二捕獲部分と混合された後の試料が流されるカラムによって結合された化学タグを含む、請求項4記載のアッセイシステム。
【請求項7】
酵素酸化還元反応構成要素が、該基質のオキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼである、請求項1記載のアッセイシステム。
【請求項8】
基質が、グルコース、ラクトース、フルクトース、マンノース、コリン、メタノール及びエタノールから成る群より選択される、請求項5記載のアッセイシステム。
【請求項9】
基質がグルコースであり、酵素酸化還元反応構成要素がグルコースオキシダーゼである、請求項6記載のアッセイシステム。
【請求項10】
反応チャンバーをさらに含むアッセイシステムであって、第一捕獲部分が該酵素酸化還元反応構成要素とカップリングし、第二捕獲部分が収集部分に結合し、試料及び基質が組み合わされ、該アッセイシステムが反応チャンバーに接続された陽極及び陰極をさらに含み、該酵素酸化還元反応構成要素により該基質に作用することによる電子の発生が原因で該陰極と陽極の間に生じた電位又は電流が、該試料中のターゲットの存在の証拠として検出される、請求項1記載のアッセイシステム。
【請求項11】
電位の検出を提示するためのディスプレイを含む、請求項1記載のアッセイシステム。
【請求項12】
ディスプレイが、コンピュータ、発光ダイオード、液晶ダイオード及びメータのうち少なくとも一つを含む、請求項11記載のアッセイシステム。
【請求項13】
請求項1記載のアッセイシステムを使用し、その際、酵素酸化還元反応構成要素と複合体化した第一捕獲部分が、試料中のターゲットへの該第一捕獲部分の結合を許す条件で該試料と組み合わされること、続いて結合した該ターゲットに該基質を加え、その際、該酵素酸化還元反応構成要素と該基質の間の反応により発生する任意の電位又は電流が、該試料中の該ターゲットの存在を反映する信号として検出されることを含む、試料中のターゲットの存在を検出するためのアッセイ方法。
【請求項14】
方法が、収集部分に結合した第二捕獲部分を加えることをさらに含み、該第二捕獲部分が、該試料への第一及び第二捕獲部分の同時結合を許す条件で該試料と組み合わされ、該第一及び第二捕獲部分により結合された該試料中の任意のターゲットが、該収集部分により保持されるが、残りの材料全てが洗浄除去され、該保持されたターゲットが液体中に再懸濁され、そして基質が該液体に加えられる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
ターゲットが核酸配列を含み、第一及び第二捕獲部分が、該ターゲットと同時にハイブリダイゼーションする異なるオリゴマーを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
ターゲットがアミノ酸配列を含み、第一及び第二捕獲部分が、異なるエピトープで該ターゲットに結合する異なる抗体を含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
収集部分が磁気ビーズを含み、該第二捕獲部分を介して該ターゲットに結合した該収集部分が、それに磁場を適用することにより保持される、請求項14記載の方法。
【請求項18】
酵素酸化還元反応構成要素が、該基質のオキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼである、請求項13記載の方法。
【請求項19】
基質がグルコースであり、酵素酸化還元反応構成要素がグルコースオキシダーゼである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
第一捕獲部分及び第二捕獲部分が、試料に連続的に加えられる、請求項14記載の方法。
【請求項21】
第一捕獲部分及び第二捕獲部分が試料に同時に加えられる、請求項14記載の方法。
【請求項22】
信号が、該信号を保存するコンピュータに通信される、請求項13記載の方法。
【請求項23】
コンピュータが、第三者に信号を通信する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
信号強度が、試料中に存在するターゲットの量と相関する、請求項13記載の方法。
【請求項25】
信号が、分離されたターゲットに基質を添加後少なくとも1分間は測定されない、請求項13記載の方法。
【請求項26】
中で試料が第一捕獲部分と組み合わされる反応チャンバーを含むディスポーザブルカートリッジ、該反応チャンバーと物理的に接触した陽極及び陰極を含む装置であって、該反応チャンバーに基質を添加後に該カートリッジが該陽極と該陰極の間の電位を測定するディスプレイと接触するように、該カートリッジを装置体に挿入可能であり、該ディスプレイにより検出される信号がターゲットの存在又は濃度の一つを反映する、請求項13記載の方法により発生する信号を測定するための装置。
【請求項27】
陽極及び陰極が、半透膜により分離されている、請求項26記載の装置。
【請求項28】
半透膜がイオン交換膜である、請求項27記載の装置。
【請求項29】
イオン交換膜がプロトン交換膜である、請求項28記載の装置。
【請求項30】
膜が陰極に塗布されている、請求項27記載の装置。
【請求項31】
陽極及び陰極が、酵素酸化還元反応構成要素による基質の消化により発生する電位と相関する信号を送るRFID装置に接続される、請求項26記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−539515(P2010−539515A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525909(P2010−525909)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/076597
【国際公開番号】WO2009/039136
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.WINDOWS
【出願人】(510074900)レッド・アイボリー・エルエルシー (1)
【氏名又は名称原語表記】RED IVORY LLC
【Fターム(参考)】