説明

色素幹細胞の未分化性維持促進剤

【課題】毛髪の脱色素化および老化を抑制するための剤の提供を目的とする。
【解決手段】ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質
により、毛髪の脱色素化および老化が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素幹細胞の未分化性維持促進剤、自己複製維持促進剤、組織幹細胞の未分
化性維持促進剤、哺乳動物の脱色素化治療薬、老化抑制治療薬、化粧品組成物および機能
性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、加齢に伴い、運動機能や内臓機能の低下、免疫機能の低下、記憶力の低下、皮
膚のシミ、シワ、老眼、白髪等の種々の老化現象が現れる。本発明者は、このうち経過観
察の容易な白髪に着目し、老化現象を引き起こす原因について研究している。
【0003】
毛髪は、色調やパターンにより個体の識別や防御において重要な役割を果たしている。
毛髪は、毛乳頭や毛母細胞を含む毛包において形成され、毛母細胞間には色素細胞が存在
している。色素細胞は、皮膚において分化するとメラニン色素を産生し、周囲の角化細胞
へと受け渡すことで、皮膚や毛に色素を供給しており、紫外線から皮膚を護ると同時に個
体間の識別や防御等の役割を担っている。この色素細胞は、白毛を生やす毛包では数が減
少していることが知られていたが、そのメカニズムについてはほとんど知られていなかっ
た。
【0004】
本発明者らは、これまでに色素幹細胞を見いだし(非特許文献1)、白髪が色素幹細胞
の消失に起因することを明らかにしてきた(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Nishimura EK et al. Nature. 416(6883):854-60, 2002
【非特許文献2】Nishimura EK et al. Science. 307(5710):720-724. 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、白髪が色素幹細胞の消失に起因することは明らかとなっているが、加
齢に伴う毛髪の脱色素化(白毛化)がどのようなメカニズムで起こっているか、すなわち
加齢に伴いどのように色素幹細胞が消失しているのかについては未だ明らかとなっていな
い。このメカニズムの解明は、老化現象を引き起こす原因を明らかとし、老化制御や、毛
髪の脱色素化の抑制を目的とした医薬品およびバイオ関連製品開発の分野で望まれている

【0007】
特に、毛髪の脱色素化の抑制を目的として、これまでにも血管拡張剤や植物抽出物の投
与等の様々な方法が講じられて来たが、何れも上記問題を解決するには至っておらず、毛
髪の脱色素化抑制剤の開発が望まれている。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、加齢に伴う毛髪の脱色素化の原因およ
び老化現象を引き起こす原因を明らかとし、毛髪の脱色素化および老化を抑制するための
医薬品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、Ataxia telangiectasia mutated(A
TM)または色素細胞の未分化性維持促進作用を有するATM変異体を含む、色素幹細胞
の未分化性維持促進剤が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように、ATMまた
はATM変異体により、色素幹細胞の未分化性を維持促進する。
【0010】
また、本発明によれば、ATMまたはその変異体が色素幹細胞を含む領域において発現
するように制御するプロモーター配列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている
、ATMまたはATM変異体をコードするヌクレオチド配列と、を有するベクターを含む
、色素幹細胞の未分化性維持促進剤が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように
、ATMまたはATM変異体により、色素幹細胞の未分化性を維持促進する。
【0011】
また、本発明によれば、ATM and Rad3−related(ATR)または
色素細胞の未分化性維持促進作用を有するATR変異体を含む、色素幹細胞の未分化性維
持促進剤が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように、ATRまたはATR変異
体により、色素幹細胞の未分化性を維持促進することが当業者にとって明らかである。
【0012】
また、本発明によれば、ATRまたはその変異体が色素幹細胞を含む領域において発現
するように制御するプロモーター配列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている
、ATRまたはATR変異体をコードするヌクレオチド配列と、を有するベクターを含む
、色素幹細胞の未分化性維持促進剤が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように
、ATRまたはATR変異体により、色素幹細胞の未分化性を維持促進することが当業者
にとって明らかである。
【0013】
また、本発明によれば、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種
以上の蛋白質を含む、色素幹細胞の未分化性維持促進剤が提供される。本発明は、後述の
実施例に示すように、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上
の蛋白質により、色素幹細胞の未分化性を維持促進する。
【0014】
また、本発明によれば、色素幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモ
ーター配列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている、ゲノム損傷誘発原により
活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質をコードするヌクレオチド配列と、を
有するベクターを含む、色素幹細胞の未分化性維持促進剤が提供される。本発明は、後述
の実施例に示すように、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以
上の蛋白質により、色素幹細胞の未分化性を維持促進する。
【0015】
また、本発明によれば、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種
以上の蛋白質の活性を制御する制御因子を含む、色素幹細胞の未分化性維持促進剤が提供
される。本発明は、後述の実施例に示すように、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋
白質群に含まれる一種以上の蛋白質の活性を制御する制御因子により、色素幹細胞の未分
化性を維持促進する。
【0016】
また、本発明によれば、ATMまたは色素細胞の自己複製維持促進作用を有するATM
変異体を含む、色素幹細胞の自己複製維持促進剤が提供される。本発明は、後述の実施例
に示すように、ATMまたはATM変異体により、色素幹細胞の自己複製能力の維持を促
進する。
【0017】
また、本発明によれば、ATMまたはその変異体が色素幹細胞を含む領域において発現
するように制御するプロモーター配列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている
、ATMまたはATM変異体をコードするヌクレオチド配列と、を有するベクターを含む
、色素幹細胞の自己複製維持促進剤が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように
、ATMまたはATM変異体により、色素幹細胞の自己複製能力の維持を促進する。
【0018】
また、本発明によれば、ATRまたは色素細胞の自己複製維持促進作用を有するATR
変異体を含む、色素幹細胞の自己複製維持促進剤が提供される。本発明は、後述の実施例
に示すように、ATRまたはATR変異体により、色素幹細胞の自己複製能力の維持を促
進することが当業者にとって明らかである。
【0019】
また、本発明によれば、ATRまたはその変異体が色素幹細胞を含む領域において発現
するように制御するプロモーター配列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている
、ATRまたはATR変異体をコードするヌクレオチド配列と、を有するベクターを含む
、色素幹細胞の自己複製維持促進剤が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように
、ATRまたはATR変異体により、色素幹細胞の自己複製能力の維持を促進することが
当業者にとって明らかである。
【0020】
また、本発明によれば、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種
以上の蛋白質を含む、色素幹細胞の自己複製維持促進剤が提供される。本発明は、後述の
実施例に示すように、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上
の蛋白質により、色素幹細胞の自己複製能力の維持を促進する。
【0021】
また、本発明によれば、色素幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモ
ーター配列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている、ゲノム損傷誘発原により
活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質をコードするヌクレオチド配列と、を
有するベクターを含む、色素幹細胞の自己複製維持促進剤が提供される。本発明は、後述
の実施例に示すように、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以
上の蛋白質により、色素幹細胞の自己複製能力の維持を促進する。
【0022】
また、本発明によれば、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種
以上の蛋白質の活性を制御する制御因子を含む、色素幹細胞の自己複製維持促進剤が提供
される。本発明は、後述の実施例に示すように、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋
白質群に含まれる一種以上の蛋白質の活性を制御する制御因子により、色素幹細胞の自己
複製能力の維持を促進する。
【0023】
また、本発明によれば、上述した色素幹細胞の未分化性維持促進剤を含む、哺乳動物の
脱色素化治療薬が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように、色素幹細胞の未分
化性を維持促進する剤を含むことにより、色素幹細胞の分化による枯渇を抑制し、脱色素
化を抑制する。
【0024】
また、本発明によれば、上述した色素幹細胞の自己複製阻害抑制剤を含む、哺乳動物の
脱色素化治療薬が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように、色素幹細胞の自己
複製能力の維持を促進する剤を含むことにより、色素幹細胞の自己複製能力の喪失による
枯渇を抑制し、脱色素化を抑制する。
【0025】
また、本発明によれば、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種
以上の蛋白質を含む、組織幹細胞の未分化性維持促進剤が提供される。本発明は、後述の
実施例に示すように、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上
の蛋白質により、組織幹細胞の未分化性を維持促進する。
【0026】
また、本発明によれば、組織幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモ
ーター配列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている、ゲノム損傷誘発原により
活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質をコードするヌクレオチド配列と、を
有するベクターを含む、組織幹細胞の未分化性維持促進剤が提供される。本発明は、後述
の実施例に示すように、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以
上の蛋白質により、組織幹細胞の未分化性を維持促進する。
【0027】
また、本発明によれば、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種
以上の蛋白質の活性を制御する制御因子を含む、組織幹細胞の未分化性維持促進剤が提供
される。本発明は、後述の実施例に示すように、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋
白質群に含まれる一種以上の蛋白質の活性を制御する制御因子により、組織幹細胞の未分
化性を維持促進する。
【0028】
また、本発明によれば、上述した組織幹細胞の未分化性維持促進剤を含む、哺乳動物の
老化抑制治療薬が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように、組織幹細胞の未分
化性を維持促進する剤を含むことにより、組織幹細胞の分化による枯渇を抑制し、老化を
抑制する。
【0029】
また、本発明によれば、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種
以上の蛋白質を含む、化粧品組成物が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように
、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質が、組織幹
細胞の未分化性を維持促進することにより、組織幹細胞の分化による枯渇を抑制し、若々
しい頭髪または素肌などを維持する作用を奏する。
【0030】
また、本発明によれば、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種
以上の蛋白質を含む、機能性食品が提供される。本発明は、後述の実施例に示すように、
ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質が、組織幹細
胞の未分化性を維持促進することにより、若々しい頭髪、素肌または体内環境などを維持
する作用を奏する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、後述の実施例に示すように、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋
白質群により、色素幹細胞の未分化性の維持を促進し、自己複製能力の維持を促進し、組
織幹細胞の未分化性を維持促進するとともに、哺乳動物の脱色素化および老化を抑制する

【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】放射線照射前後におけるマウスの体色および組織学的変化を示す図である。(a)は放射線照射前のマウスの全身写真。(b)は放射線照射後(5Gy IR(+))の全身写真。放射線照射後にのみ白髪が誘導されている。(c)〜(j)は成長期V期における放射線照射後の毛包の組織学的な変化を示す。(c)、(g)はホールマウント像。(d)、(h)はDct−lacZトランスジェニックマウスのlacZ染色後の皮膚切片。コントロールマウスのバルジ領域において、メラニン色素を有していない色素幹細胞が確認できる(c、d中の矢印)。(e)、(f)、(i)、(j)はバルジ領域のlacZ陽性細胞を示す。この細胞は同時にKitを発現しており、明視野観察で放射線照射がない場合にはメラニンを持っていない(e、fの矢印)。放射線を照射すると茶色から黒色の色素を含む(i、jの矢頭)。5Gyの放射線照射後7日目には通常の色素幹細胞は小さく丸い胞体をしているが、異所性に着色した色素細胞樹状の形態をしているのが観察される(i、jの矢頭)。(k)〜(n)は放射線照射後のlacZ陽性細胞を示す。lacZ陽性細胞は2回目の毛周期でバルジ領域から姿を消す。(k)、(l)はホールマウント像。(k)、(m)は放射線照射前のマウスのlacZ染色皮膚。(l)、(n)は放射線照射後のマウスのlacZ染色皮膚。括弧でバルジ領域(bg)を示している。(o)は放射線照射後の1回目、2回目、3回目の各毛周期における総毛包あたりのlacZ陽性細胞の割合を示す。(p)〜(s)は、ゲノム損傷性の薬剤を投与した後のバルジ領域の組織化学的変化を示す。(q)はブスルファン(40mg/kg)を投与した場合。(r)はマイトマイシンC (MitomycinC:4mg/kg体重)を投与した場合。(s)は過酸化水素(1% in PBS)を投与した場合。各薬剤の投与後6日目に異所性に着色したメラノサイトを確認したが(q〜s)、コントロールでは確認されなかった(p)。各薬剤の投与後2回目の毛周期では白髪が見られたが(u〜w)、コントロールでは見られない(t)。(x)はDct−lacZマウスの加齢に伴う髭毛のバルジ領域におけるホールマウントlacZ染色像を示す。樹状の形態をした色素細胞が加齢マウスの毛包のバルジ領域では確認される(矢頭、生後22カ月)。(y)、(z)は、42週齢のXPDR722W/R722W マウスとXPD+/+マウスのバルジ領域を示す。PDR722W/R722W マウスでは毛包バルジ部のKit+陽性細胞(z)に色素を有しているが(矢頭)、コントロールマウスでは確認されない(XPD+/+マウスマウスの矢頭)(y)。
【図2】バジル領域におけるγ−H2AX、53BP1発現の免疫組織化学的な解析を示す図である。ほぼ全ての毛包が休止期に同調している7週齢のマウスに放射線を照射し、放射線照射後6時間で組織を採取した。(a)、(c)は放射線を照射していない休止期毛包を示す。(b)、(d)は放射線照射後6時間の休止期毛包を示す。(e)、(g)は抜毛1 日後の放射線を照射していない毛包を示す。(f)、(h)は抜毛1日後における放射線照射後6時間の毛包を示す。Kit陽性細胞を含めたバルジ領域における放射線照射によるゲノム損傷フォーカスの分布は、抜毛の有無に関わらず違いが見られなかった(b、f、d、h矢印)。
【図3】(a)は、3Gyの放射線照射後におけるATM欠損マウスおよびコントロールマウスの体色の変化を示している。なお、上段が放射線照射前、中段が放射線照射後の1回目の毛周期、下段が放射線照射後の2回目の毛周期における体色を示している。通常、白髪化を誘導できない3Gyの放射線照射では、ATM欠損マウスのみが明らかな白髪化を示す。(b)〜(g)は3Gyの放射線照射後のバルジ領域におけるγ−H2AX損傷フォーカス形成を検出するための免疫蛍光染色を示す。ATM欠損マウスにおいて、Kit陽性細胞が持ったフォーカス形成は12時間後にあっても保持されている(g)。インセットには白矢頭で示されたγ−H2AXのフォーカスを含んだ細胞の拡大像を示す。(h)〜(j)はATM欠損マウスおよびコントロールマウスにおいて、3Gyの放射線照射後5日目のバルジ領域におけるDct−lacZ陽性細胞を示す。ATM欠損マウスでは、3Gyの放射線照射であってもバルジ領域に樹状の異所性に着色した色素視細胞が確認できる(j)。インセットはバルジ領域におけるlacZ 陽性細胞の拡大像である。括弧はバルジ領域(bg)を示す。(k)は、3Gyの放射線照射後における全ての毛包に対するバルジ領域に異所性に着色したメラノサイトを持つ毛包の頻度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(発明の経緯)
本発明者らは、加齢に伴い白髪が生じるメカニズムの研究を行う中で、加齢に伴い白髪
が生じるのに先駆けて、樹状突起状の構造を有した異所性に色素顆粒を有する色素細胞が
バルジ領域に現れることを発見した(非特許文献2)。すなわち、バルジ領域において、
白髪の発現に先行して、色素幹細胞が分化していることが示唆された。しかしながら、こ
れが通常の分化と同等のものであるのかどうかが、不明であった。
【0034】
一方、若いマウスでは、バルジ領域において未分化な色素幹細胞が分布しており、成熟
した色素細胞は検出されない。そのため、バルジ領域に異所性に現れた色素細胞は、老化
や白髪の原因に特異的に関連した現象であると考えられる。
【0035】
また、早期の脱色素化は、早老症において見られる他、DNAの二重鎖切断を生じるよ
うな放射線の暴露等、種々のゲノム損傷誘発原に起因して生じることが知られている。さ
らに、ゲノム損傷の監視機構として働くAtaxia telangiectasia
mutated(ATM)遺伝子等が機能しなくなると、ゲノム損傷応答が適切に行われ
なくなり、早老症の原因となることが知られている。
【0036】
そこで、本発明者らは、バルジ領域における異所性の色素細胞の出現が、ゲノム損傷応
答反応に関与している可能性について着目し、生体マウスに対する放射線照射の影響を調
べた。その結果、放射線照射後の成長期中期のバジル領域において、未分化な色素幹細胞
に代わり、樹状の形態をとる異所性に色素顆粒を持った色素細胞が発現することを発見し
た。これらの細胞は、加齢に伴って出現する異所性分化色素細胞と形態的にも酷似してい
た。そこで、さらに、放射線照射後に誘導される異所性分化した色素細胞を免疫組織染色
および電顕にて解析したところ、通常の分化に限りなく近い形態および分子発現を示すこ
とが明らかになった。従って、加齢や一定以上のゲノム損傷応答誘発に対する色素幹細胞
の運命は分化であると結論づけた。
【0037】
さらに、これらバルジ領域において異所性分化した色素細胞において、ゲノム損傷応答
マーカーであるγ−H2AX(リン酸化を受けたヒストンH2AX)の残存を認めた。バ
ルジ領域において異所性に分化した色素細胞は、成長期後期には最終的にバルジ領域から
排除されることを発見した。
【0038】
また、本発明者らは、ゲノム損傷応答の主要な介在因子であるATM遺伝子を欠損した
マウスについても、放射線照射の影響を調べた。一般に、ゲノム損傷応答では、ATM、
ATM and Rad3−related(ATR)、H2AX(γ−H2AX)、5
3BP1等の種々の蛋白質が活性化され、これらの蛋白質群が協働して損傷したDNAが
修復されることが知られている(J.Wada Harper et al. Molecular Cell. 28:739-745. 2
007, Tom Misteli et al. Molecular Cell Biology. 10:243-254. 2009)。そのため、こ
れらの蛋白質群の一種であるATM欠損マウスを用いることにより、色素幹細胞の異所性
分化がゲノム損傷応答の一部として行われている可能性について調べることができる。そ
の結果、ATMを欠損した色素幹細胞では、野生型と比較して、色素細胞への分化をより
敏感に引き起こし、より早期の脱色素化を引き起こすことが分かった。
【0039】
以上の結果より、ゲノム損傷応答不全により、バルジ領域において色素幹細胞が樹状の
形態をとる異所性の色素細胞に分化し、分化した色素細胞がバルジ領域から排除されるこ
とにより、色素幹細胞の枯渇が生じ、白毛化することが明らかになった。
【0040】
また、ATM欠損マウスの解析結果では、ATM等のゲノム損傷誘発原により活性化さ
れた蛋白質群は、ゲノム損傷応答経路を活性化させることにより、DNAの損傷が修復可
能なレベルである場合には、色素幹細胞を分化への運命決定から保護することでその幹細
胞の維持に寄与していることを示唆している。
【0041】
以上のことから、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の
蛋白質が、色素幹細胞の自己複製能力や未分化性の維持に必須であり、その維持不全によ
り脱色素化を引き起こすことが明らかとなった。そのため、ゲノム損傷誘発原により活性
化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質により、色素幹細胞の自己複製能力および
未分化性を維持促進することができ、色素幹細胞を維持することにより脱色素化を抑制す
ることが可能であることが明らかとなり、本発明を完成した。
【0042】
また、上述したメカニズムは色素幹細胞に限られたものではなく、ゲノム損傷誘発原に
より活性化された蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質が、組織幹細胞の自己複製能力や
未分化性の維持にも重要であることは明らかである。
【0043】
また、ゲノム損傷の蓄積に伴う組織幹細胞の枯渇が、近年、ゲノム不安定性を有する動
物において実験的に示されており、同時にこれらが組織の再生能力の低下を引き起こすこ
とで、老化形質の発現を引き起こすことが示唆されている。この組織幹細胞の枯渇は、上
述した色素幹細胞の枯渇と同様のメカニズムにより引き起こされていると考えられる。し
たがって、ゲノム損傷誘発原により活性化された蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質が
、組織幹細胞の自己複製能力や未分化性を維持促進することにより、組織幹細胞の枯渇を
抑制し、老化を抑制することが可能であると考えられる。
【0044】
<用語の説明>
本明細書および特許請求の範囲において、各用語の意義は、以下の通り定義される。
【0045】
(i)毛髪
毛髪とは、ケラチンを主成分とする毛幹及び毛根からなる皮膚の付属器官のことをいい
、例えば、頭髪や体毛等がこれに含まれる。
【0046】
(ii)毛髪の脱色素化
毛髪の脱色素化とは、本来メラニン色素を有する毛髪が、色素細胞からのメラニン色素
の供給が減少することにより、毛髪の色が白色に近づいていくことをいう。例えば、頭髪
の白髪への変化や体毛の白毛化がこれに含まれる。
【0047】
(iii)幹細胞
幹細胞とは、高い自己維持能(自己複製能)を示し、分化した子孫細胞を供給できる未
分化な細胞のことをいう。例えば、色素細胞を子孫細胞として供給する色素幹細胞や、未
分化角化細胞としてバルジ領域を構成し、表皮、汗腺及び皮脂腺等の皮膚付属器官へと分
化する能力を有する毛包幹細胞等が挙げられる。
【0048】
(iv)ゲノム損傷誘発原
ゲノム損傷誘発原とは、日々の代謝で生じる活性酸素、環境や食品中の紫外線、放射線
、発がん物質、その他ゲノム損傷応答(DDR)を惹起しうる種々の因子を含んでいる。
【0049】
(v)ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群
ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群とは、ゲノムが損傷することにより活性
化される蛋白質群のことであり、これらの蛋白質がゲノム損傷応答システムにおいて協働
することによりゲノムを修復している。このような蛋白質としては、例えば、ATM、A
TR、H2AX(γ−H2AX)、53BP1等が挙げられる。我々の体細胞では、1日
に細胞あたり約10〜100万個のゲノム損傷が生じており、このゲノム損傷をゲノム損
傷応答システムが修復することで、ゲノムを安定に保っている。
【0050】
(vi)制御因子
制御因子とは、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群の活性を制御する化合物
、オリゴヌクレオチド、ペプチド、蛋白質等のことをいう。
【0051】
(vii)ニッチ
ニッチとは、幹細胞にとっての生態的適所をいう。通常、組織幹細胞の局在部位をニッ
チと呼んでいる。ニッチ環境において、幹細胞は未分化な状態に維持される。例えば、色
素幹細胞や毛包幹細胞のニッチはバルジ領域に存在する。通常、バルジ領域において色素
幹細胞から増殖した子孫細胞の一部は、バルジ領域から毛母へ移動し、そこで色素細胞に
分化・成熟してメラニン色素を毛に供給する。
【0052】
(viii)色素幹細胞の異所性分化
色素幹細胞の異所性分化とは、本来野生型マウスでは未分化な状態で維持されるバルジ
領域(ニッチ)において、異所性に(場違いに)色素幹細胞がメラニン顆粒を持ち樹状の
形態を獲得するなど成熟分化してしまうことをいう。通常、この異所性分化した細胞は維
持されないで消失する。例えば、バルジ領域において色素幹細胞が未分化性を喪失し、成
熟した色素細胞に分化すること等をいう。
【0053】
(ix)アミノ酸配列の相同性(%)
アミノ酸配列の相同性(%)とは、配列を整列させ最大のパーセント配列同一性を得る
ために必要に応じて間隙を導入し、如何なる保存的な置換も配列同一性の一部と考えない
状態での、特定のアミノ酸配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の
パーセントとして定義される。ここで使用される%同一性の値は、WU−BLAST−2
(Altschulら, Methods in Enzymology 266:46
0−480(1996))により得られる。WU−BLAST−2は、そのほとんどがデ
フォルト値に設定されるいくつかのサーチパラメータを使用する。調節可能なパラメータ
は次の値に設定される:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.
125、ワード閾値(T)=11。%アミノ酸配列同一性の値は、適合した同一残基の数
を整列領域における全残基数で割ることにより決定される。
【0054】
(x)塩基配列の相同性(%)
塩基配列の相同性(%)とは、配列を整列させ最大のパーセント配列同一性を得るため
に必要に応じて間隙を導入し、如何なる保存的な置換も配列同一性の一部と考えない状態
での、特定の塩基配列中のヌクレオチド残基と同一である候補配列中のヌクレオチド残基
のパーセントとして定義される。ヌクレオチド配列同一性を決定するためのアラインメン
トは、当業者の知るところである様々な方法、例えばBLAST、BLAST-2、AL
IGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュー
タソフトウエアを使用することにより達成できる。当業者であれば、比較される配列の全
長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含み、ア
ラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。例えば、2つ
の配列の特定のフラグメント又は小領域は、それ自身の全断片間で比較するよりも、程度
の差はあれ相同性を有していると認識される。
【0055】
(xi)欠失・置換・付加
ポリペプチド変異体は天然の蛋白質とは異なった形態になり得る。「置換」変異体は、
天然配列の少なくとも1つのアミノ酸が除去され、その場所の同じ位置に異なるアミノ酸
が挿入されたものである。置換は、分子中の1つのアミノ酸のみが置換される単一置換で
あるか、又は同じ分子中で2又はそれ以上のアミノ酸が置換される多重置換でありうる。
「挿入」変異体は、天然配列において特定の位置のアミノ酸にすぐ隣接して一又は複数の
アミノ酸が挿入されたものである。アミノ酸にすぐ隣接してとは、アミノ酸のα-カルボ
キシル又はα-官能基のいずれかに結合することを意味する。「欠失」変異体は、天然ア
ミノ酸配列中の一又は複数のアミノ酸が除去されたものである。通常は、欠失変異体は、
分子の特定の領域において一又は二のアミノ酸が欠失している。ペプチド変異体はまたエ
ピトープタグ異種性のポリペプチドに加えて、残基に対する共有結合修飾を含む。
【0056】
(xii)ストリンジェンシー
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者により容易に決定可
能であり、一般的にプローブ長、洗浄温度、及び塩分濃度に応じて経験的に算出される。
一般的には、プローブが長くなると適切なアニーリングのためにはより高い温度が必要と
なる一方、より短いプローブでは必要な温度はより低い。ハイブリダイゼーションは、一
般的に、相補的ストランドがそのTm(融解温度)に近いがそれ以下の環境中に存在する
場合、変性DNAの再アニール化能力に依存する。プローブとハイブリダイズ可能な配列
との間の所望の相同性の程度が高ければ高い程、使用可能な相対温度は高くなる。その結
果、相対温度がより高くなれば反応条件がよりストリンジェントになる一方、より低い温
度であればそうではないことになる。さらに、ストリンジェンシーは塩分濃度に反比例す
る。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーのさらなる詳細と説明には、Au
subelら, Protocol in Molecular Biology(19
95)を参照のこと。
【0057】
「ストリンジェントな条件」とは、(1)洗浄に低イオン強度及び高温、例えば50℃で
0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%硫酸ドデシ
ルナトリウムを使用し;(2)ホルムアミドのような変性剤、例えば、0.1%ウシ血清ア
ルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/750mMの塩化ナト
リウム、75mMクエン酸ナトリウムを伴うpH6.5の50mMリン酸ナトリウムバッ
ファーと共に50%(容量/容量)ホルムアミドを42℃で使用することを特徴とする反応
条件により例示される。あるいは、ストリンジェントな条件は、50%ホルムアミド、5
xSSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナ
トリウム(pH6.8)、0.1%ピロ燐酸ナトリウム、5xデンハート溶液、超音波処理
鮭精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、及び10%硫酸デキストランを42℃
で使用し、0.2xSSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)及び50%ホルムアル
デヒドで55℃で洗浄し、続いて55℃でEDTAを含有する0.1xSSCVからなる
高ストリンジェント洗浄を行うものである。プローブ長等のようなファクターに必要に応
じて適応するために、温度、イオン強度等をどのように調節するかは、当業者であれば認
識している。
【0058】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
<実施形態1:ATMまたはATM変異体を含む未分化性維持促進剤>
本実施形態は、ATMまたは色素細胞の未分化性維持促進作用を有するATM変異体を
含む、色素幹細胞の未分化性維持促進剤である。後述の実施例に示すように、本発明者ら
は、ゲノム損傷応答の主要な介在因子であるATM遺伝子を欠損したマウスについても、
放射線照射の影響を調べている。一般に、ゲノム損傷応答では、ATM、ATR、H2A
X(γ−H2AX)、53BP1等の種々の蛋白質が活性化され、これらの蛋白質群が協
働して損傷したDNAが修復されることが知られている(J.Wada Harper et al. Molecul
ar Cell. 28:739-745. 2007, Tom Misteli et al. Molecular Cell Biology. 10:243-254
. 2009)。そのため、これらの蛋白質群の一種であるATM欠損マウスを用いることによ
り、色素幹細胞の異所性分化がゲノム損傷応答の一部として行われている可能性について
調べることができる。その結果、ATMを欠損した色素幹細胞では、野生型と比較して、
色素細胞への分化をより敏感に引き起こし、より早期の脱色素化を引き起こすことが分か
った。この実験によって、ATMまたはATM変異体は、色素幹細胞の未分化性を維持促
進するという機能を有するため、それらを含む剤自体も色素幹細胞の未分化性を維持促進
することが実証されたと言える。
【0059】
このように、本発明者らは、ゲノム損傷誘発原により色素幹細胞のゲノムが損傷を受ける
と、上述した色素幹細胞の異所性分化が引き起こされることを見出している。すなわち、
色素幹細胞の未分化性維持促進とは、このようなゲノム損傷誘発原により引き起こされる
、バルジ領域における色素幹細胞の成熟色素細胞への分化を抑制することをいう。なお、
これらの色素幹細胞の未分化性維持促進の説明は、他の実施形態にも共通する。
【0060】
ここで、本実施形態の剤は、例えば、医薬品、化粧品または機能性食品などとして用い
る場合には、経口投与や経皮投与によりその効果を奏する可能性が考えられ、その剤形と
して、例えば散剤、丸剤、錠剤、カプセル剤、クリーム剤、内用液剤、注射剤であっても
よく、また、ヘアトニック、ヘアローション、ヘアクリーム、エアゾール、軟膏、シャン
プーやリンス等へ添加することも考えられる。
【0061】
しかしながら、このようなATMまたはATM変異体を含む剤の具体的な用途としては
、特に医薬品用途に限定されるわけではない。例えば、再生医療に用いる人工臓器・人工
組織培養のためのバイオリアクターなどの中で、ATMまたはATM変異体を適度な濃度
になるように添加して、再生医療に用いる人工臓器・人工組織の供給源となる幹細胞の未
分化性を維持するために用いることもできる。すなわち、ATMまたはATM変異体を含
む剤の具体的な用途としては、ヒトを含む哺乳動物の生体内での用途に限定されることは
なく、試験管内、バイオリアクター内、人工臓器・人工組織内などの哺乳動物の生体外で
の使用も可能である。例えば、再生医療分野で毛髪の移植医療のために用いられる、人工
培養された毛髪が白髪化しないように健全な状態で連続的に培養するために、ATMまた
はATM変異体を適度な濃度になるように添加して、再生医療に用いる人工毛髪の供給源
となる幹細胞の未分化性を維持するために用いることもできる。なお、これらの剤につい
ての説明は、他の実施形態にも共通する。
【0062】
<実施形態2:ATMまたはATM変異体の発現ベクターを含む未分化性維持促進剤>
本実施形態は、ATMまたはその変異体が色素幹細胞を含む領域において発現するよう
に制御するプロモーター配列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている、ATM
またはATM変異体をコードするヌクレオチド配列と、を有するベクターを含む、色素幹
細胞の未分化性維持促進剤である。後述の実施例に示すように、ATM遺伝子を欠損した
マウスを用いた実験によって、ATMまたはATM変異体は、色素幹細胞の未分化性を維
持促進するという機能を有するため、それらをコードするヌクレオチド配列を有するベク
ターを含む剤自体も色素幹細胞の未分化性を維持促進する。
【0063】
ここでいうプロモーターとは、プロモーター配列の下流に存在するポリペプチドの発現
を制御する配列のことをいい、ここでは特に色素幹細胞を含む領域において発現させるこ
とが可能なプロモーターが望ましい。例えば、K14プロモーターやK5プロモーター等
が挙げられる。なお、これらのプロモーターの説明は、他の実施形態にも共通する。
【0064】
ここでいうベクターは、組換えDNA手順に都合よく付すことのできるいずれのベクタ
ーであってもよく、またベクターの選択は該ベクターを導入しようとする宿主細胞に依存
することが多い。従って、ベクターは、自己複製ベクター、すなわちその複製が染色体複
製から独立している染色体外物質として存在するベクターであってもよい。そのようなベ
クターとしては例えばプラスミド、ファージ、コスミド、ミニ、クロモゾーム、またはウ
イルスが挙げられる。あるいはまた、ベクターは、宿主細胞に導入されると宿主細胞ゲノ
ムに一体化されそしてその中に一体化された一つまたは複数のクロモゾームと共に複製さ
れるものであってよい。適切なベクターの例は細菌発現ベクターおよび酵母発現ベクター
である。前記ウイルスベクターの例として、アデノウイルス、レトロウイルス、SV40
のようなパポバウイルス、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス等の
ウイルス由来のベクター等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。本発明にお
いて構築した発現ベクターにより、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含ま
れる一種以上の蛋白質を任意の場所で発現させることができる。なお、これらのベクター
の説明は、他の実施形態にも共通する。
【0065】
<実施形態3:ATMまたはATM変異体を含む自己複製維持促進剤>
本実施形態は、ATMまたは色素細胞の未分化性維持促進作用を有するATM変異体を
含む、色素幹細胞の自己複製維持促進剤である。後述の実施例に示すように、本発明者ら
は、ゲノム損傷応答の主要な介在因子であるATM遺伝子を欠損したマウスについても、
放射線照射の影響を調べている。一般に、ゲノム損傷応答では、ATM、ATR、H2A
X(γ−H2AX)、53BP1等の種々の蛋白質が活性化され、これらの蛋白質群が協
働して損傷したDNAが修復されることが知られている(J.Wada Harper et al. Molecul
ar Cell. 28:739-745. 2007, Tom Misteli et al. Molecular Cell Biology. 10:243-254
. 2009)。そのため、これらの蛋白質群の一種であるATM欠損マウスを用いることによ
り、色素幹細胞の異所性分化がゲノム損傷応答の一部として行われている可能性について
調べることができる。その結果、ATMを欠損した色素幹細胞では、野生型と比較して、
色素細胞への分化をより敏感に引き起こし、より早期の脱色素化を引き起こすことが分か
った。この実験によって、ATMまたはATM変異体は、色素幹細胞の自己複製能力の維
持を促進するという機能を有するため、それらを含む剤自体も色素幹細胞の自己複製能力
の維持を促進することが実証されたと言える。
【0066】
このように、本発明者らは、ゲノム損傷誘発原により色素幹細胞のゲノムが損傷を受け
ると、上述した色素幹細胞の異所性分化が引き起こされることを見出している。すなわち
、色素幹細胞の自己複製維持促進とは、ゲノム損傷誘発原により引き起こされる、色素幹
細胞の成熟色素細胞への異常な成熟分化に伴う、バルジ領域における色素幹細胞の自己複
製阻害を抑制することをいう。なお、これらの色素幹細胞の自己複製維持促進についての
説明は、他の実施形態にも共通する。また、その他の点については、実施形態1と同様で
あるため繰り返さない。
【0067】
<実施形態4:ATMまたはATM変異体の発現ベクターを含む自己複製維持促進剤>
本実施形態は、ATMまたはその変異体が色素幹細胞を含む領域において発現するよう
に制御するプロモーター配列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている、ATM
またはATM変異体をコードするヌクレオチド配列と、を有するベクターを含む、色素幹
細胞の自己複製維持促進剤である。後述の実施例に示すように、ATMまたはATM変異
体は、色素幹細胞の自己複製能力の維持を促進するという機能を有するため、それらをコ
ードするヌクレオチド配列を有するベクターを含む剤自体も色素幹細胞の自己複製能力の
維持を促進する。その他の点については、実施形態3と同様であるため繰り返さない。
【0068】
<実施形態1〜4:ATMおよびATM変異体の説明>
上記の実施形態1〜4に共通して、ヒトのATM蛋白質のアミノ酸配列は公知であり、
以下の配列番号1に示すアミノ酸配列(NCBI Reference Sequence: NP_000042.3 ataxia
telangiectasia mutated isoform 1 [Homo sapiens])を有する。
【0069】
配列番号1:N末端からC末端へ記載(3056aa)
1 mslvlndlli ccrqlehdra terkkevekf krlirdpeti khldrhsdsk qgkylnwdav
61 frflqkyiqk eteclriakp nvsastqasr qkkmqeissl vkyfikcanr raprlkcqel
121 lnyimdtvkd ssngaiygad csnillkdil svrkywceis qqqwlelfsv yfrlylkpsq
181 dvhrvlvari ihavtkgccs qtdglnskfl dffskaiqca rqeksssgln hilaaltifl
241 ktlavnfrir vcelgdeilp tllyiwtqhr lndslkevii elfqlqiyih hpkgaktqek
301 gayestkwrs ilynlydllv neishigsrg kyssgfrnia vkenlielma dichqvfned
361 trsleisqsy tttqressdy svpckrkkie lgwevikdhl qksqndfdlv pwlqiatqli
421 skypaslpnc elspllmils qllpqqrhge rtpyvlrclt evalcqdkrs nlessqksdl
481 lklwnkiwci tfrgisseqi qaenfgllga iiqgslvevd refwklftgs acrpscpavc
541 cltlalttsi vpgtvkmgie qnmcevnrsf slkesimkwl lfyqlegdle nstevppilh
601 snfphlvlek ilvsltmknc kaamnffqsv pecehhqkdk eelsfsevee lflqttfdkm
661 dfltivrecg iekhqssigf svhqnlkesl drcllglseq llnnysseit nsetlvrcsr
721 llvgvlgcyc ymgviaeeea ykselfqkak slmqcagesi tlfknktnee frigslrnmm
781 qlctrclsnc tkkspnkias gfflrlltsk lmndiadick slasfikkpf drgevesmed
841 dtngnlmeve dqssmnlfnd ypdssvsdan epgesqstig ainplaeeyl skqdllfldm
901 lkflclcvtt aqtntvsfra adirrkllml idsstleptk slhlhmylml lkelpgeeyp
961 lpmedvlell kplsnvcsly rrdqdvckti lnhvlhvvkn lgqsnmdsen trdaqgqflt
1021 vigafwhltk erkyifsvrm alvnclktll eadpyskwai lnvmgkdfpv nevftqflad
1081 nhhqvrmlaa esinrlfqdt kgdssrllka lplklqqtaf enaylkaqeg mremshsaen
1141 petldeiynr ksvlltliav vlscspicek qalfalcksv kenglephlv kkvlekvset
1201 fgyrrledfm ashldylvle wlnlqdteyn lssfpfilln ytniedfyrs cykvliphlv
1261 irshfdevks ianqiqedwk slltdcfpki lvnilpyfay egtrdsgmaq qretatkvyd
1321 mlksenllgk qidhlfisnl peivvellmt lhepanssas qstdlcdfsg dldpapnpph
1381 fpshvikatf ayisnchktk lksileilsk spdsyqkill aiceqaaetn nvykkhrilk
1441 iyhlfvslll kdiksglgga wafvlrdviy tlihyinqrp scimdvslrs fslccdllsq
1501 vcqtavtyck dalenhlhvi vgtliplvye qvevqkqvld llkylvidnk dnenlyitik
1561 lldpfpdhvv fkdlritqqk ikysrgpfsl leeinhflsv svydalpltr leglkdlrrq
1621 lelhkdqmvd imrasqdnpq dgimvklvvn llqlskmain htgekevlea vgsclgevgp
1681 idfstiaiqh skdasytkal klfedkelqw tfimltylnn tlvedcvkvr saavtclkni
1741 latktghsfw eiykmttdpm laylqpfrts rkkflevprf dkenpfegld dinlwiplse
1801 nhdiwiktlt cafldsggtk ceilqllkpm cevktdfcqt vlpylihdil lqdtneswrn
1861 llsthvqgff tsclrhfsqt srsttpanld sesehffrcc ldkksqrtml avvdymrrqk
1921 rpssgtifnd afwldlnyle vakvaqscaa hftallyaei yadkksmddq ekrslafeeg
1981 sqsttissls ekskeetgis lqdllleiyr sigepdslyg cgggkmlqpi trlrtyehea
2041 mwgkalvtyd letaipsstr qagiiqalqn lglchilsvy lkgldyenkd wcpeleelhy
2101 qaawrnmqwd hctsvskeve gtsyheslyn alqslrdref stfyeslkya rvkeveemck
2161 rslesvysly ptlsrlqaig elesigelfs rsvthrqlse vyikwqkhsq llkdsdfsfq
2221 epimalrtvi leilmekemd nsqrecikdi ltkhlvelsi lartfkntql peraifqikq
2281 ynsvscgvse wqleeaqvfw akkeqslals ilkqmikkld ascaannpsl kltyteclrv
2341 cgnwlaetcl enpavimqty lekavevagn ydgessdelr ngkmkaflsl arfsdtqyqr
2401 ienymkssef enkqallkra keevgllreh kiqtnrytvk vqreleldel alralkedrk
2461 rflckaveny incllsgeeh dmwvfrlcsl wlensgvsev ngmmkrdgmk iptykflplm
2521 yqlaarmgtk mmgglgfhev lnnlisrism dhphhtlfii lalananrde fltkpevarr
2581 sritknvpkq ssqldedrte aanriictir srrpqmvrsv ealcdayiil anldatqwkt
2641 qrkginipad qpitklknle dvvvptmeik vdhtgeygnl vtiqsfkaef rlaggvnlpk
2701 iidcvgsdgk errqlvkgrd dlrqdavmqq vfqmcntllq rntetrkrkl tictykvvpl
2761 sqrsgvlewc tgtvpigefl vnnedgahkr yrpndfsafq cqkkmmevqk ksfeekyevf
2821 mdvcqnfqpv fryfcmekfl dpaiwfekrl aytrsvatss ivgyilglgd rhvqniline
2881 qsaelvhidl gvafeqgkil ptpetvpfrl trdivdgmgi tgvegvfrrc cektmevmrn
2941 sqetlltive vllydplfdw tmnplkalyl qqrpedetel hptlnaddqe ckrnlsdidq
3001 sfnkvaervl mrlqeklkgv eegtvlsvgg qvnlliqqai dpknlsrlfp gwkawv//
【0070】
また、ヒトのATM遺伝子の塩基配列も同様に公知であり、以下の配列番号2(NCBI R
eference Sequence: NM_000051.3 Homo sapiens ataxia telangiectasia mutated (AT
M), transcript variant 1, mRNA)に示す塩基配列を有する。
【0071】
配列番号2:5末端から3’末端へ記載(13147bp mRNA)
1 ccggagcccg agccgaaggg cgagccgcaa acgctaagtc gctggccatt ggtggacatg
61 gcgcaggcgc gtttgctccg acgggccgaa tgttttgggg cagtgttttg agcgcggaga
121 ccgcgtgata ctggatgcgc atgggcatac cgtgctctgc ggctgcttgg cgttgcttct
181 tcctccagaa gtgggcgctg ggcagtcacg cagggtttga accggaagcg ggagtaggta
241 gctgcgtggc taacggagaa aagaagccgt ggccgcggga ggaggcgaga ggagtcggga
301 tctgcgctgc agccaccgcc gcggttgata ctactttgac cttccgagtg cagtgacagt
361 gatgtgtgtt ctgaaattgt gaaccatgag tctagtactt aatgatctgc ttatctgctg
421 ccgtcaacta gaacatgata gagctacaga acgaaagaaa gaagttgaga aatttaagcg
481 cctgattcga gatcctgaaa caattaaaca tctagatcgg cattcagatt ccaaacaagg
541 aaaatatttg aattgggatg ctgtttttag atttttacag aaatatattc agaaagaaac
601 agaatgtctg agaatagcaa aaccaaatgt atcagcctca acacaagcct ccaggcagaa
661 aaagatgcag gaaatcagta gtttggtcaa atacttcatc aaatgtgcaa acagaagagc
721 acctaggcta aaatgtcaag aactcttaaa ttatatcatg gatacagtga aagattcatc
781 taatggtgct atttacggag ctgattgtag caacatacta ctcaaagaca ttctttctgt
841 gagaaaatac tggtgtgaaa tatctcagca acagtggtta gaattgttct ctgtgtactt
901 caggctctat ctgaaacctt cacaagatgt tcatagagtt ttagtggcta gaataattca
961 tgctgttacc aaaggatgct gttctcagac tgacggatta aattccaaat ttttggactt
1021 tttttccaag gctattcagt gtgcgagaca agaaaagagc tcttcaggtc taaatcatat
1081 cttagcagct cttactatct tcctcaagac tttggctgtc aactttcgaa ttcgagtgtg
1141 tgaattagga gatgaaattc ttcccacttt gctttatatt tggactcaac ataggcttaa
1201 tgattcttta aaagaagtca ttattgaatt atttcaactg caaatttata tccatcatcc
1261 gaaaggagcc aaaacccaag aaaaaggtgc ttatgaatca acaaaatgga gaagtatttt
1321 atacaactta tatgatctgc tagtgaatga gataagtcat ataggaagta gaggaaagta
1381 ttcttcagga tttcgtaata ttgccgtcaa agaaaatttg attgaattga tggcagatat
1441 ctgtcaccag gtttttaatg aagataccag atccttggag atttctcaat cttacactac
1501 tacacaaaga gaatctagtg attacagtgt cccttgcaaa aggaagaaaa tagaactagg
1561 ctgggaagta ataaaagatc accttcagaa gtcacagaat gattttgatc ttgtgccttg
1621 gctacagatt gcaacccaat taatatcaaa gtatcctgca agtttaccta actgtgagct
1681 gtctccatta ctgatgatac tatctcagct tctaccccaa cagcgacatg gggaacgtac
1741 accatatgtg ttacgatgcc ttacggaagt tgcattgtgt caagacaaga ggtcaaacct
1801 agaaagctca caaaagtcag atttattaaa actctggaat aaaatttggt gtattacctt
1861 tcgtggtata agttctgagc aaatacaagc tgaaaacttt ggcttacttg gagccataat
1921 tcagggtagt ttagttgagg ttgacagaga attctggaag ttatttactg ggtcagcctg
1981 cagaccttca tgtcctgcag tatgctgttt gactttggca ctgaccacca gtatagttcc
2041 aggaacggta aaaatgggaa tagagcaaaa tatgtgtgaa gtaaatagaa gcttttcttt
2101 aaaggaatca ataatgaaat ggctcttatt ctatcagtta gagggtgact tagaaaatag
2161 cacagaagtg cctccaattc ttcacagtaa ttttcctcat cttgtactgg agaaaattct
2221 tgtgagtctc actatgaaaa actgtaaagc tgcaatgaat tttttccaaa gcgtgccaga
2281 atgtgaacac caccaaaaag ataaagaaga actttcattc tcagaagtag aagaactatt
2341 tcttcagaca acttttgaca agatggactt tttaaccatt gtgagagaat gtggtataga
2401 aaagcaccag tccagtattg gcttctctgt ccaccagaat ctcaaggaat cactggatcg
2461 ctgtcttctg ggattatcag aacagcttct gaataattac tcatctgaga ttacaaattc
2521 agaaactctt gtccggtgtt cacgtctttt ggtgggtgtc cttggctgct actgttacat
2581 gggtgtaata gctgaagagg aagcatataa gtcagaatta ttccagaaag ccaagtctct
2641 aatgcaatgt gcaggagaaa gtatcactct gtttaaaaat aagacaaatg aggaattcag
2701 aattggttcc ttgagaaata tgatgcagct atgtacacgt tgcttgagca actgtaccaa
2761 gaagagtcca aataagattg catctggctt tttcctgcga ttgttaacat caaagctaat
2821 gaatgacatt gcagatattt gtaaaagttt agcatccttc atcaaaaagc catttgaccg
2881 tggagaagta gaatcaatgg aagatgatac taatggaaat ctaatggagg tggaggatca
2941 gtcatccatg aatctattta acgattaccc tgatagtagt gttagtgatg caaacgaacc
3001 tggagagagc caaagtacca taggtgccat taatccttta gctgaagaat atctgtcaaa
3061 gcaagatcta cttttcttag acatgctcaa gttcttgtgt ttgtgtgtaa ctactgctca
3121 gaccaatact gtgtccttta gggcagctga tattcggagg aaattgttaa tgttaattga
3181 ttctagcacg ctagaaccta ccaaatccct ccacctgcat atgtatctaa tgcttttaaa
3241 ggagcttcct ggagaagagt accccttgcc aatggaagat gttcttgaac ttctgaaacc
3301 actatccaat gtgtgttctt tgtatcgtcg tgaccaagat gtttgtaaaa ctattttaaa
3361 ccatgtcctt catgtagtga aaaacctagg tcaaagcaat atggactctg agaacacaag
3421 ggatgctcaa ggacagtttc ttacagtaat tggagcattt tggcatctaa caaaggagag
3481 gaaatatata ttctctgtaa gaatggccct agtaaattgc cttaaaactt tgcttgaggc
3541 tgatccttat tcaaaatggg ccattcttaa tgtaatggga aaagactttc ctgtaaatga
3601 agtatttaca caatttcttg ctgacaatca tcaccaagtt cgcatgttgg ctgcagagtc
3661 aatcaataga ttgttccagg acacgaaggg agattcttcc aggttactga aagcacttcc
3721 tttgaagctt cagcaaacag cttttgaaaa tgcatacttg aaagctcagg aaggaatgag
3781 agaaatgtcc catagtgctg agaaccctga aactttggat gaaatttata atagaaaatc
3841 tgttttactg acgttgatag ctgtggtttt atcctgtagc cctatctgcg aaaaacaggc
3901 tttgtttgcc ctgtgtaaat ctgtgaaaga gaatggatta gaacctcacc ttgtgaaaaa
3961 ggttttagag aaagtttctg aaacttttgg atatagacgt ttagaagact ttatggcatc
4021 tcatttagat tatctggttt tggaatggct aaatcttcaa gatactgaat acaacttatc
4081 ttcttttcct tttattttat taaactacac aaatattgag gatttctata gatcttgtta
4141 taaggttttg attccacatc tggtgattag aagtcatttt gatgaggtga agtccattgc
4201 taatcagatt caagaggact ggaaaagtct tctaacagac tgctttccaa agattcttgt
4261 aaatattctt ccttattttg cctatgaggg taccagagac agtgggatgg cacagcaaag
4321 agagactgct accaaggtct atgatatgct taaaagtgaa aacttattgg gaaaacagat
4381 tgatcactta ttcattagta atttaccaga gattgtggtg gagttattga tgacgttaca
4441 tgagccagca aattctagtg ccagtcagag cactgacctc tgtgactttt caggggattt
4501 ggatcctgct cctaatccac ctcattttcc atcgcatgtg attaaagcaa catttgccta
4561 tatcagcaat tgtcataaaa ccaagttaaa aagcatttta gaaattcttt ccaaaagccc
4621 tgattcctat cagaaaattc ttcttgccat atgtgagcaa gcagctgaaa caaataatgt
4681 ttataagaag cacagaattc ttaaaatata tcacctgttt gttagtttat tactgaaaga
4741 tataaaaagt ggcttaggag gagcttgggc ctttgttctt cgagacgtta tttatacttt
4801 gattcactat atcaaccaaa ggccttcttg tatcatggat gtgtcattac gtagcttctc
4861 cctttgttgt gacttattaa gtcaggtttg ccagacagcc gtgacttact gtaaggatgc
4921 tctagaaaac catcttcatg ttattgttgg tacacttata ccccttgtgt atgagcaggt
4981 ggaggttcag aaacaggtat tggacttgtt gaaatactta gtgatagata acaaggataa
5041 tgaaaacctc tatatcacga ttaagctttt agatcctttt cctgaccatg ttgtttttaa
5101 ggatttgcgt attactcagc aaaaaatcaa atacagtaga ggaccctttt cactcttgga
5161 ggaaattaac cattttctct cagtaagtgt ttatgatgca cttccattga caagacttga
5221 aggactaaag gatcttcgaa gacaactgga actacataaa gatcagatgg tggacattat
5281 gagagcttct caggataatc cgcaagatgg gattatggtg aaactagttg tcaatttgtt
5341 gcagttatcc aagatggcaa taaaccacac tggtgaaaaa gaagttctag aggctgttgg
5401 aagctgcttg ggagaagtgg gtcctataga tttctctacc atagctatac aacatagtaa
5461 agatgcatct tataccaagg cccttaagtt atttgaagat aaagaacttc agtggacctt
5521 cataatgctg acctacctga ataacacact ggtagaagat tgtgtcaaag ttcgatcagc
5581 agctgttacc tgtttgaaaa acattttagc cacaaagact ggacatagtt tctgggagat
5641 ttataagatg acaacagatc caatgctggc ctatctacag ccttttagaa catcaagaaa
5701 aaagttttta gaagtaccca gatttgacaa agaaaaccct tttgaaggcc tggatgatat
5761 aaatctgtgg attcctctaa gtgaaaatca tgacatttgg ataaagacac tgacttgtgc
5821 ttttttggac agtggaggca caaaatgtga aattcttcaa ttattaaagc caatgtgtga
5881 agtgaaaact gacttttgtc agactgtact tccatacttg attcatgata ttttactcca
5941 agatacaaat gaatcatgga gaaatctgct ttctacacat gttcagggat ttttcaccag
6001 ctgtcttcga cacttctcgc aaacgagccg atccacaacc cctgcaaact tggattcaga
6061 gtcagagcac tttttccgat gctgtttgga taaaaaatca caaagaacaa tgcttgctgt
6121 tgtggactac atgagaagac aaaagagacc ttcttcagga acaattttta atgatgcttt
6181 ctggctggat ttaaattatc tagaagttgc caaggtagct cagtcttgtg ctgctcactt
6241 tacagcttta ctctatgcag aaatctatgc agataagaaa agtatggatg atcaagagaa
6301 aagaagtctt gcatttgaag aaggaagcca gagtacaact atttctagct tgagtgaaaa
6361 aagtaaagaa gaaactggaa taagtttaca ggatcttctc ttagaaatct acagaagtat
6421 aggggagcca gatagtttgt atggctgtgg tggagggaag atgttacaac ccattactag
6481 actacgaaca tatgaacacg aagcaatgtg gggcaaagcc ctagtaacat atgacctcga
6541 aacagcaatc ccctcatcaa cacgccaggc aggaatcatt caggccttgc agaatttggg
6601 actctgccat attctttccg tctatttaaa aggattggat tatgaaaata aagactggtg
6661 tcctgaacta gaagaacttc attaccaagc agcatggagg aatatgcagt gggaccattg
6721 cacttccgtc agcaaagaag tagaaggaac cagttaccat gaatcattgt acaatgctct
6781 acaatctcta agagacagag aattctctac attttatgaa agtctcaaat atgccagagt
6841 aaaagaagtg gaagagatgt gtaagcgcag ccttgagtct gtgtattcgc tctatcccac
6901 acttagcagg ttgcaggcca ttggagagct ggaaagcatt ggggagcttt tctcaagatc
6961 agtcacacat agacaactct ctgaagtata tattaagtgg cagaaacact cccagcttct
7021 caaggacagt gattttagtt ttcaggagcc tatcatggct ctacgcacag tcattttgga
7081 gatcctgatg gaaaaggaaa tggacaactc acaaagagaa tgtattaagg acattctcac
7141 caaacacctt gtagaactct ctatactggc cagaactttc aagaacactc agctccctga
7201 aagggcaata tttcaaatta aacagtacaa ttcagttagc tgtggagtct ctgagtggca
7261 gctggaagaa gcacaagtat tctgggcaaa aaaggagcag agtcttgccc tgagtattct
7321 caagcaaatg atcaagaagt tggatgccag ctgtgcagcg aacaatccca gcctaaaact
7381 tacatacaca gaatgtctga gggtttgtgg caactggtta gcagaaacgt gcttagaaaa
7441 tcctgcggtc atcatgcaga cctatctaga aaaggcagta gaagttgctg gaaattatga
7501 tggagaaagt agtgatgagc taagaaatgg aaaaatgaag gcatttctct cattagcccg
7561 gttttcagat actcaatacc aaagaattga aaactacatg aaatcatcgg aatttgaaaa
7621 caagcaagct ctcctgaaaa gagccaaaga ggaagtaggt ctccttaggg aacataaaat
7681 tcagacaaac agatacacag taaaggttca gcgagagctg gagttggatg aattagccct
7741 gcgtgcactg aaagaggatc gtaaacgctt cttatgtaaa gcagttgaaa attatatcaa
7801 ctgcttatta agtggagaag aacatgatat gtgggtattc cgactttgtt ccctctggct
7861 tgaaaattct ggagtttctg aagtcaatgg catgatgaag agagacggaa tgaagattcc
7921 aacatataaa tttttgcctc ttatgtacca attggctgct agaatgggga ccaagatgat
7981 gggaggccta ggatttcatg aagtcctcaa taatctaatc tctagaattt caatggatca
8041 cccccatcac actttgttta ttatactggc cttagcaaat gcaaacagag atgaatttct
8101 gactaaacca gaggtagcca gaagaagcag aataactaaa aatgtgccta aacaaagctc
8161 tcagcttgat gaggatcgaa cagaggctgc aaatagaata atatgtacta tcagaagtag
8221 gagacctcag atggtcagaa gtgttgaggc actttgtgat gcttatatta tattagcaaa
8281 cttagatgcc actcagtgga agactcagag aaaaggcata aatattccag cagaccagcc
8341 aattactaaa cttaagaatt tagaagatgt tgttgtccct actatggaaa ttaaggtgga
8401 ccacacagga gaatatggaa atctggtgac tatacagtca tttaaagcag aatttcgctt
8461 agcaggaggt gtaaatttac caaaaataat agattgtgta ggttccgatg gcaaggagag
8521 gagacagctt gttaagggcc gtgatgacct gagacaagat gctgtcatgc aacaggtctt
8581 ccagatgtgt aatacattac tgcagagaaa cacggaaact aggaagagga aattaactat
8641 ctgtacttat aaggtggttc ccctctctca gcgaagtggt gttcttgaat ggtgcacagg
8701 aactgtcccc attggtgaat ttcttgttaa caatgaagat ggtgctcata aaagatacag
8761 gccaaatgat ttcagtgcct ttcagtgcca aaagaaaatg atggaggtgc aaaaaaagtc
8821 ttttgaagag aaatatgaag tcttcatgga tgtttgccaa aattttcaac cagttttccg
8881 ttacttctgc atggaaaaat tcttggatcc agctatttgg tttgagaagc gattggctta
8941 tacgcgcagt gtagctactt cttctattgt tggttacata cttggacttg gtgatagaca
9001 tgtacagaat atcttgataa atgagcagtc agcagaactt gtacatatag atctaggtgt
9061 tgcttttgaa cagggcaaaa tccttcctac tcctgagaca gttcctttta gactcaccag
9121 agatattgtg gatggcatgg gcattacggg tgttgaaggt gtcttcagaa gatgctgtga
9181 gaaaaccatg gaagtgatga gaaactctca ggaaactctg ttaaccattg tagaggtcct
9241 tctatatgat ccactctttg actggaccat gaatcctttg aaagctttgt atttacagca
9301 gaggccggaa gatgaaactg agcttcaccc tactctgaat gcagatgacc aagaatgcaa
9361 acgaaatctc agtgatattg accagagttt caacaaagta gctgaacgtg tcttaatgag
9421 actacaagag aaactgaaag gagtggaaga aggcactgtg ctcagtgttg gtggacaagt
9481 gaatttgctc atacagcagg ccatagaccc caaaaatctc agccgacttt tcccaggatg
9541 gaaagcttgg gtgtgatctt cagtatatga attacccttt cattcagcct ttagaaatta
9601 tattttagcc tttattttta acctgccaac atactttaag tagggattaa tatttaagtg
9661 aactattgtg ggtttttttg aatgttggtt ttaatacttg atttaatcac cactcaaaaa
9721 tgttttgatg gtcttaagga acatctctgc tttcactctt tagaaataat ggtcattcgg
9781 gctgggcgca gcggctcacg cctgtaatcc cagcactttg ggaggccgag gtgagcggat
9841 cacaaggtca ggagttcgag accagcctgg ccaagagacc agcctggcca gtatggtgaa
9901 accctgtctc tactaaaaat acaaaaatta gccgagcatg gtggcgggca cctgtaatcc
9961 cagctactcg agaggctgag gcaggagaat ctcttgaacc tgggaggtga aggttgctgt
10021 gggccaaaat catgccattg cactccagcc tgggtgacaa gagcgaaact ccatctcaaa
10081 aaaaaaaaaa aaaaaacaga aacgtatttg gatttttcct agtaagatca ctcagtgtta
10141 ctaaataatg aagttgttat ggagaacaaa tttcaaagac acagttagtg tagttactat
10201 ttttttaagt gtgtattaaa acttctcatt ctattctctt tatcttttaa gcccttctgt
10261 actgtccatg tatgttatct ttctgtgata acttcataga ttgccttcta gttcatgaat
10321 tctcttgtca gatgtatata atctctttta ccctatccat tgggcttctt ctttcagaaa
10381 ttgtttttca tttctaatta tgcatcattt ttcagatctc tgtttcttga tgtcattttt
10441 aatgtttttt taatgttttt tatgtcacta attattttaa atgtctgtac ttgatagaca
10501 ctgtaatagt tctattaaat ttagttcctg ctgtttatat ctgttgattt ttgtatttga
10561 taggctgttc atccagtttt gtctttttga aaagtgagtt tattttcagc aaggctttat
10621 ctatgggaat cttgagtgtc tgtttatgtc atattcccag ggctgttgct gcacacaagc
10681 ccattcttat tttaatttct tggctttagg gtttccatac ctgaagtgta gcataaatac
10741 tgataggaga tttcccaggc caaggcaaac acacttcctc ctcatctcct tgtgctagtg
10801 ggcagaatat ttgattgatg cctttttcac tgagagtata agcttccatg tgtcccacct
10861 ttatggcagg ggtggaagga ggtacattta attcccactg cctgcctttg gcaagccctg
10921 ggttctttgc tccccatata gatgtctaag ctaaaagccg tgggttaatg agactggcaa
10981 attgttccag gacagctaca gcatcagctc acatattcac ctctctggtt tttcattccc
11041 ctcatttttt tctgagacag agtcttgctc tgtcacccag gctggagtgc agtggcatga
11101 tctcagctca ctgaaacctc tgcctcctgg gttcaagcaa ttctcctgcc tcagcctccc
11161 gagtagctgg gactacaggc gtgtgccaac acgcccggct aattttttgt atttttatta
11221 gagacggagt ttcaccgtgt tagccaggat ggtctcgatc gcttgacctc gtgatccacc
11281 ctcctcggcc tcccaaagtg ctgggattac aggtgtgagc caccgcgccc ggcctcattc
11341 ccctcatttt tgaccgtaag gatttcccct ttcttgtaag ttctgctatg tatttaaaag
11401 aatgttttct acattttatc cagcatttct ctgtgttctg ttggaaggga agggcttagg
11461 tatctagttt gatacatagg tagaagtgga acatttctct gtcccccagc tgtcatcata
11521 taagataaac atcagataaa aagccacctg aaagtaaaac tactgactcg tgtattagtg
11581 agtataatct cttctccatc cttaggaaaa tgttcatccc agctgcggag attaacaaat
11641 gggtgattga gctttctcct cgtatttgga ccttgaaggt tatataaatt tttttcttat
11701 gaagagttgg catttctttt tattgccaat ggcaggcact cattcatatt tgatctcctc
11761 accttcccct cccctaaaac caatctccag aactttttgg actataaatt tcttggtttg
11821 acttctggag aactgttcag aatattactt tgcatttcaa attacaaact taccttggtg
11881 tatctttttc ttacaagctg cctaaatgaa tatttggtat atattggtag ttttattact
11941 atagtaaatc aaggaaatgc agtaaactta aaatgtcttt aagaaagccc tgaaatcttc
12001 atgggtgaaa ttagaaatta tcaactagat aatagtatag ataaatgaat ttgtagctaa
12061 ttcttgctag ttgttgcatc cagagagctt tgaataacat cattaatcta ctctttagcc
12121 ttgcatggta tgctatgagg ctcctgttct gttcaagtat tctaatcaat ggctttgaaa
12181 agtttatcaa atttacatac agatcacaag cctaggagaa ataactaatt cacagatgac
12241 agaattaaga ttataaaaga tttttttttt gtaattttag tagagacagg gttgccattg
12301 tattccagcc ttggcgacag agcaagactc tgcctcaaaa aaaaaaaaaa aaaggttttg
12361 gcaagctgga actctttctg caaatgacta agatagaaaa ctgccaagga caaatgagga
12421 gtagttagat tttgaaaata ttaatcatag aatagttgtt gtatgctaag tcactgaccc
12481 atattatgta cagcatttct gatctttact ttgcaagatt agtgatacta tcccaataca
12541 ctgctggaga aatcagaatt tggagaaata agttgtccaa ggcaagaaga tagtaaatta
12601 taagtacaag tgtaatatgg acagtatcta acttgaaaag atttcaggcg aaaagaatct
12661 ggggtttgcc agtcagttgc tcaaaaggtc aatgaaaacc aaatagtgaa gctatcagag
12721 aagctaataa attatagact gcttgaacag ttgtgtccag attaagggag ataatagctt
12781 tcccacccta ctttgtgcag gtcatacctc cccaaagtgt ttacctaatc agtaggttca
12841 caaactcttg gtcattatag tatatgccta aaatgtatgc acttaggaat gctaaaaatt
12901 taaatatggt ctaaagcaaa taaaagcaaa gaggaaaaac tttggacagc gtaaagacta
12961 gaatagtctt ttaaaaagaa agccagtata ttggtttgaa atatagagat gtgtcccaat
13021 ttcaagtatt ttaattgcac cttaatgaaa ttatctattt tctatagatt ttagtactat
13081 tgaatgtatt actttactgt tacctgaatt tattataaag tgtttttgaa taaataattc
13141 taaaagc//
【0072】
(1)実施形態1および3(ポリペプチド)の具体例
ここで、上述のATMまたはATM変異体には、(a)配列番号1で表わされるアミノ酸
配列からなるATM、(b)配列番号1で表わされるアミノ酸配列と少なくとも80%の
相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ色素幹細胞の未分化性維持促進作用または自
己複製維持促進作用を有するATM変異体、(c)配列番号2で表わされるヌクレオチド
配列がコードするATM、または(d)配列番号2で表わされるヌクレオチド配列または
その相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素
幹細胞の未分化性維持促進作用または自己複製維持促進作用を有するATM変異体のいず
れかが含まれる。
【0073】
このように、配列番号1で表わされるアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有す
るアミノ酸配列であれば、後述する実施例で色素幹細胞の未分化性維持促進作用または自
己複製維持促進作用することが実証されている配列番号1で表わされるアミノ酸配列から
なるATMと同様に、色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進することが、基
礎医学、薬学、生化学などの分野の当業者にとっては明らかである。なお、この相同性は
、80%以上であることが好ましいが、より好ましくは85%以上であり、さらに好まし
くは90%以上であり、最も好ましくは95%以上である。このように、相同性が高けれ
ば高いほど、配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるATMと同様に、色素幹細胞
の未分化性または自己複製能を維持促進する可能性が高くなる。
【0074】
あるいは、配列番号1で表わされるアミノ酸配列に対して1または数アミノ酸残基が欠
失・置換・付加されてなるアミノ酸配列を有するATM変異体であっても、後述する実施
例で色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進することが実証されている配列番
号1で表わされるアミノ酸配列からなるATMと同様に、色素幹細胞の未分化性または自
己複製能を維持促進することが、基礎医学、薬学、生化学などの分野の当業者にとっては
明らかである。なお、ここでいう数アミノ酸残基とは、2以上9以下のアミノ酸残基を意
味するが、特に2以上5以下のアミノ酸残基であることが好ましく、2以上3以下のアミ
ノ酸残基であることが最も好ましい。このように、アミノ酸残基の欠失・置換・付加の数
が少なければ少ないほど、配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるATMと同様に
、色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進する可能性が高くなる。
【0075】
一方、このように、配列番号2で表わされるヌクレオチド配列またはその相補鎖にスト
リンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードするアミノ酸配列を有するAT
M変異体であっても、後述する実施例で色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促
進することが実証されている配列番号2で表わされるヌクレオチド配列がコードするAT
Mと同様に、色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進することが、基礎医学、
薬学、生化学などの分野の当業者にとっては明らかである。ここで、ストリンジェントな
条件については、当業者により容易に決定可能であり、一般的にプローブ長、洗浄温度、
及び塩分濃度に応じて経験的に算出されるが、例えば、用語の説明の欄で上述した具体的
な条件を好適に用いることができる。
【0076】
なお、他にも、配列番号2で表わされるヌクレオチド配列と少なくとも80%の相同性
を有するヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列を有するATM変異体であれば、後
述する実施例で色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進することが実証されて
いる配列番号2で表わされるヌクレオチド配列がコードするATMと同様に、色素幹細胞
の未分化性または自己複製能を維持促進することが、基礎医学、薬学、生化学などの分野
の当業者にとっては明らかである。なお、この相同性は、80%以上であることが好まし
いが、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、最も好ま
しくは95%以上である。このように、相同性が高ければ高いほど、配列番号2で表わさ
れるヌクレオチド配列がコードするATMと同様に、色素幹細胞の未分化性または自己複
製能を維持促進する可能性が高くなる。
【0077】
さらに、他にも、配列番号2で表わされるヌクレオチド配列に対して1または数ヌクレ
オチド残基が欠失・置換・付加されてなるヌクレオチド配列がコードするATM変異体で
あっても、後述する実施例で色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進すること
が実証されている配列番号2で表わされるヌクレオチド配列がコードするATMと同様に
、色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進することが、基礎医学、薬学、生化
学などの分野の当業者にとっては明らかである。なお、ここでいう数ヌクレオチド残基と
は、2以上9以下ヌクレオチド残基を意味するが、特に2以上5以下のヌクレオチド残基
であることが好ましく、2以上3以下のヌクレオチド残基であることが最も好ましい。こ
のように、ヌクレオチド残基の欠失・置換・付加の数が少なければ少ないほど、配列番号
2で表わされるヌクレオチド配列がコードするATMと同様に、色素幹細胞の未分化性ま
たは自己複製能を維持促進する可能性が高くなる。
【0078】
(1)実施形態2および4(ベクター)の具体例
一方、上術のATMまたはATM変異体をコードするヌクレオチド配列は、(a)配列番
号1で表わされるアミノ酸配列からなるATMをコードするヌクレオチド配列、(b)配
列番号1で表わされるアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列か
らなり、かつ色素幹細胞の未分化性維持促進作用または自己複製維持促進作用を有するA
TM変異体をコードするヌクレオチド配列、(c)配列番号2で表わされるヌクレオチド
配列、または(d)配列番号2で表わされるヌクレオチド配列またはその相補鎖にストリ
ンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ色素幹細胞の未分化性維持促進作用または
自己複製維持促進作用を有するATM変異体をコードするヌクレオチド配列、のいずれか
であることが好ましい。
【0079】
このように、配列番号1で表わされるアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有す
るアミノ酸配列からなるATMをコードするヌクレオチド配列であれば、後述する実施例
で色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進することが実証されている配列番号
1で表わされるアミノ酸配列からなるATMをコードするヌクレオチド配列と同様に、そ
のヌクレオチド配列がコードするATMまたはATM変異体が色素幹細胞の未分化性また
は自己複製能を維持促進することが、基礎医学、薬学、生化学などの分野の当業者にとっ
ては明らかである。なお、この相同性は、80%以上であることが好ましいが、より好ま
しくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、最も好ましくは95%以
上である。このように、相同性が高ければ高いほど、配列番号1で表わされるアミノ酸配
列からなるATMをコードするヌクレオチド配列と同様に、色素幹細胞の未分化性または
自己複製能を維持促進するATMまたはATM変異体を発現する可能性が高くなる。
【0080】
あるいは、配列番号1で表わされるアミノ酸配列に対して1または数アミノ酸残基が欠
失・置換・付加されてなるアミノ酸配列を有するATM変異体をコードするヌクレオチド
配列であっても、後述する実施例で色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進す
ることが実証されている配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるATMをコードす
るヌクレオチド配列と同様に、そのヌクレオチド配列がコードするATMまたはATM変
異体が色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進することが、基礎医学、薬学、
生化学などの分野の当業者にとっては明らかである。なお、ここでいう数アミノ酸残基と
は、2以上9以下のアミノ酸残基を意味するが、特に2以上5以下のアミノ酸残基である
ことが好ましく、2以上3以下のアミノ酸残基であることが最も好ましい。このように、
アミノ酸残基の欠失・置換・付加の数が少なければ少ないほど、配列番号1で表わされる
アミノ酸配列からなるATMをコードするヌクレオチド配列と同様に、色素幹細胞の未分
化性または自己複製能を維持促進するATMまたはATM変異体を発現する可能性が高く
なる。
【0081】
一方、このように、配列番号2で表わされるヌクレオチド配列またはその相補鎖にスト
リンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列であっても、後述する実施
例で色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進するATMを発現することが実証
されている配列番号2で表わされるヌクレオチド配列と同様に、色素幹細胞の未分化性ま
たは自己複製能を維持促進するATMまたはATM変異体を発現することが、基礎医学、
薬学、生化学などの分野の当業者にとっては明らかである。ここで、ストリンジェントな
条件については、当業者により容易に決定可能であり、一般的にプローブ長、洗浄温度、
及び塩分濃度に応じて経験的に算出されるが、例えば、上述した具体的な条件を好適に用
いることができる。
【0082】
なお、他にも、配列番号2で表わされるヌクレオチド配列と少なくとも80%の相同性
を有するヌクレオチド配列であれば、後述する実施例で色素幹細胞の未分化性または自己
複製能を維持促進するATMを発現することが実証されている配列番号2で表わされるヌ
クレオチド配列と同様に、色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進するATM
またはATM変異体を発現することが、基礎医学、薬学、生化学などの分野の当業者にと
っては明らかである。なお、この相同性は、80%以上であることが好ましいが、より好
ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、最も好ましくは95%
以上である。このように、相同性が高ければ高いほど、配列番号2で表わされるヌクレオ
チド配列と同様に、色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進するATMまたは
ATM変異体を発現する可能性が高くなる。
【0083】
さらに、他にも、配列番号2で表わされるヌクレオチド配列に対して1または数ヌクレ
オチド残基が欠失・置換・付加されてなるヌクレオチド配列であっても、後述する実施例
で色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進するATMを発現することが実証さ
れている配列番号2で表わされるヌクレオチド配列がコードするATMと同様に、色素幹
細胞の未分化性または自己複製能を維持促進することが、基礎医学、薬学、生化学などの
分野の当業者にとっては明らかである。なお、ここでいう数ヌクレオチド残基とは、2以
上9以下ヌクレオチド残基を意味するが、特に2以上5以下のヌクレオチド残基であるこ
とが好ましく、2以上3以下のヌクレオチド残基であることが最も好ましい。このように
、ヌクレオチド残基の欠失・置換・付加の数が少なければ少ないほど、配列番号2で表わ
されるヌクレオチド配列と同様に、色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進す
るATMまたはATM変異体を発現する可能性が高くなる。
【0084】
<実施形態5:ATRまたはATR変異体を含む未分化性維持促進剤>
本実施形態は、ATRまたは色素細胞の未分化性維持促進作用を有するATR変異体を
含む、色素幹細胞の未分化性維持促進剤である。後述の実施例に示すように、本発明者ら
は、ゲノム損傷応答の主要な介在因子であるATM遺伝子を欠損したマウスについても、
放射線照射の影響を調べている。一般に、ゲノム損傷応答では、ATM、ATR、H2A
X(γ−H2AX)、53BP1等の種々の蛋白質が活性化され、これらの蛋白質群が協
働して損傷したDNAが修復されることが知られている(J.Wada Harper et al. Molecul
ar Cell. 28:739-745. 2007, Tom Misteli et al. Molecular Cell Biology. 10:243-254
. 2009)。そのため、これらの蛋白質群の一種であるATM欠損マウスを用いることによ
り、色素幹細胞の異所性分化がゲノム損傷応答の一部として行われている可能性について
調べることができる。その結果、ATMを欠損した色素幹細胞では、野生型と比較して、
色素細胞への分化をより敏感に引き起こし、より早期の脱色素化を引き起こすことが分か
った。
ここで、ATMとATRはいずれもセリン−スレオニンキナーゼのPI−3キナーゼフ
ァミリーのメンバーで、構造的にも類似しており、ゲノム損傷応答におけるセンサーとエ
フェクター間に位置し、ともにトランスジューサーとして中心的な役割を果たすことがよ
く知られている(J.Wada Harper et al. Molecular Cell. 28:739-745. 2007, Tom Miste
li et al. Molecular Cell Biology. 10:243-254. 2009)。すなわち、ATM、ATRの
役割は部分的に重複し、共同して働くことがよく知られている(J.Wada Harper et al. M
olecular Cell. 28:739-745. 2007, Tom Misteli et al. Molecular Cell Biology. 10:2
43-254. 2009)。
そのため、この実験結果をより一般化して解釈すれば、当然のことながら、哺乳動物細
胞内でATMにきわめて近似した役割を有するATRについて同様の実験を行えば、AT
Rを欠損した色素幹細胞で、野生型と比較して、色素細胞への分化をより敏感に引き起こ
し、より早期の脱色素化を引き起こすであろうと、基礎医学、薬学、生化学分野の当業者
であれば確信することは明らかである。すなわち、この実験によって、ATRまたはAT
R変異体も、ATMまたはATM変異体と同様に、色素幹細胞の未分化性を維持促進する
という機能を有することが実証されたに等しいと言える。そのため、それらを含む剤自体
も色素幹細胞の未分化性を維持促進することが明らかである。なお、その他の点について
は、実施形態1と同様であるため繰り返さない。
【0085】
<実施形態6:ATRまたはATR変異体の発現ベクターを含む未分化性維持促進剤>
また、本実施形態は、ATRまたはその変異体が色素幹細胞を含む領域において発現す
るように制御するプロモーター配列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている、
ATRまたはATR変異体をコードするヌクレオチド配列と、を有するベクターを含む、
色素幹細胞の未分化性維持促進剤である。後述の実施例に示すように、ATM遺伝子を欠
損したマウスを用いた実験によって、ATRまたはATR変異体も、ATMまたはATM
変異体と同様に、色素幹細胞の未分化性を維持促進するという機能を有することは実証さ
れたに等しいと言える。そのため、それらをコードするヌクレオチド配列を有するベクタ
ーを含む剤自体も色素幹細胞の未分化性を維持促進することが明らかである。なお、その
他の点については、実施形態2と同様であるため繰り返さない。
【0086】
<実施形態7:ATRまたはATR変異体を含む自己複製維持促進剤>
本実施形態は、ATRまたは色素細胞の未分化性維持促進作用を有するATR変異体を
含む、色素幹細胞の自己複製維持促進剤である。後述の実施例に示すように、本発明者ら
は、ゲノム損傷応答の主要な介在因子であるATM遺伝子を欠損したマウスについても、
放射線照射の影響を調べている。一般に、ゲノム損傷応答では、ATM、ATR、H2A
X(γ−H2AX)、53BP1等の種々の蛋白質が活性化され、これらの蛋白質群が協
働して損傷したDNAが修復されることが知られている(J.Wada Harper et al. Molecul
ar Cell. 28:739-745. 2007, Tom Misteli et al. Molecular Cell Biology. 10:243-254
. 2009)。そのため、これらの蛋白質群の一種であるATM欠損マウスを用いることによ
り、色素幹細胞の異所性分化がゲノム損傷応答の一部として行われている可能性について
調べることができる。その結果、ATMを欠損した色素幹細胞では、野生型と比較して、
色素細胞への分化をより敏感に引き起こし、より早期の脱色素化を引き起こすことが分か
った。
ここで、ATMとATRはいずれもセリン−スレオニンキナーゼのPI−3キナーゼフ
ァミリーのメンバーで、構造的にも類似しており、ゲノム損傷応答におけるセンサーとエ
フェクター間に位置し、ともにトランスジューサーとして中心的な役割を果たすことがよ
く知られている(J.Wada Harper et al. Molecular Cell. 28:739-745. 2007, Tom Miste
li et al. Molecular Cell Biology. 10:243-254. 2009)。すなわち、ATM、ATRの
役割は部分的に重複し、共同して働くことがよく知られている(J.Wada Harper et al. M
olecular Cell. 28:739-745. 2007, Tom Misteli et al. Molecular Cell Biology. 10:2
43-254. 2009)。
そのため、この実験結果をより一般化して解釈すれば、当然のことながら、哺乳動物細
胞内でATMにきわめて近似した役割を有するATRについて同様の実験を行えば、その
ATRを欠損した色素幹細胞で、野生型と比較して、色素細胞への分化をより敏感に引き
起こし、より早期の脱色素化を引き起こすであろうと、基礎医学、薬学、生化学分野の当
業者であれば確信することは明らかである。すなわち、この実験によって、ATRまたは
ATR変異体も、ATMまたはATM変異体と同様に、色素幹細胞の自己複製能力の維持
を促進するという機能を有することが実証されたに等しいと言える。そのため、それらを
含む剤自体も色素幹細胞の自己複製能力の維持を促進することが明らかである。なお、そ
の他の点については、実施形態3と同様であるため繰り返さない。
【0087】
<実施形態8:ATRまたはATR変異体の発現ベクターを含む自己複製維持促進剤>
本実施形態は、ATRまたはその変異体が色素幹細胞を含む領域において発現するよう
に制御するプロモーター配列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている、ATR
またはATR変異体をコードするヌクレオチド配列と、を有するベクターを含む、色素幹
細胞の自己複製維持促進剤である。後述の実施例に示すように、ATM遺伝子を欠損した
マウスを用いた実験によって、ATRまたはATR変異体も、ATMまたはATM変異体
と同様に、色素幹細胞の自己複製能力の維持を促進するという機能を有することが実証さ
れたに等しい。そのため、それらをコードするヌクレオチド配列を有するベクターを含む
剤自体も色素幹細胞の自己複製能力の維持を促進することが明らかである。なお、その他
の点については、実施形態4と同様であるため繰り返さない。
【0088】
<実施形態5〜8:ATRおよびATR変異体の説明>
上記の実施形態5〜8に共通して、ヒトのATR蛋白質のアミノ酸配列は公知であり、
以下の配列番号3(NCBI Reference Sequence: NP_001175.2 ataxia telangiectasia and
Rad3 related protein [Homo sapiens])に示すアミノ酸配列を有する。
【0089】
配列番号3:N末端からC末端へ記載(2644aa)
1 mgehglelas mipalrelgs atpeeyntvv qkprqilcqf idriltdvnv vavelvkktd
61 sqptsvmlld fiqhimkssp lmfvnvsgsh eakgsciefs nwiitrllri aatpschllh
121 kkicevicsl lflfkskspa ifgvltkell qlfedlvylh rrnvmghave wpvvmsrfls
181 qldehmgylq saplqlmsmq nlefievtll mvltriiaiv ffrrqelllw qigcvlleyg
241 spkikslais fltelfqlgg lpaqpastff ssflellkhl vemdtdqlkl yeeplsklik
301 tlfpfeaeay rniepvylnm lleklcvmfe dgvlmrlksd llkaalchll qyflkfvpag
361 yesalqvrkv yvrnickall dvlgievdae yllgplyaal kmesmeiiee iqcqtqqenl
421 ssnsdgispk rrrlssslnp skrapkqtee ikhvdmnqks ilwsalkqka eslqisleys
481 glknpvieml egiavvlqlt alctvhcshq nmncrtfkdc qhkskkkpsv vitwmsldfy
541 tkvlkscrsl lesvqkldle atidkvvkiy daliymqvns sfedhiledl cgmlslpwiy
601 shsddgclkl ttfaanlltl scrisdsysp qaqsrcvfll tlfprrifle wrtavynwal
661 qssheviras cvsgffillq qqnscnrvpk ilidkvkdds divkkefasi lgqlvctlhg
721 mfyltsslte pfsehghvdl fcrnlkatsq hecsssqlka svckpflfll kkkipspvkl
781 afidnlhhlc khldfredet dvkavlgtll nlmedpdkdv rvafsgnikh ilesldsedg
841 fikelfvlrm keaythaqis rnnelkdtli lttgdigraa kgdlvpfall hllhcllsks
901 asvsgaayte iralvaaksv klqsffsqyk kpicqflves lhssqmtalp ntpcqnadvr
961 kqdvahqrem alntlseian vfdfpdlnrf ltrtlqvllp dlaakaspaa salirtlgkq
1021 lnvnrreili nnfkyifshl vcscskdele ralhylknet eielgsllrq dfqglhnell
1081 lrigehyqqv fnglsilasf assddpyqgp rdiispelma dylqpkllgi laffnmqlls
1141 ssvgiedkkm alnslmslmk lmgpkhvssv rvkmmttlrt glrfkddfpe lccrawdcfv
1201 rcldhaclgs llshvivall plihiqpket aaifhyliie nrdavqdflh eiyflpdhpe
1261 lkkikavlqe yrketsestd lqttlqlsmk aiqhenvdvr ihaltslket lyknqeklik
1321 yatdsetvep iisqlvtvll kgcqdansqa rllcgeclge lgaidpgrld fsttetqgkd
1381 ftfvtgveds sfaygllmel traylayadn sraqdsaaya iqellsiydc remetngpgh
1441 qlwrrfpehv reilephlnt rykssqkstd wsgvkkpiyl sklgsnfaew saswagylit
1501 kvrhdlaski ftccsimmkh dfkvtiyllp hilvyvllgc nqedqqevya eimavlkhdd
1561 qhtintqdia sdlcqlstqt vfsmldhltq warhkfqalk aekcphsksn rnkvdsmvst
1621 vdyedyqsvt rfldlipqdt lavasfrska ytravmhfes fitekkqniq ehlgflqkly
1681 aamhepdgva gvsairkaep slkeqilehe slgllrdata cydraiqlep dqiihyhgvv
1741 ksmlglgqls tvitqvngvh anrsewtdel ntyrveaawk lsqwdlveny laadgksttw
1801 svrlgqllls akkrditafy dslklvraeq ivplsaasfe rgsyqrgyey ivrlhmlcel
1861 ehsikplfqh spgdssqeds lnwvarlemt qnsyrakepi lalrrallsl nkrpdynemv
1921 gecwlqsarv arkaghhqta ynallnages rlaelyvera kwlwskgdvh qalivlqkgv
1981 elcfpenetp pegknmlihg ramllvgrfm eetanfesna imkkykdvta clpewedghf
2041 ylakyydklm pmvtdnkmek qgdliryivl hfgrslqygn qfiyqsmprm ltlwldygtk
2101 ayewekagrs drvqmrndlg kinkviteht nylapyqflt afsqlisric hshdevfvvl
2161 meiiakvfla ypqqamwmmt avskssypmr vnrckeilnk aihmkkslek fvgdatrltd
2221 kllelcnkpv dgssstlsms thfkmlkklv eeatfseili plqsvmiptl psilgthanh
2281 ashepfpghw ayiagfddmv eilaslqkpk kislkgsdgk fyimmckpkd dlrkdcrlme
2341 fnslinkclr kdaesrrrel hirtyavipl ndecgiiewv nntaglrpil tklykekgvy
2401 mtgkelrqcm lpksaalsek lkvfrefllp rhppifhewf lrtfpdptsw yssrsaycrs
2461 tavmsmvgyi lglgdrhgen ilfdsltgec vhvdfnclfn kgetfevpei vpfrlthnmv
2521 ngmgpmgteg lfrracevtm rlmrdqrepl msvlktflhd plvewskpvk ghskaplnet
2581 gevvnekakt hvldieqrlq gviktrnrvt glplsieghv hyliqeatde nllcqmylgw
2641 tpym//
【0090】
また、ヒトのATR遺伝子の塩基配列も同様に公知であり、以下の配列番号4に示す塩
基配列(NCBI Reference Sequence: NM_001184.3 Homo sapiens ataxia telangiectasia
and Rad3 related (ATR), mRNA)を有する。
【0091】
配列番号4:5’末端から3’末端へ記載(8258bp mRNA)
1 ttccgggagg agttttggcc tccacacggc tccgtcgggc gccgcgctct tccggcagcg
61 gtagctttgg agacgccggg aacccgcgtt ggcgtggttg actagtgcct cgcagcctca
121 gcatggggga acatggcctg gagctggctt ccatgatccc cgccctgcgg gagctgggca
181 gtgccacacc agaggaatat aatacagttg tacagaagcc aagacaaatt ctgtgtcaat
241 tcattgaccg gatacttaca gatgtaaatg ttgttgctgt agaacttgta aagaaaactg
301 actctcagcc aacctccgtg atgttgcttg atttcatcca gcatatcatg aaatcctccc
361 cacttatgtt tgtaaatgtg agtggaagcc atgaggccaa aggcagttgt attgaattca
421 gtaattggat cataacgaga cttctgcgga ttgcagcaac tccctcctgt catttgttac
481 acaagaaaat ctgtgaagtc atctgttcat tattatttct ttttaaaagc aagagtcctg
541 ctatttttgg ggtactcaca aaagaattat tacaactttt tgaagacttg gtttacctcc
601 atagaagaaa tgtgatgggt catgctgtgg aatggccagt ggtcatgagc cgatttttaa
661 gtcaattaga tgaacacatg ggatatttac aatcagctcc tttgcagttg atgagtatgc
721 aaaatttaga atttattgaa gtcactttat taatggttct tactcgtatt attgcaattg
781 tgttttttag aaggcaagaa ctcttacttt ggcagatagg ttgtgttctg ctagagtatg
841 gtagtccaaa aattaaatcc ctagcaatta gctttttaac agaacttttt cagcttggag
901 gactaccagc acaaccagct agcacttttt tcagctcatt tttggaatta ttaaaacacc
961 ttgtagaaat ggatactgac caattgaaac tctatgaaga gccattatca aagctgataa
1021 agacactatt tccctttgaa gcagaagctt atagaaatat tgaacctgtc tatttaaata
1081 tgctgctgga aaaactctgt gtcatgtttg aagacggtgt gctcatgcgg cttaagtctg
1141 atttgctaaa agcagctttg tgccatttac tgcagtattt ccttaaattt gtgccagctg
1201 ggtatgaatc tgctttacaa gtcaggaagg tctatgtgag aaatatttgt aaagctcttt
1261 tggatgtgct tggaattgag gtagatgcag agtacttgtt gggcccactt tatgcagctt
1321 tgaaaatgga aagtatggaa atcattgagg agattcaatg ccaaactcaa caggaaaacc
1381 tcagcagtaa tagtgatgga atatcaccca aaaggcgtcg tctcagctcg tctctaaacc
1441 cttctaaaag agcaccaaaa cagactgagg aaattaaaca tgtggacatg aaccaaaaga
1501 gcatattatg gagtgcactg aaacagaaag ctgaatccct tcagatttcc cttgaataca
1561 gtggcctaaa gaatcctgtt attgagatgt tagaaggaat tgctgttgtc ttacaactga
1621 ctgctctgtg tactgttcat tgttctcatc aaaacatgaa ctgccgtact ttcaaggact
1681 gtcaacataa atccaagaag aaaccttctg tagtgataac ttggatgtca ttggattttt
1741 acacaaaagt gcttaagagc tgtagaagtt tgttagaatc tgttcagaaa ctggacctgg
1801 aggcaaccat tgataaggtg gtgaaaattt atgatgcttt gatttatatg caagtaaaca
1861 gttcatttga agatcatatc ctggaagatt tatgtggtat gctctcactt ccatggattt
1921 attcccattc tgatgatggc tgtttaaagt tgaccacatt tgccgctaat cttctaacat
1981 taagctgtag gatttcagat agctattcac cacaggcaca atcacgatgt gtgtttcttc
2041 tgactctgtt tccaagaaga atattccttg agtggagaac agcagtttac aactgggccc
2101 tgcagagctc ccatgaagta atccgggcta gttgtgttag tggatttttt atcttattgc
2161 agcagcagaa ttcttgtaac agagttccca agattcttat agataaagtc aaagatgatt
2221 ctgacattgt caagaaagaa tttgcttcta tacttggtca acttgtctgt actcttcacg
2281 gcatgtttta tctgacaagt tctttaacag aacctttctc tgaacacgga catgtggacc
2341 tcttctgtag gaacttgaaa gccacttctc aacatgaatg ttcatcttct caactaaaag
2401 cttctgtctg caagccattc cttttcctac tgaaaaaaaa aatacctagt ccagtaaaac
2461 ttgctttcat agataatcta catcatcttt gtaagcatct tgattttaga gaagatgaaa
2521 cagatgtaaa agcagttctt ggaactttat taaatttaat ggaagatcca gacaaagatg
2581 ttagagtggc ttttagtgga aatatcaagc acatattgga atccttggac tctgaagatg
2641 gatttataaa ggagcttttt gtcttaagaa tgaaggaagc atatacacat gcccaaatat
2701 caagaaataa tgagctgaag gataccttga ttcttacaac aggggatatt ggaagggccg
2761 caaaaggaga tttggtacca tttgcactct tacacttatt gcattgtttg ttatccaagt
2821 cagcatctgt ctctggagca gcatacacag aaattagagc tctggttgca gctaaaagtg
2881 ttaaactgca aagttttttc agccagtata agaaacccat ctgtcagttt ttggtagaat
2941 cccttcactc tagtcagatg acagcacttc cgaatactcc atgccagaat gctgacgtgc
3001 gaaaacaaga tgtggctcac cagagagaaa tggctttaaa tacgttgtct gaaattgcca
3061 acgttttcga ctttcctgat cttaatcgtt ttcttactag gacattacaa gttctactac
3121 ctgatcttgc tgccaaagca agccctgcag cttctgctct cattcgaact ttaggaaaac
3181 aattaaatgt caatcgtaga gagattttaa taaacaactt caaatatatt ttttctcatt
3241 tggtctgttc ttgttccaaa gatgaattag aacgtgccct tcattatctg aagaatgaaa
3301 cagaaattga actggggagc ctgttgagac aagatttcca aggattgcat aatgaattat
3361 tgctgcgtat tggagaacac tatcaacagg tttttaatgg tttgtcaata cttgcctcat
3421 ttgcatccag tgatgatcca tatcagggcc cgagagatat catatcacct gaactgatgg
3481 ctgattattt acaacccaaa ttgttgggca ttttggcttt ttttaacatg cagttactga
3541 gctctagtgt tggcattgaa gataagaaaa tggccttgaa cagtttgatg tctttgatga
3601 agttaatggg acccaaacat gtcagttctg tgagggtgaa gatgatgacc acactgagaa
3661 ctggccttcg attcaaggat gattttcctg aattgtgttg cagagcttgg gactgctttg
3721 ttcgctgcct ggatcatgct tgtctgggct cccttctcag tcatgtaata gtagctttgt
3781 tacctcttat acacatccag cctaaagaaa ctgcagctat cttccactac ctcataattg
3841 aaaacaggga tgctgtgcaa gattttcttc atgaaatata ttttttacct gatcatccag
3901 aattaaaaaa gataaaagcc gttctccagg aatacagaaa ggagacctct gagagcactg
3961 atcttcagac aactcttcag ctctctatga aggccattca acatgaaaat gtcgatgttc
4021 gtattcatgc tcttacaagc ttgaaggaaa ccttgtataa aaatcaggaa aaactgataa
4081 agtatgcaac agacagtgaa acagtagaac ctattatctc acagttggtg acagtgcttt
4141 tgaaaggttg ccaagatgca aactctcaag ctcggttgct ctgtggggaa tgtttagggg
4201 aattgggggc gatagatcca ggtcgattag atttctcaac aactgaaact caaggaaaag
4261 attttacatt tgtgactgga gtagaagatt caagctttgc ctatggatta ttgatggagc
4321 taacaagagc ttaccttgcg tatgctgata atagccgagc tcaagattca gctgcctatg
4381 ccattcagga gttgctttct atttatgact gtagagagat ggagaccaac ggcccaggtc
4441 accaattgtg gaggagattt cctgagcatg ttcgggaaat actagaacct catctaaata
4501 ccagatacaa gagttctcag aagtcaaccg attggtctgg agtaaagaag ccaatttact
4561 taagtaaatt gggtagtaac tttgcagaat ggtcagcatc ttgggcaggt tatcttatta
4621 caaaggttcg acatgatctt gccagtaaaa ttttcacctg ctgtagcatt atgatgaagc
4681 atgatttcaa agtgaccatc tatcttcttc cacatattct ggtgtatgtc ttactgggtt
4741 gtaatcaaga agatcagcag gaggtttatg cagaaattat ggcagttcta aagcatgacg
4801 atcagcatac cataaatacc caagacattg catctgatct gtgtcaactc agtacacaga
4861 ctgtgttctc catgcttgac catctcacac agtgggcaag gcacaaattt caggcactga
4921 aagctgagaa atgtccacac agcaaatcaa acagaaataa ggtagactca atggtatcta
4981 ctgtggatta tgaagactat cagagtgtaa cccgttttct agacctcata ccccaggata
5041 ctctggcagt agcttccttt cgctccaaag catacacacg agctgtaatg cactttgaat
5101 catttattac agaaaagaag caaaatattc aggaacatct tggattttta cagaaattgt
5161 atgctgctat gcatgaacct gatggagtgg ccggagtcag tgcaattaga aaggcagaac
5221 catctctaaa agaacagatc cttgaacatg aaagccttgg cttgctgagg gatgccactg
5281 cttgttatga cagggctatt cagctagaac cagaccagat cattcattat catggtgtag
5341 taaagtccat gttaggtctt ggtcagctgt ctactgttat cactcaggtg aatggagtgc
5401 atgctaacag gtccgagtgg acagatgaat taaacacgta cagagtggaa gcagcttgga
5461 aattgtcaca gtgggatttg gtggaaaact atttggcagc agatggaaaa tctacaacat
5521 ggagtgtcag actgggacag ctattattat cagccaaaaa aagagatatc acagcttttt
5581 atgactcact gaaactagtg agagcagaac aaattgtacc tctttcagct gcaagctttg
5641 aaagaggctc ctaccaacga ggatatgaat atattgtgag attgcacatg ttatgtgagt
5701 tggagcatag catcaaacca cttttccagc attctccagg tgacagttct caagaagatt
5761 ctctaaactg ggtagctcga ctagaaatga cccagaattc ctacagagcc aaggagccta
5821 tcctggctct ccggagggct ttactaagcc tcaacaaaag accagattac aatgaaatgg
5881 ttggagaatg ctggctgcag agtgccaggg tagctagaaa ggctggtcac caccagacag
5941 cctacaatgc tctccttaat gcaggggaat cacgactcgc tgaactgtac gtggaaaggg
6001 caaagtggct ctggtccaag ggtgatgttc accaggcact aattgttctt caaaaaggtg
6061 ttgaattatg ttttcctgaa aatgaaaccc cacctgaggg taagaacatg ttaatccatg
6121 gtcgagctat gctactagtg ggccgattta tggaagaaac agctaacttt gaaagcaatg
6181 caattatgaa aaaatataag gatgtgaccg cgtgcctgcc agaatgggag gatgggcatt
6241 tttaccttgc caagtactat gacaaattga tgcccatggt cacagacaac aaaatggaaa
6301 agcaaggtga tctcatccgg tatatagttc ttcattttgg cagatctcta caatatggaa
6361 atcagttcat atatcagtca atgccacgaa tgttaactct atggcttgat tatggtacaa
6421 aggcatatga atgggaaaaa gctggccgct ccgatcgtgt acaaatgagg aatgatttgg
6481 gtaaaataaa caaggttatc acagagcata caaactattt agctccatat caatttttga
6541 ctgctttttc acaattgatc tctcgaattt gtcattctca cgatgaagtt tttgttgtct
6601 tgatggaaat aatagccaaa gtatttctag cctatcctca acaagcaatg tggatgatga
6661 cagctgtgtc aaagtcatct tatcccatgc gtgtgaacag atgcaaggaa atcctcaata
6721 aagctattca tatgaaaaaa tccttagaga agtttgttgg agatgcaact cgcctaacag
6781 ataagcttct agaattgtgc aataaaccgg ttgatggaag tagttccaca ttaagcatga
6841 gcactcattt taaaatgctt aaaaagctgg tagaagaagc aacatttagt gaaatcctca
6901 ttcctctaca atcagtcatg atacctacac ttccatcaat tctgggtacc catgctaacc
6961 atgctagcca tgaaccattt cctggacatt gggcctatat tgcagggttt gatgatatgg
7021 tggaaattct tgcttctctt cagaaaccaa agaagatttc tttaaaaggc tcagatggaa
7081 agttctacat catgatgtgt aagccaaaag atgacctgag aaaggattgt agactaatgg
7141 aattcaattc cttgattaat aagtgcttaa gaaaagatgc agagtctcgt agaagagaac
7201 ttcatattcg aacatatgca gttattccac taaatgatga atgtgggatt attgaatggg
7261 tgaacaacac tgctggtttg agacctattc tgaccaaact atataaagaa aagggagtgt
7321 atatgacagg aaaagaactt cgccagtgta tgctaccaaa gtcagcagct ttatctgaaa
7381 aactcaaagt attccgagaa tttctcctgc ccaggcatcc tcctattttt catgagtggt
7441 ttctgagaac attccctgat cctacatcat ggtacagtag tagatcagct tactgccgtt
7501 ccactgcagt aatgtcaatg gttggttata ttctggggct tggagaccgt catggtgaaa
7561 atattctctt tgattctttg actggtgaat gcgtacatgt agatttcaat tgtcttttca
7621 ataagggaga aacctttgaa gttccagaaa ttgtgccatt tcgcctgact cataatatgg
7681 ttaatggaat gggtcctatg ggaacagagg gtctttttcg aagagcatgt gaagttacaa
7741 tgaggctgat gcgtgatcag cgagagcctt taatgagtgt cttaaagact tttctacatg
7801 atcctcttgt ggaatggagt aaaccagtga aagggcattc caaagcgcca ctgaatgaaa
7861 ctggagaagt tgtcaatgaa aaggccaaga cccatgttct tgacattgag cagcgactac
7921 aaggtgtaat caagactcga aatagagtga caggactgcc gttatctatt gaaggacatg
7981 tgcattacct tatacaggaa gctactgatg aaaacttact atgccagatg tatcttggtt
8041 ggactccata tatgtgaaat gaaattatgt aaaagaatat gttaataatc taaaagtaat
8101 gcatttggta tgaatctgtg gttgtatctg ttcaattcta aagtacaaca taaatttacg
8161 ttctcagcaa ctgttatttc tctctgatca ttaattatat gtaaaataat atacattcag
8221 ttattaagaa ataaactgct ttcttaatac aaaaaaaa//
【0092】
(1)実施形態5および7(ポリペプチド)の具体例
ここで、上述のATRまたはATR変異体には、(a)配列番号3で表わされるアミノ酸
配列からなるATR、(b)配列番号3で表わされるアミノ酸配列と少なくとも80%の
相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ色素幹細胞の未分化性維持促進作用または自
己複製維持促進作用を有するATR変異体、(c)配列番号3で表わされるヌクレオチド
配列がコードするATR、または(d)配列番号3で表わされるヌクレオチド配列または
その相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素
幹細胞の未分化性維持促進作用または自己複製維持促進作用を有するATR変異体のいず
れかが含まれる。
【0093】
このように、配列番号3で表わされるアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有す
るアミノ酸配列であれば、後述する実施例で色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維
持促進することが実証されているに等しい配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなる
ATRと同様に、色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進することが、基礎医
学、薬学、生化学などの分野の当業者にとっては明らかである。なお、この相同性は、8
0%以上であることが好ましいが、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは
90%以上であり、最も好ましくは95%以上である。このように、相同性が高ければ高
いほど、配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなるATRと同様に、色素幹細胞の未
分化性または自己複製能を維持促進する可能性が高くなる。
【0094】
あるいは、配列番号3で表わされるアミノ酸配列に対して1または数アミノ酸残基が欠
失・置換・付加されてなるアミノ酸配列を有するATR変異体であっても、後述する実施
例で色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進することが実証されているに等し
い配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなるATRと同様に、色素幹細胞の未分化性
または自己複製能を維持促進することが、基礎医学、薬学、生化学などの分野の当業者に
とっては明らかである。なお、ここでいう数アミノ酸残基とは、2以上9以下のアミノ酸
残基を意味するが、特に2以上5以下のアミノ酸残基であることが好ましく、2以上3以
下のアミノ酸残基であることが最も好ましい。このように、アミノ酸残基の欠失・置換・
付加の数が少なければ少ないほど、配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなるATR
と同様に、色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進する可能性が高くなる。
【0095】
一方、このように、配列番号4で表わされるヌクレオチド配列またはその相補鎖にスト
リンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸がコードするアミノ酸配列を有するAT
R変異体であっても、後述する実施例で色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促
進することが実証されているに等しい配列番号4で表わされるヌクレオチド配列がコード
するATRと同様に、色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進することが、基
礎医学、薬学、生化学などの分野の当業者にとっては明らかである。ここで、ストリンジ
ェントな条件については、当業者により容易に決定可能であり、一般的にプローブ長、洗
浄温度、及び塩分濃度に応じて経験的に算出されるが、例えば、用語の説明の欄において
上述した具体的な条件を好適に用いることができる。
【0096】
なお、他にも、配列番号2で表わされるヌクレオチド配列と少なくとも80%の相同性
を有するヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列を有するATR変異体であれば、後
述する実施例で色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進することが実証されて
いるに等しい配列番号4で表わされるヌクレオチド配列がコードするATRと同様に、色
素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進することが、基礎医学、薬学、生化学な
どの分野の当業者にとっては明らかである。なお、この相同性は、80%以上であること
が好ましいが、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、
最も好ましくは95%以上である。このように、相同性が高ければ高いほど、配列番号2
で表わされるヌクレオチド配列がコードするATRと同様に、色素幹細胞の未分化性また
は自己複製能を維持促進する可能性が高くなる。
【0097】
さらに、他にも、配列番号4で表わされるヌクレオチド配列に対して1または数ヌクレ
オチド残基が欠失・置換・付加されてなるヌクレオチド配列がコードするATR変異体で
あっても、後述する実施例で色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進すること
が実証されているに等しい配列番号4で表わされるヌクレオチド配列がコードするATR
と同様に、色素幹細胞の未分化性または自己複製能を維持促進することが、基礎医学、薬
学、生化学などの分野の当業者にとっては明らかである。なお、ここでいう数ヌクレオチ
ド残基とは、2以上9以下ヌクレオチド残基を意味するが、特に2以上5以下のヌクレオ
チド残基であることが好ましく、2以上3以下のヌクレオチド残基であることが最も好ま
しい。このように、ヌクレオチド残基の欠失・置換・付加の数が少なければ少ないほど、
配列番号4で表わされるヌクレオチド配列がコードするATRと同様に、色素幹細胞の未
分化性または自己複製能維持促進する可能性が高くなる。
【0098】
<実施形態9:DDRに関係する蛋白質を含む未分化性維持促進剤>
本実施形態は、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋
白質を含む、色素幹細胞の未分化性維持促進剤である。後述の実施例に示すように、本発
明者らは、ゲノム損傷応答の主要な介在因子であるATM遺伝子を欠損したマウスについ
ても、放射線照射の影響を調べている。一般に、ゲノム損傷応答では、ATM、ATR、
H2AX(γ−H2AX)、53BP1等の種々の蛋白質が活性化され、これらの蛋白質
群が協働して損傷したDNAが修復されることが知られている(J.Wada Harper et al. M
olecular Cell. 28:739-745. 2007, Tom Misteli et al. Molecular Cell Biology. 10:2
43-254. 2009)。そのため、これらの蛋白質群の一種であるATM欠損マウスを用いるこ
とにより、色素幹細胞の異所性分化がゲノム損傷応答の一部として行われている可能性に
ついて調べることができる。その結果、ATMを欠損した色素幹細胞では、野生型と比較
して、色素細胞への分化をより敏感に引き起こし、より早期の脱色素化を引き起こすこと
が分かった。そして、この実験結果をより一般化して解釈すれば、当然のことながら、ゲ
ノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質について同様の
実験を行えば、その一種以上の蛋白質を欠損した色素幹細胞で、野生型と比較して、色素
細胞への分化をより敏感に引き起こし、より早期の脱色素化を引き起こすであろうと、基
礎医学、薬学、生化学分野の当業者であれば確信することは明らかである。すなわち、こ
の実験によって、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋
白質も、ATMまたはATM変異体と同様に、色素幹細胞の未分化性を維持促進するとい
う機能を有することが実証されたに等しいと言える。そのため、それらを含む剤自体も色
素幹細胞の未分化性を維持促進することが明らかである。なお、その他の点については、
実施形態1と同様であるため繰り返さない。
【0099】
ここで、ゲノム損傷応答によって活性化される蛋白質としては、特に限定せず、J.Wada
Harper et al. Molecular Cell. 28:739-745. 2007, Tom Misteli et al. Molecular Ce
ll Biology. 10:243-254. 2009に挙げられているような多数の任意の蛋白質を挙げること
ができるが、例えば、ATM、ATR、H2AX(γ−H2AX)、53BP1等の蛋白
質については、ゲノム損傷応答によって活性化されることを実証する有力な実験結果が多
数報告されているために特に好ましい。
【0100】
ここで、ATMキナーゼはSQ/TQモチーフを持つ基質タンパク質をリン酸化すること
で基質タンパク質の活性化に関与していることが知られている。SQ/TQモチーフを持
つタンパク質としては、ATMのシグナルを仲介するChk1/Chk2キナーゼ、細胞
周期チェックポイント及びアポトーシスに関与するp53、DNA修復に関与するBRC
A1やFANCD2等が知られており、このシステムはSQ/TQモチーフのリン酸化に
よって制御されているとも言える。SQ/TQモチーフを持つ様々な仲介因子は、DNA
損傷時に損傷部位に集積し核内フォーカスとよばれる点状の構造体を形成することでAT
Mによるシグナル伝達に関与している。DNA損傷部位においてヒストンの1種であるH
2AXがリン酸化されると、MDC1がこの部位に集積し、引き続いてNBS1、BRC
A1、53BP1、FANCD2、Chk2等がリクルートされる。MDC1、NBS1
、BRCA1、53BP1はBRCTドメインを持つアダプタータンパク質であり、これ
らは様々なシグナル分子を損傷部位に集積させ、DNA修復やATMによるリン酸化を効
率よく行うための足場として機能すると考えられている。よって、これらの蛋白質も、ゲ
ノム損傷応答によって活性化される蛋白質として、本実施形態において好適に用いられる

【0101】
<実施形態10:DDRに関係する蛋白質の発現ベクターを含む未分化性維持促進剤>
また、本実施形態は、色素幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモー
ター配列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている、ゲノム損傷誘発原により活
性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質をコードするヌクレオチド配列と、を有
するベクターを含む、色素幹細胞の未分化性維持促進剤である。後述の実施例に示すよう
に、ATM遺伝子を欠損したマウスを用いた実験によって、ゲノム損傷誘発原により活性
化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質も、ATMまたはATM変異体と同様に、
色素幹細胞の自己複製能力の維持を促進するという機能を有することが実証されたに等し
い。そのため、それらをコードするヌクレオチド配列を有するベクターを含む剤自体も色
素幹細胞の未分化性を維持促進することが明らかである。なお、その他の点については、
実施形態2と同様であるため繰り返さない。
【0102】
<実施形態11:DDRに関係する制御因子を含む未分化性維持促進剤>
本実施形態は、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋
白質の活性を制御する制御因子を含む、色素幹細胞の未分化性維持促進剤である。後述の
実施例に示すように、本発明者らは、ゲノム損傷応答の主要な介在因子であるATM遺伝
子を欠損したマウスについても、放射線照射の影響を調べている。一般に、ゲノム損傷応
答では、ATM、ATR、H2AX(γ−H2AX)、53BP1等の種々の蛋白質が活
性化され、これらの蛋白質群が協働して損傷したDNAが修復されることが知られている
(J.Wada Harper et al. Molecular Cell. 28:739-745. 2007, Tom Misteli et al. Mole
cular Cell Biology. 10:243-254. 2009)。そのため、これらの蛋白質群の一種であるA
TM欠損マウスを用いることにより、色素幹細胞の異所性分化がゲノム損傷応答の一部と
して行われている可能性について調べることができる。その結果、ATMを欠損した色素
幹細胞では、野生型と比較して、色素細胞への分化をより敏感に引き起こし、より早期の
脱色素化を引き起こすことが分かった。そして、この実験結果をより一般化して解釈すれ
ば、当然のことながら、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以
上の蛋白質について同様の実験を行えば、その一種以上の蛋白質を欠損した色素幹細胞で
、野生型と比較して、色素細胞への分化をより敏感に引き起こし、より早期の脱色素化を
引き起こすであろうと、基礎医学、薬学、生化学分野の当業者であれば確信することは明
らかである。その結果、当然のことではあるが、それらの活性を制御する制御因子を含む
剤自体も色素幹細胞の未分化性を維持促進することが明らかである。すなわち、この実験
によって、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質も
、ATMまたはATM変異体と同様に、色素幹細胞の未分化性を維持促進するという機能
を有することが実証されたに等しいと言える。そのため、それらの活性を制御する制御因
子を含む剤自体も色素幹細胞の未分化性を維持促進することが明らかである。
【0103】
ここで、ゲノム損傷応答によって活性化される蛋白質としては、特に限定せず、J.Wada
Harper et al. Molecular Cell. 28:739-745. 2007, Tom Misteli et al. Molecular Ce
ll Biology. 10:243-254. 2009に挙げられているようなゲノム損傷誘発原により活性化さ
れる蛋白質の活性を正の方向または負の方向に制御する制御因子を挙げることができる。
ここで、ATMキナーゼはSQ/TQモチーフを持つ基質タンパク質をリン酸化すること
で基質タンパク質の活性化に関与していることが知られている。SQ/TQモチーフを持
つタンパク質としては、ATMのシグナルを仲介するChk1/Chk2キナーゼ、細胞
周期チェックポイント及びアポトーシスに関与するp53、DNA修復に関与するBRC
A1やFANCD2等が知られており、このシステムはSQ/TQモチーフのリン酸化に
よって制御されているとも言える。SQ/TQモチーフを持つ様々な仲介因子は、DNA
損傷時に損傷部位に集積し核内フォーカスとよばれる点状の構造体を形成することでAT
Mによるシグナル伝達に関与している。DNA損傷部位においてヒストンの1種であるH
2AXがリン酸化されると、MDC1がこの部位に集積し、引き続いてNBS1、BRC
A1、53BP1、FANCD2、Chk2等がリクルートされる。MDC1、NBS1
、BRCA1、53BP1はBRCTドメインを持つアダプタータンパク質であり、これ
らは様々なシグナル分子を損傷部位に集積させ、DNA修復やATMによるリン酸化を効
率よく行うための足場として機能すると考えられている。よって、これらの蛋白質も、ゲ
ノム損傷応答によって活性化される蛋白質の活性を正の方向または負の方向に制御する制
御因子として、本実施形態において好適に用いられる。
なお、その他の点については、実施形態9または10と同様であるため繰り返さない。
【0104】
<実施形態12:DDRに関係する蛋白質を含む自己複製維持促進剤>
本実施形態は、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋
白質を含む、色素幹細胞の自己複製維持促進剤である。後述の実施例に示すように、本発
明者らは、ゲノム損傷応答の主要な介在因子であるATM遺伝子を欠損したマウスについ
ても、放射線照射の影響を調べている。一般に、ゲノム損傷応答では、ATM、ATR、
H2AX(γ−H2AX)、53BP1等の種々の蛋白質が活性化され、これらの蛋白質
群が協働して損傷したDNAが修復されることが知られている(J.Wada Harper et al. M
olecular Cell. 28:739-745. 2007, Tom Misteli et al. Molecular Cell Biology. 10:2
43-254. 2009)。そのため、これらの蛋白質群の一種であるATM欠損マウスを用いるこ
とにより、色素幹細胞の異所性分化がゲノム損傷応答の一部として行われている可能性に
ついて調べることができる。その結果、ATMを欠損した色素幹細胞では、野生型と比較
して、色素細胞への分化をより敏感に引き起こし、より早期の脱色素化を引き起こすこと
が分かった。そして、この実験結果をより一般化して解釈すれば、当然のことながら、ゲ
ノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質について同様の
実験を行えば、その一種以上の蛋白質を欠損した色素幹細胞で、野生型と比較して、色素
細胞への分化をより敏感に引き起こし、より早期の脱色素化を引き起こすであろうと、基
礎医学、薬学、生化学分野の当業者であれば確信することは明らかである。すなわち、こ
の実験によって、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋
白質も、ATMまたはATM変異体と同様に、色素幹細胞の自己複製能力の維持を促進す
るという機能を有することが実証されたに等しいと言える。ため、それらを含む剤自体も
色素幹細胞の自己複製能力の維持を促進することが明らかである。なお、その他の点につ
いては、実施形態3と同様であるため繰り返さない。
【0105】
<実施形態12:DDRに関係する蛋白質の発現ベクターを含む自己複製維持促進剤>
本実施形態は、色素幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモーター配
列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている、ゲノム損傷誘発原により活性化さ
れる蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質をコードするヌクレオチド配列と、を有するベ
クターを含む、色素幹細胞の自己複製維持促進剤である。後述の実施例に示すように、A
TM遺伝子を欠損したマウスを用いた実験によって、ゲノム損傷誘発原により活性化され
る蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質も、ATMまたはATM変異体と同様に、色素幹
細胞の自己複製能力の維持を促進するという機能を有することが実証されたに等しい。そ
のため、それらをコードするヌクレオチド配列を有するベクターを含む剤自体も色素幹細
胞の自己複製能力の維持を促進することが明らかである。なお、その他の点については、
実施形態4と同様であるため繰り返さない。
【0106】
<実施形態13:DDRに関係する制御因子を含む自己複製維持促進剤>
本実施形態は、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋
白質の活性を制御する制御因子を含む、色素幹細胞の自己複製維持促進剤である。後述の
実施例に示すように、本発明者らは、ゲノム損傷応答の主要な介在因子であるATM遺伝
子を欠損したマウスについても、放射線照射の影響を調べている。一般に、ゲノム損傷応
答では、ATM、ATR、H2AX(γ−H2AX)、53BP1等の種々の蛋白質が活
性化され、これらの蛋白質群が協働して損傷したDNAが修復されることが知られている
(J.Wada Harper et al. Molecular Cell. 28:739-745. 2007, Tom Misteli et al. Mole
cular Cell Biology. 10:243-254. 2009)。そのため、これらの蛋白質群の一種であるA
TM欠損マウスを用いることにより、色素幹細胞の異所性分化がゲノム損傷応答の一部と
して行われている可能性について調べることができる。その結果、ATMを欠損した色素
幹細胞では、野生型と比較して、色素細胞への分化をより敏感に引き起こし、より早期の
脱色素化を引き起こすことが分かった。そして、この実験結果をより一般化して解釈すれ
ば、当然のことながら、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以
上の蛋白質について同様の実験を行えば、その一種以上の蛋白質を欠損した色素幹細胞で
、野生型と比較して、色素細胞への分化をより敏感に引き起こし、より早期の脱色素化を
引き起こすであろうと、基礎医学、薬学、生化学分野の当業者であれば確信することは明
らかである。その結果、当然のことではあるが、それらの活性を制御する制御因子を含む
剤自体も色素幹細胞の自己複製能を維持促進することが明らかである。すなわち、この実
験によって、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質
も、ATMまたはATM変異体と同様に、色素幹細胞の自己複製能力の維持を促進すると
いう機能を有することが実証されたに等しい。そのため、それらの活性を制御する制御因
子を含む剤自体も色素幹細胞の自己複製能力の維持を促進することが明らかである。なお
、その他の点については、実施形態11および12と同様であるため繰り返さない。
【0107】
<実施形態14:未分化性維持促進剤を含む脱色素化治療薬>
本実施形態は、上述した色素幹細胞の未分化性維持促進剤を含む、哺乳動物の脱色素化
治療薬である。後述の実施例に示すように、上述した色素幹細胞の未分化性維持促進剤は
、色素幹細胞の未分化性を維持促進するという機能を有するため、それを含む哺乳動物の
脱色素化治療薬自体も色素幹細胞の未分化性を維持促進する。これにより、脱色素化治療
薬は、色素幹細胞の枯渇による脱色素化を抑制することができる。
【0108】
なお、本実施形態において、「脱色素化治療薬」とは、いわゆる白髪化(または哺乳動
物の毛髪の脱色素化)を抑制する作用を有する医薬品を意味する。ここで、「白髪化」と
は、当初黒い毛髪を有していたのが徐々に白い毛髪が増えていく現象を意味する。また、
「毛髪」とは、ケラチンを主成分とする毛幹及び毛根からなる皮膚の付属器官のことをい
い、例えば、頭髪や体毛等がこれに含まれる。そして、「毛髪の脱色素化」とは、本来メ
ラニン色素を有する毛髪が、色素細胞からのメラニン色素の供給が減少することにより、
毛髪の色が白色に近づいていくことをいう。例えば、頭髪の白髪への変化や体毛の白毛化
がこれに含まれる。
【0109】
ここで、本実施形態の治療薬は、例えば、経口投与や経皮投与によりその効果を奏する
可能性が考えられ、その剤形として、例えば散剤、丸剤、錠剤、カプセル剤、クリーム剤
、内用液剤、注射剤であってもよい。また、この治療薬に含まれる色素幹細胞の未分化性
維持促進剤の有効成分(上述の各種蛋白質、ベクターまたは制御因子など)の含有量は、
有効成分の種類および患者の疾患に応じて医師等の医療専門家の裁量によって適宜調整さ
れる。さらに、この治療薬の投与頻度、投与間隔などについても、同様に、有効成分の種
類および患者の疾患に応じて医師等の医療専門家の裁量によって適宜調整される。なお、
これらの治療薬の説明は、他の実施形態にも共通する。
【0110】
<実施形態15:自己複製阻害抑制剤を含む脱色素化治療薬>
本実施形態は、上述した色素幹細胞の自己複製阻害抑制剤を含む、哺乳動物の脱色素化
治療薬である。後述の実施例に示すように、上述した色素幹細胞の未分化性維持促進剤は
、色素幹細胞の自己複製能力の維持を促進するという機能を有するため、それを含む哺乳
動物の脱色素化治療薬自体も色素幹細胞の自己複製能力の維持を促進する。これにより、
脱色素化治療薬は、色素幹細胞の枯渇による脱色素化を抑制することができる。なお、そ
の他の点については、実施形態14と同様であるため繰り返さない。
【0111】
<実施形態15:DDRに関係する蛋白質を含む組織幹細胞の未分化性維持促進剤>
本実施形態は、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋
白質を含む、組織幹細胞の未分化性維持促進剤である。後述の実施例に示すように、本発
明者らは、ゲノム損傷応答の主要な介在因子であるATM遺伝子を欠損したマウスについ
ても、放射線照射の影響を調べている。一般に、ゲノム損傷応答では、ATM、ATR、
H2AX(γ−H2AX)、53BP1等の種々の蛋白質が活性化され、これらの蛋白質
群が協働して損傷したDNAが修復されることが知られている(J.Wada Harper et al. M
olecular Cell. 28:739-745. 2007, Tom Misteli et al. Molecular Cell Biology. 10:2
43-254. 2009)。そのため、これらの蛋白質群の一種であるATM欠損マウスを用いるこ
とにより、色素幹細胞の異所性分化がゲノム損傷応答の一部として行われている可能性に
ついて調べることができる。その結果、ATMを欠損した色素幹細胞では、野生型と比較
して、色素細胞への分化をより敏感に引き起こし、より早期の脱色素化を引き起こすこと
が分かった。この実験結果をより一般化して解釈すれば、ゲノム損傷誘発原により活性化
される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質は、組織幹細胞の未分化性を維持促進すると
いう機能を有することが実証されたに等しいと言える。そのため、それらを含む剤自体も
組織幹細胞の未分化性を維持促進することが明らかである。
【0112】
このように、本発明者らは、ゲノム損傷誘発原により組織幹細胞のゲノムが損傷を受ける
と、上述した組織幹細胞の異所性分化が引き起こされることを見出している。すなわち、
組織幹細胞の未分化性維持促進とは、このようなゲノム損傷誘発原により引き起こされる
、組織幹細胞の成熟細胞への分化を抑制することをいう。なお、これらの組織幹細胞の未
分化性維持促進の説明は、他の実施形態にも共通する。
【0113】
ここで、色素幹細胞以外の組織幹細胞としては、特に限定せず、多数の任意の組織幹細
胞を挙げることができるが、例えば、精子幹細胞については、ゲノム損傷応答によってA
TMやH2AX(γ−H2AX)等のDDRに関係する蛋白質が活性化されることを実証
する有力な実験結果が報告されているために特に好ましい。なお、これら以外の組織幹細
胞としては、例えば、血液幹細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞、角膜上皮幹細胞、表皮幹
細胞などが挙げられる。なお、これらの組織幹細胞の説明は、他の実施形態にも共通する
。また、その他の点については、実施形態1と同様であるため繰り返さない
【0114】
<実施形態16:DDRに関係する蛋白質の発現ベクターを含む組織幹細胞の未分化性
維持促進剤>
本実施形態は、組織幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモーター配
列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている、ゲノム損傷誘発原により活性化さ
れる蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質をコードするヌクレオチド配列と、を有するベ
クターを含む、組織幹細胞の未分化性維持促進剤である。後述の実施例に示すように、A
TM遺伝子を欠損したマウスを用いた実験によって、ゲノム損傷誘発原により活性化され
る蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質も、ATMまたはATM変異体と同様に、組織幹
細胞の組織幹細胞の未分化性を維持促進するという機能を有することが実証されたに等し
い。そのため、それらをコードするヌクレオチド配列を有するベクターを含む剤自体も色
素幹細胞の組織幹細胞の未分化性を維持促進することが明らかである。なお、その他の点
については、実施形態2と同様であるため繰り返さない。
【0115】
<実施形態17:DDRに関係する制御因子を含む組織幹細胞の未分化性維持促進剤>
本実施形態は、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋
白質の活性を制御する制御因子を含む、組織幹細胞の未分化性維持促進剤である。後述の
実施例に示すように、本発明者らは、ゲノム損傷応答の主要な介在因子であるATM遺伝
子を欠損したマウスについても、放射線照射の影響を調べている。一般に、ゲノム損傷応
答では、ATM、ATR、H2AX(γ−H2AX)、53BP1等の種々の蛋白質が活
性化され、これらの蛋白質群が協働して損傷したDNAが修復されることが知られている
(J.Wada Harper et al. Molecular Cell. 28:739-745. 2007, Tom Misteli et al. Mole
cular Cell Biology. 10:243-254. 2009)。そのため、これらの蛋白質群の一種であるA
TM欠損マウスを用いることにより、色素幹細胞の異所性分化がゲノム損傷応答の一部と
して行われている可能性について調べることができる。その結果、ATMを欠損した色素
幹細胞では、野生型と比較して、色素細胞への分化をより敏感に引き起こし、より早期の
脱色素化を引き起こすことが分かった。そして、この実験結果をより一般化して解釈すれ
ば、当然のことながら、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以
上の蛋白質について同様の実験を行えば、その一種以上の蛋白質を欠損した組織幹細胞で
、野生型と比較して、組織幹細胞への分化をより敏感に引き起こし、より早期の成熟分化
を引き起こすであろうと、基礎医学、薬学、生化学分野の当業者であれば確信することは
明らかである。その結果、当然のことではあるが、それらの活性を制御する制御因子を含
む剤自体も組織幹細胞の未分化性を維持促進することが明らかである。すなわち、この実
験によって、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質
も、ATMまたはATM変異体と同様に、組織幹細胞の未分化性の維持を促進するという
機能を有することが実証されたに等しい。そのため、それらの活性を制御する制御因子を
含む剤自体も組織幹細胞の未分化性の維持を促進することが明らかである。なお、その他
の点については、実施形態11と同様であるため繰り返さない。
【0116】
<実施形態18:組織幹細胞の未分化性維持促進剤を含む、老化抑制治療薬>
本実施形態は、上述した組織幹細胞の未分化性維持促進剤を含む、哺乳動物の老化抑制
治療薬である。後述の実施例に示すように、上述した組織幹細胞の未分化性維持促進剤は
、組織幹細胞の未分化性を維持促進するという機能を有するため、それを含む哺乳動物の
老化抑制治療薬自体も組織幹細胞の未分化性を維持促進する。これにより、老化抑制治療
薬は、組織幹細胞の枯渇による老化現象を抑制することができる。
【0117】
なお、本実施形態において、「老化治療薬」とは、いわゆる老化を抑制する作用を有す
る医薬品を意味する。ここで、「老化」とは、生物学的には時間の経過とともに生物の個
体に起こる変化を意味し、その中でも特に生物が死に至るまでの間に起こる機能低下やそ
の過程で生じる現象を意味する。また、「老化抑制」のレベルは、細胞レベル、組織レベ
ル、個体レベルのいずれのレベルの老化を抑制するものであってもよい。例えば、培養細
胞を用いた研究から細胞レベルでの老化(細胞老化)が知られている。この細胞レベルの
老化では、生体組織から取り出した細胞を試験管内で培養すると、細胞分裂の回数に制限
あり、その一つの原因は染色体末端のテロメア構造が短くなったために老化が進行したと
される。そのため、例えば、染色体末端のテロメア構造が短くなるのを抑制できることを
指標として老化の抑制について評価することが有効なこともありうる。もっとも、老化の
指標としては、この指標に限定されるものではなく、他にもSMP30など加齢に伴うマ
ーカーとして知られるものまた場合によっては、組織幹細胞の量や質などを指標として好
適に用いることができる。いずれの指標による老化を抑制した場合にも、本実施形態にお
ける「老化抑制」作用を有するものと評価できる。
【0118】
<実施形態19:DDRに関係する蛋白質またはその制御因子を含む、化粧品組成物>
本実施形態は、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋
白質またはその制御因子を含む、化粧品組成物である。この化粧品組成物は、後述の実施
例に示すように、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋
白質またはその制御因子が、組織幹細胞の未分化性を維持促進することにより、組織幹細
胞の分化による枯渇を抑制し、若々しい頭髪または素肌などを維持する作用を奏する。
【0119】
なお、本実施形態において、「化粧品組成物」とは、美容目的で顔面、皮膚または頭髪
等に塗布される組成物であって、特に好適には日本の厚生労働省が定める「皮膚用医薬部
外品」に含まれるものを意味する。本実施形態において、化粧品組成物は、上述のゲノム
損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質にくわえて、少なく
とも1つの他の通常の化粧品成分を含むことができ、これらは、特に抗酸化剤、香料、防
腐剤、中和剤、界面活性剤、日焼け止め、美白剤、ビタミン、湿潤剤、自己日焼け化合物
、アンチリンクル活性剤、皮膚軟化剤、親水性または親油性活性剤、遊離ラジカル捕捉剤
、デオドラント、金属イオン封鎖剤および皮膜形成剤およびこれらの混合物から選択する
ことができる。
【0120】
また、本実施形態において、「化粧品組成物」の形態としては、特に限定するものでは
ないが、例えば、整髪料、養毛料、頭皮料、毛髪着色料、洗髪料、ヘアリンス、化粧水、
化粧液、クリーム、乳液、日やけ(用)、日やけ止め(用)、洗浄料、ひげそり(用)、むだ毛
そり(用)、フェイシャルリンス、パック、化粧用油、ボディリンス、マッサージ(料)、フ
ァンデーション、化粧下地、おしろい、口紅、アイメークアップ、頬化粧料、ボディメー
クアップ、香水、オーデコロン、浴用化粧料、爪化粧料、ボディパウダーなどのいずれで
あってもよい。
【0121】
例えば、本実施形態では、化粧品組成物として日本国内で製造・販売する場合には、「
頭皮、毛髪をすこやかに保つ」、「毛髪にはり、こしを与える」、「肌を整える」、「皮
膚をすこやかに保つ」などの化粧品の表示に関する公正競争規約で認められた表示を虚偽
誇大表示にならない形で表示した化粧品組成物などが挙げられる。なお、後述の実施例に
おける実験データから、本実施形態の化粧品組成物が含有するゲノム損傷誘発原により活
性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質またはその制御因子が、組織幹細胞の未
分化性を維持促進することにより、組織幹細胞の分化による枯渇を抑制することによって
、「頭皮、毛髪をすこやかに保つ」、「毛髪にはり、こしを与える」、「肌を整える」、
「皮膚をすこやかに保つ」などの効果効能を有することは当業者にとって明らかであると
考えられる。
【0122】
<実施形態20:DDRに関係する蛋白質またはその制御因子を含む、機能性食品>
本実施形態は、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白
質またはその制御因子を含む、機能性食品である。この機能性食品は、後述の実施例に示
すように、後述の実施例に示すように、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に
含まれる一種以上の蛋白質またはその制御因子が、組織幹細胞の未分化性を維持促進する
ことにより、若々しい頭髪、素肌または体内環境などを維持する作用を奏する。
【0123】
なお、本実施形態の機能性食品の形態は、特に限定されないが、例えば、スティック状
やビスケット状等の形状にした菓子類、流動食に混入したもの、甘味料等を加えドリンク
剤としたもの、さらに錠剤状、カプセル状、粉末状にしたものなどが挙げられる。
【0124】
また、本実施形態において、「機能性食品」とは、何らかの生理的に優れた機能を有する
食品であればよく、当然のことながら、いわゆる日本の厚生労働省の許認可する「特定保
健用食品(条件付き特定保健用食品を含む)」および「栄養機能食品」などの「保険機能
食品」を含むものではあるが、これらの保険機能食品に限定されるものではない。すなわ
ち、本実施形態において、「機能性食品」とは、日本の厚生労働省の許認可が不要な「健
康食品」(健康増進法の虚偽誇大表示の禁止規定のほか、食品衛生法の表示基準(保健機
能食品と紛らわしい名称、栄養成分の機能及び特定の保健の目的が期待できる旨の表示を
してはならない)、薬事法、景品表示法等に抵触しないものに限る)も含む概念である。
例えば、本実施形態では、健康食品として日本国内で製造・販売する場合には、「白髪が
気になる方へ」、「いつまでも若々しいヘアスタイルでいたい」、「黒髪和風美人になり
たい」などの表示を虚偽誇大表示にならない形で表示した食品などが挙げられる。なお、
後述の実施例における実験データから、本実施形態の機能性食品が含有するゲノム損傷誘
発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質またはその制御因子が、組
織幹細胞の未分化性を維持促進することにより、組織幹細胞の分化による枯渇を抑制する
ことによって、「白髪が気になる方へ」、「いつまでも若々しいヘアスタイルでいたい」
、「黒髪和風美人になりたい」などのニーズを有する消費者に適した食品であることは当
業者にとって明らかであると考えられる。
【0125】
また、本実施形態において、「機能性食品」とは、後述する「療養食」、「介護食」など
も含む概念である。ここで、本実施形態において、「療養食」とは、特に限定はされない
が、患者が罹っている病に応じて栄養量を調節して、病気の進行を防いだり、改善を目指
したりするための食事であって、例えば抗がん剤の副作用などで白髪化が進行しているた
めに、みずからの容姿の衰えを気にしている患者のための療養食であってもよい。この療
養食の具体例としては、一般的な療養食にゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群
に含まれる一種以上の蛋白質またはその制御因子が添加されたものや、主食もしくは副食
にこれらの蛋白質が添加されているもの等が挙げられる。
【0126】
本実施形態において、「介護食」とは、特に限定はされないが、摂食・嚥下機能が低下し
た人に対応できるように食べやすく加工した食事であって、通常の形態では食物を摂取す
ることができない人や摂取した食物から十分に栄養を吸収することができないが、老人介
護施設内での異性の目を気にして毎日髪染めを行っている高齢者等のために、摂取・嚥下
しやすく加工され、栄養吸収を促進させることを目指すための食事であってもよい。この
介護食の具体例としては、一般的な介護食にゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質
群に含まれる一種以上の蛋白質またはその制御因子が添加されたものや、主食もしくは副
食にこれらの蛋白質が添加されたものであって、通常のものよりも含有する水分量を増加
し、軟らかく加工したもの、これらの蛋白質またはその制御因子の添加により粘性が増し
てまとまりがよくなったもの等が挙げられる。
【0127】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であ
り、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0128】
例えば、本実施形態の剤および治療薬の投与対象は、哺乳動物であれば性別・年齢を問
わず種も特に限定されないが、特に毛髪の脱色素化や老化の進行が懸念される場合に予防
的にあるいは治療的に投与されるのが望ましい。なお、親族に毛髪の脱色素化が進行する
傾向の見られる場合に、遺伝的にゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれ
る一種以上の蛋白質またはその変異体の遺伝子を欠損しているか、その遺伝子の発現が不
良である可能性があるため、特に投与の対象として好ましい。
【0129】
さらに、これらの投与対象に対しては、事前に周知の種々の手法を用いて遺伝子を検査
を行った結果、実際にゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上
の蛋白質またはその変異体の遺伝子を欠損しているか、その遺伝子の発現が不良であるこ
とが確認されている雄のヒトを対象とすることがより好ましい。
【実施例】
【0130】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものでは
ない。
【0131】
(実施例1) ゲノム損傷誘発原による色素幹細胞の運命解析
(1)実験動物
本研究で用いたDct−lacZトランスジェニックマウスは英国MRC、Ian Jackson博
士より提供されたものを、XPD突然変異マウスはEMC、Jan Hoeijmakers博士より提供さ
れたものを用いた。
【0132】
(2)紫外線照射方法
マウスへの紫外線照射は、Hitachi MBR-1520(Hitachi Medical)を用いて、50kV
p、20mAの強度で、2.0mmのアルミニウムフィルターを用いて、0.4Gy/m
inの照射量で照射した。
【0133】
(3)免疫組織化学
マウスの背部皮膚を4%パラホルムアルデヒド固定、またはそのままで、OCTcom
pound (Sakura Finetechnical)で凍結包埋した後、8μmの切片にし、3%スキム
ミルクを用いて常温で30分間ブロッキングした。その後、一次抗体を適当に希釈し4℃
で一晩反応させ、PBSで洗浄した後に二次抗体を反応させた。
免疫染色に使用した一次抗体は、抗リン酸化ヒストンH2AX抗体(Cell Signaling)、
抗53BP1抗体(Lifespan BioSciences)、抗βガラクトシダーゼ抗体 (Cappel)であ
る。二次抗体はAlexaFlour488、568、594(Molecular Probes)を用い
た。
【0134】
(結果および考察)
本発明者らは、バルジ領域における異所性の色素細胞の出現が、ゲノム損傷応答反応に
関与している可能性について着目し、生体マウスに対する放射線照射の影響を調べた。
【0135】
まず、放射線照射後のマウスにおいて、図1に示すように、体色および組織学的にどの
ような変化が現れるかについて調べた。その結果、マウスに対して5Gyの放射線を照射
することにより白髪が誘導された(図1a、b)。また、放射照射後の成長期V期のマウ
スを用いて、バルジ領域における組織学的な変化を調べたところ、未分化な色素幹細胞に
代わり、樹状の形態をとる異所性に色素顆粒を持った色素細胞が出現していた(図1c〜
j)。
【0136】
また、放射線照射後の次の毛周期においては、バルジ領域において色素幹細胞は確認さ
れず、毛髪は脱色素化していた(図1k〜n)。さらに、毛周期における詳細な分析によ
り、バルジ領域において異所性に発現した色素細胞は、成長期VIの時期特異的にバルジ
領域の周囲を取り囲んでいるケラチノサイトによって貪食され、バルジ領域から消失して
いることが明らかとなった。
【0137】
これらのことから、放射線照射は、バルジ領域において色素幹細胞の分化を誘導するこ
とにより色素幹細胞の自己複製を阻害し、その結果として色素幹細胞の枯渇と次の毛周期
における白髪を引き起こしていると考えられる(図1k〜o)。
【0138】
また、ブルスファン、マイトマイシンC、過酸化水素等の様々の化学物質をマウスに投
与した場合も、放射線照射と同様に、バルジ領域において色素幹細胞から色素細胞への分
化が誘導され、次の毛周期において白髪が誘導された(図1p〜w)。
【0139】
また、上述した放射線や化学物質により誘導された色素細胞は、加齢マウス(生後22
カ月)のバルジ領域で確認される細胞に酷似している(非特許文献2、図1x)。さらに
、早老的な形質を発現することが知られているXPDR722W/R・722Wマウスに
おいても、成長期中期のバルジ領域で色素細胞が確認され、野生型マウスでは確認されな
かったことから、内因性のゲノム損傷であっても同様に脱色素化を引き起こすことが示唆
された(図1y、z)。
【0140】
以上の結果から、色素幹細胞は、放射線照射以外でも様々な種類のゲノム損傷誘発原に
よりその未分化性および自己複製能力を失い、その結果として色素幹細胞の枯渇と、次の
毛周期での脱色素化が引き起こされることが示された。
【0141】
次に、放射線照射後に、色素幹細胞においてゲノム損傷応答が活性化されているかどう
かを調べるため、リン酸化H2AX(γ−H2AX)、53BP1の核内でのフォーカス
形成を免疫組織化学によって調べた。なお、γ−H2AXおよび53BP1は、ゲノム損
傷誘発原により活性化される蛋白質群の一種である。
【0142】
5Gyの放射線照射後では、バルジ領域周辺の色素幹細胞のみならず色素幹細胞以外の
細胞にもγ−H2AXが現れており、色素幹細胞を含んだバルジ領域全体が放射線照射に
よるゲノム損傷に反応していることが示された(図2a〜j)。さらに、γ−H2AXの
発現は、徐々に数と強度を減らしながらも、放射線照射後6時間まで保持されていた(図
2f、h、k、l)。特に、バルジ領域に発現した異所性の色素細胞には、γ−H2AX
が成長期IV期まで発現していることが分かった(図2k、l)。
【0143】
以上の結果から、バルジ領域における異所性の色素細胞の出現が、ゲノム損傷応答反応
の一部として行われていることが明らかとなった。また、放射線照射により修復できない
レベルのゲノム損傷を被るか、もしくは過度のゲノム損傷修復を行うような場合には、色
素幹細胞がバルジ領域において分化方向に運命付けられることが分かった。
【0144】
すなわち、バルジ領域における異所性の色素細胞の出現は、ゲノム損傷誘導原により活
性化された蛋白質群により引き起こされることが明らかとなったため、本実施形態におい
て、この蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質を発現またはその蛋白質の活性を制御する
ことにより、色素幹細胞の分化が抑制されるとともに、色素幹細胞の自己複製能力が維持
され、毛髪の脱色素化を抑制できることが明らかとなった。
【0145】
また、色素幹細胞と同様のメカニズムにより、組織幹細胞の分化が抑制されるとともに
、組織幹細胞の自己複製能力が維持され、老化を抑制できることが可能であると考えられ
る。
【0146】
(実施例2)ATM欠損マウスの解析
(1)実験動物
本研究で用いたATM欠損マウスは、St Jude Children’s Research HospitalのPeter
J, McKinnon博士より提供されたものを用いた。
【0147】
(2)免疫組織化学
マウスの背部皮膚を実施例1と同様の方法で免疫染色した。免疫染色に使用した一次抗
体は、抗リン酸化ヒストンH2AX抗体(Cell Signaling)、抗βガラクトシダーゼ抗体 (
Cappel)である。
【0148】
(結果および考察)
本発明者らは、バルジ領域における異所性の色素細胞の出現がゲノム損傷応答反応に関
与している可能性について検討するため、ATM欠損マウスおよびコントロールマウス(
ATM+/+、ATM+/−)に対して放射線照射を行い、その経過について観察した。
【0149】
まず、ATM欠損マウスおよびコントロールマウスに3Gyの放射線を照射し、その体
色の変化について調べた。その結果、ATM欠損マウスでは放射線照射後の1回目の毛周
期から劇的に白髪が誘導されたが、コントロールマウスでは放射線照射後の2回目の毛周
期でもほとんど白髪は誘導されなかった(図3a)。
【0150】
次に、ATM欠損マウスおよびコントロールマウスに3Gyの放射線を照射し、免疫組
織化学によりγ−H2AXの発現を調べた。上述したように、γ−H2AXはゲノム損傷
応答において活性化される蛋白質群のうちの一種である。したがって、バルジ領域におけ
るγ−H2AXの発現を調べることにより、色素幹細胞においてゲノム損傷応答が引き起
こされているかどうかが分かる。
【0151】
その結果、放射線照射後6時間では、ATM欠損マウスおよびコントロールマウスの全
てにおいてγ−H2AXが発現しているが(図3b〜d)、放射線照射後12時間では、
ATM欠損マウスのみでγ−H2AXが発現していることが分かった(図3e〜g)。す
なわち、ATM欠損マウスでは、コントロールマウスと比較して、長時間ゲノム損傷応答
が引き起こされていることが分かった。
【0152】
また、ATM欠損マウスおよびコントロールマウスに3Gyの放射線を照射し、免疫組
織化学により放射線照射5日後のバルジ領域における色素細胞の発現を調べた。その結果
、ATM欠損マウスでは、バルジ領域に樹状の異所性に着色した色素細胞が確認されるが
(図3j)、コントロールマウスでは色素細胞は確認されなかった(図3h、i)。また
、放射線照射後において、ATM欠損マウスでは色素幹細胞の異所性分化が著しく増加す
るが、コントロールマウスでは色素幹細胞の異所性分化はわずかに増加する程度であるこ
とが分かった(図3k)。
【0153】
さらに、ATM欠損マウスで誘導された色素細胞は、野生型マウスに5Gyの放射線を
照射した場合に現れる色素細胞と顕著な違いがないことが明らかになった。これにより、
ATM遺伝子の欠損は、バルジ領域において色素幹細胞の異所性分化を促し、結果として
早期の脱色素化を引き起こすことを示唆している。
【0154】
特に、毛色や色素幹細胞に検出可能な変化を見出すことができない線量である3Gyの
放射線を照射した野生型マウスにおいても、ゲノム損傷応答が著しく誘導されたことから
、ATMは低線量の放射線によるバルジ領域における色素幹細胞の分化と脱色素化の誘導
を防御していることが示唆される。
【0155】
さらに、ATM欠損マウスにおいては3Gyの放射線照射後のバルジ領域におけるゲノ
ム損傷応答が明らかに長時間にわたって観察された。このことは、ATM欠損マウスにお
いて、色素幹細胞でのゲノム損傷応答の効率が低下し、その結果生じた修復不可能なゲノ
ムの損傷により、色素幹細胞に分化を引き起こしているものと考えられる。
【0156】
すなわち、バルジ領域における異所性の色素細胞の出現は、ATMを含むゲノム損傷誘
導原により活性化された蛋白質群により引き起こされることが明らかとなったため、本実
施形態において、この蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質を発現またはその蛋白質の活
性を制御することにより、色素幹細胞の分化が抑制されるとともに、色素幹細胞の自己複
製能力が維持され、毛髪の脱色素化を抑制できることが明らかとなった。
【0157】
また、色素幹細胞と同様のメカニズムにより、組織幹細胞の分化が抑制されるとともに
、組織幹細胞の自己複製能力が維持され、老化を抑制できることが可能であると考えられ
る。
【0158】
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の
変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者の理解され
るところである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATMまたは色素細胞の未分化性維持促進作用を有するATM変異体を含む、色素幹細
胞の未分化性維持促進剤。
【請求項2】
前記ATMまたは前記ATM変異体が、
(a)配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるATM、
(b)配列番号1で表わされるアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有するアミノ
酸配列からなり、かつ色素幹細胞の未分化性維持促進作用を有するATM変異体、
(c)配列番号2で表わされるヌクレオチド配列がコードするATM、または
(d)配列番号2で表わされるヌクレオチド配列またはその相補鎖にストリンジェントな
条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞の未分化性維持促進作用を
有するATM変異体のいずれかである、請求項1記載の色素幹細胞の未分化性維持促進剤

【請求項3】
ATMまたはその変異体が色素幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロ
モーター配列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている、ATMまたはATM変
異体をコードするヌクレオチド配列と、を有するベクターを含む、色素幹細胞の未分化性
維持促進剤。
【請求項4】
前記ATMまたは前記ATM変異体をコードするヌクレオチド配列が、
(a)配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるATMをコードするヌクレオチド配
列、
(b)配列番号1で表わされるアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有するアミノ
酸配列からなり、かつ色素幹細胞の未分化性維持促進作用を有するATM変異体をコード
するヌクレオチド配列、
(c)配列番号2で表わされるヌクレオチド配列、または
(d)配列番号2で表わされるヌクレオチド配列またはその相補鎖にストリンジェントな
条件下でハイブリダイズし、かつ色素幹細胞の未分化性維持促進作用を有するATM変異
体をコードするヌクレオチド配列、
のいずれかを有するベクターを含む、請求項3記載の色素幹細胞の未分化性維持促進剤。
【請求項5】
ATRまたは色素細胞の未分化性維持促進作用を有するATR変異体を含む、色素幹細
胞の未分化性維持促進剤。
【請求項6】
前記ATRまたは前記ATR変異体が、
(a)配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなるATR、
(b)配列番号3で表わされるアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有するアミノ
酸配列からなり、かつ色素幹細胞の未分化性維持促進作用を有するATR変異体、
(c)配列番号4で表わされるヌクレオチド配列がコードするATR、または
(d)配列番号4で表わされるヌクレオチド配列またはその相補鎖にストリンジェントな
条件下でハイブリダイズする核酸がコードし、かつ色素幹細胞の未分化性維持促進作用を
有するATR変異体のいずれかである、請求項5記載の色素幹細胞の未分化性維持促進剤

【請求項7】
ATRまたはその変異体が色素幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロ
モーター配列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている、ATRまたはATR変
異体をコードするヌクレオチド配列と、を有するベクターを含む、色素幹細胞の未分化性
維持促進剤。
【請求項8】
前記ATRまたは前記ATR変異体をコードするヌクレオチド配列が、
(a)配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなるATRをコードするヌクレオチド配
列、
(b)配列番号3で表わされるアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有するアミノ
酸配列からなり、かつ色素幹細胞の未分化性維持促進作用を有するATR変異体をコード
するヌクレオチド配列、
(c)配列番号4で表わされるヌクレオチド配列、または
(d)配列番号4で表わされるヌクレオチド配列またはその相補鎖にストリンジェントな
条件下でハイブリダイズし、かつ色素幹細胞の未分化性維持促進作用を有するATR変異
体をコードするヌクレオチド配列、
のいずれかを有するベクターを含む、請求項7記載の色素幹細胞の未分化性維持促進剤。
【請求項9】
前記色素幹細胞の未分化性喪失は、バルジ領域における前記色素幹細胞の成熟色素細胞
への分化である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の色素細胞の未分化性維持促進剤。
【請求項10】
ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質を含む、色
素幹細胞の未分化性維持促進剤。
【請求項11】
前記ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質の活性
を制御する制御因子を含む、請求項10に記載の色素幹細胞の未分化性維持促進剤。
【請求項12】
前記制御因子は、化合物、オリゴヌクレオチド、ペプチドおよび蛋白質のいずれかであ
る、請求項11に記載の色素幹細胞の未分化性維持促進剤。
【請求項13】
色素幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモーター配列と、そのプロ
モーター配列の下流に連結されている、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に
含まれる一種以上の蛋白質をコードするヌクレオチド配列と、を有するベクターを含む、
色素幹細胞の未分化性維持促進剤。
【請求項14】
ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質の活性を制
御する制御因子を含む、色素幹細胞の未分化性維持促進剤。
【請求項15】
前記ゲノム損傷誘発原により引き起こされる、バルジ領域における前記色素幹細胞の成
熟色素細胞への分化を抑制する、請求項10〜14のいずれか1項に記載の色素幹細胞の
未分化性維持促進剤。
【請求項16】
ATMまたは色素細胞の自己複製維持促進作用を有するATM変異体を含む、色素幹細
胞の自己複製維持促進剤。
【請求項17】
ATMまたはその変異体が色素幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロ
モーター配列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている、ATMまたはATM変
異体をコードするヌクレオチド配列と、を有するベクターを含む、色素幹細胞の自己複製
維持促進剤。
【請求項18】
ATRまたは色素細胞の自己複製維持促進作用を有するATR変異体を含む、色素幹細
胞の自己複製維持促進剤。
【請求項19】
ATRまたはその変異体が色素幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロ
モーター配列と、そのプロモーター配列の下流に連結されている、ATRまたはATR変
異体をコードするヌクレオチド配列と、を有するベクターを含む、色素幹細胞の自己複製
維持促進剤。
【請求項20】
ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質を含む、色素
幹細胞の自己複製維持促進剤。
【請求項21】
前記ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質の活性
を制御する制御因子を含む、請求項20に記載の色素幹細胞の自己複製維持促進剤。
【請求項22】
前記制御因子は、化合物、オリゴヌクレオチド、ペプチド、蛋白質のいずれかである、
請求項21に記載の色素幹細胞の自己複製維持促進剤。
【請求項23】
色素幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモーター配列と、そのプロ
モーター配列の下流に連結されている、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に
含まれる一種以上の蛋白質をコードするヌクレオチド配列と、を有するベクターを含む、
色素幹細胞の自己複製維持促進剤。
【請求項24】
ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質の活性を制
御する制御因子を含む、色素幹細胞の自己複製維持促進剤。
【請求項25】
前記ゲノム損傷誘発原により引き起こされる、前記色素幹細胞の成熟色素細胞への異常
な成熟分化に伴う、バルジ領域における前記色素幹細胞の自己複製阻害を抑制する、請求
項20〜24のいずれか1項に記載の色素幹細胞の自己複製維持促進剤。
【請求項26】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の色素幹細胞の未分化性維持促進剤を含む、哺乳
動物の脱色素化治療薬。
【請求項27】
請求項16〜25のいずれか1項に記載の色素幹細胞の自己複製阻害抑制剤を含む、哺
乳動物の脱色素化治療薬。
【請求項28】
前記哺乳動物の脱色素化は、前記色素幹細胞の消失による脱色素化である、請求項26
または27に記載の哺乳動物の脱色素化治療薬。
【請求項29】
ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質を含む、組
織幹細胞の未分化性維持促進剤。
【請求項30】
前記ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質の活性
を制御する制御因子を含む、請求項29に記載の組織幹細胞の未分化性維持促進剤。
【請求項31】
前記制御因子は、化合物、オリゴヌクレオチド、ペプチド、蛋白質のいずれかである、
請求項30に記載の組織幹細胞の未分化性維持促進剤。
【請求項32】
組織幹細胞を含む領域において発現するように制御するプロモーター配列と、
そのプロモーター配列の下流に連結されている、ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋
白質群に含まれる一種以上の蛋白質をコードするヌクレオチド配列と、を有するベクター
を含む、組織幹細胞の未分化性維持促進剤。
【請求項33】
ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質の活性を制
御する制御因子を含む、組織幹細胞の未分化性維持促進剤。
【請求項34】
前記ゲノム損傷誘発原により引き起こされる、前記組織幹細胞の成熟細胞への分化を抑
制する、請求項29〜33のいずれか1項に記載の組織幹細胞の未分化性維持促進剤。
【請求項35】
請求項29〜34のいずれか1項に記載の組織幹細胞の未分化性維持促進剤を含む、哺
乳動物の老化抑制治療薬。
【請求項36】
ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質を含む、化
粧品組成物。
【請求項37】
ゲノム損傷誘発原により活性化される蛋白質群に含まれる一種以上の蛋白質を含む、機
能性食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−12045(P2011−12045A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244447(P2009−244447)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 「第7回幹細胞シンポジウムのプログラム抄録集」の表紙と奥付のコピー、及びプログラム番号P−66が掲載されている15、76ページのコピー
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】