説明

荷電粒子ビームの軸合わせ方法および荷電粒子ビーム装置

【課題】容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる荷電粒子ビームの軸合わせ方法を提供する。
【解決手段】荷電粒子ビームの軸合わせ方法は、試料上における荷電粒子ビームの入射方向での焦点位置、第1アライメントコイルの励磁電流、および第2アライメントコイルの励磁電流を制御して、少なくとも第1〜第6画像データを取得する画像データ取得工程(S10)と、少なくとも前記第1〜第6画像データから、荷電粒子ビームの軸合わせのための第1アライメントコイルの励磁電流値および第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する演算工程(S11〜S13)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビームの軸合わせ方法および荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生物、材料、半導体などの微細構造を観察、測定する走査型電子顕微鏡や半導体素子回路パターンの測長用走査型電子顕微鏡等の荷電粒子ビーム装置が知られている。
【0003】
図31は、従来の走査型電子顕微鏡の一例を示す図である。走査型電子顕微鏡1000では、電子銃102で発生させた荷電粒子ビームBを、対物レンズ絞り103を通過させた後、対物レンズ106で試料Sの表面にフォーカスさせる。走査コイル107によって、この荷電粒子ビームBを試料S上で走査すると、試料Sの表面から二次電子や反射電子が放出される。この二次電子や反射電子を電子検出器108で受け、その強度をビーム走査に同期させて画像表示装置109に表示する。
【0004】
走査型電子顕微鏡1000の対物レンズ絞り103、開き角補正レンズ105、および対物レンズ106に対する荷電粒子ビームBの軸合わせは、X軸方向に荷電粒子ビームを偏向させるビーム軸合わせコイル(以下、Xアライメントコイルという)104aと、Y軸方向に荷電粒子ビームを偏向させるビーム軸合わせコイル(以下、Yアライメントコイルという)104bとに流れる電流を制御することによって行われる。アライメントコイル104a,104bを組み合わせることで、荷電粒子ビームBを二次元的に偏向させることができる。なお、ここでは、対物レンズ106の光軸に沿う方向をZ方向とする。
【0005】
荷電粒子ビームBの軸合わせは、具体的には、まず、ウォブラ用信号発生器110で加速電圧用高圧電源111に信号を送ることによって、荷電粒子ビームBの加速電圧を周期的に微小量変化させ、試料S表面での荷電粒子ビームBのフォーカス(焦点)を微小に変化させる。もし光軸がずれていると、荷電粒子ビームBが対物レンズ106を斜めに通過するため、ウォブラ実行中には、図32(A)に示すように、フォーカスの変化に伴って像Iが所定の方向に移動する。一方、光軸が合った状態では、荷電粒子ビームBが対物レンズ106を垂直に通過するため、ウォブラ実行中には、図32(B)に示すように、フォーカスの変化に伴って像Iはほとんど移動しない。したがって、ウォブラ実行中の像Iの移動量を観察しながら、像Iの移動量がなるべく小さくなるようにXY調整ノブ112を手動で調整することによって、アライメントコイル104a,104bの電流値を光軸が合った状態に調整することができる。XY調整ノブ112は、Xアライメントコイル104aの電流値を調整するためのX調整ノブと、Yアライメントコイル104bの電流値を調整するためのY調整ノブと、を有している。XY調整ノブ112を操作することにより、駆動アンプ113を介して、Xアライメントコイル104aおよびYアライメントコイル104bの電流値を制御することができる。なお、ウォブラは、対物レンズ駆動アンプ115から供給される対物レンズ106の励磁電流を変化させて行うこともできる。
【0006】
この軸合わせを自動的に行う方法は、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1では、軸合わせの最適値を得るために、軸を一定量ずつ可変することにより調整する方法や、対物レンズ励磁を変化させた場合の像変位の方向に応じて軸の調整方向を定める方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−302564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した図31に示す走査型電子顕微鏡1000では、本質的に、荷電粒子ビームの軸ずれ方向と、Xアライメントコイル104aの偏向方向と、Yアライメントコイル104bの偏向方向との合成ベクトルがウォブラでの像移動ベクトルとなっている。そのため、Xアライメントコイル104aおよびYアライメントコイル104bの一方が最適になるように調整しても、ウォブラによる像移動は残る。したがって、最初に調整したXアライメントコイル104aの調整が不適当だとYアライメントコイル104bをどのように調整しても像移動が無くなる点は見つからない。このように、2つのアライメントコイルを調整して、像移動が無くなる1点を探すという調整作業は、装置の操作者にとって直感的に分かりづらく、大きな負担となる。
【0009】
このような問題に対して、特許文献1では、この軸合わせを自動で行う装置が開示されている。しかしながら、上述した特許文献1の軸合わせの方法では、軸合わせの最適値を求めるために、多数回の繰り返し動作が必要となる。
【0010】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる荷電粒子ビームの軸合わせ方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる荷電粒子ビーム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係る荷電粒子ビームの軸合わせ方法は、
荷電粒子ビームを第1方向に偏向させる第1アライメントコイル、および前記荷電粒子ビームを前記第1方向と交差する第2方向に偏向させる第2アライメントコイルによって前記荷電粒子ビームの軸を調整し、前記荷電粒子ビームを試料に照射して、試料から発生した信号を検出し画像データを取得する荷電粒子ビーム装置における荷電粒子ビームの軸合わせ方法であって、
前記試料上における前記荷電粒子ビームの入射方向での焦点位置、前記第1アライメントコイルの励磁電流、および前記第2アライメントコイルの励磁電流の条件を変えて、少なくとも第1〜第6画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記画像データ取得工程で取得した少なくとも前記第1〜第6画像データから、前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する演算工程と、
を含み、
前記画像データ取得工程において、
前記第1画像データは、前記焦点位置が第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が第2電流値である条件で取得され、
前記第2画像データは、前記焦点位置が第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得され、
前記第3画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から第1変化電流値だけ変化させた電流値である条件で取得され、
前記第4画像データは、前記焦点位置が前記第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から前記第1変化電流値だけ変化させた電流値である条件で取得され、
前記第5画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第1変化電流値だけ変化させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得され、
前記第6画像データは、前記焦点位置が前記第2位置であり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第1変化電流値だけ変化させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得される。
【0013】
このような荷電粒子ビームの軸合わせ方法によれば、第1〜第6画像データから荷電粒子ビームの軸合わせのための第1アライメントコイルの励磁電流値および第2アライメントコイルの励磁電流値を求めることができる。このように荷電粒子ビームの軸合わせのための画像データの取得数が少なくて済むため、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる。したがって、装置の操作者の負担を軽減し、荷電粒子ビームの軸合わせに要する時間を短縮できる。
【0014】
(2)本発明に係る荷電粒子ビームの軸合わせ方法において、
前記演算工程において、
前記第1画像データと前記第2画像データとの間の位置ずれ量を示す第1画像変位ベクトルと、
前記第3画像データと前記第4画像データとの間の位置ずれ量を示す第2画像変位ベクトルと、
前記第5画像データと前記第6画像データとの間の位置ずれ量を示す第3画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第3画像変位ベクトルから前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出してもよい。
【0015】
(3)本発明に係る荷電粒子ビームの軸合わせ方法において、
前記画像データ取得工程において、さらに、第7画像データおよび第8画像データを取得し、
前記第7画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から第2変化電流値だけ変化させた電流値である条件で取得され、
前記第8画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第2変化電流値だけ変化させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得されてもよい。
【0016】
(4)本発明に係る荷電粒子ビームの軸合わせ方法において、
前記演算工程において、さらに、
前記第1画像データと前記第7画像データとの間の位置ずれ量を示す第4画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第8画像データとの間の位置ずれ量を示す第5画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第5画像変位ベクトルから前記荷電粒子ビームの軸を合わせるための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出してもよい。
【0017】
このような荷電粒子ビームの軸合わせ方法によれば、演算精度を高めつつ、画像データを取得するための条件(撮影条件)を緩和することができる。
【0018】
(5)本発明に係る荷電粒子ビームの軸合わせ方法において、
前記演算工程において、さらに、
前記第1画像データと前記第3画像データとの間の位置ずれ量を示す第4画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第5画像データとの間の位置ずれ量を示す第5画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第5画像変位ベクトルから前記荷電粒子ビームの軸を合わせるための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出してもよい。
【0019】
このような荷電粒子ビームの軸合わせ方法によれば、第1〜第6画像データから荷電粒子ビームの軸合わせのための第1アライメントコイルの励磁電流値および第2アライメントコイルの励磁電流値を求めることができる。このように荷電粒子ビームの軸合わせのための画像データの取得数が少なくて済むため、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる。したがって、装置の操作者の負担を軽減し、荷電粒子ビームの軸合わせに要する時間を短縮できる。
【0020】
(6)本発明に係る荷電粒子ビーム装置は、
荷電粒子ビームを第1方向に偏向させる第1アライメントコイル、および前記荷電粒子ビームを前記第1方向と交差する第2方向に偏向させる第2アライメントコイルによって前記荷電粒子ビームの軸を調整し、前記荷電粒子ビームを試料に照射して、試料から発生した信号を検出し画像データを取得する荷電粒子ビーム装置であって、
前記試料上における前記荷電粒子ビームの入射方向での焦点位置、前記第1アライメントコイルの励磁電流、および前記第2アライメントコイルの励磁電流の条件を変えて、少なくとも第1〜第6画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データ取得手段が取得した少なくとも前記第1〜第6画像データから、前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する演算手段と、
を含み、
前記第1画像データは、前記焦点位置が第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が第2電流値である条件で取得され、
前記第2画像データは、前記焦点位置が第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得され、
前記第3画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から第1変化電流値だけ変化させた電流値である条件で取得され、
前記第4画像データは、前記焦点位置が前記第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から前記第1変化電流値だけ変化させた電流値である条件で取得され、
前記第5画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第1変化電流値だけ変化させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得され、
前記第6画像データは、前記焦点位置が前記第2位置であり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第1変化電流値だけ変化させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得される。
【0021】
このような荷電粒子ビーム装置によれば、第1〜第6画像データから荷電粒子ビームの軸合わせのための第1アライメントコイルの励磁電流値および第2アライメントコイルの励磁電流値を求めることができる。このように荷電粒子ビームの軸合わせのための画像データの取得数が少なくて済むため、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる。したがって、装置の操作者の負担を軽減し、荷電粒子ビームの軸合わせに要する時間を短縮できる。
【0022】
(7)本発明に係る荷電粒子ビーム装置において、
前記演算手段は、
前記第1画像データと前記第2画像データとの間の位置ずれ量を示す第1画像変位ベクトルと、
前記第3画像データと前記第4画像データとの間の位置ずれ量を示す第2画像変位ベクトルと、
前記第5画像データと前記第6画像データとの間の位置ずれ量を示す第3画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第3画像変位ベクトルから前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出してもよい。
【0023】
(8)本発明に係る荷電粒子ビーム装置において、
前記画像データ取得手段は、さらに、第7画像データと第8画像データを取得し、
前記第7画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から第2変化電流値だけ変化させた電流値である条件で取得され、
前記第8画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第2変化電流値だけ変化させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得されてもよい。
【0024】
(9)本発明に係る荷電粒子ビーム装置において、
前記演算手段は、さらに、
前記第1画像データと前記第7画像データとの間の位置ずれ量を示す第4画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第8画像データとの間の位置ずれ量を示す第5画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第5画像変位ベクトルから前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出してもよい。
【0025】
このような荷電粒子ビーム装置によれば、演算精度を高めつつ、画像データを取得するための条件(撮影条件)を緩和することができる。
【0026】
(10)本発明に係る荷電粒子ビーム装置において、
前記演算手段は、さらに、
前記第1画像データと前記第3画像データとの間の位置ずれ量を示す第4画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第5画像データとの間の位置ずれ量を示す第5画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第5画像変位ベクトルから前記荷電粒子ビームの軸を合わせるための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出してもよい。
【0027】
このような荷電粒子ビーム装置によれば、第1〜第6画像データから荷電粒子ビームの軸合わせのための第1アライメントコイルの励磁電流値および第2アライメントコイルの励磁電流値を求めることができる。このように荷電粒子ビームの軸合わせのための画像データの取得数が少なくて済むため、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる。したがって、装置の操作者の負担を軽減し、荷電粒子ビームの軸合わせに要する時間を短縮できる。
【0028】
(11)本発明に係る荷電粒子ビーム装置において、
前記画像データ取得手段は、前記荷電粒子ビームを発生するビーム源の加速電圧および対物レンズの励磁電流値の少なくとも一方を制御することによって、前記焦点位置を制御してもよい。
【0029】
(12)本発明に係る荷電粒子ビームの軸合わせ方法において、
前記演算工程では、算出された前記第1〜第3画像変位ベクトルを、前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値の算出に用いるか否かを判定し、
前記第1〜第3画像変位ベクトルを算出に用いないと判定した場合、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、前記第1〜第6画像データを取得してもよい。
【0030】
このような荷電粒子ビームの軸合わせ方法によれば、荷電粒子ビームの軸合わせ後に、荷電粒子ビームの軸合わせ前よりも、荷電粒子ビームの軸がずれることを防ぐことができる。
【0031】
(13)本発明に係る荷電粒子ビームの軸合わせ方法において、
前記演算工程では、算出された前記第4および前記第5画像変位ベクトルを、前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値の算出に用いるか否かを判定し、
前記第4および第5画像変位ベクトルを算出に用いないと判定した場合、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、前記第1〜第6画像データを取得してもよい。
【0032】
このような荷電粒子ビームの軸合わせ方法によれば、荷電粒子ビームの軸合わせ後に、荷電粒子ビームの軸合わせ前よりも、荷電粒子ビームの軸がずれることを防ぐことができる。
【0033】
(14)本発明に係る荷電粒子ビームの軸合わせ方法において、
前記第1アライメントコイルおよび前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記演算工程で算出された励磁電流値であって、互いに異なる前記焦点位置である条件で取得された2つの画像データを取得する工程と、
前記2つの画像データから、第6画像変位ベクトルを算出する工程と、
前記第6画像変位ベクトルの大きさが前記第1画像変位ベクトルの大きさよりも大きいか否かを判定する第2判定工程と、をさらに含み、
前記第2判定工程で前記第6画像変位ベクトルの大きさが前記第1画像変位ベクトルの大きさよりも大きいと判定された場合、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、前記第1〜第6画像データを取得してもよい。
【0034】
このような荷電粒子ビームの軸合わせ方法によれば、荷電粒子ビームの軸合わせ後に、荷電粒子ビームの軸合わせ前よりも、荷電粒子ビームの軸がずれることを防ぐことができる。
【0035】
(15)本発明に係る荷電粒子ビームの軸合わせ方法は、
荷電粒子ビームを第1方向に偏向させる第1アライメントコイル、および前記荷電粒子ビームを前記第1方向と交差する第2方向に偏向させる第2アライメントコイルによって前記荷電粒子ビームの軸を調整し、前記荷電粒子ビームを試料に照射して、試料から発生した信号を検出し画像データを取得する荷電粒子ビーム装置における荷電粒子ビームの軸合わせ方法であって、
前記試料上における前記荷電粒子ビームの入射方向での焦点位置、前記第1アライメントコイルの励磁電流、および前記第2アライメントコイルの励磁電流の条件を変えて、第1〜第5画像データを取得する第1の画像データ取得工程と、
第6画像データを取得する第2の画像データ取得工程と、
前記第1〜第5画像データから、第1〜第4画像変位ベクトルを算出する第1の演算工程と、
前記第1〜第4画像変位ベクトルに基づいて、第7および第8画像データの取得条件を決定する画像取得条件決定工程と、
前記画像取得条件決定工程で決定された取得条件に基づいて、前記第7および前記第8画像データを取得する第3の画像データ取得工程と、
前記第1〜第3の画像データ取得工程で取得した前記第1〜第8画像データから、前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する第2の演算工程と、
を含み、
前記第1の画像データ取得工程において、
前記第1画像データは、前記焦点位置が第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が第2電流値である条件で取得され、
前記第2画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から第1変化電流値だけ増加させた電流値である条件で取得され、
前記第3画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第1変化電流値だけ増加させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得され、
前記第4画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から前記第1変化電流値だけ減少させた電流値である条件で取得され、
前記第5画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第1変化電流値だけ減少させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得され、
前記第2の画像データ取得工程において、
前記第6画像データは、前記焦点位置が第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルが前記第2電流値である条件で取得され、
前記第1の演算工程において、
前記第1画像データと前記第3画像データとの間の位置ずれ量を示す前記第1画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第2画像データとの間の位置ずれ量を示す前記第2画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第5画像データとの間の位置ずれ量を示す前記第3画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第4画像データとの間の位置ずれ量を示す前記第4画像変位ベクトルと、
を算出し、
画像取得条件決定工程において、
前記第1〜第4画像変位ベクトルの中で隣り合う2つのベクトルの組を所定の条件に基づき選択して、これにより第7画像データの前記第2アライメントコイルの励磁電流値および前記第8画像データの前記第1アライメントコイルの励磁電流値を決定し、
前記第3の画像データ取得工程において、
前記第7画像データは、前記焦点位置が前記第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルが前記画像取得条件決定工程で決定された電流値である条件で取得され、
前記第8画像データは、前記焦点位置が前記第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記画像取得条件決定工程で決定された電流値であり、前記第2アライメントコイルが前記第2電流値である条件で取得される。
【0036】
このような荷電粒子ビームの軸合わせ方法によれば、第1〜第8画像データから荷電粒子ビームの軸合わせのための第1アライメントコイルの励磁電流値および第2アライメントコイルの励磁電流値を求めることができる。このように荷電粒子ビームの軸合わせのための画像データの取得数が少なくて済むため、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる。したがって、装置の操作者の負担を軽減し、荷電粒子ビームの軸合わせに要する時間を短縮できる。
【0037】
さらに、このような荷電粒子ビームの軸合わせ方法によれば、第1アライメントコイルの励磁電流値および第2アライメントコイルの励磁電流値の算出精度を向上できる。
【0038】
(16)本発明に係る荷電粒子ビームの軸合わせ方法において、
前記画像取得条件決定工程では、前記第1〜第4画像変位ベクトルにおける前記組のうち、該組を構成する隣り合う2つのベクトルのなす角度が、前記第1方向と前記第2方向とがなす角度に最も近い前記組を選択してもよい。
【0039】
(17)本発明に係る荷電粒子ビームの軸合わせ方法において、
前記画像取得条件決定工程では、前記第1〜第4画像変位ベクトルにおける前記組のうち、該組を構成する隣り合う2つのベクトルの大きさの和に基づいて、前記組を選択してもよい。
【0040】
(18)本発明に係る荷電粒子ビームの軸合わせ方法において、
前記第2の演算工程では、
選択した前記組に基づいて、前記第2画像データまたは前記第4画像データの一方を選択し、かつ、前記第3画像データまたは前記第5画像データの一方を選択し、
前記第1画像データと前記第6画像データとの間の位置ずれ量を示す第5画像変位ベクトルと、
選択された前記第2画像データまたは前記第4画像データの一方と、前記第7画像データとの間の位置ずれ量を示す第6画像変位ベクトルと、
選択された前記第3画像データまたは前記第5画像データの一方と、前記第8画像データとの間の位置ずれ量を示す第7画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第7画像変位ベクトルから、前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出してもよい。
【0041】
(19)本発明に係る荷電粒子ビーム装置は、
荷電粒子ビームを第1方向に偏向させる第1アライメントコイル、および前記荷電粒子ビームを前記第1方向と交差する第2方向に偏向させる第2アライメントコイルによって前記荷電粒子ビームの軸を調整し、前記荷電粒子ビームを試料に照射して、試料から発生した信号を検出し画像データを取得する荷電粒子ビーム装置であって、
前記試料上における前記荷電粒子ビームの入射方向での焦点位置、前記第1アライメントコイルの励磁電流、および前記第2アライメントコイルの励磁電流の条件を変えて、第1〜第8画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データ取得手段が取得した前記第1〜第5画像データに基づいて、前記第7および第8画像データの取得条件を決定する画像取得条件決定手段と、
前記画像データ取得手段が取得した前記第1〜第8画像データから、前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する演算手段と、
を含み、
前記第1画像データは、前記焦点位置が第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が第2電流値である条件で取得され、
前記第2画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から第1変化電流値だけ増加させた電流値である条件で取得され、
前記第3画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第1変化電流値だけ増加させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得され、
前記第4画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から前記第1変化電流値だけ減少させた電流値である条件で取得され、
前記第5画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第1変化電流値だけ減少させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得され、
前記第6画像データは、前記焦点位置が第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルが前記第2電流値である条件で取得され、
前記第7画像データは、前記焦点位置が前記第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルが前記画像取得条件決定手段で決定された電流値である条件で取得され、
前記第8画像データは、前記焦点位置が前記第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記画像取得条件決定手段で決定された電流値であり、前記第2アライメントコイルが前記第2電流値である条件で取得され、
前記演算手段は、
前記第1画像データと前記第3画像データとの間の位置ずれ量を示す第1画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第2画像データとの間の位置ずれ量を示す第2画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第5画像データとの間の位置ずれ量を示す第3画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第4画像データとの間の位置ずれ量を示す第4画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記画像取得条件決定手段は、前記第1〜第4画像変位ベクトルの中で隣り合う2つのベクトルの組を所定の条件に基づき選択して、これにより前記第7画像データの前記第2アライメントコイルの励磁電流値および前記第8画像データの前記第1アライメントコイルの励磁電流値を決定する。
【0042】
このような荷電粒子ビーム装置によれば、第1〜第8画像データから荷電粒子ビームの軸合わせのための第1アライメントコイルの励磁電流値および第2アライメントコイルの励磁電流値を求めることができる。このように荷電粒子ビームの軸合わせのための画像データの取得数が少なくて済むため、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる。したがって、装置の操作者の負担を軽減し、荷電粒子ビームの軸合わせに要する時間を短縮できる。
【0043】
さらに、このような荷電粒子ビーム装置によれば、第1アライメントコイルの励磁電流値および第2アライメントコイルの励磁電流値の算出精度を向上できる。
【0044】
(20)本発明に係る荷電粒子ビーム装置において、
前記画像取得条件決定手段は、前記第1〜第4画像変位ベクトルにおける前記組のうち、該組を構成する隣り合う2つのベクトルのなす角度が、前記第1方向と前記第2方向とがなす角度に最も近い前記組を選択してもよい。
【0045】
(21)本発明に係る荷電粒子ビーム装置において、
前記画像取得条件決定手段は、前記第1〜第4画像変位ベクトルにおける前記組のうち、該組を構成する隣り合う2つのベクトルの大きさの和に基づいて、前記組を選択してもよい。
【0046】
(22)本発明に係る荷電粒子ビーム装置において、
前記演算手段は、
選択した前記組に基づいて、前記第2画像データまたは前記第4画像データの一方を選択し、かつ、前記第3画像データまたは前記第5画像データの一方を選択し、
前記第1画像データと前記第6画像データとの間の位置ずれ量を示す第5画像変位ベクトルと、
選択された前記第2画像データまたは前記第4画像データの一方と、前記第7画像データとの間の位置ずれ量を示す第6画像変位ベクトルと、
選択された前記第3画像データまたは前記第5画像データの一方と、前記第8画像データとの間の位置ずれ量を示す第7画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第7画像変位ベクトルから前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出してもよい。
【0047】
(23)本発明に係る荷電粒子ビームの軸合わせ方法において、
前記焦点位置のみを変化させた2つの画像データから算出された画像変位ベクトルが、所定の値よりも大きいか否かを判定するための第1判定工程をさらに含み、
前記第1判定工程で前記所定の値よりも大きいと判定された場合に、前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出してもよい。
【0048】
このような荷電粒子ビームの軸合わせ方法によれば、荷電粒子ビームの軸合わせ後に、荷電粒子ビームの軸合わせ前よりも、荷電粒子ビームの軸がずれることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の構成を説明するための図。
【図2】第1実施形態に係る荷電粒子ビームの軸合わせ工程のフローチャート。
【図3】フレーム1〜8の撮影条件を示す表。
【図4】画像変位ベクトルを説明するための図。
【図5】第1実施形態に係る第1〜第5画像変位ベクトルの関係を示す図。
【図6】画像変位ベクトルA,C,Lの距離とアライメントコイル励磁電流値との関係を示す図。
【図7】画像変位ベクトルA,B,Kの距離とアライメントコイル励磁電流値との関係を示す図。
【図8】第2実施形態に係る第1〜第3画像変位ベクトルを説明するための図。
【図9】第7実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の構成を説明するための図。
【図10】第7実施形態に係る荷電粒子ビームの軸合わせ工程のフローチャート。
【図11】第8実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の構成を説明するための図。
【図12】第1〜第5画像変位ベクトルの関係を示す図。
【図13】第8実施形態に係る荷電粒子ビームの軸合わせ工程のフローチャート。
【図14】第9実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の構成を説明するための図。
【図15】第9実施形態に係る荷電粒子ビームの軸合わせ工程のフローチャート。
【図16】第12実施形態に係る荷電粒子ビームの軸合わせ工程のフローチャート。
【図17】第13実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の構成を説明するための図。
【図18】第13実施形態に係る荷電粒子ビームの軸合わせ工程のフローチャート。
【図19】フレーム1〜5の撮影条件を示す表。
【図20】第1〜第4画像変位ベクトルの関係を示す図。
【図21】フレーム6〜8の撮影条件を示す表。
【図22】ベクトルU1とベクトルU2の組が選択されたときの画像変位ベクトルA,B,C,V,Uの関係を示す図。
【図23】ベクトルU2とベクトルU3の組が選択されたときの画像変位ベクトルA,B,C,V,Uの関係を示す図。
【図24】ベクトルU3とベクトルU4の組が選択されたときの画像変位ベクトルA,B,C,V,Uの関係を示す図。
【図25】ベクトルU4とベクトルU1の組が選択されたときの画像変位ベクトルA,B,C,V,Uの関係を示す図。
【図26】アライメントコイル電流値座標系において、アライメントコイルの励磁電流値を初期値から変更量だけ変化させた図。
【図27】画像変位ベクトル座標系において、ベクトルABおよびベクトルACを、原点Oから遠ざかる向きにとった場合を示す図。
【図28】画像変位ベクトル座標系において、ベクトルABおよびベクトルACを、原点Oに近づく向きにとった場合を示す図。
【図29】対物レンズが樽型の収差を有する場合の画像変位ベクトル座標系を示す図。
【図30】第13実施形態の第1変形例に係る荷電粒子ビームの軸合わせ工程のフローチャート。
【図31】従来の走査型電子顕微鏡の一例を示す図。
【図32】従来の荷電粒子ビームの軸合わせ方法について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0051】
1. 第1実施形態
1.1. 荷電粒子ビーム装置の構成
まず、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置100の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置100の構成を説明するための図である。ここでは、荷電粒子ビーム装置100が走査型電子顕微鏡(SEM)である場合について説明する。
【0052】
荷電粒子ビーム装置100は、図1に示すように、荷電粒子ビーム源4と、加速電圧用高圧電源5と、対物レンズ絞り8と、第1アライメントコイル10aと、第2アライメントコイル10bと、アライメントコイル駆動アンプ11と、開き角補正レンズ12と、対物レンズ14と、対物レンズ駆動アンプ15と、走査コイル16と、試料ステージ20と、電子検出器22と、観察画像表示装置24と、軸合わせ用撮影条件設定装置30と、メモリー32(フレームメモリー32a)と、画像変位ベクトル演算器34と、最適値演算器36と、を含んでいる。
【0053】
荷電粒子ビーム源4は、例えば、公知の電子銃であり、陰極から放出された電子を陽極で加速し荷電粒子ビーム(電子ビーム)Bを放出する。
【0054】
加速電圧用高圧電源5は、荷電粒子ビーム源4に対して、陰極から放出された電子を加速するための加速電圧を供給する。
【0055】
対物レンズ絞り8は、対物レンズ14に入射する荷電粒子ビームBのうち、光軸近傍の荷電粒子ビームBだけを通して、それ以外を遮蔽する。
【0056】
Xアライメントコイル(第1アライメントコイル)10aおよびYアライメントコイル(第2アライメントコイル)10bは、荷電粒子ビームBの軸調整を行うことができる。Xアライメントコイル10aは、X方向に対向する1組のコイルを有し、荷電粒子ビームBをX方向(第1方向)に偏向させることができる。Yアライメントコイル10bは、X方向と交差(直交)するY方向(第2方向)に対向する1組のコイルを有し、荷電粒子ビームBをY方向に偏向させることができる。すなわち、Xアライメントコイル10aおよびYアライメントコイル10bによって、荷電粒子ビームBの二次元的な偏向が可能となる。なお、Z方向は、例えば、対物レンズ14の光軸に沿う方向である。アライメントコイル10a,10bの励磁電流は、アライメントコイル駆動アンプ11から供給される。アライメントコイル10a,10bに流れる励磁電流量を制御することによって、荷電粒子ビーム鏡筒2内における荷電粒子ビームBの偏向を二次元的に制御することができる。
【0057】
なお、荷電粒子ビームBに対するXアライメントコイル10aの偏向方向とYアライメントコイル10bの偏向方向とは、荷電粒子ビームBを二次元的に偏向できれば、直交していなくてもよい。
【0058】
開き角補正レンズ12は、荷電粒子ビームBの開き角を補正することができる。
【0059】
対物レンズ14は、荷電粒子ビームBを試料Sの表面で集束させる。対物レンズ14は、対物レンズ駆動アンプ15と接続され、対物レンズ14の励磁電流は、対物レンズ駆動アンプ15から供給される。
【0060】
走査コイル16は、荷電粒子ビームBの試料S上での走査を行うための電磁コイルである。
【0061】
試料ステージ20は、試料Sを支持し、試料Sの水平移動、上下移動、回転、傾斜などの動作を行うことができる。
【0062】
荷電粒子ビーム源4、対物レンズ絞り8、第1アライメントコイル10a、第2アライメントコイル10b、開き角補正レンズ12、対物レンズ14、および走査コイル16は、荷電粒子ビーム鏡筒2に収容されている。
【0063】
電子検出器22は、集束された荷電粒子ビームBの走査に基づいて、試料Sの表面から放出される二次電子や反射電子を検出する。電子検出器22によって検出された二次電子や反射電子の強度信号は、荷電粒子ビームBの走査信号と同期された画像データとして、フレームメモリー32aに記憶される。なお、荷電粒子ビームBの走査時においては、当該走査信号に基づく励磁電流が走査コイル16に供給される。
【0064】
メモリー32は、画像データを記憶するためのフレームメモリー32aを有している。メモリー32は、さらに、画像データの撮影条件を記憶してもよい。
【0065】
画像表示装置24は、フレームメモリー32aに記憶された画像データに基づいて、画像(SEM像)を表示する。
【0066】
軸合わせ用撮影条件設定装置30は、対物レンズ14及び走査コイル16を通過した後の荷電粒子ビームBの焦点、およびアライメントコイル10a,10bの励磁電流の条件を変えて、画像データを取得することができる。軸合わせ用撮影条件設定装置30は、荷電粒子ビーム源4における加速電圧およびアライメントコイル10a,10bの励磁電流を制御して撮影条件を変えながら複数の画像データを取得し、メモリー32に画像データおよび撮影条件を記憶させることができる。軸合わせ用撮影条件設定装置30は、加速電圧用高圧電源5と接続されており、加速電圧用高圧電源5を介して加速電圧を制御する。これにより、対物レンズ14及び走査コイル16を通過した後の荷電粒子ビームBの焦点位置を制御することができる。この結果、試料S上における荷電粒子ビームBの試料Sへの入射方向での焦点位置が制御される。また、軸合わせ用撮影条件設定装置30は、アライメントコイル駆動アンプ11に接続されており、アライメントコイル駆動アンプ11を介して、アライメントコイル10a,10bの励磁電流を制御する。
【0067】
画像変位ベクトル演算器34および最適値演算器36(演算手段の一例)は、フレームメモリー32aに保存された画像データから、荷電粒子ビームBの軸を合わせるための第1アライメントコイル10aの励磁電流値および第2アライメントコイル10bの励磁電流値を算出する。この励磁電流値は、最適値演算器36からアライメントコイル駆動アンプ11に出力される。
【0068】
1.2. 荷電粒子ビーム装置の動作
次に、第1実施形態に係る荷電粒子ビーム装置100の動作について説明する。
【0069】
図2は、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置100の軸合わせ工程を示すフローチャートである。
【0070】
まず、軸合わせ用撮影条件設定装置30によって第1〜第8画像データを取得する(画像データ取得工程、S10)。軸合わせ用撮影条件設定装置30は、加速電圧、Xアライメントコイル10aの励磁電流、およびYアライメントコイル10bの励磁電流の条件を変えたフレーム1〜8を撮影して、第1〜第8画像データを取得する。軸合わせ用撮影条件設定装置30によって撮影されたフレーム1〜8は、第1〜第8画像データとして、フレームメモリー32aに記憶される。また、フレーム1〜8(第1〜第8画像データ)の撮影条件は、メモリー32に記憶される。
【0071】
図3は、フレームの撮影条件を示す表である。各フレームの撮影条件は、図3に示すように、(加速電圧,Xアライメントコイルの励磁電流値,Yアライメントコイルの励磁電流値)として、フレーム1が(HV+V1,X=ORG_X,Y=ORG_Y)、フレーム2が(HV+V2,X=ORG_X,Y=ORG_Y)、フレーム3が(HV+V1,X=ORG_X,Y=ORG_Y+AL1)、フレーム4が(HV+V2,X=ORG_X,Y=ORG_Y+AL1)、フレーム5が(HV+V1,X=ORG_X+AL1,Y=ORG_Y)、フレーム6が(HV+V2,X=ORG_X+AL1,Y=ORG_Y)、フレーム7が(HV+V1,X=ORG_X,Y=ORG_Y+AL2)、フレーム8が(HV+V1,X=ORG_X+AL2,Y=ORG_Y)である。
【0072】
ここで、HVは、軸合わせ開始時の加速電圧であり、V1,V2は、加速電圧の微小変更量である。すなわち、フレーム1〜8において、対物レンズ14及び走査コイル16を通過した後の荷電粒子ビームBの焦点の位置は、加速電圧がHV+V1のときの焦点位置(第1位置)、又は加速電圧がHV+V2のときの焦点位置(第2位置)の2つの位置のいずれかにある。ORG_X(第1電流値)は、軸合わせ開始時のXアライメントコイル10aの励磁電流値(初期値)であり、ORG_Y(第2電流値)は、軸合わせ開始時のYアライメントコイル10bの励磁電流値(初期値)である。AL1,AL2は、アライメントコイル10a,10bの電流値の変更量(変化電流量)である。変更量AL1と変更量AL2とは、互いに異なる値を有する。本実施形態では、例えば、加速電圧HV=10kVで、変更量V1=−50V、変更量V2=+50Vとする。さらに、例えば、励磁電流値ORG_X=10mA、励磁電流値ORG_Y=20mAで、AL1=−10mA、AL2=+10mAとする。これらの値は後述する工程で画像変位ベクトルが正常に求められれば特に限定されない。
【0073】
次に、第1〜第8画像データから荷電粒子ビームBの軸合わせのためのXアライメントコイル10aの励磁電流値、およびYアライメントコイル10bの励磁電流値を算出する演算工程(S11〜S13)を行う。以下に、演算工程について、説明する。
【0074】
まず、画像変位ベクトル演算器34によって第1〜第8画像データから第1〜第5画像変位ベクトルを算出する(S11)。
【0075】
図4(A)〜図4(E)は、画像変位ベクトルを説明するための図である。なお、図4(A)〜図4(E)では、フレーム1〜8のうち対応する2つのフレームを重ねて図示している。画像変位ベクトル演算器34は、図4(A)〜図4(E)に示すように、軸合わせ用撮影条件設定装置30で取得した8枚の画像データを組み合わせて第1〜第5画像変位ベクトルA,B,C,V,Uを算出する。
【0076】
具体的には、図4(A)に示すように、フレーム1(第1画像データ)とフレーム2(第2画像データ)との間の位置ずれ量から、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の初期値での加速電圧変化による像移動を示す第1画像変位ベクトルA(a,b)を算出する。
【0077】
図4(B)に示すように、フレーム3(第3画像データ)とフレーム4(第4画像データ)との間の位置ずれ量から、Yアライメントコイル10bの励磁電流値を変更量AL1だけ変化させた状態での加速電圧変化による像移動を示す第2画像変位ベクトルB(c,d)を算出する。
【0078】
図4(C)に示すように、フレーム5(第5画像データ)とフレーム6(第6画像データ)との間の位置ずれ量から、Xアライメントコイル10aの励磁電流値をAL1だけ変化させた状態での加速電圧変化による像移動を示す第3画像変位ベクトルC(e,f)を算出する。
【0079】
図4(D)に示すように、フレーム1(第1画像データ)とフレーム7(第7画像データ)との間の位置ずれ量から、Yアライメントコイル10bの偏向方向を示す第4画像変位ベクトルV(q,r)を算出する。
【0080】
図4(E)に示すように、フレーム1(第1画像データ)とフレーム8(第8画像データ)との間の位置ずれ量から、Xアライメントコイル10aの偏向方向を示す第5画像変位ベクトルU(m,n)を算出する。
【0081】
ここで、画像変位ベクトルとは、2つのフレーム間での像の位置ずれ量を示すベクトルである。例えば、図4(A)に示すように、フレーム1の像I1とフレーム2の像I2との間の位置ずれ量(方向、大きさ)から第1画像変位ベクトルAを算出することができる。図4(B)〜図4(E)も同様に、フレーム1〜8の像I1〜I8間の位置ずれ量から画像変位ベクトルB,C,V,Uを算出することができる。
【0082】
画像変位ベクトルA,B,C,V,Uの算出法は、例えば、二つの画像の相互相関演算によるブロックマッチングで行う。相互相関演算は、二つの画像の二次元フーリエ変換の複素共役の積の逆フーリエ変換で実行する。二次元の相互相関演算結果の最大値の座標が像の変位ベクトルとなる。
【0083】
図5は、第1〜第5画像変位ベクトルの関係を示す図である。横軸xは、画像変位ベクトル座標系におけるx成分を示し、縦軸yは、画像変位ベクトル座標系におけるy成分を示す。ここでは、(x、y)=(0,0)のときに、アライメントコイル10a,10bの励磁電流値が最適になるものとする。
【0084】
次に、最適値演算器36によって、第1〜第5画像変位ベクトルA,B,C,V,Uからアライメントコイル10a,10bの励磁電流が最適となる位置での画像変位ベクトルK,Lを算出する(S12)。
【0085】
最適値演算器36は、図5に示す、Xアライメントコイル10aの励磁電流の最適推定点での画像変位ベクトルL(s,t)、およびYアライメントコイル10bの励磁電流の最適推定点での画像変位ベクトルK(g,h)を算出する。
【0086】
ここで、Xアライメントコイル10aの励磁電流の最適推定点とは、Xアライメントコイル10aの励磁電流値が最適値X3(X方向の荷電粒子ビームの軸が合ったときのXアライメントコイルの励磁電流値)となる画像変位ベクトル座標上の点である。すなわち、Xアライメントコイル10aの励磁電流の最適推定点は、図5で示すように、画像変位ベクトル座標系において、第1画像変位ベクトルAの座標A点と第3画像変位ベクトルCの座標C点を通る直線ACと、画像変位ベクトルVで示す軸と、が交わる点Lである。また、Yアライメントコイル10bの励磁電流の最適推定点とは、Yアライメントコイル10bの励磁電流値が最適値Y3(Y方向の荷電粒子ビームの軸が合ったときのYアライメントコイルの励磁電流値)となる画像変位ベクトル座標上の点である。すなわち、Yアライメントコイル10bの励磁電流の最適推定点は、図5で示すように、画像変位ベクトル座標系において、第1画像変位ベクトルAの座標A点と第2画像変位ベクトルBの座標B点を通る直線ABと、画像変位ベクトルUで示す軸と、が交わる点Kである。
【0087】
画像変位ベクトルK(g,h)、画像変位ベクトルL(s,t)は、下記式1〜式4から算出できる。
【0088】
【数1】

【0089】
このようにして、最適値演算器36は、画像変位ベクトルA、B,C,V,Uから画像変位ベクトルKおよび画像変位ベクトルLを算出する。
【0090】
次に、最適値演算器36によって、画像変位ベクトルK,Lからアライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値X3,Y3を算出する(S13)。
【0091】
図6は、画像変位ベクトルA,C,Lの距離とアライメントコイルの励磁電流値との関係を示す図である。図6に示すように、第1画像変位ベクトルAでの励磁電流値ORG_X、第3画像変位ベクトルCでの励磁電流値ORG_X+AL1からXアライメントコイル10aの励磁電流の最適値X3を算出する。最適値演算器36は、例えば、メモリー32に記憶された励磁電流値ORG_X,ORG_X+AL1を用いて算出を行う。Xアライメントコイル10aの励磁電流の最適値X3を求める式は、下記式5、6のとおりである。なお、式5は、図5に示す第1画像変位ベクトルAの座標A点が、第3画像変位ベクトルCの座標C点と画像変位ベクトルLの座標L点との間にある場合の式であり、式6は、第1画像変位ベクトルAの座標A点が、第3画像変位ベクトルCの座標C点と画像変位ベクトルLの座標L点との間にない場合の式である。
【0092】
【数2】

【0093】
ただし、XAは、第1画像変位ベクトルAでの励磁電流値ORG_Xであり、XCは、第3画像変位ベクトルCでの励磁電流値ORG_X+AL1である。
【0094】
図7は、画像変位ベクトルA,B,Kの距離とアライメントコイルの励磁電流値との関係を示す図である。図7に示すように、第1画像変位ベクトルAでの励磁電流値ORG_Y、第2画像変位ベクトルBでの励磁電流値ORG_Y+AL1からYアライメントコイル10bの励磁電流の最適値Y3を算出する。Yアライメントコイル10bの励磁電流の最適値Y3を求める式は、下記式7、8のとおりである。なお、式7は、図5に示す第1画像変位ベクトルAの座標A点が、第2画像変位ベクトルBの座標B点と画像変位ベクトルKの座標K点との間にある場合の式であり、式8は、第1画像変位ベクトルAの座標A点が、第2画像変位ベクトルBの座標B点と画像変位ベクトルKの座標K点との間にない場合の式である。
【0095】
【数3】

【0096】
ただし、YAは、第1画像変位ベクトルAでの励磁電流値ORG_Yであり、YBは、第2画像変位ベクトルBでの励磁電流値ORG_Y+AL1である。
【0097】
以上の工程により、Xアライメントコイル10aの励磁電流の最適値X3およびYアライメントコイル10bの励磁電流の最適値Y3を算出することができる。
【0098】
次に、最適値演算器36は、算出したアライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値X3,Y3に基づいて制御信号を生成し、この制御信号をアライメントコイル駆動アンプ11に出力して、Xアライメントコイル10aの励磁電流が最適値X3となり、Yアライメントコイル10bの励磁電流が最適値Y3となるように制御する。
【0099】
以上の工程により、荷電粒子ビームBの軸合わせを行うことができる。
【0100】
本実施形態に係る荷電粒子ビームの軸合わせ方法によれば、上述のように、8枚の画像(フレーム1〜8)からアライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値X3,Y3を求めることができる。このように荷電粒子ビームの軸合わせのための画像データの取得数が少なくて済むため、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる。したがって、装置の操作者の負担を軽減し、荷電粒子ビームの軸合わせに要する時間を短縮することができる。
【0101】
本実施形態に係る荷電粒子ビームの軸合わせ方法によれば、加速電圧の変更による像の移動方向と、アライメントコイル10a,10bの軸方向(X方向、Y方向)とが、異なっていても、アライメントコイル10a,10bの最適値X3,Y3を算出することができる。
【0102】
本実施形態に係る荷電粒子ビームの軸合わせ方法では、アライメントコイル10a,10bの励磁電流値の変更量AL1と変更量AL2とが、互いに異なる値を有することができる。変更量AL1は、画像変位ベクトルB,Cの演算精度を高めるためにある程度大きい値であることが望ましい。しかしながら、例えば、変更量AL1と変更量AL2とが同じ値である場合(後述する第3実施形態参照)、演算精度に与える影響の少ない変更量AL2の値も大きくなり、撮影条件(観察視野や観察倍率)によっては、画像の変位量がブロックマッチングの範囲を超えて画像変位ベクトルが算出できなくなる場合がある。そのため、変更量AL1と変更量AL2とが同じ値である場合、画像データを取得するための条件(撮影条件)が限定される。本実施形態では、変更量AL1と変更量AL2とが異なる値を有することにより、例えば、変更量AL1を演算精度を得るために十分な程度の大きな値とし、変更量AL2を画像の変位量がブロックマッチングの範囲内になるような小さな値(例えば、変更量AL1よりも小さい値)とすることができる。したがって、演算精度を高めつつ、撮影条件を緩和することができる。
【0103】
本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置100では、第1〜第8画像データを取得する軸合わせ用撮影条件設定装置30と、第1〜第8画像データからアライメントコイル10a,10bの最適値X3,Y3を算出する画像変位ベクトル演算器34および最適値演算器36と、を有する。これにより、荷電粒子ビームBの軸合わせを自動化することができる。
【0104】
2. 第2実施形態
次に、第2実施形態に係る荷電粒子ビーム装置における荷電粒子ビームの軸合わせ方法について説明する。なお、第2実施形態に係る荷電粒子ビーム装置は、上述した図1に示す荷電粒子ビーム装置100の構成と同様であり、その説明を省略する。また、後述する第3〜6実施形態に係る荷電粒子ビーム装置も、同様に、上述した図1に示す荷電粒子ビーム装置100の構成と同様であり、その説明を省略する。
【0105】
図8は、本実施形態に係る第1〜第3画像変位ベクトルを説明するための図である。
【0106】
第1実施形態では、フレーム1とフレーム7から第4画像変位ベクトルV(q,r)を算出し、フレーム1とフレーム8から第5画像変位ベクトルU(m,n)を算出した。これに対して、本実施形態では、図8に示すように、第4画像変位ベクトルV(q,r)を、直線ABと平行な直線L1に置き換え、第5画像変位ベクトルU(m,n)を直線ACに平行な直線L2に置き換えた。これにより、第1実施形態と同様に、アライメントコイル10a,10bの最適値X3,Y3を算出できる。この場合、第4画像変位ベクトルVおよび第5画像変位ベクトルUの算出が不要になるため、フレーム7とフレーム8の画像取得が不要になる。すなわち、第2実施形態では、6枚の画像(フレーム1〜6)から3つの画像変位ベクトルA,B,Cを算出し、アライメントコイル10a,10bの最適値X3,Y3を算出できる。
【0107】
画像変位ベクトルK(g,h)、画像変位ベクトルL(s,t)は、下記式1〜式4から算出する。
【0108】
【数4】

【0109】
この式9〜式12から画像変位ベクトルK(g,h)、画像変位ベクトルL(s,t)を求め、第1実施形態と同様に、上述した式5〜式8を用いて、アライメントコイル10a,10bの最適値X3,Y3を算出する。
【0110】
第2実施形態によれば、上述のように、6枚の画像(フレーム1〜6)からアライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値X3,Y3を求めることができる。このように荷電粒子ビームの軸合わせのための画像データの取得数が少なくて済むため、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる。したがって、荷電粒子ビームの軸合わせに要する時間の短縮、装置の操作者の負担を軽減することができる。
【0111】
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係る荷電粒子ビーム装置における荷電粒子ビームの軸合わせ方法について説明する。
【0112】
本実施形態では、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の変更量AL1,AL2を、同じ値にすることにより、フレーム3とフレーム7とが同じ画像となり、フレーム5とフレーム8とが同じ画像となるため、6枚の画像(フレーム1〜フレーム6)からアライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値X3,Y3を算出することができる。
【0113】
具体的には、画像変位ベクトル演算器34は、フレーム1とフレーム3との間の位置ずれ量から第4画像変位ベクトルVを算出し、フレーム1とフレーム5との間の位置ずれ量から第5画像変位ベクトルUを算出する。以降の計算は、第1実施形態と同様であり、その説明を省略する。
【0114】
本実施形態によれば、上述のように、6枚の画像(フレーム1〜6)からアライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値X3,Y3を求めることができる。このように荷電粒子ビームの軸合わせのための画像データの取得数が少なくて済むため、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる。したがって、荷電粒子ビームの軸合わせに要する時間の短縮、装置の操作者の負担を軽減することができる。
【0115】
4. 第4実施形態
次に、第4実施形態に係る荷電粒子ビーム装置における荷電粒子ビームの軸合わせ方法について説明する。
【0116】
第1実施形態では、軸合わせ用撮影条件設定装置30が第1〜第8画像データをすべて取得してから、画像変位ベクトル演算器34が、第1〜第5画像変位ベクトルA,B,C,U,Vを算出した。これに対して、本実施形態では、軸合わせ用撮影条件設定装置30によって画像変位ベクトルの算出に必要な画像の組み合わせが取得できた時点で、画像変位ベクトル演算器34がその組み合わせの画像変位ベクトルを算出する。これにより、演算処理を効率よく行うことができる。
【0117】
具体的には、例えば、軸合わせ用撮影条件設定装置30によって、第1画像データおよび第2画像データが取得された時点で、画像変位ベクトル演算器34は、第1画像変位ベクトルAを算出する。次に、軸合わせ用撮影条件設定装置30によって、第3画像データおよび第4画像データが取得された時点で、画像変位ベクトル演算器34は、第2画像変位ベクトルBを算出する。次に、軸合わせ用撮影条件設定装置30によって、第5画像データおよび第6画像データが取得された時点で、画像変位ベクトル演算器34は、第3画像変位ベクトルCを算出する。
【0118】
5. 第5実施形態
次に、第5実施形態に係る荷電粒子ビーム装置における荷電粒子ビームの軸合わせ方法について説明する。
【0119】
第1実施形態では、図5に示すように、画像変位ベクトルKを、2つの画像変位ベクトルA,Bから算出し、画像変位ベクトルLを、2つの画像変位ベクトルA,Cから算出した。これに対して、本実施形態では、画像変位ベクトルK,Lを、3つ以上の画像変位ベクトルから算出することができる。これにより、画像変位ベクトルK,Lをより精度よく算出することができるため、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値X3,Y3をより精度よく求めることができる。
【0120】
本実施形態では、最適値演算器36は、例えば、第1実施形態の直線ACおよび直線ABに相当する直線を、3つ以上の画像変位ベクトルから最小二乗近似などで決定する。また、第1実施形態の直線ACおよび直線ABを、3つ以上の画像変位ベクトルから算出された2次以上の曲線に置き換えてもよい。
【0121】
6. 第6実施形態
次に、第6実施形態に係る荷電粒子ビーム装置における荷電粒子ビームの軸合わせ方法について説明する。
【0122】
第1実施形態に係る荷電粒子ビーム装置100では、軸合わせ用撮影条件設定装置30が、加速電圧の初期値HVを変更量V1,V2だけ変更することにより、荷電粒子ビームBの焦点位置を変えて、フレーム1〜8を撮影し、第1〜第8画像データを取得した。これに対して、本実施形態では、軸合わせ用撮影条件設定装置30が、対物レンズ14の励磁電流を変更することにより、荷電粒子ビームBの焦点位置を変えて、フレーム1〜8を撮影し、第1〜第8画像を取得することができる。この場合、軸合わせ用撮影条件設定装置30は、図示はしないが、対物レンズ駆動アンプ15と接続され、対物レンズ駆動アンプ15を介して対物レンズ14の励磁電流を制御することにより、荷電粒子ビームBの焦点位置を制御してもよい。
【0123】
7. 第7実施形態
次に、第7実施形態に係る荷電粒子ビーム装置について説明する。図9は、第7実施形態に係る荷電粒子ビーム装置200の構成を説明するための図である。以下、第7実施形態に係る荷電粒子ビーム装置200において、第1実施形態に係る荷電粒子ビーム装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0124】
荷電粒子ビーム装置200は、図9に示すように、荷電粒子ビーム装置100の構成部材に加えて、さらに、画像変位ベクトル長比較器210を、含む。
【0125】
画像変位ベクトル長比較器210は、加速電圧(焦点位置)を変化させた2つの画像データから算出された画像変位ベクトルが、所定の値よりも大きいか否かを判定する。以下、加速電圧(焦点位置)を変化させた2つの画像データから算出された画像変位ベクトルとして、第1画像変位ベクトルAを用いた場合について説明する。
【0126】
画像変位ベクトル長比較器210は、第1画像変位ベクトルAの大きさが、閾値(所定の値)よりも大きいか否かを判定する。第1画像変位ベクトルAの情報は、画像変位ベクトル演算器34から、画像変位ベクトル長比較器210に入力される。画像変位ベクトルAの大きさ|A|は、画像変位ベクトルAの要素を(a,b)とすると下記式で算出できる。
【0127】
【数5】

【0128】
閾値は、例えば、画像変位ベクトルAの大きさ|A|が、この値よりも大きい場合に、荷電粒子ビームBの軸がずれているといえる値に設定される。すなわち、荷電粒子ビームBの軸をより正確に合わせる場合は、閾値は小さく設定される。閾値は、例えば、装置の操作者によって任意に設定されてもよい。
【0129】
画像変位ベクトル長比較器210は、第1画像変位ベクトルAの大きさ|A|が閾値よりも大きいと判定した場合(すなわち、荷電粒子ビームBの軸がずれている場合)、最適値演算器36に判定情報を出力する。
【0130】
最適値演算器36は、この判定情報に基づいて、荷電粒子ビームBの軸合わせのための第1アライメントコイルの励磁電流値および第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する。
【0131】
また、画像変位ベクトル長比較器210は、画像変位ベクトルAの大きさ|A|が閾値以下と判定した場合、軸合わせ用撮影条件設定装置30に判定情報を出力する。
【0132】
軸合わせ用撮影条件設定装置30は、この判定情報に基づいて、軸合わせ開始前(画像変位ベクトルAを算出するための画像データ(第1画像データおよび第2画像データ)を取得したとき)のアライメントコイル10a,10bの励磁電流値(初期値)の情報を、アライメントコイル駆動アンプ11に出力し、アライメントコイル10a,10bの励磁電流が軸合わせ開始前の電流値となるように制御する。
【0133】
次に、荷電粒子ビーム装置200の動作について説明する。
【0134】
図10は、荷電粒子ビーム装置200による軸合わせ工程の一例を示すフローチャートである。荷電粒子ビーム装置200による軸合わせ工程は、荷電粒子ビーム装置100による軸合わせ工程と比べて、第1画像変位ベクトルAの大きさが所定の値よりも大きいか否かを判定する工程(S210,S211)を有する点で異なる。したがって、以下では、この異なる工程(S210,S211)について説明する。
【0135】
まず、画像変位ベクトル演算器34が、算出した画像変位ベクトルAの情報を、画像変位ベクトル長比較器210に出力する。画像変位ベクトル長比較器210は、この画像変位ベクトルAの情報に基づいて、画像変位ベクトルAの大きさ|A|を算出する。
【0136】
次に、画像変位ベクトル長比較器210が、画像変位ベクトルAの大きさ|A|を、閾値(所定の値)と比較する。
【0137】
画像変位ベクトル長比較器210が、画像ベクトルAの大きさ|A|が閾値よりも大きいと判定した場合( )S211でYESの場合)、自動軸合わせ開始前のアライメントコイル10a,10bの励磁電流は最適値ではなかったとして、最適値演算器36が第1〜第5画像変位ベクトルA,B,C,V,Uからアライメントコイル10a、10bの励磁電流の最適値を算出設定し、軸合わせを実行する(S12,S13)。
【0138】
画像変位ベクトル長比較器210が、画像変位ベクトルAの大きさ|A|が閾値以下と判定した場合(S211でNOの場合)、自動軸合わせ開始前のアライメントコイル10a,10bの励磁電流がすでに最適値であるとして、軸合わせ用撮影条件設定装置30が、軸合わせ開始前(画像変位ベクトルAを算出するための画像データを取得したとき)のアライメントコイル10a,10bの励磁電流値(初期値)に再設定し(S14)、処理を終了する。
【0139】
この判定は、荷電粒子ビームBの軸がずれている状態では、加速電圧を微小変化させた(ウォブラ動作)像が移動しゆれて見え、荷電粒子ビームBの軸がすでに合っている状態ではウォブラ像は移動しないで止まって見えることに相当する。
【0140】
本実施形態によれば、荷電粒子ビームBの軸が合っている状態と判定されたときには、アライメントコイル10a,10bの励磁電流値を変更しないため、例えば、荷電粒子ビーム装置の軸合わせ動作後に、荷電粒子ビーム装置の軸合わせ動作前よりも、荷電粒子ビームBの軸がずれることを防ぐことができる。したがって、装置の信頼性を高めることができる。
【0141】
8. 第8実施形態
次に、第8実施形態に係る荷電粒子ビーム装置について説明する。図11は、第8実施形態に係る荷電粒子ビーム装置300の構成を説明するための図である。以下、第8実施形態に係る荷電粒子ビーム装置300において、第1実施形態に係る荷電粒子ビーム装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0142】
荷電粒子ビーム装置300は、図11に示すように、荷電粒子ビーム装置100の構成部材に加えて、さらに、ベクトル角度判定器310を、含む。
【0143】
図12は、第1〜第5画像変位ベクトルA,B,C,D,V,Uの関係を示す図である。
【0144】
ベクトル角度判定器310は、第2画像変位ベクトルBと第1画像変位ベクトルAとの差のベクトルABと、第3画像変位ベクトルCと第1画像変位ベクトルAとの差のベクトルACとがなす角度αが、所定の角度範囲に含まれるか否かを判定する。これにより、第1〜第3画像変位ベクトルA,B,Cを、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値の算出に用いるか否かを判定する。第1〜第3画像変位ベクトルA、B,Cの情報は、画像変位ベクトル演算器34から、ベクトル角度判定器310に入力される。
【0145】
角度αは、例えば、下記の式から求めることができる。
【0146】
【数6】

【0147】
ここで、荷電粒子ビーム装置300では、例えば、Xアライメントコイル10aが荷電粒子ビームBを偏向させる方向とYアライメントコイル10bが荷電粒子ビームBを偏向させる方向が直交する関係にある。この場合、ベクトルABと、ベクトルACは、理想的には、直交する(角度α=90°)。そのため、角度αが、90°付近の値であれば、第1〜第3画像変位ベクトルA、B,Cは、正しく算出されているといえる。したがって、角度αから、第1〜第3画像変位ベクトルベクトルA,B,Cが正しく算出されているか否かを判定できる。
【0148】
所定の角度範囲は、例えば、角度αの理想的な値(ここでは90°)に許容できる誤差を含んだ範囲に設定される。したがって、荷電粒子ビームBの軸をより正確に合わせる場合には、所定の角度範囲は狭い範囲に設定される。この所定の角度範囲は、例えば、装置の操作者によって任意に設定されてもよい。
【0149】
なお、ここでは、Xアライメントコイル10aの偏向方向とYアライメントコイル10bの偏向方向が直交する関係にある場合について説明したが、例えば、Xアライメントコイル10aが荷電粒子ビームBを偏向させる方向とYアライメントコイル10bが荷電粒子ビームBを偏向させる方向が90°以外の角度をなす場合は、当該角度が、角度αの理想的な値となる。したがって、この場合には、所定の角度範囲は、当該角度に応じて、設定される。
【0150】
ベクトル角度判定器310は、角度αが所定の角度範囲に含まれていないと判定した場合、軸合わせ用撮影条件設定装置30に判定情報を出力する。
【0151】
軸合わせ用撮影条件設定装置30は、この判定情報に基づいて、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、第1〜第8画像データを取得する。軸合わせ用撮影条件設定装置30は、取得する画像データの倍率を変える場合、例えば、対物レンズ駆動アンプ15を制御して倍率を変更する。また、軸合わせ用撮影条件設定装置30は、取得する画像データの視野を変える場合、例えば、試料ステージ20を制御して視野を変更する。
【0152】
ベクトル角度判定器310は、角度αが所定の角度範囲に含まれていると判定した場合、最適値演算器36に判定情報を出力する。
【0153】
最適値演算器36は、この判定情報を受けて、第1〜第5画像変位ベクトルA,B,C,V,Uから、荷電粒子ビームBの軸合わせのためのXアライメントコイル10aの励磁電流値および第2アライメントコイル10bの励磁電流値を算出する。
【0154】
次に、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置300の動作について説明する。
【0155】
図13は、荷電粒子ビーム装置300の軸合わせ工程の一例を示すフローチャートである。荷電粒子ビーム装置300による軸合わせ工程は、荷電粒子ビーム装置100による軸合わせ工程と比べて、角度αが所定の角度範囲に含まれるか否かを判定する工程(S310,S311)と、取得する画像の倍率および視野の少なくとも一方を変更する工程(S312)を有する点で異なる。したがって、以下では、この異なる工程(S310〜S312)について説明する。
【0156】
角度αが所定の角度範囲に含まれるか否かを判定する工程(S310,S311)では、まず、画像変位ベクトル演算器34が、算出した画像変位ベクトルA、B,Cの情報を、ベクトル角度判定器310に出力する。ベクトル角度判定器310は、この画像変位ベクトルA、B,Cの情報に基づいて、第2画像変位ベクトルBと第1画像変位ベクトルAとの差のベクトルABと、第3画像変位ベクトルCと第1画像変位ベクトルAとの差のベクトルACとがなす角度αを算出する。
【0157】
次に、ベクトル角度判定器310が、算出した角度αが所定の角度範囲に含まれているか否かを判定する。
【0158】
ベクトル角度判定器310が、角度αが所定の角度範囲に含まれていると判断した場合(S311でYESの場合)、画像変位ベクトルA,B,Cが正しく算出されているとして、最適値演算器36が第1〜第5画像変位ベクトルA,B,C,V,Uからアライメントコイル10a、10bの励磁電流の最適値を算出設定し、軸合わせを実行する(S12,S13)。
【0159】
ベクトル角度判定器310が、角度αが所定の角度範囲に含まれていないと判断した場合(S311でNOの場合)、画像変位ベクトルA,B,Cが正しく算出されていないとして、軸合わせ用撮影条件設定装置30が、対物レンズ駆動アンプ15や試料ステージ20を制御することによって、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、第1〜第8画像データを取得する処理を行う(S312)。そして、荷電粒子ビーム装置300は、倍率および視野の少なくとも一方を変えて取得した第1〜第8画像データを用いて、再度、第1〜第5画像変位ベクトルA,B,C,V,Uを求めて、アライメントコイル10a、10bの励磁電流の最適値を算出する処理を行う(S11,S310,S311,S12,S13)。
【0160】
本実施形態では、ベクトル角度判定器310が、角度αが所定の角度範囲に含まれるか否かを判定する。これにより、算出された第1〜第3画像変位ベクトルA,B,Cを、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値の算出に用いるか否かを判定することができる。そのため、第1〜第3画像変位ベクトルA,B,Cが正しく算出されていない場合には、この第1〜第3画像変位ベクトルA,B,Cをアライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値の算出に用いないことができる。したがって、例えば、荷電粒子ビーム装置の軸合わせ動作後に、荷電粒子ビーム装置の軸合わせ動作前よりも、荷電粒子ビームBの軸がずれることを防ぐことができる。したがって、装置の信頼性を高めることができる。
【0161】
本実施形態によれば、角度αが所定の角度範囲に含まれていない場合、すなわち、第1〜第3画像変位ベクトルA,B,Cを算出に用いないと判定した場合には、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、第1〜第8画像データの取得を行うことができる。画像変位ベクトルが正しく算出されない主な原因として、画像変位ベクトルを算出する際に用いる画像(画像データ)の絵柄が、適当でない場合(目印となる異物等が含まれていない場合など)が挙げられる。この場合、相互相関演算によるブロックマッチングがうまく実行できず、画像変位ベクトルが正しく算出できない。すなわち、絵柄が適切でない画像(画像データ)では、計算を何度行っても、画像変位ベクトルを正しく算出できない可能性が高い。本実施形態によれば、画像変位ベクトルA,B,Cが正しく算出されていない場合には、視野および倍率の少なくとも一方を変えて、すなわち、絵柄を変えて、再度、第1〜第8画像データの取得を行うことができるため、このような問題が生じない。
【0162】
9. 第9実施形態
次に、第9実施形態に係る荷電粒子ビーム装置について説明する。図14は、第9実施形態に係る荷電粒子ビーム装置400の構成を説明するための図である。以下、第9実施形態に係る荷電粒子ビーム装置400において、第1実施形態に係る荷電粒子ビーム装置100、および第8実施形態に係る荷電粒子ビーム装置300の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0163】
荷電粒子ビーム装置400は、図14に示すように、荷電粒子ビーム装置100の構成部材に加えて、さらに、ベクトル比判定器410を、含む。
【0164】
ベクトル比判定器410は、図12に示す、第2画像変位ベクトルBと第1画像変位ベクトルAとの差のベクトルABの大きさ|AB|と、第3画像変位ベクトルCと第1画像変位ベクトルAとの差のベクトルACの大きさ|AC|との比R1が、所定の範囲に含まれているか否かを判定する。これにより、第1〜第3画像変位ベクトルA,B,Cを、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値の算出に用いるか否かを判定する。第1〜第3画像変位ベクトルA、B,Cの情報は、画像変位ベクトル演算器34から、ベクトル比判定器410に入力される。
【0165】
比R1は、例えば、下記の式から求めることができる。
【0166】
【数7】

【0167】
ここで、荷電粒子ビーム装置400は、例えば、荷電粒子ビーム装置100と同様に、第2画像変位ベクトルBを、フレーム3(第3画像データ)とフレーム4(第4画像データ)との間の位置ずれ量から求める(図4(B)参照)。このとき、Yアライメントコイル10bの励磁電流値は、変更量AL1だけ変化させた状態である。また、荷電粒子ビーム装置400は、例えば、荷電粒子ビーム装置100と同様に、第3画像変位ベクトルCを、フレーム5(第5画像データ)とフレーム6(第6画像データ)との間の位置ずれ量から求める(図4(C)参照)。このとき、Xアライメントコイル10aの励磁電流値は、変更量AL1だけ変化させた状態である。このような場合、ベクトルABの大きさ|AB|と、ベクトルACの大きさ|AC|は、理想的には、等しくなる(R1=1)。そのため、比R1が、1付近の値であれば、第1〜第3画像変位ベクトルA、B,Cは、正しく算出されているといえる。したがって、比R1から、第1〜第3画像変位ベクトルA,B,Cが正しく算出されているか否かを判定できる。
【0168】
所定の範囲は、例えば、比R1の理想的な値(ここでは1)に許容できる誤差を含んだ範囲に設定される。したがって、荷電粒子ビームBの軸をより正確に合わせる場合には、所定の範囲は狭い範囲に設定される。この所定の範囲は、例えば、装置の操作者によって任意に設定されてもよい。
【0169】
なお、ここでは、第2画像変位ベクトルBを求める際の変更量と、第3画像変位ベクトルCを求める際の変更量とが、同じ量AL1である場合について説明したが、変更量が異なる場合には、比R1の理想的な値は、その変更量の比と等しくなる。したがって、この場合には、所定の範囲は、この変更量の比に応じて、設定される。
【0170】
ベクトル比判定器410は、比R1が所定の範囲に含まれていないと判定した場合、軸合わせ用撮影条件設定装置30に判定情報を出力する。軸合わせ用撮影条件設定装置30は、この判定情報に基づいて、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、第1〜第8画像データを取得する。
【0171】
ベクトル比判定器410は、比R1が所定の範囲に含まれていると判定した場合、最適値演算器36に判定情報を出力する。最適値演算器36は、この判定情報に基づいて、第1〜第5画像変位ベクトルA,B,C,V,Uから、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値を算出する。
【0172】
次に、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置400の動作について説明する。
【0173】
図15は、荷電粒子ビーム装置400の軸合わせ工程の一例を示すフローチャートである。荷電粒子ビーム装置400による軸合わせ工程は、荷電粒子ビーム装置100による軸合わせ工程と比べて、比R1が所定の範囲に含まれるか否かを判定する工程(S410,S411)と、取得する画像の倍率および視野の少なくとも一方を変更する工程(S312)を有する点で異なる。したがって、以下では、この異なる工程(S410,S411,S312)について説明する。
【0174】
比R1が所定の角囲に含まれるか否かを判定する工程(S411,S412)では、まず、画像変位ベクトル演算器34が、算出した画像変位ベクトルA、B,Cの情報を、ベクトル比判定器410に出力する。ベクトル比判定器410は、この画像変位ベクトルA、B,Cの情報に基づいて、第2画像変位ベクトルBと第1画像変位ベクトルAとの差の大きさ|AB|と、第3画像変位ベクトルCと第1画像変位ベクトルAとの差の大きさ|AC|との比R1を算出する。
【0175】
次に、ベクトル比判定器410が、算出した比R1が所定の角度範囲に含まれているか否かを判定する。
【0176】
ベクトル比判定器410が、比R1が所定の角度範囲に含まれていると判定した場合(S411でYESの場合)、画像変位ベクトルA,B,Cが正しく算出されているとして、最適値演算器36が第1〜第5画像変位ベクトルA,B,C,V,Uからアライメントコイル10a、10bの励磁電流の最適値を算出設定し、軸合わせを実行する(S12,S13)。
【0177】
ベクトル比判定器410が、比R1が所定の範囲に含まれていないと判定した場合(S411でNOの場合)、画像変位ベクトルA,B,Cが正しく算出されていないとして、軸合わせ用撮影条件設定装置30が、対物レンズ駆動アンプ15や試料ステージ20を制御することによって、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、第1〜第8画像データを取得する処理を行う(S312)。そして、荷電粒子ビーム装置400は、倍率および視野の少なくとも一方を変えて取得した第1〜第8画像データを用いて、再度、第1〜第5画像変位ベクトルA,B,C,V,Uを求めて、アライメントコイル10a、10bの励磁電流の最適値を算出する処理を行う(S11,S410,S411,S12,S13)。
【0178】
本実施形態では、ベクトル比判定器410が、比R1が所定の範囲に含まれるか否かを判定する。これにより、算出された第1〜第3画像変位ベクトルA,B,Cを、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値の算出に用いるか否かを判定することができる。そのため、第1〜第3画像変位ベクトルA,B,Cが正しく算出されていない場合には、この第1〜第3画像変位ベクトルA,B,Cをアライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値の算出に用いないことができる。したがって、例えば、荷電粒子ビーム装置の軸合わせ動作後に、荷電粒子ビーム装置の軸合わせ動作前よりも、荷電粒子ビームBの軸がずれることを防ぐことができる。したがって、装置の信頼性を高めることができる。
【0179】
本実施形態によれば、比R1が所定の角度範囲に含まれていない場合には、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、第1〜第8画像データの取得を行うことができる。したがって、上述した第8実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0180】
10. 第10実施形態
次に、第10実施形態に係る荷電粒子ビーム装置について説明する。なお、第10実施形態に係る荷電粒子ビーム装置は、上述した図11に示す荷電粒子ビーム装置300の構成と同様である。
【0181】
本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置300は、図11に示すように、荷電粒子ビーム装置100の構成部材に加えて、さらに、ベクトル角度判定器310を、含む。
【0182】
ベクトル角度判定器310は、図12に示す、第4画像変位ベクトルVと第5画像変位ベクトルUとがなす角度βが、所定の角度範囲に含まれるか否かを判定する。これにより、第4および第5画像変位ベクトルV,Uを、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値の算出に用いるか否かを判定する。第4および第5画像変位ベクトルV,Uの情報は、画像変位ベクトル演算器34から、ベクトル角度判定器310に入力される。
【0183】
角度βは、例えば、下記の式から求めることができる。
【0184】
【数8】

【0185】
ここで、荷電粒子ビーム装置300では、例えば、Xアライメントコイル10aが荷電粒子ビームBを偏向させる方向とYアライメントコイル10bが荷電粒子ビームBを偏向させる方向が直交する関係にある。この場合、第4画像変位ベクトルVと、第5画像変位ベクトルUは、理想的には、直交する(角度β=90°)。そのため、角度βが、90°付近の値であれば、第4および第5画像変位ベクトルV,Uは、正しく算出されているといえる。したがって、角度βから、第4および第5画像変位ベクトルV,Uが正しく算出されているか否かを判定できる。
【0186】
所定の角度範囲は、例えば、角度βの理想的な値(ここでは90°)に許容できる誤差を含んだ範囲に設定される。したがって、荷電粒子ビームBの軸をより正確に合わせる場合には、所定の角度範囲は狭い範囲に設定される。この所定の角度範囲は、例えば、装置の操作者によって任意に設定されてもよい。
【0187】
なお、ここでは、Xアライメントコイル10aの偏向方向とYアライメントコイル10bの偏向方向が直交する関係にある場合について説明したが、例えば、Xアライメントコイル10aが荷電粒子ビームBを偏向させる方向とYアライメントコイル10bが荷電粒子ビームBを偏向させる方向が90°以外の角度をなす場合は、当該角度が、角度βの理想的な値となる。したがって、この場合には、所定の角度範囲は、当該角度に応じて、設定される。
【0188】
ベクトル角度判定器310は、角度βが所定の角度範囲に含まれていないと判定した場合、軸合わせ用撮影条件設定装置30に判定情報を出力する。
【0189】
軸合わせ用撮影条件設定装置30は、この判定情報に基づいて、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、第1〜第8画像データを取得する。
【0190】
ベクトル角度判定器310は、角度βが所定の角度範囲に含まれていると判定した場合、最適値演算器36に判定情報を出力する。
【0191】
最適値演算器36は、この判定情報に基づいて、第1〜第5画像変位ベクトルA,B,C,V,Uから、荷電粒子ビームBの軸合わせのためのXアライメントコイル10aの励磁電流値および第2アライメントコイル10bの励磁電流値を算出する。
【0192】
本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の動作は、上述した第8実施形態では判定の基準が角度αであるのに対して、本実施形態では判定の基準が角度βである点を除いて、第8実施形態と同様であり、その説明を省略する。
【0193】
本実施形態では、ベクトル角度判定器310が、角度βが所定の角度範囲に含まれるか否かを判定する。これにより、算出された第4および第5画像変位ベクトルV,Uを、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値の算出に用いるか否かを判定することができる。そのため、第4および第5画像変位ベクトルV,Uが正しく算出されていない場合には、この第4および第5画像変位ベクトルV,Uをアライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値の算出に用いないことができる。したがって、例えば、荷電粒子ビーム装置の軸合わせ動作後に、荷電粒子ビーム装置の軸合わせ動作前よりも、荷電粒子ビームBの軸がずれることを防ぐことができる。したがって、装置の信頼性を高めることができる。
【0194】
本実施形態によれば、角度βが所定の角度範囲に含まれていない場合には、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、第1〜第8画像データの取得を行うことができる。したがって、上述した第8実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0195】
11. 第11実施形態
次に、第11実施形態に係る荷電粒子ビーム装置について説明する。なお、第11実施形態に係る荷電粒子ビーム装置は、上述した図14に示す荷電粒子ビーム装置400の構成と同様である。
【0196】
本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置400は、図14に示すように、荷電粒子ビーム装置100の構成部材に加えて、さらに、ベクトル比判定器410を、含む。
【0197】
ベクトル比判定器410は、図12に示す、第4画像変位ベクトルVの大きさ|V|と、第5画像変位ベクトルUの大きさ|U|との比R2が、所定の範囲に含まれているか否かを判定する。これにより、第4および第5画像変位ベクトルV,Uを、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値の算出に用いるか否かを判定する。第4および第5画像変位ベクトルV,Uの情報は、画像変位ベクトル演算器34から、ベクトル比判定器410に入力される。
【0198】
比R2は、例えば、下記の式から求めることができる。
【0199】
【数9】

【0200】
ここで、荷電粒子ビーム装置400は、例えば、荷電粒子ビーム装置100と同様に、第4画像変位ベクトルVを、フレーム1(第1画像データ)とフレーム7(第7画像データ)との間の位置ずれ量から求める(図4(D)参照)。このとき、Yアライメントコイル10bの励磁電流値は、変更量AL2だけ変化させた状態である。また、荷電粒子ビーム装置400は、荷電粒子ビーム装置100と同様に、第5画像変位ベクトルUを、フレーム1(第1画像データ)とフレーム8(第8画像データ)との間の位置ずれ量から求める(図4(E)参照)。このとき、Xアライメントコイル10aの励磁電流値は、変更量AL2だけ変化させた状態である。このような場合、第4画像変位ベクトルVの大きさ|V|と、第5画像変位ベクトルUの大きさ|U|は、理想的には、等しくなる(R2=1)。そのため、比R2が、1付近の値であれば、第4および第5画像変位ベクトルV,Uは、正しく算出されているといえる。したがって、比R2から、第4および第5画像変位ベクトルベクトルV,Uが正しく算出されているか否かを判定できる。
【0201】
所定の範囲は、例えば、比R2の理想的な値(ここでは1)に許容できる誤差を含んだ範囲に設定される。したがって、荷電粒子ビームBの軸をより正確に合わせる場合には、所定の範囲は狭い範囲に設定される。この所定の範囲は、例えば、装置の操作者によって任意に設定されてもよい。
【0202】
なお、ここでは、第4画像変位ベクトルVを求める際の変更量と、第5画像変位ベクトルUを求める際の変更量とが、同じ量AL2である場合について説明したが、変更量が異なる場合には、比R2の理想的な値は、その変更量の比と等しくなる。したがって、この場合には、所定の範囲は、この変更量の比に応じて、設定される。
【0203】
ベクトル比判定器410は、比R2が所定の範囲に含まれていないと判定した場合、軸合わせ用撮影条件設定装置30に判定情報を出力する。軸合わせ用撮影条件設定装置30は、この判定情報に基づいて、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、第1〜第8画像データを取得する。
【0204】
ベクトル比判定器410は、比R2が所定の範囲に含まれていると判定した場合、最適値演算器36に判定情報を出力する。最適値演算器36は、この判定情報に基づいて、第1〜第5画像変位ベクトルA,B,C,V,Uから、荷電粒子ビームBの軸合わせのためのXアライメントコイル10aの励磁電流値および第2アライメントコイル10bの励磁電流値を算出する。
【0205】
本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の動作は、上述した第9実施形態では、判定の基準が比R1であるのに対して、本実施形態では、判定の基準が比R2である点を除いて、第9実施形態と同様であり、その説明を省略する。
【0206】
本実施形態では、ベクトル比判定器410が、比R2が所定の範囲に含まれるか否かを判定する。これにより、算出された第4および第5画像変位ベクトルV,Uを、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値の算出に用いるか否かを判定することができる。そのため、第4および第5画像変位ベクトルV,Uが正しく算出されていない場合には、この第4および第5画像変位ベクトルV,Uをアライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値の算出に用いないことができる。したがって、荷電粒子ビーム装置の軸合わせ動作後に、荷電粒子ビーム装置の軸合わせ動作前よりも、荷電粒子ビームBの軸がずれることを防ぐことができる。したがって、装置の信頼性を高めることができる。
【0207】
本実施形態によれば、比R2が所定の範囲に含まれていない場合には、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、第1〜第8画像データの取得を行うことができる。したがって、上述した第9実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0208】
12. 第12実施形態
次に、第12実施形態に係る荷電粒子ビーム装置について説明する。なお、第12実施形態に係る荷電粒子ビーム装置は、上述した図9に示す荷電粒子ビーム装置200の構成と同様である。
【0209】
本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置200は、図9に示すように、荷電粒子ビーム装置100の構成部材に加えて、さらに、画像変位ベクトル長比較器210を、含む。
【0210】
画像変位ベクトル長比較器210は、第9画像データと第10画像データとの間の位置ずれ量を示す第6画像変位ベクトルWの大きさ|W|が、第1画像変位ベクトルAの大きさ|A|よりも大きいか否かを判定する。ここで、第9画像データ(フレーム9)は、例えば、加速電圧がHV+V1(焦点位置が第1位置)であり、Xアライメントコイル10aの励磁電流値およびYアライメントコイル10bの励磁電流値が、最適値演算器36によって算出された電流値(最適値)である条件で取得される。また、第10画像データ(フレーム10)は、例えば、加速電圧がHV+V2(焦点位置が第2位置)であり、Xアライメントコイル10aの励磁電流値およびYアライメントコイル10bの励磁電流値が、最適値演算器36によって算出された電流値(最適値)である条件で取得される。
【0211】
第6画像変位ベクトルWの情報は、画像変位ベクトル演算器34から、画像変位ベクトル長比較器210に入力される。第6画像変位ベクトルWの大きさ|W|は、第6画像変位ベクトル|W|の要素を(w,w)とすると下記式で算出できる。
【0212】
【数10】

【0213】
ここで、第6画像変位ベクトルWの大きさ|W|が、第1画像変位ベクトルAの大きさ|A|よりも大きい場合、軸合わせ後(第6画像変位ベクトルWを算出するための第9,第10画像データを取得したとき)の荷電粒子ビームBの軸が、軸合わせ開始前(第1画像変位ベクトルAを算出するための第1,第2画像データを取得したとき)と比べて、ずれていることを意味する。すなわち、最適値演算器36によって算出されたアライメントコイル10a,10bの励磁電流値が、軸合わせ開始前と比べて、不良となったことを意味する。
【0214】
画像変位ベクトル長比較器210は、第6画像変位ベクトルWの大きさ|W|が第1画像変位ベクトルAの大きさ|A|よりも大きいと判定した場合、軸合わせ用撮影条件設定装置30に判定情報を出力する。軸合わせ用撮影条件設定装置30は、この判定情報に基づいて、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、第1〜第8画像データを取得する。
【0215】
画像変位ベクトル長比較器210は、第6画像変位ベクトルWの大きさ|W|が第1画像変位ベクトルAの大きさ|A|以下と判定した場合、最適値演算器36に判定情報を出力する。最適値演算器36は、この判定情報に基づいて、算出したXアライメントコイル10aの励磁電流値およびYアライメントコイル10bの励磁電流値の情報をアライメントコイル駆動アンプ11に出力し、アライメントコイル10a,10bの励磁電流値を算出した励磁電流値となるように制御する。
【0216】
次に、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置200の動作について説明する。
【0217】
図16は、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置200の軸合わせ工程の一例を示すフローチャートである。本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置200による軸合わせ工程は、荷電粒子ビーム装置100による軸合わせ工程と比べて、第9画像データおよび第10画像データを取得する工程(S510)と、第9画像データおよび第10画像データから、第6画像変位ベクトルを算出する工程(S511)と、第9画像データと第10画像データとの間の位置ずれ量を示す第6画像変位ベクトルの大きさが、前記第1画像変位ベクトルの大きさよりも大きいか否かを判定する工程(S512,S513)と、取得する画像の倍率および視野の少なくとも一方を変更する工程(S515)と、を有する点で異なる。
【0218】
本実施形態では、まず、最適値演算器36が、アライメントコイル10a,10bの励磁電流が算出した最適値X3となるように制御する工程(S13)の後に、軸合わせ用撮影条件設定装置30が第9画像データおよび第10画像データを取得する処理を行う(S510)。
【0219】
次に、画像変位ベクトル演算器34が、第9画像データおよび第10画像データから、第6画像変位ベクトルWを算出する(S511)。
【0220】
次に、画像変位ベクトル長比較器210が、第6画像変位ベクトルWの情報に基づいて、画像変位ベクトルWの大きさ|W|を算出する。さらに、画像変位ベクトル長比較器210が、第1画像変位ベクトルAの大きさ|A|を算出する。
【0221】
次に、画像変位ベクトル長比較器210が、第6画像変位ベクトルWの大きさ|W|が、第1画像変位ベクトルAの大きさ|A|よりも大きいか否かを判定する(S512)。
【0222】
画像変位ベクトル長比較器210が、第6画像変位ベクトルWの大きさ|W|が、第1画像変位ベクトルAの大きさ|A|よりも大きいと判定した場合(S513でYESの場合)、最適値演算器36が算出した励磁電流値は、不良な値であったとして、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、第1〜第8画像データを取得する。そして、荷電粒子ビーム装置200は、倍率および視野の少なくとも一方を変えて取得した第1〜第8画像データを用いて、再度、第1〜第5画像変位ベクトルA,B,C,V,Uを求めて、アライメントコイル10a、10bの励磁電流値の最適値を算出する処理を行う(S11,S12,S13、S510〜S515)。
【0223】
画像変位ベクトル長比較器210が、第6画像変位ベクトルWの大きさ|W|が、第1画像変位ベクトルAの大きさ|A|以下と判定した場合(S513でNOの場合)、最適値演算器36が、アライメントコイル10a,10bの励磁電流値を算出した励磁電流値となるように制御し、荷電粒子ビーム装置200は処理を終了する。
【0224】
本実施形態では、画像変位ベクトル長比較器210が、第6画像変位ベクトルWの大きさ|W|が、第1画像変位ベクトルAの大きさ|A|よりも大きいか否かを判定する。したがって、荷電粒子ビーム装置の軸合わせ動作後に、荷電粒子ビーム装置の軸合わせ動作前よりも、荷電粒子ビームBの軸がずれることを防ぐことができる。したがって、装置の信頼性を高めることができる。
【0225】
13. 第13実施形態
次に、第13実施形態に係る荷電粒子ビーム装置について説明する。図17は、第13実施形態に係る荷電粒子ビーム装置600の構成を説明するための図である。以下、第13実施形態に係る荷電粒子ビーム装置600において、第1実施形態に係る荷電粒子ビーム装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0226】
荷電粒子ビーム装置600は、図17に示すように、荷電粒子ビーム装置100の構成部材に加えて、さらに、探索象限判定器(画像取得条件決定手段の一例)610を、含む。
【0227】
探索象限判定器610は、後述するように、第1〜第5画像データに基づいて、第7および第8画像データの取得条件を決定する。
【0228】
具体的には、探索象限判定器610は、画像変位ベクトル演算器34によって第1〜第5画像データから算出された第1〜第4画像変位ベクトルU1〜U4の中で、隣り合う2つのベクトルの組を所定の条件に基づき選択して、これにより第7画像データのYアライメントコイル10bの励磁電流値および第8画像データのXアライメントコイル10aの励磁電流値を決定する。ここで、探索象限判定器610は、第1〜第4画像変位ベクトルU1〜U4の組のうち、該組を構成する隣り合う2つのベクトルのなす角度が、Xアライメントコイル10aが荷電粒子ビームBを偏向させる方向とYアライメントコイル10bが荷電粒子ビームBを偏向させる方向とがなす角度に最も近いベクトルの組を選択する。これにより、後述するように、画像変位ベクトル座標系において、ベクトルABおよびベクトルACの向きが、原点O(アライメントコイル10a,10bの励磁電流が最適値となる点)に近づく方向になるため、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値を、より精度よく算出することができる。
【0229】
探索象限判定器610は、この決定した励磁電流値の情報を軸合わせ用撮影条件設定装置30に出力する。また、探索象限判定器610は、選択したベクトルの組の情報を最適値演算器36に出力する。
【0230】
次に、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置600の動作について説明する。
【0231】
図18は、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置600の軸合わせ工程を示すフローチャートである。
【0232】
まず、軸合わせ用撮影条件設定装置30によって第1〜第5画像データを取得する(S610)。軸合わせ用撮影条件設定装置30は、加速電圧、Xアライメントコイル10aの励磁電流、およびYアライメントコイル10bの励磁電流の条件を変えたフレーム1〜5を撮影して、第1〜第5画像データを取得する。軸合わせ用撮影条件設定装置30によって撮影されたフレーム1〜5は、第1〜第5画像データとして、フレームメモリー32aに記憶される。また、フレーム1〜5(第1〜第5画像データ)の撮影条件は、メモリー32に記憶される。
【0233】
図19は、フレーム1〜5の撮影条件を示す表である。各フレームの撮影条件は、図19に示すように、(加速電圧,Xアライメントコイルの励磁電流値,Yアライメントコイルの励磁電流値)として、フレーム1が(HV+V1,X=ORG_X,Y=ORG_Y)、フレーム2が(HV+V1,X=ORG_X,Y=ORG_Y+AL1)、フレーム3が(HV+V1,X=ORG_X+AL1,Y=ORG_Y)、フレーム4が(HV+V1,X=ORG_X,Y=ORG_Y−AL1)、フレーム5が(HV+V1,X=ORG_X−AL1,Y=ORG_Y)である。
【0234】
ここで、本実施形態では、例えば、加速電圧HV=10kVで、変更量V1=−50Vとする。さらに、例えば、励磁電流値ORG_X=10mA、励磁電流値ORG_Y=20mAで、AL1=+10mAとする。
【0235】
次に、画像変位ベクトル演算器34が、第1〜第5画像データから、第1〜第4画像変位ベクトルを算出する(S611)。
【0236】
画像変位ベクトル演算器34は、軸合わせ用撮影条件設定装置30で取得した5枚の画像データを組み合わせて第1〜第4画像変位ベクトルU1,U2,U3,U4を算出する。
【0237】
具体的には、画像変位ベクトル演算器34は、第1画像データと第3画像データとの間の位置ずれ量から、第1画像変位ベクトルU1(以下「ベクトルU1」ともいう)を算出する。画像変位ベクトル演算器34は、第1画像データと第2画像データとの間の位置ずれ量から、第2画像変位ベクトルU2(以下「ベクトルU2」ともいう)を算出する。画像変位ベクトル演算器34は、第1画像データと第5画像データとの間の位置ずれ量から、第3画像変位ベクトルU3(以下「ベクトルU3」ともいう)を算出する。画像変位ベクトル演算器34は、第1画像データと第4画像データとの間の位置ずれ量から、第4画像変位ベクトルU4(以下「ベクトルU4」ともいう)を算出する。
【0238】
ベクトルU1〜U4の算出法は、例えば、二つの画像の相互相関演算によるブロックマッチングで行う。相互相関演算は、二つの画像の二次元フーリエ変換の複素共役の積の逆フーリエ変換で実行する。二次元の相互相関演算結果の最大値の座標が像の変位ベクトルとなる。
【0239】
図20は、第1〜第4画像変位ベクトルU1〜U4の関係を示す図である。
【0240】
図20に示すように、ベクトルU1とベクトルU2によって第1象限が区画されている。また、ベクトルU2とベクトルU3によって第2象限が区画されている。ベクトルU3とベクトルU4によって第3象限が区画されている。ベクトルU4とベクトルU1によって第4象限が区画されている。
【0241】
また、図20に示すように、ベクトルU1とベクトルU2とがなす角度を、角度θ1とする。ベクトルU2とベクトルU3とがなす角度を角度θ2とする。ベクトルU3とベクトルU4とがなす角度を、角度θ3とする。ベクトルU4とベクトルU1のなす角度を、角度θ4とする。
【0242】
次に、探索象限判定器610が、第1〜第4画像変位ベクトルU1〜U4の中の隣り合う2つのベクトルの組のうち、該組を構成する隣り合う2つのベクトルのなす角度が、所定の角度に最も近い組を選択する(S612)。
【0243】
ここで、隣り合う2つのベクトルの組とは、図20に示す各象限を区画する2つのベクトルの組をいう。具体的には、隣り合う2つのベクトルの組とは、ベクトルU1とベクトルU2の組、ベクトルU2とベクトルU3の組、ベクトルU3とベクトルU4の組、およびベクトルU4とベクトルU1の組をいう。
【0244】
また、所定の角度とは、Xアライメントコイル10aが荷電粒子ビームBを偏向させる方向とYアライメントコイル10bが荷電粒子ビームBを偏向させる方向とがなす角度である。本実施形態では、Xアライメントコイル10aが荷電粒子ビームBをX方向に偏向させ(X軸に沿って偏向させ)、Yアライメントコイル10bが荷電粒子ビームBをY方向に偏向させる(Y軸に沿って偏向させる)。また、X軸とY軸とは、直交している。したがって、Xアライメントコイル10aが荷電粒子ビームBを偏向させる方向とYアライメントコイル10bが荷電粒子ビームBを偏向させる方向とがなす角度とは、本実施形態では90°である。
【0245】
すなわち、本工程(S612)では、探索象限判定器610が、ベクトルU1とベクトルU2の組、ベクトルU2とベクトルU3の組、ベクトルU3とベクトルU4の組、およびベクトルU4とベクトルU1の組のうち、該組を構成する2つのベクトルのなす角度θ1〜θ4が90°に最も近い該組を選択する。
【0246】
次に、探索象限判定器610が、選択されたベクトルの組の情報に基づいて、第7および第8画像データの取得条件を決定する(S613)。
【0247】
図21は、フレーム6〜フレーム8の撮影条件を示す表である。
【0248】
図21に示すように、第6画像データを取得するためのフレーム6の撮影条件は、(HV+V2,X=ORG_X,Y=ORG_Y)である。また、第7画像データを取得するためのフレーム7の撮影条件は、(HV+V2,X=ORG_X,Y=ORG_Y+ALY)である。また、第8画像データを取得するためのフレーム8の撮影条件は、(HV+V2,X=ORG_X+ALX,Y=ORG_Y)である。
【0249】
ここで、ALYは、Yアライメントコイル10bの電流値の変更量(変化電流量)である。また、ALXは、Xアライメントコイル10aの電流値の変更量(変化電流量)である。この変更量ALY,ALXは、選択されたベクトルの組に基づいて、決定される。
【0250】
具体的には、探索象限判定器610は、ベクトルU1とベクトルU2の組(象限1)を選択した場合、フレーム7の撮影条件を、(HV+V2,X=ORG_X,Y=ORG_Y+AL1)、フレーム8の撮影条件を、(HV+V2,X=ORG_X+AL1,Y=ORG_Y)に決定する。
【0251】
また、探索象限判定器610は、ベクトルU2とベクトルU3の組(象限2)を選択した場合、フレーム7の撮影条件を、(HV+V2,X=ORG_X,Y=ORG_Y+AL1)、フレーム8の撮影条件を、(HV+V2,X=ORG_X−AL1,Y=ORG_Y)に決定する。
【0252】
また、探索象限判定器610は、ベクトルU3とベクトルU4の組(象限3)を選択した場合、フレーム7の撮影条件を、(HV+V2,X=ORG_X,Y=ORG_Y−AL1)、フレーム8の撮影条件を、(HV+V2,X=ORG_X−AL1,Y=ORG_Y)に決定する。
【0253】
また、探索象限判定器610は、ベクトルU4とベクトルU1の組(象限4)を選択した場合、フレーム7の撮影条件を、(HV+V2,X=ORG_X,Y=ORG_Y−AL1)、フレーム8の撮影条件を、(HV+V2,X=ORG_X+AL1,Y=ORG_Y)に決定する。
【0254】
以上の工程により、第7および第8画像データの取得条件が決定される。
【0255】
探索象限判定器610は、このフレーム7,8の撮影条件の情報を、軸合わせ用撮影条件設定装置30に出力する。
【0256】
次に、軸合わせ用撮影条件設定装置30が、第6画像データを取得する(S614)。
【0257】
軸合わせ用撮影条件設定装置30は、フレーム6を、(HV+V2,X=ORG_X,Y=ORG_Y)の撮影条件で撮影し、第6画像データを取得する。第6画像データは、フレームメモリー32aに保存される。なお、第6画像データの取得するタイミングは、特に限定されず、例えば、後述する第7、第8画像データの取得の後に行ってもよいし、第1〜第5画像データの取得の前に行ってもよい。
【0258】
次に、軸合わせ用撮影条件設定装置30が、第7,8画像データを取得する(S615)。
【0259】
軸合わせ用撮影条件設定装置30は、探索象限判定器610で決定されたフレーム7,8の撮影条件の情報に基づいて、フレーム7,8を撮影し、第7,8画像データを取得する。第7,8画像データは、フレームメモリー32aに保存される。
【0260】
次に、画像変位ベクトル演算器34が、第1〜第8画像データから、第5〜第7画像変位ベクトルA,B,Cを算出する(S616)。
【0261】
画像変位ベクトル演算器34は、第1画像データと第6画像データとの間の位置ずれ量から、第5画像変位ベクトルAを算出する。
【0262】
また、画像変位ベクトル演算器34は、ベクトルの組の情報に基づいて、第2画像データまたは第4画像データの一方を選択し、選択した画像データと第7画像データとの間の位置ずれ量から第6画像変位ベクトルBを算出する。このベクトルの組の情報は、探索象限判定器610から画像変位ベクトル演算器34に入力される。
【0263】
また、画像変位ベクトル演算器34は、ベクトルの組の情報に基づいて、第3画像データまたは第5画像データの一方を選択し、選択した画像データと第8画像データとの間の位置ずれ量から第7画像変位ベクトルCを算出する。
【0264】
具体的には、探索象限判定器610がベクトルU1とベクトルU2の組(象限1)を選択した場合、画像変位ベクトル演算器34は、第2画像データを選択し、第2画像データと第7画像データとの間の位置ずれ量から第6画像変位ベクトルBを算出する。さらに、画像変位ベクトル演算器34は、第3画像データを選択し、第3画像データと第8画像データとの間の位置ずれ量から第7画像変位ベクトルCを算出する。
【0265】
探索象限判定器610がベクトルU2とベクトルU3の組(象限2)を選択した場合、画像変位ベクトル演算器34は、第2画像データを選択し、第2画像データと第7画像データとの間の位置ずれ量から第6画像変位ベクトルBを算出する。さらに、画像変位ベクトル演算器34は、第5画像データを選択し、第5画像データと第8画像データとの間の位置ずれ量から第7画像変位ベクトルCを算出する。
【0266】
探索象限判定器610がベクトルU3とベクトルU4の組(象限3)を選択した場合、画像変位ベクトル演算器34は、第4画像データを選択し、第4画像データと第7画像データとの間の位置ずれ量から第6画像変位ベクトルBを算出する。さらに、画像変位ベクトル演算器34は、第5画像データを選択し、第5画像データと第8画像データとの間の位置ずれ量から第7画像変位ベクトルCを算出する。
【0267】
探索象限判定器610がベクトルU4とベクトルU1の組(象限4)を選択した場合、画像変位ベクトル演算器34は、第4画像データを選択し、第4画像データと第7画像データとの間の位置ずれ量から第6画像変位ベクトルBを算出する。さらに、画像変位ベクトル演算器34は、第3画像データを選択し、第3画像データと第8画像データとの間の位置ずれ量から第7画像変位ベクトルCを算出する。
【0268】
また、画像変位ベクトル演算器34は、ベクトルの組の情報を受けて、第1〜第4画像変位ベクトルU1〜U4のなかから、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値を算出するための画像変位ベクトルV,Uを選択する。
【0269】
具体的には、探索象限判定器610がベクトルU1とベクトルU2の組(象限1)を選択した場合、画像変位ベクトル演算器34は、画像変位ベクトルUとして第1画像変位ベクトルU1を選択し、画像変位ベクトルVとして第2画像変位ベクトルU2を選択する。
【0270】
探索象限判定器610がベクトルU2とベクトルU3の組(象限2)を選択した場合、画像変位ベクトル演算器34は、画像変位ベクトルUとして第3画像変位ベクトルU3を選択し、画像変位ベクトルVとして第2画像変位ベクトルU2を選択する。
【0271】
探索象限判定器610がベクトルU3とベクトルU4の組(象限3)を選択した場合、画像変位ベクトル演算器34は、画像変位ベクトルUとして第3画像変位ベクトルU3を選択し、画像変位ベクトルVとして第4画像変位ベクトルU4を選択する。
【0272】
探索象限判定器610がベクトルU4とベクトルU1の組(象限4)を選択した場合、画像変位ベクトル演算器34は、画像変位ベクトルUとして第1画像変位ベクトルU1を選択し、画像変位ベクトルVとして第4画像変位ベクトルU4を選択する。
【0273】
このようにして、画像変位ベクトル演算器34は、画像変位ベクトルA,B,C,V,Uを得ることができる。画像変位ベクトル演算器34は、画像変位ベクトルA,B,C,V,Uを、最適値演算器36に出力する。
【0274】
ここで、図22は、ベクトルU1とベクトルU2の組(象限1)が選択されたときの画像変位ベクトルA,B,C,V,Uの関係を示す図である。図23は、ベクトルU2とベクトルU3の組(象限2)が選択されたときの画像変位ベクトルA,B,C,V,Uの関係を示す図である。図24は、ベクトルU3とベクトルU4の組(象限3)が選択されたときの画像変位ベクトルA,B,C,V,Uの関係を示す図である。図25は、ベクトルU4とベクトルU1の組(象限4)が選択されたときの画像変位ベクトルA,B,C,V,Uの関係を示す図である。
【0275】
図22〜図25に示す、本実施形態における画像変位ベクトルA,B,C,V,Uは、第1実施形態における画像変位ベクトルA,B,C,V,Uに対応する。図22〜図25に示すように、上述した工程で画像変位ベクトルA,B,C,V,Uを求めることによって、画像変位ベクトル座標系において、ベクトルABとベクトルACの向きが、原点O(アライメントコイル10a,10bの励磁電流が最適値となる点)に近づく方向になる。
【0276】
なお、図22〜図25では、画像変位ベクトルAの方向がそれぞれ異なっているが、これは、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の初期値が異なっていることによって生じる。
【0277】
次に、画像変位ベクトルA,B,C,V,Uから、第1実施形態と同様に、画像変位ベクトルK,Lを算出し、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値を算出する(S617,S618)。
【0278】
最適値演算器36は、算出したアライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値に基づいて制御信号を生成する。そして、最適値演算器36は、この制御信号をアライメントコイル駆動アンプ11に出力して、Xアライメントコイル10aの励磁電流が最適値となり、Yアライメントコイル10bの励磁電流が最適値となるように制御する。
【0279】
以上の工程により、荷電粒子ビームBの軸合わせを行うことができる。
【0280】
本実施形態によれば、上述のように、8枚の画像(フレーム1〜8)からアライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値を求めることができる。このように荷電粒子ビームの軸合わせのための画像データの取得数が少なくて済むため、容易に荷電粒子ビームの軸合わせができる。したがって、装置の操作者の負担を軽減し、荷電粒子ビームの軸合わせに要する時間を短縮することができる。
【0281】
本実施形態では、上述した工程で画像変位ベクトルA,B,C,V,Uを求めることによって、画像変位ベクトル座標系において、ベクトルABとベクトルACの向きが、原点O(アライメントコイル10a,10bの励磁電流が最適値となる点)に近づく方向になる。これにより、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値を、より精度よく算出することができる。以下にその理由について述べる。
【0282】
図26は、アライメントコイル電流値座標系において、アライメントコイル10a,10bの励磁電流値を初期値Fから変更量AL1だけ変化させた図である。図26において、原点Oは、アライメントコイル10a,10bの励磁電流が最適値となる点、すなわち、荷電粒子ビームBの軸があった状態となる点である。
【0283】
図26に示すように、アライメントコイル10a,10bの励磁電流値を初期値Fから変更量AL1だけ変化させたときに、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の変化を示すベクトルが、原点Oから遠ざかる向き(図26において破線で示すベクトルの向き)になる場合がある。このような場合には、電子光学系の非点収差、コマ収差などの軸外収差で画像解像度が著しく低下する。これによって、画像変位ベクトルA,B,C,V,Uが算出できなかったり、画像変位ベクトルA,B,C,V,Uの誤差が大きくなってしまったりする場合があり望ましくない。したがって、アライメントコイル10a,10bの励磁電流値を初期値Fから変更量AL1だけ変化させたときに、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の変化を示すベクトルが、原点Oに近づく向き(図26において実線で示すベクトルの向き)になることが望ましい。
【0284】
ここで、図26に示すアライメントコイル電流値座標系において、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の変化を示すベクトルが原点Oから遠ざかる向きになると、画像変位ベクトル座標系において、ベクトルABおよびベクトルACも、原点Oから遠ざかる向きになる。また、図26に示すアライメントコイル電流値座標系において、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の変化を示すベクトルが原点Oに近づく向きになると、画像変位ベクトル座標系において、ベクトルABおよびベクトルACは、原点Oに近づく向きになる。
【0285】
図27は、画像変位ベクトル座標系において、ベクトルABおよびベクトルACを、原点Oから遠ざかる向きにとった場合を示す図である。図27に示すように、画像変位ベクトルB,Cは、画像変位ベクトルAよりも大きく、ベクトルABおよびベクトルACは、原点Oに対して、遠ざかる方向になっている。このような場合、上述したように収差の影響を受けて、画像変位ベクトルB,Cの算出誤差が大きくなり、算出したアライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値の誤差も大きくなってしまう。
【0286】
図28は、画像変位ベクトル座標系において、ベクトルABおよびベクトルACを、原点Oに近づく向き(原点Oに向かう方向)にとった場合を示す図である。このような場合には、上述したように収差の影響を受けにくく、画像変位ベクトルB,Cの算出誤差を小さくすることができる。
【0287】
したがって、本実施形態によれば、上述したように、画像変位ベクトル座標系において、ベクトルABとベクトルACの向きが、原点O(アライメントコイル10a,10bの励磁電流が最適値となる点)に近づく方向になるように、画像変位ベクトルB,Cを求めることができるため、画像変位ベクトルB,Cの算出誤差を小さくすることができ、アライメントコイル10a,10bの励磁電流の最適値を、より精度よく算出することができる。
【0288】
本実施形態では、第1〜第4画像変位ベクトルU1〜U4の組のうち、該組を構成する隣り合う2つのベクトルのなす角度が、90°(Xアライメントコイル10aが荷電粒子ビームBを偏向させる方向とYアライメントコイル10bが荷電粒子ビームBを偏向させる方向とがなす角度)に最も近い該組を選択する。以下、その理由について説明する。
【0289】
図29は、対物レンズ14が樽型の収差を有する場合の画像変位ベクトル座標系を示す図である。
【0290】
ここで、図29に示すように、アライメントコイル10a,10bの初期値Fから原点Oに近づく方向を向く2つの画像変位ベクトルa1,a2のなす角度は、相対的に90°に近い角度である。これに対して、初期値Fから中心Oに対して遠ざかる方向を向く2つの画像変位ベクトルa3,a4のなす角度は、ベクトルa1,a2のなす角度と比べて収差の影響が大きいため、90°から大きくずれている。
【0291】
したがって、本実施形態では、第1〜第4画像変位ベクトルU1〜U4の組のうち、該組を構成する隣り合う2つのベクトルのなす角度が、90°に最も近い組を選択することにより、画像変位ベクトル座標系においてベクトルABおよびベクトルACが原点Oを向くように、画像変位ベクトルB,Cを算出することができる。本実施形態の手法は、図29に示すアライメントコイル10a,10bの励磁電流の初期値Fが原点Oから離れている場合(荷電粒子ビームBの軸が大きくずれている場合)に、特に、有効である。
【0292】
なお、図29の例では、対物レンズ14が樽型の収差を有する場合について説明したが、対物レンズ14が他の収差(例えば、糸巻き型等)を有していても、同様の手法で、画像変位ベクトル座標系においてベクトルABおよびベクトルACが原点Oを向くように、画像変位ベクトルB,Cを算出することができる。
【0293】
14. 第13実施形態の変形例
次に、第13実施形態の変形例について説明する。以下、第13実施形態の変形例に係る荷電粒子ビーム装置において、第13実施形態に係る荷電粒子ビーム装置600の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0294】
(1)第1変形例
まず、第1変形例について説明する。図30は、第1変形例に係る荷電粒子ビームの軸合わせ工程のフローチャートである。
【0295】
上述した第13実施形態では、探索象限判定器610が、第7〜第8画像データの取得条件を決定し(S613)、第5〜第7画像変位ベクトルA,B,Cを算出した(S615,S616)。これに対して、本変形例では、探索象限判定器610が、第7〜第10画像データの取得条件を決定し(S713)、第5〜第7画像変位ベクトルA,B,Cを算出する点で異なる(S715,S716)。したがって、以下では、この異なる工程(S713,S715,S716)について説明する。
【0296】
本変形例では、探索象限判定器610が、選択したベクトルの組(象限)に基づいて、第7〜第8画像データ(フレーム7〜10)の取得条件を決定する(S713)。
【0297】
具体的には、探索象限判定器610は、ベクトルU1とベクトルU2の組(象限1)を選択した場合、フレーム7の撮影条件を、(HV+V2,X=ORG_X,Y=ORG_Y+AL2)、フレーム8の撮影条件を、(HV+V2,X=ORG_X+AL2,Y=ORG_Y)、フレーム9の撮影条件を、(HV+V1,X=ORG_X,Y=ORG_Y+AL2)、フレーム10の撮影条件を、(HV+V1,X=ORG_X+AL2,Y=ORG_Y)に決定する。
【0298】
また、探索象限判定器610は、ベクトルU2とベクトルU3の組(象限2)を選択した場合、フレーム7の撮影条件を、(HV+V2,X=ORG_X,Y=ORG_Y+AL2)、フレーム8の撮影条件を、(HV+V2,X=ORG_X−AL2,Y=ORG_Y)フレーム9の撮影条件を、(HV+V1,X=ORG_X,Y=ORG_Y+AL2)、フレーム10の撮影条件を、(HV+V1,X=ORG_X−AL2,Y=ORG_Y)に決定する。
【0299】
また、探索象限判定器610は、ベクトルU3とベクトルU4の組(象限3)を選択した場合、フレーム7の撮影条件を、(HV+V2,X=ORG_X,Y=ORG_Y−AL2)、フレーム8の撮影条件を、(HV+V2,X=ORG_X−AL2,Y=ORG_Y)、フレーム9の撮影条件を、(HV+V1,X=ORG_X,Y=ORG_Y−AL2)、フレーム10の撮影条件を、(HV+V1,X=ORG_X−AL2,Y=ORG_Y)に決定する。
【0300】
また、探索象限判定器610は、ベクトルU4とベクトルU1の組(象限4)を選択した場合、フレーム7の撮影条件を、(HV+V2,X=ORG_X,Y=ORG_Y−AL2)、フレーム8の撮影条件を、(HV+V2,X=ORG_X+AL2,Y=ORG_Y)、フレーム9の撮影条件を、(HV+V1,X=ORG_X,Y=ORG_Y−AL2)、フレーム10の撮影条件を、(HV+V1,X=ORG_X+AL2,Y=ORG_Y)に決定する。
【0301】
以上の工程により、第7〜第10画像データの取得条件が決定される。
【0302】
探索象限判定器610は、このフレーム7〜10の撮影条件の情報を、軸合わせ用撮影条件設定装置30に出力する。
【0303】
軸合わせ用撮影条件設定装置30が、このフレーム7〜10の撮影条件に基づいて、フレーム7〜10を撮影して、第7〜第10画像データを取得する(S715)。
【0304】
そして、画像変位ベクトル演算器34が、第1〜第10画像データから、第5〜第7画像変位ベクトルA,B,Cを算出する(S716)。
【0305】
具体的には、画像変位ベクトル演算器34は、第1画像データと第6画像データとの間の位置ずれ量から第5画像変位ベクトルAを算出する。また、画像変位ベクトル演算器34は、第9画像データと第7画像データとの間の位置ずれ量から第6画像変位ベクトルBを算出する。また、画像変位ベクトル演算器34は、第10画像データと第8画像データとの間の位置ずれ量から第7画像変位ベクトルCを算出する。
【0306】
本実施形態では、アライメントコイル10a,10bの励磁電流値の変更量AL1と変更量AL2とが、互いに異なる値を有することができる。変更量AL1と変更量AL2とが異なる値を有することにより、例えば、変更量AL1を演算精度を得るために十分な程度の大きな値とし、変更量AL2を画像の変位量がブロックマッチングの範囲内になるような小さな値(例えば、変更量AL1よりも小さい値)とすることができる。したがって、演算精度を高めつつ、撮影条件を緩和することができる。
【0307】
(2)第2変形例
次に、第2変形例について説明する。上述した第13実施形態では、探索象限判定器610が、第1〜第4画像変位ベクトルU1〜U4の組のうち、該組を構成する隣り合う2つのベクトルのなす角度が、90°に最も近い組を選択した。これに対して、本変形例では、探索象限判定器610が、第1〜第4画像変位ベクトルU1〜U4の組のうち、該組を構成する隣り合う2つのベクトルの大きさの和に基づいて、該組を選択する。
【0308】
これは、アライメントコイル10a,10bによる偏向の歪曲により、ベクトルU1の大きさ|U1|とベクトルU2の大きさ|U2|の和|U1|+|U2|、ベクトルU2の大きさ|U2|とベクトルU3の大きさ|U3|の和|U2|+|U3|、ベクトルU3の大きさ|U3|,U4の大きさ|U4|の和|U3|+|U4|、ベクトルU4の大きさ|U4|とベクトルU1の大きさ|U1|の和|U4|+|U1|が等しくならなくなる現象を利用したものである。画像変位ベクトル座標系において、原点Oから外れるにしたがって、収差によってベクトルの大きさが小さくなる場合には、隣り合う2つのベクトルの大きさの和が最も大きい組を選択する。原点Oから外れるにしたがって、収差によってベクトルの大きさが大きくなる場合には、隣り合う2つのベクトルの大きさの和が最も小さい組を選択する。
本変形例によれば、第13実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0309】
なお、上述した各実施形態は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0310】
例えば、図1に示す、軸合わせ用撮影条件設定装置30、画像変位ベクトル演算器34、最適値演算器36、図9に示す画像変位ベクトル長比較器210、図11に示すベクトル角度判定器310、図14に示すベクトル比判定器410、図17に示す探索象限判定器610の機能を、各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現してもよい。
【0311】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0312】
2 荷電粒子ビーム鏡筒、4 荷電粒子ビーム源、5 加速電圧用高圧電源、
8 対物レンズ絞り、10a Xアライメントコイル、10b Yアライメントコイル、
11 アライメントコイル駆動アンプ、12 開き角補正レンズ、14 対物レンズ、
15 対物レンズ駆動アンプ、16 走査コイル、20 試料ステージ、
22 電子検出器、24 観察画像表示装置、30 軸合わせ用撮影条件設定装置、
32 メモリー、32a フレームメモリー、34 画像変位ベクトル演算器、
36 最適値演算器、100 荷電粒子ビーム装置、102 電子銃、
103 対物レンズ絞り、106 対物レンズ、107 走査コイル、
108 電子検出器、109 画像表示装置、110 加速電圧ウォブラ用信号発生器、
111 加速電圧用高圧電源、112 XY調整ノブ、113 駆動アンプ、
115 対物レンズ駆動アンプ、200 荷電粒子ビーム装置、210 画像変位ベクトル長比較器、300 荷電粒子ビーム装置、310 ベクトル角度判定器、400 荷電粒子ビーム装置、410 ベクトル比判定器、600 荷電粒子ビーム装置、610 探索象限判定器、1000 走査型電子顕微鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを第1方向に偏向させる第1アライメントコイル、および前記荷電粒子ビームを前記第1方向と交差する第2方向に偏向させる第2アライメントコイルによって前記荷電粒子ビームの軸を調整し、前記荷電粒子ビームを試料に照射して、試料から発生した信号を検出し画像データを取得する荷電粒子ビーム装置における荷電粒子ビームの軸合わせ方法であって、
前記試料上における前記荷電粒子ビームの入射方向での焦点位置、前記第1アライメントコイルの励磁電流、および前記第2アライメントコイルの励磁電流の条件を変えて、少なくとも第1〜第6画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記画像データ取得工程で取得した少なくとも前記第1〜第6画像データから、前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する演算工程と、
を含み、
前記画像データ取得工程において、
前記第1画像データは、前記焦点位置が第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が第2電流値である条件で取得され、
前記第2画像データは、前記焦点位置が第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得され、
前記第3画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から第1変化電流値だけ変化させた電流値である条件で取得され、
前記第4画像データは、前記焦点位置が前記第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から前記第1変化電流値だけ変化させた電流値である条件で取得され、
前記第5画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第1変化電流値だけ変化させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得され、
前記第6画像データは、前記焦点位置が前記第2位置であり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第1変化電流値だけ変化させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得される、荷電粒子ビームの軸合わせ方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記演算工程において、
前記第1画像データと前記第2画像データとの間の位置ずれ量を示す第1画像変位ベクトルと、
前記第3画像データと前記第4画像データとの間の位置ずれ量を示す第2画像変位ベクトルと、
前記第5画像データと前記第6画像データとの間の位置ずれ量を示す第3画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第3画像変位ベクトルから前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する、荷電粒子ビームの軸合わせ方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記画像データ取得工程において、さらに、第7画像データおよび第8画像データを取得し、
前記第7画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から第2変化電流値だけ変化させた電流値である条件で取得され、
前記第8画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第2変化電流値だけ変化させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得される、荷電粒子ビームの軸合わせ方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記演算工程において、さらに、
前記第1画像データと前記第7画像データとの間の位置ずれ量を示す第4画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第8画像データとの間の位置ずれ量を示す第5画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第5画像変位ベクトルから前記荷電粒子ビームの軸を合わせるための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する、荷電粒子ビームの軸合わせ方法。
【請求項5】
請求項2において、
前記演算工程において、さらに、
前記第1画像データと前記第3画像データとの間の位置ずれ量を示す第4画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第5画像データとの間の位置ずれ量を示す第5画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第5画像変位ベクトルから前記荷電粒子ビームの軸を合わせるための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する、荷電粒子ビームの軸合わせ方法。
【請求項6】
荷電粒子ビームを第1方向に偏向させる第1アライメントコイル、および前記荷電粒子ビームを前記第1方向と交差する第2方向に偏向させる第2アライメントコイルによって前記荷電粒子ビームの軸を調整し、前記荷電粒子ビームを試料に照射して、試料から発生した信号を検出し画像データを取得する荷電粒子ビーム装置であって、
前記試料上における前記荷電粒子ビームの入射方向での焦点位置、前記第1アライメントコイルの励磁電流、および前記第2アライメントコイルの励磁電流の条件を変えて、少なくとも第1〜第6画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データ取得手段が取得した少なくとも前記第1〜第6画像データから、前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する演算手段と、
を含み、
前記第1画像データは、前記焦点位置が第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が第2電流値である条件で取得され、
前記第2画像データは、前記焦点位置が第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得され、
前記第3画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から第1変化電流値だけ変化させた電流値である条件で取得され、
前記第4画像データは、前記焦点位置が前記第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から前記第1変化電流値だけ変化させた電流値である条件で取得され、
前記第5画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第1変化電流値だけ変化させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得され、
前記第6画像データは、前記焦点位置が前記第2位置であり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第1変化電流値だけ変化させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得される、荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記演算手段は、
前記第1画像データと前記第2画像データとの間の位置ずれ量を示す第1画像変位ベクトルと、
前記第3画像データと前記第4画像データとの間の位置ずれ量を示す第2画像変位ベクトルと、
前記第5画像データと前記第6画像データとの間の位置ずれ量を示す第3画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第3画像変位ベクトルから前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する、荷電粒子ビーム装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記画像データ取得手段は、さらに、第7画像データと第8画像データを取得し、
前記第7画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から第2変化電流値だけ変化させた電流値である条件で取得され、
前記第8画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第2変化電流値だけ変化させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得される、荷電粒子ビーム装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記演算手段は、さらに、
前記第1画像データと前記第7画像データとの間の位置ずれ量を示す第4画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第8画像データとの間の位置ずれ量を示す第5画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第5画像変位ベクトルから前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する、荷電粒子ビーム装置。
【請求項10】
請求項7において、
前記演算手段は、さらに、
前記第1画像データと前記第3画像データとの間の位置ずれ量を示す第4画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第5画像データとの間の位置ずれ量を示す第5画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第5画像変位ベクトルから前記荷電粒子ビームの軸を合わせるための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する、荷電粒子ビーム装置。
【請求項11】
請求項6ないし10のいずれか1項において、
前記画像データ取得手段は、前記荷電粒子ビームを発生するビーム源の加速電圧および対物レンズの励磁電流値の少なくとも一方を制御することによって、前記焦点位置を制御する、荷電粒子ビーム装置。
【請求項12】
請求項2ないし5のいずれか1項において、
前記演算工程では、算出された前記第1〜第3画像変位ベクトルを、前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値の算出に用いるか否かを判定し、
前記第1〜第3画像変位ベクトルを算出に用いないと判定した場合、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、前記第1〜第6画像データを取得する、荷電粒子ビームの軸合わせ方法。
【請求項13】
請求項4において、
前記演算工程では、算出された前記第4および前記第5画像変位ベクトルを、前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値の算出に用いるか否かを判定し、
前記第4および第5画像変位ベクトルを算出に用いないと判定した場合、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、前記第1〜第6画像データを取得する、荷電粒子ビームの軸合わせ方法。
【請求項14】
請求項2ないし5のいずれか1項において、
前記第1アライメントコイルおよび前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記演算工程で算出された励磁電流値であって、互いに異なる前記焦点位置である条件で取得された2つの画像データを取得する工程と、
前記2つの画像データから、第6画像変位ベクトルを算出する工程と、
前記第6画像変位ベクトルの大きさが前記第1画像変位ベクトルの大きさよりも大きいか否かを判定する第2判定工程と、をさらに含み、
前記第2判定工程で前記第6画像変位ベクトルの大きさが前記第1画像変位ベクトルの大きさよりも大きいと判定された場合、倍率および視野の少なくとも一方を変えて、再度、前記第1〜第6画像データを取得する、荷電粒子ビームの軸合わせ方法。
【請求項15】
荷電粒子ビームを第1方向に偏向させる第1アライメントコイル、および前記荷電粒子ビームを前記第1方向と交差する第2方向に偏向させる第2アライメントコイルによって前記荷電粒子ビームの軸を調整し、前記荷電粒子ビームを試料に照射して、試料から発生した信号を検出し画像データを取得する荷電粒子ビーム装置における荷電粒子ビームの軸合わせ方法であって、
前記試料上における前記荷電粒子ビームの入射方向での焦点位置、前記第1アライメントコイルの励磁電流、および前記第2アライメントコイルの励磁電流の条件を変えて、第1〜第5画像データを取得する第1の画像データ取得工程と、
第6画像データを取得する第2の画像データ取得工程と、
前記第1〜第5画像データから、第1〜第4画像変位ベクトルを算出する第1の演算工程と、
前記第1〜第4画像変位ベクトルに基づいて、第7および第8画像データの取得条件を決定する画像取得条件決定工程と、
前記画像取得条件決定工程で決定された取得条件に基づいて、前記第7および前記第8画像データを取得する第3の画像データ取得工程と、
前記第1〜第3の画像データ取得工程で取得した前記第1〜第8画像データから、前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する第2の演算工程と、
を含み、
前記第1の画像データ取得工程において、
前記第1画像データは、前記焦点位置が第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が第2電流値である条件で取得され、
前記第2画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から第1変化電流値だけ増加させた電流値である条件で取得され、
前記第3画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第1変化電流値だけ増加させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得され、
前記第4画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から前記第1変化電流値だけ減少させた電流値である条件で取得され、
前記第5画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第1変化電流値だけ減少させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得され、
前記第2の画像データ取得工程において、
前記第6画像データは、前記焦点位置が第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルが前記第2電流値である条件で取得され、
前記第1の演算工程において、
前記第1画像データと前記第3画像データとの間の位置ずれ量を示す前記第1画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第2画像データとの間の位置ずれ量を示す前記第2画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第5画像データとの間の位置ずれ量を示す前記第3画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第4画像データとの間の位置ずれ量を示す前記第4画像変位ベクトルと、
を算出し、
画像取得条件決定工程において、
前記第1〜第4画像変位ベクトルの中で隣り合う2つのベクトルの組を所定の条件に基づき選択して、これにより第7画像データの前記第2アライメントコイルの励磁電流値および前記第8画像データの前記第1アライメントコイルの励磁電流値を決定し、
前記第3の画像データ取得工程において、
前記第7画像データは、前記焦点位置が前記第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルが前記画像取得条件決定工程で決定された電流値である条件で取得され、
前記第8画像データは、前記焦点位置が前記第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記画像取得条件決定工程で決定された電流値であり、前記第2アライメントコイルが前記第2電流値である条件で取得される、荷電粒子ビームの軸合わせ方法。
【請求項16】
請求項15において、
前記画像取得条件決定工程では、前記第1〜第4画像変位ベクトルにおける前記組のうち、該組を構成する隣り合う2つのベクトルのなす角度が、前記第1方向と前記第2方向とがなす角度に最も近い前記組を選択する、荷電粒子ビームの軸合わせ方法。
【請求項17】
請求項15において、
前記画像取得条件決定工程では、前記第1〜第4画像変位ベクトルにおける前記組のうち、該組を構成する隣り合う2つのベクトルの大きさの和に基づいて、前記組を選択する、荷電粒子ビームの軸合わせ方法。
【請求項18】
請求項16または17において、
前記第2の演算工程では、
選択した前記組に基づいて、前記第2画像データまたは前記第4画像データの一方を選択し、かつ、前記第3画像データまたは前記第5画像データの一方を選択し、
前記第1画像データと前記第6画像データとの間の位置ずれ量を示す第5画像変位ベクトルと、
選択された前記第2画像データまたは前記第4画像データの一方と、前記第7画像データとの間の位置ずれ量を示す第6画像変位ベクトルと、
選択された前記第3画像データまたは前記第5画像データの一方と、前記第8画像データとの間の位置ずれ量を示す第7画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第7画像変位ベクトルから、前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する、荷電粒子ビームの軸合わせ方法。
【請求項19】
荷電粒子ビームを第1方向に偏向させる第1アライメントコイル、および前記荷電粒子ビームを前記第1方向と交差する第2方向に偏向させる第2アライメントコイルによって前記荷電粒子ビームの軸を調整し、前記荷電粒子ビームを試料に照射して、試料から発生した信号を検出し画像データを取得する荷電粒子ビーム装置であって、
前記試料上における前記荷電粒子ビームの入射方向での焦点位置、前記第1アライメントコイルの励磁電流、および前記第2アライメントコイルの励磁電流の条件を変えて、第1〜第8画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データ取得手段が取得した前記第1〜第5画像データに基づいて、前記第7および第8画像データの取得条件を決定する画像取得条件決定手段と、
前記画像データ取得手段が取得した前記第1〜第8画像データから、前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する演算手段と、
を含み、
前記第1画像データは、前記焦点位置が第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が第2電流値である条件で取得され、
前記第2画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から第1変化電流値だけ増加させた電流値である条件で取得され、
前記第3画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第1変化電流値だけ増加させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得され、
前記第4画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値から前記第1変化電流値だけ減少させた電流値である条件で取得され、
前記第5画像データは、前記焦点位置が前記第1位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値から前記第1変化電流値だけ減少させた電流値であり、前記第2アライメントコイルの励磁電流値が前記第2電流値である条件で取得され、
前記第6画像データは、前記焦点位置が第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルが前記第2電流値である条件で取得され、
前記第7画像データは、前記焦点位置が前記第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記第1電流値であり、前記第2アライメントコイルが前記画像取得条件決定手段で決定された電流値である条件で取得され、
前記第8画像データは、前記焦点位置が前記第2位置にあり、前記第1アライメントコイルの励磁電流値が前記画像取得条件決定手段で決定された電流値であり、前記第2アライメントコイルが前記第2電流値である条件で取得され、
前記演算手段は、
前記第1画像データと前記第3画像データとの間の位置ずれ量を示す第1画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第2画像データとの間の位置ずれ量を示す第2画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第5画像データとの間の位置ずれ量を示す第3画像変位ベクトルと、
前記第1画像データと前記第4画像データとの間の位置ずれ量を示す第4画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記画像取得条件決定手段は、前記第1〜第4画像変位ベクトルの中で隣り合う2つのベクトルの組を所定の条件に基づき選択して、これにより前記第7画像データの前記第2アライメントコイルの励磁電流値および前記第8画像データの前記第1アライメントコイルの励磁電流値を決定する、荷電粒子ビーム装置。
【請求項20】
請求項19において、
前記画像取得条件決定手段は、前記第1〜第4画像変位ベクトルにおける前記組のうち、該組を構成する隣り合う2つのベクトルのなす角度が、前記第1方向と前記第2方向とがなす角度に最も近い前記組を選択する、荷電粒子ビーム装置。
【請求項21】
請求項19において、
前記画像取得条件決定手段は、前記第1〜第4画像変位ベクトルにおける前記組のうち、該組を構成する隣り合う2つのベクトルの大きさの和に基づいて、前記組を選択する、荷電粒子ビーム装置。
【請求項22】
請求項20または21において、
前記演算手段は、
選択した前記組に基づいて、前記第2画像データまたは前記第4画像データの一方を選択し、かつ、前記第3画像データまたは前記第5画像データの一方を選択し、
前記第1画像データと前記第6画像データとの間の位置ずれ量を示す第5画像変位ベクトルと、
選択された前記第2画像データまたは前記第4画像データの一方と、前記第7画像データとの間の位置ずれ量を示す第6画像変位ベクトルと、
選択された前記第3画像データまたは前記第5画像データの一方と、前記第8画像データとの間の位置ずれ量を示す第7画像変位ベクトルと、
を算出し、
前記第1〜第7画像変位ベクトルから前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する、荷電粒子ビーム装置。
【請求項23】
請求項2ないし5または12ないし18のいずれか1項において、
前記焦点位置のみを変化させた2つの画像データから算出された画像変位ベクトルが、所定の値よりも大きいか否かを判定するための第1判定工程をさらに含み、
前記第1判定工程で前記所定の値よりも大きいと判定された場合に、前記荷電粒子ビームの軸合わせのための前記第1アライメントコイルの励磁電流値および前記第2アライメントコイルの励磁電流値を算出する、荷電粒子ビームの軸合わせ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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