説明

荷電粒子線照射装置

【課題】被照射体に写る光からコリメータの開口部の正確な形状を得ることができる荷電粒子線照射装置を提供する。
【解決手段】荷電粒子線照射装置4は、荷電粒子線Pを患者Aの体内に照射する散乱体6及びリッジフィルタ7と、荷電粒子線Pの照射範囲を設定する患者コリメータ20と、この患者コリメータ20の開口部20aに対して光を照射する2つの光源部9とを有している。リッジフィルタ7と患者コリメータ20との間には、荷電粒子線Pの照射軸Qに対して進退可能なコリメータ形状確認ユニット10が配置されている。コリメータ形状確認ユニット10は、各光源部9から出射された光を患者コリメータ20の開口部20aに向けて反射させる2枚の凹面鏡12を有している。各光源部9は、凹面鏡12の焦点位置に配置されている。このため、各光源部9から出射されて凹面鏡12で反射された光は平行光となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被照射体に荷電粒子線を照射する荷電粒子線照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子線を照射する荷電粒子線照射装置は、例えば陽子線を患者の腫瘍部に照射してがん治療を行う放射線治療装置に使用されている。このような放射線治療装置としては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載の放射線治療装置は、被検体の体表に照射される放射線を発生させる放射線発生部と、この放射線発生部から照射された放射線の照射野を決定するマルチリーフコリメータと、このマルチリーフコリメータの開口部を介して被検体の体表に可視光線を照射する可視光源とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−255718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射線治療装置においては、上記従来技術のように光源から出射される光によりコリメータの開口部を介して被検体を照らし、その時に被検体に生じる影からコリメータの開口部の形状を事前に確認することがある。この場合には、被検体に対して平行光を照射する必要がある。しかし、上記従来技術では、可視光源から出射されてハーフミラーで反射された光(反射光)が広がって被検体に照射されるため、被検体に写るコリメータの開口部の縁部の影がぼやけてしまい、コリメータの開口部の正確な形状が得られないという問題が発生する。
【0005】
本発明の目的は、被照射体に写る光からコリメータの開口部の正確な形状を得ることができる荷電粒子線照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被照射体に荷電粒子線を照射する照射部と、照射部から照射される荷電粒子線の照射範囲を設定するコリメータとを備えた荷電粒子線照射装置において、コリメータの開口部に対して光を照射するための複数の光源部と、照射部とコリメータとの間に配置され、複数の光源部から出射された光をそれぞれコリメータの開口部に向けて反射させる複数の凹面鏡と、複数の凹面鏡を荷電粒子線の照射軸に対して進退方向に移動させる駆動部とを備え、光源部は、凹面鏡で反射される光の照射範囲外において凹面鏡の焦点位置に配置されており、複数の凹面鏡は、複数の光源部から出射された光をそれぞれコリメータの開口部に対して平行光となるように反射させることを特徴とするものである。
【0007】
このように本発明の荷電粒子線照射装置においては、照射部から被照射体に荷電粒子線を照射する前に、複数の光源部から複数の凹面鏡を介してコリメータの開口部に対して光を照射し、その時に被照射体に写る光(影)によってコリメータの開口部の形状を確認する。具体的には、駆動部によって照射部から照射される荷電粒子線の照射領域まで複数の凹面鏡を移動させ、その状態で複数の光源部から光を出射させる。すると、各光源部から出射された光は、対応する凹面鏡で反射されてコリメータの開口部に向かうようになる。このとき、各凹面鏡で反射された光は平行光となるため、被照射体に写るコリメータの開口部の縁部の影がぼやけることが無い。また、光源部は凹面鏡で反射される光の照射範囲外に配置されているので、光源部の影が被照射体に写ることも無い。これにより、被照射体に写る光からコリメータの開口部の形状を正確に得ることができる。
【0008】
好ましくは、凹面鏡は、複数の凹面鏡で反射された各平行光の断面積の合計がコリメータの開口部の面積よりも大きくなるような寸法を有している。この場合には、コリメータの開口部の面積にかかわらず、各凹面鏡で反射された平行光がコリメータの開口部全体を通過することになるので、被照射体に写る光からコリメータの開口部の形状をより正確に得ることができる。
【0009】
また、好ましくは、コリメータは、被照射体毎に製作され、被照射体の照射目標物の形状及び寸法に合った開口部を有する被照射体コリメータと、被照射体コリメータと照射部との間に配置され、形状及び寸法が可変の開口部を有するマルチリーフコリメータとを有し、複数の凹面鏡は、複数の光源部から出射された光をそれぞれ反射させることにより、当該光をマルチリーフコリメータの開口部を通過させて被照射体コリメータの開口部に照射させる。被照射体コリメータは、例えば荷電粒子線照射装置の筐体に対して着脱可能となっている。この場合、被照射体コリメータの使用時に、被照射体に対応する被照射体コリメータが筐体に取り付けられることになる。このとき、複数の凹面鏡で反射された光をマルチリーフコリメータの開口部を通過させて被照射体コリメータの開口部に対して照射し、その時に被照射体に写る影の形状と例えば予め画像や写真に取り込んでおいた照射目標物(患部)の形状とを比較することにより、被照射体コリメータが筐体に正しく取り付けられているか否かを確認することができる。
【0010】
このとき、好ましくは、マルチリーフコリメータの開口部を撮像する撮像部を更に備え、撮像部は、複数の凹面鏡と共に移動可能となるように設けられている。この場合には、駆動部によって照射部から照射される荷電粒子線の照射領域まで撮像部を複数の凹面鏡と共に移動させ、その状態で撮像部によりマルチリーフコリメータの開口部を撮像する。このとき、各光源部から出射された光によりマルチリーフコリメータの開口部が照らされるので、マルチリーフコリメータの開口部の鮮明な画像が得られる。従って、マルチリーフコリメータの開口部の画像から、マルチリーフコリメータの開口部の正確な形状を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被照射体に写る光からコリメータの開口部の正確な形状を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る荷電粒子線照射装置の一実施形態を備えた荷電粒子線治療装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示した荷電粒子線治療装置の概略構成図である。
【図3】図2に示したコリメータ形状確認ユニットを駆動制御系と共に示す構成図である。
【図4】図2に示したコリメータ形状確認ユニットが形状確認位置及び退避位置にある状態を示す概略図である。
【図5】従来一般の凹面鏡と図4に示した凹面鏡との構成の違いを比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る荷電粒子線照射装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る荷電粒子線照射装置の一実施形態を備えた荷電粒子線治療装置を示す斜視図であり、図2は、図1に示した荷電粒子線治療装置の概略構成図である。各図において、荷電粒子線治療装置1は、例えば患者(被照射体)Aの体内の患部である腫瘍部(照射目標物)Bに対して荷電粒子線Pを照射して、がん治療を行う装置である。荷電粒子線としては、例えば陽子線や重粒子線等が挙げられる。
【0015】
荷電粒子線治療装置1は、治療台2を取り囲むように設けられた回転ガントリ3と、この回転ガントリ3に取り付けられ、回転ガントリ3によって治療台2の回りを回転可能な荷電粒子線照射装置4とを備えている。
【0016】
また、荷電粒子線治療装置1は、サイクロトロン(加速器)5を更に備えている。サイクロトロン5は、回転ガントリ3から離れた位置に設置され、イオン源(図示せず)で生成された荷電粒子線を加速させて出射する。サイクロトロン5から出射された荷電粒子線は、ビーム輸送系(図示せず)を介して荷電粒子線照射装置4に供給される。なお、サイクロトロン5は、回転ガントリ3と一体的に回転させることも可能である。
【0017】
荷電粒子線照射装置4は、荷電粒子線Pの照射方向に順に配置された散乱体6、リッジフィルタ7、マルチリーフコリメータ8及び患者コリメータ(被照射体コリメータ)20を有している。散乱体6、リッジフィルタ7及びマルチリーフコリメータ8は、荷電粒子線照射装置4の筐体4aに取り付けられている。
【0018】
散乱体6は、鉛板等で形成され、サイクロトロン5から供給された荷電粒子線を幅広いビームに拡大させるものである。リッジフィルタ7は、散乱体6により拡大された荷電粒子線の線量分布を調整するものである。具体的には、リッジフィルタ7は、患者Aの体内の腫瘍部Bの厚さ(照射方向の長さ)に対応するように荷電粒子線に拡大ブラッグピーク(SOBP)を与える。このような散乱体6及びリッジフィルタ7は、荷電粒子線Pを照射する照射部を構成している。
【0019】
マルチリーフコリメータ8は、患者Aの体内の腫瘍部Bの形状に合わせて荷電粒子線Pの照射範囲(照射野)を設定するものである。具体的には、マルチリーフコリメータ8は、例えば真鍮製の多数のリーフからなる1対のリーフ群8a,8bを有している。リーフ群8a,8bは、互いに突き合わされるように配置されている。これらのリーフ群8a,8b間には、荷電粒子線Pを通過させる開口部8cが形成されている。リーフ群8a,8bのリーフを個別に長手方向に進退させることで、開口部8cの位置、形状及び面積(寸法)を変化させることができる。なお、マルチリーフコリメータ8は、例えば患者Aの体内の腫瘍部Bが大きい場合に使用される。
【0020】
患者コリメータ20は、マルチリーフコリメータ8の下方において荷電粒子線照射装置4の筐体4aに着脱可能に取り付けられている。患者コリメータ20は、マルチリーフコリメータ8と同様に、患者Aの体内の腫瘍部Bの形状に合わせて荷電粒子線Pの照射範囲を設定するものである。患者コリメータ20は、患者A毎に製作され、患者Aが変わるごとに交換される。患者コリメータ20の開口部20aは、患者Aの体内の腫瘍部Bに合った寸法及び形状を有している。マルチリーフコリメータ8が使用されるときは、患者コリメータ20は筐体4aから取り外される。なお、患者コリメータ20が使用されるときは、マルチリーフコリメータ8の開口部8cを実際の腫瘍部Bよりも大きくする。
【0021】
また、荷電粒子線照射装置4は、患者コリメータ20の開口部20aに対して光を照射するための2つの光源部9を有している。光源部9は、例えばLEDで構成され、可視光や紫外線等を出射する。
【0022】
リッジフィルタ7とマルチリーフコリメータ8との間には、荷電粒子線Pの照射軸Qに対して進退可能なコリメータ形状確認ユニット10が配置されている。コリメータ形状確認ユニット10は、図2及び図3に示すように、例えば平板状の取付ブラケット11を有している。なお、図3は、コリメータ形状確認ユニット10をマルチリーフコリメータ8側から見た図である。
【0023】
取付ブラケット11の裏面には、各光源部9から出射された光をマルチリーフコリメータ8の開口部8c及び患者コリメータ20の開口部20aに向けて反射させる2枚の凹面鏡12が取り付けられている。これらの凹面鏡12は、図4に示すように、互いに接触した状態で並ぶように専用の取付台13を介して取付ブラケット11に取り付けられている。各凹面鏡12は、湾曲した内側の曲面が患者コリメータ20側(荷電粒子線Pの照射方向)を向いた状態から所定の角度だけ外側に傾くように配置されている。なお、凹面鏡12は、湾曲した内側の曲面が鏡面仕上げ加工された放物面となっている。
【0024】
上記の光源部9は、図4(a)に示すように、凹面鏡12で反射される光の照射範囲S外において凹面鏡12の焦点位置に配置されている。これにより、各光源部9から出射されて対応する凹面鏡12で反射された光は、それぞれ平行光として患者コリメータ20の開口部20aに向かうようになる。そして、その平行光は、患者コリメータ20の開口部20aを通って患者Aの体表に当たる。
【0025】
このとき、2枚の凹面鏡12は、患者コリメータ20の開口部20a全体を覆うように構成されている。つまり、凹面鏡12は、2枚の凹面鏡12で反射された各平行光の断面積の合計が患者コリメータ20の開口部20aの面積よりも大きくなるような寸法を有している。これにより、各凹面鏡12で反射された平行光は、患者コリメータ20の開口部20a全体を通過して患者Aの体表に当たる。従って、患者Aの体表に当たる光(影)から、患者コリメータ20の開口部20aの形状が目視で分かるようになる。
【0026】
また、取付ブラケット11の裏面には、図2及び図3に示すように、撮像カメラ(撮像部)14及び遮蔽壁15が各凹面鏡12を挟むように取り付けられている。撮像カメラ14は、例えばCCDカメラで構成され、マルチリーフコリメータ8の開口部8cを撮像する。遮蔽壁15は、鉛板等で形成され、放射線に弱い撮像カメラ14を荷電粒子線Pから保護する。なお、遮蔽壁15としては、例えば撮像カメラ14を取り囲むような構造等としても良い。
【0027】
取付ブラケット11の両端部には、スライド部16がそれぞれ設けられている。また、取付ブラケット11の両側には、スライド部16を貫通し、荷電粒子線Pの照射軸Qに対して垂直な方向に延びるガイドロッド17がそれぞれ配置されている。ガイドロッド17は、筐体4aに固定されている。これにより、コリメータ形状確認ユニット10は、各ガイドロッド17に沿って、荷電粒子線Pの照射軸Qを含む照射領域Rに対応する形状確認位置(図3中の2点鎖線参照)と荷電粒子線Pの照射軸Qを含む照射領域Rから離れた退避位置との間で移動可能である。なお、コリメータ形状確認ユニット10は、通常は図3及び図4(b)に示すような退避位置にある。
【0028】
また、荷電粒子線照射装置4は、図3に示すように、コリメータ形状確認ユニット10を退避位置と形状確認位置との間で往復移動させる駆動部18と、各光源部9、撮像カメラ14及び駆動部18と接続されたコントローラ19とを更に有している。
【0029】
駆動部18は、エアーシリンダ、空気源及び電磁弁等から構成されている。この場合には、エアーシリンダのピストンが一方のスライド部16と連結されることとなる。なお、駆動部18としては、それ以外にも、ボールネジ及び電磁モータ等で構成しても良い。
【0030】
コントローラ19は、各光源部9及び駆動部18を制御すると共に、撮像カメラ14により取得されたマルチリーフコリメータ8の開口部8cの撮像画像を表示部(図示せず)に画面表示させる。
【0031】
以上のように構成した荷電粒子線治療装置1において、患者コリメータ20を使用する場合には、まず患者Aの体内の腫瘍部Bに対して荷電粒子線Pを照射する直前に、コントローラ19によって駆動部18を制御することで、図4(a)に示すように、コリメータ形状確認ユニット10を退避位置から形状確認位置に移動させる。
【0032】
そして、その状態で、コントローラ19によって各光源部9を制御することで、各光源部9から光を出射させる。このとき、マルチリーフコリメータ8の開口部8cは大きく開かれている。すると、各光源部9から出射された光は対応する凹面鏡12で反射されて平行光となり、その平行光がマルチリーフコリメータ8の開口部8c及び患者コリメータ20の開口部20aを通って患者Aの体表に到達する。
【0033】
このとき、オペレータは、患者Aの体表に写った影の形状と予め取得されている患者Aの腫瘍部Bの写真や画像データとを比較することで、筐体4aに対する患者コリメータ20の取付方向の正否が分かるようになる。なお、患者Aの体表に腫瘍部Bの形状を予め描いておいたり、或いは患者Aの体表の適当な箇所にマーカーしておき、患者Aの体表に写った影の形状と患者Aの体表に描かれた形状やマーカー位置とを比較しても良い。
【0034】
このように患者コリメータ20の取付方向の正否を確認した後、各光源部9からの光の出射を終了し、コントローラ19によって駆動部18を制御することで、図4(b)に示すように、コリメータ形状確認ユニット10を形状確認位置から退避位置に移動させる。
【0035】
このとき、患者コリメータ20が筐体4aに正しい方向で取り付けられているときは、オペレータが照射指示スイッチ(図示せず)をONとすることで、患者Aの体内の腫瘍部Bに対して荷電粒子線Pが照射されることとなる。一方、患者コリメータ20が筐体4aに正しい方向で取り付けられていないときは、オペレータは、患者コリメータ20を筐体4aから一旦取り外し、患者コリメータ20を筐体4aに対して正しい向きとした状態で再び取り付ける。その後、オペレータが照射指示スイッチをONとすることで、患者Aの体内の腫瘍部Bに対して荷電粒子線Pが照射されることとなる。
【0036】
また、マルチリーフコリメータ8を使用する場合には、まず患者Aの体内の腫瘍部Bに対して荷電粒子線Pを照射する直前に、上記と同様にコリメータ形状確認ユニット10を退避位置から形状確認位置に移動させ、その状態で各光源部9から光を出射させる。なお、患者コリメータ20は使用しないので、筐体4aから取り外されている。
【0037】
そして、撮像カメラ14により取得されたマルチリーフコリメータ8の開口部8cの撮像画像を入力し、その画像を画面表示させる。このとき、マルチリーフコリメータ8の開口部8cは各光源部9からの光によって照らされているので、開口部8cの鮮明な画像が得られる。従って、オペレータは、マルチリーフコリメータ8の開口部8cの撮像画像を見て、開口部8cの輪郭形状を確認する。
【0038】
このとき、マルチリーフコリメータ8の開口部8cの輪郭形状が計画通りの形状になっているときは、各光源部9からの光の出射を終了し、上記と同様にコリメータ形状確認ユニット10を形状確認位置から退避位置に移動させる。その後、患者Aの体内の腫瘍部Bに対して荷電粒子線Pが照射されることとなる。
【0039】
ところで、図5(a)に示すように、光源部9から出射された光を反射させる凹面鏡12を1枚とした場合でも、凹面鏡12で反射された光を平行光とすることができる。しかし、凹面鏡12が1枚である場合には、光の照射範囲が広くなるほど大きな凹面鏡12が必要となる。凹面鏡12が大きくなるほど、凹面鏡12は照射軸方向に大きく膨らむため、凹面鏡12の厚みDが大きくなる。このため、照射軸方向の配置スペースが狭い場合には、凹面鏡12を取り付けることが困難になることがある。
【0040】
また、凹面鏡12が1枚である場合には、凹面鏡12で反射される光の照射範囲内に光源部9を配置せざるを得ない。このため、凹面鏡12で反射された光(平行光)が患者コリメータ20の開口部20aを通って患者Aの体表に当たったときには、光源部9の影が写ってしまう。
【0041】
これに対し本実施形態では、図5(b)に示すように、2枚の凹面鏡12を互いに外側に傾けた状態で並べて配置すると共に、2つの光源部9を各凹面鏡12の焦点位置に配置することで、各光源部9から出射された光をそれぞれ凹面鏡12で反射させて平行光を作る構成としたので、凹面鏡12が1枚である場合に比べて凹面鏡12の厚みDが抑えられる。これにより、凹面鏡12の省スペース化が図られるため、照射軸方向の配置スペースが狭い場合でも、凹面鏡12を取り付けることが可能となる。
【0042】
また、2枚の凹面鏡12を使用して平行光を作ることにより、各光源部9が凹面鏡12で反射される光の照射範囲の外に配置されることとなる。従って、凹面鏡12で反射された光(平行光)が患者コリメータ20の開口部20aを通って患者Aの体表に当たったときに、光源部9の影が写ることが無くなる。
【0043】
以上のように本実施形態にあっては、2つの光源部9から出射された光を患者コリメータ20の開口部20aに向けてそれぞれ反射させる2枚の凹面鏡12を荷電粒子線Pの照射軸Qに対して進退可能に設けると共に、2つの光源部9を各凹面鏡12の焦点位置に配置することで、各凹面鏡12で反射された光が広がらずに平行光となるようにしたので、患者コリメータ20の開口部20aの縁部の影が患者Aの体表にぼやけて写ることが無い。また、上記のように光源部9は凹面鏡12で反射される光の照射範囲の外に配置されているので、光源部9の影が患者Aの体表に写ることも無い。これにより、患者Aの体表に写る影から、患者コリメータ20の開口部20aの正確な形状を得ることができる。その結果、上述したように例えば患者Aの体表に写る影と予め画像や写真に取り込んでおいた患者Aの腫瘍部Bの形状とを比較することで、患者コリメータ20が筐体4aに正しく取り付けられているかどうかを正確に把握することが可能となる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、光源部9及び凹面鏡12を2つずつ設ける構成としたが、光源部9及び凹面鏡12の数としてはそれぞれ3つ以上あっても良い。
【0045】
また、上記実施形態では、患者コリメータ20の開口部20aに向けて光を照射し、患者Aの体表に写った光(影)から当該開口部20aの形状を確認するようにしたが、マルチリーフコリメータ8の開口部8cに向けて光を照射し、患者Aの体表に写った光から当該開口部8cの形状を確認することも可能である。
【0046】
さらに、上記実施形態の荷電粒子線照射装置4では、マルチリーフコリメータ8及び患者コリメータ20の両方が具備されているが、マルチリーフコリメータ8及び患者コリメータ20の少なくとも一方が備わっていれば良く、必ずしも両コリメータを配置可能となっている必要はない。
【符号の説明】
【0047】
4…荷電粒子線照射装置、6…散乱体(照射部)、7…リッジフィルタ(照射部)、8…マルチリーフコリメータ、8c…開口部、9…光源部、12…凹面鏡、14…撮像カメラ(撮像部)、18…駆動部、20…患者コリメータ(被照射体コリメータ)、20a…開口部、A…患者(被照射体)、B…腫瘍部(照射目標物)、P…荷電粒子線、Q…照射軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照射体に荷電粒子線を照射する照射部と、前記照射部から照射される荷電粒子線の照射範囲を設定するコリメータとを備えた荷電粒子線照射装置において、
前記コリメータの開口部に対して光を照射するための複数の光源部と、
前記照射部と前記コリメータとの間に配置され、前記複数の光源部から出射された光をそれぞれ前記コリメータの開口部に向けて反射させる複数の凹面鏡と、
前記複数の凹面鏡を前記荷電粒子線の照射軸に対して進退方向に移動させる駆動部とを備え、
前記光源部は、前記凹面鏡で反射される光の照射範囲外において前記凹面鏡の焦点位置に配置されており、
前記複数の凹面鏡は、前記複数の光源部から出射された光をそれぞれ前記コリメータの開口部に対して平行光となるように反射させることを特徴とする荷電粒子線照射装置。
【請求項2】
前記凹面鏡は、前記複数の凹面鏡で反射された各平行光の断面積の合計が前記コリメータの開口部の面積よりも大きくなるような寸法を有していることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線照射装置。
【請求項3】
前記コリメータは、前記被照射体毎に製作され、前記被照射体の照射目標物の形状及び寸法に合った開口部を有する被照射体コリメータと、前記被照射体コリメータと前記照射部との間に配置され、形状及び寸法が可変の開口部を有するマルチリーフコリメータとを有し、
前記複数の凹面鏡は、前記複数の光源部から出射された光をそれぞれ反射させることにより、当該光を前記マルチリーフコリメータの開口部を通過させて前記被照射体コリメータの開口部に照射させることを特徴とする請求項1または2記載の荷電粒子線照射装置。
【請求項4】
前記マルチリーフコリメータの開口部を撮像する撮像部を更に備え、
前記撮像部は、前記複数の凹面鏡と共に移動可能となるように設けられていることを特徴とする請求項3記載の荷電粒子線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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