説明

荷電粒子線照射装置

【課題】メンテナンス性の高い荷電粒子線照射装置を提供する。
【解決手段】本発明は、荷電粒子線を被照射体へ照射する陽子線治療装置10であって、荷電粒子を加速して荷電粒子線を出射するサイクロトロン2と、荷電粒子線を被照射体に向けて照射する照射ノズル11と、サイクロトロン2と照射ノズル11とを繋ぐ輸送ライン3と、照射ノズル11が配置され、輸送ライン3を支持すると共に、所定の中心軸線Pを中心として回転又は揺動が可能なガントリー12と、X線照射部61及びX線検出部62を有し、被照射体のX線画像を取得するX線撮影装置60と、を備え、X線照射部61及びX線検出部62のうち少なくとも一方を制御するX線撮影用制御器89は、ガントリー12の外周上に設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線を照射する荷電粒子線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この分野の技術文献としては、例えば特開2007−83059号公報が知られている。この公報には、荷電粒子を加速して荷電粒子線を出射するサイクロトロンと、患者に対して荷電粒子線を照射する照射部が配置されたガントリーと、サイクロトロンから出射された荷電粒子線を照射部まで輸送する輸送ラインと、患者のX線画像を取得するX線画像取得装置と、を備えた荷電粒子線照射装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−83059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、荷電粒子線照射装置が備えるX線画像取得装置は、ガントリー内の照射室にX線照射部及びX線検出部が配置され、それらの制御部がガントリー内で照射室より奥側の位置に配置される構成が一般的である。しかしながら、この構成においては、制御部のメンテナンス時に作業員がガントリーの奥まで入り込む必要があり、制御部へのアクセスが容易ではない。更に、ガントリーが小型化するほど、作業用スペースも制限され、メンテナンス性が悪化するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、メンテナンス性の高い荷電粒子線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、荷電粒子線を被照射体へ照射する荷電粒子線照射装置であって、荷電粒子を加速して荷電粒子線を出射する加速器と、荷電粒子線を被照射体に向けて照射する照射部と、加速器と照射部とを繋ぐ輸送ラインと、照射部が配置され、輸送ラインの一部分を支持すると共に、中心軸線を中心として回転又は揺動が可能な架台と、X線照射部及びX線検出部を有し、被照射体のX線画像を取得するX線画像取得手段と、を備え、X線照射部及びX線検出部のうち少なくとも一方を制御する第1の制御部が架台の外周上に設置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る荷電粒子線照射装置によれば、第1の制御部が架台外に設置されているので、第1の制御部が架台内に設置されている従来の構成と比べて、メンテナンス時における第1の制御部へのアクセスが容易になる。しかも、架台の外周上に設置することで、架台の回転又は揺動により第1の制御部の位置を調節することができるため、第1の制御部に対するメンテナンス性を大幅に向上させることができる。また、第1の制御部のためのスペースを架台内に確保する必要がなくなるので、装置の小型化に有利である。
【0008】
本発明に係る荷電粒子線照射装置において、輸送ラインは、中心軸線の延在方向に進行する荷電粒子線を偏向する第1偏向部と、第1偏向部の下流側に設けられ、荷電粒子線を中心軸線と直交する方向へ偏向する第2偏向部と、第2偏向部の下流側に設けられ、荷電粒子線を中心軸線回りで旋回させる第3偏向部と、第3偏向部の下流側に設けられ、荷電粒子線を中心軸線側へ偏向する第4偏向部と、を有していても良い。
【0009】
本発明に係る荷電粒子線照射装置によれば、第3偏向部及び第4偏向部が架台の径方向へ荷電粒子線を偏向するため、従来の架台(中心軸線の延在方向へ荷電粒子線を偏向させているガントリー)と比べて、中心軸線の延在方向における架台の長さを短くすることができる。中心軸線の延在方向における架台の長さが短くなると、架台内の奥側のスペースが狭くなり、この狭いスペースの中に第1の制御部を収めようとすると、わざわざ架台を長くする必要が生じてしまう。本発明に係る荷電粒子線照射装置によれば、第1の制御部を架台の外周上に配置することで、中心軸線の延在方向における架台の長さを抑制しつつ、第1の制御部を設けることができる。
【0010】
本発明に係る荷電粒子線照射装置においては、架台の外周に取り付けられたカウンターウェイトを更に備え、カウンターウェイトは、輸送ラインのうち架台の外周から張り出した張出部と対向する位置に取り付けられており、第1の制御部は、張出部とカウンターウェイトとの間に設置されていても良い。
【0011】
本発明に係る荷電粒子線照射装置によれば、輸送ラインの張出部とカウンターウェイトとの間に第1の制御部が設置されているので、架台の外周の空きスペースを効率良く利用することができ、装置の小型化に有利である。
【0012】
本発明に係る荷電粒子線照射装置においては、第1の制御部は、中心軸線の延在方向から見て、張出部のうち中心軸線から最も離れた最外端が中心軸線を中心として描く回転軌道の内側に収まっていても良い。
【0013】
本発明に係る荷電粒子線照射装置によれば、張出部の最外端の描く回転軌道の内側に第1の制御部が収まっているので、第1の制御部を外に配置したことにより装置が径方向に大型化することを避けることができる。
【0014】
本発明に係る荷電粒子線照射装置においては、被照射体の内部で発生したガンマ線を検出するPETカメラを有するPET装置を更に備え、PETカメラを制御する第2の制御部が架台の外周上に設置されていても良い。
本発明に係る荷電粒子線照射装置によれば、第2の制御部が架台の外周上に設置されているので、第2の制御部が架台内に設置されている構成と比べて、メンテナンス時における第2の制御部へのアクセスが容易になる。しかも、架台の外周上に設置することで、架台の回転又は揺動により第2の制御部の位置を調節することができるため、第2の制御部に対するメンテナンス性を大幅に向上させることができる。また、架台内に制御部のためのスペースを確保する必要がないので、装置の小型化に有利である。
【0015】
或いは、本発明に係る荷電粒子線照射装置においては、被照射体の内部で発生したガンマ線を検出するPETカメラを有するPET装置を更に備え、PETカメラを制御する第2の制御部が、架台の外周上で張出部とカウンターウェイトとの間に設置されていても良い。
本発明に係る荷電粒子線照射装置によれば、輸送ラインの張出部とカウンターウェイトとの間に第2の制御部が設置されているので、架台の外周の空きスペースを効率良く利用することができ、装置の小型化に有利である。
【0016】
本発明に係る荷電粒子線照射装置においては、PET装置の第2の制御部は、中心軸線の延在方向から見て、張出部のうち中心軸線から最も離れた最外端が中心軸線を中心として描く回転軌道の内側に収まっていても良い。
本発明に係る荷電粒子線照射装置によれば、張出部の最外端の描く回転軌道の内側に第2の制御部が収まっているので、第2の制御部を架台の外周に配置したことにより装置が径方向に大型化することを避けることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、メンテナンス性の高い荷電粒子線照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る陽子線治療装置を備えた陽子線治療システムの概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る陽子線治療装置の正面図である。
【図3】本実施形態に係る陽子線治療装置の背面図である。
【図4】本実施形態に係る陽子線治療装置の右側面図である。
【図5】本実施形態に係る陽子線治療装置の左側面図である。
【図6】本実施形態に係る陽子線治療装置を斜め後方から示す斜視図である。
【図7】本実施形態に係る陽子線治療装置のガントリーを中心軸線に沿って水平方向に切った概略断面図である。
【図8】ガントリーに取り付けられたビーム輸送ライン及びビーム照射ノズルを示す斜視図である。
【図9】本発実施形態に係る陽子線治療装置のビーム照射ノズルの正面図である。
【図10】本実施形態に係る陽子線治療装置の制御器集合部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る荷電粒子線照射装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面における寸法、形状、構成要素間の大小関係は実際の製品と必ずしも同一ではない。
【0020】
本実施形態では、陽子線治療装置(荷電粒子線照射装置)を備えた陽子線治療システムについて説明する。陽子線治療装置は、例えばがん治療に適用されるものであり、患者の体内の腫瘍(被照射体)に対して、陽子ビーム(荷電粒子線)を照射する装置である。
【0021】
図1に示すように、陽子線治療システム1は、陽子ビームを生成するサイクロトロン(加速器)2、サイクロトロン2から出射された陽子ビームを輸送するビーム輸送ライン3、ビーム輸送ライン3によって輸送された陽子ビームを患者の腫瘍へ照射する陽子線治療装置10を有する。そして、陽子線治療システム1の各機器は、建屋5内に収容されている。
【0022】
サイクロトロン2で加速された陽子ビームは、ビーム輸送ライン3に沿って経路が偏向され、陽子線治療装置10に供給される。ビーム輸送ライン3には、陽子ビームの経路を偏向させるための偏向電磁石や、ビーム成形を行う四重極電磁石等が設けられている。
【0023】
図2〜図8に示すように、陽子線治療装置10は、ビーム輸送ライン3によって導入され陽子ビームを輸送するビーム導入ライン31と、ビーム導入ライン31によって輸送された陽子ビームを被照射体へ照射するビーム照射ノズル11と、ビーム導入ライン31及びビーム照射ノズル11を支持するガントリー(架台)12を備えている。
【0024】
図7に示すように、ガントリー12は、所定の中心軸線Pを中心として回転可能に構成されており、円筒本体部13、コーン部14、及び第2円筒部15を有している。これらの円筒本体部13、コーン部14、第2円筒部15は、中心軸線Pに沿って配置され、互いに連結されている。以下、円筒本体部13が配置されている側をガントリー12の正面側、第2円筒部15が配置されている側をガントリー12の背面側として説明する。
【0025】
円筒本体部13及び第2円筒部15は、薄肉構造の円筒体である。第2円筒部15は、円筒本体部13より小径とされ、円筒本体部13及び第2円筒部15は、円筒本体部13から第2円筒部15に向かって縮径するコーン部14によって連結されている。
【0026】
円筒本体部13の外側には、円筒本体部13の外周を囲むリング部13a,13bが設けられている。図2〜図5に示すように、円筒本体部13は、下方に配置されたローラー装置20によって回転駆動可能に支持されている。ローラー装置20は、ガントリー12を回転駆動させるための駆動手段として機能する。
【0027】
円筒本体部13内には、陽子線の照射(治療)を行うための照射室21が形成されている。照射室21には、円筒本体部13の正面側から入ることができる。一方、円筒本体部13の背面側には、照射室21を区切る背面パネル16が設けられている。照射室21内には、患者が横たわる治療台22が配置可能となっている。治療台22は、ロボットアーム23によって移動可能とされている。治療を実施していない通常時には、治療台22はガントリー12(照射室21)の外に配置され、治療を実施する際に治療台22は照射室21内に配置される。
【0028】
照射ノズル11は、円筒本体部13の内面側に固定され、円筒本体部13と共に中心軸線P回りに回転する。照射ノズル11は、円筒本体部13の回転と共に移動し、陽子ビームの出射方向が変更される。
【0029】
陽子線治療装置10のビーム輸送ラインであるビーム導入ライン31は、サイクロトロン2から出射された陽子ビームを輸送するビーム輸送ライン3と接続され、ビーム輸送ライン3によって輸送された陽子ビームを照射ノズル11に導入する。
【0030】
図8は、ガントリー12に取り付けられたビーム導入ライン31及び照射ノズル11を示す斜視図である。ビーム導入ライン31は、ガントリー12の中心軸線Pの延在方向に進行する陽子ビームの進行方向を偏向する第1ベンド部32と、第1ベンド部32の下流に設けられ、陽子ビームBを中心軸線Pの延在方向に対して傾斜させて進行させる傾斜部33と、傾斜部33の下流に設けられ、中心軸線Pと直交する方向へ陽子ビームBの進行方向を偏向する第2ベンド部34と、第2ベンド部34の下流に設けられ、陽子ビームBの進行方向を中心軸線P回りで旋回させる第3ベンド部35と、第3ベンド部35の下流に設けられ、陽子ビームBを照射ノズル11の上方(図2に示す状態における上方)へ進行させる直線部36と、直線部36の下流に設けられ、陽子ビームBを軸心側(中心軸線P側)へ湾曲させる第4ベンド部37と、第4ベンド部37の下流に設けられ、陽子ビームBを照射ノズル11へ進行させる直線部38と、を備える。
【0031】
第1ベンド部32は、陽子ビームBを湾曲させて進行方向を45°偏向させる偏向電磁石によって構成されている。傾斜部33は、四重極電磁石41、ステアリング電磁石42、及びプロファイルモニター43などの光学要素を有する構成とされている。四重極電磁石41は、陽子ビームBの照射位置でのサイズや光学上の焦点位置を調整する機能を有する。ステアリング電磁石42は、ビーム軸を平行移動する機能を有する。プロファイルモニター43は、通過する陽子ビームBの形状と位置を検出する機能を有する。
【0032】
第2ベンド部34は、陽子ビームBを湾曲させて進行方向を45度分偏向させる45度偏向電磁石によって構成されている。また、第2ベンド部34と第3ベンド部35と間には、プロファイルモニター43が配置されている。第3ベンド部35は、陽子ビームBを湾曲させて進行方向を135度分偏向させる135度偏向電磁石によって構成されている。
【0033】
直線部36は、四重極電磁石41、ステアリング電磁石42、及びプロファイルモニター43を有する。第4ベンド部37は、陽子ビームBを湾曲させて進行方向を135度分偏向させる135度偏向電磁石によって構成されている。直線部38は、四重極電磁石41及びプロファイルモニター43を有する。
【0034】
ここで、本実施形態の陽子線治療装置10では、ガントリー12に取り付けられたビーム導入ライン31の一部が、ガントリー12の筒体(円筒本体部13、コーン部14、第2円筒部15)内を通過して配置されている。ビーム輸送ライン3によって輸送された陽子ビームBは、第2円筒部15の背面側から内部へ導入され、第2円筒部15内、コーン部14内、背面パネル16及び円筒本体部13内を通過して、円筒本体部13を貫通して、円筒本体部13の外部へ導出される。
【0035】
ガントリー12は、ビーム導入ライン31を支持する第1〜第3支持部材51〜53を備えている。第1ベンド部32は、第1支持部材51によって第2円筒部15に固定され、第2支持部材52によってコーン部14に固定されている。傾斜部33は、第3支持部材53によってコーン部14に固定されている。第2ベンド部34は、円筒本体部13を貫通し、円筒本体部13によって支持されている。
【0036】
ビーム導入ライン31は、背面パネル16を貫通して円筒本体部13内へ進入し、照射室21内を通過するように配置されている。また、ガントリー12は、内部を通過するビーム導入ライン31を収容するケーシング55を備えている。ケーシング55は、ビーム導入ライン31に沿って配置され、ビーム導入ライン31を覆っている。ケーシング55は、第1〜第3支持部材51〜53を介して、又は、直接的に、円筒本体部13、コーン部14、及び第2円筒部15に固定されている。また、ケーシング55は、中性子線などの放射線を遮蔽する遮蔽材(例えば、ポリエチレンや鉛、ステンレス等など)によって構成されていることが好ましい。
【0037】
また、ビーム導入ライン31の一部は、ガントリー12の外周から張り出して、ガントリー12の径方向に突出している。ガントリー12の外周から張り出した部位をビーム導入ライン張出部31aと称する。ビーム導入ライン張出部31aには、第3ベンド部35、直線部36、及び第4ベンド部37が含まれる。ビーム導入ライン張出部31aは、支持台17によって円筒本体部13に支持されている。
【0038】
また、ガントリー12の外周上には、ガントリー12の重量バランスを取るためのカウンターウェイト18が取り付けられている。このカウンターウェイト18は、中心軸線Pを挟んでビーム導入ライン張出部31aと対向する位置に配置されている。このカウンターウェイト18を有することにより、ガントリー12の安定した回転駆動が達成できる。
【0039】
図9に示すように、陽子線治療装置10には、患者の腫瘍周辺のX線画像を取得するX線撮影装置(X線画像取得手段)60が設けられている。このX線撮影装置60は、X線照射部61、患者を透過したX線を検出するX線検出部62を備えている。X線照射部61及びX線検出部62は、ガントリー12の照射室21内に配置され、ガントリー12と共に回転を行う。
【0040】
X線照射部61は、照射室21内で照射ノズル11の筐体11aの左右に設けられている。X線照射部61は、筐体11aの左右に一つずつ設けられており、各X線照射部61は治療台22上の患者に対して斜め45°の角度でX線の照射を行う。
【0041】
X線検出部62は、例えばFPD[Flat Panel Detector]であり、X線検出部62が照射したX線の検出を行う。X線検出部62は、各X線照射部61と対になるように二つ配置されており、X線検出部62とX線照射部61とは治療台22を挟んで対向している。
【0042】
また、X線撮影装置60は、図示していない画像処理部、記録部、表示部等を備えている。画像処理部は、X線検出部62の検出結果に基づいて画像処理を行い、X線画像を生成する。記録部は、生成されたX線画像を記録する。生成されたX線画像は、表示部に表示される。このように、X線撮影装置60は、X線検出部62の検出結果に基づいて、患者のX線画像を取得し、表示部に表示する。
【0043】
また、陽子線治療装置10は、患者内の腫瘍の位置を精密に測定するためのPET[Positron Emission Tomography]装置70を備えている。PET装置70は、照射ノズル11付近に備えられた一対のPETカメラ71を有している。
【0044】
一対のPETカメラ71は、矢印Aで示すように上下移動可能に構成されており、使用時には治療台22上の患者を左右に挟む位置にまで下降する。この状態で、PETカメラ71は、患者の腫瘍から生じる消滅γ線を検出する。具体的には、患者に腫瘍に集積する放射性薬剤(例えば、11Cメチオニン)が投与(注入)され、PETカメラ71は、腫瘍(放射性薬剤の到達位置)から発生する消滅γ線の検出を行う。
【0045】
また、PET装置70は、PETカメラ71の他に、図示していない画像処理部、記録部、表示部等を備えている。画像処理部は、PETカメラ71によって取得された画像情報に基づいてPET画像を生成する。記録部は、生成されたPET画像を記録する。生成されたPET画像は、表示部に表示される。PET装置70は、消滅γ線の検出結果に基づいて腫瘍の位置を測定する。
【0046】
図2,3,5,6に示すように、陽子線治療装置10は、照射ノズル11やX線撮影装置60の制御に用いられる制御器を集めた制御器集合部80を備えている。制御器集合部80は、支持フレーム81によってガントリー12の外周上に設置されている。制御器集合部80は、ガントリー12と共に回転され、ガントリー12の回転によって位置を変更することができる。
【0047】
制御器集合部80は、図2に示すガントリー12の正面方向から見て、ビーム導入ライン張出部31aが真上に位置する場合に、ガントリー12の右側となる位置に設置されている。なお、制御器集合部80は、図2に示すガントリー12の正面方向から見て、ビーム導入ライン張出部31aが真上に位置する場合に、ガントリー12の左側となる位置にが設置されていても良い。
【0048】
また、制御器集合部80は、ガントリー12の外周上でビーム導入ライン張出部31aとカウンターウェイト18との間に設置されている。ビーム導入ライン張出部31aとカウンターウェイト18とは、中心軸線P回りで180°異なる位置に配置されている。制御器集合部80は、中心軸線P回りでビーム導入ライン張出部31a又はカウンターウェイト18から90°異なる位置に配置されている。
【0049】
更に、制御器集合部80は、図2に示すガントリー12の正面方向(中心軸線Pの延在方向)から見て、ビーム導入ライン張出部31aのうち中心軸線Pから最も離れた最外端Fが中心軸線Pを中心として描く回転軌道Cの内側に収まっている。すなわち、陽子線治療装置10のうち中心軸線Pから最も離れた端部が、制御器集合部80ではなくビーム導入ライン張出部31aの最外端Fとなるように構成されている。
【0050】
図10に、制御器集合部80及び支持フレーム81の構成を示す。図10に示されるように、支持フレーム81は、上下一対の連結部82と、連結部82によってガントリー12に連結されたフレーム体83と、を有している。連結部82は、ガントリー12及びフレーム体83をボルトによって連結している。このフレーム体83に対して制御器集合部80を構成する各機器が固定されている。
【0051】
制御器集合部80は、分電盤84、モニタ用分電盤85、プロファイルモニター用制御器86、第1ドーズモニタ制御器87、第2ドーズモニタ制御器88、X線撮影用制御器(第1の制御器)89、PET用制御器(第2の制御器)90等から構成されている。なお、制御器集合部80の構成は、上述したものに限られず、例えば平坦度モニタ制御器などを加えても良い。
【0052】
プロファイルモニター用制御器86、第1ドーズモニタ制御器87、及び第2ドーズモニタ制御器88は、照射ノズル11内に配置された各種モニタ(図示せず)を制御するものである。これらの制御器86〜88が、各種モニタから検出信号を受け取ることで、照射ノズル11を通る陽子ビームの状態が検出される。
【0053】
X線撮影用制御器89は、X線撮影装置60を構成する制御器である。X線撮影用制御器89は、X線照射部61の照射制御及びX線検出部62の検出制御を行う。X線撮影用制御器89は、必ずしもX線照射部61及びX線検出部62の両方を制御する必要はなく、どちらか一方のみの制御でも良い。また、単体ではなく、別体で設けられた制御装置等と協働で制御を行う。例えば、検出信号に基づくX線画像生成の演算処理等は別体の演算装置により行われる。なお、単体で制御を行う態様であっても良い。
【0054】
PET用制御器70は、PET装置70を構成する制御器である。PET用制御器70は、PETカメラ71の制御を行う。PET用制御器70も、別体で設けられた制御装置等と協働で制御を行うが、単体で制御を行う態様であっても良い。
【0055】
以上説明した陽子線治療装置10によれば、X線撮影用制御器89やPET用制御器90を含む制御器集合部80がガントリー12の外に設置されているので、制御器集合部80がガントリー12内に設置されている従来の構成と比べて、メンテナンス時における制御器集合部80へのアクセスが容易になる。しかも、ガントリー12の外周上に設置することで、ガントリー12の回転により制御器集合部80の位置を調節することができるため、制御器集合部80に対するメンテナンス性を大幅に向上させることができる。また、制御器集合部80のためのスペースをガントリー12内に確保する必要がなくなるので、装置の小型化に有利である。
【0056】
この陽子線治療装置10によれば、第3ベンド部35及び第4ベンド部37がガントリー12の径方向へ陽子ビームを偏向するため、従来のガントリー(中心軸線Pの延在方向へ荷電粒子線を偏向させているガントリー)と比べて、中心軸線Pの延在方向におけるガントリー12の長さを短くすることができる。中心軸線Pの延在方向におけるガントリー12の長さが短くなると、ガントリー12内の奥側のスペースが狭くなり、この狭いスペースの中に制御器集合部80を収めようとすると、わざわざガントリー12を長くする必要が生じてしまう。この陽子線治療装置10によれば、制御器集合部80をガントリー12の外周上に配置することで、中心軸線Pの延在方向におけるガントリー12の長さを抑制しつつ、制御器集合部80を設けることができる。
【0057】
また、この陽子線治療装置10によれば、中心軸線Pからガントリー12の径方向へ離間する輸送ライン3の傾斜部33が、ガントリー12の筒体内(例えば、エンクロージャーや照射室)を通過するように配置されているため、輸送ライン3が筒体内を避けて配置されている場合と比べて、装置の小型化(短軸化)を図ることができる。
【0058】
更に、この陽子線治療装置10によれば、ビーム導入ライン張出部31aとカウンターウェイト18との間に制御器集合部80が設置されているので、ガントリー12の外周の空きスペースを効率良く利用することができ、装置の小型化に有利である。
【0059】
また、この陽子線治療装置10によれば、ビーム導入ライン張出部31aの最外端Fの描く回転軌道Cの内側に制御器集合部80が収まっているので、制御器集合部80を外に配置したことにより装置が径方向に大型化することを避けることができる。
【0060】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、短軸化を図ることのできる特有の構成の陽子線治療装置(コークスクリュー型陽子線治療装置)ではなく、周知である種々の荷電粒子線照射装置に対しても好適に適用することができる。
【0061】
また、制御器集合部80の構成は、上述したものに限られない。モニタ用の制御器86〜88やPET用制御器90についてはガントリー12とは別の場所に設置しても良い。なお、陽子線治療装置10がPET装置70を備えない場合には、当然にPET用制御器90も備える必要はない。
【0062】
更に、制御器集合部80の形状や寸法は、上述したものに限られない。制御器集合部80の寸法は、中心軸線Pの延在方向でガントリー12から突出することなく、中心軸線Pに直交する方向(ガントリー12の径方向)で回転軌道Cの内側に収まるものであれば良い。また、制御器集合部80の配置も上述したものに限られない。制御器集合部80は、ガントリー12の外周上に設置されていれば良く、ビーム導入ライン張出部31a及びカウンターウェイト18の間に設置される場合にはどちらかに片寄った位置に設置されても良い。
【0063】
また、特許請求の範囲に記載の加速器はサイクロトロンに限定されず、シンクロトロンやシンクロサイクロトロンでも良い。また、荷電粒子腺は陽子ビームに限定されず、炭素ビーム(重粒子ビーム)などでも良い。また、ガントリー12の筒体は、円筒に限らず他の筒状でもよい。ガントリー12は、360°回転するものに限定されず、360°未満の揺動を行うものであっても良い。
【0064】
また、筒体の一部、例えば、側壁に切欠き部が設けられている構成でも良い。なお、筒体を通過するように配置されているとは、筒体に設けられた切欠き部にビーム導入ライン31が配置されているものも含む。
【0065】
また、背面パネルに切欠き部が設けられている構成でも良い。なお、背面パネルを通過するように配置されているとは、背面パネルに設けられた切欠き部にビーム導入ライン31が配置されているものも含む。背面パネルに設けられた切欠き部や開口部を通過するようにビーム導入ライン31が配置されていれば良い。
【0066】
また、上記実施形態では、傾斜部が直線状に形成されているが、例えば、緩やかに湾曲している傾斜部でも良い。
【0067】
更に、X線撮影用制御器を支持する支持フレームと、PET制御器を支持する支持フレームとを別体として設けても良い。その他、支持フレーム81の連結部82をガントリー12及びフレーム体83に連結する手段は、ボルトに限らず、溶接や一体成形等であっても良い。また、連結部82は必ずしも要せず、フレーム体83をガントリー12に直接連結しても良い。
【符号の説明】
【0068】
1…陽子線治療システム 2…サイクロトロン 3…ビーム輸送ライン 5…建屋 10…陽子線治療装置(荷電粒子線照射装置) 11…照射ノズル(照射部) 12…ガントリー 16…背面パネル 21…照射室 31…ビーム導入ライン(輸送ライン) 31a…ビーム導入ライン張出部 32…第1ベンド部(第1偏向部) 33…傾斜部 34…第2ベンド部(第2偏向部) 35…第3ベンド部(第3偏向部) 36…直線部 37…第4ベンド部(第4偏向部) 38…直線部 51〜53…支持部材 55…ケーシング 60…線撮影装置 61…X線照射部 62…X線検出部 70…PET装置 71…PETカメラ 80…制御器集合部 81…支持フレーム 84…分電盤 85…モニタ用分電盤 86…プロファイルモニター用制御器 87…第1ドーズモニタ制御器 88…第2ドーズモニタ制御器 89…X線撮影用制御器(第1の制御部) 90…PET用制御器(第2の制御部) F…最外端 C…回転軌道 B…陽子ビーム P…中心軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線を被照射体へ照射する荷電粒子線照射装置であって、
荷電粒子を加速して前記荷電粒子線を出射する加速器と、
前記荷電粒子線を前記被照射体に向けて照射する照射部と、
前記加速器と前記照射部とを繋ぐ輸送ラインと、
前記照射部が配置され、前記輸送ラインの一部分を支持すると共に、中心軸線を中心として回転又は揺動が可能な架台と、
X線照射部及びX線検出部を有し、前記被照射体のX線画像を取得するX線画像取得手段と、
を備え、
前記X線照射部及び前記X線検出部のうち少なくとも一方を制御する第1の制御部が前記架台の外周上に設置されていることを特徴とする荷電粒子線照射装置。
【請求項2】
前記輸送ラインは、
前記中心軸線の延在方向に進行する前記荷電粒子線を偏向する第1偏向部と、
前記第1偏向部の下流側に設けられ、前記荷電粒子線を前記中心軸線と直交する方向へ偏向する第2偏向部と、
前記第2偏向部の下流側に設けられ、前記荷電粒子線を前記中心軸線回りで旋回させる第3偏向部と、
前記第3偏向部の下流側に設けられ、前記荷電粒子線を前記中心軸線側へ偏向する第4偏向部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子線照射装置。
【請求項3】
前記架台の外周上に取り付けられたカウンターウェイトを更に備え、
前記カウンターウェイトは、前記輸送ラインのうち前記架台の外周から張り出した張出部と対向する位置に取り付けられており、
前記第1の制御部は、前記張出部と前記カウンターウェイトとの間に設置されていることを特徴とする請求項2に記載の荷電粒子線照射装置。
【請求項4】
前記第1の制御部は、前記中心軸線の延在方向から見て、前記張出部のうち前記中心軸線から最も離れた最外端が前記中心軸線を中心として描く回転軌道の内側に収まっていることを特徴とする請求項3に記載の荷電粒子線照射装置。
【請求項5】
前記被照射体の内部で発生したガンマ線を検出するPETカメラを有するPET装置を更に備え、
前記PETカメラを制御する第2の制御部が前記架台の外周上に設置されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の荷電粒子線照射装置。
【請求項6】
前記被照射体の内部で発生したガンマ線を検出するPETカメラを有するPET装置を更に備え、
前記PETカメラを制御する第2の制御部が、前記架台の外周上で前記張出部と前記カウンターウェイトとの間に設置されていることを特徴とする請求項3に記載の荷電粒子線照射装置。
【請求項7】
前記第2の制御部は、前記中心軸線の延在方向から見て、前記張出部のうち前記中心軸線から最も離れた最外端が前記中心軸線を中心として描く回転軌道の内側に収まっていることを特徴とする請求項6に記載の荷電粒子線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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