説明

蓋体及び基板収納容器

【課題】施錠機構の施錠時に回転操作体を円滑に回転させたり、適切な位置に停止させることができ、しかも、回転操作体の回転に要するトルクを抑制できる蓋体及び基板収納容器を提供する。
【解決手段】蓋本体11とカバープレートの間に介在され、回転操作リール31の回転で施錠爪41が出没する施錠機構30と、回転操作リール31の回転位置を制御する位置制御手段50とを備え、位置制御手段50を、回転操作リール31の回転に応じて揺動するリンク51と、回転操作リール31とリンク51に連結されるバネ55と、リンク51の接触溝52と接触する位置規制ピン57とから構成する。回転操作リール31が解錠位置から施錠方向の施錠位置に回転する途中で、リンク51を揺動させてその回転途中の回転操作リール31に対する向きを変化させ、回転操作リール31に作用する付勢力の方向を回転操作リール31の回転方向に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ、マスクガラス、液晶ガラス等からなる基板の収納時や保管時に使用される蓋体及び基板収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における基板収納容器は、図示しないが、複数枚の半導体ウェーハを整列収納するフロントオープンボックスタイプの容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する着脱自在の蓋体とを備え、この蓋体を、容器本体の開口した正面に嵌合される断面略皿形の蓋本体と、この蓋本体の開口した表面を覆うカバープレートとから構成しており、これら蓋本体とカバープレートとの間に、蓋体開閉装置により外部から操作される施錠機構を内蔵している。
【0003】
施錠機構は、蓋本体の内部両側にそれぞれ支持され、カバープレートを貫通した蓋体開閉装置の操作キーに回転操作される左右一対の回転操作リールと、各回転操作リールの回転に連動して上下方向に進退動する複数の進退動バーと、各進退動バーの進退動により揺動して蓋本体の周壁から出没する複数の施錠爪とを備え、この複数の施錠爪が容器本体の正面内周の施錠穴に接離する。
【0004】
各回転操作リールは、基本的には円板に形成されてその中心部には正面略矩形のキースロットが凹み形成され、このキースロットに蓋体開閉装置の操作キーが挿入されて回転することにより、施錠方向あるいは解錠方向に所定の回転角度で回転する。キースロットは、施錠機構が施錠される場合には、解錠位置から90°離れた施錠位置に停止し、施錠機構が解錠される場合には、施錠位置から90°離れた解錠位置に停止する。
【0005】
上記構成において、容器本体の開口した正面を蓋体により被覆して施錠する場合には、容器本体の開口した正面に蓋体が蓋体開閉装置により嵌入され、施錠機構を構成する回転操作リールのキースロットに蓋体開閉装置の操作キーがカバープレートを介して挿入されるとともに、蓋体開閉装置の操作キーが90°回転して施錠機構を施錠し、その後、回転操作リールのキースロットから蓋体開閉装置の操作キーが引き抜かれる。
【0006】
ところで、従来における蓋体の施錠機構は、回転操作リールのキースロットが適切な位置で静止しない場合があり、この場合には、蓋体開閉装置の操作キーを挿入できなくなるという問題がある。この問題について説明すると、蓋体開閉装置の操作キーは、解錠位置から90°回転して施錠した後、回転操作リールのキースロットから引き抜かれるのが本来の姿ではあるが、キースロットとの間のガタ等により、90°に近い角度で回転しても、キースロットからの引き抜きが可能になることがある。このとき、回転操作リールのキースロットは、本来の施錠位置からずれて静止することとなる。
【0007】
この場合、次工程で蓋体の施錠機構を解錠するため、蓋体開閉装置の操作キーを施錠位置で挿入しようとしても、回転操作リールのキースロットが本来の施錠位置からずれて静止している以上、キースロットに蓋体開閉装置の操作キーを適切に挿入することができず、この結果、工程作業の中断を招くこととなる。
【0008】
このような問題を解消するため、従来においては、施錠機構の回転操作リールをスプリングにより付勢し、蓋体の施錠位置に対応する位置に回転操作リールを強制的に回転させる方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2005‐515121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記方法の場合、施錠機構の施錠時に回転操作リールを施錠方向に回転させる際、所定の回転角度まではスプリングを圧縮し、所定の変位力を得る必要があるので、回転操作リールの回転に大きな回転トルクを要するという問題が新たに生じることとなる。
【0011】
また、所定の回転角度を超えると、スプリングが伸びて回転操作リールを回転させる方向に付勢力を作用させるが、スプリングの変換点においては、圧縮していたスプリングが急激に伸びて振動や衝撃を回転操作リールに伝えるので、回転操作リールの円滑な回転に支障を来たすおそれがある。さらに、スプリングが急激に伸長し、振動が生じると、部品同士が擦れてパーティクルの発生を招くので、容器本体内の半導体ウェーハが汚染するおそれがある。
【0012】
本発明は上記に鑑みなされたもので、施錠機構の施錠時に回転操作体を円滑に回転させたり、適切な位置に停止させることができ、しかも、回転操作体の回転に要するトルクを抑制することのできる蓋体及び基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明においては上記課題を解決するため、内部が凹んだ蓋本体と、この蓋本体の開口面を覆うカバープレートと、これら蓋本体とカバープレートとの間に介在される施錠機構と、この施錠機構の回転操作体の回転位置を制御する位置制御手段とを備えたものであって、
施錠機構は、蓋本体に支持され、カバープレートの外部からの操作で施錠方向あるいは解錠方向に回転する回転操作体と、この回転操作体の回転により蓋本体の周囲から出没する施錠体とを含み、
位置制御手段は、施錠機構の回転操作体の中心部から半径外方向に離れた箇所にスライド可能に支持され、回転操作体の回転に応じて揺動するリンク部材と、回転操作体とリンク部材とに連結される弾性付勢部材と、蓋本体とカバープレートのいずれかに設けられ、リンク部材に接触される位置規制部材とを含み、弾性付勢部材により回転操作体とリンク部材とに付勢力を作用させ、回転操作体が解錠方向の解錠位置から施錠方向の施錠位置に回転する途中で、リンク部材を揺動させてその回転途中の回転操作体に対する向きを変化させることにより、回転操作体に作用する付勢力の方向を回転操作体の回転方向に抗する方向から回転方向に変更することを特徴としている。
【0014】
なお、蓋本体に、弾性付勢部材の回転操作体からの脱落を防止する第一の脱落防止部材、及び弾性付勢部材のリンク部材からの脱落を防止する第二の脱落防止部材をそれぞれ形成し、カバープレートに、リンク部材の回転操作体からの脱落を防止する第三の脱落防止部材を形成することができる。
【0015】
また、カバープレートに位置制御手段の位置規制部材を略円柱形に形成し、施錠機構の回転操作体を略板形に形成してその中心部には、解錠方向の解錠位置あるいは施錠方向の施錠位置に停止するキースロットを設け、回転操作体の表裏いずれか一方の中心部から半径外方向に離れた箇所にはリンク部材用突起を形成するとともに、他方の中心部から半径外方向に離れた箇所には弾性付勢部材用突起を形成することができる。
【0016】
また、位置制御手段のリンク部材を略板形に形成してその一端部には位置規制部材用の接触溝を形成し、このリンク部材に、回転操作体のリンク部材用突起にスライド可能に嵌まる溝孔を設け、回転操作体の回転時に、位置規制部材を中心にしてリンク部材を揺動可能とすることができる。
【0017】
また、位置制御手段の弾性付勢部材を略C字形のバネとしてその両端部を回転操作体の弾性付勢部材用突起とリンク部材とに接続し、回転操作体が施錠方向の施錠位置に回転する場合に、圧縮されたバネを復元して回転操作体の回転方向に付勢力を作用させることも可能である。
【0018】
また、回転操作体の周縁部寄りに位置決め弾性片を形成し、この位置決め弾性片に、弾性付勢部材用突起に隣接する噛合爪を形成し、弾性付勢部材の弾性付勢部材用突起に接続される端部周面には、位置決め弾性片の噛合爪に干渉される複数の噛合歯を部分的に設けるとともに、この複数の噛合歯を回転操作体のキースロットの施錠位置と解錠位置とに対応させることも可能である。
【0019】
また、本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納する容器本体の開口面に請求項1ないし4いずれかに記載の蓋体を嵌合するものであって、
容器本体の開口面内周に、施錠機構の施錠体に接離される凹部を形成したことを特徴としている。
【0020】
なお、容器本体をフロントオープンボックスに形成してその開口した正面に蓋体を着脱自在に嵌合し、施錠機構の回転操作体が施錠状態あるいは解錠状態から45°の回転角度で回転した場合に、リンク部材を揺動させてその溝孔を水平方向と略平行な方向に指向させることが可能である。
【0021】
ここで、特許請求の範囲における蓋体と基板収納容器とは、透明、不透明、又は半透明に形成することができる。施錠機構は、蓋本体に支持され、カバープレートの外部からの操作で施錠方向あるいは解錠方向に回転する回転操作体と、この回転操作体の回転により進退動する進退動体と、この進退動体の進退動により蓋本体の周囲から出没する施錠体とから構成することもできる。
【0022】
施錠機構の回転操作体は、専用の装置あるいは手動の操作で回転する。この回転操作体は、板形やリング形等に形成することができる。また、施錠体は、蓋本体と進退動体のうち、少なくとも進退動体に連結することができる。この施錠体は、蓋本体周囲の上下部、両側部、隅部等で出没させることが可能である。
【0023】
位置制御手段の弾性付勢部材としては、バネ機能を発揮する各種のゴムやエラストマー、熱可塑性樹脂、バネ(板バネ、コイルバネ等)等があげられる。この弾性付勢部材は、単数でも良いし、複数でも良く、略C字形には、略U字形や類似の形が含まれる。また、基板には、少なくともシリコン、金属化合物、ガラス、炭化ケイ素等からなる各種のウェーハ、具体的には半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、マスクガラス、液晶ガラス、記憶ディスク等が含まれる。
【0024】
基板収納容器は、精密な基板に電子回路を形成する工程や加工工程内の搬送や保管、輸送に使用され、フロントオープンボックスタイプ、トップオープンボックスタイプ、ボトムオープンボックスタイプを特に問うものではない。
【0025】
本発明によれば、容器本体の開口面を蓋体により被覆して施錠する場合には、先ず、容器本体の開口面に蓋体が嵌められる。この際、施錠機構の回転操作体が解錠方向の解錠位置に位置する。また、位置制御手段のリンク部材は、弾性付勢部材により位置規制部材に接触し、回転操作体の回転を規制する。
【0026】
回転操作体が解錠位置から施錠位置の中間点まで所定の回転角度で回転すると、リンク部材が位置規制部材を中心に揺れ動く。解錠位置から回転した回転操作体が中間点に達するまでの間、リンク部材を支持する回転操作体の支持位置が移動し、リンク部材の姿勢が回転操作体の周縁部方向に向いた状態から回転操作体の略中心部方向に向いた状態に変化し、弾性付勢部材が圧縮される。
【0027】
回転操作体が中間点から施錠位置の手前付近まで回転すると、蓋本体から突出した施錠機構の施錠体が容器本体内に進入する。この際、リンク部材は、位置規制部材を中心に揺れ動いて回転操作体の周縁部方向に指向し、解錠位置の状態と略逆向きの状態となる。圧縮された弾性付勢部材は、復元しようとするが、その復元しようとする方向が回転操作体の回転方向とおおよそ一致する。
【0028】
そして、回転操作体が施錠方向の施錠位置まで回転すると、施錠機構の施錠体が容器本体内に強く干渉し、蓋体が施錠される。この際、リンク部材が停止して弾性付勢部材に力を作用させない状態となり、回転操作体に付勢力が作用しないこととなる。回転操作体が回転して施錠位置の手前から施錠位置に達するまでの間は、施錠方向への回転力と同じ方向の付勢力が弾性付勢部材により作用するので、回転操作体が従来のように施錠位置の手前で静止することが少なく、施錠位置で適切に停止する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、施錠機構の施錠時に回転操作体を円滑に回転させたり、適切な位置に停止させることができるという効果がある。また、回転操作体の回転に要するトルクを抑制することができるという効果がある。
【0030】
また、請求項2記載の発明によれば、カバープレートに位置規制部材を形成するので、カバープレートに衝撃を逃がすことができ、蓋本体に位置規制部材を形成する場合に比べ、衝撃を緩和することができる。また、リンク部材用突起により、回転操作体とリンク部材とを簡単に組み立てることができる。同様に、弾性付勢部材用突起により、回転操作体と弾性付勢部材とを容易に組み立てることができる。
【0031】
また、請求項3記載の発明によれば、リンク部材の一端部に接触溝を形成するので、リンク部材と位置規制部材とを嵌め合わせた状態で良好に接触させることが可能となる。また、リンク部材に溝孔を設けるので、回転操作体の回転に伴い、リンク部材を円滑にスライドさせたり、回転操作体からのリンク部材の脱落防止が期待できる。
【0032】
また、請求項5又は6記載の発明によれば、基板収納容器を取り扱う蓋体開閉装置等の操作キーの挿入に支障を来たしたり、蓋体開閉装置等が停止するというトラブルを有効に防止することが可能となる。また、位置制御手段が回転操作体を施錠位置に略正確に回転させ、停止させるので、回転操作体に操作キーを適切に挿入することができ、工程作業の中断を招くことが少ない。さらに、振動が生じるのを抑制することができるので、部品同士が擦れて塵埃の発生を招くことが少なく、容器本体内の基板が汚れるおそれを排除することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る蓋体及び基板収納容器の実施形態を模式的に示す分解斜視説明図である。
【図2】本発明に係る蓋体の実施形態における蓋本体を模式的に示す斜視説明図である。
【図3】本発明に係る蓋体の実施形態におけるカバープレートの裏面を模式的に示す斜視説明図である。
【図4】本発明に係る蓋体の実施形態における蓋本体、施錠機構、位置制御手段を模式的に示す斜視説明図である。
【図5】本発明に係る蓋体の実施形態における回転操作リールの表面を模式的に示す斜視説明図である。
【図6】本発明に係る蓋体の実施形態における回転操作リールの裏面を模式的に示す斜視説明図である。
【図7】本発明に係る蓋体の実施形態における位置制御手段のリンクを模式的に示す斜視説明図である。
【図8】本発明に係る蓋体の実施形態における位置制御手段のバネを模式的に示す斜視説明図である。
【図9】本発明に係る蓋体の実施形態における施錠機構と位置制御手段とを模式的に示す部分断面説明図である。
【図10】本発明に係る蓋体の実施形態における回転操作リールのキースロットが第一の位置に位置する状態を模式的に示す正面説明図である。
【図11】本発明に係る蓋体の実施形態における回転操作リールのキースロットが第三の位置に位置する状態を模式的に示す正面説明図である。
【図12】本発明に係る蓋体の実施形態における回転操作リールのキースロットが第四の位置に位置する状態を模式的に示す正面説明図である。
【図13】本発明に係る蓋体の実施形態における回転操作リールのキースロットが第五の位置に位置する状態を模式的に示す正面説明図である。
【図14】本発明に係る蓋体の第2の実施形態における回転操作リールの裏面を模式的に示す斜視説明図である。
【図15】本発明に係る蓋体の第2の実施形態におけるバネを模式的に示す斜視説明図である。
【図16】本発明に係る蓋体の第2の実施形態における回転操作リールのキースロットが第一の位置に位置する状態を模式的に示す説明図である。
【図17】本発明に係る蓋体の第2の実施形態における回転操作リールのキースロットが第三の位置に位置する状態を模式的に示す説明図である。
【図18】本発明に係る蓋体の第2の実施形態における回転操作リールのキースロットが第五の位置に位置する状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、図1ないし図13に示すように、複数枚の半導体ウェーハWを収納する容器本体1と、この容器本体1の開口した正面2を開閉する着脱自在の蓋体10とを備え、この蓋体10を構成する蓋本体11とカバープレート26との間に、蓋体開閉装置により外部から操作される施錠機構30、及び施錠機構30を構成する回転操作リール31の回転位置を制御する位置制御手段50を内蔵するようにしている。
【0035】
半導体ウェーハWは、図1に示すように、例えばφ300mmあるいは450mmの大きさを有する大口径の薄いシリコンウェーハからなり、容器本体1内の上下方向に25枚又は26枚が並べて整列収納される。この半導体ウェーハWは、図示しない半導体加工装置により加工されるが、この半導体加工装置には図示しない蓋体開閉装置が併設される。
【0036】
容器本体1は、図1に示すように、所定の成形材料を使用して透明、不透明、又は半透明のフロントオープンボックスに形成され、両側壁が後方に向かうに従い段階的に接近するよう傾斜形成されており、この両側壁の傾斜により、背面壁の面積が横長に開口した正面2の面積よりも小さく設定される。この容器本体1の内部両側、換言すれば、両側壁の内面には、半導体ウェーハWを略水平に支持する左右一対のティース3が対設され、この一対のティース3が上下方向に所定のピッチで配列されており、各ティース3が細長い平面略く字形あるいは略半円弧形等に屈曲形成される。
【0037】
容器本体1の底板には、半導体加工装置に対する固定用のボトムプレート4が装着され、これら底板とボトムプレート4のいずれか一方の前部両側と後部中央とには、半導体加工装置の位置決めピンに対する位置決め用の位置決め具がそれぞれ配設されており、各位置決め具が凹んだ小判形、断面略M字形、略V字形、略Y字形等に形成される。また、ボトムプレート4は、例えば所定の大きさを有する平面略多角形、凹字形、略Y字形等に形成され、中央部に固定用の被固定孔が穿孔される。
【0038】
容器本体1の天井中央部には、搬送に供される平面略矩形のロボティックフランジ5が装着され、このロボティックフランジ5がOHT(オーバーヘッドトランスファー)と呼ばれる自動搬送機に把持されることにより、基板収納容器が工程内を自動的に搬送される。また、容器本体1の正面2の周縁部には、外方向に屈曲して張り出す蓋体嵌合用のリム6が周設され、このリム6内周面の上部両側と下部両側とに、施錠機構30用の施錠穴7がそれぞれ矩形に穿孔される。
【0039】
容器本体1の両側壁外面の中央部には、作業員に握持される肉厚の搬送ハンドル8がそれぞれ着脱自在に装着される。両側壁外面の下部には、前後方向に伸びる搬送用のサイドレール9がそれぞれ選択的に装着される。
【0040】
これら容器本体1、ティース3、ボトムプレート4、位置決め具、ロボティックフランジ5、搬送ハンドル8、サイドレール9は、例えばポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、環状オレフィン樹脂等を含有する成形材料により成形される。これらの成形材料には、カーボン等の導電性付与剤が適宜付与される。
【0041】
蓋体10は、図1ないし図3に示すように、容器本体1のリム6内に圧入して嵌合される断面略トレイ形の蓋本体11と、この蓋本体11の開口した表面に螺子具を介して覆着されるカバープレート26とを備え、蓋体開閉装置に真空吸着された状態で容器本体1に着脱される。
【0042】
蓋本体11は、容器本体1の正面2に対応するベース板12の周縁部に周壁13が周設された正面略横長の矩形に形成され、四隅部がそれぞれ丸く面取りされる。この蓋本体11のベース板12は、表面の中央部14が表面側に縦長の矩形に突出して左右両側部に施錠機構30用の設置空間15をそれぞれ凹み形成し、中央部14から各設置空間15に複数本の放射リブ16が略扇形に伸長されており、各放射リブ16の先端部等に、カバープレート26用の取付ボス17が円筒形に一体形成される。
【0043】
各設置空間15の中央部付近には図2に示すように、施錠機構30の回転操作リール31を回転可能に支持する円筒形の支持ボス18が一体形成され、この支持ボス18の上下方向には、施錠機構30用の第一のカムレール19と円筒形の複数のガイドボス20とがそれぞれ配設されており、支持ボス18の中央部14寄りの側方には、位置制御手段50用の第一、第二の脱落防止レール21・22が間隔をおき並べて配設される。
【0044】
第一のカムレール19は、間隔をおいて相対向する左右一対のレールにより形成され、各レールの表面が施錠機構30用のカム面に形成される。また、第一の脱落防止レール21は、支持ボス18に近接する略半円弧形に湾曲形成される。第二の脱落防止レール22は、支持ボス18から離れた長い略半円弧形に湾曲形成され、中央部が支持ボス18方向に半円弧形に凹み形成される。
【0045】
蓋本体11の裏面、換言すれば、ベース板12裏面の中央部には、縦長のフロントリテーナ23が着脱自在に装着され、このフロントリテーナ23の枠体両側部から伸びる複数の弾性片24が半導体ウェーハWの前部周縁を弾発的に挟持して損傷を防止する。また、蓋本体11の周壁13は、断面略L字形に形成されて剛性を確保し、上部両側と下部両側とには、容器本体1の施錠穴7に対向する施錠機構30用の出没孔25がそれぞれ矩形に穿孔される。周壁13の裏面側には枠形の嵌合溝が凹み形成され、この嵌合溝に弾性変形可能なシールガスケットが密嵌されて容器本体1のリム6内に圧接する。
【0046】
シールガスケットは、図示しないが、嵌合溝に嵌入されるエンドレスの枠形基材を備え、この枠形基材に、傾斜しながら先細りに伸長して容器本体1のリム6内に変形圧接する略舌形の屈曲片と、嵌合溝の壁面に圧接する単数複数のリブとが配設される。このようなシールガスケットは、例えばシリコーンゴム、フッ素ゴム、熱可塑性ポリエステル系エラストマー、熱可塑性ポリオレフィン系エラストマー等を使用して成形され、基板収納容器の内外に圧力差が生じた場合に、基板収納容器の外部から内部に気体が流入するのを防止するとともに、基板収納容器の内部から外部に気体を排出する一方向シールとして機能する。
【0047】
カバープレート26は、図3等に示すように、蓋体開閉装置に真空吸着される正面横長の平板に形成され、周縁部付近に複数の螺子孔が所定の間隔で穿孔されており、各螺子孔を貫通した螺子具が蓋本体11の取付ボス17に螺着される。このカバープレート26の左右両側部の中央付近には操作口27がそれぞれ縦長の矩形に穿孔され、各操作口27に蓋体開閉装置の回転可能な操作キーが外部から挿通される。
【0048】
カバープレート26の蓋本体11に対向する裏面の左右両側部には、操作口27の上下方向に位置する第二のカムレール28がそれぞれ複数形成され、この第二のカムレール28が蓋本体11の第一のカムレール19に隙間をおいてそれぞれ対向することにより、施錠機構30用の立体的なカムレールを区画形成する。
【0049】
第二のカムレール28は、第一のカムレール19同様、間隔をおいて相対向する左右一対のレールにより形成され、各レールの表面が施錠機構30用のカム面に形成される。また、カバープレート26裏面の左右両側部には、位置制御手段50用の第三の脱落防止レール29がそれぞれ形成され、各第三の脱落防止レール29が操作口27の側方に位置する半円弧形に湾曲形成される。
【0050】
これら蓋体10の蓋本体11とカバープレート26とは、例えばポリカーボネート、フッ素含有ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等を含有する成形材料により成形される。
【0051】
施錠機構30は、図1、図4、図9ないし図13に示すように、蓋体10のカバープレート26の外部からの操作で回転する左右一対の回転操作リール31と、各回転操作リール31の回転に連動して直線的に上下方向に進退動する複数の進退動バー37と、各進退動バー37の進退動により揺動して蓋本体11の出没孔25から出没する複数の施錠爪41とを備え、蓋体10の一対の設置空間15に設置されており、複数の施錠爪41が容器本体1の施錠穴7に接離する。
【0052】
各回転操作リール31は、基本的には円板に形成されてその中心部と周縁部との間には一対の案内溝32が180°の間隔をおいて切り欠かれ、蓋本体11の支持ボス18に嵌合支持されて一軸を中心に回転する。各案内溝32は、回転操作リール31の周方向に沿う半円弧形に湾曲形成され、一端部が他端部よりも半径が小さくなるよう変曲した位置に形成される。
【0053】
回転操作リール31の表面は、図5に示すように、中心部に解錠方向の解錠位置あるいは施錠方向の施錠位置に停止するキースロット33が正面略長方形に穿孔され、このキースロット33に操作口27を貫通した蓋体開閉装置の操作キーが着脱自在に挿入される。回転操作リール31表面の中心部から半径外方向に離れた周縁部寄りには、位置制御手段50の制御に資するリンク用突起34が円柱形に突出形成され、このリンク用突起34が回転操作リール31の回転時に弧を描きながら回転する。
【0054】
回転操作リール31の裏面は、図6に示すように、中心部の周囲に蓋本体11の支持ボス18に外側から嵌合する円筒部35が一体形成される。回転操作リール31の裏面中心部から半径外方向に離れた周縁部寄りには、位置制御手段50の制御に資するバネ突起36が円柱形に形成され、このバネ突起36が回転操作リール31の回転時に弧を描きながら回転する。
【0055】
このような回転操作リール31は、キースロット33に挿入された蓋体開閉装置の操作キーにより反時計方向である施錠方向、あるいは時計方向である解錠方向に回転操作される。この回転操作の際、キースロット33は、施錠機構30が施錠される場合には、解錠位置から90°離れた施錠位置に停止してその長辺を水平方向に直交させ、施錠機構30が解錠される場合には、施錠位置から90°離れた解錠位置に停止してその長辺を水平方向に並行とする。
【0056】
各進退動バー37は、第一、第二のカムレール19・28間に挟持される幅を有する正面略長方形の板に形成され、長手方向の中心線が回転操作リール31の軸芯と一致するよう、第一のカムレール19間にスライド可能に配置される。この進退動バー37は、長手方向の中心線上に、蓋体10の複数のガイドボス20にそれぞれ遊嵌する長孔38が長手方向に穿孔され、両側部には、第一、第二のカムレール19・28のカム面に摺接して案内される複数のピン39がそれぞれ突出形成される。
【0057】
進退動バー37の先端部には施錠爪41が揺動可能に連結軸支され、進退動バー37の末端部には円筒形の係合ピン40が突出形成されており、この係合ピン40が回転操作リール31の案内溝32にスライド可能に遊嵌される。このような進退動バー37は、回転操作リール31が施錠方向に回転する場合には、蓋体10の厚さ方向に傾斜しながら周壁13方向に進出し、解錠方向に回転する場合には、進出位置から元の位置に傾斜しながら後退する。
【0058】
各施錠爪41は、例えば断面略L字形に屈曲形成されてその先端部には発塵防止用の回転ローラが選択的に嵌合軸支され、中央部が蓋体10の出没孔25付近に揺動可能に連結軸支されており、末端部が進退動バー37の先端部にピンを介し揺動可能に連結軸支される。このような施錠爪41は、回転操作リール31が施錠方向に回転して進退動バー37が進出する場合には、蓋体10の出没孔25から突出して容器本体1の施錠穴7に先端部が嵌合係止し、回転操作リール31が解錠方向に回転して進退動バー37が後退する場合には、容器本体1の施錠穴7から先端部が離れて蓋体10の出没孔25に退没する。
【0059】
これら施錠機構30の回転操作リール31、進退動バー37、施錠爪41は、例えばポリカーボネート、フッ素含有ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等を含有する成形材料により成形される。
【0060】
位置制御手段50は、図3ないし図13に示すように、各回転操作リール31の回転に応じて上下方向に揺動する複数のリンク51と、各回転操作リール31とリンク51とに連結張架される複数のバネ55と、カバープレート26に設けられて各リンク51の末端部と接触する複数の位置規制ピン57とを備え、回転操作リール31が解錠方向の解錠位置から施錠方向の施錠位置に回転する際、リンク51を揺動させてその回転途中の回転操作リール31に対する向きを変化させることにより、回転操作リール31に作用する付勢力の方向を回転操作リール31の回転方向に抗する方向から回転方向に変更する。
【0061】
各リンク51は、図7等に示すように、例えば細長い略Y字形に伸長形成されて回転操作リール31に一部重ねられ、第三の脱落防止レール29に支持されて回転操作リール31からの脱落が防止される。このリンク51の先端部は、左右に分岐して外側に張り出し、位置規制ピン57に常時接触する接触溝52を形成する。接触溝52は、例えば位置規制ピン57からの脱落を防止する観点から、角度の広いV字形に区画され、回転操作リール31の施錠方向に対する回転に応じ、位置規制ピン57の周面に浅く接触した後に深く嵌合接触し、その後、再び浅く接触する。
【0062】
リンク51の中央部付近には、第二の脱落防止レール22に摺接するバネ用突起53が円柱形に突出形成され、このバネ用突起53に隣接する箇所から半円形に湾曲した末端部付近にかけて、回転操作リール31のリンク用突起34にスライド可能、かつ揺動可能に遊嵌する溝孔54が穿孔される。
【0063】
各バネ55は、図8等に示すように、例えば可撓性を有する屈曲可能な略C字形に湾曲形成され、回転操作リール31とリンク51とに付勢力をそれぞれ作用させる。このバネ55は、その両端部に取付リング56がそれぞれ一体形成され、この一対の取付リング56が回転操作リール31のバネ突起36とリンク51のバネ用突起53とに嵌入して接続されており、回転操作リール31からの脱落が第一の脱落防止レール21により防止されるとともに、リンク51からの脱落が第二の脱落防止レール22により規制される。
【0064】
このようなバネ55は、リンク51の揺動に応じ、圧縮されたり、圧縮が緩和されたり、伸ばして広げられる。具体的には、回転操作リール31が解錠位置から施錠方向に回転する場合には圧縮され、回転操作リール31が解錠位置から時計方向である解錠方向にさらに回転する場合には伸長して広げられる。いずれの場合にも、元の状態に復帰する復元力を作用させ、回転操作リール31の回転位置を規制する。
【0065】
各位置規制ピン57は、図3、図10〜図13等に示すように、例えばカバープレート26の裏面に断面略凸字の円柱形や一般的な円柱形に形成されて操作口27や第三の脱落防止レール29の中央部付近の側方に位置し、第二の脱落防止レール22の凹んだ中央部付近に隙間をおいて近接しており、バネ55の付勢作用によりリンク51の接触溝52に摺接される。この位置規制ピン57は、回転操作リール31の回転時に、リンク51の揺動中心としてリンク51を動作させる。
【0066】
位置規制ピン57を揺動の中心とするリンク51は、回転操作リール31のキースロット33が解錠位置あるいは施錠位置に停止する場合には、回転操作リール31の周縁部方向に傾斜し、キースロット33が解錠位置と施錠位置との中間点に停止する場合には、回転操作リール31の中心部方向に指向する。
【0067】
これら位置制御手段50のリンク51、バネ55、位置規制ピン57のうち、少なくともリンク51と位置規制ピン57とは、滑り性が良い耐磨耗性の成形材料、例えばポリアセタール、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン含有の成形材料により成形される。
【0068】
上記構成において、位置制御手段50を組み立てる場合には、先ず、組み立てた施錠機構30の各回転操作リール31のリンク用突起34にリンク51の溝孔54を遊嵌し、回転操作リール31のバネ突起36とリンク51のバネ用突起53とにバネ55の両端部をそれぞれ接続し、蓋本体11の設置空間15に施錠機構30、リンク51、及びバネ55を設置し、その後、蓋本体11の開口した表面にカバープレート26を螺着してその位置規制ピン57の周面にリンク51の接触溝52を接触させれば、位置制御手段50を組み立てることができる。
【0069】
次に、図10ないし図13に基づいて容器本体1の正面2を蓋体10により被覆して施錠する場合の施錠機構30と位置制御手段50との具体的な動作について説明する。説明の便宜を図るため、図10ないし図13の右側では回転操作リール31の裏面における位置制御手段50、左側では回転操作リール31の表面における位置制御手段50を示すこととする。
【0070】
先ず、容器本体1の開口した正面2に蓋体10が蓋体開閉装置に真空吸着された状態で浅く嵌合され、その後、蓋体開閉装置の操作キーがカバープレート26の操作口27を貫通して施錠機構30を構成する回転操作リール31のキースロット33に挿入される。
【0071】
この際、回転操作リール31は、図10に示すように、キースロット33が解錠方向の解錠位置(第一の位置)に位置し、このキースロット33の長辺が水平方向に指向しており、案内溝32の一端部内に進退動バー37の係合ピン40が位置する。また、リンク51は、溝孔54の一端部が回転操作リール31のリンク用突起34に接触するとともに、接触溝52の先端部がバネ55により位置規制ピン57に接触し、傾斜した停止状態で回転操作リール31の回転を規制する。
【0072】
操作キーの回転により、回転操作リール31が施錠方向に7.5°の回転角度で回転し、キースロット33の長辺が第二の位置に達すると、回転操作リール31の案内溝32に進退動バー37の係合ピン40が案内され、進退動バー37が蓋体10の周壁13方向に進出し、蓋本体11の出没孔25から施錠爪41が僅かに露出する。この際、リンク51の接触溝52は、浅く接触していた位置規制ピン57に深く嵌合接触し、最奥の谷部が位置規制ピン57に接触する。
【0073】
次いで、回転操作リール31が第一の位置から45°の回転角度で回転し、キースロット33の長辺が中間点である第三の位置に達する(図11参照)と、回転操作リール31のリンク用突起34が水平方向と平行な方向に指向し、傾斜状態のリンク51が揺動してその溝孔54を水平方向と平行な方向に指向させ、第二の脱落防止レール22の凹んだ中央部にリンク51のバネ用突起53が嵌合し、バネ55が圧縮される。
【0074】
回転操作リール31が回転して第二の位置から第三の位置に達するまでの間、回転操作リール31のリンク用突起34がリンク51の溝孔54の一端部から他端部に摺動し、リンク51の向きが傾斜した状態から徐々に横向きの水平状態に変化してバネ55を圧縮する。
【0075】
次いで、回転操作リール31が第一の位置から82.5°の回転角度で回転し、キースロット33の長辺が第四の位置に達する(図12参照)と、進退動バー37が蓋体10の周壁13方向にさらに進出し、蓋本体11の出没孔25から僅かに露出した施錠爪41が容器本体1の施錠穴7に進入し、施錠爪41の先端部が施錠穴7の壁面に接触する。
【0076】
この際、リンク51は、カバープレート26の位置規制ピン57を回転軸にして揺動し、第一の位置の傾斜状態と約70°逆向きの傾斜状態となる。圧縮されていたバネ55は、復元しようとするが、その復元しようとする方向が回転操作リール31の回転方向と略一致する。
【0077】
次いで、回転操作リール31が第一の位置から90°の回転角度で回転し、キースロット33の長辺が施錠方向の施錠位置(第五の位置)に達する(図13参照)と、進退動バー37が蓋体10の周壁13方向に最も大きく進出し、施錠爪41が容器本体1の施錠穴7に強く嵌合係止して蓋体10を容器本体1内に引き込み、シールガスケットによりシールが形成され、蓋体10が適切に施錠される。
【0078】
この際、リンク51は、溝孔54の一端部が回転操作リール31のリンク用突起34に再び接触して傾斜状態で停止し、バネ55に力が作用しない状態となり、回転操作リール31に付勢力が作用しないこととなる。回転操作リール31が回転して第四の位置から第五の位置に達するまでの間、操作キーによる施錠方向への回転力と同じ方向の付勢力がバネ55により作用するので、回転操作リール31が従来のように施錠位置の手前で静止することがなく、施錠位置で適切に停止することとなる。
【0079】
なお、回転操作リール31は、位置制御手段50により正逆方向への回転が規制されるが、第五の位置を若干通過した場合、連結されたバネ55が広げられて元の状態に復元しようとするので、第五の位置に復帰することとなる。また、回転操作リール31が第五の位置から元の解錠方向に回転しようとする場合、バネ55が圧縮されるが、このバネ55の反力で回転操作リール31が第五の位置に復帰しようとする付勢力が生じるので、回転操作リール31が施錠方向に回転して第五の位置に復帰する。
【0080】
上記構成によれば、回転操作リール31の回転位置を位置制御手段50により制御するので、施錠状態の回転操作リール31が解錠方向に回転して解錠状態となったり、キースロット33が位置ずれし、蓋体開閉装置の操作キーの挿入に支障を来たしたり、蓋体開閉装置が停止するというトラブルを有効に防止することができる。
【0081】
また、回転操作リール31が正確に回転せずに施錠位置の手前で停止し、この手前で停止した回転操作リール31のキースロット33から操作キーが引き抜かれたとしても、位置制御手段50がキースロット33を施錠位置に正確に回転させ、停止させるので、キースロット33に蓋体開閉装置の操作キーを適切に挿入することができ、工程作業の中断を招くことが全くない。また、回転操作リール31、リンク51、バネ55を凹凸嵌合するので、位置制御手段50を簡単、かつ容易に組み立てることができる。
【0082】
また、回転操作リール31のリンク用突起34にリンク51の溝孔54をスライド可能、かつ回転可能に遊嵌するので、回転操作リール31のキースロット33が施錠位置に停止する際、バネ55に作用する負荷を低減することができる。このバネ55に作用する負荷の低減により、キースロット33の停止位置に誤差が生じるのを抑制し、蓋体開閉装置の操作キーの再度の挿入時にエラーが発生するのを防ぐことが可能になる。
【0083】
また、カバープレート26の裏面に位置規制ピン57を形成するので、リンク51と位置規制ピン57との接触に伴う衝撃やその振動をカバープレート26に逃がすことができ、蓋本体11に位置規制ピン57を形成する場合に比べ、衝撃の緩和が大いに期待できる。さらに、衝撃の緩和により、振動が生じるのを抑制することができるので、部品同士が擦れてパーティクルの発生を招くことがなく、容器本体1内の半導体ウェーハWが汚れるおそれを有効に排除することが可能になる。
【0084】
次に、図14ないし図18は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、回転操作リール31の裏面周縁部寄りに、案内溝32の端部付近に隣接する細長い可撓性の位置決め弾性片60を周方向に沿わせて形成し、この位置決め弾性片60の先端部に、バネ突起36に隣接する噛合爪61を屈曲形成し、バネ55のバネ突起36に嵌入する取付リング56には、位置決め弾性片60の噛合爪61に干渉される複数の噛合歯62を部分的に配設するようにしている。
【0085】
複数の噛合歯62は、図15等に示すように、施錠機構30のキースロット33の施錠位置と解錠位置とに対応するよう、一方の取付リング56の外周面に間隔をおいてそれぞれ刻設され、キースロット33が第一あるいは第五の位置に位置した場合のみに、噛合爪61と噛合する(図16図〜18参照)。
なお、本実施形態ではリンク51を細長い板形に形成してその先端部に接触溝52をV字形に切り欠いたが、リンク51を略Y字形に形成しても良い。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0086】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、キースロット33の施錠位置と解錠位置とにおいて、噛合爪61と噛合歯62とが相互に噛み合うので、位置制御手段50に衝撃が作用してリンク51等が正規の位置から位置ずれすることにより、位置制御手段50の機能が低下するのを有効に防止することができる。具体的には、位置制御手段50に衝撃等が作用した場合に、リンク51の接触溝52と位置規制ピン57とが位置ずれして非接触の関係となり、施錠機構30の次回の操作時に位置制御手段50の位置制御効果が低減するのを防止することができる。
【0087】
なお、上記実施形態の容器本体1の天井、背面壁、あるいは側壁には、半導体ウェーハW用の光透過性の観察窓を設けても良い。また、上記実施形態では容器本体1の両側壁内面に複数のティース3を対設したが、容器本体1の両側壁内面に複数のティース3を一体形成しても良いし、別体のティース3を着脱自在に装着しても良い。また、各ティース3を複数に分割して容器本体1の前後方向に間隔をおいて離隔配置しても良い。また、操作キーは、蓋体開閉装置により自動的に回転するタイプでも良いが、手動で回転操作されるタイプでも良い。
【0088】
また、蓋体10のガイドボス20、各進退動バー37の各ピンや係合ピン40には、発塵防止用の回転ローラを嵌合することができる。また、回転操作リール31に、リンク用突起34やバネ突起36を直接形成しても良いし、別部材を介し間接的に形成することもできる。また、施錠爪41の先端部の一部分を厚さ方向に傾斜させ、容器本体1の施錠穴7に対する接触面積を減少させば、施錠時の抵抗低減が期待できる。
【0089】
また、上記実施形態ではリンク51の接触溝52と位置規制ピン57とを確実に接触させる観点から、リンク51を略Y字形に形成したが、リンク51を細長い一般的な板形に形成してその先端部に接触溝52を断面略すり鉢形や略U字形等に切り欠くことも可能である。また、回転操作リール31にバネ突起36を突出形成したが、回転操作リール31にバネ用の貫通孔や凹部を形成し、バネ55の端部に回転操作リール用突起を形成することも可能である。さらに、リンク51にバネ用突起53を突出形成したが、リンク51にバネ用の貫通孔や凹部を形成し、バネ55の端部にリンク用突起34を形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る蓋体及び基板収納容器は、液晶ディスプレイや半導体の製造分野等で使用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 容器本体
2 正面(開口面)
6 リム
7 施錠穴(凹部)
10 蓋体
11 蓋本体
13 周壁
15 設置空間
18 支持ボス
21 第一の脱落防止レール
22 第二の脱落防止レール
25 出没孔
26 カバープレート
27 操作口
29 第三の脱落防止レール
30 施錠機構
31 回転操作リール(回転操作体)
33 キースロット
34 リンク用突起(リンク部材用突起)
36 バネ突起(弾性付勢部材用突起)
37 進退動バー
41 施錠爪(施錠体)
50 位置制御手段
51 リンク(リンク部材)
52 接触溝
53 バネ用突起
54 溝孔
55 バネ(弾性付勢部材)
56 取付リング
57 位置規制ピン(位置規制部材)
60 位置決め弾性片
61 噛合爪
62 噛合歯
W 半導体ウェーハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が凹んだ蓋本体と、この蓋本体の開口面を覆うカバープレートと、これら蓋本体とカバープレートとの間に介在される施錠機構と、この施錠機構の回転操作体の回転位置を制御する位置制御手段とを備えた蓋体であって、
施錠機構は、蓋本体に支持され、カバープレートの外部からの操作で施錠方向あるいは解錠方向に回転する回転操作体と、この回転操作体の回転により蓋本体の周囲から出没する施錠体とを含み、
位置制御手段は、施錠機構の回転操作体の中心部から半径外方向に離れた箇所にスライド可能に支持され、回転操作体の回転に応じて揺動するリンク部材と、回転操作体とリンク部材とに連結される弾性付勢部材と、蓋本体とカバープレートのいずれかに設けられ、リンク部材に接触される位置規制部材とを含み、弾性付勢部材により回転操作体とリンク部材とに付勢力を作用させ、回転操作体が解錠方向の解錠位置から施錠方向の施錠位置に回転する途中で、リンク部材を揺動させてその回転途中の回転操作体に対する向きを変化させることにより、回転操作体に作用する付勢力の方向を回転操作体の回転方向に抗する方向から回転方向に変更することを特徴とする蓋体。
【請求項2】
カバープレートに位置制御手段の位置規制部材を略円柱形に形成し、施錠機構の回転操作体を略板形に形成してその中心部には、解錠方向の解錠位置あるいは施錠方向の施錠位置に停止するキースロットを設け、回転操作体の表裏いずれか一方の中心部から半径外方向に離れた箇所にはリンク部材用突起を形成するとともに、他方の中心部から半径外方向に離れた箇所には弾性付勢部材用突起を形成した請求項1記載の蓋体。
【請求項3】
位置制御手段のリンク部材を略板形に形成してその一端部には位置規制部材用の接触溝を形成し、このリンク部材に、回転操作体のリンク部材用突起にスライド可能に嵌まる溝孔を設け、回転操作体の回転時に、位置規制部材を中心にしてリンク部材を揺動可能とした請求項2記載の蓋体。
【請求項4】
位置制御手段の弾性付勢部材を略C字形のバネとしてその両端部を回転操作体の弾性付勢部材用突起とリンク部材とに接続し、回転操作体が施錠方向の施錠位置に回転する場合に、圧縮されたバネを復元して回転操作体の回転方向に付勢力を作用させるようにした請求項2又は3記載の蓋体。
【請求項5】
基板を収納する容器本体の開口面に請求項1ないし4いずれかに記載の蓋体を嵌合する基板収納容器であって、
容器本体の開口面内周に、施錠機構の施錠体に接離される凹部を形成したことを特徴とする基板収納容器。
【請求項6】
容器本体をフロントオープンボックスに形成してその開口した正面に蓋体を着脱自在に嵌合し、施錠機構の回転操作体が施錠状態あるいは解錠状態から45°の回転角度で回転した場合に、リンク部材を揺動させてその溝孔を水平方向と略平行な方向に指向させるようにした請求項5記載の基板収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−38217(P2013−38217A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172998(P2011−172998)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】