説明

薄膜パターン形成方法及びマスク

【課題】高精細な複数種の薄膜パターンの形成を効率よく行い得るようにする。
【解決手段】フィルム2に有機EL層17R,17G,17Bと同形状の開口パターン4を設けたマスク1をフィルム2がTFT基板19側となるようにして該TFT基板19上に位置決めし載置し、TFT基板19のR対応アノード電極21R上にマスク1の開口パターン4を介して成膜し、R有機EL層17Rを形成した後、マスク1を複数種の有機EL層17R〜17Bの配列ピッチと同寸法だけアノード電極21R,21G,21Bの並び方向に移動し、TFT基板19のG対応アノード電極21G上にマスク1の開口パターン4を介して成膜し、G有機EL層17Gを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に一定の配列ピッチで並べて一定形状の複数種の薄膜パターンを形成する薄膜パターン形成方法に関し、特に高精細な複数種の薄膜パターンの形成を効率よく行い得るようにする薄膜パターン形成方法及びマスクに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の薄膜パターン形成方法は、所定のパターンに対応した形状の開口を有するマスクを基板に対して位置合わせした後、該基板上に密着させ、その後上記開口を介して基板に対するパターンニング成膜をするようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の薄膜パターン形成方法は、所定の成膜パターンに対応した複数の開口が設けられた強磁性体から成るメタルマスクを基板の一面を覆うように基板に密着させると共に、基板の他面側に配置された磁石の磁力を利用して固定され、真空蒸着装置の真空槽内で上記開口を通して基板の一面に蒸着材料を付着させ、薄膜パターンを形成するようになっていた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−73804号公報
【特許文献2】特開2009−164020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような従来の薄膜パターン形成方法において、上記特許文献1に記載の方法は、一般に、薄い金属板に薄膜パターンに対応した開口を例えばエッチング等により形成してマスクが作られるので、開口を高精度に形成することが困難であり、又金属板の熱膨張による位置ずれや反り等の影響で例えば300dpi以上の高精細な薄膜パターンの形成が困難であった。
【0006】
また、上記特許文献2に記載の方法は、上記特許文献1に記載の方法よりも基板との密着性は改善されるものの、特許文献1に記載の方法と同様に、薄い金属板に薄膜パターンに対応した開口を例えばエッチング等により形成してマスクが作られるので、開口を高精度に形成することが困難であり、例えば300dpi以上の高精細な薄膜パターンの形成が困難であった。
【0007】
そして、上記いずれの特許文献に記載の方法においても、基板上に複数種の薄膜パターンを形成する場合には、各種薄膜パターンに対応した複数種のマスクを使用して行わなければならず、マスクを取替えた後、マスクを基板に対して位置決め調整する必要があり、作業が煩雑になるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、高精細な複数種の薄膜パターンの形成を効率よく行い得るようにする薄膜パターン形成方法及びマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による薄膜パターン形成方法は、基板上に一定の配列ピッチで並べて一定形状の複数種の薄膜パターンを形成する薄膜パターン形成方法であって、前記複数種の薄膜パターンのうち、一の薄膜パターンの形成領域に対応して該薄膜パターンよりも形状の大きい開口部を形成した平板状の保持部材の一面に、可視光を透過する樹脂製のフィルムを面接合して保持すると共に、前記保持部材の前記開口部内に位置する前記フィルムの部分に前記一の薄膜パターン形成領域に対応して前記薄膜パターンと同形状の開口パターンを設けたマスクを前記フィルムが前記基板側となるようにして該基板上に位置決めし載置するステップと、前記基板の前記一の薄膜パターン形成領域に前記マスクの開口パターンを介して成膜し、前記一の薄膜パターンを形成するステップと、前記マスクを前記複数種の薄膜パターンの配列ピッチと同寸法だけ前記複数種の薄膜パターンの並び方向に移動するステップと、前記基板の他の薄膜パターン形成領域に前記マスクの開口パターンを介して成膜し、他の薄膜パターンを形成するステップと、を行うものである。
【0010】
このような構成により、一定形状の複数種の薄膜パターンのうち、一の薄膜パターンの形成領域に対応して該薄膜パターンよりも形状の大きい開口部を形成した平板状の保持部材の一面に、可視光を透過する樹脂製のフィルムを面接合して保持すると共に、保持部材の開口部内に位置するフィルムの部分に一の薄膜パターン形成領域に対応して薄膜パターンと同形状の開口パターンを設けたマスクをフィルムが基板側となるようにして該基板上に位置決めし載置し、基板の上記一の薄膜パターン形成領域にマスクの開口パターンを介して成膜し、一の薄膜パターンを形成し、マスクを上記複数種の薄膜パターンの配列ピッチと同寸法だけ複数種の薄膜パターンの並び方向に移動し、基板の他の薄膜パターン形成領域にマスクの開口パターンを介して成膜し、他の薄膜パターンを形成し、基板上に一定の配列ピッチで並べて複数種の薄膜パターンを形成する。
【0011】
好ましくは、前記基板には、前記複数種の薄膜パターン形成領域の各境界部に、成膜された薄膜パターンの面よりも突出するように高さが設定された隔壁が予め設けられているのが望ましい。
【0012】
さらに好ましくは、前記保持部材は、細長状の複数のブリッジにより分離された複数の前記開口部を備えているのが望ましい。
より好ましくは、前記フィルムの前記基板との接触面には、前記保持部材の前記ブリッジの形成位置に対応して該ブリッジの長軸に平行な突条部が設けられるとよい。
【0013】
また、本発明によるマスクは、基板面に接触して設置され、基板上に一定の配列ピッチで並べて一定形状の複数種の薄膜パターンを形成するためのマスクであって、可視光を透過する樹脂製のフィルムと、前記基板上に予め定められた前記複数種の薄膜パターンの形成領域のうち、一の薄膜パターンの形成領域に対応して該一の薄膜パターンよりも形状が大きく、細長状の複数のブリッジにより分離された貫通する複数の開口部を形成した平板で構成され、一面に前記フィルムを面接合して保持する保持部材と、を備え、前記フィルムには、前記保持部材の前記開口部内に位置する部分に前記一の薄膜パターン形成領域に対応して前記薄膜パターンと同形状の開口パターンが設けられると共に、前記基板との接触面に、前記保持部材の前記ブリッジの形成位置に対応して該ブリッジの長軸に平行な突条部が設けられたものである。
【0014】
このような構成により、フィルムの基板との接触面に延設された突条部を基板上に接触させた状態で該突条部の延設方向にフィルムをステップ移動させて成膜し、フィルムの開口部を介して基板上に予め定められた複数種の薄膜パターン形成領域に複数種の薄膜パターンを順次形成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の薄膜パターン形成方法によれば、薄いフィルムに開口パターンを形成するので、開口パターンの形成精度を向上することができる。また、開口パターンを形成したフィルムを基板上に設置するのでフィルムと基板との密着性が増し、薄膜パターンの形成精度を向上することができる。したがって、高精細な薄膜パターンの形成を容易に行なうことができる。さらに、基板上に複数種の薄膜パターンを形成する際には、一の薄膜パターンを形成した後、マスクを複数種の薄膜パターンの配列ピッチと同寸法だけ該複数種の薄膜パターンの並び方向に移動するだけでよく、従来技術と違ってマスクを取り替える必要がなく、高精細な複数種の薄膜パターンの形成を効率よく行なうことができる。
【0016】
また、本発明のマスクによれば、上記効果に加えてマスクを横方向にスライド移動する際に、マスクのフィルムと基板との接触面積を小さくして、両者間の摩擦を低減することができる。したがって、マスクの移動を安定して行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるマスクの実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は底面図、(c)は(a)のO−O線断面矢視図、(d)は(c)の一部拡大図である。
【図2】本発明によるマスクの製造について説明する工程図である。
【図3】本発明のマスクに使用するフィルムの一構成例を示す平面図である。
【図4】本発明のマスクに使用するフィルムの他の構成例を示す平面図である。
【図5】本発明による薄膜パターン形成方法を説明する図であり、R有機EL層形成工程を示す工程図である。
【図6】本発明による薄膜パターン形成方法を説明する図であり、G有機EL層形成工程を示す工程図である。
【図7】本発明による薄膜パターン形成方法を説明する図であり、B有機EL層形成工程を示す工程図である。
【図8】本発明の薄膜パターン形成方法において使用するTFT基板の一構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明によるマスクの実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は底面図、(c)は(a)のO−O線断面矢視図、(d)は(c)の一部拡大図である。このマスク1は、基板面に接触して設置され、基板上に一定の配列ピッチで並べて複数種の薄膜パターンを形成するためのものであり、フィルム2と、保持部材3とを備えて構成されている。
【0019】
上記フィルム2は、可視光を透過する一定面積の樹脂製シートであり、基板上に予め定められた複数種の薄膜パターンのうち、例えば一の薄膜パターン形成領域に対応して後述の保持部材3の開口部7内に薄膜パターンと同形状の貫通する開口パターン4を備えている。この開口パターン4は、基板上に予め設けられた一の薄膜パターン形成領域全体に跨るストライプ状のものであってもよいが、好ましくは、図1(a),(b)に示すように予め定められた位置(後述の保持部材3の細長状のブリッジ5に対応した位置)で分離された複数の開口パターン4として設けられたものが望ましい。
【0020】
さらに、上記フィルム2には、図1(c)に示すように、基板との接触面2aに、保持部材3の細長状のブリッジ5の形成位置に対応して該ブリッジ5の長軸に平行な突条部6が設けられている。この突条部6は、基板との接触面積を減らしてフィルム2が基板上をスライドし易くするためのものであり、例えば基板との接触面2aの上記突条部6を形成しようとする部分をマスキングして露光及び現像、又はエッチングして形成するとよい。
【0021】
より詳細には、上記フィルム2は、例えば厚みが10μm〜30μm程度のフォトレジストや感光性ポリイミド等の感光性物質で、液相のものであっても、ドライフィルムレジストであってもよい。又はポリエチレンテレフタレート(PET)等の非感光性物質であってもよい。フィルム2が感光性物質であるときには、基板との接触面2aの突条部6を形成しようとする部分をマスキングして露光及び現像し、フィルム2の上記接触面2aの一部を一定深さだけ除去して突条部6を形成するとよい。また、フィルム2が非感光性物質であるときには、TFT基板との接触面の突条部6を形成しようとする部分をマスキングしてドライエッチングし、フィルム2の上記接触面2aの一部を一定深さのだけ除去して突条部6を形成するとよい。
【0022】
上記保持部材3は、上記フィルム2の一面2bに面接触して該フィルム2を保持するものであり、例えばエッチングや、レーザ加工等の公知の技術を使用して、基板上の薄膜パターン形成領域に対応して薄膜パターンよりも形状が大きく、細長状の複数のブリッジ5により分離された貫通する複数の開口部7を形成した板体であり、例えば金属材料を含んで構成されている。なお、図1において、符号8は、基板に予め形成された基板側アライメントマークに対して位置合わせするためのマスク側アライメントマークである。
【0023】
保持部材3は、非金属材料で構成されていてもよい。この場合、一定電圧を印加可能に構成された静電チャックステージ上にマスク1と基板とを載置した状態でステージに電圧を印加すれば、保持部材3を基板側に静電吸着させて上記フィルム2を基板面に密着させることができる。したがって、開口パターン4の形成精度を向上することがでる。
【0024】
又は、保持部材3は、磁性材料を含んで構成されてもよい。この場合は、例えば電磁石を内蔵した磁気チャックステージ上にマスク1と基板とを載置した状態で電磁石をオンすれば、電磁石の磁力により保持部材3を吸着して、上記フィルム2を基板面に密着させることができる。したがって、この場合も、開口パターン4の形成精度を向上することができる。
【0025】
なお、保持部材3の開口部7は、同色の複数のアノード電極を内側に収容可能なストライプ状に形成されたものであってもよいが、好ましくは、図1(a)に示すように、有機EL層の形成に影響を及ぼさない予め定められた部分に設けられたブリッジ5により複数の開口部7に分離されたものであるのが望ましい。これにより、保持部材3の剛性が増し、撓みを抑えることができる。したがって、マスク1と基板との位置合わせ精度をより向上して薄膜パターンの形成精度をより向上することができる。
【0026】
次に、このように構成されたマスク1の製造について図2を参照して説明する。
先ず、図2(a)に示すように、フィルム2の基板との接触面2aとは反対側の面2bと、基板の薄膜パターン形成領域に対応して薄膜パターンよりも形状が大きく、細長状の複数のブリッジ5により分離された貫通する複数の開口部7を形成した例えば金属材料からなる保持部材3とを、同図に矢印で示すように面接合し、同図(b)に示すマスク用部材9を形成する。
【0027】
上記面接合は、好ましくは、図3に示すように、一部(例えば周縁領域)に金属膜10をコーティングしたフィルム2を使用して、該金属膜10上に塗布されたノンフラックス半田11によりフィルム2を保持部材3にノンフラックス半田付けするとよい。また、大面積の基板上の複数領域に薄膜パターン群を形成する場合には、図4に示すように、基板上の上記複数領域に対応したフィルム2の複数領域12の周縁領域に金属膜10をコーティングし、該金属膜10上に上記各領域12を囲んでノンフラックス半田11を塗布したフィルム2を使用するとよい。このようなフィルム2と保持部材3とをノンフラックス半田付けして形成したマスク1を使用すれば、例えば薄膜パターンとしての有機EL層を真空蒸着して形成する際に半田からアウトガスが発生せず、アウトガスの不純物により有機EL層がダメージを受けるおそれがない。なお、図3及び図4に示す符号13は、保持部材3に形成されたマスク側アライメントマーク8に対応して形成された開口であり、フィルム2を通して基板上の基板側アライメントマークを観察可能にするためのものである。
【0028】
上記面接合には、保持部材3にフィルム状の樹脂を圧着させる方法、保持部材3にフィルム状の樹脂を接着させる方法、半乾燥状態の樹脂溶液に保持部材3を圧着する方法、又は保持部材3に溶液状の樹脂をコーティングする方法等が含まれる。
【0029】
詳細には、上記フィルム状の樹脂を圧着させる方法には、熱可塑性のフィルム2や表面に融着性処理が施されたフィルム2に保持部材3を熱圧着する方法や、フィルム2の表面を改質処理して保持部材3を熱圧着する方法がある。この場合、フィルム2の表面にカルボキシル基(−COOH)やカルボニル基(−COO)等を形成して表面の改質を行えば、金属製の保持部材3との界面における化学結合により接着が可能となる。又は、フィルム2の表面を大気圧プラズマ又は減圧プラズマ中でプラズマ処理したり、アルカリ溶液でフィルム2の表面をウェットエッチングしたりしてフィルム2の表面を改質してもよい。
【0030】
また、保持部材3にフィルム状の樹脂を接着させる方法には、溶剤を含まない、又は溶剤を極めて少ない量だけ含む硬化性樹脂により接着する方法があり、前述のノンフラックス半田による接着方法もこれに含まれる。
【0031】
次いで、図2(c)に示すように、マスク用部材9を基準パターン14を形成した基板15(例えば、有機EL表示用TFT基板のダミー基板)上に載置した後、マスク側アライメントマーク7と図示省略の基板側アライメントマークとを例えば顕微鏡により観察しながら、各マークが一定の位置関係を成すように調整してマスク用部材9と基板15との位置合わせを行う。
【0032】
続いて、波長が400nm以下の、例えばKrF248nmのエキシマレーザを使用して、図2(d)に示すように、保持部材3の開口部7内に位置するフィルム2の部分で、上記基板15の基準パターン14上の薄膜パターン形成領域に対応したフィルム2の部分にエネルギー密度が0.1J/cm〜20J/cmのレーザ光Lを照射し、同図(e)に示すように当該部分に2μm程度の薄い層を残して一定深さの穴部16を形成する。このような紫外線のレーザ光Lを使用すれば、レーザ光Lの光エネルギーによりフィルム2の炭素結合が一瞬のうちに破壊されて除去されるため、残渣の無いクリーンな穴あけ加工を行うことができる。
【0033】
その後、図2(f)に示すように、フィルム2の基板15との接触面2aの突条部6を形成しようとする部分をマスキングして、フィルム2の材料に応じて露光及び現像、又はエッチングすることにより一定深さの溝を形成し、保持部材3のブリッジ5の形成位置に対応した上記接触面2aにブリッジ5の長軸に平行な突条部6を形成する。このとき同時に、上記穴部16が貫通して開口パターン4が形成される。これにより、本発明のマスク1が完成する。
【0034】
次に、本発明のマスク1を使用して行う薄膜パターン形成方法について、図5〜図7を参照して説明する。ここでは、基板が、図8に示すように薄膜パターンとしてのR有機EL層17R、G有機EL層17G及びB有機EL層17Bの形成領域(各色対応のアノード電極21R,21G,21B上の領域)の各境界部に、成膜された各色有機EL層17R〜17Bの面よりも突出するように高さが設定された例えば窒化シリコン(SIN)膜から成る隔壁18が予め設けられた有機EL表示装置用のTFT基板19である場合について説明する。
【0035】
先ず、第1ステップにおいては、図5(a)に示すようにTFT基板19上にマスク1を載置し、マスク1に形成されたマスク側アライメントマーク7とTFT基板19に予め形成された図示省略の基板側アライメントマークとを顕微鏡により観察しながら、両マークが予め定められた位置関係となるように調整してマスク1とTFT基板19とを位置合わせする。これにより、同図(a)に示すように、マスク1の開口パターン4がTFT基板19のR対応のアノード電極21R上に合致することになる。
【0036】
第2ステップにおいては、マスク1とTFT基板19とを密着一体化させた状態で例えば真空蒸着装置の真空槽内に設置し、図5(b)に示すように、TFT基板19のR対応のアノード電極21R上にマスク1の開口パターン4を介して正孔注入層、正孔輸送層、R発光層、電子輸送層等の積層構造となるように順次成膜してR有機EL層17Rを蒸着形成する。
【0037】
第3ステップにおいては、マスク1とTFT基板19とを密着一体化したものを真空蒸着装置の真空槽内から取り出し、マスク1を、図6(a)に矢印で示すようにTFT基板19上を各色有機EL層21R〜21Bの配列ピッチと同寸法だけ各色有機EL層21R〜21Bの並び方向にTFT基板19上をスライドさせて移動する。この場合、顕微鏡下でマスク面を観察しながら、マスク1の開口パターン4がG対応アノード電極21G上に合致するように調整してもよく、又はTFT基板に形成したG用基板側アライメントマークとマスク側アライメントマーク8とが合致するように調整してもよい。
【0038】
第4ステップにおいては、上記第2ステップと同様にして、マスク1とTFT基板19とを密着一体化させた状態で例えば真空蒸着装置の真空槽内に設置し、図6(b)に示すように、TFT基板19のG対応のアノード電極21G上にマスク1の開口パターン4を介して正孔注入層、正孔輸送層、G発光層、電子輸送層等の積層構造となるように順次成膜してG有機EL層17Gを蒸着形成する。
【0039】
第5ステップにおいては、上記第3ステップと同様にして、マスク1とTFT基板19とを密着一体化したものを真空蒸着装置の真空槽内から取り出し、マスク1を、図7(a)に矢印で示すように各色有機EL層17R〜17Bの配列ピッチと同寸法だけ各色有機EL層17R〜17Bの並び方向にTFT基板19上をスライドさせて移動し、マスク1の開口パターン4をB対応アノード電極21B上に合致させる。
【0040】
第6ステップにおいては、上記第2又は第4ステップと同様にして、マスク1とTFT基板19とを密着一体化させた状態で例えば真空蒸着装置の真空槽内に設置し、図7(b)に示すように、TFT基板19のG対応のアノード電極21G上にマスク1の開口パターン4を介して正孔注入層、正孔輸送層、B発光層、電子輸送層等の積層構造となるように順次成膜してB有機EL層17Bを蒸着形成する。これにより、一枚のマスク1を使用して複数色の有機EL層21R〜21Bを順次形成することができ、有機EL層形成工程を効率よく行なうことができる。
【0041】
この場合、マスク1を横方向にスライド移動する際には、フィルム2の面2aが有機EL層17R,17Gに接触せず、且つフィルム2の面2aに設けられた突条部6が隔壁18上を滑るので、フィルム2と隔壁18との間の摩擦を低減することができる。したがって、マスク1を安定してTFT基板19上をスライド移動させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1…マスク
2…フィルム
2a…基板との接触面
3…保持部材
4…開口パターン
5…ブリッジ
6…突条部
7…開口部
15…基板
17R…R有機EL層(薄膜パターン)
17G…G有機EL層(薄膜パターン)
17B…B有機EL層(薄膜パターン)
18…隔壁
19…TFT基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に一定の配列ピッチで並べて一定形状の複数種の薄膜パターンを形成する薄膜パターン形成方法であって、
前記複数種の薄膜パターンのうち、一の薄膜パターンの形成領域に対応して該薄膜パターンよりも形状の大きい開口部を形成した平板状の保持部材の一面に、可視光を透過する樹脂製のフィルムを面接合して保持すると共に、前記保持部材の前記開口部内に位置する前記フィルムの部分に前記一の薄膜パターン形成領域に対応して前記薄膜パターンと同形状の開口パターンを設けたマスクを前記フィルムが前記基板側となるようにして該基板上に位置決めし載置するステップと、
前記基板の前記一の薄膜パターン形成領域に前記マスクの開口パターンを介して成膜し、前記一の薄膜パターンを形成するステップと、
前記マスクを前記複数種の薄膜パターンの配列ピッチと同寸法だけ前記複数種の薄膜パターンの並び方向に移動するステップと、
前記基板の他の薄膜パターン形成領域に前記マスクの開口パターンを介して成膜し、他の薄膜パターンを形成するステップと、
を行うことを特徴とする薄膜パターン形成方法。
【請求項2】
前記基板には、前記複数種の薄膜パターン形成領域の各境界部に、成膜された薄膜パターンの面よりも突出するように高さが設定された隔壁が予め設けられていることを特徴とする請求項1記載の薄膜パターン形成方法。
【請求項3】
前記保持部材は、細長状の複数のブリッジにより分離された複数の前記開口部を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の薄膜パターン形成方法。
【請求項4】
前記フィルムの前記基板との接触面には、前記保持部材の前記ブリッジの形成位置に対応して該ブリッジの長軸に平行な突条部が設けられたことを特徴とする請求項3記載の薄膜パターン形成方法。
【請求項5】
基板面に接触して設置され、基板上に一定の配列ピッチで並べて一定形状の複数種の薄膜パターンを形成するためのマスクであって、
可視光を透過する樹脂製のフィルムと、
前記基板上に予め定められた前記複数種の薄膜パターンの形成領域のうち、一の薄膜パターンの形成領域に対応して該一の薄膜パターンよりも形状が大きく、細長状の複数のブリッジにより分離された貫通する複数の開口部を形成した平板で構成され、一面に前記フィルムを面接合して保持する保持部材と、
を備え、
前記フィルムには、前記保持部材の前記開口部内に位置する部分に前記一の薄膜パターン形成領域に対応して前記薄膜パターンと同形状の開口パターンが設けられると共に、前記基板との接触面に、前記保持部材の前記ブリッジの形成位置に対応して該ブリッジの長軸に平行な突条部が設けられた、
ことを特徴とするマスク。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−95992(P2013−95992A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242089(P2011−242089)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】