説明

薬剤包装体

【課題】容器に収容された薬剤が外気に触れるのを避けながら、薬剤を容器から円滑に吐出できるようにする。
【解決手段】薬剤包装体50は、流動性の薬剤を収容するための容器51と、容器51の内部と外部とを連通するための、容器51の下縁に設けられた管体52と、管体52に一端が接続されかつ他端に薬剤を吐出するためのノズル54を有する、弾性材料からなるチューブ53とを備えている。容器51は、例えば、内面側から外面側に向けて直鎖低密度ポリエチレン樹脂フイルム層、延伸ポリアミド樹脂フイルム層、アルミニウム箔層および延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルム層を積層した柔軟なシート70からなるものであって両側縁にまち71を有する袋状に形成されており、内部空間が管体52を足部とする漏斗状に形成されるよう、シート70同士の接着部に傾斜部72が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤包装体、特に、流動性の薬剤を吐出するためのノズルを有する薬剤包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラへの給水や冷却塔その他の各種の水処理施設の用水や排水等についての溶存酸素濃度、硬度、pHおよび残留塩素濃度などの測定装置として、セル内に採取した試料水へ所定の薬剤を添加し、それにより発生する試料水の変化を透過光強度の変化として検出することで測定する装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この種の測定装置は、自動測定を目的として、薬剤の添加装置の改良が進められている。例えば、特許文献1、2には、薬剤カートリッジと、この薬剤カートリッジからセル内の試料水へ薬剤を徐々に添加するための添加機構とを備えた添加装置が記載されている。ここで、薬剤カートリッジは、ケース内に収納された薬剤包装体を備えたものであり、薬剤包装体は、流動性の薬剤を収容するための容器と、当該容器の内部と外部とを連通するための管体(接続部)と、管体に一端が接続されかつ他端に薬剤を吐出するためのノズルを有する、弾性材料からなるチューブとを備えたものである。一方、添加機構は、押圧ローラを回転することでチューブを扱き、それによって管体を通じて容器からチューブ内に流動してきた薬剤をノズルから吐出するものである。
【0004】
薬剤包装体において用いられる容器は、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂等の樹脂材料からなる成形品であり、一定の形状を維持したものである。このため、添加機構によりチューブのノズルから薬剤を安定に吐出するためには、容器に外気の導入部を設ける必要がある。ところが、当該導入部から容器内に外気が流入すると、容器内の薬剤が外気の影響で変性することがある。例えば、試料水の溶存酸素濃度や残留塩素濃度の測定においては、試料水に対して酸化還元型の発色試薬を薬剤として添加する必要があるが、この種の発色試薬は、外気と触れることでそれ自体の酸化還元が進行する。したがって、上述の添加装置においては、酸化還元型の薬剤の適用が実質的に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3214400号
【特許文献2】特許第3186577号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、流動性の薬剤を収容するための容器と、当該容器に通じかつ先端に薬剤を吐出するためのノズルを有する弾性材料からなるチューブとを備えた薬剤包装体について、容器に収容された薬剤が外気に触れるのを避けながら、薬剤を容器から円滑に吐出できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の薬剤包装体は、流動性の薬剤を収容するための容器と、容器の内部と外部とを連通するための、容器の下縁に配置された管体と、管体に一端が接続されかつ他端に薬剤を吐出するためのノズルを有する、弾性材料からなるチューブとを備えている。容器は、柔軟シートからなりかつ両側縁にまちを有する袋状に形成されており、内部が管体を足部とする漏斗状に形成されている。
【0008】
柔軟シートの一例は、容器の内面側から外面側に向けて直鎖低密度ポリエチレン樹脂フイルム層、延伸ポリアミド樹脂フイルム層、アルミニウム箔層および延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルム層を積層した積層シートからなるものである。また、柔軟シートの他の例は、容器の内面側から外面側に向けて直鎖低密度ポリエチレン樹脂フイルム層、酸化アルミニウム蒸着ポリアミド樹脂フイルム層および延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルム層を積層した積層シートからなるものである。
【0009】
これらの例の柔軟シートを用いた薬剤包装体は、例えば、柔軟シートの内面同士の溶着により容器の内部が上述の漏斗状に形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の薬剤包装体は、上述のような容器、管体およびチューブを備えているため、容器に収容された薬剤が外気に触れるのを避けながら、管体およびチューブを通じて容器から薬剤を円滑に吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の一形態に係る薬剤包装体を用いた測定装置の概略図。
【図2】前記測定装置において用いられる試薬供給部を図1のII方向から見た縦断面図。
【図3】前記薬剤包装体の斜視図。
【図4】前記薬剤包装体において用いられるシートの一例の断面図。
【図5】前記薬剤包装体において用いられるシートの他の例の断面図。
【図6】前記薬剤包装体において用いられるノズルの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1および図2を参照して、本発明の実施の一形態に係る薬剤包装体を用いた測定装置を説明する。図において、測定装置1は、試料水の溶存酸素濃度を測定するためのものであり、測定セル10、測定部20および試薬供給部30を主に備えている。
【0013】
測定セル10は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂を筒状に成形した不透明な容器であり、側壁に対向する一対の光透過窓10a,10bが嵌め込まれているとともに、上部に開口部11を有している。また、測定セル10の底部近傍の側壁には、測定装置1に対して測定対象になる試料水を供給するための流路2に接続された導入路12が設けられている。導入路12は、流路2側から順にフイルター13、定流量弁14および電磁弁15を有しており、流路2からの試料水を測定セル10内へ供給可能に設定されている。また、測定セル10の側壁には、開口部11の近傍において、試料水を外部に排出するための排水路16が設けられている。
【0014】
また、測定セル10の底部には、攪拌装置17が設けられている。攪拌装置17は、攪拌子17aとステータ17bとを備えている。攪拌子17aは、測定セル10の底部において回転可能に配置されており、磁石(図示省略)を内蔵している。ステータ17bは、攪拌子17aを取り囲むよう測定セル10の外側に配置されており、電磁誘導コイルを備えている。この電磁誘導コイルには、電源(図示省略)から電流が供給されるように設定されている。
【0015】
測定部20は、試料水における所要の波長の光の透過光強度を測定するためのものであり、光透過窓10a,10bを挟んで対向する発光体21aと受光体21bとを有している。ここで、発光体21aは、例えば、所要の波長の光を発光可能なLED(発光ダイオード)であり、また、受光体21bは、例えば、光透過窓10a,10bを透過する発光体21aからの光を受光可能なフォトトランジスタである。
【0016】
試薬供給部30は、図2に示すように、測定セル10の開口部11に対して着脱可能に配置される試薬カートリッジ40と、この試薬カートリッジ40から測定セル10へ試薬を排出させるための排出装置60とを主に備えている。試薬カートリッジ40は、中空のカートリッジケース41と、この中に収納された薬剤包装体50とを備えている。
【0017】
カートリッジケース41は、樹脂成形品であり、薬剤包装体50をその内部に収納するために、正面ケース42と背面ケース43とに二分割されている。正面ケース42と背面ケース43とを組み合わせることで形成されるカートリッジケース41は、概ね直方体状に形成された容器収納部44と、その底面中央から延設された筒状のローラ出入部45とを有している。ローラ出入部45の基端には、カートリッジケース41の内側に向けて、管体止め片45aが形成されている。この管体止め片45aは、薬剤包装体50の管体52(後述)を保持するための突起である。一方、ローラ出入部45の先端には、カートリッジケース41の内側に向けて、ノズル止め片45eが形成されている。このノズル止め片45eは、薬剤包装体50のノズル54(後述)を保持するための突起である。また、ローラ出入部45の背面ケース43側には、上下方向に延びるスリット45bが形成されている。さらに、ローラ出入部45の正面ケース42側内面には、スリット45bと対向する押圧面45cが上下方向に形成されている。この押圧面45cは、上下方向の略中央部において、弧状に凹んだ湾曲面45dを有している。
【0018】
薬剤包装体50は、図3に示すように、流動性の試薬(薬剤)を収容するための容器51、管体52、チューブ53およびノズル54を備えている。容器51は、例えば、所要の形状に裁断された数枚の柔軟なシート70の周縁部(図3の網掛け部分)を気密に接着することで形成された袋状のものであり、その両側縁のそれぞれにおいて、内部に試薬を充填することで厚さ方向に膨らむまち(ガゼット)71を有している。
【0019】
なお、この実施の形態において、容器51に収容される試薬は、試料水の溶存酸素濃度を測定するためのものであり、酸素と反応することで発色する薬剤(例えば、インジゴカルミン)を還元剤とともに水やアルコール系化合物(特に、グリコール化合物などの多価アルコール化合物)などの溶媒に溶解したものである。
【0020】
ここで用いられるシート70は、試薬の保存安定性を高めるため、外気の侵入を阻止可能なガスバリア性および遮光性を有するとともに、容器51の内面側において耐薬品性および熱溶着性を有するものが好ましい。このようなシート70としては、例えば、図4に示すように、容器51の内面側から外面側に向けて直鎖低密度ポリエチレン樹脂フイルム層701、延伸ポリアミド樹脂フイルム層702、アルミニウム箔層703および延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルム層704の各層を接着剤層を挟んで積層した4層シートを用いることができる。また、図5に示すように、容器51の内面側から外面側に向けて直鎖低密度ポリエチレン樹脂フイルム層701、酸化アルミニウム蒸着ポリアミド樹脂フイルム層705および延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルム層704の各層を接着剤層を挟んで積層した3層シートを用いることもできる。これらの積層シートを用いた場合、容器51は、所要の形状に裁断した数枚のシート70の内面同士を熱溶着することで形成することができる。なお、各積層シートの接着剤層には、例えば、ポリウレタン系、エポキシ系、ポリエステル系、シアノアクリレート系、ポリアクリル酸エステル系またはポリ酢酸ビニル系などの各種接着剤を用いることができる。
【0021】
管体52は、両端が開口した、耐薬品性を有する樹脂製の部材(例えば、高密度ポリエチレン樹脂の成形品)であり、一端側に径を縮小したコネクタ部52aが形成されている。また、管体52の長さ方向の略中央部の外周には、カートリッジケース41の管体止め片45aと係合する受け部52bが形成されている。管体52は、容器51の下縁中央部において、容器51の内部と外部とを連通するよう配置されており、受け部52bからコネクタ部52a側の部分が容器51から突出している。
【0022】
ここで、管体52は、容器51の内側に配置された端部の外周面に対してシート70の内面が気密に接着されている。また、容器51の内部、すなわち内部空間は、下部が管体52を足部とする漏斗状に形成されるよう、シート70同士の接着部に傾斜部72が形成されている。
【0023】
チューブ53は、弾性材料からなるものであり、一端に管体52のコネクタ部52aが挿入されることで管体52に連結している。
【0024】
チューブ53を形成する弾性材料としては、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンとの共重合体等の二元系フッ素ゴムを例示することができる。二元系フッ素ゴムは、ガスバリア性(特に、酸素遮断性)および耐薬品性に優れていることから、容器51に収容する試薬が試料水の溶存酸素濃度を測定するための酸化還元型試薬の場合に特に適しており、通常、プレス成形によりチューブ53を形成することができる。
【0025】
ノズル54は、容器51に収容された試薬を吐出するためのものであり、チューブ53の先端に接続されている。ノズル54は、図6に示すように、基端が開口しかつ先端が閉鎖した管状のノズル本体55と、このノズル本体55の先端側の外周面に装着された虫ゴム56とを備えている。ノズル本体55は、耐薬品性を有する樹脂製の部材(例えば、高密度ポリエチレン樹脂の成形品)であり、その内径は、長さ方向に均一に設定されている。ノズル本体55の基端側には、コネクタ部55aが形成されており、このコネクタ部55aがチューブ53の先端に挿入されている。一方、ノズル本体55の先端側の側面には、ノズル本体55の中心軸と直交する方向に貫通する吐出孔55bが形成されている。すなわち、ノズル本体55は、その内部と連通する2つの吐出孔55bを有している。また、ノズル本体55の長さ方向の略中央部の外周には、肉厚の段差部55cが形成されている。この段差部55cの基端側の外周には、カートリッジケース41のノズル止め片45eと係合する受け部55dが形成されている。さらに、段差部55cの先端側の外周には、溝部55eが形成されており、この溝部55eには、シールリング57(例えば、フッ素ゴム製のDリング)が装着されている。虫ゴム56は、耐薬品性を有する弾性材料(例えば、ポリオレフィン系ゴム)からなるチューブであり、2つの吐出孔55bを閉鎖するようノズル本体55の先端側の外周面に装着されている。
【0026】
このような薬剤包装体50は、管体52の受け部52bがカートリッジケース41の管体止め片45aと係合され、容器収納部44内において容器51が起立した状態で配置されている。また、チューブ53は、ローラ出入部45内において下方に延びており、ノズル本体55の受け部55dがカートリッジケース41のノズル止め片45eと係合されている。この結果、容器51に収容された流動性の試薬は、管体52を通じてチューブ53内に充満し、ノズル本体55の吐出孔55bからの流出が虫ゴム56により阻止された状態になる。なお、試薬カートリッジ40の装着時、ノズル54の先端部分は、測定セル10内に突出するよう配置され、測定セル10の内周面に対してシールリング57により気密に装着される。
【0027】
排出装置60は、薬剤包装体50の容器51内に収容された試薬を排出するためのものであり、図示しないモーターに接続された回転駆動軸61、駆動アーム62および押圧ローラ63を主に備えている。回転駆動軸61は、スリット45bの外側に配置されており、図2の反時計方向に回転可能である。駆動アーム62は、一端が回転駆動軸61に連結されており、他端に押圧ローラ63が回転自在に装着されている。この駆動アーム62は、回転駆動軸61の回転により、図2に二点鎖線で示すように反時計方向に回転可能であり、この回転により、スリット45b部分において押圧ローラ63がローラ出入部45から出入り可能に設定されている。
【0028】
上述の測定装置1は、制御装置(図示省略)を備えており、この制御装置が各部の動作を制御することで、次のように試料水の溶存酸素濃度を測定する。
【0029】
次に、上述の測定装置1による試料水の水質検査動作を説明する。
先ず、測定装置1の電磁弁15を開放状態に設定する。これにより、試料水が流路2から導入路12を通じて測定セル10内に流入する。この際、試料水中に含まれる夾雑物はフイルター13により取り除かれる。また、測定セル10内に流入する試料水の流量は、定流量弁14により制御される。測定セル10内に連続的に流入する試料水は、測定セル10内を満たし、排水路16から外部に連続的に排出される。このとき、ステータ17bの電磁誘導コイルに通電すると、それによって生じる磁場を攪拌子17a内の磁石が受け、それによって測定セル10内の攪拌子17aが回転する。これにより、測定セル10内に流入した試料水は攪拌され、測定セル10が試料水により前洗浄される。
【0030】
上述のような前洗浄の後、ステータ17bの電磁誘導コイルへの通電を一旦停止し、また、電磁弁15を閉鎖すると、測定セル10内への試料水の流入が断たれ、測定セル10内において、排水路16のレベルまで試料水が貯留される。この結果、ノズル58の先端部は、貯留された試料水中に配置されることになる。この状態で測定部20を作動させ、発光体21aから受光体21bに向けて光を照射する。そして、発光体21aから照射される光について、試料水の透過光強度を測定する。
【0031】
次に、ステータ17bの電磁誘導コイルへの通電を開始して攪拌子17aの回転を再開し、その状態を継続しながら、同時に排出装置60のモーターを駆動させて回転駆動軸61を回転させる。この結果、駆動アーム62が図2の反時計方向に回転し、それに伴って押圧ローラ63がチューブ53を押圧面45cへ押圧しながら下方向に扱く。そして、容器51内から管体52を通じてチューブ53内へ流出した試薬は、ノズル54へ圧送され、ノズル本体55の吐出孔55bから溢れ出る。これにより、ノズル本体55と虫ゴム56との間に隙間が形成され、この隙間を通じて一定量の試薬が測定セル10内の試料水中へ吐出される。このため、駆動アーム62の回転動作を繰返すと、試料水には、駆動アーム62の回転動作毎に、上述の一定量の試薬が試料水中へ断続的に徐々に注入されることになる。
【0032】
ここで、容器51は、柔軟なシート70からなり、両側縁にまち71を有するものであるため、ノズル54から試薬が吐出されるに従ってまち71が閉じる方向に収縮する。このため、容器51は、外気を流入させずにノズル54から試薬を吐出させることができ、収容した試薬を外気の影響で変性させることなく安定に維持することができる。また、容器51は、内部空間が上述のような漏斗状に形成されているため、収容した試薬を管部52へ円滑に集中させることができ、それによって試薬を円滑に管部52内へ流し落とすことができる。このため、容器51に収容した試薬は、残さずに使い切ることができる。
【0033】
上述のようにして測定セル10内に注入された試薬は、攪拌子17aの回転により攪拌される試料水中に溶解され、試料水に含まれる溶存酸素と反応して試料水を変色させる。
【0034】
上述のような試薬の注入工程において、制御装置は、攪拌子17aの回転を継続し、また、測定部20により、徐々に注入される試薬により変色する試料水の透過光強度(I)を連続的に測定する。この際、制御装置は、試料水に対して注入される試薬の量の増加に伴う透過光強度の変化の変化量を判定する。ここで判定する透過光強度の変化量は、通常、上述の一定量の試薬が注入される前後の透過光強度の差(ΔI)である。通常、試料水の透過光強度は、試薬の注入回数(すなわち、駆動アーム62の回転動作数)に従って、徐々に減少する。ここで、試料水中の溶存酸素の全てが第X回目以前に注入された試薬と反応した場合、第X回目より後の注入動作においてそれ以上の試薬を注入しても、試料水の変色は進行しにくくなり、試料水の透過光強度は変化しにくくなる。すなわち、試薬の第X回目の注入後の透過光強度Iと第X+1回目の注入後の透過光強度Iとの差(I−I、すなわち、上記ΔI)は、微差になる。したがって、ΔIが所定量以下になったとき、試料水にそれまで以上の試薬を注入しても、その試薬は試料水中の溶存酸素との反応に関与せず、そのままの状態で試料水中に残留することになる。
【0035】
そこで、制御装置は、ΔIが所定量以下になったと判定した場合、駆動アーム62の回転動作を停止する。これにより、試料水に対する試薬の追加的な注入が停止される。続いて、制御装置は、その時点における試料水の透過光強度(I)と試薬注入前の透過光強度(I)との比(透過光強度比:I/I)を求める。そして、予め作成された透過光強度比と溶存酸素濃度との検量線データに基づいて、制御装置は、試料水中の溶存酸素濃度を算出する。
【0036】
このようにして試料水中の溶存酸素濃度を測定した後、再度攪拌子17aを回転させるとともに電磁弁15を開放すると、測定セル10内に貯留された、試薬を含む試料水は、導入路12から新たに流入する試料水により押し流され、排水路16から外部に排出される。これにより、測定セル10の洗浄が完了する。
【0037】
なお、上述のような試料水の水質検査において、薬剤包装体50の内部に充填された試薬がなくなったとき、試薬カートリッジ40を取り外してカートリッジケース41の正面ケース42と背面ケース43とを分割し、薬剤包装体50のみを交換することもできるが、通常は取り外した試薬カートリッジ40の全体を別の試薬カートリッジ40に交換するのが好ましい。
【0038】
上述の実施の形態では、試料水の溶存酸素濃度を測定するために薬剤包装体50の容器51にそのための試薬を収容した場合について説明したが、この試薬(薬剤)は、試料水について測定する他の水質指標、例えば、残留塩素濃度、硬度、シリカ濃度、Mアルカリ度またはpH等に応じて他のものに変更することができる。ここで、残留塩素濃度は、溶存酸素濃度を測定する場合と同じく外気の影響を受けて変性しやすい酸化還元型の試薬(薬剤)を用いる必要があるが、他の水質指標についてはキレート剤や錯形成剤等の外気の影響を受けにくい試薬を用いることができる。このため、他の水質指標の測定のための薬剤包装体50では、チューブ53を形成する弾性材料として、サンゴバン社の商標「ファーメド」等のポリオレフィン系ゴムを用いることができ、その場合、チューブ53は押出成形により形成することができる。
【符号の説明】
【0039】
50 薬剤包装体
51 容器
52 管体
53 チューブ
54 ノズル
70 シート
71 まち
701 直鎖低密度ポリエチレン樹脂フイルム層
702 延伸ポリアミド樹脂フイルム層
703 アルミニウム箔層
704 延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルム層
705 酸化アルミニウム蒸着ポリアミド樹脂フイルム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性の薬剤を収容するための容器と、
前記容器の内部と外部とを連通するための、前記容器の下縁に配置された管体と、
前記管体に一端が接続されかつ他端に前記薬剤を吐出するためのノズルを有する、弾性材料からなるチューブとを備え、
前記容器は、柔軟シートからなりかつ両側縁にまちを有する袋状に形成されており、内部が前記管体を足部とする漏斗状に形成されている、
薬剤包装体。
【請求項2】
前記柔軟シートは、前記容器の内面側から外面側に向けて直鎖低密度ポリエチレン樹脂フイルム層、延伸ポリアミド樹脂フイルム層、アルミニウム箔層および延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルム層を積層した積層シートからなる、請求項1に記載の薬剤包装体。
【請求項3】
前記柔軟シートは、前記容器の内面側から外面側に向けて直鎖低密度ポリエチレン樹脂フイルム層、酸化アルミニウム蒸着ポリアミド樹脂フイルム層および延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フイルム層を積層した積層シートからなる、請求項1に記載の薬剤包装体。
【請求項4】
前記柔軟シートの内面同士の溶着により前記容器の内部が前記漏斗状に形成されている、請求項2または3に記載の薬剤包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−477(P2013−477A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136938(P2011−136938)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】