説明

薬液揮散器

【課題】芯部材を薬液容器から取り外すことなく、薬液容器内に薬液を手軽に補給することができるうえ、薬液容器が倒れた場合でも薬液が外部に流出することを防止できる薬液揮散器を提供する。
【解決手段】薬液揮散器は、薬液容器2と、薬液を吸い上げて揮散させる芯部材3と、薬液容器2の上部開口20に設けられ、芯部材3の上端部を薬液容器2の外部に露出させた状態で芯部材3を保持する保持部材4と、保持部材4上に設けられるカバー部材5と、カバー部材5上に設けられるキャップ6とを備える。保持部材4は、薬液容器2の内部に薬液を注入可能な少なくとも1つの注入口46を有している。カバー部材5は、保持部材4の注入口46を開閉自在に塞ぐことが可能であり、かつ、芯部材3の上端部を挿通する挿通口53を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に収容した液状の消臭剤・芳香剤などの薬液を外部空間に揮散させる薬液揮散器に関し、特に、薬液を手軽に補給することができる薬液揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
室内や自動車などの空間の臭気による不快感をなくし、快適な空間を生み出すために、液状の消臭剤・芳香剤などの薬液を自然に外部に揮散させる薬液揮散器が広く使用されている。薬液揮散器は、一般に、薬液を収容する薬液容器と、薬液に浸された芯部材(吸液芯)とを有している(例えば、特許文献1を参照)。芯部材は、上端部が薬液容器の上部開口から外部空間に露出しており、吸い上げた薬液を外部空間に揮散させるようになっている。芯部材は、薬液容器の上部開口に取り付けられた保持部材により保持される。
【0003】
上記した特許文献1に記載の薬液揮散器では、薬液容器内の薬液が少量になって薬液を補給しようとした場合に、薬液容器の上部開口から薬液を注ぎ込めるように、薬液容器の上部開口に取り付けられた芯部材付きの保持部材を取り外す必要がある。このとき、芯部材が薬液により濡れていると、取り外しの際に、手に薬液が付着するおそれがある。また、取り外した芯部材付きの保持部材を置く場所が必要となるうえ、机や床などの上にこれを直接置くと、芯部材から薬液が垂れて家財に付着するおそれもある。
【0004】
そこで、芯部材(保持部材)を取り外すことなく、薬液容器内に薬液を補給することができる薬液揮散器が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2に記載の薬液揮散器は、図17に示すように、芯部材102を保持するために薬液容器105の上部開口106に設けられた保持部材101に、薬液補給用の漏斗部103が形成されている。保持部材101は、上端のフランジ部104が薬液容器105の首部110の上縁部に係止されて取り付けられている。芯部材102は、漏斗部103の下端の円筒部107に挿通されて保持されている。円筒部107は、上部に大径部107Aを有しており、漏斗部103に補給された薬液が流出する複数の開口部108が設けられている。なお、図中、109は空気孔である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭57−87608号公報
【特許文献2】特開2003−235950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献2に記載の薬液揮散器によると、薬液容器105への薬液の補給の際には、漏斗部103に薬液を供給することで、薬液が円筒部107(大径部107A)の側面に形成された開口部108を介して薬液容器105内に流れ込む。よって、保持部材101を薬液容器105から取り外すことなく、薬液の補給作業を行うことが可能になっている。ただし、特許文献2に記載の薬液揮散器では、開口部108の面積が小さいと、薬液容器105内への薬液の補給に時間がかかる一方で、補給時間を短縮するために開口部108の面積を大きくすると、使用時(薬液揮散時)において、不意に薬液容器105を倒してしまった場合に、薬液容器105内の薬液が開口部108を介して外部に流出しやすいという課題がある。
【0007】
本発明は、上記した課題に着目してなされたもので、芯部材(保持部材)を薬液容器から取り外すことなく、薬液容器内に薬液を手軽に補給することができるうえ、薬液容器が倒れた場合でも薬液が外部に流出することを防止できる薬液揮散器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、上部に開口を有し、内部に薬液を収容可能な薬液容器と、薬液を吸い上げて揮散させる芯部材と、前記薬液容器の上部開口に設けられ、前記芯部材の少なくとも一部分を上方に露出させた状態で前記芯部材を保持する保持部材と、を備えた薬液揮散器において、前記保持部材は、前記薬液容器の内部に薬液を注入可能な少なくとも1つの注入口を有しており、前記保持部材の注入口を開閉自在に塞ぐことが可能であり、かつ、前記芯部材の露出部を挿通する挿通口を有するカバー部材をさらに備える薬液揮散器により達成される。
【0009】
上記構成の薬液揮散器によると、使用時(薬液の揮散時)において、カバー部材により保持部材の注入口を塞ぐことで、使用時に、不意に薬液容器が倒れてしまった場合でも、薬液容器内の薬液が保持部材の注入口からこぼれて外部に流出することが防止できる。一方、薬液の揮散に伴い、薬液容器内の薬液が少量になった場合には、カバー部材による保持部材の注入口の閉塞を解除することで、保持部材の注入口から薬液容器内に薬液を注ぎ込むことができる。このように、上記構成の薬液揮散器では、薬液容器への薬液の補給を、芯部材および保持部材を薬液容器から取り外すことなく行うことができるので、薬液の補給作業を手軽に行うことができるうえ、補給作業の際に、芯部材や保持部材を触る必要がないので、作業者の手が薬液で汚れることもない。また、補給作業の際に芯部材および保持部材を取り外すことがないので、これらを置くスペースを必要とせず、かつ、机や床などに薬液が垂れて付着するおそれもない。
【0010】
本発明の好ましい実施態様においては、前記カバー部材は、前記保持部材に対して着脱自在であり、前記挿通口と、装着状態において前記保持部材の注入口を覆う蓋部とを有することを特徴としている。
【0011】
この実施態様によると、カバー部材を保持部材に対して着脱自在とすることで、使用時(薬液の揮散時)には、カバー部材を装着状態とすることで、保持部材の注入口が蓋部により覆われる結果、薬液容器内の薬液が注入口から外部にこぼれることを防止できる。また、薬液容器への薬液の補給の際には、カバー部材を取り外すことで、保持部材の注入口が露出するので、手軽に薬液の補給作業を行うことができる。
【0012】
本発明の好ましい他の実施態様においては、前記カバー部材は、前記挿通口と、前記保持部材の注入口を覆う蓋部と、前記注入口上に位置可能な注ぎ口とを有することを特徴としている。上記実施態様において、注ぎ口を注入口上に位置させる構成としては、例えば、カバー部材が、保持部材に対して少なくとも所定の角度範囲で回転自在であり、カバー部材の回転により注入口上に前記注ぎ口を位置させる構成を例示することができる。
【0013】
この実施態様によると、カバー部材を保持部材に対して回転自在とすることで、使用時(薬液の揮散時)には、カバー部材の蓋部により保持部材の注入口を覆えば、薬液容器内の薬液が注入口から外部にこぼれることを防止できる。また、薬液容器への薬液の補給の際には、カバー部材を回転させて、注ぎ口と保持部材の注入口とを重ね合わせることで、手軽に薬液の補給作業を行うことができる。
【0014】
また、その他の構成としては、例えば、蓋部が、カバー部材に水平方向にスライド自在に設けられ、蓋部のスライドにより注入口上に位置する前記注ぎ口を設ける構成を例示することができるが、何もこれらの構成に限られるものではない。
【0015】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記注入口が、薬液の詰め替え容器の注出口よりも大きく形成されていることを特徴としている。
【0016】
この実施態様によると、薬液の詰め替え容器の注出口を保持部材の注入口内に挿入できるので、詰め替え容器内の液体を薬液容器内にこぼれることなく補給できるうえ、薬液を薬液容器内に勢いよく注入でき、注入速度を上げることができる。
【0017】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記芯部材の露出部を密閉するキャップをさらに備えることを特徴としている。この実施態様によると、非使用時にキャップを取り付けることで、芯部材の露出部がキャップ内に密閉されるので、薬液の揮散を規制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の薬液揮散器によると、芯部材(保持部材)を薬液容器から取り外すことなく、薬液容器内に薬液を手軽に補給することができるうえ、薬液容器が倒れた場合でも薬液が外部に流出することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬液揮散器の断面図である。
【図2】図1の薬液揮散器の薬液容器からキャップを外した状態の断面図である。
【図3】図1の薬液揮散器の薬液容器からキャップを外した状態の平面図である。
【図4】保持部材の平面図である。
【図5】他の実施形態の保持部材の平面図である。
【図6】他の実施形態の保持部材の平面図である。
【図7】図1の薬液揮散器の薬液容器からキャップおよびカバー部材を外した状態の断面図である。
【図8】一般的な薬液の詰め替え容器の斜視図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る薬液揮散器の断面図である。
【図10】図9の薬液揮散器の薬液容器からキャップを外した状態の断面図である。
【図11】図9の薬液揮散器の薬液容器からキャップを外した状態の平面図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係る薬液揮散器の断面図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係る薬液揮散器の断面図である。
【図14】本発明の他の実施形態に係る薬液揮散器の薬液容器からキャップを外した状態の断面図である。
【図15】図14の平面図である。
【図16】図14の薬液揮散器のカバー部材を回転させた後の状態を示す断面図である。
【図17】従来例の薬液揮散器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る薬液揮散器を示す断面図である。また、図2は、図1の薬液揮散器の薬液容器2からキャップ6を外した状態を示す断面図であり、図3は、図1の薬液揮散器の薬液容器2からキャップ6を外した状態の平面図である。
【0021】
本実施形態の薬液揮散器は、上部に開口20(以下、「上部開口20」という。)を有し、内部に薬液を収容可能な薬液容器2と、薬液容器2内の薬液を吸い上げて外部空間に揮散させる芯部材3と、薬液容器2の上部開口20に設けられ、芯部材3を保持する保持部材4と、保持部材4上に設けられるカバー部材5と、カバー部材5上に設けられるキャップ6とを備えている。なお、キャップ6は、薬液を揮散させない薬液揮散器の非使用時には取り付けられているが、薬液揮散器の使用時(薬液の揮散時)には取り外される。
【0022】
薬液容器2は、図1〜図3に示すように、上端に前記上部開口20を有する円筒状の首部21と、首部21に連続して設けられた中空かつ有底の胴部22とを備えている。薬液容器2は、一部または全体が透明または半透明の材料で構成され、外部から薬液の残量が確認できる。この薬液容器2としては、例えば、透明のプラスチック製ブロー成形品が挙げられるが、ガラス製品の他、インジェクション成型品などであってもよい。首部21は、上端に上部開口20を有する小径部21Aと、小径部21Aよりも僅かに径が大きな大径部21Bとが、上下に連続して設けられた形状となっている。小径部21Aおよび大径部21Bの外周面には、第1の雄ネジ部23Aおよび第2の雄ネジ部23Bがそれぞれ設けられている。
【0023】
芯部材3は、主に薬液の吸い上げと薬液の揮散に優れた繊維で構成され、全体として棒状に形成されているものである。芯部材3は、その下端部が薬液容器2の底面に当接し得るとともに少なくとも上端部が保持部材4よりも上方に露出するように、保持部材4によって保持されている。なお、芯部材3は、薬液を吸い上げ可能であれば形状は特に限定されず、筒状やハニカム状など任意の形状とすることができる。また、芯部材3を形成する前記繊維層としては、植物繊維やパルプなどの天然繊維、フェルト、木綿、レーヨン、ポリエステル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの合成繊維、またはそれらの混合繊維などの繊維質材料で構成することができる。また、芯部材3は、単一の樹脂(例えばジュラコンなど)で形成されてもよい。芯部材3の上端部(露出部)に当接するように蒸散用マットを設け、芯部材3が吸い上げた薬液を前記蒸散用マット全体に拡げて薬液を蒸散させるように構成してもよい。
【0024】
保持部材4は、薬液容器2の上部開口20に設けられ、芯部材3の少なくとも上端部を上方に露出させた状態で、芯部材3を薬液容器2内に保持している。この保持部材4は、合成樹脂製であり、本実施形態では、図1〜図4に示すように、本体部40と、本体部40の上端部から外方に張り出す環状のフランジ部41とを備えている。本体部40は、円筒状の周壁部40Aと、周壁部40Aの下端部に設けられた水平な保持面部40Bとを備えており、周壁部40Aの外径は、薬液容器2の上部開口20の径と略同一である。一方、フランジ部41の外径は、薬液容器2の上部開口20の径よりも大きくなっており、これにより、周壁部40Aを薬液容器2の上部開口20内に嵌め込むことで、周壁部40Aの外周面が薬液容器2の首部21の内周面に当接し、かつ、フランジ部41が首部21の上縁部に係止して、保持部材4が薬液容器2に取り付けられる。
【0025】
保持面部40Bは、薬液容器2の首部21内に位置しており、その中央位置には、芯部材3を保持するための保持部43を備えている。この保持部43は、芯部材3を挿入するための挿入口44と、挿入口44の周縁から下方に延びる筒状の挟持部45とを有し、挟持部45は、芯部材3の外径よりも僅かに小さい内径を有している。芯部材3を挿入口44から挟持部45に押し込んで挿入すると、芯部材3が弾性変形して挟持部45の内周面を押圧し、その結果、芯部材3が挟持部45の内周面と接触する。これにより、芯部材3は所定の高さ位置で保持される。芯部材3の高さ位置を調節して、保持部材4より上方に突き出て外部空間に露出する芯部材3の長さを変えることで、薬液の揮散量を調節することが可能となる。
【0026】
保持面部40Bの挿入口44の周囲には、所定の大きさを有する注入口46が少なくとも1つ(図示例では1つ)形成されている。この注入口46は、詳細は後述するが、薬液の揮散に伴って薬液容器2内の薬液が少量になった場合に、薬液容器2内に新しい薬液を補給するための補給口である。本実施形態では、注入口46が設けられた保持面部40Bが上部開口20より下方に位置し、周壁部40Aにより囲まれているため、薬液補給のために薬液を注入口46に注ぎ込む際に、薬液が注入口46の外側(保持面部40B上など)にこぼれたとしても、薬液容器2の外側に流れ出るのが防止されている。なお、本実施形態では、保持面部40Bは、水平な面として設けられているが、周壁部40Aから挿入口44に向けて低くなるような傾斜面としてもよい。これにより、薬液を注入口46に注ぎ込む際に、保持面部40B上にこぼれた薬液は挿入口44に向けて流れるので、これを芯部材3に吸収させることができる。
【0027】
注入口46は、図4では楕円形状に形成されているが、円形状、矩形状、または、図5および図6に示されているような略台形状などであってもよい。また、注入口46は、複数形成されていてもよく、例えば2つ(図5を参照)や4つ(図6を参照)形成されていてもよい。
【0028】
補給用の薬液を収納する詰め替え容器としては、図8に示すような、上部の一方の隅部70を指で摘んでこれを捻じ切ることで、当該部分を液体の注出口71とする、いわゆるパウチと呼ばれるタイプの詰め替え容器7が一般的に採用されている。従って、注入口46の大きさとしては、このような詰め替え容器7内の液体を薬液容器2内にこぼれることなくスムーズに補給するために、当該詰め替え容器7の注出口71を注入口46内に挿入可能な大きさ、つまり、当該詰め替え容器7の注出口71よりも大きく形成されていることが好ましい。具体的には、このような詰め替え容器7の注出口71は、一般的に、液体を注ぎ出す際には、横幅d1が5mm〜20mm、縦幅d2が0.5mm〜5mm程度の略楕円形状となる。また、注出口71から液体を注ぎ出しやすくするために、注出口71の開口形状が円形状または楕円形状に保持されているものも多く存在しているが、このタイプの注出口71では、一般的に、横幅d1が5mm〜20mm、縦幅d2が5mm〜20mm程度となっている。よって、注入口46の大きさとしては、最大横幅D1(図4〜図6を参照)が少なくとも5mm〜30mm、最大縦幅D2(図4〜図6を参照)が少なくとも2mm〜30mm程度に形成されているのが好ましい。これにより、薬液を薬液容器2内に勢いよく注入でき、注入速度を上げることもできる。
【0029】
カバー部材5は、合成樹脂製であり、平面視円形状をなし、保持部材4の上方を覆う上面部50と、上面部50から垂下する円形枠状の側壁部51とを備えている。側壁部51の内周面には、薬液容器2(首部21)の小径部21Aに設けられた第1の雄ネジ部23Aと螺合する雌ネジ部52が設けられており、側壁部51を小径部21Aに螺着させることで、カバー部材5は保持部材4を介して薬液容器2に着脱自在に取り付けられる。
【0030】
上面部50は、本実施形態では、薬液容器2の上部開口20内に位置する平面視円形状の下段部50aと、下段部50aの周囲において下段部50aより高い位置にある環状の上段部50bとを備えている。カバー部材5が薬液容器2に取り付けられた状態では、この下段部50aが、保持部材4の保持面部40Bの直上にほぼ隙間なく位置し、保持部材4の注入口46を完全に覆っている。このように、下段部50aが保持部材4の注入口46を塞ぐ蓋部として機能することで、薬液揮散器の使用時(薬液揮散時)において、不意に薬液容器2が倒れてしまった場合でも、薬液容器2内の薬液が注入口46からこぼれて外部に流出することが防止されている。
【0031】
下段部50aの中央部には、直径が芯部材3の直径よりも僅かに大きく、保持部材4から上方に突き出た芯部材3の上端部(露出部)を挿通可能な挿通口53が設けられている。これにより、カバー部材5が薬液容器2に取り付けられた状態でも、芯部材3の上端部(露出部)は挿通口53を介して外部空間に露出するため、芯部材3で吸い上げた薬液を外部空間に揮散可能となっている。
【0032】
キャップ6は、薬液揮散器の非使用時に、外部空間に露出した芯部材3の上端部を密閉するためのものである。キャップ6は、合成樹脂製であり、平面視円形状の上面部60と、上面部60から垂下する円形枠状の側壁部61とを備えている。側壁部61の内周面には、薬液容器2(首部21)の大径部21Bに設けられた第2の雄ネジ部23Bと螺合する雌ネジ部62が設けられており、側壁部61を大径部21Bに螺着させることで、キャップ6はカバー部材5および保持部材4を介して薬液容器2に着脱自在に取り付けられる。これにより、キャップ6が薬液容器2に取り付けられた状態では、芯部材3の上端部は外部空間に露出せずにキャップ6内に密閉されるので、薬液が外部空間に揮散するのが防止されている。
【0033】
キャップ6の上面部60も、本実施形態では、カバー部材5の上面部50と同様に、薬液容器2の首部21内(カバー部材5の下段部50aの直上)に位置する平面視円形状の下段部60aと、下段部60aの周囲において下段部60aより高い位置にある環状の上段部60bとを備えている。そして、下段部60aの中央に、芯部材3の上端部(露出部)を覆う隆起部63が設けられており、芯部材3の上端部(露出部)をほぼ隙間なく密閉している。なお、キャップ6の上面部60の形状は、芯部材3の上端部(露出部)をキャップ6内に密閉可能であれば、必ずしもこの形状に限られるものではない。例えば、上面部60は水平な平坦形状であっても構わない。
【0034】
上記した構成の薬液揮散器によれば、薬液容器2にキャップ6が取り付けられた非使用時には、図1に示すように、保持部材4上に露出する芯部材3の上端部はキャップ6内に密閉されている。一方で、図2に示すように、使用時には、キャップ6を薬液容器2から取り外すことで、芯部材3の上端部が保持部材4の上方で外部空間と触れる状態となる。これにより、芯部材3により吸い上げられた薬液が外部空間に揮散される。薬液の揮散に伴い、薬液容器2内の薬液が少量になった場合には、カバー部材5を薬液容器2(保持部材4)から取り外すことで、保持部材4の注入口46が露出するので、注入口46から薬液容器2内に薬液を注ぎ込むことができる。
【0035】
このように、上記した構成の薬液揮散器では、薬液容器2への薬液の補給を、芯部材3および保持部材4を薬液容器2に取り付けたままで行うことができるので、薬液の補給作業を手軽に行うことができるうえ、補給作業の際に、芯部材3や保持部材4を触る必要がないので、作業者の手が薬液で汚れることもない。また、補給作業の際に芯部材3および保持部材4を取り外すことがないので、これらを置くスペースを必要とせず、かつ、机や床などに薬液が垂れて付着するおそれもない。なお、補給された薬液の体積分の空気は、保持部材4の注入口46およびカバー部材5の挿通口53を介して適切に薬液容器2内から外部空間に逃がされるようになっているので、別途、空気孔を設けなくても薬液の補給作業を滞りなく行うことができる。さらに、使用時には、カバー部材5により保持部材4の注入口46が覆われているので、使用時に、不意に薬液容器2が倒れてしまった場合でも、薬液容器2内の薬液が注入口46からこぼれて外部に流出することを防止できる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は上記した図1〜図3の実施形態に限定されない。例えば、上記した図1〜図3の実施形態では、保持部材4の保持面部40Bは、周壁部40Aの下端部に設けられているが、周壁部40Aの上端部に設けるようにしてもよい。この場合には、カバー部材5の上面部50を、図2に示されているような、上段部50bおよび下段部50aの上下2段に形成せずに、平坦状に形成する。これにより、カバー部材5の上面部50全体が、保持部材4の保持面部40Bの注入口46を覆う蓋部として機能する。
【0037】
また、上記した図1〜図3の実施形態では、キャップ6が薬液容器2に対して着脱可能に取り付けられているが、図9〜図11に示すように、キャップ6をカバー部材5に対して着脱可能に取り付けるように構成してもよい。図9〜図11の実施形態の薬液揮散器では、カバー部材5が薬液容器2(保持部材4)に着脱可能に取り付けられるとともに、キャップ6がカバー部材5に着脱可能に取り付けられる。なお、図9〜図11の実施形態の薬液揮散器の基本的な構成は、上記した図1〜図3の実施形態の構成と同様であり、ここでは対応する構成に同一の符号を付することで詳細な説明を省略する。
【0038】
図9〜図11の実施形態の薬液揮散器では、薬液容器2の首部21は、上記した図1〜図3の実施形態のような径の異なる小径部21Aおよび大径部21Bが上下に連続して設けられた構成のものではなく、単一の直径のみを有する円筒状のものである。首部21の外周面には、カバー部材5の側壁部51の内周面に設けられた雌ネジ部54と螺合する雄ネジ部23が設けられており、側壁部51を首部21に螺着させることで、カバー部材5が保持部材4を介して薬液容器2に着脱自在に取り付けられる。
【0039】
本実施形態においても、カバー部材5は、保持部材4の上方を覆う上面部50と、上面部50から垂下する側壁部51とを備えており、上面部50は、下段部50aと上段部50bとを備えている。ただし、上面部50の下段部50aの周縁から起立する周壁部56が、上段部50bを超えて上方に延びており、上方に突き出た周壁部56の突出部56Aの外周面に、キャップ6の側壁部61の内周面に設けられた雌ネジ部62と螺合する雄ネジ部55が設けられている。よって、キャップ6の側壁部61をカバー部材5の突出部56Aに螺着させることで、キャップ6がカバー部材5に着脱自在に取り付けられる。
【0040】
図9〜図11の実施形態の薬液揮散器においても、カバー部材5にキャップ6が固定された非使用時には、図9に示すように、保持部材4上に露出する芯部材3の上端部はキャップ6によって密閉されている。一方、図10に示すように、使用時には、キャップ6をカバー部材5から取り外すことで、芯部材3の上端部が保持部材4の上方で外部空間と触れる状態となる。これにより、芯部材3により吸い上げられた薬液が外部空間に揮散される。そして、薬液の揮散に伴い、薬液容器2内の薬液が少量になった場合には、カバー部材5を薬液容器2(保持部材4)から取り外すことで、保持部材4の注入口46が露出する。よって、注入口46から薬液容器2内に薬液を注ぎ込むことができる。
【0041】
また、上記した図1〜図3の実施形態では、キャップ6は、保持部材4上に露出する芯部材3の上端部も含めてカバー部材5のほぼ全体を覆っているが、例えば図12および図13に示すように、保持部材4上に露出する芯部材3の上端部だけを覆うようなものであってもよい。これら図12および図13の実施形態では、キャップ6´は、内部に芯部材3の上端部(露出部)を収容可能な大きさに形成された縦長のコップ状(天面および側壁を有し、底面が開放された円筒形状)のものである。図12では、キャップ6´の内周面に雌ネジ部63が設けられている。一方、カバー部材5の上面部50(下段部50a)の中央に設けられた挿通口53の周囲には、上方に延びる円筒状の連結部57が設けられ、連結部57の外周面には前記雌ネジ部63と螺合する雄ネジ部58が設けられている。キャップ6´は、連結部57に対して、両ネジ部58,63の螺合により、着脱自在に取り付けられる。
【0042】
また、図13では、キャップ6´´は、カバー部材5の上面部50(下段部50a)の中央に設けられた連結部57に、薄肉部64を介して一体に設けられており、薄肉部64を破断することで、カバー部材5から容易に取外し可能になっている。
【0043】
この図12および図13の実施形態においても、カバー部材5にキャップ6´、6´´が固定された非使用時には、芯部材3の上端部はキャップ6´、6´´内に密閉されている。一方で、使用時には、キャップ6´、6´´をカバー部材5から取り外すことで、芯部材3の上端部が保持部材4の上方で外部空間と触れる状態となり、薬液の揮散が可能になる。
【0044】
図14〜図16は、本発明に係る薬液揮散器のさらに他の実施形態を示している。上記した図1〜図3、図9〜図11および図12〜13の実施形態では、薬液容器2への薬液の補給の際に、カバー部材5を薬液容器2(保持部材4)から取り外しているが、この図14〜図16の実施形態では、薬液容器2への薬液の補給の際に、カバー部材5を取り外す必要がなく、さらに手軽に薬液の補給作業を行えるようになっている。なお、この図14〜図16の実施形態の薬液揮散器も、基本的な構成は上記した図1〜図3の実施形態の構成と同様であり、ここでは対応する構成に同一の符号を付することで詳細な説明を省略する。また、図14〜図16は、キャップを除いた薬液揮散器の全体構成を示している。
【0045】
図14〜図16の実施形態においては、カバー部材5の側壁部51の内周面に、雌ネジ部に代わって、内向きの掛止爪59が一周にわたって設けられている。また、薬液容器2の首部21の小径部21Aの外周面には、雄ネジ部に代わって、カバー部材5の掛止爪59が引っ掛かる係合段部24が一周にわたって設けられている。掛止爪59を係合段部24に引っ掛けることで、カバー部材5は保持部材4を介して薬液容器2(小径部21A)上に被せられ、かつ、薬液容器2および保持部材4に対して、芯部材3を中心に回転自在となっている。
【0046】
また、カバー部材5の上面部50の下段部50aには、中央に設けられた挿通口53の周囲に、注ぎ口10が形成されている。この注ぎ口10は、保持部材4の注入口46と略同形状に形成されており、カバー部材5の回転により、注入口46上に位置して注入口46と略一致するようになっている。
【0047】
図14〜図16の実施形態の薬液揮散器においても、薬液容器2にキャップが固定された非使用時には、保持部材4上に露出する芯部材3の上端部はキャップ内に密閉されている。一方、図14に示すように、使用時には、キャップを薬液容器2から取り外すことで、芯部材3の上端部が保持部材4の上方で外部空間と触れる状態となる。これにより、芯部材3により吸い上げられた薬液が外部空間に揮散される。そして、薬液の揮散に伴い、薬液容器2内の薬液が少量になった場合には、カバー部材5を保持部材4に対して回転させて、図16に示すように、注ぎ口10を保持部材4の注入口46上に重ねることで、注ぎ口10および注入口46から薬液容器2内に薬液を注ぎ込むことが可能になっている。また、使用時(薬液揮散時)には、カバー部材5の注ぎ口10を保持部材4の注入口46と重ならないようにずらすことで、カバー部材5の上面部50(下段部50a)が蓋部として機能して、保持部材4の注入口46を完全に覆う。よって、使用時に、不意に薬液容器2が倒れてしまった場合でも、薬液容器2内の薬液が注入口46からこぼれて外部に流出することを防止できる。
【0048】
なお、カバー部材5を薬液容器2(保持部材4)から取り外すことなく薬液の補給作業を行えるようにする構成としては、上記した図14〜図16の実施形態のように、カバー部材5を回転させて、カバー部材5の注ぎ口10と保持部材4の注入口46とを重ね合わせる構成に限られるものではない。例えば、カバー部材5の上面部50(下段部50a)に、保持部材4の注入口46と対応する位置に、水平方向にスライド自在な蓋部と、蓋部のスライドにより露出する薬液を注入可能な注ぎ口とを設け、薬液補給時に、前記蓋部をスライドさせることで、前記注ぎ口を介して注入口46から薬液容器2内に薬液を注ぎ込むように構成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
2 薬液容器
3 芯部材
4 保持部材
5 カバー部材
6、6´、6´´ キャップ
7 詰め替え容器
10 注ぎ口
20 上部開口
46 注入口
50 上面部(蓋部)
53 挿通口
71 注出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口を有し、内部に薬液を収容可能な薬液容器と、
薬液を吸い上げて揮散させる芯部材と、
前記薬液容器の上部開口に設けられ、前記芯部材の少なくとも一部分を上方に露出させた状態で前記芯部材を保持する保持部材と、を備えた薬液揮散器において、
前記保持部材は、前記薬液容器の内部に薬液を注入可能な少なくとも1つの注入口を有しており、
前記保持部材の注入口を開閉自在に塞ぐことが可能であり、かつ、前記芯部材の露出部を挿通する挿通口を有するカバー部材をさらに備える薬液揮散器。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記保持部材に対して着脱自在であり、前記挿通口と、装着状態において前記保持部材の注入口を覆う蓋部とを有することを特徴とする請求項1に記載の薬液揮散器。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記挿通口と、前記保持部材の注入口を覆う蓋部と、前記注入口上に位置可能な注ぎ口とを有することを特徴とする請求項1に記載の薬液揮散器。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記保持部材に対して少なくとも所定の角度範囲で回転自在であり、前記カバー部材の回転により前記注入口上に前記注ぎ口が位置することを特徴とする請求項3に記載の薬液揮散器。
【請求項5】
前記蓋部は、前記カバー部材に水平方向にスライド自在に設けられ、前記蓋部のスライドにより前記注入口上に位置する前記注ぎ口が設けられることを特徴とする請求項3に記載の薬液揮散器。
【請求項6】
前記注入口が、薬液の詰め替え容器の注出口よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の薬液揮散器。
【請求項7】
前記芯部材の露出部を密閉するキャップをさらに備える請求項1〜6のいずれかに記載の薬液揮散器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−106855(P2013−106855A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255492(P2011−255492)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】