説明

薬液揮散器

【課題】芯部材を薬液容器から取り外すことなく、薬液容器内に薬液を手軽に補給することができるうえ、薬液容器が倒れた場合でも薬液が外部に流出することを防止できる薬液揮散器を提供する。
【解決手段】薬液容器2と、薬液を吸い上げて揮散させる芯部材3と、薬液容器2の上部開口20に設けられ、芯部材3の上端部を上方に露出させた状態で芯部材3を保持する保持部材4とを備えた薬液揮散器において、保持部材4は、可撓性のある材料で形成されており、上部開口20を塞ぐ栓部43と、芯部材3を保持する保持部44と、栓部43に設けられ、薬液容器2の内部に薬液を注入可能な少なくとも1つの注入口45と、栓部43に一体に設けられ、弾性力により注入口45を開閉自在に塞ぐ弾性片46とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に収容した液状の消臭剤・芳香剤などの薬液を外部空間に揮散させる薬液揮散器に関し、特に、薬液を手軽に補給することができる薬液揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
室内や自動車などの空間の臭気による不快感をなくし、快適な空間を生み出すために、液状の消臭剤・芳香剤などの薬液を自然に揮散させる薬液揮散器が広く使用されている。薬液揮散器は、一般に、薬液を収容する薬液容器と、薬液に浸された芯部材(吸液芯)とを有している(例えば、特許文献1を参照)。芯部材は、上端部が薬液容器の上部開口から外部空間に露出しており、吸い上げた薬液を外部空間に揮散させるようになっている。芯部材は、薬液容器の上部開口に取り付けられた保持部材により保持される。
【0003】
上記した特許文献1に記載の薬液揮散器では、薬液容器内の薬液が少量になって薬液を補給しようとした場合に、薬液容器の上部開口から薬液を注ぎ込めるように、薬液容器の上部開口に取り付けられた芯部材付きの保持部材を取り外す必要がある。このとき、芯部材が薬液により濡れていると、取り外しの際に、手に薬液が付着するおそれがある。また、取り外した芯部材付きの保持部材を置く場所が必要となるうえ、机や床などの上にこれを直接置くと、芯部材から薬液が垂れて家財に付着するおそれもある。
【0004】
そこで、芯部材(保持部材)を取り外すことなく、薬液容器内に薬液を補給することができる薬液揮散器が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2に記載の薬液揮散器は、図12に示すように、芯部材102を保持するために薬液容器105の上部開口106に設けられた保持部材101に、薬液補給用の漏斗部103が形成されている。保持部材101は、上端のフランジ部104が薬液容器105の首部110の上縁部に係止されて取り付けられている。芯部材102は、漏斗部103の下端の円筒部107に挿通されて保持されている。円筒部107は、上部に大径部107Aを有しており、漏斗部103に補給された薬液が流出する複数の開口部108が設けられている。なお、図中、109は空気孔である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭57−87608号公報
【特許文献2】特開2003−235950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献2に記載の薬液揮散器によると、薬液容器105への薬液の補給の際には、漏斗部103に薬液を供給することで、薬液が円筒部107(大径部107A)の側面に形成された開口部108を介して薬液容器105内に流れ込む。よって、保持部材101を薬液容器105から取り外すことなく、薬液の補給作業を行うことが可能になっている。ただし、特許文献2に記載の薬液揮散器では、開口部108の面積が小さいと、薬液容器105内への薬液の補給に時間がかかる一方で、補給時間を短縮するために開口部108の面積を大きくすると、使用時(薬液揮散時)において、不意に薬液容器105を倒してしまった場合に、薬液容器105内の薬液が開口部108を介して外部に流出しやすいという課題がある。
【0007】
本発明は、上記した課題に着目してなされたもので、芯部材(保持部材)を薬液容器から取り外すことなく、薬液容器内に薬液を手軽に補給することができるうえ、薬液容器が倒れた場合でも薬液が外部に流出することを防止できる薬液揮散器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、上部に開口を有し、内部に薬液を収容可能な薬液容器と、薬液を吸い上げて揮散させる芯部材と、前記薬液容器の上部開口に設けられ、前記芯部材の少なくとも一部分を上方に露出させた状態で前記芯部材を保持する保持部材と、を備えた薬液揮散器において、前記保持部材には、前記薬液容器の内部に薬液を注入可能な少なくとも1つの注入口が形成されており、前記注入口を開閉自在に塞ぐ蓋部材をさらに備える薬液揮散器により達成される。
【0009】
本発明の上記した構成において、「注入口を塞ぐ」とは、蓋部材が注入口を完全に密閉状態で塞ぐ場合を含む他、蓋部材が注入口を塞いだ状態において、蓋部材と注入口との間に多少の隙間が生じている場合も含んでいる。
【0010】
上記構成の薬液揮散器によると、使用時(薬液揮散時)においては、蓋部材により保持部材の注入口が密閉状態または略密閉状態で塞がれることで、使用時に不意に薬液容器が倒れてしまった場合でも、薬液容器内の薬液が保持部材の注入口からこぼれて外部に流出することが防止できる。一方、薬液の揮散に伴い、薬液容器内の薬液が少量になった場合には、蓋部材よる注入口の閉塞を解除することで、保持部材の注入口から薬液容器内に薬液を注ぎ込むことができる。このように、上記構成の薬液揮散器では、薬液容器への薬液の補給を、芯部材および保持部材を薬液容器から取り外すことなく行うことができるので、薬液の補給作業を手軽に行うことができるうえ、補給作業の際に、芯部材や保持部材を触る必要がないので、作業者の手が薬液で汚れることもない。また、補給作業の際に芯部材および保持部材を取り外すことがないので、これらを置くスペースを必要とせず、かつ、机や床などに薬液が垂れて付着するおそれもない。
【0011】
本発明の好ましい実施態様においては、前記保持部材は、可撓性のある材料で形成されており、前記上部開口を塞ぐ栓部と、前記芯部材を保持する保持部とを備え、前記注入口は、前記栓部に設けられ、前記蓋部材は、前記栓部に一体に設けられ、弾性力により前記注入口を開閉自在に塞ぐ弾性片よりなることを特徴としている。
【0012】
この実施態様によると、弾性片を開動作させて、弾性片により注入口が塞がれた状態を解除することで、保持部材の注入口から薬液容器内に薬液を注ぎ込むことができる。一方、薬液の補給後は、弾性片は、その弾性力により閉動作して、保持部材の注入口を塞ぐ状態に復帰するので、注入口を塞ぐ手間を省くことができる。また、この実施態様によると、保持部材と蓋部材とを一体成形できるので、部品点数が少なく、低コストで容易に薬液揮散器を製造することができる。
【0013】
本発明の好ましい実施態様においては、前記弾性片および前記注入口は、前記栓部の一部を切り込むことにより形成される、または、前記栓部の一部に切り欠きを設けることにより形成されることを特徴としている。
【0014】
この実施態様によると、弾性片および注入口を栓部に容易に形成することができる。なお、前記弾性片としては、種々の外形に形成することができるが、平面視においてコ字状、U字状または円弧状の外形を有していることが好ましい。
【0015】
本発明の好ましい他の実施態様においては、前記弾性片は、基部が前記栓部に一体に設けられたヒンジ部と、前記ヒンジ部の先端部に設けられた蓋部とからなることを特徴としている。この実施態様によると、弾性片の蓋部によって注入口をより密閉状態で塞ぐことができる。
【0016】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記注入口が、薬液の詰め替え容器の注出口よりも大きく形成されていることを特徴としている。この実施態様によると、薬液の詰め替え容器の注出口を保持部材の注入口内に挿入できるので、詰め替え容器内の液体を薬液容器内にこぼれることなく補給できるうえ、薬液を薬液容器内に勢いよく注入でき、注入速度を上げることができる。
【0017】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記芯部材の露出部を密閉するキャップをさらに備えることを特徴としている。この実施態様によると、非使用時にキャップを取り付けることで、芯部材の露出部がキャップ内に密閉されるので、薬液の揮散を規制することができる。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記保持部材は、空気孔をさらに備えることを特徴としている。この実施態様によると、薬液容器内に補給された薬液の体積分の空気が、空気孔を介して適切に薬液容器外に逃がされるので、薬液の補給作業を滞りなく行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の薬液揮散器によると、芯部材(保持部材)を薬液容器から取り外すことなく、薬液容器内に薬液を手軽に補給することができるうえ、薬液容器が倒れた場合でも薬液が外部に流出することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬液揮散器の断面図である。
【図2】図1の薬液揮散器の薬液容器からキャップを外した状態の断面図である。
【図3】図1の保持部材の平面図である。
【図4】図3の保持部材の他の実施形態の平面図である。
【図5】図3の保持部材の他の実施形態の平面図である。
【図6】図3の保持部材の他の実施形態の平面図である。
【図7】一般的な薬液の詰め替え容器の斜視図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る薬液揮散器の断面図である。
【図9】図8の薬液揮散器の薬液容器からキャップを外した状態の断面図である。
【図10】図9の保持部材の平面図である。
【図11】図10のA−A線に沿う部分断面図である。
【図12】従来例の薬液揮散器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る薬液揮散器を示す断面図である。また、図2は、図1の薬液揮散器の薬液容器2からキャップ5を外した状態を示す断面図である。
【0022】
本実施形態の薬液揮散器は、上部に開口20(以下、「上部開口20」という。)を有し、内部に薬液を収容可能な薬液容器2と、薬液容器2内の薬液を吸い上げて薬液容器2外の外部空間に揮散させる芯部材3と、薬液容器2の上部開口20に設けられ、芯部材3を保持する保持部材4と、薬液容器2に着脱自在に取り付けられるキャップ5とを備えている。なお、キャップ5は、薬液を揮散させない薬液揮散器の非使用時には取り付けられているが、薬液揮散器の使用時(薬液の揮散時)には取り外される。
【0023】
薬液容器2は、上端面に前記上部開口20を有する円筒状の首部21と、首部21に連続して設けられた中空かつ有底の胴部22とを備えている。薬液容器2は、一部または全体が透明または半透明の材料で構成され、外部から薬液の残量が確認できる。この薬液容器2としては、例えば、透明のプラスチック製ブロー成形品が挙げられるが、ガラス製品の他、インジェクション成型品などであってもよい。首部21の外周面には、雄ネジ部23が設けられている。
【0024】
芯部材3は、主に薬液の吸い上げと薬液の揮散に優れた繊維で構成され、全体として棒状に形成されているものである。芯部材3は、その下端部が薬液容器2の底面に当接し得るとともに保持部材4よりも上方に露出するように、保持部材4によって保持されている。なお、芯部材3は、薬液を吸い上げ可能であれば形状は特に限定されず、筒状やハニカム状など任意の形状とすることができる。また、芯部材3を形成する前記繊維層としては、植物繊維やパルプなどの天然繊維、フェルト、木綿、レーヨン、ポリエステル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの合成繊維、またはそれらの混合繊維などの繊維質材料で構成することができる。また、芯部材3は、単一の樹脂(例えばジュラコンなど)で形成されてもよい。芯部材3の上端部(露出部)に当接するように蒸散用マットを設け、芯部材3が吸い上げた薬液を前記蒸散用マット全体に拡げて薬液を蒸散させるように構成してもよい。
【0025】
保持部材4は、薬液容器2の上部開口20に設けられ、芯部材3の少なくとも上端部を上方に露出させた状態で、芯部材3を薬液容器2内に保持している。この保持部材4は、合成樹脂製であって可撓性を有しており、本実施形態では、図1〜図3に示すように、本体部40と、本体部40の上端部から外方に張り出す環状のフランジ部41とを備えている。本体部40は、円筒状の周壁部42と、周壁部42の下端部に設けられた水平な栓部43とを備えている。周壁部42の外径は、薬液容器2の上部開口20の径と略同一である。一方、フランジ部41の外径は、薬液容器2の上部開口20の径よりも大きくなっている。周壁部42を薬液容器2の上部開口20内に嵌め込むことで、周壁部42の外周面が薬液容器2の首部21の内周面に当接し、かつ、フランジ部41が首部21の上縁部に係止する。これにより、保持部材4が薬液容器2に取り付けられ、薬液容器2の上部開口20は、首部21内に位置する栓部43により塞がれる。
【0026】
栓部43は、その中央位置に、芯部材3を保持するための保持部44を備えている。この保持部44は、芯部材3を挿入するための挿入口44Aと、挿入口44Aの周縁から下方に延びる筒状の挟持部44Bとからなり、挟持部44Bは、芯部材3の外径よりも僅かに小さい内径を有している。芯部材3を挿入口44Aから挟持部44Bに押し込みながら挿入すると、芯部材3が弾性変形して挟持部44Bの内周面を押圧し、その結果、芯部材3が挟持部44Bの内周面と接触する。これにより、芯部材3は所定の高さ位置で保持される。芯部材3の高さ位置を調節して、保持部材4より上方に突き出る芯部材3の長さを変えることで、薬液の揮散量を調節することが可能となる。
【0027】
また、栓部43には、挿入口44Aの周囲に、所定の大きさを有する注入口45が少なくとも1つ(図示例では1つ)形成されている。この注入口45は、薬液の揮散に伴って薬液容器2内の薬液が少量になった場合に、薬液容器2内に新しい薬液を補給するための補給口であり、薬液揮散器の使用時(薬液揮散時)には、蓋部材7によって開閉自在に塞がれている。この蓋部材7は、本実施形態では、栓部43に一体形成された可撓性を有する弾性片46により構成されており、弾性片46が注入口45を塞いでいることで、薬液揮散器の使用時において、不意に薬液容器2が倒れてしまった場合でも、薬液容器2内の薬液が注入口45からこぼれて外部に流出することが防止されている。
【0028】
本実施形態では、栓部43に切り欠き47が設けられており、これによって、切り欠き47の先端を基部46Aとして、弾性力により上下に回動する弾性片46が形成されるとともに、弾性片46の回動によって開閉する注入口45が形成されている。なお、本実施形態の注入口45は、切り欠き47をその一部分に含んでおり、切り欠き47の分だけ、弾性片46が注入口45を塞いだ状態において、弾性片46と注入口45との間に僅かな隙間が生じている。よって、切り欠き47は、その幅が小さければ小さいほど好ましい。なお、上記の「弾性片46(蓋部材7)が注入口45を塞ぐ」とは、弾性片46(蓋部材7)が注入口45を完全に密閉状態で塞ぐ場合を含む他、この弾性片46(蓋部材7)と注入口45との間に多少の隙間が生じている状態も含んでいる。
【0029】
弾性片46および注入口45は、図4に示すように、栓部43の一部を切り込んで、栓部43に切り込み48を設けることによって形成してもよい。図4の例では、注入口45を弾性片46によりほぼ完全に覆うことができ、図3の例よりも注入口45をより密閉することができる。そして、図4の例においても、弾性片46が切り込み48の先端を基部46Aとして弾性力により上下に回動することで、注入口45が開閉する。
【0030】
本実施形態では、切り欠き47(もしくは切り込み48)は、挿入口44Aに向けて凸となる円弧状(または、コ字状もしくはU字状)に形成されており、これに伴い、弾性片46は、平面視において円弧状(またはコ字状もしくはU字状)の外形を有している。弾性片46の外形としては、必ずしもこれに限られるものではなく、楕円状、三角形状や略台形状などであってもよい。また、弾性片46は、栓部43の周縁に向けて凸となる形状(図3および図4とは逆向き)に形成されていてもよい。
【0031】
また、図5および図6に示すように、X字状やT字状などの切り欠き47を栓部43に設けることにより、複数(図5では4つ、図6では2つ)の弾性片46を形成するとともに、複数の弾性片46によって開閉自在に塞がれる注入口45を形成してもよい。ただし、弾性片46は、その基部46Aから、基部46Aより最も突き出た頂部までの距離(高さ)D1が長いと、基部46Aを支点に上下に回動し易くなる。よって、図3や図4の例のように、切り欠き47や切り込み48を円弧状などに形成して、注入口45を一つの弾性片46によって塞ぐようにした方が、図5や図6の例と比べて、保持部材4の成形が容易である上、注入口45をほぼ同じ大きさに形成した場合に弾性片46が容易に上下に回動して開閉動作し易くなり、注入口45に薬液を注ぎ易くすることができる。なお、図5および図6では、栓部43に切り欠き47を設けることより、弾性片46および注入口45を形成しているが、栓部43に切り込みを設けることにより、弾性片46および注入口45を形成してもよい。
【0032】
補給用の薬液を収納する詰め替え容器としては、図7に示すような、上部の一方の隅部80を指で摘んでこれを捻じ切ることで、当該部分を液体の注出口81とする、いわゆるパウチと呼ばれるタイプの詰め替え容器8が一般的に採用されている。従って、注入口46の大きさとしては、このような詰め替え容器8内の液体を薬液容器2内にこぼれることなくスムーズに補給するために、当該詰め替え容器8の注出口81を注入口45内に挿入可能な大きさ、つまり、当該詰め替え容器8の注出口71よりも大きく形成されていることが好ましい。具体的には、このような詰め替え容器8の注出口81は、一般的に、液体を注ぎ出す際には、横幅d1が5mm〜20mm、縦幅d2が0.5mm〜5mm程度の略楕円形状となる。また、注出口81から液体を注ぎ出しやすくするために、注出口81の開口形状が円形状または楕円形状に保持されているものも多く存在しているが、このタイプの注出口81では、一般的に、横幅d1が5mm〜20mm、縦幅d2が5mm〜20mm程度となっている。よって、注入口45の大きさとしては、最大高さD1(図3〜図6を参照)が少なくとも5mm〜30mm、最大幅D2(図3〜図6を参照)が少なくとも5mm〜30mm程度に形成されているのが好ましい。これにより、薬液を薬液容器2内に勢いよく注入でき、注入速度を上げることもできる。
【0033】
キャップ5は、薬液揮散器の非使用時に、保持部材4の上部に露出した芯部材3の上端部を密閉するためのものである。キャップ5は、合成樹脂製であり、平面視円形状の上面部50と、上面部50の周縁から垂下する円形枠状の側壁部51とを備えている。側壁部51の内周面には、薬液容器2の首部21に設けられた雄ネジ部23と螺合する雌ネジ部52が設けられており、側壁部51を首部21に螺着させることで、キャップ5は保持部材4を介して薬液容器2に着脱自在に取り付けられる。これにより、キャップ5が薬液容器2に取り付けられた状態では、芯部材3の上端部は外部空間に露出せずにキャップ5内に密閉されるので、薬液が外部空間に揮散するのが防止されている。
【0034】
キャップ5の上面部50は、本実施形態では、薬液容器2の首部21内(保持部材4の栓部43の直上)に位置する平面視円形状の下段部50aと、下段部50aの周囲において下段部50aより高い位置にある環状の上段部50bとを備えている。そして、下段部50aの中央に、芯部材3の上端部(露出部)を覆う隆起部53が設けられており、芯部材3の上端部(露出部)をほぼ隙間なく密閉している。なお、キャップ5の上面部50の形状は、芯部材3の上端部(露出部)をキャップ5内に密閉可能であれば、必ずしもこの形状に限られるものではない。例えば、上面部50は水平な平坦形状であっても構わない。
【0035】
上記した構成の薬液揮散器によれば、薬液容器2にキャップ5が取り付けられた非使用時には、図1に示すように、保持部材4上に露出する芯部材3の上端部はキャップ5内に密閉されている。一方、図2に示すように、使用時(薬液揮散時)には、キャップ5を薬液容器2から取り外すことで、芯部材3の上端部が保持部材4の上方で外部空間と触れる状態となる。これにより、芯部材3により吸い上げられた薬液が薬液容器2外の外部空間に揮散される。薬液の揮散に伴い、薬液容器2内の薬液が少量になった場合には、例えば、薬液の詰め替え用容器8(図7に示す)の注出口81によって保持部材4の弾性片46を上から押すことで、弾性片46が基部46Aを支点として下方に回動(開動作)して注入口45が開口する。よって、そのまま、詰め替え用容器8の注出口81を注入口45内に挿入することで、薬液容器2内に詰め替え用容器8内の薬液を注ぎ込むことができる。薬液の補給が完了すると、詰め替え用容器8の注出口81を注入口45から抜き出すことで、弾性片46がその弾性力により基部46Aを支点に上方に回動(閉動作)して、元の注入口45を塞ぐ状態に復帰する。これにより、注入口45は再び閉口する。
【0036】
このように、上記した構成の薬液揮散器では、薬液容器2への薬液の補給を、芯部材3および保持部材4を薬液容器2に取り付けたままで行うことができるので、薬液の補給作業を手軽に行うことができるうえ、補給作業の際に、芯部材3や保持部材4を触る必要がないので、作業者の手が薬液で汚れることもない。また、補給作業の際に芯部材3および保持部材4を取り外すことがないので、これらを置くスペースを必要とせず、かつ、机や床などに薬液が垂れて付着するおそれもない。なお、補給された薬液の体積分の空気は、保持部材4の注入口45と弾性片46との間の僅かな隙間を介して適切に薬液容器2内から外部空間に逃がされるようになっているので、別途、空気孔を設けなくても薬液の補給作業を滞りなく行うことができる。なお、保持部材4に空気孔を設けることも可能である。さらに、使用時には、保持部材4の注入口45が弾性片46により覆われて閉口しているので、使用時に、不意に薬液容器2が倒れてしまった場合でも、薬液容器2内の薬液が注入口45からこぼれて外部に流出することを防止できる。
【0037】
また、上記した構成の薬液揮散器では、注入口45が形成された栓部43が薬液容器2の上部開口20より下方に位置し、周壁部42により囲まれているため、薬液補給のために薬液を注入口45に注ぎ込む際に、薬液が注入口45の外側(栓部43上など)にこぼれたとしても、薬液容器2の外側に流れ出るのが防止されている。なお、本実施形態では、栓部43は、水平な面として設けられているが、周壁部42から挿入口44Aに向けて低くなるような傾斜面として設けてもよい。これにより、薬液を注入口45に注ぎ込む際に、栓部43上にこぼれた薬液は挿入口44Aに向けて流れるので、これを芯部材3に吸収させることができる。
【0038】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は上記した実施形態に限定されない。例えば、上記した実施形態では、保持部材4の栓部43は、周壁部42の下端部に設けられているが、周壁部42の上端部に設けるようにしてもよい。この場合には、キャップ5の上面部50を、図1に示されているような、上段部50bおよび下段部50aの上下2段に形成せずに、平坦状に形成する。
【0039】
図8は、本発明に係る薬液揮散器の他の実施形態を示している。また、図9は、図8の薬液揮散器の薬液容器2からキャップ5を外した状態を示す断面図である。なお、この図8の実施形態の薬液揮散器の基本的な構成は、上記した図1の実施形態の構成と同様であり、ここでは対応する構成に同一の符号を付することで詳細な説明を省略する。
【0040】
この図8の実施形態の薬液揮散器においても、図8〜図10に示すように、保持部材4は、本体部40と、本体部40の上端部から外方に張り出す環状のフランジ部41とを備えている。また、本体部40は、円筒状の周壁部42と、周壁部42の下端部に設けられた水平な栓部43とを備えている。栓部43は、その中央位置に、挿入口44Aおよび挟持部44Bとからなる保持部44を備えており、保持部44により、少なくとも上端部を上方に露出させた状態で、芯部材3を薬液容器2内に保持している。
【0041】
保持部材4の栓部43の挿入口44の周囲には、平面視円形状の注入口45が形成されている。この注入口45は、必ずしも外形が平面視円形状に形成されている必要はなく、楕円形状、矩形状など、種々の形状に形成することができる。また、注入口45の大きさとしては、上記した実施形態と同様、一般的な詰め替え容器8の注出口81を注入口45内に挿入可能な大きさ、つまり、当該詰め替え容器8の注出口81よりも大きく形成されていることが好ましく、例えば、最大高さD1が少なくとも5mm〜30mm、最大幅D2が少なくとも5mm〜30mm程度に形成されているのが好ましい。これにより、薬液を薬液容器2内に勢いよく注入でき、注入速度を上げることもできる。
【0042】
そして、栓部43の注入口45の近傍に、注入口45を開閉自在に塞ぐ蓋部材7として機能する弾性片46が設けられている。弾性片46は、合成樹脂製であって可撓性を有しており、図10および図11に示すように、基部が栓部43に一体に設けられたヒンジ部49と、ヒンジ部49の先端部に連結された蓋部53とにより形成されている。蓋部53は、ヒンジ部49が連結された平板部54と、平板部54の下面に設けられた筒状の嵌合部55と、平板部54の前記ヒンジ部49との連結部の反対側に設けられた摘み部56とを備えている。嵌合部55は、その外形が保持部材4の注入口45に嵌まることが可能な形状・大きさに形成されている。この実施形態の弾性片46は、蓋部53がヒンジ部49の基部を支点として、ヒンジ部49の弾性力により上下に回動する。そして、蓋部53の嵌合部55が注入口45内に嵌まり込むことにより、注入口45が塞がれて閉口する。一方、摘み部56を把持して蓋部53の嵌合部55を上方に持ち上げて注入口45から抜き出すことにより、注入口45が開口する。そして、ヒンジ部49の弾性力により、上方に持ち上げられた蓋部53の嵌合部55が下方に回動して、注入口45に嵌まり込むことで、再び注入口45が塞がれて閉口する。
【0043】
キャップ5は、図8に示すように、この実施形態においても、上面部50と、上面部50の周縁から垂下する円形枠状の側壁部51とを備えている。側壁部51の内周面には、薬液容器2の首部21に設けられた雄ネジ部23と螺合する雌ネジ部52が設けられており、側壁部51を首部21に螺着させることで、キャップ5は保持部材4を介して薬液容器2に着脱自在に取り付けられる。キャップ5の上面部50は、薬液容器2の首部21内に位置する下段部50aと、上段部50bとを備えているが、この実施形態では、ヒンジ部49および蓋部53が保持部材4上に存在する分、上面部50の下段部50aは、保持部材4の栓部43上に少し間隔をあけて設けられている。
【0044】
図8の実施形態の薬液揮散器によっても、薬液容器2にキャップ5が取り付けられた非使用時には、保持部材4上に露出する芯部材3の上端部はキャップ内に密閉されている。一方、図9に示すように、使用時(薬液揮散時)には、キャップ5を薬液容器2から取り外すことで、芯部材3の上端部が保持部材4の上方で外部空間と触れる状態となる。これにより、芯部材3により吸い上げられた薬液が外部空間に揮散される。そして、薬液の揮散に伴い、薬液容器2内の薬液が少量になった場合には、蓋部53を上方に持ち上げて嵌合部55を注入口45から抜き出すことにより、注入口45が開口し、注入口45から薬液容器2内に薬液を注ぎ込むことができる。よって、上記した実施形態と同様、薬液容器2への薬液の補給を、芯部材3および保持部材4を薬液容器2に取り付けたままで行うことが可能になっている。なお、補給された薬液の体積分の空気は、保持部材4の栓部43に設けられた空気孔57を介して適切に薬液容器2内から外部空間に逃がされるので、薬液の補給作業を滞りなく行うことができる。
【0045】
また、再び使用する際には、蓋部53の嵌合部55を注入口45に嵌め込むことで、注入口45が塞がれて閉口する。よって、使用時に、不意に薬液容器2が倒れてしまった場合でも、薬液容器2内の薬液が注入口45からこぼれて外部に流出することを防止できる。
【0046】
なお、図8の実施形態の薬液揮散器においても、栓部43は、水平な面として設けられているが、周壁部42から挿入口44Aに向けて低くなるような傾斜面として設けてもよい。これにより、薬液を注入口45に注ぎ込む際に、栓部43上にこぼれた薬液は挿入口44Aに向けて流れるので、これを芯部材3に吸収させることができる。
【0047】
また、図8の実施形態の薬液揮散器では、蓋部材7が、栓部43に一体形成された、ヒンジ部49および蓋部53からなる弾性片46により構成されているが、必ずしも栓部43に一体形成されている必要はなく、注入口45を塞ぐことが可能な蓋部53のみにより構成してもよい。この場合には、蓋部53は、可撓性を有する合成樹脂製である必要はない。
【符号の説明】
【0048】
2 薬液容器
3 芯部材
4 保持部材
5 キャップ
7 蓋部材
8 詰め替え容器
20 上部開口
43 栓部
44 保持部
45 注入口
46 弾性片
47 切り欠き
48 切り込み
49 ヒンジ部
53 蓋部
57 空気孔
81 注出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口を有し、内部に薬液を収容可能な薬液容器と、
薬液を吸い上げて揮散させる芯部材と、
前記薬液容器の上部開口に設けられ、前記芯部材の少なくとも一部分を上方に露出させた状態で前記芯部材を保持する保持部材と、を備えた薬液揮散器において、
前記保持部材には、前記薬液容器の内部に薬液を注入可能な少なくとも1つの注入口が形成されており、
前記注入口を開閉自在に塞ぐ蓋部材をさらに備える薬液揮散器。
【請求項2】
前記保持部材は、可撓性のある材料で形成されており、前記上部開口を塞ぐ栓部と、前記芯部材を保持する保持部とを備え、
前記注入口は、前記栓部に設けられ、
前記蓋部材は、前記栓部に一体に設けられ、弾性力により前記注入口を開閉自在に塞ぐ弾性片よりなることを特徴とする請求項1に記載の薬液揮散器。
【請求項3】
前記弾性片は、前記栓部の一部を切り込むことにより形成される、または、前記栓部の一部に切り欠きを設けることにより形成されることを特徴とする請求項2に記載の薬液揮散器。
【請求項4】
前記弾性片は、平面視においてコ字状、U字状または円弧状の外形を有していることを特徴とする請求項3に記載の薬液揮散器。
【請求項5】
前記弾性片は、基部が前記栓部に一体に設けられたヒンジ部と、前記ヒンジ部の先端部に設けられた蓋部とからなることを特徴とする請求項2に記載の薬液揮散器。
【請求項6】
前記注入口が、薬液の詰め替え容器の注出口よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の薬液揮散器。
【請求項7】
前記芯部材の露出部を密閉するキャップをさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の薬液揮散器。
【請求項8】
前記保持部材は、空気孔をさらに備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の薬液揮散器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−106856(P2013−106856A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255493(P2011−255493)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】