説明

薬物高含量錠剤

【課題】白血病の処置のために処方される化合物のメシル酸塩の1日用量が、高用量であるため、投与が簡便であり、そして化合物Iの1日用量を提供するのに便利な経口投与形態を提供する。
【解決手段】式(I)


で示される化合物である4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミドまたは医薬上許容されるその塩を、活性成分として、錠剤の総重量に対して活性部分重量が約30〜80%の量で含んでなる高薬物充填錠剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]−ベンズアミドまたは医薬上許容されるその塩を含んでなる医薬錠剤(pharmaceutical tablet)に関し、そして以後、本明細書において化合物Iと称する。
【背景技術】
【0002】
化合物Iは、式(1)
【化1】

を有する。
【0003】
化合物Iの遊離塩基およびその許容される塩は、欧州特許出願(European Patent application)第0564409号において開示されている。化合物Iのメシル酸塩ならびに化合物Iのメシル酸塩のαおよびβ結晶形は、国際特許出願(International Patent application)第WO 99/03854号において開示されている。
【0004】
典型的には、白血病の処置のために処方される化合物Iのメシル酸塩の1日用量は、高用量であり、たとえば成人において400〜800mgである。したがって、投与が簡便であり、そして化合物Iの1日用量を提供するのに便利な経口投与形態の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明は、約30%〜80%、たとえば少なくとも約35、40、45、50または55%からたとえば約60、65、70、75または80%、好ましくは55%以上の量で存在する薬理学的有効量の化合物Iまたは医薬上許容されるその塩を含んでなる高薬物含量(high drug loading)錠剤を提供する。特に、化合物Iの量は、錠剤の総重量に基づく重量の45〜80%、たとえば50〜70%の間を変動し得る。
【0006】
化合物Iは、遊離塩基の形態または医薬上許容されるその塩、たとえばモノメシル酸塩の形態であり得る。その活性部分は、遊離の形態の化合物Iに相当する。たとえば、119.5mgの化合物Iのメシル酸塩は、100mgの化合物Iの遊離塩基活性部分に相当する。
【0007】
本発明は、また、
(a)薬理学的有効量の化合物I、および
(b)錠剤の総重量に基づく活性部分の重量における含有量の割合として計算される化合物Iまたは医薬上許容されるその塩の量が約30%〜80%、たとえば少なくとも約35、40、45、50または55%から、たとえば約60、65、70、75または80%まで、好ましくは55%以上である、錠剤の製造に適した少なくとも1種の医薬上許容される賦形剤
を含んでなる錠剤を提供する。特に化合物Iの量は、錠剤の総重量に対して活性部分重量が45〜80%、たとえば50〜70%の間となる量を変動し得る。
【0008】
別の態様において、本発明は、化合物Iが結晶の形態である錠剤を提供する。
【0009】
本発明のさらなる態様において、化合物Iのモノメシル酸塩が使用される。
【0010】
発明の好適な実施態様において、化合物Iのモノメシル酸塩は結晶の形態、たとえばαまたはβ結晶形であり、最も好ましくは、化合物Iのモノメシル酸塩はβ結晶形である。
【0011】
1種またはそれ以上の医薬上許容される賦形剤が錠剤中に存在し得、たとえば(1.1)少なくとも1種の結合剤、たとえば微晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、(1.2)少なくとも1種の崩壊剤、たとえば架橋ポリビニルピロリジノン、たとえばクロスポビドン(Crospovidone)(登録商標)、(1.3)少なくとも1種の流動促進剤(glidant)、たとえばコロイド状二酸化ケイ素、(1.4)少なくとも1種の滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウムおよび/または(1.5)下地コーティング(basic coating)が簡便に使用される。本発明の錠剤において、微晶性セルロースは結合剤として使用される。
【0012】
これらおよび他の賦形剤および本明細書において言及された手順に関する対象についての多数の文献を引用する。特にHandbook of Pharmaceutical Excipients, Third Edition, Arthur H. Kibbe編, American Pharmaceutical Association, Washington, USA and Pharmaceutical Press, London; および Lexikon der Hilfsstoffe fuer Pharmazie, Kosmetik and angrenzende Gebiete, H.P. Fiedler編, 4th Edition, Edito Cantor, Aulendorfおよびそれ以前の版(これらを出典明示により本明細書の一部とする。)を参照。
【0013】
結合剤(1.1)としては、スターチ、たとえばポテト、コムギまたはコーンスターチ;微晶性セルロース、たとえばAvicel(登録商標)、Filtrak(登録商標)、Heweten(登録商標)またはPharmacel(登録商標)のような製品;ヒドロキシプロピルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、たとえばヒドロキシプロピルメチルセルロース−Type 2910 USP、ヒプロメロース(hypromellose)、およびポリビニルピロリドン、たとえばBASFからのPovidone(登録商標)K30が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース−Type 2910 USPが使用される。
【0014】
本発明にしたがう適当な崩壊剤(1.2)としては、トウモロコシスターチ;CMC−Ca;CMC−Na;微晶性セルロース;架橋PVP、たとえばCrospovidone(登録商標)の商標名で知られそして商品として入手可能なもの、ISP社から商品として入手可能なPolyplasdone(登録商標)、またはKollidon(登録商標)XL;アルギン酸;アルギン酸ナトリウム;およびグアールガムが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。好ましくは、架橋PVP、たとえばクロスポビドン(登録商標)が使用される。
【0015】
流動促進剤(1.3)として、以下の1またはそれ以上が使用され得る:シリカ;コロイド状シリカ、たとえば無水コロイド状シリカ、たとえばAerosil(登録商標)200、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、スターチおよびタルク。好ましくは無水コロイド状シリカまたは/およびコロイド状二酸化ケイ素が使用される。
【0016】
滑沢剤(1.4)として、以下の1またはそれ以上が使用され得る:Mg−、Al−またはCa−ステアレート(stearate)、PEG 4000〜8000および/またはタルク。好ましくはステアリン酸マグネシウムが使用される。
【0017】
通常の実験により錠剤の特定の所望の特性を考慮して、これらの賦形剤の1種またはそれ以上が選択および使用され得る。
【0018】
本発明にしたがって、結合剤(1.1)の量は、錠剤の総重量に基づく重量の約1〜40%、好ましくは1〜30%、特に1〜25%の範囲内を変動し得る。 崩壊剤(1.2)の量は、錠剤の総重量に基づく重量の5〜40%、たとえば10〜35%の範囲内を変動し得る。
流動促進剤(1.3)は、錠剤の総重量に基づく重量の0.1〜10%、特に0.1〜5%、たとえば0.5〜3%または錠剤の総重量に基づく重量の2〜4%の範囲内を変動し得る。
滑沢剤(1.4)の量は、錠剤の総重量に基づく重量の0.1〜5%、たとえば0.5〜2%の範囲内を変動し得る。
【0019】
下地コーティング(1.5)の量は、錠剤の総重量に基づく重量の1〜10%、好ましくは1.5〜5%の間を変動し得る。
【0020】
任意のある賦形剤が、1種以上の機能、たとえば崩壊剤、結合剤、流動促進剤および/または滑沢剤として機能し得ることが理解される。
【0021】
本発明の好適な態様において、錠剤は、以下の賦形剤、錠剤の総重量に基づく重量の約1%〜25%の総量の1種またはそれ以上の結合剤、錠剤の総重量に基づく重量の約10%〜35%の総量の1種またはそれ以上の崩壊剤、錠剤の総重量に基づく重量の約0.5%〜3%の総量の1種またはそれ以上の流動促進剤、および/または錠剤の総重量に基づく重量の約0.5%〜2%の総量の1種またはそれ以上の滑沢剤を含んでなる。
【0022】
個々の賦形剤の絶対量および他の賦形剤に対する相対量は、同様に、錠剤の所望の性質に依存し、そしてまた、通常の実験により選択され得る。たとえば、錠剤は、活性剤の放出の定量的制御を伴ってまたは伴わずに化合物Iの促進型および/または遅延型放出を示すように選択され得る。好ましくは、錠剤は、化合物I、たとえば化合物Iのモノメシル酸塩のβ結晶形の即時型放出を示すように選択される。
【0023】
本発明者らは、高い破砕性(friability)および低い耐摩耗性のために化合物Iの錠剤の製造の困難に直面した。さらに、賦形剤、たとえば崩壊剤の量の融通性は、生成物の高い薬物含量のために制限されている。したがって、優れた患者簡便性および許容性を有する経口投与のための商品として許容される化合物Iの投与形態に対する必要性が未だに存在する。
【0024】
本発明にしたがって、今回、予期せぬことに、化合物Iを含む安定かつ簡便なガレヌス錠剤が得られ得ることが見いだされた。本出願人は、特に投与に簡便でありかつ安定な錠剤の形態の、医薬上許容される経口固体投与形態が、圧縮法による錠剤の製造により得られ得ることを見いだした。さらに特に、本発明の錠剤は、造粒、好ましくは湿式造粒、続いて圧縮法により製造され得る。化合物I、とりわけそのメシル酸塩は、大きい粒子サイズ(high particle size)を示し、たとえば出発物質である化合物Iの60%が100μmより大きいかそれと等しい粒子サイズを有し、たとえばその粒子の90%が420μmよりも小さいかそれと等しい。湿式造粒法は、通常、100μm未満の粒子サイズの出発物質を用いて行われる。
【0025】
比較的少量の賦形剤でありながら、高い含有量の化合物Iを含有することが本発明の錠剤の特徴である。このことは、物理的に小さい錠剤の製造を可能にする。ある単位用量の賦形剤の総量は、錠剤の総重量に基づいて約70重量%またはそれ以下、さらに特に約50%またはそれ以下であり得る。好ましくは、賦形剤の含有量は、錠剤の総重量に基づく重量の約30〜55%、さらに特に35〜50%の範囲である。
【0026】
本発明の錠剤は、驚くべきことに、化合物Iの所定の単位用量について、これまで可能であったよりも小さいサイズの化合物Iの投与を提供する。高い薬物含量にもかかわらず、本発明の錠剤は小さく、したがって投与が簡便である。このことは、患者のより良いコンプライアンスをもたらす。
【0027】
別の実施態様において、本発明は、50mg〜600mg、たとえば100mg〜約400mgの化合物Iを含んでなる錠剤を提供する。最も好ましくは、本発明の錠剤は、100mgの化合物Iを含有する錠剤および/または400mgの化合物Iを含有する錠剤である。
【0028】
したがって、本発明は、100mgおよび/または400mgの化合物Iの遊離塩基に等しい、化合物Iのメシル酸塩、たとえば化合物Iのメシル酸塩のα結晶形および/または化合物Iのメシル酸塩のβ結晶形の量を含有する錠剤を提供する。最も好ましくは、本発明の錠剤に使用される化合物Iのメシル酸塩の形態は、β結晶形である。
【0029】
本発明の錠剤の製造方法は、内部相(inner phase)を形成させ、これを外部相(outer phase)とともに混合し、得られた混合物を圧縮し、そして所望により錠剤をコーティングすることからなる。
【0030】
内部相は、化合物Iを含んでなる。好ましくは、内部相は、化合物Iおよび1種またはそれ以上の賦形剤、さらに好ましくは1種またはそれ以上の結合剤を含んでなり、そして最も好ましくは内部相における1種またはそれ以上の結合剤の量は約1〜30%、好ましくは1〜20%およびさらに好ましくは1〜15%の範囲である。本発明の内部相の結合剤は、好ましくは微晶性セルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースである。内部相の微晶性セルロースの量は、錠剤の総重量に基づく重量の約10〜29%、特に12〜14%の間を変動し得る。内部相のヒドロキシプロピルメチルセルロースの量は、錠剤の総重量に基づく重量の1〜5%、好ましくは1〜2%の間を変動し得る。
【0031】
内部相の化合物Iおよび医薬上許容される賦形剤を水とともに混合し、そして混合物を、たとえば湿式高せん断造粒機を用いて、造粒のために加工し、湿式顆粒を形成させる。次いで、湿式顆粒を、たとえば流動床乾燥機を用いて、乾燥し得る。
【0032】
本発明は、外部相を含んでなる錠剤の製造方法に関する。外部相は、内部相と1種またはそれ以上の賦形剤との混合物からなる。内部相と外部相の1種またはそれ以上の賦形剤とを、たとえば拡散ミキサー(diffusion mixer)を用いて、混合する。好ましくは、1種またはそれ以上の結合剤を添加する。最も好ましくは、微晶性セルロースを添加する。いっそうさらに好ましくは、微晶性セルロースを、錠剤の総重量に基づく重量の1〜10%の範囲で添加する。本発明の好適な実施態様において、外部相における微晶性セルロースの量は、錠剤の総重量に基づく重量のおおよそ5%である。本発明の外部相は、また、1種またはそれ以上の崩壊剤、最も好ましくはCrospovidone(登録商標)を含有し得る。好適な実施態様において、外部相における崩壊剤の量は、約10〜30%、好ましくは12〜25%の範囲、最も好ましくは約15%である。
【0033】
本発明の特定の態様において、1種またはそれ以上の流動促進剤が外部相に組み込まれる。
【0034】
本発明にしたがって、1種またはそれ以上の滑沢剤が外部相に組み込まれる。
【0035】
本発明のさらなる態様において、打錠は、たとえば打錠機を用いて、内部相および外部相の混合物の圧縮により行われる。
【0036】
所望により、錠剤は、好ましくは本明細書において後記したように、コーティングされてもよい。
【0037】
本発明の1つの実施態様において、
(a)(i)化合物Iを医薬上許容される賦形剤と混合すること
(ii)湿式造粒すること
を含んでなる内部相を形成させること、
(b)(iii)さらなる医薬上許容される賦形剤を内部相に添加し、そして混合すること
を含んでなる外部相を形成させること、
(c)(iv)工程(iii)において得られた混合物を圧縮すること
により錠剤を形成させること、ならびに所望により
(d)コーティングすること
を含んでなる錠剤の製造方法。
【0038】
さらに特に、1つの態様において、本発明は、
(i)高せん断混合機内で化合物Iおよび医薬上許容される賦形剤、たとえば1種またはそれ以上の結合剤、たとえば微晶性セルロースを混合すること;
(ii)水を添加し、混合物を、たとえば高せん断混合機中で湿化/練合に付し、回転翼(rotating impeller)を用いてスクリーニングミルでふるいにかけ、そしてたとえば流動床乾燥機内で乾燥すること;
(iii)医薬上許容される賦形剤、たとえばふるいがけされた賦形剤、たとえば1種またはそれ以上の崩壊剤、たとえばCrospovidone(登録商標)、1種またはそれ以上の結合剤、たとえば微晶性セルロース、1種またはそれ以上の流動促進剤、たとえばコロイド状二酸化ケイ素を添加し、そしてたとえば拡散混合機中で混合すること;
(iv)医薬上許容される賦形剤、たとえば1種またはそれ以上の滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウムを添加し、ふるいにかけ、たとえば900μmにて、たとえば手動でふるいにかけ、そしてたとえば拡散混合機中で混合すること;
(v)工程(iv)において得られた混合物を圧縮により、たとえば慣用的な打錠機で、たとえばEK−0 Korschエキセントリック型打錠機または回転型打錠機、好ましくは回転型打錠機で打錠すること、ならびに
(vi)たとえばパン型コーター、たとえばGlatt、Accela中でコーティングすること
を含んでなる方法を提供する。
【0039】
「コア」は、活性薬化合物Iを含む顆粒相(工程(i)および(ii))および賦形剤からなる外部相を意味する。
【0040】
「錠剤の総重量」は、内部相および外部相およびコーティング(もしあれば)である錠剤の重量を意味する。
【0041】
本発明にしたがって、コーティング処理は、低温、たとえば30〜40℃、好ましくは32〜39℃、最も好ましくはおおよそ35からおおよそ38℃の範囲の温度で行われ得る。コーティング処理は、好ましくは、30〜105g、好ましくは35〜105g(コーティング分散)/kg(コア)/時間の範囲のスプレー速度で行われ得る。驚くべきことに、低温での処理おいて当業者に予想されるような、崩壊剤、たとえばCrospovidone(登録商標)の膨張や、コアの固着が、コーティング混合物のスプレー中に起こらないことが見いだされた。
【0042】
さらに、当該錠剤は、改善された耐摩耗性を示す。物理的および化学的安定性を、慣用的方法で試験し得、たとえば当該錠剤を、たとえば室温、すなわち25℃、および/または40℃での貯蔵後に、溶解、破砕性、崩壊時間、化合物Iの分解生成物のアッセイ、外観および/または顕微鏡検査の測定によるなどして試験し得る。
【0043】
錠核の形は変動し得、そしてたとえば、球形、楕円形、長方形(oblong)、円筒形、あるいは任意の他の適当な形態であり得る。本発明の錠剤の特徴は、その中に含有されている化合物Iまたは化合物Iの塩の量に比して、それらのサイズが小さいことである。
【0044】
本発明の好適な実施態様において、上記の圧縮方法により得られた錠剤は、球形または楕円形である。錠剤の端を、面取りまたは丸めてもよい。最も好ましくは、錠剤は楕円様および/または球形であり得る。本発明の錠剤に、割線を入れてもよい。楕円様の錠剤の大きさは、たとえば10〜20mm、好ましくは15〜20mm、最も好ましくは17〜19mmの長さ;5〜10mm、好ましくは6.5〜8mmの幅であり得る。錠剤の厚さは、4〜8mm、好ましくは6〜8mmである。圧縮錠を製造するために、10〜20kN、好ましくは12〜18kNの圧縮力が使用される。好ましくは、楕円様錠剤は、400mgの化合物Iを含有する。球形の錠剤の直径は、たとえば5〜15mm、好ましくは7〜10mm、最も好ましくは約9mmであり得る。錠剤の厚さは、2〜5mm、好ましくは2.5〜4mmであり得る。圧縮錠を製造するために、6〜18kN、好ましくは8〜14kNの圧縮力が使用される。好ましくは、球形の錠剤は100mgの化合物Iを含有する。好ましくは、100mg錠は、分割錠(scored tablet)であり、最も好ましくは、錠剤は、一方の面に割線を有する。
【0045】
約100mgの化合物Iを含んでなる本発明の錠剤は、さらに、約30〜140N、たとえば40〜140N、30〜100N、40〜100N、好ましくは50〜80Nの硬度を有し得る。約400mgの化合物Iを含んでなる本発明の錠剤は、100〜270N、たとえば100〜250N、160〜270N、160〜250N、好ましくは195〜235Nの硬度を有し得る。
【0046】
錠剤の崩壊時間は、約20分またはそれ以下であり得る。好ましくは、化合物Iの100mg錠に関して、崩壊時間は、約2〜10分、好ましくは4〜10分、たとえば4〜8分の範囲である。化合物Iの400mg錠に関して、崩壊時間は、好ましくは約7〜15分、好ましくは8〜15分、たとえば8〜14分の範囲である。
【0047】
錠剤の破砕性を、米国薬局方(US Pharmacopeia)にしたがって測定する。米国薬局方の勧告にしたがってモニターした本発明の錠剤の破砕性は、0%である。
【0048】
本発明の錠剤は、さらに着色されてもよく、そして/または錠剤もしくはコーティングは、特有の外観を与え、そして即座に認識できるように印を付けられてもよい。染料の使用は、その外観の強調、ならびに錠剤の同定を提供することができる。薬学的使用に適した染料としては、典型的には、カロチノイド、酸化鉄、またはクロロフィルが挙げられる。本発明の錠剤に、刻印コード(imprint code)で印を付けてもよい。
【0049】
使用され得る手順は、当分野において慣用的または既知であり得るか、あるいはたとえば、L. Lachman et al. The Theory and Practice of Industrial Pharmacy, 3rd Ed, 1986, H. Sucker et al, Pharmazeutische Technologie, Thieme, 1991, Hagers Handbuch der pharmazeutischen Praxis, 4th Ed. (Springer Verlag, 1971) およびRemington’s Pharmaceutical Sciences, 13th Ed., (Mack Publ., Co., 1970) あるいは後続版において記載された手順を基礎とし得る。
【0050】
本発明の錠剤は、化合物Iのヒト適応症、たとえば標準的試験により示されるように、抗腫瘍処置に有用である。本発明の錠剤の活性および特徴は、標準的な臨床試験および/または動物試験において示され得る。
【0051】
本発明の錠剤は、たとえば非悪性および悪性増殖性障害、たとえば白血病、神経膠腫(glioma)、肉腫(sarcoma)、前立腺−、乳房−、胃腸−、肺−、卵巣腫瘍の処置に特に有用である。
【0052】
薬理学的有効量の化合物Iまたは化合物Iの塩を含んでなる本発明の錠剤は、単一の活性薬剤として投与され得るか、または認識され得る別の活性薬物とともに、たとえば他の薬物の同時的もしくは個別的投与とともに投与され得る。
【0053】
さらに、得られた本発明の錠剤は、製造工程および貯蔵期間の両方で、たとえば慣用的なパッケージング、たとえば密閉されたアルミニウムブリスターパックにおいて2年または3年間さえも安定である。約5%未満、たとえば2もしくは3%またはそれ未満の化合物Iまたは化合物Iの塩が、慣用的試験において測定されるような時間内に分解し得る。
【0054】
本発明の錠剤、たとえば100および400mg錠は、化合物Iの市販のゼラチン硬カプセル(100mg)と生物学的に同等(bioequivalent)である。単一フィルムコーティング錠剤の形態の硬ゼラチンカプセル(4×100mg)中の400mgの化合物Iの投与は、十分に忍容性である。
【0055】
年齢、個々の状態、投与様式および問題の臨床像に依存して、有効用量、たとえば100〜1000mg、たとえば100〜800mg、好ましくは100〜600mg、とりわけ400mgの化合物Iを含んでなる本発明の錠剤の1日用量が、体重約70kgの患者に投与される。
【0056】
本発明は、また、処置を必要としているヒト対象に、錠剤の形態の化合物Iまたは医薬上許容されるその塩を、3ヶ月を超える期間にわたって1日1回投与する方法に関する。本発明は、とりわけ、100〜1000mg、好ましくは100〜800mg、とりわけ200〜600mg、好ましくは400mgの化合物Iの1日用量が成人に投与される方法に関する。任意の特定の患者のための特定の用量レベルは、年齢、体重、全般的健康、1種またはそれ以上の活性薬物との薬物併用、疾患のタイプおよび重度に依存すると理解される。
【0057】
したがって、さらなる態様において、本発明は、薬理学的有効量の化合物Iの塩を含んでなる本発明の錠剤を、所望により別の薬物、たとえばシクロスポリン、ラパマイシン、アスコマイシン、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ブレキナール(brequinar)、レフルノミド、ミゾリビン、ミコフェノール酸および/またはミコフェノール酸モフェチルの同時的、逐次的または個別的投与とともに、処置を必要としている対象に投与することを含んでなる処置方法を提供する。
【0058】
本発明の錠剤が組合せ治療で共投与された場合、化合物Iのメシル酸塩の用量は、たとえば単独で使用される場合の用量の2分の1から3分の1にまで低減化され得る。
【0059】
医薬パッケージは、本発明の錠剤および化合物Iの1種またはそれ以上の錠剤を経口的に投与するように指示する指示印刷物(printed instruction)を含んでなる。
【0060】
以下の非限定的実施例により本発明を説明する。
【実施例】
【0061】
実施例1:錠剤製剤(100mg錠)
【表1】

顆粒の成分、 119.5mgの化合物Iのメシル酸塩は、100mgの化合物Iの遊離塩基に等しい、 微晶性セルロースを、乾燥結合剤として外部相に添加する、 20%過剰量のコーティング分散物が、コーティング工程中のスプレーによる損失を補うために包含されている。
【0062】
100mgの本発明の化合物Iの遊離塩基の錠剤および上記の錠剤を、化合物Iの塩および(1.1)の混合物を湿式造粒すること、(1.1)、(1.2)、(1.3)および(1.4)と混合すること、圧縮すること、および得られた錠剤を、コーティング混合物(1.5)の水性分散液でコーティングすることにより製造した。
【0063】
コーティング工程は、低温、たとえばおおよそ35からおおよそ38℃の範囲で実施され得る。コーティング工程は、好ましくは30〜105g(コーティング分散物)/kg(コア)(「コア」は、圧縮内部および外部相に相当する。)/時間、たとえば35〜105g/kg(コア)/時間の範囲のスプレー速度で実施され得る。
【0064】
実施例2:錠剤製剤(400mg錠)
400mgの本発明の化合物Iの錠剤および下記の錠剤を、化合物Iの塩および(1.1)の混合物を湿式造粒すること、(1.1)、(1.2)、(1.3)および(1.4)と混合すること、圧縮すること、および得られた錠剤をコーティング混合物(1.5)の水性分散物でコーティングすることにより製造した。
【表2】


顆粒の成分、 478mgの化合物Iのメシル酸塩は、400mgの化合物Iの遊離塩基に等しい、
微晶性セルロースを、乾燥結合剤として外部相に添加する、 20%過剰量のコーティング分散物が、コーティング工程中のスプレーによる損失を補うために包含されている。
【0065】
コーティング工程は、低温、たとえばおおよそ35からおおよそ38℃の範囲で実施され得る。コーティング工程は、好ましくは30〜105g(コーティング分散物)/kg(コア)(「コア」は、圧縮内部および外部相に相当する。)/時間、たとえば35〜105g/kg(コア)/時間の範囲のスプレー速度で実施され得る。
【0066】
実施例3:錠剤の大きさ
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤の総重量に対して約30〜80重量%の式(1)
【化1】

で示される化合物Iまたは医薬上許容されるその塩および約10〜35重量%の崩壊剤を含んでなる錠剤。
【請求項2】
式(1)の化合物または医薬上許容されるその塩が、錠剤の総重量に対して約50〜80%となる量で含まれている、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
式(1)の化合物がモノメシル酸塩の形態である、請求項2に記載の錠剤。
【請求項4】
式(1)の化合物のモノメシル酸塩がβ結晶形である、請求項3に記載の錠剤。
【請求項5】
錠剤が、錠剤の製造に適した1またはそれ以上の医薬上許容される賦形剤を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の錠剤。
【請求項6】
賦形剤が少なくとも1種の結合剤を含んでなる、請求項5に記載の錠剤。
【請求項7】
賦形剤が、
錠剤の総重量に対して総重量が約1〜25%となる少なくとも1種の結合剤、
錠剤の総重量に対して総重量が約10〜35%となる少なくとも1種の崩壊剤、
錠剤の総重量に対して総重量が約0.5〜3%となる少なくとも1種の流動促進剤、および/または
錠剤の総重量に対して総重量が約0.5〜2%となる少なくとも1種の滑沢剤
を含んでなる、請求項5に記載の錠剤。
【請求項8】
結合剤が微晶性セルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはそれらの混合物を含んでなる、請求項6または7に記載の錠剤。
【請求項9】
崩壊剤が架橋ポリビニルピロリジノンを含んでなる、請求項7に記載の錠剤。
【請求項10】
流動促進剤がコロイド状二酸化ケイ素および/またはコロイド状無水シリカを含んでなる、請求項7に記載の錠剤。
【請求項11】
滑沢剤がステアリン酸マグネシウムを含んでなる、請求項7に記載の錠剤。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の錠剤の製造方法であって、
(i)式(1)の化合物または医薬上許容されるその塩および医薬上許容される賦形剤を混合すること;
(ii)湿式造粒すること;
(iii)医薬上許容される賦形剤と混合して混合物を形成させること;ならびに
(iv)工程(iii)において得られた混合物を圧縮して錠剤を形成させること
を含んでなる方法。
【請求項13】
錠剤がコーティングされる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
湿式造粒法により製造される請求項1〜11のいずれか1項に記載の錠剤。

【公開番号】特開2010−31019(P2010−31019A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220815(P2009−220815)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【分割の表示】特願2003−587357(P2003−587357)の分割
【原出願日】平成15年4月22日(2003.4.22)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】