説明

薬用抗細菌クリームおよびその作製方法

本発明は、細菌性皮膚感染症を処置し、皮膚を若返らす組成物に関する。より詳細には、本発明は、バイオポリマーおよび抗細菌活性成分を含む製薬クリームに関する。本発明は、a)キトサンの形態のバイオポリマー、b)細菌性皮膚感染症を処置するために使用する原薬(APIs)、c)一次および二次乳化剤、蝋状物質、共溶媒、酸、保存料、緩衝剤、抗酸化剤、キレート化剤、ならびに湿潤剤を含有するクリーム基剤、d)水を含有する、細菌性皮膚感染症を処置し、皮膚を若返らす組成物を開示する。活性成分、すなわちキトサンと抗細菌剤とが、細菌性皮膚感染症の処置に使用するためのクリーム基剤中に取り込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌性皮膚感染症を処置し、皮膚を若返らす組成物に関する。より詳細には、本発明は、バイオポリマーおよび抗細菌活性成分を含む製薬クリームに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚障害は、細菌型または真菌から生じるものとして広く分類することができる。抗真菌または抗細菌組成物は、伝統的にはローション、クリームまたは軟膏として塗布される。さらに、多くの場合で、皮膚の状態が細菌性病原体または真菌が原因であるかを確認することは困難である。
【0003】
皮膚障害を処置する一手法は、試行錯誤による排除によるものである。抗細菌または抗真菌組成物を順番に施用し、応答を監視して処置を修正する。この手法の主要な不利点は、処置期間の間、処置を1日に複数回施用する必要があることである。これは非常に不都合であり、人間集団の大多数、特に発展途上国において対費用効果が低い。
【0004】
細菌または真菌によって引き起こされる皮膚障害を処置するために、いくつかの処置が利用可能である。典型的には、そのような組成物ではステロイド、抗細菌剤もしくは抗真菌剤(またはこれらの固定された用量の組合せ)を使用し、これらの製薬的活性成分に焦点を合わせている。そのような配合物の組成は、その物理的/化学的/生体放出プロフィールを増強させるようなものである。
【0005】
多くの皮膚障害は炎症によって引き起こされ、細菌攻撃はそう痒および続く掻傷をもたらし、これらは、他の原因のなかでとりわけ、立ち代って重篤かつ複雑な二次感染症をもたらす場合がある。慣習的に利用可能な処置は皮膚の治癒または若返りに焦点を置いておらず、通常、これら2つの側面は自然の治癒に委ねられる。
【0006】
易感染の皮膚状態(切傷、創傷、感染症、炎症、擦過傷など)に関連する言葉、治癒とは、細菌または真菌などの原因の源の予防、制御、排除に関するだけでなく、皮膚をその感染前の状態に修復することにも関する。
【0007】
皮膚処置の現在の手法は、2つの段階、すなわち、a.治癒およびb.病気前の状態への皮膚の修復に広く分類することができる。治癒部分は、最良の可能な程度までの、障害の根本的原因の排除を含む。これは、抗細菌もしくは抗真菌剤の適切な処置による、感染症を引き起こしている細菌もしくは真菌の排除、またはステロイド処置による炎症の低減であり得る。この処置の進行中、継続中の皮膚の易感染状態は二次感染症に易罹患性であり続け、これは非常に重篤な性質の場合がある。掻傷または創傷の皮膚の場合、凝血が素早く起こることが重要であり、これは二次感染症の可能性を低下させるためである。クリーム、ローション、軟膏を介して投与するそのような処置の焦点は原薬の作用に置かれている。クリーム基剤または軟膏基剤は、単にAPIを障害部位に運ぶための担体である。
【0008】
しかし、皮膚をその障害前状態まで戻して修復する側面は、ほぼ完全に自然に委ねられる。したがって、既存の皮膚処置手法の1つの主要な欠点は、遅い凝血および創傷治癒のプロセスが原因で二次感染症の危険性が存在することである。
【0009】
さらに、従来技術の研究から、皮膚障害の局所的処置に使用される既存の処方箋皮膚用生成物のいくつかの乏しい側面。これは、クリーム基剤マトリックスまたは軟膏基剤のどのような潜在的な治療上の利点も見落とされていたことによって明らかとなる。具体的には、どの利用可能な従来技術も以下を示唆していない。
−局所的皮膚配合物は、主APIの治療結果が増強されるように、主APIの活性を超える皮膚の治癒または再生をもたらすことができる。
−生物活性ポリマー(いわゆるバイオポリマー)の添加は、治療結果が増強および補完されるように薬物設計段階自体で的確なバイオポリマーまたは天然に相互作用する配合賦形剤またはプロセスパラメータが十分に熟慮および最適化されていない場合は、配合物の安定性が損なわれる複雑なプロセスである。
−単一用量様式の皮膚用薬用クリームにおいてAPIの機能的安定性が保持される一方で、クリームマトリックス中に機能的に生物活性のある賦形剤ポリマーを取り込ませることは、クリームマトリックスの物理的安定性に特異的な問題の解決を含む。
【0010】
既存の特許の一部を見ると、上記点が例示されている。
【0011】
特許出願EP2092935号およびPCT/IN2008/000577号は、フロ酸モメタゾンなどのステロイドを局所的処方箋皮膚用生成物のために使用する典型的な方法の見識を提供する。
【0012】
EP2092935号は、フロ酸モメタゾンおよびフマル酸ホルモテロールを含有する、喘息を処置するためのエアロゾル化配合物、ならびにその調製方法に関する。EP2092935号は、エアロゾル懸濁液配合物が無毒性であり、CFCを実質的に含まず、安定性が改善されており、また、容易に製造可能であり、担体および賦形剤を実質的に含まないという主張に関して新規性を主張している。さらに、出願人は、活性薬剤および界面活性剤の乾燥粉末を一緒に混合し、定量吸入缶に満たし、次いで缶に計量弁を圧着させ、これに非クロロフルオロカーボン噴霧剤を満たす、配合物を調製する方法も開示している。
【0013】
PCT/IN2008/000577号は、局所的抗生物質および局所的ステロイドの組合せ療法を用いた、二次細菌感染症に関連する炎症性皮膚疾患の処置を提供する。PCT/IN2008/000577号は、出願人が、二次細菌感染症に関連する炎症性皮膚疾患の処置に非常に有効な組合せを発見したという主張に関して、既存の従来技術に対する新規性を主張している。出願人は2つの配合物を開示しており、そのうちの1つ目の配合物は、a)1%w/w〜5%w/wのフシジン酸、b)0.05%w/w〜2%w/wのフロ酸モメタゾン、およびc)薬学的に許容される担体からなる。
【0014】
PCT/GB2007/004373号、US6,899,897号、US6,080,744号、US6,537,970号は、処方箋皮膚用生成物におけるクロトリマゾールなどの抗真菌剤の典型的な使用の例である。
【0015】
PCT/GB2007/004373号は、有効量のクロトリマゾールおよびその誘導体を用いた、多剤耐性のスタフィロコッカス種によって引き起こされるまたはそれに寄与する感染症を処置するための医薬品および方法を提供する。これは、この発明による医薬組成物がメチシリン耐性スタフィロコッカス種を阻害する能力を保有するという主張に関して新規性を主張している。出願人によってこの発明中に記載されている組成物は、経口投与に使用し、また、感染部位に局所的にまたは静脈内で使用することができる。また、前記組成物は、家具、床、たとえば専門病院機器および/または手術機器を含めた機器を除染するための、滅菌または洗浄溶液としても使用することができる。
【0016】
US6,899,897号は、ガム樹脂であるベンゾインの粘着性フィルムを含む生物学的包帯を開示しており、揮発性溶媒であるエタノールが蒸発した後に、薬理学的活性薬剤であるクロトリマゾールが皮膚または粘膜上に残る。組成物には、浸透増強剤がさらに含まれ得る。これは、ここで開示した包帯が局所的に施用する医薬品の清潔かつ安価なビヒクル/担体であり、処置の利便性および有効性を増加させ、処置に必要な時間を短縮させるという主張において、新規性を主張している。これは、より少ない廃棄物、より安価な費用、および改善された処置に関連していると見られる。形成されるフィルムは、水および衣類による擦過に耐性があるため、皮膚上での保持性が延長されると見られる。
【0017】
US6,537,970号は、膣感染症の処置に使用する、クリンダマイシンおよびクロトリマゾールを含む組成物に関する。これは、組成物中に存在する様々な真菌毒の独特な組合せおよびその相乗作用を理由に、慣用の治療に対する新規性を主張している。また、これは、前記組成物を細菌感染症、真菌感染症および混合感染症の処置に使用できることも主張している。また、処置は経口または局所的のどちらかで実施することができる。
【0018】
US6,080,744号は、組成物が広範囲の真菌に打ち勝つことができ、かつ局所的真菌感染症を除去できるように、クロトリマゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ナイスタチン、トルナフタート、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、ウンデシレン酸およびウンデシレン酸亜鉛などの活性抗真菌成分を天然の基剤中に含有する、医学、獣医学、または歯科学で使用するための局所的組成物に関する。組成物中で使用する成分を天然のクリーム基剤中で混合し、また、これが広範囲の菌類の病気にわたって有効であり、素早い回復を助けることに基づいて、既存の従来技術を超える利点を主張している。
【0019】
これらの実例は、クロトリマゾールが業界でどのように使用されてきたかの合理的な状況を与えるために十分であろう。
【0020】
上述した特許出願はどれも、以下を同時に教示または示唆していない。
−クリーム基剤マトリックスを、単なる主APIの担体ではなくクリームの機能的要素として使用すること。
−既知のバイオポリマーを機能的賦形剤として抗細菌剤と共に使用すること。
−マイクロフィルムの形成、凝血、表皮成長の支援、微生物の静電的不動化が、慣用の単一薬物療法の場合のように順々にではなく同時に起こるため、はるかに優れた治癒効果が提供されること。
−クリームの全体的な薬効成分が改善され、クリームマトリックス中で使用するAPIが補完されること。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、主APIによって提供されるものを補完する治療的価値を提供し、かつ、単なる担体または送達機構であること以上の目的を果たすクリーム基剤中で提供される、単一用量のAPI局所的処置の必要性が存在する。
【0022】
したがって、細菌感染症に対する有効な処置を提供し、皮膚の若返りの能動的な治癒を助ける、単一用量のAPI局所的処置配合物を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明のさらなる目的は、以下のような局所的皮膚処置配合物を提供することである。
−主APIの治療結果が増強されるように、主APIの活性を超える皮膚の治癒または再生をもたらすことができる。
−的確なバイオポリマーが選択されない場合は損なわれる場合がある配合物の安定性を損なうことなく、生物活性ポリマー(いわゆるバイオポリマー)を含有する。
−単一用量様式においてAPIの機能的安定性が保持される一方で、クリームマトリックス中に機能的に生物活性のある賦形剤ポリマーが取り込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】カルボマーなどの不適合性の賦形剤を用いた、キトサンを含有するクリームの非均質性質を示す図である。
【図2】キトサンを用いた膜形成(film formation)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、
a)キトサンの形態のバイオポリマー
b)細菌性皮膚感染症を処置するために使用する原薬(API)
c)一次および二次乳化剤、蝋状物質、共溶媒、酸、保存料、緩衝剤、抗酸化剤、キレート化剤、ならびに湿潤剤を含有するクリーム基剤
d)水
を含有する、細菌性皮膚感染症を処置し、皮膚を若返らす組成物に向けられている。
【0026】
活性成分、すなわちキトサンと抗細菌剤とが、ヒト皮膚を上記同定した組成物と接触させることを含むアレルギーおよびそう痒、ならびにヒト皮膚上の創傷を伴う細菌性皮膚感染症の処置に使用するためのクリーム基剤中に取り込まれている。
【0027】
実施例、または別段に指定した箇所以外は、成分の量を表すすべての数値は、すべての場合で用語「約」によって修飾されると理解される。
【0028】
本発明は、処方箋医薬品の分野における局所的皮膚処置のための単一用量API配合物を提供する。処方箋医薬品は、いわゆる薬用化粧品と比較してその使用が明確に異なる。薬用化粧品は、ほぼ無傷の皮膚または重篤な障害を患っていない皮膚の美化または改善に向けられている。他方で、処方箋皮膚配合物は、感染症および創傷から生じた重篤な皮膚障害の処置の提供に向けられている。
【0029】
従来技術の研究から、処方箋医薬品の分野における既存の局所的処置配合物について、いくつかの乏しい側面が明らかである。従来技術では、以下を教示または示唆していない。
−局所的皮膚配合物は、主APIの治療結果が増強されるように、主APIの活性を超える皮膚の治癒または再生をもたらすことができる。
−生物活性ポリマー(いわゆるバイオポリマー)の添加は、的確なバイオポリマーが選択されていない場合は配合物の安定性が損なわれる、複雑なプロセスである。
−単一用量様式の皮膚用薬用クリームにおいてAPIの機能的安定性が保持される一方で、クリームマトリックス中に機能的に生物活性のある賦形剤ポリマーを取り込ませることは、クリームマトリックスの物理的安定性に特異的な問題の解決を含む。
【0030】
本発明で用い得る活性化合物は細菌感染症の処置の分野で周知の、酸もしくは塩基性のいずれかの活性物質またはその塩、および、、ヒト皮膚を上記同定した組成物と接触させることを含むヒト皮膚の創傷および若返りを処置するためのバイオポリマーである。
【0031】
使用し得る適切なバイオポリマーの例には、それだけには限定されないがキトサンなどが含まれる。
【0032】
使用し得る適切な局所的抗細菌剤の例には、それだけには限定されないが、フシジン酸ナトリウム、ムピロシンカルシウム、ゲンタマイシン、ネオマイシン、スルファジアジン銀、シプロフロキサシン、硫酸フラミセチン、キニドクロル(Quinidochlor)、ポビドンヨード、シソマイシン、ニトロフラールなどが含まれる。
【0033】
化合物は、その刺激が強いためにそれ自体でヒト皮膚上に直接置くことができないため、この酸もしくは塩基性の活性化合物またはその塩は、化合物を使用する医薬組成物中で用いられる基剤構成成分を必要とする。
【0034】
基剤構成成分は、通常、一次および二次乳化剤、蝋状物質、共溶媒、酸、保存料、緩衝剤、抗酸化剤、キレート化剤、湿潤剤などを含有する。
【0035】
キトサン
キトサンとは、ランダムに分布したβ−(1−4)−連結D−グルコサミン(脱アセチル化された単位)およびN−アセチル−D−グルコサミン(アセチル化された単位)からなる直鎖状の多糖である。これは、農業および園芸、水処理、化学工業、製薬ならびに生物医学においていくつかの商業的使用を有することが知られている。
【0036】
その既知の特性には凝血の加速が含まれる。しかし、抗細菌または抗真菌剤などの製薬活性成分とのキトサンの挙動は扱いに注意が必要であることは、当業者に知られていない。
【0037】
これは、膜形成、粘膜接着および増粘の特性を有することが知られており、錠剤配合物において結合剤および崩壊剤として使用されている。
【0038】
キトサンは、一般に大気/環境から水分を吸収し、吸収される量は、環境の初期水分含量、温度および相対湿度に依存する。
【0039】
これは、無毒性かつ非刺激性の物質としてみなされている。これは、健康および感染した皮膚のどちらにも生体適合性であり、エビ、イカおよびカニに由来するため、生分解性であることが示されている。
【0040】
キトサンは、その独特な物理特性が原因で、創傷治癒および創傷修復を加速させる。これは正荷電であり、酸性から中性の溶液中で可溶性である。キトサンは生体接着性であり、粘膜などの負荷電の表面と容易に結合する。キトサンは、上皮表面を横切る極性薬物の輸送を増強させる。キトサンの特性により、血液を迅速に凝固させることが可能となり、帯具および他の止血剤における使用が米国で最近認可された。
【0041】
キトサンは非アレルギー性であり、天然の抗細菌特性を有しており、その使用がさらに支援される。薄膜形成(micro-film forming)生体材料としては、キトサンは、創傷の幅の減少を助け、部位での酸素透過性を制御し、創傷の分泌物を吸収し、組織酵素によって分解され、これらはより速い速度での治癒に非常に必要とされていることである。また、これは、鎮静効果をもたらすことによってそう痒も減少させる。また、これは保湿剤様にも作用する。また、これは、日常的な小さな切傷および創傷、火傷、ケロイド、糖尿病性潰瘍ならびに静脈潰瘍の処置にも有用である。本発明で使用するキトサンは、1kdal〜5000kdalの範囲の様々な分子量である。
【0042】
キトサンは、その機能的賦形剤の分類に関してUSPフォーラムで議論されている。キトサンは基本的にはポリマーであるため、分子量に応じて様々なグレードで入手可能である。キトサンの様々なグレードには、キトサン長鎖、キトサン中鎖およびキトサン短鎖が含まれる。長鎖、中鎖および短鎖のグレードはキトサンの分子量に直接対応する。
【0043】
一般に、長鎖グレードは500,000〜5,000,000Daの範囲の分子量を有し、中鎖グレードは1,00,000〜2,000,000Daの範囲の分子量を有し、短鎖グレードは50,000〜1,000,000Daの範囲の分子量を有する。
【0044】
キトサンの分子量は配合物中で重要な役割を果たす。より高分子量のキトサンはより高い粘度を系に与え、より低分子量のキトサンはより低い粘度を系に与える。しかし、中鎖グレードのキトサンが最適レベルの配合物の粘度をもたらした。剤形はクリームであるため、皮膚上での良好な塗布性を達成するために適切なレベルの粘度が必要である。
【0045】
本発明者らは、活性物質およびキトサンのどちらの治療活性も損なわせずに、クリームに必要な流体学的特性が与えられたため、本発明のためにキトサン中鎖グレードを最終決定した。キトサン中鎖グレードの濃度は、有効性に関するいくつかのインハウス治験および前臨床動物研究に基づいて、注意深く結論を出した。
【0046】
局所的抗細菌剤:
局所的抗細菌剤は、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などによって引き起こされる細菌感染症について皮膚を標的とすることを意図する。
【0047】
抗細菌剤は、細菌リボソームと組み合わさって、mRNAリボソームの組合せを妨害することで細胞壁合成を阻害することによって作用する。
【0048】
別の仮説では、抗細菌剤はリボソームが誤ったアミノ酸を有するペプチド鎖を産生することを誘導し、これが最終的に細菌細胞を破壊すると考えられている。
【0049】
局所的抗細菌剤には、それだけには限定されないが、フシジン酸ナトリウム、ムピロシンカルシウム、ゲンタマイシン、ネオマイシン、スルファジアジン銀、シプロフロキサシン、硫酸フラミセチン、キニドクロル(Quinidochlor)、ポビドンヨード、シソマイシン、ニトロフラールなどが含まれる。
【0050】
局所的生成物のほとんどは、クリームまたは軟膏のどちらかとして配合される。クリームとは、皮膚への塗布に使用する局所的調製物である。クリームは、API(原薬)がそれ中に取り込まれている、油および水の混合物である半固体の乳濁液である。これらは2つの種類、すなわち、連続的な水相中に分散された油の小液滴からなる水中油(O/W)クリーム、および連続的な油性相中に分散された水の小液滴からなる油中水(W/O)クリームに分類される。水中油クリームは使いやすく、したがって、脂っぽさがより少なく、水でより容易に洗浄できるために美容上許容される。軟膏は、APIを含有する粘稠の半固体調製物であり、様々な身体表面上に局所的に使用される。軟膏のビヒクルは軟膏基剤として知られる。基剤の選択は軟膏の臨床的適応症に依存し、通常使用される様々な種類の軟膏基剤は以下のとおりである:
・炭化水素基剤、たとえば、固形パラフィン、軟パラフィン
・吸収基剤、たとえば、羊毛脂、蜜蝋
【0051】
上記基剤はどちらも油性かつ脂っぽい性質であり、これは、塗布および皮膚からの除去の困難性などの望ましくない効果をもたらす。さらに、これは衣服の染みももたらす。局所的生成物のほとんどは、その美容上の魅力からクリーム配合物として入手可能である。
【0052】
pHの酸性スケールは1〜7であり、pHの塩基スケールは7〜14である。ヒト皮膚のpH値は4.5〜6付近である。新生児の皮膚のpHは中性(pH7)に近いが、素早く酸性に変わる。酸度は細菌を死滅させるため、恐らく自然は幼い子供の皮膚を保護するためにこれを設計したのであろう。人が年を重ねるにつれて、皮膚はますます中性となり、以前よりも多くの細菌を死滅させなくなる。これが、皮膚が弱まり、問題が起こり始める理由である。人が皮膚の問題または皮膚疾患を実際に有する際、pH値は6を超える。これは、若年成人の皮膚に近いpH値を有する局所的剤を選択する必要があることを示している。
【0053】
アルカリ性のpHに向かうわずかなシフトが、微生物が繁栄するためのより良好な環境を提供する。局所的生成物のほとんどはクリームとして入手可能である。クリーム配合物中の活性化合物はイオン化された状態で利用可能である一方で、軟膏の場合、これらはイオン化されていない状態で存在する。一般に、クリーム配合物は美容上洗練されており、また、活性化合物がイオン化された状態で利用可能であるために、クリーム配合物は局所的剤形の設計および開発における配合者の第一選択肢であり、薬物は皮膚層に素早く浸透でき、これにより、配合物が完全に患者に使いやすいものとなる。
【0054】
キトサン、ステロイド、抗真菌剤などの機能的バイオポリマーを含む本発明のクリームのpHは約3〜6である。他方で、市販の軟膏は、脂っぽく、美容上洗練されていない。さらに、軟膏中の活性化合物はイオン化されていない形態であるため、皮膚の浸透は遅い。
【0055】
活性薬物が最適な生物皮膚学的有効性のために皮膚に浸透することは不可欠である。ここでは活性薬物の粒子径が重要な役割を果たす。生成物が高度に有効な形態であるためには、活性薬物がコロイド状または分子状の分散した状態で利用可能であることが必要である。また、これは、皮膚の環境に適合性のある安全なpH(4.0〜6.0)で達成すべきである。これらのすべてを達成するために、薬物を溶解または分散させるために適切なビヒクルまたは共溶媒を選択することが不可欠である。本発明の生成物は活性成分の顕著な抗細菌および創傷治癒活性が原因で有効性が高く、これらは超微小の大きさのコロイド状形態で利用可能であり、これは皮膚の浸透を増強する。
【0056】
抗細菌剤およびキトサンの組合せの使用の理論的根拠:
数々の局所的処置が、細菌感染症を処置するために現在用いられている。しかし、皮膚を保護し、表面出血、創傷および火傷を制御するための有効な単一用量療法は存在しない。この必要性を満たし、すべての国/地域にわたる分散した集団区分に手ごろな値段の安全な治療をもたらすために、皮膚の若返り特性を有するバイオポリマーであるキトサンと、抗細菌剤との独特な組合せを用いた治療が、新規クリームとして提案される。
【0057】
局所的抗細菌剤は、その抗細菌特性が原因で、様々な病因の一次および二次細菌性皮膚感染症において顕著な有効性を有する。任意の局所的抗細菌剤を用いた単独療法の欠点は、効果の比較的遅い開始であった。
【0058】
抗細菌剤およびキトサンを配合物中で用いることによって、抗細菌剤およびキトサンのどちらの特性も最適化される。キトサンは、膜形成性、生体適合性、非アレルギー性の物質であるため、これは障壁として作用することによって皮膚の保護を助ける。さらに、これは掻傷によって引き起こされる表面出血を制御し、また、その陽イオン電荷が原因で病原体の移動性も抑止する。
【0059】
抗細菌剤およびキトサンの皮膚再生側面の特性を本発明で十分に活用して、最大の治療上の利点が患者に提供され、したがってより速い治癒が補助される。このことは、患者が細菌感染症を伴う皮膚創傷、火傷の処置から恩恵を受けることを確実にする。
【0060】
キトサンを配合物中に含めることで、皮膚病の処置に非常に不可欠であるとみなされている多くの特性を備える。キトサンと抗細菌剤との組合せは、世界中どこでも販売されていないため独特かつ新規である。
【0061】
組合せの概念は、抗細菌剤と組み合わせて使用するキトサンの物理的、化学的および治療的特性を考慮することによって証明される。
【0062】
本発明の発明態様:
本発明の別の発明態様は、クリーム基剤中に機能的賦形剤を添加することが、単に添加するという簡単なプロセスではないことである。本発明者は、キトサンなどの機能的賦形剤とクリーム中の他の薬剤との適合性が決定的な重要性を有することを見出した。これは、不適合性が最終生成物の安定性を損なわせるからである。例として、本発明者らは、安定化剤として様々に使用されているキサンタンガムおよびカルボポールなどの周知の賦形剤が、キトサンなどの機能的バイオポリマーと組み合わせて使用できないことを見出した。
【0063】
局所的剤形の賦形剤には、ポリマー、界面活性剤、蝋状物質、乳化剤などが含まれる。ポリマーは、ゲル化剤、懸濁剤、粘度上昇剤、放出改質剤、希釈剤などとして使用される。界面活性剤は、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、放出増強剤などとして使用される。
【0064】
一般に、ポリマーおよび界面活性剤は、イオン電荷を保有していても保有していなくてもよい。これらは、陰イオンもしくは陽イオン性または非イオン性の性質であり得る。陰イオン性賦形剤を配合物中に含める場合、これらは陽イオン性配合配合賦形剤と相互作用して、均質でない、美学上魅力的でない生成物を生じ、不適合性が原因で、所望しない副産物、場合によってはアレルゲン、不純物、毒性物質などを生じる。
【0065】
投薬は病的状態の患者を処置するためのものであるため、生成物中のこれらの不適合性は許容されず、これらは患者にさらなる合併症を追加する。
【0066】
本発明者らは、配合物を開発するためにポリマーおよび界面活性剤を含めた賦形剤を注意深くスクリーニングした。賦形剤の短いリストをスクリーニングした後に徹底的な研究を行った。賦形剤間の可能性のある相互作用に大きな焦点を当て、詳細な実験を行った。
【0067】
クリーム剤形中の陰イオン−陽イオンの相互作用に関する一部の実験を挙げると、本発明者らは、キサンタンガムおよびキトサン、アクリル酸ポリマーおよびキトサン、ラウリル硫酸ナトリウムおよびキトサン、ドクサートナトリウムおよびキトサンならびにアラビアガムおよびキトサンを含有する一部の配合物(表1〜5を参照)を作製した。結果により相互作用の発生が明白に示され、これは非常に明確に見られ、系全体中に塊として見られた。また、最終生成物は美学上魅力的でなく、均質性がなかった。添付の図1は、キトサンと不適切な陰イオン性賦形剤との間の相互作用を明白に説明している。賦形剤の観察および詳細な知識に基づいて、本発明者らは、可能な相互作用がまったくない頑強な配合に到達した。
【0068】
表1:キトサンおよびキサンタンガムを用いた抗細菌クリームの配合
【表1】

【0069】
表2:キトサンおよびアクリル酸ポリマーを用いた抗細菌クリームの配合
【表2】

【0070】
表3:キトサンおよびラウリル硫酸ナトリウムを用いた抗細菌クリームの配合
【表3】

【0071】
表4:キトサンおよびドクサートナトリウムを用いた抗細菌クリームの配合
【表4】

【0072】
表5:キトサンおよびアラビアガムを用いた抗細菌クリームの配合
【表5】

【0073】
上記生成物(表1〜5)は、均質なクリームを形成せず、図1に例示する種類の非均質クリームを生じる生成物の例である。とはいえ、これらの例中に記述した割合は、当業者が現在利用可能な知識に基づいて使用し得るものの一部である。徹底的かつ大規模な試行錯誤の後にのみ、的確な種類および割合の賦形剤に到達することが可能となるであろう。
【0074】
本発明者らが以前に記述したように、治療において、抗細菌剤は細菌感染症に対する緩和をもたらす。しかし、皮膚保護、部位での出血、1つの部位から別の部位までの病原体の移動性などの側面は、単一用量療法において現在までに取り組まれていない。
【0075】
本発明は、その単一用量の応用において、キトサンを取り込ませ、皮膚保護(膜形成特性による)、止血(凝血特性による)および病原性微生物の不動化(その陽イオン性の静電気特性による)の所要の利点を活用することによって、欠陥を補完する。
【0076】
クリームマトリックス中のバイオポリマーである機能的賦形剤をキトサンの形態で取り込ませることによる治療的価値の付加。価値の付加は、バイオポリマーの以下の機能的特質の統合的な部分集合である:
−皮膚表面上でのマイクロフィルムの形成
−膜形成バイオポリマーを含有しないクリームよりも加速された凝血
−バイオポリマーの陽イオン電荷による表面微生物の静電的不動化
−皮膚の上皮化または再生の顕著な増強
【0077】
機能的バイオポリマーを処方箋皮膚用薬用生成物中に取り込ませることによってカバーされるプラットフォーム技術の開発に関与する本発明の試みは、
−そのような取り込みがもたらす補完的な治療的価値の同定
−バイオポリマーの取り込みから生じる生成物の生理化学的な安定性に関連する問題の同定
−細菌感染症が同定されている場合における単一用量様式の提供
である。
【0078】
単一用量処置の重要性、特に発展途上国における重要性は強調しきれない。南アジアまたはアフリカの一部地域において、皮膚専門家はいうまでもなく一般医が利用できない場合に、単一用量配合物は、皮膚障害の根本的原因を排除する一方で、皮膚を再生させる可能性も劇的に増加させる。
【0079】
皮膚科学的な状態の間、現在利用可能な治療は皮膚の保護、出血の抑止などの問題に対処しない。本発明の独特な革新的配合物は、部位での表面出血を制御すると共に皮膚の状態を処置することによって、皮膚の状態を解決する。表面出血を処置しないままでいると二次的な微生物感染症がもたらされることは十分に理解されている。本発明は、この満たされていない必要性に対する解決策を有利に提供する。
【0080】
さらに、医療支援システムに対して高まり続ける圧力および付随するその不足/高価格により、世界中で、
・患者が処置のために待つ時間が長すぎること
・病院に到着した際に不必要に滞在していること
・必要以上に頻繁に戻って来なければならないこと
などの場合における問題に取り組む緊急の必要性が存在する。ほとんどの場合で、滞在時間の短縮が、対処すべき主要な根底的な問題である。本発明は、その単一用量療法において、重篤な皮膚障害の全体的な処置時間を顕著に短縮させる。
【0081】
好ましい第1実施形態:
抗細菌剤およびクリーム基剤中で提供されるバイオポリマーを含み、前記クリーム基剤が、保存料、一次および二次乳化剤、蝋状物質、共溶媒、酸、ならびに水、好ましくは精製水のそれぞれのうちの少なくとも1つを含む、細菌性皮膚感染症の局所的処置および関連する創傷治癒のための新規皮膚用薬用クリーム。
【0082】
第1実施形態
緩衝剤、抗酸化剤、キレート化剤、湿潤剤、または任意のそれらの組合せを含む群のうちの任意のものをさらに含む、好ましい第1実施形態に開示されている新規皮膚用薬用クリーム。
【0083】
第2実施形態
−前記抗細菌剤が約0.5%w/w〜約15%w/w、より好ましくは0.5〜5.0%w/wの量で加えられ、
−前記バイオポリマーがキトサンの形態であり、約0.01%〜約1重量%、好ましくは約0.01%w/w〜約0.5%w/w、最も好ましくは約0.25%w/wの量で加えられ、前記キトサンが、その機能的賦形剤の分類に関して米国薬局方に従っており、長鎖、中鎖および短鎖などの任意のグレードから選択され、50kDa〜5000kDaの範囲の分子量を有し、
−前記一次および二次乳化剤が、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール−1000、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリソルベート−80、Span−80などを含む群から選択され、約1%(w/w)〜20%(w/w)の量で加えられ、前記蝋状物質が、白色軟パラフィン、流動パラフィン、固形パラフィンなど、または任意のそれらの組合せを含む群から選択され、約5%(w/w)〜50%(w/w)であり、前記共溶媒が、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール−400など、または任意のそれらの組合せを含む群から選択され、約5%(w/w)〜50%(w/w)の量で加えられ、前記酸が、HCl、HSO、HNO、乳酸など、または任意のそれらの組合せを含む群から選択され、約0.005%(w/w)〜0.5%(w/w)の量で加えられ、前記保存料が、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロクレゾール、ソルビン酸カリウム、安息香酸、2フェノキシエタノール、ベンジルアルコールなど、または任意のそれらの組合せを含む群から選択され、約0.05%(w/w)〜2.5%(w/w)の量で加えられ、前記水が、20%(w/w)〜75%(w/w)、好ましくは35%(w/w)〜50%(w/w)、より好ましくは40%(w/w)〜43%(w/w)の範囲の量で加えられ、好ましくは精製水である、
好ましい第1実施形態に開示されている新規皮膚用薬用クリーム。
【0084】
第3実施形態:
約0.05%(w/w)〜1.00%(w/w)の量で加えられる、オルトリン酸水素二ナトリウム、オルトリン酸水素ナトリウム、乳酸カルシウムなど、または任意のそれらの組合せを含む群から選択される緩衝剤をさらに含む、好ましい第1実施形態および第2実施形態に開示されている新規クリーム。
【0085】
第4実施形態:約0.05%(w/w)〜5%(w/w)の量で加えられる、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなど、または任意のそれらの組合せを含む群から選択される抗酸化剤をさらに含む、好ましい第1実施形態および第2および第3実施形態に開示されている新規クリーム。
【0086】
第5実施形態:約0.05%(w/w)〜1%(w/w)の量で加えられる、EDTA二ナトリウムなど、または任意のそれらの組合せを含む群から選択されるキレート化剤をさらに含む、好ましい第1実施形態および第2〜4実施形態に開示されている新規クリーム。
【0087】
第6実施形態:約5%(w/w)〜50%(w/w)の量で加えられる、グリセリン、ソルビトールなど、または任意のそれらの組合せを含む群から選択される湿潤剤をさらに含む、好ましい第1実施形態および第2〜4実施形態に開示されている新規クリーム。
【0088】
第7実施形態:約0.1%(w/w)〜5%(w/w)の量で加えられる、グアルガムなど、または任意のそれらの組合せを含む群から選択される安定化剤をさらに含む、好ましい第1実施形態および第2〜4実施形態に開示されている新規クリーム。
【0089】
第8実施形態:保存料、一次および二次乳化剤、蝋状物質、共溶媒、酸、ならびに水、好ましくは精製水のそれぞれのうちの少なくとも1つを含む、クリーム基剤中に、抗細菌剤とバイオポリマーとを提供するステップと、すべての成分を一緒に混合して均質なクリームを形成するステップとを含む、クリーム作製方法を開示する。
【0090】
第9実施形態:成分が、緩衝剤、抗酸化剤、キレート化剤、湿潤剤、安定化剤または任意のその組合せを含む群のうちの任意のものをさらに含む、第7実施形態に開示されているクリーム作製方法。
【0091】
第10実施形態:キトサンが1kdal〜5000kdalの分子量範囲を有する、前述の実施形態のいずれかに開示されている新規クリーム。
【0092】
本発明を、組成および安定性の研究データを含有する添付の実施例を参照してさらに解明するが、これは、いかなる様式でも本発明を限定することを意図しない。
【実施例1】
【0093】
実施例I:表6:フシジン酸ナトリウム+キトサンのクリーム
【表6】

【実施例2】
【0094】
実施例II:表7:ムピロシンカルシウム+キトサンのクリーム
【表7】

【実施例3】
【0095】
実施例III:表8:硫酸フラミセチン+キトサンのクリーム
【表8】

【実施例4】
【0096】
実施例IV:表9:スルファジアジン銀+キトサンのクリーム
【表9】

【0097】
表6〜9を表1〜5と比較することで、慣用の薬物設計と本発明で採用した革新的な手法とに基づく生成物の相違を例示する。
【0098】
本発明の生成物を用いてAPI安定性実験を実施した(表10〜21を参照)。試験を実施し、一定期間にわたる生成物の物理的外見、pH値およびAPIのアッセイを観察した(または必要に応じて測定した)。
【0099】
試験に使用した本発明の生成物の各グラムは、適切な量の抗細菌剤を含有していた。
【0100】
安定性研究の試験に使用した生成物は、約10%の余分なAPI(過剰)を含有していた。これをアルミニウム製押出しチューブ中に梱包した。4つの生成物の詳細な試験結果を提示した。すべての例で使用した抗細菌剤の%は、最終生成物に関してw/wで測定した。
【0101】
生成物:フシジン酸ナトリウムのクリーム
梱包:アルミニウム製押出しチューブ
組成:各グラムが以下を含有する:フシジン酸ナトリウム、フシジン酸BP2.0%にBP等価
【0102】
表10:説明試験、バッチ番号SCC−41
測定したパラメータ:物理的外見
測定したパラメータの最良値:均質な白色からオフホワイト色の粘稠クリーム、測定方法:裸眼観察
【表10】

【0103】
表11:pH試験、バッチ番号SCC−41
測定したパラメータ:pH、測定したパラメータの限界:3〜6
測定方法:デジタルpH計
【表11】

【0104】
表12:アッセイ(%)試験、バッチ番号SCC−41
測定したパラメータ:アッセイ(%)、測定したパラメータの限界:90〜110
測定方法:HPLC方法
【表12】

【0105】
生成物:ムピロシンカルシウムのクリーム
梱包:アルミニウム製押出しチューブ
組成:各グラムが以下を含有する:i)ムピロシンカルシウム、ムピロシンにUSP等価、USP2.0%w/w
【0106】
表13:説明試験、バッチ番号MUC−16
測定したパラメータ:物理的外見
測定したパラメータの最良値:均質な白色からオフホワイト色の粘稠クリーム、測定方法:裸眼観察
【表13】

【0107】
表14:pH試験、バッチ番号MUC−16
測定したパラメータ:pH
測定したパラメータの限界:3〜6
測定方法:デジタルpH計
【表14】

【0108】
表15:アッセイ(%)試験、バッチ番号MUC−16
測定したパラメータ:アッセイ(%)
測定したパラメータの限界:90〜110
測定方法:HPLC方法
【表15】

【0109】
生成物:硫酸フラミセチンのクリーム
梱包:アルミニウム製押出しチューブ
組成:各グラムが以下を含有する:i)硫酸フラミセチンIP、1.0%w/w
【0110】
表16:説明試験、バッチ番号FSC−13
測定したパラメータ:物理的外見
測定したパラメータの最良値:均質な白色からオフホワイト色の粘稠クリーム、測定方法:裸眼観察
【表16】

【0111】
表17:pH試験、バッチ番号FSC−13
測定したパラメータ:pH、測定したパラメータの限界:3〜6
測定方法:デジタルpH計
【表17】

【0112】
表18:アッセイ(%)試験、バッチ番号FSC−13
測定したパラメータ:アッセイ(%)、測定したパラメータの限界:90〜110
測定方法:HPLC方法
【表18】

【0113】
生成物:スルファジアジン銀のクリーム
梱包:アルミニウム製押出しチューブ
組成:各グラムが以下を含有する:i)スルファジアジン銀、USP1.0%w/w
【0114】
表19:説明試験、バッチ番号SSC−10
測定したパラメータ:物理的外見
測定したパラメータの最良値:均質な白色からオフホワイト色の粘稠クリーム、測定方法:裸眼観察
【表19】

【0115】
表20:pH試験、バッチ番号SSC−10
測定したパラメータ:pH、測定したパラメータの限界:3〜6
測定方法:デジタルpH計
【表20】

【0116】
表21:アッセイ(%)試験、バッチ番号SSC−10
測定したパラメータ:アッセイ(%)、測定したパラメータの限界:90〜110
測定方法:HPLC方法
【表21】

【0117】
クリームの塗布方法:
クリームは、患部を徹底的に洗浄および乾燥させた後に塗布される。患部皮膚および周辺領域が覆われるように十分なクリームが塗布されるべきである。クリームは、症状が改善した可能性がある場合でも、処置期間全体にわたって皮膚の状態に応じて1日に2〜4回塗布されるべきである。
【0118】
実験:
クリームを用いた実験を、実験室において、および切除創傷を与えた適切な動物モデルを用いて実施した。4つの側面、すなわち、創傷の縮小、上皮化、血液凝固時間、および膜形成を試験した。これらの側面は、一緒になって、微生物が不動化され、したがって有効な創傷治癒がもたらされことを示唆する。
【0119】
A.創傷の縮小:
本発明のクリームの切除創傷の治癒活性は、動物試験によって決定した。皮膚の全層を切り取ることによって直径2.5cmの切除創傷を与えた。一定期間にわたって観察された創傷の縮小の量により、本発明のクリームが、慣用のクリームの塗布によって達成されるよりも顕著に改善された創傷の縮小をもたらすことが示された。
【0120】
B.上皮化の期間:
創傷の上皮化は、慣用のクリームを用いて上皮化にかかった日数よりも、本発明のクリームを用いて少ない日数で起こった。したがって、本発明のクリームの一利点は、慣用のクリームを使用するよりも速い皮膚の上皮化を促進することである。
【0121】
C.凝血:
血液凝固時間を、非処置の対照群および本発明の生成物で処置した動物の試験群の、どちらの動物群でも観察した。対照群の動物と比較して、処置群の動物において統計的に有意な血液凝固時間の短縮が観察された。本発明の生成物を用いて、血液凝固時間の20〜70%の平均%短縮が観察された。
【0122】
膜形成特性:
図1から、キトサンは、本発明中でクリーム調製物に使用する賦形剤の存在下でその膜形成特性を失わないことが明らかである。
【0123】
結果および考察:
キトサンの特性は、本発明で使用する賦形剤を含有する配合物中で使用する場合に、いかなる様式でも損なわれないことが明らかである。これは、賦形剤を注意深く選択することによって達成された。たとえば、本発明者らの実験により、キサンタンガムまたはカルボポールなどの幅広く使用されている賦形剤は、陽イオン性、陰イオン性の相互作用が原因で、キトサンと組み合わせると沈殿することが示される。
【0124】
易感染の皮膚状態の治療的治癒の様々な側面を考慮することによって、キトサンを抗細菌剤に加えることの、動物試験から観察される治療的影響を以下の表に示す。
【0125】
表18
【表22】

【0126】
クリーム中に取り込まれたキトサンの膜形成能力により、感染領域に対する抗細菌剤の接近可能性がより良好となり、これらのAPIのより良好な機能がもたらされることが明らかである。
【0127】
本発明の局所的施用するクリームの治療上の有効性は、皮膚感染症の原因となっている生物に対する活性物質の顕著な抗細菌活性、無傷の皮膚に浸透する活性物質の独特な能力、ならびにキトサンの創傷治癒および鎮静特性によるものである。
【0128】
前述の記述から、本発明が、細菌感染症のための現在利用可能な皮膚用薬用組成物を超える、以下の利点および独特な態様を提供することが明らかである。
1.本発明のクリームは、キトサンの形態の皮膚に優しいバイオポリマーを取り込んでおり、増強された治療結果を提供する。これは、短縮された血液凝固時間、増加した上皮効果、および感染症からのより速い緩和から明らかである。
2.本発明のクリームは、クリームマトリックスの安定性を損なわずに、かつ既知の原薬の機能に有害な影響を与えずに、バイオポリマーを取り込んでいる。これは、望ましくない生理化学的な適合性/安定性および生体放出の側面を回避するために、機能的賦形剤を注意深く選択することによって達成された。
3.本発明のクリームは、これまで処方箋皮膚用薬用配合物で利用可能でなかった統合的な単一用量または単一用量療法を提供する。
4.本発明の新規クリームは周囲条件で十分に安定/有効であり、輸送/貯蔵中に特別な温度制御を必要とせず、したがって、これらの社会的目標を達成するために大きな役割を果たす。
【0129】
本発明の別の実施形態によれば、ヒト皮膚を上記開示した組成物と接触させることを含む、細菌性皮膚感染症を処置する方法および創傷治癒の方法も提供する。
【0130】
上記の説明は多くの特異性を含有するが、これらは本発明の範囲の限定ではなく、むしろその好ましい実施形態の例示として解釈されるべきである。本発明の精神および範囲から逸脱せずに、上述の開示に基づいて改変および変形が可能であることを理解されたい。したがって、本発明の範囲は、例示した実施形態によってではなく、添付の請求項およびその合法的な均等物によって決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌性皮膚感染症の局所的処置および関連する創傷治癒のための新規皮膚用薬用クリームであって、前記クリームが、クリーム基剤中で提供される抗細菌剤およびバイオポリマーを含み、前記クリーム基剤が、保存料、一次および二次乳化剤、蝋状物質、共溶媒、酸、ならびに、水、好ましくは精製水、のそれぞれのうちの少なくとも1つを含み、前記バイオポリマーが好ましくはキトサンである、新規皮膚用薬用クリーム。
【請求項2】
緩衝剤、抗酸化剤、キレート化剤、湿潤剤、安定化剤、または、それらの任意の組合せを含む群のうちの任意のものをさらに含む、請求項1に記載の新規皮膚用薬用クリーム。
【請求項3】
請求項1に記載の新規皮膚用薬用クリームであって、
−前記抗細菌剤が約0.5%w/w〜約15%w/w、より好ましくは0.5〜5.0%w/wの量で加えられ、
−前記バイオポリマーがキトサンの形態であり、かつ、約0.01%〜約1重量%、好ましくは約0.01%w/w〜約0.5%w/w、最も好ましくは約0.25%w/wの量で加えられ、
−前記一次および二次乳化剤が、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール−1000、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリソルベート−80、Span−80などを含む群から選択され、かつ、約1%(w/w)〜20%(w/w)の量で加えられ、前記蝋状物質が、白色軟パラフィン、流動パラフィン、固形パラフィンなど、または、それらの任意の組合せを含む群から選択され、かつ、約5%(w/w)〜50%(w/w)の量で加えられ、前記共溶媒が、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール−400など、または、それらの任意の組合せを含む群から選択され、かつ、約5%(w/w)〜50%(w/w)の量で加えられ、前記酸が、HCl、HSO、HNO、乳酸など、または、それらの任意の組合せを含む群から選択され、かつ、約0.005%(w/w)〜0.5%(w/w)の量で加えられ、前記保存料が、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロクレゾール、ソルビン酸カリウム、安息香酸、2フェノキシエタノール、ベンジルアルコールなど、または、それらの任意の組合せを含む群から選択され、かつ、約0.05%(w/w)〜2.5%(w/w)の量で加えられ、前記水が、20%(w/w)〜75%(w/w)、好ましくは35%(w/w)〜50%(w/w)、より好ましくは40%(w/w)〜43%(w/w)の範囲の量で加えられ、かつ、好ましくは精製水である、
新規皮膚用薬用クリーム。
【請求項4】
オルトリン酸水素二ナトリウム、オルトリン酸水素ナトリウム、乳酸カルシウムなど、または、それらの任意の組合せを含む群から選択され、かつ、約0.05%(w/w)〜1.00%(w/w)の量で加えられる緩衝剤をさらに含む、請求項1および3に記載の新規クリーム。
【請求項5】
ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなど、または、それらの任意の組合せを含む群から選択され、かつ、約0.05%(w/w)〜5%(w/w)の量で加えられる抗酸化剤をさらに含む、請求項1、3、および、4に記載の新規クリーム。
【請求項6】
EDTA二ナトリウムなど、または、それらの任意の組合せを含む群から選択され、かつ、約0.05%(w/w)〜1%(w/w)の量で加えられるキレート化剤をさらに含む、請求項1および3〜5に記載の新規クリーム。
【請求項7】
グリセリン、ソルビトールなど、または、それらの任意の組合せを含む群から選択され、かつ、約5%(w/w)〜50%(w/w)の量で加えられる湿潤剤をさらに含む、請求項1および3〜6に記載の新規クリーム。
【請求項8】
グアルガムなど、または、それらの任意の組合せを含む群から選択され、かつ、約0.1%(w/w)〜5%(w/w)の量で加えられる安定化剤をさらに含む、請求項1および3〜7に記載の新規クリーム。
【請求項9】
クリーム作製方法であって、前記方法は、
保存料、一次および二次乳化剤、蝋状物質、共溶媒、酸、ならびに、水、好ましくは精製水のそれぞれのうちの少なくとも1つを含むクリーム基剤中に、抗細菌剤とバイオポリマーとを提供するステップと、すべての成分を一緒に混合して均質なクリームを形成するステップとを含む、クリーム作製方法。
【請求項10】
前記成分が、緩衝剤、抗酸化剤、キレート化剤、湿潤剤、安定化剤、またはそれらの任意の組合せを含む群のうちの任意のものをさらに含む、請求項8に記載のクリーム作製方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−521410(P2012−521410A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501462(P2012−501462)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/IB2010/051280
【国際公開番号】WO2010/109417
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511228001)
【氏名又は名称原語表記】VANANGAMUDI,Sulur, Subramaniam
【住所又は居所原語表記】No 29, VGP Layout, 4th Road,Injambakkam, Chennai, Tamil Nadu, Chennai 600 041 INDIA
【Fターム(参考)】