説明

藍並びインディゴ染料の染色堅牢度向上加工方法

【課題】 藍並びインディゴ染料を用いて染色された繊維構造物の染色堅牢度向上加工方法。
【解決手段】
一般式(1)で表される2,6−ジハロゲノ−4−Y−1,3,5−トリアジン誘導体を付与する。


Xはハロゲン基、Yは少なくとも1つの基により置換されたアリールアミノ基、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、トリアジニルアミノ基、トリアジニルオキシ基、トリアジニルチオ基、またはトリアジニルアミノスチルベンアミノ基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藍並びイシディゴ染料を用いて染色された繊維構造物に親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を用いて30℃〜100℃までの昇温熱処理を付して藍並びインディゴ染料を用いて染色された繊維構造物に摩擦並び洗濯堅牢度を向上させる加工方法である。より具体的には、本発明は一般式(1)で表される2,6−ジハロゲノ−4−Y−1,3,5−トリアジン誘導体によって、藍並びインディゴ染料を用いて染色された繊維構造物に昇温熱処理を付して、摩擦並び洗濯堅牢度を向上させ消費者から指摘されていた、摩擦並び洗濯堅牢度を向上させる事を目的とした藍並びインディゴ染料の染色堅牢度向上加工方法である。
【背景技術】
【0002】
従来から、藍並びインディゴ染料は天然繊維構造物である木綿に対して親和性を示し、デニム素材に対して広く染色されてきた。しかしデニムは当初ワーキングウエアとして主流であったが現在はファッションウエアとして多様化している。
【0003】
この様なファッショシ背景があるにもかかわらず、藍並びインディゴ染料を用いて染色された繊維構造物は摩擦並び洗濯堅牢度が悪く衣服、下着並びバック等へ移染してしまい消費者からの品質向上並び染色堅牢度向上を強く要望されている。
【0004】
インディゴ染料天然の藍と合成された藍の2種類が存在する。天然藍は一般的に藍玉であり3〜8%がインディゴ成分であるといわれているが産地や製造法において純分は多様であるが、最近産出量が激減して高価である。この点合成藍は純度が極めて高く100%に近いインディゴを含み、少量の使用量で、多量の染色が可能であり、現在のデニムに代表される。
【0005】
藍並びインディゴ染料は建染染料の一種であり染色をするためには、水に浸績して、空気中で酸化還元しなければ染色は不可能である。
【0006】
藍並びインディゴ染料は同様の構造式を持つがインディゴは2個のケト基(>C=0)を持ち、酸化還元を成すのはこの基である。
【0007】
このケト基(>C=0)は還元剤の発する(H)によって還元されバッド酸になる。
【0008】
バッド酸を水に溶解させるためには、アルカリ剤である苛性ソーダ−(Naoh)を添加すると、水酸基(OH)の(H)はナトリウム塩(O.Na基)に置換してロイコ体に成る。
【0009】
ロイコ体は水に溶解して黄色となり還元によって繊維構造物へ吸着染色が実施される。
【0010】
前記はインディゴ染料の反応を分析的に説明したものであり、通常での染色条件は60℃付近の水温の浴中にインディゴ染料を溶解し、還元剤としてハイドロサルファイトとアルカリ(苛性ソーダ−)が共存すると瞬時にバッド酸からロイコ体に置換し繊維構造物へ吸着する。
【0011】
繊維構造物へ吸着したロイコ体は水とか空気(H)によって酸化還元を実施する事によりロイコ体のO.Na基はOH基となり,インディゴ染料の酸化体となって青色染料となり吸着染料が終了する。
【0012】
藍並びインディゴ染色においては繊維構造物への吸着染色方法を用いる染色であり、繊維構造物のハロゲン部位(H)と反応する反応染色.造塩結合を実施する、酸性染色に比較して摩擦並び洗濯堅牢度が低下する。
【0013】
更に、藍並びインディゴ染色において実用機(ロープ染色機、ワッシャー染色機、チーズ染色機、ビーム染色機、カセ染色機、ジッカ−染色機)を用いる場合、PHの管理、還元性の管理、染液濃度の管理、温度の管理をしないと吸着染色不良となり藍並びインディゴの摩擦並び洗濯堅牢度が低下する。
【0014】
藍並びインディゴ染料によって吸着染色された繊維構造物に反応染色や酸性染色における摩擦並び洗濯堅牢度の向上が消費者から強く要望されてきたが前記の様な、従来よりの吸着染色並び染色工程の管理の複雑な要因により期待値まで向上しないレベルであり、有効な藍並びインディゴ染料の染色堅牢度向上のための製造方法が見出せないでいた。
【0015】
親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を用いた形態安定加工技術としては、特許文献1に記載されているが、ここに記載されているのは天然繊維やセルロース系繊維等に対する改質加工法であり藍並びインディゴ染料の染色堅牢度向上加工方法については何ら開示されていなかった。
【0016】
【特許文献1】特許第345576号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は藍並びインディゴ染料を用いて染色された繊維構造物に親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を用いて30℃〜100℃までの昇温熱処理を付して藍並びインディゴ染料を用いて染色された繊維構造物に摩擦並び洗濯堅牢度を向上させる加工方法である。より具体的には、本発明は一般式(1)で表される2,6−ジハロゲノ−4−Y−1,3,5−トリアジン誘導体によって藍並びインディゴ染料によって染色された繊維構造物に昇温熱処理を付して摩擦並び洗濯堅牢度を向上させ、消費者から指摘されていた摩擦並び洗濯堅牢度を向上させる事を目的とした藍並びインディゴ染料の染色堅牢度向上加工方法である
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための藍並びインディゴ染料の染色堅牢度向上加工方法を付与するにあたって親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジシ系化合物を含浸させ昇温熱処理を実施する「乾熱法」並び親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジシ系化合物を水溶液中に仕込み昇温熱処理を実施する「浴中吸尽法」用いて該繊維構造物摩擦並び洗濯堅牢度を向上させることを特徴とする加工方法からなる。
【0019】
本発明において親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物は下記一般式(1)で表される2.6−ジハロゲノ−4−Y−1.3.5−トリアジン誘導体の単体あるいは混合物を使用して加工する事で藍並びインディゴ染料染色された繊維構造物へ摩擦並び洗濯堅牢度を向上させる事を見出したものである。
【0020】
【化2】

【0021】
上記式(1)中、Xは塩素、フッ素および臭素からなる群より選ばれるハロゲン基、Yはスルホン基、カルボキシル基、水酸基およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基により置換されたアリールアミノ基、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、トリアジニルアミノ基、トリアジニルオキシ基、トリアジニルチオ基、またはトリアジニルアミノスチルベンアミノ基であり、前記スルホン基、カルボキシル基.水酸基およびチオール基はその水素原子がアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子で置換されてもよい。
【0022】
本発明にかかわる藍並びインディゴ染料の染色堅牢度向上加工方法は「乾熱法」と「浴中吸尽法」の2つの方法があり並び親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を用いて、藍並びインディゴ染料で染色された繊維構造物と反応させる条件は、ジクロルトリアジン系反応染料の場合とよく似た条件で加工する事が出来る。それによって摩擦並び洗濯堅牢度の向上が計れる。
【0023】
「乾熱法」において本発明は、藍並びインディゴ染料で染色された繊維構造物に親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物の単体もしくは混合物を含浸させ30℃〜100℃の昇温熱処理を実施する加工方法を有することを特徴とするものである。
【0024】
「浴中吸尽法」において本発明は、親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物の単体もしくは混合物を水溶液の中に仕込み、藍並びインディゴ染料によって染色された繊維構造物を浸積させ昇温熱処理を実施する加工方法を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の藍並びインディゴ染料を用いて染色された繊維構造物に親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を用いて昇温熱処理を付して、摩擦並び洗濯堅牢度を向上させる加工方法は従来の加工方法と比較して、消費者の要求に対して対応が可能な水準を得ることが出来る。
【0026】
本発明の特徴は、従来の藍並びインディゴ染料によって染色された繊維構造物へ親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を用いて昇温熱処理を付する事を特徴とする。
【0027】
本発明の特徴を分析的に説明する。
【0028】
従来の藍並びインディゴ染料の染色は繊維構造物へ吸着染色される理論は前記分析的に説明を付した。
【0029】
藍並びインディゴ染料は、繊維構造物に単に吸着.色染.被膜化しているだけで、繊維構造物のハロゲン部位(H)と共有反応している反応染料並び造塩結合(イオン結合)している酸性染料とは違い、その還元摩擦並び洗濯において簡単に脱落してしまう。
【0030】
本発明は、親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物の電子置換性を用いて昇温熱処理付する事により、繊維構造物の末端部位ハロゲン(H)と藍並びインディゴ染料の末端部位ハロゲン(H)を共有結合させる事により藍並びインディゴ染料を用いて染色された繊維構造物の染色堅牢度を向上させる事が出来る。
【0031】
更に、本発明の特徴は、従来の藍並びインディゴ染料の未吸着染料の除去並び後処理の水洗いにおける染料の脱落を、親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物の共有反応における電子置換性により防止する事が可能であり、排水(生物科学的酸素要求量)負荷を軽減させる。更に新規の設備を設置することなく優れた経済性のもと、藍並びインディゴ染料を用いる加工業界にも大いに貢献する事が出来るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下本発明について望ましい実施の形態と共に詳細に説明する。
【0033】
本発明は、藍並びインディゴ染料によって染色された繊維構造物へ親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を用いて昇温熱処理を付す事によって染色堅牢度を向上させるものである。
【0034】
本発明で用いる事ができる水溶性のジハロゲノトリアジン化合物は、下記一般式(1)で表される2.6−ジハロゲノ−4−Y−1.3.5−トリアジン誘導体である事を特徴とする。
【0035】
【化3】

上記式(1)中、Xは塩素、フッ素および臭素からなる群より選ばれるハロゲン基、Yはスルホン基、カルボキシル基、水酸基およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基により置換されたアリールアミノ基、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、トリアジニルアミノ基、トリアジニルオキシ基、トリアジニルチオ基、またはトリアジニルアミノスチルベンアミノ基であり、前記スルホン基、カルボキシル基、水酸基、およびチオール基はその水素原子がアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子で置換されてもよい。
【0036】
前記一般式(1)で表される天然繊維並び再生繊維の改質薬剤をより具体的に説明すると、トリハロケノ−S−トリアジン、好ましくは塩化シアヌルを主原料として用い、カルボキシル基、水酸基、チオール基、アミノ基、スルホン基、スルホン酸基等水溶性あるいは親水性置換基を有するアニリン類、フェノール類、チオフェノール類、ナフチルアミン類、ナフトール類、アミノ酸類、トリアジン類等の単体あるいは混合物を塩化シアヌル1モルに対して1モルの酸結合剤を共存させた中性ないし弱アルカリ性で縮合させる。あるいは塩化シアヌルを重炭酸ソーダ、炭酸ソーダ、苛性ソーダ、苛性カリ、水酸化マグネシウム等を用いてアルカリ性で加水分解させることによって得られる。これらの化合物は純粋である必要はなく、前記2種以上の混合物と塩化シアヌルを反応させたものであってもよいし、純粋に作られたものをあとから混合して多成分系として使用することが好ましい場合もある。
【0037】
これらの化合物が具備すべき条件は、ハロゲノトリアジンと反応する置換基を有する事と、同時に親水性の置換基を有する親水性化合物である。つまり本発明で用いられる前記一般式(1)で表される加工薬剤が、全体として親水牲となればよい。ハロゲノトリアジンとこれら親水性化合物とを反応させた生成物とは具体的には次のような化合物の単体あるいは混合物を例として挙げる事ができる。
2.6−ジクロル−4−(3−スルホアリニノ)−S−トリアジン
2.6−ジクロル−4−(4−スルホアリニノ)−S−トリアジン
2.6−ジクロル−4−(3−スルホアリニノ)−S−トリアジン
2.6−ジクロル−4−(2.5−ジスルホアリニノ)−S−トリアジン
2.6−ジクロル−4−(3.5−ジスルホアリニノ)−S−トリアジン
2.6−ジクロル−4−(3−カルボキシアリニノ)−S−トリアジン
2.6−ジクロル−4−(4−カルボキシアリニノ)−S−トリアジン
2.6−ジクロル−4−(2−カルボキシアリニノ)−S−トリアジン
2.6−ジクロル−4−(β−カルボキシエチルアミノ)−S−トリアジン
2.6−ジクロル−4−ウレイド−S−トリアジン
2.6−ジクロル−4−チオウレイド−S−トリアジン
2.6−ジクロル−4−(4−カルボキシフェノキシ)−S−トリアジン
2.6−ジクロル−4−(4−カルボキシフェニルチオ)−S−トリアジン
2.6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンNa塩
2.6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンLi塩
2.6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンMg塩
2.6−ジクロル−4−チオ−S−トリアジンNa塩
【0038】
親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン類はこの他にも数多くの有効な化合物が考えられるのであって、本発明はこれらの具体例に制約されるものではなく、親水性置換基を有する化合物である事と、活性ハロゲン原子またはそれに類する反応性基を2個以上有する事がポイントである。本発明で藍並びインディゴ染料を用いて染色された繊維構造物は単品でも混合品でもよく、天然繊維や再生繊維、半合成繊維やナイロン繊維、合成繊維を含めた複合系繊維構造物であってもよい。具体的には、絹、木綿、麻、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン、リヨセル、テンセル、酢酸セルロース等、分子構造中にカルボキシル基やアミノ基、アルコール性水酸基を有するセルロース系繊維あるいは再生繊維を主要成分とする繊維からなる繊維構造物である。
【0039】
これらの繊維構造物は、綿やパラ毛、糸の段階、織・編物にした後不織布、あるいは工程途中の半製品の段階で加工する事も可能である。これらは親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系の化合物と反応する事ができる反応基ハロゲン(H)を有する繊維からなる繊維構造物である。
【0040】
また、加工対象は、ナイロン、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン等石油系合成素材との複合系繊維構造物であってもよい。
【0041】
本発明の加工薬剤ジハロゲノトリアジン類は、ドイツ公開公報2357252号、あるいはアメリカ特許公報5601971号等に記載があるように、公知の合成法に準じて合成する事ができる。
塩化シアヌル1.00モルを5℃以下の氷水の中へ仕込み、次いで例えばm−スルファニル酸1.02モルと炭酸ソーダ約1モルをよく撹拌しながら徐々に仕込む。M−スルファニル酸と炭酸ソーダの仕込みはPH=7±1で約3時間を要して5℃〜10℃で仕込み高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析し、塩化シアヌルがほぼ消滅すれば、更に1時間保湿撹拌して反応を完結させる。この間PHは6〜8に維持し、HPLCによって組成を分析し、モノスルファニル体が90%以上となれば反応を終了する。反応後微量の不容物を濾過して除き、最終的にはPHは7に調整する。このようにして2.6−ジクロル−4−(3−スルファアニリノ)−S−トリアジンNa塩水溶液が高収率で得られる。この化合物は冷蔵庫内で5℃以下保管すれば約1ヶ月は安定である。
【0042】
ここで「乾熱法」「浴中吸尽法」とは藍並びインディゴ染料を用いて染色された繊維構造物を親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を含浸並び浸績させ処理時間.浴比.温度を規制し昇温熱処理の反応工程を有する事をいう。
【0043】
親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物は繊維構造物のハロゲン部位(H)と藍並びインディゴ染料のハロゲン部位(H)と昇温熱処理において共有結合を実施する機能を有している。
【0044】
親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を含浸並び浸績させ共有結合を実施させ藍並びインディゴ染料を用いて染色された繊維構造物へ染色堅牢度を向上させる加工方法には昇温熱処理として「乾熱法」「浴中吸尽法」が主な加工方法である。
【0045】
「乾熱法」における繊維構造物と藍並びインディゴ染料との共有結合の機能を説明する。親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物置換反応はアルカリ浴内において第二塩素(CL)の反応温度20℃〜50℃、第三塩素(CL)の反応温度60℃〜100℃において電子供与性の置換基で順次置換されてゆく事は公知である。好ましくは30℃以下の水溶液の中に親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を仕込む。置換反応を実施させるため水酸化ナトリウム(NaOH)重炭酸ソーダ−(NaHCO)並び炭酸ナトリウム(NaCO)などのアルカリ性の酸結合剤を同水溶液内に共存させる。含浸性を良くするため親水性の脂肪族及び芳香族の多価アルコール類並び硫酸ナトリウム類を用いても良い。この水溶液の中へ藍並びインディゴ染料を用いて染色された繊維構造物を含浸させて目的濃度に絞り、乾燥機内で30℃〜100℃の熱処理をすれば良い。この乾燥機内において親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物の第二塩素、第三塩素は繊維構造物のハロゲン部位(H)と藍並びインディゴ染料のハロゲン部位(H)が共有結合し親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物はシアヌ−ル酸基となり共有結合が終了して染色堅牢度が向上されるものと考えられる。
【0046】
「浴中吸尽法」における繊維構造物と藍並びインディゴ染料との共有結合の機能を説明する。好ましくは染色浴内へ30℃以下の水を投入する、「乾熱法」と同様の条件にて親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物、アルカリ性の酸結合剤を仕込んで30℃〜100℃の昇温熱処理を実施すれば良い。
【0047】
本発明における親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物の「乾熱法」における繊維構造物とインディゴ染料との共有結合の加工条件の概要を説明する。「乾熱法」においては好ましくは30℃以下の水溶液の中に親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を加工目的に応じて0.1〜20%(o.w.s)を投入する。アルカリ性酸結合剤として水酸化ナトリウム(NaOH)重炭酸ソーダ−(NaHCO)並び炭酸ナトリウム(NaCO)を0.1%〜10%(o.w.s)投入して良く撹拌する。この水溶内に藍並びインディゴ染料にて染色された繊維構造物を含浸させ目的に応じた時間内で取り出して絞る。テンター乾燥機.シリンダー乾燥機.シェリンク乾燥機.タンブル乾燥機を用いて100℃に設定された乾燥機内の湿熱並び乾熱で繊維構造物に含浸している親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物は20℃〜50℃にて第二塩素が繊維構造物のハロゲン部位(H)もしくはインディゴ染料のハロゲン部位(H)と反応しOH基を有する。この反応において親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物は(CL基)を−基有するモノクロトリアジン環を形成する。更なる昇温により50℃〜100℃の時点において第三塩素は繊維構造物のハロゲン部位(H)もしくはインディゴ染料のハロゲン部位と反応してOH基となりシアヌ−ル酸なり、共有結合が完了する。
【0048】
本発明における親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物の「浴中吸尽法」における繊維構造物とインディゴ染料との共有結合の加工条件の概要を説明する。「浴中吸尽法」においては昇温熱処理を実施するため、液流染色機.ウインス染色機.ワッシャー染色機.ジッカ−染色機などを用いる。染浴槽内へ好ましくは30℃以下の水を投入する、親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を加工目的に応じて0.1%〜20%(o.w.f)投入する。アルカリ性酸結合剤として水酸化ナトリウム(NaOH)重炭酸ソーダ−(NaHCO)並び炭酸ナトリウム(NaCO)を0.1%〜10%(o.w.s.)投入する。この染浴槽内へ繊維構造物を投入する。30℃以下の常温にて5分間〜10分間稼動して親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物とアルカリ性酸結合剤が繊維構造物との親和性を付与する。1.5℃〜2℃の昇温にて序々に昇温稼動運転を実施する事により「乾熱法」と同様の共有結合を親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物は繊維構造物のハロゲン部位(H)とインディゴ染料のハロゲン部位(H)と実施する
【0049】
また本発明においては、好ましくは30℃以下〜100℃までの昇温熱処理工程が含まれていれば良いが親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物は急激な温度の上昇によって水と加水分解を実施、塩化水素(HCL)を発生させ、シアヌ−ル酸となる可能性がある。従って30℃〜100℃までの昇温熱処理工程は序々に昇温させ30分〜60分間を必須条件とする事が必要である。この条件を厳守しないと有効に繊維構造物のハロゲン部位(H)とインディゴ染料のハロゲン部位(H)がトリアジン環を介して共有結合しない。従って染色堅牢度の向上に寄与しない可能性があるので注意が必要である。
【0050】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。
【0051】
実施例1
液流染色機内に水72kg、2.6−ジクロル−4−(3−スルフォアニリノ)−S−トリアジン10%水溶液26kg(純分2.6kg 2.7%o.w.s)、重炭酸ソーダ1620g(4.4%o.w.s)、ぼう硝2K700g(2.8%o.w.s)投入してよく混合したその浴内へインディゴ染料で染色された綿100%の1/2の綾地3.6kgを投入して浴比1:25とした10分間この浴内で循環させ、その後約2℃昇温を実施25分間かけて80℃まで稼動運転を実施80℃を30分間にてその染液温度を維持し、その後水を約100kg投入して加工液を薬40℃まで落してクールダウンを実施、その温度で約10分間運転稼動した。排水後水洗を実施、酢中和を更に実施して、脱水.乾燥した生地を京都府織物・機械金属振興センター織物課で評価した、染色堅牢度試験成績書を表1に示す。
【0052】
比較例1
実施例1で使用したものと同じ布帛を、薬剤を用いず水のみで実施例1と同様の加工処理をした。このようにして得られた布帛を実施例1と同様に測定した結果を表1に示す。
【0053】
実施例2
水槽の中へ常温の水10kg、2.6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンNa塩10%水溶液2500g(純分250g o.w.s2.5%)、重炭酸ソーダ65g(o.w.s5%)、イソプロピルシキアルコール300CCを投入してよく混合した。その中に経糸にインディゴ染色、緯糸は白の、総重量850gの製品のデニムパンツを浸積、含浸させた後脱水機で絞りピックアップ(絞り率)80%として総重量1K530g(o.w.f2%)とした。このデニムパンツを乾熱80℃にセットされたタンブル乾燥機内へ入れ40分間の熱処理を実施した。その後40℃の湯温においてワッシャー染色機内で湯洗いを実施、同染色内で酢中和を実施後脱水した。100℃の乾熱にセットされたタンブル乾燥機内で再度乾燥し、デニムパンツ膝下40cmをカットして、京都府織物・機械金属振興センター.織物課で評価した染色堅牢度試験成績書を表2に示す。
【0054】
比較例2
実施例2で使用した同じデニムパンツを、薬剤を用いず水のみで実施例2と同様の加工処理をした。このようにして得られたデニムパンツを同様に測定した結果を表2に示す。
【0055】
実施例3
実施例2で使用した水溶液を用いてインディゴ染色をしたメンズTシャツ(綿100%)を実施例2と同様の加工処理を実施し、京都府織物・機械金属振興センター.織物課で評価した染色堅牢度試験成績書を表3に示す。
【0056】
比較例3
実施例3で使用したものと同じメンズTシャツを、薬剤を用いず水のみで、実施例3と同様の加工処理をした結果を表3に示す。
【0057】
実施例4
実施例2で使用した水溶液を用いて、インド藍(80%濃度)で染色されたメンズTシャツ(綿100%)を実施例2と同様の加工処理を実施した。その結果を京都府織物・機械金属振興センター.織物課で評価した染色堅牢度試験成績書を表4に示す。
【0058】
比較例4
実施例4で使用したものと同じメンズTシャツを、薬剤を用いず水のみで、実施例4と同様の加工処理をした結果を表4に示す。
【0059】
実施例5
和装用のパッド.ドライ.スチーム型のシェリンク乾燥機内の浴槽内へ水30L、2.6−ジクロル−4−チオ−S−トリアジンNa塩10L(純分1kgo.w.s2.5%)、重炭酸ソーダ200g(o.w.s2.5%)、イソプロピルシキアルコール800CCを投入してよく混合した。浸積して藍染めされた面100%の浴衣地を槽内へ浸積し、ピックアップ(絞り率)100%として2.6−ジクロル−4−チオ−S−トリアジンNa塩をo.w.f2.5%含浸させた.その後、第一乾燥室内を80℃の湿熱を付与し2分間で布帛を熱処理した後第二乾燥室内を100℃の乾熱で2分間熱処理を実施、その後スチーミング.水洗工程を実施、再度シェリンク乾燥機、テンター仕上げを実施した浴衣地を京都府織物・機械金属振興センター.織物課で評価した染色堅牢度試験成績書を表5に示す。
【0060】
比較例5
実施例4で使用した浴衣地を薬剤を用いず水のみで、実施例5と同様の加工処理をした結果を表5に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【0066】
表1の染色堅牢度試験成績書により実施例1と比較例1において染色堅牢度が向上している結果が得られた。
【0067】
表2の染色堅牢度試験成績書により実施例2と比較例2において染色堅牢度が向上している結果が得られた。
【0068】
表3の染色堅牢度試験成績書により実施例3と比較例3において染色堅牢度が向上している結果が得られた。
【0069】
表4の染色堅牢度試験成績書により実施例4と比較例4において染色堅牢度が向上している結果が得られた。
【0070】
表5の染色堅牢度試験成績書により実施例5と比較例5において染色堅牢度が向上している結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を用いて藍並びインディゴ染料を用いて染色された繊維構造物へ好ましくは30℃以下〜100℃までの昇温熱処理に付する事を特徴とする、藍並びインディゴ染の染色堅牢度向上加工方法。
【請求項2】
前記水溶性ジハロゲノトリアジン化合物が下記一般式(1)で表される2.6−ジハロゲノ−4−Y−1.3.5−トリアジン誘導体である事を特徴とする請求項1記載の藍並びインディゴ染の染色堅牢度向上加工方法。
【化1】

(式中、Xは塩素、フッ素および臭素からなる群より選ばれるハロゲン基、Yはスルホン基、カルボキシル基、水酸基およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基により置換されたアリールアミノ基、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、トリアジニルアミノ基、トリアジニルオキシ基、トリアジニルチオ基、またはトリアジニルアミノスチルベンアミノ基であり、前記スルホン基、カルボキシル基、水酸基およびチオール基はその水素原子がアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子で置換されてもよい。)
【請求項3】
親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を藍並びインディゴ染料を用いて染色された繊維構造物へ含浸させ「乾熱法」を用いて好ましくは30℃以下〜100℃までの熱処理に付する事を特徴とする、藍並びインディゴ染料の染色堅牢度向上昇温加工方法。
【請求項4】
親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を藍並びインディゴ染料を用いて染色された繊維構造物を浸績させ「浴中吸尽法」を用いて好ましくは30℃以下〜100℃までの昇温熱処理に付する事を特徴とする、藍並びインディゴ染料の染色堅牢度向上加工方法。
【請求項5】
繊維構造物繊維がシルク.ウール.モヘア.アンゴラ.アルパカ.カシミア獣毛などの動物系蛋白質繊維構造物、ビスコース.レーヨン.キュプラ.テンセル.リヨセルなどの再生繊維構造物、木綿.麻などのセルロース系繊維構造物、ナイロンなどの合成繊維構造物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の藍並びインディゴ染料の染色堅牢度向上加工方法。

【公開番号】特開2009−24311(P2009−24311A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212465(P2007−212465)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(596037895)株式会社金久 (8)
【出願人】(593102909)株式会社西江デニム (2)
【Fターム(参考)】