説明

藍並びインディゴ染料の速染・濃染加工方法。

【課題】 親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物と藍並びインティゴ染料を共存させアルカリ染浴内で熱処理工程を実施することにより繊維構造物に短時間で濃染効果が向上する事を特徴とするものであり、この藍並びインディゴ染料により既存の藍並びインディゴ染料染色の加工時間の短縮化、染色加工の効率化を達成し、熱エネルギーを抑制、藍並びインディゴ染料の酸化還元機能による染色の際の染料・還元剤の消減と染色工程で発生する排水(生物科学的酸素要求量)を軽減させる、藍並びインディゴ染料の速染・濃染加工放法に関するものである。
【解決手段】 親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物と藍並びインディゴ染料を共存させアルカリ染浴内で20℃〜80℃の熱処理工程を有することを特徴とする繊維構造物の速染・濃染加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物と藍並びインディゴ染料を共存させ熱処理工程を実施することにより繊維構造物に短時間で濃染効果が向上することを特徴とするものであり、この速染・濃染加工により既存の藍並びインディゴ染料染色の加工時間の短縮化、染色加工の効率化を達成し、熱エネルギーを抑制、藍並びインディゴ染料の酸化還元機能による染色の際の染料・還元剤の削減と染色工程で発生する排水(生物科学的酸素要求量)負荷を軽減させる、藍並びインディゴ染料の速染・濃染加工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インディゴ染料は、天然の藍と合成された藍の2種類が存在する。天然藍は、一般的に藍玉であり3〜8%のインディゴ成分であるといわれているが産地や製造法において純分は多様であるが、最近、産出量が激減し高価である。合成藍は、純度が極めて高く100%に近いインディゴを含み、少量の使用量で多量の染色が可能であり、現在の染色加工法のほとんどは合成藍を使用している。
【0003】
藍並びインディゴ染料は、建染染料の一種であり、染色するためには酸化還元しなければ染色できない。
【0004】
藍並びインディゴ染料は同様の構造式を持つがインディゴは2個のケト基(>C=0)、を持ち酸化還元を成すのはこの基である。
【0005】
このケト基(>C=0)は還元剤の発する(H)によって還元されバッド酸になる。
【0006】
バッド酸を水に溶解させるため、アルカリ剤である苛性ソーダ(NaOH)を添加すると、水酸基(OH)の(H)はナトリウム塩(O.Na基)に置換して、ロイコ体に成る。
【0007】
ロイコ体は水に溶解して黄色となり還元によって繊維構造物へ吸着染色が実施される。
【0008】
前記はインディゴ染料の反応を分析的に説明したものであり、通常での染色条件は、60℃付近の水温の浴中にインディゴ染料を溶解し、還元剤としてハイドロサルファイトとアルカリ(苛性ソーダ)が共存すると瞬時にバッド酸からロイコ体に置換し、繊維構造物に親和性を付与する。
【0009】
繊維構造物への吸着したロイコ体は絞って脱液した後、水とか空気の(H)によって酸化還元を実施する事により、インディゴ染料の酸化体となって青色染料となり染色が終了する。
【0010】
藍並びインディゴ染料は繊維構造物への吸着方法を用いる染色方法であり、速染・濃染加工を実施するためには染液の管理が非常に難しい欠点がある。
【0011】
藍並びインディゴ染色において実用機(ロープ染色機・ワッシャー染色機・チーズ染色機・ビーム染色機・カセ染色機・ジッカー染色機)を用いる場合、PHの管理・還元性の管理・染液濃度の管理・液色の管理・温度の管理を実施しないと吸着染色不良となり、藍並びインディゴの堅牢度が低下するなどの問題がある。
【0012】
藍並びインディゴ染色において、濃色染色の方法には、濃厚還元法がある。染料の還元特性を利用して還元液量を少量にしてハイドロサルファイト苛性ソーダの濃度を高くして有効な濃染効果が得られるが、ロイコ体の水に対する溶解度に限界があり期待値まで向上し得ないレベルである。
【0013】
藍並びインディゴ染色においては、空気中で酸化還元をした後、水洗・湯洗が必要不可欠であり、未吸着の染料が染色過程で発生する排水(生物科学的酸素要求量)負荷が高くなるという問題がある。
【0014】
従来から、藍並びインディゴ染料は天然繊維構造物である木綿に対して親和性を示し、デニム素材に対して広く染色されてきた。しかしデニムは当初ワーキングウエアとして主流であったが、現在はファッションウエアとして多様化して、淡色から濃色までマーケットにおいて強く要請されている。
【0015】
本発明においては、ジハロゲノトリアジン化合物を用いた有機天然繊維材料に2段階の熱処理加工を実施して、それにより形態安定加工を行うという加工方法が提案されている。
(特許文献1)
【0016】
しかしこの特許文献1に記載の従来技術では、本発明の藍並びインディゴ染料の速染・濃染加工方法とは、目的・構成・効果のいずれにおいても相違するものである。
【特許文献1】 特許第3415576号(公報)(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物と藍並びインティゴ染料を共存させ熱処理工程を実施する事により繊維構造物に短時間で濃染効果が向上する事を特徴とするものであり、この速染・濃染加工により既存の藍並びインディゴ染料の染色加工時間の短縮化、染色加工の効率化を達成し、熱エネルギーを抑制。藍並びインディゴ染料の酸化還元機能による染色の際の染料・還元剤の削減と未吸着の染料が染色行程で発生する排水(生物科学的酸素要求量)負荷を軽減させる、藍並びインディゴ染料の速染・濃染加工方法に関するものである。
【課題を解決する為の手段】
【0018】
上記課題を解決する為の本発明の藍並びインディゴ染料の速染・濃染加工方法には親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン化合物を共存させる事を特徴とするものである。
【0019】
本発明において、親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン化合物とは
2.6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンNa塩
2.6−ジクロル−4−チオ−S−トリアジンNa塩
2.6−ジクロル−4−(3−スルフォアニリノ)−S−トリアジンNa塩
を少なくとも一種を共存させる事を特徴とするものである。
【0020】
本発明にかかわる、藍並びインディゴ染料の速染・濃染加工方法としては「乾熱法」と「浴中吸尽法」の2つの方法があり、親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン化合物を用いて繊維構造物と反応させる条件はモノクロルトリアジン系反応染料の場合とよく似た条件で加工する事ができる。それによって、染料使用量の削減と省エネルギーならび排水(生物科学的酸素要求量)負荷を軽減し、染色の経済性及び環境適応性を著しく改善する事ができる。
【0021】
乾熱法において本発明方法は、親水性の置換基を有するジクロルトリアジン系化合物と藍並びインディゴ染料、ハイドロサルファイト、苛性ソーダを共存させ、ロイコ体となった後、繊維構造物に含侵させた後、該繊維構造物を20℃〜80℃で熱処理する処理工程を有することを特徴とするものである。
【0022】
浴中吸尽法において本発明方法は、親水性の置換基を有するジクロルトリアジン系化合物と苛性ソーダを同浴内に仕込み、その水溶液を60℃〜65℃までの、約15分間以上で昇温し、繊維構造を浴中に含浸させ、藍並びインディゴ染料、ハイドロサルファイトを仕込み、ロイコ体となった時点で約2分間〜60分間の熱処理を20℃〜80℃で実施する処理工程を有する事を特徴とするものである
【0023】
浴中吸尽法においては、藍並びインディゴ染料がロイコ体になった際、親水性の置換基を有するジクロルトリアジン系化合物を仕込み、繊維構造物を仕込んでも良い。しかし該繊維構造物を親水性の置換基を有するジクロルトリアジン系化合物を均一に被膜化させるためには15分間以上の含浸が望ましい。その後2分間〜60分間の熱処理を20℃〜80℃で実施すればよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物と藍並びインティゴ染料を共存させる、速染・濃染加工方法は本発明の処理を実施しない従来の染色方法と比較して、飛躍的な染色時間の短縮化と濃染効果が得られる。
【0025】
本発明の特徴は、従来の藍並びインディゴ染色の吸着染色方法を用いない点にある。
【0026】
本発明の特徴を分析的に説明する。
【0027】
親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物は原料母体である、塩化シアヌ−ルの塩素の置換反応は、第一塩素の反応温度0〜10℃、第二塩素の反応温度20℃〜50℃、第三塩素の反応温度60℃〜100℃において電子供与性の置換基で順次置換されてゆくことは公知である。
【0028】
親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を得るためには、重炭酸ソーダ(NaHCO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3),水酸化ナトリウ厶(NaOH)などの酸結合剤を用いて、アルカリ性加水分解を実施すると親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物が得られる。
【0029】
本発明の、親水性置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物は、ドイツ公開時特許第2357252号.公報、あるいはアメリカ特許第5601971号.明細書等に記載があるように、公知の合成法に準じて合成できるがその概要は次のとうりである。
【0030】
例えば、塩化シアヌル1.00モルを5℃以下の氷水の中へ仕込み、次いで例えばm−スルファニル酸1.02モルと炭酸ソーダ−約1モルをよく撹拌しながら徐々に仕込む。m−スルファニル酸と炭酸ソーダ−の仕込みはPH=7±1で約3時間を要して5〜1℃で仕込み、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析し、塩化シアヌルがほぼ消滅すれば、更に1時間保湿撹拌して反応を完結させる。この間PHは6〜8に維持し、HPLCによって組成を分析し、モノスルファニル体が90%以上となれば反応を終了する。反応後微量の不容物を濾過して除き、最終的にはPHは7に調整する。このようにして26−ジクロル−4−(3−スルフォアニリノ)−S−トリアジンNa塩水溶液が高収率で得られる。この化合物は冷蔵庫内で5℃以下保管すれば約1ヶ月間は安定である。
【0031】
本発明の親水性置換基を有するのジハロゲノトリアジン系化合物はジハロゲノトリアジン環の塩化シアヌールの第一塩素がO.Naと置換されて有する事を特徴とする。
【0032】
ジハロゲノトリアジンNa塩と藍並びインティゴ染料を共存させる事によって繊維構造物へ被膜化、ロイコ体となる製造工程で用いる苛性ソーダ(NaOH)のアルカリで強制的な造塩結合を用いて該繊維構造物と藍並びインディゴ染料をその電子性の置換反応によって、OH基にする事を特徴とする。この造塩結合を用いる事により速染・濃染加工が可能となる。
【0033】
さらに本発明の特徴は、速染・濃染加工により既存の藍並びインディゴ染料の吸着染色法に比較して染色加工時間の短縮化・効率化を達成して、莫大なエネルギーを使用することなく二酸化炭素や窒素酸化物の削減に寄与し、染料・還元剤の削減に寄与すると共に、排水(生物科学的酸素要求量)を軽減させる。更に新規の設備を設置することなく優れた経済性のもとで藍並びインディゴ染色された衣料分野での生産が拡大できるものである。
【0034】
このように、本発明の藍並びインディゴ染料の速染・濃染加工方法は親水性置換基を有するのジハロゲノトリアジン系化合物は造塩結合の電子置換性により塩(Nacl)と水(H2O)になるなど技術的価値、実用的価値が高く、なおかつ近年の健康問題や地球規模クラスの環境問題にも対応できるものであり、藍並びインディゴ染料を用いる加工業界に大いに貢献することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明について望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
【0036】
本発明の親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物と藍並びインディゴ染料を共存させ熱処理を実施して繊維構造物に速染・濃染を付与させるものである。
【0037】
ここで「乾熱法」「浴中吸尽法」とは繊維構造物を親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物と、藍並びインディゴ染料を共存させ浸漬し、処理温度・浴比・時間を規制し熱処理の反応工程を有する事をいう。
【0038】
親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物は藍並びインディゴ染料がロイコ体となって水に溶解している時点において熱処理によって造塩結合を実施する機能を有している。
【0039】
親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物と藍並びインディゴ染料を共存させ造塩結合を実施させる繊維構造物への速染・濃染加工方法には熱処理として「乾熱法」「浴中吸尽法」が主な加工方法である。
【0040】
「乾熱法」における繊維構造物へ造塩結合の機能を説明する。藍並びインディゴ染料を既存の苛性ソーダ並びハイドロサルファイトを用いて60℃付近の温度にてロイコ体へ置換させる。ロイコ体なっている染液中に親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を仕込みよく撹拌をする。この染液の中へ繊維構造物を仕込んで含浸させ絞って、乾燥機内で或は空気中で20℃〜80℃で熱処理を実施すれば良い。ロイコ体なっている藍並びインディゴ染料のONa基は親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物のcl基と該繊維構造物のアミノ末端基、水酸基のハロゲン(H)部位と熱処理によって連続的に、苛性ソーダ(NaOH)とNacl+H2Oの造塩結合を実施してOH基となってトリアジン環と藍並びインディゴ染料が該繊維構造物に被膜化し、速染・濃染効果が得られると考えられる。
【0041】
「浴中吸尽法」における繊維構造物への造塩結合の機能を説明する。水溶液中に親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物と苛性ソーダを仕込む、その後昇温を実施して約50℃付近おいて繊維構造物を浸績させる。その後60℃付近にて藍並びインディゴ染料を仕込んでロイコ体に置換させて20℃〜80℃の浴温を2分間〜60分間の熱処理を実施すればよい。ロイコ体となっている藍並びインディゴ染料のONa基は繊維構造物に被膜化している親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物と該繊維構造物のアミノ末端基、水酸基のハロゲン(H)部位と熱処理によって連続的に、苛性ソーダ(NaOH)とNacl+H2Oの造塩結合を実施してOH基となってトリアジン環と藍並びインディゴ染料が該繊維構造物に被膜化し、速染・濃染効果が得られることは、これら「乾熱法」「浴中吸尽法」を用いて熱処理を実施することにより、該繊維構造物のアミノ末端基、水酸基のハロゲン(H)部位と藍並びインディゴ染料がロイコ体となっている状況下での反応部位ONa基が親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジンの有するトリアジン環のCl基を介して苛性ソーダ(NaOH)の酸結合剤の下で電子置換性の造塩結合を実施、該繊維構造物へ被膜化していると考えられ、既存の藍並びインディゴ染料の吸着法を用いる染色加工方法とは異なるものである。
【0042】
本発明においては、既存の藍並びイシディゴ染料の染色方法である吸着法と空気や水での酸化還元法を用いる加工法とは異なり、親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物と藍並びインディゴ染料が水に溶解しているロイコ体の状態の中で強制的に造塩結合を実施、熱処理によって酸化還元を行い染色工程を完了するという速染・濃染加工方法であり技術的価値・実用的価値が高く、藍並びインディゴ染料使用量の削減による経済性・排水(生物科学的酸素要求量)負荷を軽減させるなど、既存の藍並びインディゴ染色業界に大いに貢献するものである。
【0043】
本発明で用いる事ができる、親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物と は
2.6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンNa塩
2.6−ジクロル−4−チオ−S−トリアジンNa塩
2.6−ジクロル−4−(3−スルフォアニリノ)−S−トリアジンNa塩
【0044】
これらの化合物が具備すべき条件は、藍並びインディゴ染料がロイコ体となった時点で苛性ソーダ(NaOH)と造塩結合を実施する置換基を有する親水性の置換基を有する化合物である。
【0045】
本発明において繊維構造物は綿や糸の段階、製織や製編にした後、不織布あるいは、工程途中の半製品、完成された製品、染色された製品の段階などで加工する事が可能であり更に、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、合成繊維へも造塩結合を実施することは可能である。
【0046】
本発明において、親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物と藍並びインディゴ染料を共存させ、造塩結合を実施して、速染・濃染加工方法の加工条件の概要を説明する。「乾熱法」においては、染色浴内の水溶液を60℃付近まで昇温処理を実施した後、藍並びインディゴ染料を染料純度100%換算で0.1〜10%(o.w.f)投入して撹拌を実施する。苛性ソーダ(NaOH)を0.1〜10%(o.w.s)投入する。次いでハイドロサルファイト(Na2S2O4)0.1%〜20%(o.w.s)投入して、藍並びインディゴ染料をONa基を末端基に持つロイコ体に置換する。その後親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を染色、濃度目的に応じて純度100%換算で0.1〜10%(o.w.f)投入して染液中に撹拌を実施する。この染色浴内の中に繊維構造物を含浸させて目的に応じた時間内で取り出して絞る。空気中に放置して濃度に応じて染色回数を増加させ20℃〜80℃の乾熱の中で熱処理を実施して水洗いを実施して脱水、乾燥して染色工程を終了する。
【0047】
「浴中吸尽法」においては繊維構造物の総重量に対し浴比1:40以下になる様に染色浴内へ水量を調整して、苛性ソーダ(NaOH)を0.1〜10%(o.w.s)投入する。撹拌を実施してアルカリ浴にした後、親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物を染色濃度目的に応じて純度100%換算で0.1〜10%(o.w.f)投入して、染色浴内の昇温を開始する。この時約15分間〜20分間かけてゆっくり昇温、撹拌を実施する、急激に昇温するとジハロゲノトリアジン系化合物が凝集して均一に繊維構造物へ被膜化させることが困難に成る可能性がある。60℃付近において繊維構造物を投入して、その状態で2分間〜60分間浸績して均一にジハロゲノトリアジン系化合物を被膜化させ、染色浴内へ藍並びインディゴ染料を染料純度100%換算で0.1〜10%(o.w.f)投入して撹拌、その後ハイドロサルファイト(Na2S2O4)を0.1〜20%(o.w.f)投入し2分間〜60分間の熱処理を実施する。排液を実施した後、再度染色浴内へ水を投入して水洗いを実施、脱水して染色工程を終了する。
【0048】
また本発明においては、20℃〜80℃までの熱処理工程が含まれていれば良い。
【0049】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。
【0050】
実施例1
水溶液5000ccを用意して、60℃まで昇温を実施した後、合成インディゴを25g(5g/L 0.5% o.w.s)投入して、苛性ソーダ−を40g(8g/L 0.8% o.w.s)ハイドロサルファイト(Na2S2O4)50g(10g/L 1% o.w.s)を投入して良く撹拌してロイコ体になった事を確認後、2.6−ジクロル−4−(3−スルフォアニリノ)−S−トリアジンNa塩 50cc(10cc/L 1% o.w.s)投入して共存させ10分間放置した。その後再度65℃まで昇温、綿100%の組織平織の織布、生地重量80gを投入して、含浸させ、染浴中の中で2分間浸績、絞り率120%にて絞り室温20℃の空気中にて20分間放置した。その後水洗いを実施、酢酸でPH5.5の水溶液を作製して、その中へ織布を含浸、酸中和を実施して、更に水洗い、脱水して乾燥を実施した。その織布の染色度を、表1のカラー写真で示す。
【0051】
比較例1
実施例1で使用したものと同じ織布を2.6ジクロル−4−(3−スルフォアニリノ)−S−トリアジンNa塩を共存させないで染色加工を実施した。その織布の染色度を表1のカラー写真で示す。
【0052】
実施例2
水溶液5000ccを用意して苛性ソーダ−(NaOH)を50g(10g/L 1% o.w.s)2.6−ジクロル−4−チオ−S−トリアジンNa塩100cc(20cc/L 2% o.w.s)と投入し20分間かけて水溶液を昇温した。合成インディゴを25g(5g/L 0.5% o.w.s)を投入し、ハイドロサルファイト(Na2S2O4)50g(10/L 1% o.w.s)を投入してよく撹拌した。その60℃の中へ綿100% 30/2 をカセ状にして250g投入した。染浴の中で5分間浸漬加熱を実施。絞り率100%で絞り80℃に昇温された乾燥機内において1時間実質的に乾燥するまで放置、その後水洗いを実施し、脱水・乾燥した。そのカセ状綿を表2のカラー写真で示す。
【0053】
比較例2
実施例2で使用したカセ状の面100% 30/2を 2.6−ジクロル−4−チオ−S−トリアジンNa塩を共存させないで染色加工を実施した。その綿100% 30/2 を表2のカラー写真で示す。
【0054】
実施例3
実施例2と同様の染色方法を用いて、ナイロン100%のソックスを投入して、10分間含浸させた後、水洗浴の中で洗い、その後水をふきつけて更に水洗いし、脱水して20℃の室内に実質的に乾燥するまで放置した。そのナイロン100%のソックスを、表3のカラー写真で示す。
【0055】
比較例3
実施例2と同様2.6−ジクロル−4−チオ−S−トリアジンNa塩を共存させないで染色加工を実施した。その後ナイロン100%の織布を、表3のカラー写真で示す。
【0056】
実施例4
水溶液5000ccを用意して60℃まで昇温実施した後インド藍を25g(5g/L 0.5% o.w.s)投入して、苛性ソーダ−(NaOH)を40g(8g/L 0.8% ow.s)ハイドロサルファイト(Na2S2O4)50g(10g/L 1% o.w.s)を投入してよく撹拌した後、2.6−ジクロル−4−(3−スルフォアニリノ)−S−トリアジンNa塩50cc(10cc/L 1% o.w.s)投入して共存させ10分間放置した。その後、再度60℃まで昇温して、綿100%スムース生地の編物を投入して含浸させ、染浴内で10分間浸漬し、絞り率120%にて絞り室温20℃の空気中にて30分間放置した。その後水洗いを実施、脱水して乾燥した。その編物の染色度を表4のカラー写真で示す。
【0057】
比較例4
実施例4で使用したものと同じ編物を2.6−ジクロル−4−(3−スルフォアニリノ)−S−トリアジンNa塩を共存させないで染色加工を実施した。その編物を表4のカラー写真で示す。
【0058】
実施例5
実施例4で使用した同様の染色方法を用いてシルク100% MC120/2をカセ状にして10分間含浸させた。その後10分間水の中に放置して、脱水、乾燥させた。そのカセ状のシルク100%の染色度を表5のカラー写真で示す。
【0059】
比較例5
実施例4で使用したものと同じシルク100%を2.6−ジクロル−4−(3−スルフォアニリノ)−S−トリアジンNa塩を共存させないで染色加工を実施した。2.6−ジクロル−4−(3−スルフォアニリノ)−S−トリアジンNa塩を共存させないで染色加工を実施した。そのカセ状のシルク100%の染色度を表5のカラー写真で示す。
【0060】
実施例6
実施例4で使用したものと同様の染色方法を用いて、綿、ポリエステル混合のソックスを2分間含浸させ、脱水した後ベーキング乾燥機内、温度60℃にて30分間乾燥、加熱を実施した後、水洗い、酢中和を実施して乾燥させた。その染色度を表6のカラー写真で示す。
【0061】
比較例6
実施例4で使用したものと同じ綿、ポリエステル混合のソックスを2.6−ジクロル−4−(3−スルフォアニリノ)−S−トリアジンNa塩を共存させないで染色加工を実施した。その染色度を表6のカラー写真で示す。
【0062】
実施例7
京都府織物・機械金属振興センターの指導により作製された、天然藍の染液2000ccの中へ 2.6−ジクロル−4−チオ−S−トリアジンNa塩20cc(10cc/L 1% o.w.s)と投入し20分間かけて昇温した。その後30℃まで降温させた後、酵素にて精練加工されたウール100%の紡毛30/2を染浴内へ浸漬させ2分間もみかこうを実施した。その後、酢酸にてPH5.5に調液された水溶液内で強制的に酸中和を実施した。その後、水洗い、脱水、乾燥を実施した。その染色度を表7のカラー写真で示す。
【0063】
比較例7
実施例7と同様ウール100%の紡毛30/2を2.6−ジクロル−4−チオ−S−トリアジンNa塩を共存させないで染色加工を実施した。その染色度を表7のカラー写真で示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
【表6】

【0070】
【表7】

【0071】
表1のカラー写真からわかるように、実施例1と比較例1において濃染加工が付与されている良好な結果が得られた。
【0072】
表2のカラー写真からわかるように実施例2と比較例2において濃染加工が付与されている良好な結果が得られた。
【0073】
表3のカラー写真から分かるように実施例3と比較例3において濃染加工が付与されている良好な結果が得られた。
【0074】
表4のカラー写真から分かるように実施例4と比較例4において濃染加工が付与されている良好な結果が得られた。
【0075】
表5のカラー写真から分かるように実施例5と比較例5において濃染加工が付与されている良好な結果が得られた。
【0076】
表6のカラー写真から分かるように実施例6と比較例6において濃染加工が付与されている良好な結果が得られた。
【0077】
表7のカラー写真から分かるように実施例7と比較例7において濃染加工が付与されている良好な結果が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物と藍並びインディゴ染料を共存させ、アルカリ染液浴内で速染・濃染を付与させる繊維構造物の染色加工方法。
【請求項2】
親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物が塩化シアヌールから誘導されるものであることを特徴とする、藍並びインディゴ染料を共存させ、アルカリ染液浴内で速染・濃染を付与させる繊維構造物の染色加工方法。
【請求項3】
親水性の置換基を有するジハロゲノトリアジン系化合物が下記の化合物から選ばれる、少なくとも1種を共存させることを特徴とする、藍並びインディゴ染料の速染・濃染を付与させる繊維構造物の染色加工方法。
2.6−ジクロル−4−オキシ−S−トリアジンNa塩
2.6−ジクロル−4−チオ−S−トリアジンNa塩
2.6−ジクロル−4−(3−スルフォアニリノ)−S−トリアジンNa塩
【請求項4】
前記、親水性の置換基を有する、ジハロゲノトリアジン系化合物と藍並びインディゴ染料を共存させ、乾熱法を用いてアルカリ染液浴内で20℃〜80℃で熱処理する、染色処理工程を有することを特徴とする、速染・濃染を付与させる繊維構造物の染色加工方法。
【請求項5】
前記親水性の置換基を有する、ジハロゲノトリアジン系化合物と藍並びインディゴ染料を共存させ含浸させたのち、浴中吸尽法を用いてアルカリ染液浴内で20℃〜80℃で熱処理する処理工程を有することを特徴とする、速染・濃染を付与させる繊維構造物の染色加工方法。
【請求項6】
繊維構造物が、シルク・ウール・モヘア・アンゴラ・アルパカ・カシミア・獣毛などの動物系蛋白質繊維構造物、木綿・麻などのセルロース系繊維構造物、ビスコース・レーヨン・キュプラ・テンセル・リヨセル・などの再生繊維構造物、ナイロン・ポリエステルなどの合成繊維構造物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の染色加工方法。

【公開番号】特開2009−24310(P2009−24310A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212464(P2007−212464)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(596037895)株式会社金久 (8)
【出願人】(593102909)株式会社西江デニム (2)
【Fターム(参考)】