説明

蛋白質含有飲食品用分散剤及びそれを用いた蛋白質含有飲食品

【課題】低コストで、飲食品に対して着色、異味・異臭及び食感の低下を生じることなく、蛋白質粒子の凝集、沈澱、相分離を防止又は抑制可能な蛋白質含有飲食品用分散剤及びそれを用いた蛋白質含有飲食品を提供する。
【解決手段】蛋白質含有飲食品用分散剤は、蛋白質含有飲食品中の蛋白質を分散させる蛋白質含有飲食品用分散剤であって、カルボキシル基含量が0.4〜1.3質量%の範囲である酸化澱粉を含むものとし、この蛋白質含有飲食品用分散剤を含む蛋白質含有飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛋白質含有飲食品用分散剤及びそれを用いた蛋白質含有飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、牛乳、豆乳等に果汁・果肉・果粒、有機酸・有機酸塩、無機酸・無機酸塩等を添加した飲料をはじめとした蛋白質含有飲食品が知られている。蛋白含有飲食品は、蛋白質粒子の凝集又は沈澱を防止又は抑制することが課題となっており、この課題を解決する目的で水溶性大豆多糖類、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、水溶性ヘミセルロース等を分散剤又は乳化剤として添加することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水溶性大豆多糖類を単独で、又は水溶性大豆多糖類と、ペクチン、カルボキシメチルセルロース又はアルギン酸プロピレングリコールエステルとを併用することで蛋白質含有食品における蛋白質粒子の凝集、沈澱、相分離等の欠点を防止する技術が記載されている。また、特許文献2には、水溶性ヘミセルロースを乳化剤として蛋白質含有飲料に添加して蛋白質粒子の凝集、沈澱を防止する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2834345号(特開平5−7458号公報)
【特許文献2】特許第3516968号(特開平7−99947号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2で利用している水溶性大豆多糖類及び水溶性ヘミセルロースはコストが高いことだけでなく、これらの添加により着色や異味・異臭が生じ、飲食品としての商品価値を低下させるという問題がある。さらに、特許文献1及び特許文献2で併用が可能とされているペクチン、カルボキシメチルセルロース等は、その利用により飲食品に粘性が付与されることで食感が低下するという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、低コストで、飲食品に対して着色、異味・異臭及び食感の低下を生じることなく、蛋白質粒子の凝集、沈澱、相分離を防止又は抑制可能な蛋白質含有飲食品用分散剤及びそれを用いた蛋白質含有飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の蛋白質含有飲食品用分散剤は、
蛋白質含有飲食品中の蛋白質を分散させる蛋白質含有飲食品用分散剤であって、
カルボキシル基含量が0.4〜1.3質量%の範囲である酸化澱粉を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明の蛋白質含有飲食品は、前記本発明の蛋白質含有飲食品用分散剤を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低コストで、飲食品に対して着色、異味・異臭及び食感の低下を生じることなく、蛋白質粒子の凝集、沈澱、相分離を防止又は抑制可能な蛋白質含有飲食品用分散剤及び蛋白質含有飲食品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、「分散」は、蛋白質粒子を分散させ、その凝集、沈澱、相分離等を防止又は抑制すること、及び前記蛋白質粒子の分散を安定させることを意味する。
【0011】
本発明において、「蛋白質」は、蛋白質のみならず、ペプチド、蛋白質分解物等の蛋白質由来の物質を含む。なお、便宜上、本明細書において、蛋白質を蛋白質粒子と記載することがあるが、本発明において、蛋白質は、粒子状に限定されず、その他の形状であってもよい。
【0012】
本発明の蛋白質含有飲食品用分散剤において、30℃±1℃で測定した前記酸化澱粉の10質量%糊液の粘度が、35mPa・s以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の蛋白質含有飲食品用分散剤において、前記酸化澱粉の10質量%糊液冷解凍試験後における波長620nmにおける吸光度が、1以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の蛋白質含有飲食品用分散剤において、前記酸化澱粉が、アセチル化酸化澱粉であってもよい。
【0015】
本発明の蛋白質含有飲食品において、前記蛋白質含有飲食品全量に対する前記酸化澱粉の配合割合が、0.05〜3質量%の範囲であることが好ましい。
【0016】
本発明の蛋白質含有飲食品において、前記蛋白質が、乳及び大豆の少なくとも一方に由来する蛋白質を含むことが好ましい。
【0017】
本発明の蛋白質含有飲食品は、さらに、水溶性大豆多糖類、ペクチン及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一種の分散剤を含んでもよい。
【0018】
本発明の蛋白質含有飲食品は、酸性飲料であることが好ましい。
【0019】
つぎに、本発明を詳細に説明する。
【0020】
(1)蛋白質含有飲食品用分散剤
まず、本発明の蛋白質含有飲食品用分散剤について説明する。本発明の蛋白質含有飲食品用分散剤は、前述のとおり、カルボキシル基含量が0.4〜1.3質量%の範囲である酸化澱粉を含む。前記酸化澱粉は、安価であり、飲食品に対して着色、異味・異臭及び食感の低下を生じさせない。
【0021】
(1−1)酸化澱粉
本発明に用いる原資澱粉としては、特に制限されず、例えば、トウモロコシ、キャッサバ、ジャガイモ、サツマイモ、コメ、リョクトウ、クズ、カタクリ、コムギ、サゴヤシ、ワラビ、オオウバユリ等の植物から得られる澱粉があげられる。前記植物には、ウルチ種、ワキシー種、ハイアミロース種等のように、育種的手法又は遺伝子工学的手法により改良された品種が存在するが、いかなる品種であってもよい。これらの中でも、ワキシー種のトウモロコシ澱粉(ワキシーコーンスターチ)、キャッサバの根茎から採取した澱粉(タピオカ)が特に好ましい。前記原資澱粉は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記原資澱粉には、エステル化、エーテル化等の加工処理を施してもよく、湿熱処理、油脂加工、ボールミル処理、微粉砕処理、α化、加熱処理、温水処理、漂白処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理等の物理加工処理を施してもよい。
【0022】
前記原資澱粉にカルボキシル基を導入し、酸化澱粉とする。前記原資澱粉にカルボキシル基を導入する方法は、特に制限されず、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素水等の酸化剤による酸化反応による導入等があげられる。前記酸化澱粉には、エステル化、エーテル化等の加工処理を施してもよく、前述の物理加工処理を施してもよい。
【0023】
(1−1−1)カルボキシル基含量
前述のとおり、前記酸性澱粉のカルボキシル基含量は、0.4〜1.3質量%の範囲である。前記カルボキシル基含量を前記範囲とすることで、電荷のバランスを安定させ、蛋白質粒子の凝集、沈澱、相分離等の防止又は抑制効果を得ることができる。前記カルボキシル基含量は、好ましくは、0.45〜1.13質量%であり、より好ましくは、0.8〜1.1質量%である。
【0024】
前記カルボキシル基含量は、例えば、平成20年10月1日掲載の官報号外第216号の第30〜35頁に記載の方法により算出できる。具体的には、まず、絶乾した前記酸化澱粉を吸湿しないように注意しながらすりつぶし、標準網ふるい850μmを通過させたものを3g正確に秤量する。これに塩酸(1→120)25mLを加え、時々かき混ぜながら30分間放置した後、吸引ろ過し、ビーカーの残留物を水でろ過器に洗い込む。ろ紙上の残留物を洗液が塩化物の反応を呈さなくなるまで水で洗浄する。残留物をビーカーに入れ、水300mLを加えて懸濁し、撹拌しながら水浴中で加熱して糊化させ、更に15分間加熱する。水浴から取り出し、熱いうちに0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液で滴定し、その消費量をSmLとする(指示薬 フェノールフタレイン試薬3滴)。別に同量の未加工澱粉を量り、ビーカーに入れ、水10mLを加えて懸濁し、30分間撹拌する。懸濁液を吸引ろ過し、ビーカーの残留物をろ過器に洗い込み、ろ紙上の残留物を水200mLで洗う。残留物に水300mLを加えて懸濁し、以下本試験と同様に操作し、その消費量をBmLとする。下記式により前記カルボキシル基含量を算出する。後述の実施例においては、この方法により前記カルボキシル基含量を算出した。

カルボキシル基含量(%)={(S−B)×0.45}/乾燥物換算した試料の採取量(g)

【0025】
(1−1−2)糊液粘度
前述のとおり、前記酸化澱粉の10質量%の糊液の粘度は、35mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは、10mPa・s以下であり、さらに好ましくは、6.3mPa・s以下である。前記糊液粘度の測定温度は、30℃±1℃である。
【0026】
前記糊液粘度は、例えば、つぎのようにして測定できる。すなわち、まず、前記酸化澱粉に水を加えて、乾燥物重量として10質量%の酸化澱粉スラリーを調製する。ついで、前記酸化澱粉スラリーを撹拌しながら加熱して95℃で10分間保持し、糊液を得る。つぎに、得られた糊液を30℃±1℃に冷却し、B型粘度計(商品名:TVB−10M、東機産業(株)製)を用いて、60rpm、15秒の条件で前記糊液粘度を測定する。後述の実施例においては、この方法により前記糊液粘度を測定した。
【0027】
(1−1−3)糊液冷解凍試験
前述のとおり、前記酸化澱粉の10質量%糊液冷解凍試験後における波長620nmにおける吸光度は、1以下であることが好ましく、より好ましくは、0.7以下であり、さらに好ましくは、0.21以下である。前記糊液冷解凍試験は、前記酸化澱粉の「老化」のし易さを評価できる。前記吸光度を1以下とすることで、前記酸化澱粉が老化し難く、すなわち、前記酸化澱粉のハンドリングに優れるようになり、飲食品に添加する上で好ましい。
【0028】
前記糊液冷解凍試験は、例えば、つぎのようにして実施できる。すなわち、まず、前記酸化澱粉に水を加えて、乾燥物重量として10質量%の酸化澱粉スラリーを調製し、これを撹拌しながら加熱することで前記酸化澱粉の糊液を得る。ついで、急速凍結機を用いて、この糊液5gの冷解凍を5回繰り返す。つぎに、前記冷解凍後の糊液を、120穴プレートに200μLずつ分注し、マイクロプレートリーダー(商品名:model1680、バイオ・ラッド ラボラトリーズ(株)製)を用いて、620nmにおける吸光度を測定する。後述の実施例においては、この方法により糊液冷解凍試験を実施した。
【0029】
(1−1−4)デキストロース当量(Dextrose Equivalent、DE)
前記酸化澱粉のDEは、3以下であることが好ましく、より好ましくは、2.94以下であり、さらに好ましくは、2.15以下である。前記DEを3以下とすることで、より優れた蛋白質粒子の凝集、沈澱、相分離等の防止又は抑制効果を得ることができる。
【0030】
前記DEは、例えば、つぎのようにして測定できる。なお、この測定法は、「ソモギー変法」として当業者に周知である。まず、前記酸化澱粉を蒸留水に溶解させて10〜30質量%の酸化澱粉スラリーを調製した後、オートクレーブを用いて前記酸化澱粉を糊化させる。ついで、Brixメーター((株)アタゴ製)を用いて前記酸化澱粉糊液のBrixを測定する。この酸化澱粉糊液0.5mLをフラスコ等に移し、移した前記酸化澱粉糊液の重量を正確に秤量した後、19.5mLの蒸留水、10mLの下記A液を加えて全量を30mLとする。これを加熱して沸騰を3分間持続させた後に冷却し、10mLの下記B液を加えた後に下記C液を加えて素早く振とうする。これを0.05Nチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定し、下記式により前記DEを算出する。滴定は、1%澱粉指示薬を加えて青色となった時点を終点とする。また、前記酸化澱粉糊液を水に置換したものを、ブランクとする。後述の実施例においては、この方法により前記DEを測定した。

A液:酒石酸カリウムナトリウム90g及びリン酸三ナトリウム・12水和物225gを蒸留水500mLに溶解し、これに硫酸銅30gを蒸留水100mLに溶解した溶液を十分に撹拌しながら加え、さらにヨウ素酸カリウム3.5gを少量の蒸留水に加えたものを加えて全量を1000mLにした後にろ過して調製
B液:シュウ酸カリウム30g及びヨウ化カリウム40gを水に溶解し、全量を1000mLとして調製
C液:濃硫酸56mLを蒸留水で1000mLにメスアップして調製

DE=[{1.449×(a−b)×f}/(Bx×w)]×(1/1000)×100
:酸化澱粉滴定量(mL)
:ブランク滴定量(mL)
:0.05Nチオ硫酸ナトリウム水溶液の力価(mg/mL)
Bx:酸化澱粉糊液のBrix
:酸化澱粉糊液の重量(g)

【0031】
(1−1−5)アセチル化酸化澱粉
前述のとおり、前記酸化澱粉は、アセチル化酸化澱粉であってもよい。この場合には、前記原資澱粉にアセチル基及びカルボキシル基を導入し、アセチル化酸化澱粉とする。前記原資澱粉にアセチル基を導入する方法は、特に制限されず、例えば、酢酸ビニル、無水酢酸等のアセチル化剤によるアセチル化反応による導入等が挙げられる。前記酸化澱粉にカルボキシル基を導入する方法は、前述のとおりである。原資澱粉への置換基の導入順序に特に制限はなく、アセチル基の導入後にカルボキシル基を導入してもよいし、カルボキシル基の導入後にアセチル基を導入してもよい。
【0032】
(1−1−6)アセチル基含量
前記アセチル化酸化澱粉のアセチル基含量は、0.2〜3.1質量%の範囲であることが好ましい。前記アセチル基含量を前記範囲とすることで、より優れた蛋白質粒子の凝集、沈澱、相分離等の防止又は抑制効果を得ることができる。前記アセチル基含量は、より好ましくは、0.2〜2.6質量%である。
【0033】
前記アセチル基含量は、例えば、平成20年10月1日掲載の官報号外第216号の第30〜35頁に記載の方法により算出できる。具体的には、まず、前記アセチル化酸化澱粉を固形分換算で5g秤量し、300mL容三角フラスコへ入れる。これに蒸留水50mLを加え、撹拌しながら澱粉粒を分散させる。さらに、フェノールフタレイン指示薬を5〜6滴加え、0.1N(0.1mol/L) NaOH溶液をわずかに赤色に染まる程度まで滴下する。そこへ0.45N(0.45mol/L) NaOH溶液を25mL加え、アルミホイルで蓋をして室温で30分間撹拌する。これを0.2N(0.2mol/L) HCl溶液で滴定し、その消費量をS1mLとする。別に同量の未加工澱粉についても、前記アセチル化澱粉と同様にして0.2N(0.2mol/L) HCl溶液滴定を行い、その消費量をB1mLとする。下記式により前記アセチル基含量を算出する。後述の実施例においては、この方法により前記アセチル基含量を算出した。

アセチル基含量(%)={(S1−B1)×0.2×0.043×100}/乾燥物換算した試料の採取量(g)

【0034】
(1−2)酸化澱粉以外の成分
本発明の蛋白質含有飲食品用分散剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記酸化澱粉以外の成分を含んでもよい。前記酸化澱粉以外の成分としては、例えば、水溶性大豆多糖類、ペクチン、カルボキシメチルセルロース等があげられる。
【0035】
前記水溶性大豆多糖類は、例えば、ラムノース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、グルコース、ウロン酸等の多糖類であって、例えば、大豆から豆腐を製造する際の残渣(オカラ)又は脱脂大豆から大豆蛋白質を抽出した後の抽出粕等を原料とし、前記原料を加水分解することにより製造される。
【0036】
前記ペクチンは、植物の細胞壁成分として存在し、ガラクツロン酸を主鎖成分とする多糖類である。前記ペクチンにおいては、前記ガラクツロン酸は部分的にメチルエステル化されており、エステル化の程度により分類されている。本発明では、エステル化度が、例えば、55以上、好ましくは60以上、より好ましくは65以上のペクチンを用いることが好ましい。
【0037】
前記カルボキシメチルセルロースは、セルロースの水酸基の一部にカルボキシメチル基を結合させたものであり、一般的なエーテル化度は0.6〜1.5程度である。
【0038】
(2)蛋白質含有飲食品
前述のとおり、本発明の蛋白質含有飲食品は、前記本発明の蛋白質含有飲食品用分散剤を含むことを特徴とする。本発明において、「蛋白質含有飲食品」は、例えば、動植物性蛋白質を含有する飲食品を意味し、例えば、乳飲料、乳酸菌飲料(生菌タイプ、殺菌タイプの両者を含む)、発酵乳、豆乳、スープ、汁粉、飲むヨーグルト、冷菓(例えば、アイスクリーム、ソフトクリーム、シャーベット等)、ヨーグルト、プリン、ゼリー、飲むゼリー、ドレッシング等があげられる。前記蛋白質含有飲食品は、後述のように、副原料として果汁・果肉・果粒、有機酸・有機酸塩、無機酸・無機酸塩等を含んでもよい。前記動植物性蛋白質としては、例えば、牛乳、山羊乳、脱脂乳、豆乳;これらを粉末化した全脂粉乳、脱脂粉乳、粉末豆乳;これらに糖を添加した加糖乳;これらを濃縮した濃縮乳;これらにミネラル、ビタミン等を添加した加工乳;これらを微生物により発酵させた発酵乳等があげられる。
【0039】
(2−1)酸化澱粉配合割合
前述のとおり、本発明の蛋白質含有飲食品において、前記蛋白質含有飲食品全量に対する前記酸化澱粉の配合割合が、0.005〜3質量%の範囲であることが好ましい。前記酸化澱粉の配合割合を前記範囲とすることで、電荷のバランスを安定させ、より優れた蛋白質粒子の凝集、沈澱、相分離等の防止又は抑制効果を得ることができる。前記酸化澱粉の配合割合は、より好ましくは、0.005〜2質量%の範囲であり、さらに好ましくは、0.005〜1質量%の範囲である。
【0040】
前記蛋白質含有飲食品に前記酸化澱粉を添加するタイミングは、特に制限されず、前記蛋白質含有飲食品の製造工程のいずれのタイミングで添加してもよい。また、前記酸化澱粉は、前記蛋白質含有飲食品に対し一度に添加してもよく、複数回に分けて添加してもよい。前記酸化澱粉は、前記蛋白質含有飲食品の製造工程の均質化及び殺菌の少なくとも一方の工程の前に添加することが好ましい。
【0041】
(2−2)酸化澱粉以外の成分
本発明の蛋白質含有飲食品の副原料としては、例えば、粉末化乳、各種糖類、各種オリゴ糖、各種デキストリン、砂糖、異性化糖、アミノ酸、核酸、酵母、酵母エキス、パラチノース、ステビア等の調味料;酸味料;各種ゲル化剤;糊料;乳化剤;寒天;ゼラチン;油脂;野菜汁;果汁・果肉・果粒;香料;着色料;リン酸カルシウム;乳酸カルシウム;ビタミン類等があげられる。
【0042】
本発明の蛋白質含有飲食品は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、水溶性大豆多糖類、ペクチン及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一種の分散剤を含んでもよい。前記水溶性大豆多糖類、ペクチン及びカルボキシメチルセルロースについては、前記蛋白質含有飲食品用分散剤において説明したとおりである。
【0043】
(2−3)pH
本発明の蛋白質含有飲食品のpHは、2.5〜8の範囲であることが好ましい。すなわち、本発明の蛋白質含有飲食品は、酸性〜弱アルカリ性であることが好ましい。本発明の蛋白質含有飲食品のpHは、より好ましくは、2.5〜7の範囲であり、さらに好ましくは、2.5〜6の範囲であり、特に好ましくは、2.5〜5の範囲である。
【実施例】
【0044】
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例及び比較例によってなんら限定ないし制限されない。
【0045】
[実施例1]
未加工のタピオカに水を加えて40質量%の澱粉スラリーを調製し、40℃、350rpmの条件で撹拌しながら、酸(9質量%塩酸水溶液)及びアルカリ(3質量%水酸化ナトリウム水溶液)を添加してpHを6に調整した。この澱粉スラリーに、対澱粉濃度が500ppmとなる量の有効塩素濃度が12.55%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を1時間かけて添加した後、90分間酸化反応させた。次亜塩素酸ナトリウムを添加してから酸化反応終了までの間、前記酸及び前記アルカリを用いて終始pHを6に維持した。酸化反応終了後、pHを5に調整し、ピロ亜硫酸ナトリウムで残留する塩素を除去し、#250メッシュ篩で不純物を除去した後、水洗浄・脱水・乾燥を行って酸化澱粉を得た。この酸化澱粉を、本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0046】
[実施例2]
前記澱粉スラリーに、対澱粉濃度が1250ppmとなる量の前記次亜塩素酸ナトリウムを添加した以外は、実施例1と同様にして、酸化澱粉を得た。この酸化澱粉を、本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0047】
[実施例3]
前記澱粉スラリーのpHを10に調整・維持し、前記澱粉スラリーに、対澱粉濃度が550ppmとなる量の前記次亜塩素酸ナトリウムを添加した以外は、実施例1と同様にして、酸化澱粉を得た。この酸化澱粉を、本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0048】
[実施例4]
タピオカに代えてワキシーコーンスターチを用い、前記澱粉スラリーに、対澱粉濃度が550ppmとなる量の前記次亜塩素酸ナトリウムを添加した以外は、実施例1と同様にして、酸化澱粉を得た。この酸化澱粉を、本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0049】
[実施例5]
タピオカに代えてワキシーコーンスターチを用い、前記澱粉スラリーのpHを10に調整・維持し、前記澱粉スラリーに、対澱粉濃度が550ppmとなる量の前記次亜塩素酸ナトリウムを添加した以外は、実施例1と同様にして、酸化澱粉を得た。この酸化澱粉を、本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0050】
[実施例6]
タピオカに代えてワキシーコーンスターチを用い、前記澱粉スラリーのpHを10に調整・維持し、前記澱粉スラリーに、対澱粉濃度が672ppmとなる量の前記次亜塩素酸ナトリウムを添加した以外は、実施例1と同様にして、酸化澱粉を得た。この酸化澱粉を、本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0051】
[実施例7]
タピオカに代えてコーンスターチを用い、前記澱粉スラリーのpHを8に調整・維持し、前記澱粉スラリーに、対澱粉濃度が320ppmとなる量の前記次亜塩素酸ナトリウムを添加した以外は、実施例1と同様にして、酸化澱粉を得た。この酸化澱粉を、本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0052】
[実施例8]
タピオカに代えてコーンスターチを用い、前記澱粉スラリーのpHを10に調整・維持し、前記澱粉スラリーに、対澱粉濃度が270ppmとなる量の前記次亜塩素酸ナトリウムを添加した以外は、実施例1と同様にして、酸化澱粉を得た。この酸化澱粉を、本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0053】
[実施例9]
タピオカに代えてコーンスターチを用い、前記澱粉スラリーのpHを8に調整・維持し、前記澱粉スラリーに、対澱粉濃度が400ppmとなる量の前記次亜塩素酸ナトリウムを添加した以外は、実施例1と同様にして、酸化澱粉を得た。この酸化澱粉を、本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0054】
[実施例10]
実施例4で得た酸化澱粉及び水溶性大豆多糖類である不二製油(株)製の「ソヤファイブ(商品名)」を、10:1(質量比)の割合で混合したものを、本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0055】
[実施例11]
実施例5で得た酸化澱粉及び水溶性大豆多糖類である不二製油(株)製の「ソヤファイブ(商品名)」を、10:1(質量比)の割合で混合したものを、本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0056】
[実施例12]
実施例4で得た酸化澱粉及びペクチンであるCP Kelco社製の「YM−115−LJ(商品名)」を、5:1(質量比)の割合で混合したものを、本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0057】
[実施例13]
実施例5で得た酸化澱粉及びペクチンであるCP Kelco社製の「YM−115−LJ(商品名)」を、5:1(質量比)の割合で混合したものを、本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0058】
[実施例14]
実施例4で得た酸化澱粉及びカルボキシメチルセルロースである第一工業製薬(株)製の「セロゲンF−930A(商品名)」を、5:1(質量比)の割合で混合したものを、本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0059】
[実施例15]
実施例5で得た酸化澱粉及びカルボキシメチルセルロースである第一工業製薬(株)製の「セロゲンF−930A(商品名)」を、5:1(質量比)の割合で混合したものを、本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0060】
[実施例16]
実施例5で得た酸化澱粉に水を加えて40質量%の澱粉スラリーを調製し、35℃、350rpmの条件で撹拌しながら、酸(9質量%塩酸水溶液)及びアルカリ(3質量%水酸化ナトリウム水溶液)を添加してpH8.6に調整した。この澱粉スラリーに、対澱粉濃度が1.0質量%となる量の無水酢酸を180分間かけて添加した後、10分間アセチル化反応させた。反応終了後、pHを5.5に調整し、#250メッシュ篩で不純物を除去した後、水洗浄・脱水・乾燥を行ってアセチル化酸化澱粉を得た。このアセチル化酸化澱粉を本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0061】
[実施例17]
無水酢酸の対澱粉濃度を8.5質量%とした以外は、実施例16と同様にして、アセチル化酸化澱粉を得た。このアセチル化酸化澱粉を本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0062】
[実施例18]
無水酢酸の対澱粉濃度を12.5質量%とした以外は、実施例16と同様にして、アセチル化酸化澱粉を得た。このアセチル化酸化澱粉を本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0063】
[実施例19]
無水酢酸の対澱粉濃度を16.5質量%とした以外は、実施例16と同様にして、アセチル化酸化澱粉を得た。このアセチル化酸化澱粉を本実施例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0064】
[比較例1]
前記澱粉スラリーのpHを4に調整・維持し、前記澱粉スラリーに、対澱粉濃度が550ppmとなる量の前記次亜塩素酸ナトリウムを添加した以外は、実施例1と同様にして、酸化澱粉を得た。この酸化澱粉を、本比較例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0065】
[比較例2]
タピオカに代えてワキシーコーンスターチを用い、前記澱粉スラリーのpHを4に調整・維持し、前記澱粉スラリーに、対澱粉濃度が550ppmとなる量の前記次亜塩素酸ナトリウムを添加した以外は、実施例1と同様にして、酸化澱粉を得た。この酸化澱粉を、本比較例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0066】
[比較例3]
未加工のタピオカであるAsia Modified Starch Co., Ltd.製の「TAPIOCA STARCH(商品名)」を、本比較例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0067】
[比較例4]
未加工のワキシーコーンスターチである日本食品化工(株)製の「日食ワキシースターチY(商品名)」を、本比較例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0068】
[比較例5]
タピオカに代えてワキシーコーンスターチを用い、前記澱粉スラリーのpHを10に調整・維持し、前記澱粉スラリーに、対澱粉濃度が772ppmとなる量の前記次亜塩素酸ナトリウムを添加した以外は、実施例1と同様にして、酸化澱粉を得た。この酸化澱粉を、本比較例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0069】
[比較例6]
水溶性大豆多糖類である不二製油(株)製の「ソヤファイブ(商品名)」を、本比較例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0070】
[比較例7]
クラスターデキストリンである日本食品化工(株)製の「クラスターデキストリン(商品名)」を、本比較例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0071】
[比較例8]
ペクチンであるCP Kelco社製の「YM−115−LJ(商品名)」を、本比較例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0072】
[比較例9]
カルボキシメチルセルロースである第一工業製薬(株)製の「セロゲンF−930A(商品名)」を、本比較例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0073】
[比較例10]
リン酸一ナトリウム85質量部を水100質量部に溶解させて薬液を調製した。ワキシーコーンスターチ1000質量部をサイレントカッターに加え、3000rpmで撹拌を行いながら薬液を滴下した。滴下終了後、サイレントカッターによる撹拌を1分間継続させ、ワキシーコーンスターチに薬液を十分に混合させた。このようにして得た澱粉を乾燥機にて水分が5質量%以下になるまで乾燥させ、150℃で10分焙焼した。これを10倍量の50質量%メタノールにより洗浄した後、さらに95質量%エタノールにより洗浄し、リン酸化澱粉を得た。得られたリン酸化澱粉の結合リン含量は、0.25質量%、10%・30℃での粘度は、2330mPa・s、外観は、白色であった。前記結合リン含量は、平成20年10月1日掲載の官報号外第216号の第30〜35頁に記載の下記方法で測定した。このリン酸化澱粉を、本比較例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0074】
結合リン含量測定方法
(リン酸化澱粉の分解)
試料としてリン酸化澱粉を10g精密に量り、蒸発皿に入れ、酢酸亜鉛試液10mLを試料に均一になるように加えた。ホットプレート上で注意しながら蒸発乾固させ、温度を上げて炭化させた。その後、電気炉に入れ、炭化物が無くなるまで、550℃で1〜2時間加熱した。
【0075】
これを冷却した後に、水15mLを加え、器壁を硝酸(1→3)5mLで洗い込んだ。加熱して沸騰させ、冷却後200mLのメスフラスコに移し、蒸発皿を水20mLずつで3回洗い、洗液を合わせ、水を加えて200mLとした。この液中のリンが1.5mgを超えない一定量VmLを正確に量り、100mLのメスフラスコに入れ、硝酸(1→3)10mL、バナジン酸試液10mL、モリブデン酸アンモニウム試液10mLを十分に混合しながら加え、水を加えて正確に100mLとし、10分間放置した後に検液とした。
【0076】
別に、リン酸−カリウム標準液10mLを正確に量り、水を加えて正確に100mLとした。この液5、10、15mLを正確に量り、それぞれ100mLのメスフラスコに入れ、それぞれのフラスコに、硝酸(1→3)10mL、バナジン酸試液10mL及びモリブデン酸アンモニウム試液10mLを混合し、水を加えて正確に100mLとし、10分間放置した液を対照液とし、検液及び標準液の波長460nmにおける吸光度を測定し、得られた検量線から検液中のリン濃度を求め、下記式により結合リン含量を算出した。

結合リン含量(%)=(検液中のリン濃度(mg/mL)×2000)/(V×乾燥物換算した試料の採取量(g))

【0077】
[比較例11]
焙焼時間を80分とした以外は、比較例10と同様にして、リン酸化澱粉を得た。得られたリン酸化澱粉の結合リン含量は、0.68質量%、10%・30℃での粘度は、500mPa・s、外観は、茶褐色であった。前記結合リン含量は、比較例10と同様にして測定した。このリン酸化澱粉を、本比較例の蛋白質含有飲食品用分散剤とした。
【0078】
(乳蛋白質含有酸性飲料の調製)
実施例1〜19及び比較例1〜11の蛋白質含有飲食品用分散剤を用いて、乳蛋白質含有酸性飲料を調製した。すなわち、まず、脱脂粉乳1質量部、結晶フラクトース4質量部、結晶ブドウ糖3質量部を常温水50質量部に加えて撹拌・溶解した。また、実施例1〜19又は比較例1〜11の蛋白質含有飲食品用分散剤0.005〜3.00質量部(表2及び表3参照)を常温水20質量部に加えて、85℃で10分間撹拌・溶解させた後、常温まで冷却した。これら2液を20〜30℃にて混合し、10質量%クエン酸水溶液を滴下してpHを5.5に調整した。その後、10質量%クエン酸水溶液の滴下を再開し、pHを3.5に調整した後、水を加えて全量を100質量部とした。このようにして得られた液を均質機により均質化(第一段階圧力150×10Pa、第二段階圧力0Pa)した後、85℃で30分間保持して殺菌し、37℃で10日間保存して乳蛋白質含有酸性飲料を得た。
【0079】
(沈澱量評価)
前記調製方法により得た乳蛋白質含有酸性飲料における沈澱の有無及び沈澱の量を、目視により確認し、下記評価基準に従って評価した。
【0080】
沈澱量評価 評価基準
S:沈澱がほとんど見られなかった
A:少量の沈澱が見られた
B:沈澱が見られた
C:多量の沈澱が見られた
D:沈澱が多く上清と分離した
【0081】
(着色評価)
前記調製方法により得た乳蛋白質含有酸性飲料の着色の程度を、つぎの手法で確認した。すなわち、乳蛋白質含有酸性飲料をガラスセルに5mL取り、色差計(商品名:spectrophotometerSE2000、日本電色工業(株)製)を用いて分光データ(波長360〜750nm)を測定し、得られたデータをL表色系に変換して得られたb値を着色の評価基準とした。
【0082】
(食感評価)
前記調製方法により得た乳蛋白質含有酸性飲料の食感を、つぎの手法で確認した。すなわち、乳蛋白質含有酸性飲料を20mL程度取り、官能評価により食感(のどごし、舌触り)について、下記評価基準に従って評価した。食感評価の結果は、5人の官能評価結果の平均点とした。
【0083】
食感評価 評価基準
1点:さらりとして粘度(ボディ感)が無かった
2点:粘度(ボディ感)が少なかった
3点:粘度(ボディ感)があった
4点:やや強い粘度(ボディ感)があった
5点:強い粘度(ボディ感)があった
【0084】
(保存試験評価)
脱脂粉乳1質量部を水に置換したこと、及び殺菌後4℃で10日間保存したこと以外は前記調製方法と同様にして得た乳蛋白質含有酸性飲料における沈澱の有無及び沈澱の量を、目視により確認し、下記評価基準に従って評価した。この保存試験評価の結果が良好であれば、蛋白質含有飲食品用分散剤中の酸化澱粉が老化し難く、前記酸化澱粉のハンドリングに優れていると判断できる。
【0085】
保存試験評価 評価基準
S :沈澱がほとんど見られなかった
AA:少量の沈澱が見られた
A :沈澱が多く上清と分離した
【0086】
(大豆蛋白評価)
脱脂粉乳を大豆蛋白としたこと以外は前記調製方法と同様にして得た蛋白質含有酸性飲料について、前述と同様にして、沈澱評価、着色評価、食感評価及び保存試験評価を実施した。
【0087】
実施例1〜9、16〜19及び比較例1〜5における原資澱粉、酸化反応条件及び酸化澱粉(比較例3及び4においては原資澱粉)の物性を、下記表1に示す。また、実施例1〜19の評価結果を、下記表2に示す。さらに、比較例1〜11及び蛋白質含有飲食品用分散剤を用いずに乳蛋白質含有酸性飲料を調製したブランクの評価結果を、下記表3に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【0091】
前記表2に示すとおり、実施例1〜19では、沈澱量評価、着色評価、食感評価及び保存試験評価の全ての結果が良好であった。酸化澱粉の10質量%糊液の粘度が、35mPa・s以下である実施例1〜8及び10〜15では、食感評価の結果が特に優れていた。また、酸化澱粉の10質量%糊液冷解凍試験後における波長620nmにおける吸光度が、1以下である実施例1〜6では、保存試験評価の結果が優れていた。さらに、酸化澱粉がアセチル化酸化澱粉である実施例16〜19では、酸化澱粉の10質量%糊液冷解凍試験後における波長620nmにおける吸光度が0.04と小さく、保存試験評価の結果が特に優れていた。
【0092】
一方、前記表3に示すとおり、カルボキシル基含量が0.4質量%未満又は1.3質量%を超える比較例1、2及び5では、沈澱量評価の結果が悪かった。また、原資澱粉を酸化させずに用いた比較例3及び4でも、沈澱量評価の結果が悪かった。
【0093】
水溶性大豆多糖類を用いた比較例6では、水溶性大豆多糖類の添加量が0.10質量%以下で、沈澱量評価の結果が悪く、水溶性大豆多糖類の添加量が0.20質量%以上で、b値が−6以上となり着色評価の結果が悪かった。また、水溶性大豆多糖類の添加量が0.20質量%以上では、水溶性大豆多糖類由来の異味・異臭が感じられた。クラスターデキストリンを用いた比較例7では、沈澱量評価の結果が悪かった。ペクチン又はカルボキシメチルセルロースを用いた比較例8及び9では、添加量0.10質量%で、沈澱量評価の結果が悪く、添加量0.40質量%で、食感評価の結果が悪く、添加量0.50質量%では、ゾル状となり飲料とならなかった。また、蛋白質含有飲食品用分散剤を用いなかったブランクでは、沈澱量評価の結果が悪かった。
【0094】
リン酸化澱粉を用いた比較例10及び11では、焙焼時間の短い比較例10で、飲料の体をなさず、焙焼時間の長い比較例11で、b値が−6以上となり着色評価の結果が悪く、食感評価の結果も悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上のように、本発明の蛋白質含有飲食品用分散剤は、安価で、飲食品に対して着色、異味・異臭及び食感の低下を生じることなく、蛋白質粒子の凝集、沈澱、相分離を防止又は抑制可能なものである。本発明の蛋白質含有飲食品用分散剤の用途は、特に限定されず、種々の蛋白質含有飲食品に広く適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛋白質含有飲食品中の蛋白質を分散させる蛋白質含有飲食品用分散剤であって、
カルボキシル基含量が0.4〜1.3質量%の範囲である酸化澱粉を含むことを特徴とする蛋白質含有飲食品用分散剤。
【請求項2】
30℃±1℃で測定した前記酸化澱粉の10質量%糊液の粘度が、35mPa・s以下である請求項1記載の蛋白質含有飲食品用分散剤。
【請求項3】
前記酸化澱粉の10質量%糊液冷解凍試験後における波長620nmにおける吸光度が、1以下である請求項1又は2記載の蛋白質含有飲食品用分散剤。
【請求項4】
前記酸化澱粉が、アセチル化酸化澱粉である請求項1から3のいずれか一項に記載の蛋白質含有飲食品用分散剤。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の蛋白質含有飲食品用分散剤を含むことを特徴とする蛋白質含有飲食品。
【請求項6】
前記蛋白質含有飲食品全量に対する前記酸化澱粉の配合割合が、0.005〜3質量%の範囲である請求項5記載の蛋白質含有飲食品。
【請求項7】
前記蛋白質が、乳及び大豆の少なくとも一方に由来する蛋白質を含む請求項5又は6記載の蛋白質含有飲食品。
【請求項8】
さらに、水溶性大豆多糖類、ペクチン及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも一種の分散剤を含む請求項5から7のいずれか一項に記載の蛋白質含有飲食品。
【請求項9】
酸性飲料である、請求項5から8のいずれか一項に記載の蛋白質含有飲食品。

【公開番号】特開2013−46605(P2013−46605A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−50927(P2012−50927)
【出願日】平成24年3月7日(2012.3.7)
【特許番号】特許第5073860号(P5073860)
【特許公報発行日】平成24年11月14日(2012.11.14)
【出願人】(000231453)日本食品化工株式会社 (68)
【Fターム(参考)】