融合タンパク質
【課題】非細胞傷害性融合タンパク質の構築系を別に見出すまたは改善すること。
【解決手段】侵害受容感覚求心性神経細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る非細胞傷害性プロテアーゼまたはフラグメント;エンドサイトーシスを受けて該侵害受容感覚求心性神経細胞内のエンドソームに取り込まれ得る、該侵害受容感覚求心性神経細胞上の結合部位に結合し得るターゲティング部分;該非細胞傷害性プロテアーゼまたはフラグメントと該ターゲティング部分との間に位置しているプロテアーゼ切断部位;およびエンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性神経細胞のサイトゾルへと該プロテアーゼまたはフラグメントをトランスロケートさせ得るトランスロケーションドメインを含む、単鎖ポリペプチド融合タンパク質。
【解決手段】侵害受容感覚求心性神経細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る非細胞傷害性プロテアーゼまたはフラグメント;エンドサイトーシスを受けて該侵害受容感覚求心性神経細胞内のエンドソームに取り込まれ得る、該侵害受容感覚求心性神経細胞上の結合部位に結合し得るターゲティング部分;該非細胞傷害性プロテアーゼまたはフラグメントと該ターゲティング部分との間に位置しているプロテアーゼ切断部位;およびエンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性神経細胞のサイトゾルへと該プロテアーゼまたはフラグメントをトランスロケートさせ得るトランスロケーションドメインを含む、単鎖ポリペプチド融合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非細胞傷害性融合タンパク質および鎮痛分子としてのその治療的適用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、毒素は、標的細胞に対して有する効果のタイプに従って2つの群に分けられ得る。より詳細には、第一の毒素群は、それらの天然の標的細胞を殺傷し、このため、細胞傷害性毒素分子として知られる。この毒素群は、とりわけ、植物毒素(例えば、リシンおよびアブリン)および細菌毒素(例えば、ジフテリア毒素およびシュードモナス外毒素A)によって例示される。細胞傷害性毒素は、細胞性障害および状態(例えば、癌)の治療のために「魔法の弾丸」(例えば、免疫結合体;これは、細胞傷害性毒素構成部分と標的細胞上の特異的マーカーに結合する抗体とを含む)の設計に多くの関心をひきつけている。細胞傷害性毒素は、代表的には、タンパク質合成の細胞プロセスを阻害することにより、それらの標的細胞を殺傷する。
【0003】
第二の毒素群は、非細胞傷害性毒素として知られ、(これらの名称が証明するとおり)それらの天然の標的細胞を殺傷しない。非細胞傷害性毒素は、それらの細胞傷害性のものほどには商業上の関心をひきつけず、そしてタンパク質合成以外の細胞プロセスを阻害することにより、標的細胞に対してそれらの効果を発揮する。非細胞傷害性毒素は、種々の植物および種々の微生物(例えば、Clostridium sp.およびNeisseria sp.)から生成される。
【0004】
クロストリジウム神経毒素は、代表的には150kDaの程度の分子量を有するタンパク質である。それらは、種々の細菌種、特に、クロストリジウム属の細菌、最も重要にはC. tetaniおよびC. botulinumの数株、C. butyricum、およびC. argentinenseによって生成される。現在、クロストリジウム神経毒素の8つの異なるクラスが存在し(すなわち、破傷風菌毒素およびボツリヌス菌神経毒素(その血清型A、B、C1、D、E、FおよびG))、そしてそれらは全て、類似の構造および作用様式を共有する。
【0005】
クロストリジウム神経毒素は、非細胞傷害性毒素分子の主要な群を代表し、そして単一ポリペプチドとして宿主細菌によって合成され、この単一ポリペプチドは、タンパク質分解切断事象によって翻訳後修飾されて、ジスルフィド結合によって互いに結合された2つのポリペプチド鎖を形成する。これらの2つの鎖は、重鎖(H鎖)(これは、約100kDaの分子量を有する)および軽鎖(L鎖)(これは、約50kDaの分子量を有する)と称される。
【0006】
L鎖は、プロテアーゼ機能(亜鉛依存性エンドペプチダーゼ活性)を有し、そしてエキソサイトーシスプロセスに関与する小胞および/または原形質膜会合タンパク質に対する高い基質特異性を示す。異なるクロストリジウム種または血清型に由来するL鎖は、3つの基質タンパク質(すなわち、シナプトブレビン、シンタキシン、またはSNAP−25)の1つにおいて、異なるが特定のペプチド結合を加水分解し得る。これらの基質は、神経分泌機構の重要な構成部分である。
【0007】
Neisseria sp.(N. gonorrhoeaeの種の中から最も重要である)は、機能的に類似する非細胞傷害性プロテアーゼを生産する。このようなプロテアーゼの一例は、IgAプロテアーゼである(WO99/58571を参照のこと)。
【0008】
毒素分子が、その毒素の天然の標的細胞ではない細胞にリターゲティングされ得ることが当該分野において十分に書き記されている。そのようにリターゲティングされたとき、改変毒素は、所望の標的細胞に結合し得、そしてそれに続くサイトゾルへのトランスロケーション後、標的細胞にその効果を発揮し得る。該リターゲティングは、毒素の天然のターゲティング部分(TM)を異なるTMと置き換えることによって達成される。これに関して、TMは、それが所望の標的細胞に結合し、そして標的細胞内のエンドソームへの改変毒素の引き続く通過を可能にするように選択される。改変毒素はまた、非細胞傷害性プロテアーゼの細胞サイトゾルへの侵入を可能にするトランスロケーションドメインを含む。このトランスロケーションドメインは、毒素の天然のトランスロケーションドメインであり得るか、またはトランスロケーション活性を有する微生物タンパク質から得られる別のトランスロケーションドメインであり得る。
【0009】
例えば、WO94/21300は、改変クロストリジウム神経毒素分子を記載しており、この分子は、標的細胞の細胞表面に存在する膜貫通タンパク質(IMP)密度を調節し得る。したがって、この改変神経毒素分子は、標的細胞の細胞活性(例えば、グルコース取り込み)を制御し得る。WO96/33273およびWO99/17806は、末梢感覚求心性神経をターゲティングする改変クロストリジウム神経毒素分子を記載している。したがって、この改変神経毒素分子は、鎮痛効果を示し得る。WO00/10598は、粘液過分泌細胞(または該粘液過分泌細胞を制御する神経細胞)をターゲティングする改変クロストリジウム神経毒素分子の調製を記載している。この改変神経毒素は、該細胞からの過分泌を阻害し得る。WO01/21213は、広範な異なるタイプの非神経細胞標的細胞をターゲティングする改変クロストリジウム神経毒素分子を記載している。したがって、この改変分子は、標的細胞からの分泌を妨害し得る。リターゲティングされる毒素分子の技術分野におけるさらなる刊行物としては、以下が挙げられる:WO00/62814;WO00/04926;US5,773,586;WO93/15766;WO00/61192;およびWO99/58571。
【0010】
上記TM置換は、当業者に周知の従来の化学的結合体化技術によって行われ得る。これに関して、Hermanson, G.T. (1996), Bioconjugate techniques, Academic Press, およびWong, S.S. (1991), Chemistry of protein conjugation and cross-linking, CRC Pressに言及されている。
【0011】
しかし、化学的結合体化は、しばしば不正確である。例えば、結合体化によって、TMは、1つより多くの付着部位でその結合体の残りの部分に結合され得る。
【0012】
また、化学的結合体化は制御するのが困難である。例えば、TMは、プロテアーゼ構成部分および/またはトランスロケーション構成部分上の付着部位で改変毒素の残りの部分に結合され得る。これは、該構成部分の一方のみへの(好ましくは単一の部位での)付着が治療効力のために望まれる場合、問題となる。
【0013】
したがって、化学的結合体化は、改変毒素分子の混合集団を生じ、これは望ましくない。
【0014】
化学的結合体化の代替として、単一ポリペプチド融合タンパク質の組換え調製によってTM置換が行われ得る(WO98/07864を参照のこと)。この技術は、天然型クロストリジウム神経毒素(すなわち、ホロ毒素)が調製されるインビボの細菌機構に基づいており、そして以下の構造配置を有する融合タンパク質を生じる:
NH2−[プロテアーゼ構成部分]−[トランスロケーション構成部分]−[TM]−COOH
【0015】
WO98/07864によれば、TMは、融合タンパク質のC末端の方に配置される。次いで、この融合タンパク質がプロテアーゼでの処理によって活性化される。このプロテアーゼは、プロテアーゼ構成部分とトランスロケーション構成部分との間の部位で切断する。したがって、二本鎖のタンパク質が生成される。この二本鎖タンパク質は、TMを加えたトランスロケーション構成部分を含む別のポリペプチド単鎖に(ジスルフィド架橋を介して)共有結合されたポリペプチド単鎖としてプロテアーゼ構成部分を含む。WO98/07864の方法は、(融合タンパク質の構造配置の点で)クロストリジウムホロ毒素の天然発現系に従うが、本発明者らは、この系が、意図した標的細胞に対する結合能が実質的に減少されたある種の融合タンパク質の生成を生じ得ることを見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、非細胞傷害性融合タンパク質の構築系を別に見出すか、または改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、以下を含む単鎖ポリペプチド融合タンパク質を提供することによって、上記の問題点の1つ以上を解消している。単鎖ポリペプチド融合タンパク質は、
a.非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントであって、侵害受容感覚求心性神経細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る、プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメント;
b.該侵害受容感覚求心性神経細胞上の結合部位に結合し得るターゲティング部分であって、該結合部位が、エンドサイトーシスを受けて該侵害受容感覚求心性神経細胞内のエンドソームに取り込まれ得る、ターゲティング部分;
c.プロテアーゼ切断部位であって、該部位でプロテアーゼにより該融合タンパク質が切断され得、該プロテアーゼ切断部位が、該非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントと該ターゲティング部分との間に位置している、プロテアーゼ切断部位;および
d.トランスロケーションドメインであって、エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性神経細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをトランスロケートさせ得る、トランスロケーションドメイン
を含む。
【0018】
WO98/07864の系は、標的細胞上の結合部位との相互作用のためにC末端ドメインを必要とするTMを有する結合体の調製のために十分に作用している。これに関して、WO98/07864は、標的細胞上の結合部位と相互作用するのに「フリー」であるC末端ドメインを有する融合タンパク質を提供している。本発明者らは、この構造配置が全てのTMに適しているわけではないことを見出した。TMの1つのこのようなカテゴリーは、侵害受容感覚求心性神経細胞に結合するTM群である。より詳細には、本発明者らは、WO98/07864の融合タンパク質系は、侵害受容感覚求心性神経細胞上の結合部位と相互作用するためにN末端側ドメインを必要とするTMには最適ではないことを見出した。特に、この問題点は、侵害受容感覚求心性神経細胞上の結合部位と相互作用するために、特定のN末端アミノ酸残基またはこの特定のN末端アミノ酸残基を含むアミノ酸残基からなる特定配列を必要とするTMにとって重大である。
【0019】
WO98/07864とは対照的に、本発明は、結合体のTM構成部分が、TMの内部ドメインまたは中間部の方に位置している(すなわち、直鎖状ペプチド配列の)アミノ酸配列、好ましくはTMのN末端の方に位置しているアミノ酸配列、より好ましくはN末端にまたはその付近に位置しているアミノ酸配列内に、関連結合ドメインを含む、非細胞傷害性結合体を調製するためのシステムを提供する。N末端側ドメインは、侵害受容感覚求心性神経細胞上の結合部位に結合し得、そしてTMは、好ましくは、アミノ酸残基の特定の所定の配列がそのN末端で「フリー」であるとの要件を有している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の精製を示す。
【図2】ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の精製を示す。
【図3】LC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の精製を示す。
【図4】LC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質の精製を示す。
【図5】LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質とノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質との結合効力の比較を示す。
【図6】LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ触媒活性を示す。
【図7】LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の精製を示す。
【図8】LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質とLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質との結合効力の比較を示す。
【図9】可変スペーサー長産物を有する発現/精製LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質ファミリーを示す。
【図10】CPN−AによるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断を示す。
【図11】CPN−AへのDRGの曝露後長期間にわたるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断を示す。
【図12】CPNv−AによるSNAP−25の切断を示す。
【図13】CPNv−AへのDRGの曝露後長期間にわたるSNAP−25の切断を示す。
【図14】[3H]−ノシセプチン結合のCPNv−A融合物媒介置換を示す。
【図15】発現/精製CPNv(Ek)−A産物を示す。
【図16】CPNv(Ek)−AによるSNAP−25の切断を示す。
【図17】発現/精製CPNv−C産物を示す。
【図18】CPNv−Cによるシンタキシンの切断を示す。
【図19】急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPN−A効力を示す。
【図20】ストレプトゾトシン(STZ)誘発末梢糖尿病性神経障害(神経因性疼痛)モデルにおけるCPN−A効力を示す。
【図21】急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPNv−A効力を示す。
【図22】発現/精製LC/A−CPLE−HN/A産物を示す。
【図23】発現/精製LC/A−CPBE−HN/A産物を示す。
【図24】発現/精製CPOP−A産物を示す。
【図25】発現/精製CPOPv−A産物を示す。
【図26】DRG細胞モデルにおけるインビトロSNAP−25切断を示す。
【図27】発現/精製CPNv−A−FXa−HT(取り外し可能hisタグ)を示す。
【図28】リガンド競合アッセイにより評価した可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力を示す。
【図29】インビトロSNAP−25切断により評価した可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分は、非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントであり、このプロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントは、侵害受容感覚求心性神経細胞のエキソサイトーシス融合器官の3つの基質タンパク質、すなわち、シナプトブレビン、シンタキシン、またはSNAP−25の1つにおいて、異なるが特定のペプチド結合を切断し得る。これらの基質は、神経分泌機構の重要な構成部分である。本発明の非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分は、好ましくは、ナイセリアIgAプロテアーゼもしくはそのフラグメントまたはクロストリジウム神経毒素L鎖もしくはそのフラグメントである。特に好ましい非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分は、ボツリヌス神経毒素(BoNT)L鎖またはそのフラグメントである。
【0022】
本発明のトランスロケーション構成部分は、プロテアーゼ活性の機能的発現が標的細胞のサイトゾル内で生じるように、標的細胞への非細胞傷害性プロテアーゼ(またはそのフラグメント)のトランスロケーションを可能にする。トランスロケーション構成部分は、好ましくは、低pH条件下で脂質膜中にイオン透過孔を形成し得る。好ましくは、エンドソーム膜内の孔形成が可能なタンパク質分子の部分のみを使用することが見出されている。トランスロケーション構成部分は、微生物タンパク質供給源(特に、細菌またはウイルスタンパク質供給源)から得られ得る。したがって、1つの実施態様では、トランスロケーション構成部分は、細菌毒素またはウイルスタンパク質のような酵素のトランスロケーションドメインである。本発明のトランスロケーション構成部分は、好ましくは、クロストリジウム神経毒素H鎖またはそのフラグメントである。最も好ましくは、それは、HNドメイン(またはその機能的構成部分)である。HNは、H鎖のアミノ末端側半分にほぼ等価なクロストリジウム神経毒素のH鎖の一部またはフラグメント、または完全なH鎖中のそのフラグメントに対応するドメインを意味する。
【0023】
本発明のTM構成部分は、本発明の結合体の標的細胞上の結合部位への結合を担う。したがって、TM構成部分は、単に、選択された標的細胞に対して本発明の結合体が結合するリガンドである。
【0024】
本発明においては、標的細胞は、侵害受容感覚求心性神経細胞、好ましくは、一次侵害受容求心性神経細胞(例えば、A線維(例えば、Aδ線維)またはC線維)である。したがって、本発明の結合体は、侵害受容感覚求心性神経細胞の分離した集団からの神経伝達物質または神経調節物質[例えば、グルタミン酸塩、サブスタンスP、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、および/またはニューロペプチドY]の放出を阻害し得る。使用に際して、結合体は、末梢から中枢疼痛線維への感覚求心性シグナル(例えば、神経伝達物質または神経調節物質)の伝達を減少または妨害し、したがって、疼痛(特に慢性疼痛)の治療用の治療分子としての適用を有する。
【0025】
TMが侵害受容感覚求心性神経細胞に結合することを確認することは通常の技術によってなされる。例えば、侵害受容感覚求心性神経細胞の代表となる組織または細胞(例えば、DRG)が、過剰な非標識リガンドの存在下で標識(例えば、トリチウム化)リガンドに曝露される簡単な放射能置換実験が、用いられ得る。このような実験において、非特異的結合および特異的結合の相対的割合を求め、それにより、リガンドが侵害受容感覚求心性神経標的細胞に結合することの確認が可能になり得る。必要に応じて、アッセイは、1つ以上の結合アンタゴニストを含み得、そしてこのアッセイは、リガンド結合の喪失を観察する工程をさらに含み得る。このタイプの実験の例は、Hulme, E.C. (1990), Receptor-binding studies, 概要, 303〜311頁, Receptor biochemistry, A Practical Approach, E.C. Hulme編, Oxford University Pressに見出され得る。
【0026】
本発明の融合タンパク質は、概して、対応する「フリー」なTMと比較した場合、侵害受容感覚求心性神経標的細胞に対して(100倍までの範囲で)低下した結合親和性を示している。しかし、この観察にも関わらず、本発明の融合タンパク質は、驚くべきことに、良好な効力を示している。これは、2つの主要な特徴に帰するものであり得る。第一に、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分は、触媒性である。したがって、少数のこのような分子の治療効果が迅速に増幅される。第二に、侵害受容感覚求心性神経細胞上に存在するレセプターは、治療剤の侵入のための出入口としてのみ作用する必要があり、必ずしもリガンド−レセプター媒介薬理学的応答を達成するために必要とされるレベルまで刺激される必要はない。したがって、本発明の融合タンパク質は、他のタイプの鎮痛分子(例えば、NSAIDS、モルヒネ、およびガバペンチン)について用いられるよりもずっと低い投薬量で投与され得る。後者のタイプの分子は、代表的には、高マイクログラムからミリグラム(数百ミリグラムまででさえある)量で投与される。これに対して、本発明の融合タンパク質は、ずっとより低い投薬量(代表的には少なくとも10倍低く、そしてより代表的には100倍低い)で投与され得る。
【0027】
TMは、好ましくは最大で50アミノ酸残基、より好ましくは最大で40アミノ酸残基、特に好ましくは最大で30アミノ酸残基、そして最も好ましくは最大で20アミノ酸残基を含む。
【0028】
オピオイドは、本発明のTMの好ましい群を代表する。このペプチドファミリー内には、エンケファリン(metおよびleu)、エンドモルフィン1および2、β−エンドルフィンおよびダイノルフィンが含まれる。オピオイドペプチドは、侵害受容器および疼痛応答に関与する他の細胞に対する活性を改変するために、臨床で頻繁に使用されている。世界保健機構の三段階徐痛ラダー(three-step World Health Organisation Analgesic Ladder)によって例示されるように、オピオイドは、全ての三段階で慢性癌および非癌性の疼痛の薬理治療への進入点を有し、このことが、疼痛の治療に対するそれらの重要性の根底にある。オピオイドという場合、侵害受容感覚求心性神経細胞に結合する能力を保持する限り、それらのフラグメント、改変体、および誘導体も包含する。
【0029】
本発明のTMはまた、侵害受容感覚求心性神経細胞、より特定すると一次侵害受容求心性神経細胞上に存在するレセプターの1つ以上で「アゴニスト」として作用する分子であり得る。従来、アゴニストは、細胞内で活性を増大または減少のいずれかを行い得る任意の分子、すなわち、単に細胞活性の変化を引き起こす任意の分子であると考えられてきた。例えば、アゴニストの従来の意味は、細胞上のレセプターと結合して反応または活性を開始させ得る化学物質、またはレセプターの活性化により活性な応答(その応答が細胞活性の増大または減少のいずれであっても)を誘発する薬物を含み得た。
【0030】
しかし、本発明の目的では、アゴニストは、標的細胞におけるエキソサイトーシス融合のプロセスを刺激し得る分子であるとしてより特定して定められる。このプロセスは、該標的細胞におけるエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得るプロテアーゼ(またはそのフラグメント)による阻害を受けやすい。
【0031】
したがって、本発明のアゴニストの特別な定義は、アゴニストとして従来考えられてきた多くの分子を排除し得る。例えば、神経成長因子(NGF)は、TrkAレセプターへの結合を介して神経細胞分化を促進する能力の点でアゴニストである。しかし、NGFは、エキソサイトーシス融合の主要となる誘発因子ではないので、上記基準によって評価する場合アゴニストではない。さらに、NGFが刺激するプロセス(すなわち、細胞分化)は、非細胞傷害性毒素分子のプロテアーゼ活性による阻害を受けにくい。
【0032】
侵害受容求心性神経細胞上のレセプターに結合するTMのアゴニスト特性は、実施例10に記載の方法を用いて確認され得る。
【0033】
本発明の好ましい実施態様では、TMの標的はORL1レセプターである。このレセプターは、Gタンパク質結合クラスのレセプターのメンバーであり、そして7回膜貫通ドメイン構造を有する。ORL1レセプターの特性は、MogilおよびPasternak (2001), Pharmacological Reviews, 53巻, 3号, 381-415頁に詳細に考察されている。
【0034】
1つの実施態様では、TMは、ORL1レセプターに結合する(好ましくは特異的に結合する)分子である。より好ましくは、TMは、ORL1レセプターの「アゴニスト」である。この文脈での用語「アゴニスト」は、上で定義したとおりである。
【0035】
ORL1レセプターに結合するTMのアゴニスト特性は、実施例10に記載の方法を用いて確認され得る。これらの方法は、以前の実験(Inoueら, 1998 [Proc. Natl. Acad. Sci., 95, 10949-10953]を参照のこと)に基づいており、ORL1レセプターの天然アゴニストであるノシセプチンが、一次侵害受容求心性神経細胞からのサブスタンスP放出の誘発を引き起こすことを確認している。これは、以下の事実によって支持されている:
ノシセプチン誘発応答は、特異的NK1レセプター(サブスタンスPレセプター)アンタゴニストによって撤廃される;および
カプサイシンでの細胞の前処理(直径の小さい一次求心性神経細胞からサブスタンスPを枯渇させる)によって、ノシセプチン誘発応答は減弱する。
【0036】
同様に、Inoueらは、ボツリヌス菌神経毒素A型の足底内への注射によりノシセプチン誘発応答が撤廃されることを確認している。BoNTが、一次求心性神経細胞からのサブスタンスPの放出を阻害することが公知である(Welchら, 2000, Toxicon, 38, 245-258)ので、これにより、ノシセプチン−ORL1相互作用とそれに続くサブスタンスPの放出との間の関係が確認される。
【0037】
したがって、TMは、それが侵害受容感覚求心性神経細胞からのサブスタンスPの放出において誘発を引き起こすのであれば、ORL1レセプターにアゴニスト活性を有するとされ得る(実施例10を参照のこと)。
【0038】
本発明の特に好ましい実施態様では、TMは、ノシセプチン(ORL1レセプターの天然リガンド)である。ノシセプチンは、高い親和力でORL1レセプターをターゲティングする。他の好ましいTMの例は、以下を含む:
【0039】
【数1】
【0040】
[1] MogilおよびPasternak, 2001, Pharmacol. Rev., 53, 381-415
[2] Maileら, 2003, Neurosci. Lett., 350, 190-192
[3] Rizziら, 2002, J. Pharmacol. Exp. Therap., 300, 57-63
[4] Okadaら, 2000, Biochem. Biophys. Res. Commun., 278, 493-498
[5] Dooleyら, 1997, J Pharmacol Exp Ther. 283(2), 735-41。
【0041】
上記「改変体」TMは、侵害受容感覚求心性神経細胞に対して特に良好な結合親和性(天然ノシセプチンと比較した場合)を示している。これは、そのアミノ酸改変がTMのN末端から離れた位置で生じているので、驚くべきことである。さらに、改変は、TMのほぼC末端にあり、続いて、大きなポリペプチド配列(すなわち、トランスロケーションドメイン)が付着されている。一般的にいえば、TM含有融合タンパク質は、TMそれ自体と比較してほぼ100倍の結合能の低下を示す。上記「改変体」TMそれ自体は、天然ノシセプチンと比較して、(例えば、ORL1レセプターを介する)侵害受容感覚求心性神経細胞に対する結合能の約3〜10倍の増大を示す。したがって、「改変体」TM含有融合物は、「フリー」ノシセプチンと比較して、(例えば、ORL1レセプターを介する)侵害受容感覚求心性神経細胞に対する結合能の約10倍の減少を示すと予想され得る。しかし、本発明者らは、このような「改変体」TM含有融合タンパク質が、(最も驚くべきことに)「フリー」ノシセプチンの結合能を密に反映している結合能を示すことを実証した−図14を参照のこと。
【0042】
本発明においては、オピオイドまたはORL1レセプターのアゴニスト(例えば、ノシセプチンまたは上記表中に列挙したペプチドのいずれか)との用語は、該オピオイドまたはアゴニストと少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%の相同性を有する分子を包含する。アゴニストホモログは、ORL1レセプターでノシセプチンのアゴニスト特性を保持し、これは、実施例10に提供する方法を用いて調べられ得る。同様に、オピオイドホモログは、オピオイドの結合機能を実質的に保持し、オピオイドと高い相同性を示している。
【0043】
本発明はまた、上記TMのいずれかのフラグメント、改変体、および誘導体を包含する。これらのフラグメント、改変体、および誘導体は、該TMが有する特性を実質的に保持している。
【0044】
上記オピオイドおよび非オピオイドクラスのTMに加えて、種々の他のポリペプチドが、侵害受容感覚求心性神経細胞(例えば、侵害受容体)に本発明の結合体をターゲティングさせることに適している。これに関して、特に、ガラニンおよびガラニンの誘導体について述べられる。ガラニンレセプターは、DRGでシナプス前およびシナプス後に見られ(LiuおよびHokfelt, (2002), Trends Pharm. Sci., 23(10), 468-74)、そして神経障害性疼痛状態の間、発現が増強される。プロテイナーゼ活性化レセプター(PAR)もまた、本発明のTMの好ましい群である(最も特にPAR−2)。PAR−2のアゴニストは、神経性機構を部分的に介して、急性炎症を誘発/惹起することが知られる。PAR2は、一次脊髄求心性神経細胞によって発現され、そしてPAR2アゴニストは、末梢組織においてサブスタンスP(SP)およびカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の放出を刺激する。
【0045】
本発明のTMの特に好ましいセットは、以下を含む:
【0046】
【数2】
【0047】
本発明のプロテアーゼ切断部位は、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分とTM構成部分との間の位置での融合タンパク質の切断(好ましくは制御された切断)を可能にする。この切断反応は、融合タンパク質を単鎖ポリペプチドからジスルフィド結合で連結された二本鎖ポリペプチドに変換するものである。
【0048】
本発明の好ましい実施態様によれば、TMは、TMのC末端から離れて位置しているドメインまたはアミノ酸配列を介して結合する。例えば、関連結合ドメインとしては、TMの内部ドメインまたは中間部の方に位置している(すなわち、直鎖状ペプチド配列の)アミノ酸配列が挙げられ得る。好ましくは、関連結合ドメインは、TMのN末端の方に、より好ましくは、N末端にまたはその付近に、位置している。
【0049】
1つの実施態様では、単鎖ポリペプチド融合物は、1つより多くのタンパク質分解切断部位を含み得る。しかし、2つ以上のこのような部位が存在する場合、それらは、別のものであり、それにより、単一のプロテアーゼの存在下で複数の切断事象が生じることが実質的に防止される。別の実施態様では、単鎖ポリペプチド融合物は、単一のプロテアーゼ切断部位を有することが好ましい。
【0050】
プロテアーゼ切断配列は、従来の手段(例えば、部位特異的変異誘発)によってDNAレベルで導入(および/または任意の固有切断配列が除去)され得る。切断配列の存在を確認するためのスクリーニングは、手動またはコンピューターソフトウェア(例えば、DNASTAR, Inc.によるMapDrawプログラム)の補助のもとに実施され得る。
【0051】
任意のプロテアーゼ切断部位が用いられ得るが、以下が好ましい:
エンテロキナーゼ(DDDDK↓)
第Xa因子(IEGR↓/IDGR↓)
TEV(タバコエッチウイルス)(ENLYFQ↓G)
トロンビン(LVPR↓GS)
PreScission(LEVLFQ↓GP)。
【0052】
用語「プロテアーゼ切断部位」には、インテイン(これは自己切断性配列である)も包含される。自己スプライシング反応は、例えば、存在する還元剤の濃度を変更することによって、制御可能である。
【0053】
使用に際して、プロテアーゼ切断部位は切断されて、TMのN末端側領域(好ましくはN末端)が露出されるようになる。生じたポリペプチドは、結合体の残りの部分から実質的にフリーであるN末端側ドメインまたは内部ドメインを伴うTMを有する。この配置によって、TMのN末端側構成部分(または内部ドメイン)が、標的細胞上の結合部位と直接的に相互作用し得ることが確実となる。
【0054】
好ましい実施態様では、TMとプロテアーゼ切断部位とは、融合タンパク質中で、多くとも10アミノ酸残基、より好ましくは多くとも5アミノ酸残基、そして最も好ましくは0アミノ酸残基離れて位置している。したがって、プロテアーゼ切断部位の切断によって、結合体は、結合体の残りの部分から実質的にフリーであるN末端側ドメインを有するTMを提供する。この配置によって、ターゲティング部分のN末端側構成部分が、標的細胞上の結合部位と直接的に相互作用し得ることが確実となる。
【0055】
上記活性化工程に伴う1つの利点は、一旦融合タンパク質のタンパク質分解による切断が生じた場合にTMのみがN末端分解を受けるようになることである。さらに、特定プロテアーゼ切断部位の選択によって、二本鎖構造となるようにポリペプチド融合物の選択的活性化を可能にする。
【0056】
本発明の単鎖ポリペプチド融合物の構築は、TMと非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分との間にプロテアーゼ切断部位を配置する。
【0057】
単鎖融合物において、TMが、プロテアーゼ切断部位とトランスロケーション構成部分との間に位置していることが好ましい。これにより、TMが、トランスロケーションドメインに付着されることが確実となる(すなわち、天然型クロストリジウムホロ毒素で生じるように)が、本発明の場合、これらの2つの構成部分の順序が天然型ホロ毒素に対して逆である。この配置に伴うさらなる利点は、TMが、融合タンパク質の露出されたループ領域内に位置していることである。これは、融合タンパク質の構造に対して構成による影響を最小限とする。これに関して、該ループは、リンカー、活性化ループ、ドメイン間リンカー、または単に表面露出ループと種々に呼ばれる(Schiavoら, 2000, Phys. Rev., 80, 717-766;Turtonら, 2002, Trends Biochem. Sci., 27, 552-558)。
【0058】
1つの実施態様では、単鎖ポリペプチドにおいて、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分とトランスロケーション構成部分とが、ジスルフィド結合によって一緒に連結されている。したがって、プロテアーゼ切断部位の切断によって、ポリペプチドは、二本鎖構造をとる。ここでは、プロテアーゼ構成部分とトランスロケーション構成部分とが、ジスルフィド結合によって一緒に連結されたままである。この目的のために、プロテアーゼ構成部分とトランスロケーション構成部分とは、単鎖融合タンパク質において、最大で100アミノ酸残基、より好ましくは最大で80アミノ酸残基、特に好ましくは最大で60アミノ酸残基、そして最も好ましくは最大で50アミノ酸残基、互いに離れて位置していることが好ましい。
【0059】
1つの実施態様では、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分は、融合タンパク質のトランスロケーション構成部分とジスルフィド結合を形成する。例えば、ジスルフィド結合を形成するプロテアーゼ構成部分のアミノ酸残基は、プロテアーゼ構成部分の最後の20アミノ酸、好ましくは最後の10アミノ酸のC末端側アミノ酸残基内に位置している。同様に、ジスルフィド結合の第二部分を形成するトランスロケーション構成部分内のアミノ酸残基は、トランスロケーション構成部分の最初の20アミノ酸、好ましくは最初の10アミノ酸のN末端側アミノ酸残基内に位置し得る。
【0060】
あるいは、単鎖ポリペプチドにおいて、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分とTMとが、ジスルフィド結合によって一緒に連結され得る。これに関して、ジスルフィド結合を形成するTMのアミノ酸残基は、好ましくは、TMのN末端から離れて、より好ましくは、TMのC末端の方に、位置している。
【0061】
1つの実施態様では、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分は、融合タンパク質のTM構成部分とジスルフィド結合を形成する。これに関して、ジスルフィド結合を形成するプロテアーゼ構成部分のアミノ酸残基は、好ましくは、プロテアーゼ構成部分の最後の20アミノ酸、より好ましくは最後の10アミノ酸のC末端側アミノ酸残基内に位置している。同様に、ジスルフィド結合の第二部分を形成するTM構成部分内のアミノ酸残基は、好ましくは、TMの最後の20アミノ酸、より好ましくは最後の10アミノ酸のC末端側アミノ酸残基内に位置している。
【0062】
上記ジスルフィド結合配置は、プロテアーゼ構成部分およびトランスロケーション構成部分が、天然型クロストリジウム神経毒素に類似する様式で配置されるという利点を有する。比較のために、天然型クロストリジウム神経毒素の一次アミノ酸配列に関して、それぞれのシステインアミノ酸残基は、8〜27アミノ酸残基離れて位置している−Popoff, MRおよびMarvaud, J-C, 1999, Structural & genomic features of clostridial neurotoxins, 第9章, The Comprehensive Sourcebook of Bacterial Protein Toxins. AloufおよびFreer編より抜粋。
【0063】
【数3】
【0064】
融合タンパク質は、1つ以上の精製タグを含み得る。これらの精製タグは、プロテアーゼ構成部分に対してN末端側および/またはトランスロケーション構成部分に対してC末端側に位置している。
【0065】
任意の精製タグが用いられ得るが、以下が好ましい:
His−タグ(例えば、6×ヒスチジン)、好ましくはC末端タグおよび/またはN末端タグとして
MBP−タグ(マルトース結合タンパク質)、好ましくはN末端タグとして
GST−タグ(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、好ましくはN末端タグとして
His−MBP−タグ、好ましくはN末端タグとして
GST−MBP−タグ、好ましくはN末端タグとして
チオレドキシンタグ、好ましくはN末端タグとして
CBD−タグ(キチン結合ドメイン)、好ましくはN末端タグとして。
【0066】
本発明のさらなる実施態様によれば、融合タンパク質中に、1つ以上のペプチドスペーサー分子が含まれ得る。例えば、精製タグと融合タンパク質分子の残りとの間(例えば、N末端精製タグと本発明のプロテアーゼ構成部分との間;および/またはC末端精製タグと本発明のトランスロケーション構成部分との間)に、ペプチドスペーサーが用いられ得る。本発明のTM構成部分とトランスロケーション構成部分との間にも、ペプチドスペーサーは用いられ得る。
【0067】
種々の異なるスペーサー分子が、本発明の融合タンパク質のいずれかに用いられ得る。このようなスペーサー分子の例は、図28および図29に図示したものを含む。特に、ここでは、GS15、GS20、GS25、およびHx27が述べられる−図28および図29を参照のこと。
【0068】
予想外に、本発明者らは、スペーサーの大きさが、(使用に際して)TMのC末端とトランスロケーション構成部分のN末端とが互いに40〜105オングストローム、好ましくは50〜100オングストローム、そしてより好ましくは50〜90オングストローム離れているように選択される場合、本発明の融合タンパク質(例えば、CPNv/A)が、侵害受容感覚求心性神経細胞に対する結合活性の改善を示し得ることを見出した。別の実施態様では、好ましいスペーサーは、11〜29アミノ酸残基、好ましくは15〜27アミノ酸残基、そしてより好ましくは20〜27アミノ酸残基のアミノ酸配列を有する。適切なスペーサーは、Crasto, C.J.およびFeng, J.A. (2000) 5月; 13(5);309-312頁(http://www.fccc./edu/research/labs/feng/limker.html.もまた参照のこと)に従って、通常通りに同定および入手され得る。
【0069】
本発明の第二の局面によれば、上記単鎖ポリペプチドをコードするDNA配列が提供される。本発明の好ましい局面では、このDNA配列は、DNAベクターの一部として調製される。このベクターは、プロモーターおよびターミネーターを含む。
【0070】
好ましい実施態様では、ベクターは、以下から選択されるプロモーターを有する:
【0071】
【数4】
【0072】
本発明のDNA構築物は、好ましくは、コンピュータ上で設計され、次いで従来のDNA合成技術によって合成される。
【0073】
上記DNA配列情報は、必要に応じて、用いられる最終宿主細胞(例えば、大腸菌)発現系に従ったコドン偏位のために改変される。
【0074】
DNAバックボーンは、好ましくは、任意の固有核酸配列についてスクリーニングされる。この固有核酸配列は、転写および翻訳されたときに、第二のペプチドコード配列によってコードされるプロテアーゼ切断部位に相当するアミノ酸配列を生じ得る。このスクリーニングは、手動またはコンピューターソフトウェア(例えば、DNASTAR, Inc.によるMapDrawプログラム)の補助のもとで実施され得る。
【0075】
本発明のさらなる実施態様によれば、非細胞傷害性薬剤を調製する方法が提供され、この方法は、以下の工程を含む:
a.本発明の単鎖ポリペプチド融合タンパク質と、プロテアーゼ切断部位を切断し得るプロテアーゼとを接触させる工程;
b.プロテアーゼ切断部位を切断し、そしてそれにより二本鎖融合タンパク質を形成する工程。
【0076】
この局面は、二本鎖ポリペプチドを提供し、これは、概して、クロストリジウムホロ毒素の構造を模倣している。より詳細には、得られた二本鎖ポリペプチドは、代表的には、以下のような構造を有する:
a.第一鎖は、非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントを含み、このプロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントは、侵害受容感覚求心性神経細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る;
b.第二鎖は、TMおよびトランスロケーションドメインを含み、トランスロケーションドメインは、エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性神経細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをトランスロケートさせ得る;そして
第一鎖および第二鎖は、一緒にジスルフィド結合で連結されている。
【0077】
本発明のさらなる局面によれば、疼痛の治療、予防、または緩和用の医薬品の製造のための、本発明の単鎖または二本鎖のポリペプチドの使用が提供される。
【0078】
関連した局面によれば、患者の疼痛を治療、予防、または緩和する方法が提供され、該方法は、本発明の単鎖または二本鎖のポリペプチドの治療有効量を該患者に投与する工程を含む。
【0079】
本発明は、広範な疼痛状態、特に慢性疼痛状態を解消する。好ましくは、状態としては、癌性および非癌性疼痛、炎症性疼痛、および神経障害性疼痛が挙げられる。本出願のオピオイド融合物は、炎症性疼痛の解消に特に適しているが、神経障害性疼痛の解消にも適し得る。ガラニン融合物は、神経障害性疼痛の解消に、より適している。
【0080】
使用に際して、本発明のポリペプチドは、代表的には、薬学的キャリア、希釈剤および/または賦形剤と共に、薬学的組成物の形態で用いられる。組成物の的確な形態は、投与様式に合わせられ得る。投与は、好ましくは哺乳動物に、より好ましくはヒトに対してである。
【0081】
ポリペプチドは、例えば、関節内投与または頭蓋内投与用に滅菌溶液の形態で用いられ得る。脊髄注射(例えば、硬膜外注射もしくは髄腔内注射)が好ましい。
【0082】
本発明のポリペプチドの投与のための投薬量範囲は、所望の治療効果を生じる投薬量範囲である。必要投薬量範囲は、構成部分の正確な性質、投与経路、処方の性質、患者の年齢、患者の状態の性質、程度、もしくは重篤度、禁忌(ある場合)、および主治医の判断に依存することが理解される。
【0083】
適切な一日投薬量は、0.0001〜1mg/kg、好ましくは0.0001〜0.5mg/kg、より好ましくは0.002〜0.5mg/kg、および特に好ましくは0.004〜0.5mg/kgの範囲内である。単位投薬量は、1μg未満から30mgまでの間で変動し得るが、代表的には一投与あたり0.01〜1mgの範囲内であり、これは、毎日、または好ましくは頻度を下げて(例えば、毎週または半年毎に)投与され得る。
【0084】
特に好ましい投薬レジメは、1×の用量として2.5ngの融合タンパク質(例えば、CPNv/A)に基づく。これに関して、好ましい投薬量は、1×〜100×(すなわち、2.5〜250ng)の範囲内である。この投薬量範囲は、他のタイプの鎮痛性分子(例えば、NSAIDS、モルヒネ、およびガバペンチン)で用いられるよりも有意に低い(すなわち、少なくとも10倍、代表的には100倍低い)。さらに、上記差異は、モル基準で同じ比較がなされる場合に相当に拡大される。これは、本発明の融合タンパク質が、従来の「小さな」分子治療剤よりも相当に大きなMwを有するからである。
【0085】
しかしながら、必要投薬量に広範な変動があることは、構成部分の正確な性質および種々の投与経路の異なる効率に依存して予想されることである。
【0086】
これらの投薬量レベルの変動は、当該分野で周知であるように、最適化のために標準的な経験的作業を用いて調整され得る。
【0087】
注射に適した組成物は、溶液、懸濁液、もしくは乳濁液、または使用前に適切なビヒクル中に溶解もしくは懸濁される乾燥粉末の形態であり得る。
【0088】
液状単位投薬剤形は、代表的には、発熱性物質除去滅菌ビヒクルを利用して調製される。活性成分は、使用するビヒクルおよび濃度に依存して、そのビヒクル中に溶解または懸濁され得る。
【0089】
投与可能な溶液を調製する際、ポリペプチドはビヒクル中に溶解され得、溶液は、必要に応じて塩化ナトリウムの添加により等張にされる。そして無菌技術を用いて滅菌フィルタを通して濾過することにより滅菌され、次いで適切な滅菌バイアルまたはアンプル中に充填し、密封され得る。あるいは、溶液安定性が十分である場合、その密封容器中の溶液は、オートクレーブによって滅菌され得る。
【0090】
好都合には、添加剤(例えば、緩衝化剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤もしくは殺菌剤、懸濁化剤もしくは乳化剤)がビヒクル中に溶解され得る。
【0091】
使用前に適切なビヒクル中に溶解または懸濁される乾燥粉末は、滅菌区域で無菌技術を用いて、予め滅菌しておいた薬物および他の成分を滅菌容器中に充填することにより調製され得る。
【0092】
あるいは、ポリペプチドおよび他の成分が水性ビヒクル中に溶解され得、この溶液は、濾過により滅菌され、そして滅菌区域で無菌技術を用いて適切な容器中に分配される。製品は、次いで凍結乾燥され、そして容器は、無菌下で密封される。
【0093】
筋内注射、皮下注射、または皮内注射に適切な非経口投与用懸濁液は、滅菌構成部分を溶解する代わりに滅菌ビヒクル中に懸濁しそして滅菌が濾過によって達成できないことを除いて、実質的に同様にして調製される。構成部分は、滅菌状態で単離され得るか、あるいは単離後に(例えば、ガンマ照射によって)滅菌され得る。
【0094】
好都合には、懸濁化剤(例えば、ポリビニルピロリドン)が、構成部分の均一な分布を促進するために、組成物中に含まれる。
【0095】
(定義の節)
ターゲティング部分(TM)は、薬剤と標的細胞の表面との間に物理的会合を引き起こすように、結合部位と機能的に相互作用する薬剤と会合する任意の化学的構造を意味する。本発明においては、標的細胞は、侵害受容感覚求心性神経細胞である。TMとの用語は、結合部位が内在化(例えば、エンドソーム形成)−レセプター媒介エンドサイトーシスとも呼ばれる−を行い得る、標的細胞上の結合部位に結合し得る任意の分子(すなわち、天然に存在する分子またはそれらの化学的/物理的に改変された改変体)を含む。TMは、エンドソーム膜トランスロケーション機能を保有し得、この場合、本発明の薬剤に、TM構成部分とトランスロケーションドメイン構成部分とが別々に存在する必要はない。
【0096】
本発明のTMは、侵害受容感覚求心性神経細胞(例えば、一次侵害受容求心性神経細胞)に結合(好ましくは特異的に結合)する。これに関して、特異的に結合するとは、TMが侵害受容感覚求心性神経細胞(例えば、一次侵害受容求心性神経細胞)に、それが、他の神経細胞(例えば、非侵害受容求心性神経細胞)および/または運動神経細胞(すなわち、クロストリジウム神経毒素ホロ毒素の天然の標的)に結合するよりも大きな親和力で結合することを意味する。用語「特異的に結合する」とはまた、所与のTMが、所与のレセプター(例えば、ORL1レセプター)に、106M−1以上、好ましくは107M−1以上、より好ましくは108M−1以上、および最も好ましくは109M−1以上の結合親和力(Ka)で結合することも意味し得る。
【0097】
本発明の目的では、アゴニストは、標的細胞におけるエキソサイトーシス融合のプロセスを刺激し得る分子であると定められる。このプロセスは、該標的細胞におけるエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得るプロテアーゼ(またはそのフラグメント)による阻害を受けやすい。
【0098】
したがって、本発明のアゴニストの特別な定義は、アゴニストとして従来考えられてきた多くの分子を排除し得る。
【0099】
例えば、神経成長因子(NGF)は、TrkAレセプターへの結合を介して神経細胞分化を促進する能力の点でアゴニストである。しかし、NGFは、エキソサイトーシス融合の主要となる誘発因子ではないので、上記基準によって評価する場合アゴニストではない。さらに、NGFが刺激するプロセス(すなわち、細胞分化)は、非細胞傷害性毒素分子のプロテアーゼ活性による阻害を受けやすいわけではない。
【0100】
用語「フラグメント」は、タンパク質に関して用いる場合、問題のタンパク質のうちの少なくとも35、好ましくは少なくとも25、より好ましくは少なくとも20、および最も好ましくは少なくとも10のアミノ酸残基を有するペプチドを意味する。
【0101】
用語「改変体」は、タンパク質に関して用いる場合、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例えば、非天然アミノ酸)または置換結合を含むタンパク質のペプチドまたはペプチドフラグメントを意味する。
【0102】
用語「誘導体」は、タンパク質に関して用いる場合、問題のタンパク質およびさらなるペプチド配列を含むタンパク質を意味する。このさらなるペプチド配列は、好ましくは、元のタンパク質の基本折りたたみを妨害せず、したがって立体構造を妨害しない。2つ以上のペプチド(またはフラグメント、または改変体)が一緒に結合されて、誘導体を形成し得る。あるいは、ペプチド(またはフラグメント、または改変体)が非関連分子(例えば、第二の非関連ペプチド)に結合され得る。誘導体は、化学合成され得るが、代表的には、組換え核酸法によって調製される。脂質成分、および/または多糖成分、および/またはポリケチド成分のような付加成分が含まれていてもよい。
【0103】
本明細書全体にわたって、「ORL1レセプター」という場合は、ORL1レセプターファミリーの全てのメンバーを包含する。ORL1レセプターファミリーのメンバーは、代表的には、7回膜貫通ドメイン構造を有し、そしてGiおよびG0ファミリーのGタンパク質に結合される。ORL1レセプターのリガンドのGタンパク質刺激活性を決定するための方法を実施例12に示す。ORL1活性化後の細胞cAMPレベルの減少を測定するための方法を実施例11に示す。ORL1レセプターファミリーのメンバーのさらなる特徴は、それらが代表的にはノシセプチン(ORL1の天然リガンド)に結合し得るということである。一例として、ORL1レセプターの全ての代替スプライシング改変体は、ORL1レセプターファミリーのメンバーである。
【0104】
用語「非細胞傷害性」は、問題のプロテアーゼ分子が、それがリターゲティングされた標的細胞を殺傷しないことを意味する。
【0105】
本発明のプロテアーゼは、真核生物細胞においてエキソサイトーシス融合器官の1つ以上のタンパク質を切断し得る、全ての天然に存在する非細胞傷害性プロテアーゼを含む。
【0106】
本発明のプロテアーゼは、好ましくは、細菌プロテアーゼ(またはそのフラグメント)である。より好ましくは、細菌プロテアーゼは、クロストリジウム属またはナイセリア属から選択される(例えば、クロストリジウムL鎖、またはナイセリアIgAプロテアーゼ(好ましくは、N. gonorrhoeae由来))。
【0107】
本発明はまた、改変非細胞傷害性プロテアーゼを含み、この改変プロテアーゼは、上記プロテアーゼ活性をなお示す限り、天然に存在しないアミノ酸配列および/または合成アミノ酸残基を含む。
【0108】
本発明のプロテアーゼは、好ましくは、セリンまたはメタロプロテアーゼ活性(例えば、エンドペプチダーゼ活性)を示す。プロテアーゼは、好ましくは、SNAREタンパク質(例えば、SNAP−25、シナプトブレビン/VAMP、またはシンタキシン)に特異的である。
【0109】
特に、神経毒素のプロテアーゼドメイン(例えば、細菌神経毒素のプロテアーゼドメイン)について述べられる。したがって、本発明は、天然に存在する神経毒素ドメインの使用、ならびに該天然に存在する神経毒素の組換え調製型を包含する。
【0110】
例示の神経毒素は、クロストリジウム属によって生成される。そして用語「クロストリジウム神経毒素」は、C. tetaniによって生成される神経毒素(TeNT)およびC. botulinumによって生成される神経毒素(BoNT)血清型A〜G、ならびにC. baratiiおよびC. butyricumにより生成される密に関連したBoNT様神経毒素を含む。上記の略語は、本明細書中を通じて使用する。例えば、BoNT/Aとの名称は、神経毒素の供給源がBoNT(血清型A)であることを示す。他のBoNT血清型に対しても、対応する名称が適用される。
【0111】
用語「L鎖フラグメント」は、神経毒素のL鎖の一構成部分を意味し、このフラグメントは、メタロプロテアーゼ活性を示し、そして細胞エキソサイトーシスに関与する小胞および/または原形質膜に会合したタンパク質をタンパク質分解により切断し得る。
【0112】
トランスロケーションドメインは、プロテアーゼ活性の機能的発現が標的細胞のサイトゾル内で生じるように、標的細胞へのプロテアーゼ(またはそのフラグメント)のトランスロケーションを可能にする分子である。どの分子(例えば、タンパク質またはペプチド)が保有するのであっても、本発明の必要なトランスロケーション機能は、多数の従来アッセイの任意の1つによって確認され得る。
【0113】
例えば、Shone C.(1987)は、試験分子でチャレンジされるリポソームを用いるインビトロアッセイを記載している。必要なトランスロケーション機能の存在は、K+および/または標識NADのリポソームからの放出によって確認され、これは容易にモニタリングされ得る[Shone C. (1987) Eur. J. Biochem; 167(1)巻: 175-180頁を参照のこと]。
【0114】
さらなる例は、Blaustein R.(1987)によって提供される。これは、平面リン脂質二層膜を用いる単純なインビトロアッセイを記載している。この膜を試験分子でチャレンジし、そして必要なトランスロケーション機能は、該膜を横断する伝導の増大によって確認される[Blaustein (1987) FEBS Letts; 226巻, 1号: 115-120頁を参照のこと]。
【0115】
膜融合の評価、およびしたがって、本発明での使用に適したトランスロケーションドメインの同定を可能にするさらなる方法は、Methods in Enzymology 220巻および221巻, Membrane Fusion Techniques, A部およびB部, Academic Press 1993によって提供される。
【0116】
トランスロケーションドメインは、好ましくは、低pH条件下で脂質膜中にイオン透過孔を形成し得る。好ましくは、エンドソーム膜内の孔形成が可能なタンパク質分子の部分のみを使用することが見出されている。
【0117】
トランスロケーションドメインは、微生物タンパク質供給源(特に、細菌またはウイルスタンパク質供給源)から得られ得る。したがって、1つの実施態様では、トランスロケーションドメインは、細菌毒素またはウイルスタンパク質のような酵素のトランスロケーションドメインである。
【0118】
細菌毒素分子のある種のドメインがこのような孔を形成し得ることは、十分に書き記されている。また、ウイルス発現膜融合タンパク質のある種のトランスロケーションドメインがこのような孔を形成し得ることも公知である。このようなドメインは、本発明において用いられ得る。
【0119】
トランスロケーションドメインは、クロストリジウム属起源であり得、すなわち、HNドメイン(またはその機能的構成部分)であり得る。HNは、H鎖のアミノ末端側半分にほぼ等価なクロストリジウム神経毒素のH鎖の一部またはフラグメント、または完全なH鎖中のそのフラグメントに対応するドメインを意味する。H鎖が、H鎖のHC構成部分の天然の結合機能を実質的に欠損していることが好ましい。これに関して、HC機能は、(ヌクレアーゼまたはプロテアーゼ処理によってDNA合成レベルまたは合成後レベルのいずれかの)HCアミノ酸配列の欠失によって除去され得る。あるいは、HC機能は、化学的処理または生物学的処理によって不活性化され得る。したがって、H鎖は、好ましくは、天然型クロストリジウム神経毒素(すなわち、ホロ毒素)が結合する標的細胞上の結合部位に結合し得ない。
【0120】
1つの実施態様では、トランスロケーションドメインは、クロストリジウム神経毒素のHNドメイン(またはそのフラグメント)である。適切なクロストリジウムトランスロケーションドメインの例は、以下を含む:
ボツリヌス菌A型神経毒素−アミノ酸残基(449〜871)
ボツリヌス菌B型神経毒素−アミノ酸残基(441〜858)
ボツリヌス菌C型神経毒素−アミノ酸残基(442〜866)
ボツリヌス菌D型神経毒素−アミノ酸残基(446〜862)
ボツリヌス菌E型神経毒素−アミノ酸残基(423〜845)
ボツリヌス菌F型神経毒素−アミノ酸残基(440〜864)
ボツリヌス菌G型神経毒素−アミノ酸残基(442〜863)
破傷風菌神経毒素−アミノ酸残基(458〜879)。
【0121】
ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)および破傷風菌(C. tetani)における毒素生成の遺伝的基礎に関するさらなる詳細については、Hendersonら (1997) The Clostridia: Molecular Biology and Pathogenesis, Academic pressを参照のこと。
【0122】
用語「HN」は、天然に存在する神経毒素HN部、および天然に存在しないアミノ酸配列および/または合成アミノ酸残基を有する改変HN部(但し、改変HN部が上記トランスロケーション機能をなお示す限り)を含む。
【0123】
あるいは、トランスロケーションドメインは、非クロストリジウム属起源であり得る(表4を参照のこと)。非クロストリジウムトランスロケーションドメイン起源の例は、以下を含むが、これらに限定されない:ジフテリア毒素のトランスロケーションドメイン[O'Keefeら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89, 6202-6206;Silvermanら, J. Biol. Chem. (1993) 269, 22524-22532;およびLondon, E. (1992) Biochem. Biophys. Acta., 1112, 25-51頁]、シュードモナス外毒素A型のトランスロケーションドメイン[Priorら, Biochemistry (1992) 31, 3555-3559]、炭疽菌毒素のトランスロケーションドメイン[Blankeら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1996)93, 8437-8442]、トランスロケーション機能の種々の融合性または疎水性ペプチド[Plankら, J. Biol. Chem. (1994) 269, 12918-12924;およびWagnerら, (1992) PNAS, 89, 7934-7938頁]、および両親媒性ペプチド[Murataら, (1992) Biochem., 31, 1986-1992頁]。トランスロケーションドメインは、天然に存在するタンパク質に存在するトランスロケーションドメインを反映し得るか、またはその変化がトランスロケーションドメインのトランスロケーション能を破壊しない限り、アミノ酸変化を含み得る。
【0124】
本発明での使用に適したウイルストランスロケーションドメインの具体的な例には、ウイルス発現膜融合タンパク質のある種のトランスロケーションドメインが含まれる。例えば、Wagnerら(1992)およびMurataら(1992)は、インフルエンザウイルスヘマグルチニンのN末端領域に由来する多数の融合性および両親媒性のペプチドのトランスロケーション(すなわち、膜融合および小胞形成)機能を記載している。所望のトランスロケーション活性を有することが公知の他のウイルス発現膜融合タンパク質は、セムリキ森林ウイルス(SFV)の融合性ペプチドのトランスロケーションドメイン、水疱性口内炎ウイルス(VSV)糖タンパク質Gのトランスロケーションドメイン、SERウイルスFタンパク質のトランスロケーションドメインおよび泡沫状ウイルスエンベロープ糖タンパク質のトランスロケーションドメインである。ウイルスがコードする「スパイクタンパク質(Aspike proteins)」は、本発明においては特別な適用を有し、例えば、SFVのE1タンパク質およびVSVのGタンパク質のGタンパク質である。
【0125】
表(以下)に列挙したトランスロケーションドメインの使用は、それらの配列改変体の使用を含む。改変体は、1つ以上の保存的な核酸置換および/または核酸欠失もしくは挿入を含み得る。但し、この改変体は、必要なトランスロケーション機能を保有する。改変体はまた、この改変体が必要なトランスロケーション機能を保有する限り、1つ以上のアミノ酸置換および/またはアミノ酸欠失もしくは挿入を含み得る。
【0126】
【数5】
【0127】
(図面)
図1 LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の精製
図2 ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の精製
図3 LC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の精製
図4 LC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質の精製
図5 LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質とノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質との結合効力の比較
図6 LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ触媒活性
図7 LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の精製
図8 LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質とLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質との結合効力の比較
図9 可変スペーサー長産物を有する発現/精製LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質ファミリー
図10 CPN−AによるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断
図11 CPN−AへのDRGの曝露後長期間にわたるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断
図12 CPNv−AによるSNAP−25の切断
図13 CPNv−AへのDRGの曝露後長期間にわたるSNAP−25の切断
図14 [3H]−ノシセプチン結合のCPNv−A融合物媒介置換
図15 発現/精製CPNv(Ek)−A産物
図16 CPNv(Ek)−AによるSNAP−25の切断
図17 発現/精製CPNv−C産物
図18 CPNv−Cによるシンタキシンの切断
図19 急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPN−A効力
図20 ストレプトゾトシン(STZ)誘発末梢糖尿病性神経障害(神経因性疼痛)モデルにおけるCPN−A効力
図21 急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPNv−A効力
図22 発現/精製LC/A−CPLE−HN/A産物
図23 発現/精製LC/A−CPBE−HN/A産物
図24 発現/精製CPOP−A産物
図25 発現/精製CPOPv−A産物
図26 DRG細胞モデルにおけるインビトロSNAP−25切断
図27 発現/精製CPNv−A−FXa−HT(取り外し可能hisタグ)
図28 リガンド競合アッセイにより評価した可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力
図29 インビトロSNAP−25切断により評価した可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力
【0128】
図面について、より詳細に説明する。
【0129】
(図1 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の精製)
実施例9に示した方法を用いて、大腸菌BL21細胞からLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質を精製した。簡潔にいえば、細胞破壊後に得た可溶性産物をニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS-PAGE(パネルA)およびウェスタンブロッティング(パネルB)によって評価した。抗ノシセプチン抗血清(Abcamから入手)をウェスタンブロッティングの一次抗体として使用した。還元剤の不在下および存在下での最終精製物を、それぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0130】
(図2 − ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の精製)
実施例9に示した方法を用いて、大腸菌BL21細胞からノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質を精製した。簡潔にいえば、細胞破壊後に得た可溶性産物をニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS-PAGE(パネルA)およびウェスタンブロッティング(パネルB)によって評価した。抗ノシセプチン抗血清(Abcamから入手)をウェスタンブロッティングの一次抗体として使用した。還元剤の不在下および存在下での最終精製物を、それぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0131】
(図3 − LC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の精製)
実施例9に示した方法を用いて、大腸菌BL21細胞からLC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質を精製した。簡潔にいえば、細胞破壊後に得た可溶性産物をニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS-PAGE(パネルA)およびウェスタンブロッティング(パネルB)によって評価した。抗ノシセプチン抗血清(Abcamから入手)をウェスタンブロッティングの一次抗体として使用した。還元剤の不在下および存在下での最終精製物を、それぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0132】
(図4 − LC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質の精製)
実施例9に示した方法を用いて、大腸菌BL21細胞からLC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質を精製した。簡潔にいえば、細胞破壊後に得た可溶性産物をニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS-PAGEによって評価した。還元剤の不在下および存在下での最終精製物を、それぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0133】
(図5 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質とノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質との結合効力の比較)
ノシセプチン融合物がORL1レセプターに結合する能力を、簡易競合アッセイを用いて評価した。背根神経節(DRG)の初代培養物を、1nMの[3H]−ノシセプチンの存在下で種々の濃度の試験物質に曝露した。放射性標識リガンドの特異的結合の減少をシンチレーション計数によって評価し、そして非標識リガンド(Tocrisノシセプチン)の効力と比較してプロットした。ORL1レセプターとの相互作用は、LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物が、ノシセプチン−LC/A−HN/A融合物よりもずっと優れることが明らかである。
【0134】
(図6 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ触媒活性)
精製LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロエンドペプチダーゼ活性を、本質的には、Chaddockら, 2002, Prot. Express Purif. 25, 219-228に記載されるようにして決定した。簡潔にいえば、ELISAプレートに固定化したSNAP−25ペプチドを、種々の濃度の融合タンパク質に37℃にて1時間曝露した。一連の洗浄後、切断されたSNAP−25ペプチドの量を、特異的抗血清との反応性によって定量した。
【0135】
(図7 − LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の精製)
実施例9に示した方法を用いて、大腸菌BL21細胞からLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質を精製した。簡潔にいえば、細胞破壊後に得た可溶性産物をニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS-PAGEによって評価した。還元剤の不在下および存在下での最終精製物を、それぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0136】
(図8 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質とLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質との結合効力の比較)
ノシセプチン融合物がORL1レセプターに結合する能力を、簡易競合アッセイを用いて評価した。背根神経節(DRG)の初代培養物を、1nMの[3H]−ノシセプチンの存在下で種々の濃度の試験物質に曝露した。放射性標識リガンドの特異的結合の減少をシンチレーション計数によって評価し、そして非標識リガンド(Tocrisノシセプチン)の効力に比較してプロットした。ORL1レセプターとの相互作用は、LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv−LHA)が、LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN−LHA)よりも優れることが明らかである。
【0137】
(図9 − 可変スペーサー長産物を有する発現/精製LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質ファミリー)
実施例9に示した方法を用いて、大腸菌細胞ペーストから、GS10、GS30およびHX27からなるLC/A−CPN−HN/A融合物の改変体を精製する。LC/A−CPN(GS10)−HN/A、LC/A−CPN(GS15)−HN/A、LC/A−CPN(GS25)−HN/A、LC/A−CPN(GS30)−HN/AおよびLC/A−CPN(HX27)−HN/Aの精製からの試料を、クマシーブルーで染色する前にSDS-PAGEにより評価した。この電気泳動プロフィールは、CPBE−Aの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。上のパネル:M=分子量マーカー標線;S=大腸菌タンパク質全可溶性画分;FT=Ni2+−荷電セファロースカラムに結合しなかったタンパク質;融合物=イミダゾールの添加により溶出された融合タンパク質。下のパネル:レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+−荷電セファロースの初期捕捉後の精製物;レーン4=Ni2+−荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン5=第Xa因子での活性化後の精製最終物(5μl);レーン6=第Xa因子での活性化後の精製最終物(10μl);レーン7=第Xa因子での活性化後の精製最終物(20μl);レーン8=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(5μl);レーン9=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(10μl);レーン10=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(20μl)。
【0138】
(図10 − CPN−AによるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断)
簡潔にいえば、背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPN−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合をデンシトメトリー分析によって算定し、そして融合物濃度に対してプロットした(破線)。また、材料を回収して、特異的EIAキットを用いるサブスタンスP含量の分析を行った。サブスタンスP放出の阻害を、実線にて示す。50%最大SNAP−25切断に達するのに必要な融合物濃度は、6.30±2.48nMであると概算される。
【0139】
(図11 − CPN−AへのDRGの曝露後長期間にわたるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断)
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPN−Aに24時間曝露した。ボツリヌス菌神経毒素(BoNT/A)をコントロールとして使用した。この初期曝露後、細胞外物質を洗浄によって除去し、そして細胞を種々の期間にわたって37℃にてインキュベートした。特定の時点で、細胞タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合をデンシトメトリー分析によって算定し、破線にて示した。また、材料を回収して、特異的EIAキットを用いるサブスタンスP含量の分析を行った。サブスタンスP放出の阻害を、実線にて示す。
【0140】
(図12 − CPNv−AによるSNAP−25の切断)
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPNv−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合をデンシトメトリー分析によって算定した。50%最大SNAP−25切断に達するのに必要な融合物濃度は、1.38±0.36nMであると概算される。
【0141】
(図13 − CPNv−AへのDRGの曝露後長期間にわたるSNAP−25の切断)
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPNv−Aに24時間曝露した。CPN−Aをコントロールとして使用した。この初期曝露後、細胞外物質を洗浄によって除去し、そして細胞を種々の期間にわたって37℃にてインキュベートした。特定の時点で、細胞タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合をデンシトメトリー分析によって算定した。
【0142】
(図14 − [3H]−ノシセプチン結合のCPNv−A融合物媒介置換)
ノシセプチン融合物がORL1レセプターに結合する能力を、簡易競合アッセイを用いて評価した。背根神経節(DRG)の初代培養物を、1nMの[3H]−ノシセプチンの存在下で種々の濃度の試験物質に曝露した。放射性標識リガンドの特異的結合の減少をシンチレーション計数によって評価し、そして非標識リガンド(Tocrisノシセプチン)の効力と比較してプロットした。ORL1レセプターとの相互作用は、LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv−LHnAと示す)が、LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN−LHnAと示す)よりも優れることが明らかである。
【0143】
(図15 − 発現/精製CPNv(Ek)−A産物)
タンパク質をSDS-PAGEに供した後、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPNv(Ek)−Aの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+−荷電セファロースの初期捕捉後の精製物;レーン4=エンテロキナーゼでの活性化後の精製最終物(5μl);レーン5=エンテロキナーゼでの活性化後の精製最終物(10μl);レーン6=エンテロキナーゼでの活性化後の精製最終物(20μl);レーン7=エンテロキナーゼでの活性化後の精製最終物+DTT(5μl);レーン8=エンテロキナーゼでの活性化後の精製最終物+DTT(10μl);レーン9=エンテロキナーゼでの活性化後の精製最終物+DTT(20μl)。
【0144】
(図16 − CPNv(Ek)−AによるSNAP−25の切断)
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPNv(Ek)−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合をデンシトメトリー分析によって算定した。実施例9において調製したCPNv−Aを比較目的に使用した。CPNv(Ek)−A(En活性化と示す)およびCPNv−A(Xa活性化と示す)によるSNAP−25の切断割合を示す。
【0145】
(図17 − 発現/精製CPNv−C産物)
タンパク質をSDS-PAGEに供した後、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPNv−Cの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+−荷電セファロースの初期捕捉後の精製物;レーン4=Ni2+−荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン5=Ni2+−荷電セファロースの第2の捕捉後の精製物;レーン6=最終精製物;レーン7=最終精製物+DTT;レーン8=分子量マーカー標線。
【0146】
(図18 − CPNv−Cによるシンタキシンの切断)
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPNv−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗シンタキシンでプローブしてシンタキシン切断の評価を容易にした。切断されたシンタキシンの割合をデンシトメトリー分析によって算定した。50%最大シンタキシン切断に達するのに必要な融合物濃度は、3.13±1.96nMであると概算される。
【0147】
(図19 − 急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPN−A効力)
LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN/A)がカプサイシン誘発機械的異痛を抑制する能力を、ラット後肢足蹠への皮下足底内注入により評価した。試験動物を、研究に参加させる前(処置前);CPN/Aでの皮下足底内処置後カプサイシン投与前(CAP前);およびCPN/Aの注射後カプサイシン追加投与後(15分および30分での応答の平均;CAP)に、10gのVon Freyフィラメントによる一連の刺激(10刺激×3試行)に応じた足逃避率(PWF%)について評価した。カプサイシン追加投与を10μLの0.3%溶液の注射によって行った。試料希釈液を0.5%BSA/生理食塩水中で調製した。
【0148】
(図20 − ストレプトゾトシン(STZ)誘発末梢糖尿病性神経障害(神経因性疼痛)モデルにおけるCPN−A効力)
Sprague-Dawley雄ラット(250〜300g)をクエン酸緩衝液中65mg/kgのSTZで(静脈内)処置し、そして毎週、血中のグルコースおよび脂質濃度を測定して、モデルの準備ができていることを確認する。足逃避閾値(PWT)を所定の期間にわたりVon Freyフィラメントによる一連の刺激に応じて測定する。異痛は、2つの連続した試験日(1週間空ける)でのPWTがスケールで6gを下回って測定された場合に確立されるとする。この時点で、ラットを生理食塩水群(陰性効力コントロール)、ガバペンチン群(陽性効力コントロール)または試験群(CPN/A)に無作為に振り分ける。試験物質(20〜25μl)を1回の注射で皮下注入し(ガバペンチンを除く)、PWTを処置後1日目およびその後2週間にわたって定期的に測定する。ガバペンチン(3ml/kg注入容量で30mg/kg腹腔内)は、毎日、PWT試験開始の2時間前に注射する。
【0149】
(図21 − 急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPNv−A効力)
LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv/A)がカプサイシン誘発機械的異痛を抑制する能力を、ラット後肢足蹠への皮下足底内注入により評価した。試験動物を、研究に参加させる前(処置前);CPNv/Aでの皮下足底内処置後カプサイシン投与前(CAP前);およびCPNv/Aの注射後カプサイシン追加投与後(15分および30分での応答の平均;CAP)の10gのVon Freyフィラメントによる一連の刺激(10刺激×3試行)に応じた足逃避率(PWF%)について評価した。カプサイシン追加投与を10μLの0.3%溶液の注射によって行った。試料希釈液を0.5%BSA/生理食塩水中で調製した。これらのデータを、正規化足逃避率差として表し、これは、ピーク応答(カプサイシン後)とベースライン応答(カプサイシン前)との間の差を百分率にて示す。この分析にて、CPNv/Aは、CPN/Aよりも強力であることが理解され得る。これは、CPNv/Aでは、CPN/Aで見られるのと同様の鎮痛効果を生じるのに必要とする投薬量が、より少ないからである。
【0150】
(図22 − 発現/精製LC/A−CPLE−HN/A産物)
タンパク質をSDS-PAGEに供した後、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPLE−Aの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+−荷電セファロースの初期捕捉後の精製物;レーン4=Ni2+−荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン5=Ni2+−荷電セファロースの第2の捕捉後の精製物;レーン6=最終精製物;レーン7=最終精製物+DTT。
【0151】
(図23 − 発現/精製LC/A−CPBE−HN/A産物)
タンパク質をSDS-PAGEに供した後、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPBE−Aの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン2=Ni2+−荷電セファロースの初期捕捉後の精製物;レーン3=Ni2+−荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン4=第Xa因子での活性化後の精製最終物(5μl);レーン5=第Xa因子での活性化後の精製最終物(10μl);レーン6=第Xa因子での活性化後の精製最終物(20μl);レーン7=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(5μl);レーン8=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(10μl);レーン9=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(20μl);レーン10=分子量マーカー標線。
【0152】
(図24 − 発現/精製CPOP−A産物)
タンパク質をSDS-PAGEに供した後、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPOP−Aの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=Ni2+−荷電セファロースの初期捕捉後の精製物;レーン3=Ni2+−荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン4=Ni2+−荷電セファロースの第二の捕捉後の精製物;レーン5=第Xa因子での活性化後の精製最終物(5μl);レーン6=第Xa因子での活性化後の精製最終物(10μl);レーン7=第Xa因子での活性化後の精製最終物(20μl);レーン8=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(5μl);レーン9=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(10μl);レーン10=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(20μl)。
【0153】
(図25 − 発現/精製CPOPv−A産物)
タンパク質をSDS-PAGEに供した後、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPOPv−Aの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+−荷電セファロースの初期捕捉後の精製物;レーン4=Ni2+−荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン5=第Xa因子での活性化後の精製最終物(5μl);レーン6=第Xa因子での活性化後の精製最終物(10μl);レーン7=第Xa因子での活性化後の精製最終物(20μl);レーン8=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(5μl);レーン9=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(10μl);レーン10=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(20μl)。
【0154】
(図26 − DRG細胞モデルにおけるインビトロSNAP−25切断)
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPOPv−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合をデンシトメトリー分析によって算定した。
【0155】
(図27 − 発現/精製CPNv−A−FXa−HT(取り外し可能hisタグ))
タンパク質をSDS-PAGEに供した後、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPNv−A−FXa−HTの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+−荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン4=第Xa因子での活性化後の精製最終物;レーン5=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT。
【0156】
(図28 − リガンド競合アッセイにより評価した可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力)
可変スペーサー長のLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物がORL1レセプターに結合する能力を、簡易競合アッセイを用いて評価した。背根神経節(DRG)の初代培養物を、1nMの[3H]−ノシセプチンの存在下で種々の濃度の試験物質に曝露した。放射性標識リガンドの特異的結合の減少をシンチレーション計数によって評価し、そして非標識リガンド(Tocrisノシセプチン)の効力と比較してプロットした。上のパネルは、GS0、GS20、GS30およびHx27のスペーサーの置換の特徴を示している。一方、下のパネルは、GS10、GS15、およびGS25のスペーサーによる融合タンパク質により得られる置換を示している。ORL1レセプターからノシセプチンを置き換えるのに、GS0およびGS30スペーサーは有効でなく、そしてGS10は有効性に乏しいと結論される。
【0157】
(図29 − インビトロSNAP−25切断により評価した可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力)
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度の(可変スペーサー長の)CPN−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合をデンシトメトリー分析によって算定した。GS10スペーサーによる融合タンパク質の結合特性の効力が乏しいこと(図28を参照のこと)は、細胞内SNAP−25の切断を生じるのに必要とされる融合物の濃度がより高いことにおいて反映されている。GS0およびGS30のスペーサーによる融合タンパク質は、完全に有効でなかった(データは示さず)。GS15、GS20、およびGS25のスペーサーによる融合タンパク質は、同様に有効であった。
【0158】
(配列番号)
配列番号1 LC/AのDNA配列
配列番号2 HN/AのDNA配列
配列番号3 LC/BのDNA配列
配列番号4 HN/BのDNA配列
配列番号5 LC/CのDNA配列
配列番号6 HN/CのDNA配列
配列番号7 CPN−AリンカーのDNA配列
配列番号8 AリンカーのDNA配列
配列番号9 N末端側提示ノシセプチン挿入片のDNA配列
配列番号10 CPN−CリンカーのDNA配列
配列番号11 CPBE−AリンカーのDNA配列
配列番号12 CPNvar−AリンカーのDNA配列
配列番号13 LC/A−CPN−HN/A融合物のDNA配列
配列番号14 LC/A−CPN−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号15 N−LC/A−HN/A融合物のDNA配列
配列番号16 N−LC/A−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号17 LC/C−CPN−HN/C融合物のDNA配列
配列番号18 LC/C−CPN−HN/C融合物のタンパク質配列
配列番号19 LC/C−CPN−HN/C(Aリンカー)融合物のDNA配列
配列番号20 LC/C−CPN−HN/C(Aリンカー)融合物のタンパク質配列
配列番号21 LC/A−CPME−HN/A融合物のDNA配列
配列番号22 LC/A−CPME−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号23 LC/A−CPBE−HN/A融合物のDNA配列
配列番号24 LC/A−CPBE−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号25 LC/A−CPNv−HN/A融合物のDNA配列
配列番号26 LC/A−CPNv−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号27 LC/A−CPN[1−11]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号28 LC/A−CPN[1−11]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号29 LC/A−CPN[[Y10]1−11]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号30 LC/A−CPN[[Y10]1−11]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号31 LC/A−CPN[[Y11]1−11]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号32 LC/A−CPN[[Y11]1−11]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号33 LC/A−CPN[[Y14]1−17]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号34 LC/A−CPN[[Y14]1−17]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号35 LC/A−CPN[1−13]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号36 LC/A−CPN[1−13]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号37 CPN[1−17]のDNA配列
配列番号38 CPN[1−17]のタンパク質配列
配列番号39 CPN[1−11]のDNA配列
配列番号40 CPN[1−11]のタンパク質配列
配列番号41 CPN[[Y10]1−11]のDNA配列
配列番号42 CPN[[Y10]1−11]のタンパク質配列
配列番号43 CPN[[Y11]1−11]のDNA配列
配列番号44 CPN[[Y11]1−11]のタンパク質配列
配列番号45 CPN[[Y14]1−17]のDNA配列
配列番号46 CPN[[Y14]1−17]のタンパク質配列
配列番号47 CPN[1−13]のDNA配列
配列番号48 CPN[1−13]のタンパク質配列
配列番号49 CPNv(N[[R14K15]1−17]としても公知)のDNA配列
配列番号50 CPNv(N[[R14K15]1−17]としても公知)のタンパク質配列
配列番号51 ノシセプチン−スペーサー−LC/A−HN/A融合物のDNA配列
配列番号52 ノシセプチン−スペーサー−LC/A−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号53 CPN−A GS10リンカーのDNA配列
配列番号54 CPN−A GS15リンカーのDNA配列
配列番号55 CPN−A GS25リンカーのDNA配列
配列番号56 CPN−A GS30リンカーのDNA配列
配列番号57 CPN−A HX27リンカーのDNA配列
配列番号58 LC/A−CPN(GS15)−HN/A融合物のDNA配列
配列番号59 LC/A−CPN(GS15)−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号60 LC/A−CPN(GS25)−HN/A融合物のDNA配列
配列番号61 LC/A−CPN(GS25)−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号62 CPNvar−Aエンテロキナーゼ活性化リンカーのDNA配列
配列番号63 LC/A−CPNv(Ek)−HN/A融合物のDNA配列
配列番号64 LC/A−CPNv(Ek)−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号65 CPNvar−AリンカーのDNA配列
配列番号66 LC/C−CPNv−HN/C融合物(act.A)のDNA配列
配列番号67 LC/C−CPNv−HN/C融合物(act.A)のタンパク質配列
配列番号68 LC/A−CPLE−HN/A融合物のDNA配列
配列番号69 LC/A−CPLE−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号70 LC/A−CPOP−HN/A融合物のDNA配列
配列番号71 LC/A−CPOP−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号72 LC/A−CPOPv−HN/A融合物のDNA配列
配列番号73 LC/A−CPOPv−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号74 IgAプロテアーゼのDNA配列
配列番号75 IgA−CPNv−HN/A融合物のDNA配列
配列番号76 IgA−CPNv−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号77 FXa−HTのDNA配列
配列番号78 CPNv−A−FXa−HTのDNA配列
配列番号79 CPNv−A−FXa−HT融合物のタンパク質配列
配列番号80 DTトランスロケーションドメインのDNA配列
配列番号81 CPLE−DT−AのDNA配列
配列番号82 CPLE−DT−A融合物のタンパク質配列
配列番号83 TeNT LCのDNA配列
配列番号84 CPNv−TeNT LCのDNA配列
配列番号85 CPNv−TeNT LC融合物のタンパク質配列
配列番号86 CPNvar−CリンカーのDNA配列
配列番号87 LC/C−CPNv−HN/C融合物(act.C)のDNA配列
配列番号88 LC/C−CPNv−HN/C融合物(act.C)のタンパク質配列
【実施例】
【0159】
(実施例1 − LC/AおよびHN/Aバックボーンクローンの調製)
以下の手順によって、マルチドメイン融合物発現用の構成部分バックボーンとして使用するためのLCおよびHNフラグメントを作製する。本実施例は、血清型Aベースのクローン(配列番号1および配列番号2)の調製に基づいているが、手順および方法は他の血清型にも同等に適用可能である[血清型B(配列番号3および配列番号4)ならびに血清型C(配列番号5および配列番号6)については配列表に図示]。
【0160】
(クローニングベクターおよび発現ベクターの調製)
pCR 4(Invitrogen)は、構築物の確認を容易にするために、ベクター内の制限配列の欠損および隣接する配列決定プライマー部位によって選択した、選り抜きの標準的なクローニングベクターである。この発現ベクターは、pMAL(NEB)発現ベクターに基づいており、これは、構築物の挿入のために正しい方向でマルチプルクローニング部位内に所望の制限配列を有する(BamHI-SalI-PstI-HindIII)。非動員性プラスミドを作製するため、発現ベクターのフラグメントが除去されており、そして精製の選択肢を増大させるため、種々の異なる融合タグが挿入されている。
【0161】
(プロテアーゼ(例えば、LC/A)挿入片の調製)
LC/A(配列番号1)を、二通りの方法の一方によって作製する:
DNA配列を、[種々の逆翻訳ソフトウェアツール(例えば、EditSeq best E. coli reverse translation (DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0 (Entelechon))の1つを用いて、GenBank(アクセッション番号P10845)またはSwissprot(アクセッション位置BXA1_CLOBO)のような自由に利用可能なデータベースソースから得られる]LC/Aアミノ酸配列の逆翻訳によって設計する。BamHI/SalI認識配列を、配列の5’末端および3’末端のそれぞれに組み込み、正しい読み取り枠を維持する。DNA配列を、逆翻訳の間に組み込んだ制限酵素切断配列について(MapDraw, DNASTAR Inc.のようなソフトウェアを用いて)スクリーニングする。クローニング系によって必要とされる配列と共通であることが見出されている切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser (Geneart)のようなソフトウェアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、LC/Aオープンリーディングフレーム(ORF)を含有するこの最適化したDNA配列は商業的に合成され(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供される。
【0162】
別の方法は、それぞれ5’および3’のPCRプライマーに組み込んだBamHI制限酵素配列およびSalI制限酵素配列を用いる既存DNA配列からのPCR増幅を使用することである。相補的オリゴヌクレオチドプライマーは、製造業者(例えば、MWGまたはSigma-Genosys)によって、各対が、クロストリジウム標的DNAの範囲(ストレッチ)に隣接する向かい合った鎖に対して、これらの2つのDNA鎖の各々に1つのオリゴヌクレオチドを(互いに「向かって」3’末端の向きに)ハイブリダイズする能力を有するように、化学合成される。PCR産物を生成するために、クロストリジウムDNA配列に特異的な短いオリゴヌクレオチドプライマーの対を、クロストリジウムDNA鋳型および他の反応成分と混合し、そして反応チューブのインキュベーション温度を自動変更し得る機器(「PCR機器」)中に配置し、約94℃(変性用)、55℃(オリゴヌクレオチドアニーリング用)、および72℃(合成用)のサイクルにかける。PCR産物の増幅に必要な他の試薬には、DNAポリメラーゼ(例えば、TaqまたはPfuポリメラーゼ)、DNAの4つのヌクレオチドdNTP構築ブロックの等モル量(50〜200μM)の各々、およびMg2+濃度(0.5〜5mM)に最適化した酵素に適した緩衝液が含まれる。
【0163】
増幅産物を、Taq PCR産物に対してTOPO TAクローニングまたはPfu PCR産物に対してZero Blunt TOPOクローニング(両キットともInvitrogenより市販されている)のいずれかを用いて、pCR 4にクローニングする。得られたクローンを配列決定により確認する。次いで、クローニング系と適合可能でない付加制限配列を、部位特異的変異誘発を用いて[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]取り除く。
【0164】
(トランスロケーション(例えばHN)挿入片の調製)
HN/A(配列番号2)を、二通りの方法の一方によって作製する:
DNA配列を、種々の逆翻訳ソフトウェアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0 (Entelechon)]の1つを用いて、[GenBank(アクセッション番号P10845)またはSwissprot(アクセッション位置BXA1_CLOBO)のような自由に利用可能なデータベースソースから得られる]HN/Aアミノ酸配列の逆翻訳によって設計する。N末端にPstI制限配列を、そしてC末端にXbaI−停止コドン−HindIIIを付加し、正しい読み取り枠を維持するようにする。DNA配列を、逆翻訳の間に組み込んだ制限酵素切断配列について(MapDraw, DNASTAR Inc.のようなソフトウェアを用いて)スクリーニングする。クローニング系によって必要とされる配列と共通であることが見出されている配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウェアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、この最適化したDNA配列は商業的に合成され(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供される。
【0165】
別の方法は、それぞれ5’および3’のPCRプライマーに組み込んだPstI制限酵素配列およびXbaI−停止コドン−HindIII制限酵素配列を用いる既存DNA配列からのPCR増幅を使用することである。PCR増幅は、上記のように行う。このPCR産物をpCR 4ベクターに挿入し、そして配列決定によって確認する。次いで、クローニング系と適合可能でない付加制限配列を、部位特異的変異誘発を用いて[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]取り除く。
【0166】
(実施例2 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の調製)(ノシセプチンがHN鎖のN末端側にある)
(リンカー−ノシセプチン−スペーサー挿入片の調製)
LC−HNリンカーを、リンカーについての既存配列情報を鋳型として用いて、第一の原則から設計し得る。例えば、血清型Aリンカー(この場合、LCとHNとの間のジスルフィド架橋のシステイン間に存在するドメイン間ポリペプチド領域として定義される)は、23アミノ酸長であり、そして配列VRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLを有する。この配列内で、天然でのタンパク質分解による活性化により、配列ALNDLのN末端を有するHNドメインが生じると理解される。この配列情報は、GenBank(アクセッション番号P10845)またはSwissprot(アクセッション位置BXA1_CLOBO)のような利用可能なデータベースソースから自由に入手可能である。このリンカーに、第Xa因子部位、ノシセプチンおよびスペーサーを組み込み、そして種々の逆翻訳ソフトウェアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation (DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0 (Entelechon)]の1つを用いて、リンカー−リガンド−スペーサー領域をコードするDNA配列を決定する。次いで、制限部位をこのDNA配列に組み込み、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号7)として配置させ得る。スペーサー、ノシセプチン、および制限配列について正しい読み枠を維持し、そしてDAMメチル化を生じ得るので塩基TCがXbaI配列の前にならないようにすることが重要である。このDNA配列を、制限配列の組み込みについてスクリーニングし、そしてこの残っている配列から付加配列を手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウェアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、この最適化したDNA配列は商業的に合成され(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供される。
【0167】
(LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物の調製)
LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HN構築物(配列番号13)を作製するために、リンカー(配列番号7)をコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、BamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号1)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをPstIおよびXbaI制限酵素で切断し、そしてPstIおよびXbaIで切断したHN/AのDNA(配列番号2)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HN ORF(配列番号13)を含んでおり、これは、発現ベクターに移入され、配列番号14に示される配列の融合タンパク質が発現される。
【0168】
(実施例3 − ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の調製)(ノシセプチンがLC鎖のN末端側にある)
LC/A−HN/Aバックボーンを、活性化のために第Xa因子部位を付加し、BamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−リンカー−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号8)として配置された合成血清型Aリンカーを用いて、実施例2に記載のように構築する。LC/A−HN/Aバックボーンおよび合成したN末端側提示ノシセプチン挿入片(配列番号9)を、BamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、ゲル精製し、そして一緒に連結してノシセプチン−スペーサー−LC−リンカー−HNを作製する。次いで、ORF(配列番号15)を制限酵素AvaIおよびXbaIを用いて切断し、これを、発現ベクターに移入して、配列番号16に示される配列の融合タンパク質が発現される。
【0169】
(実施例4 − LC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の調製)
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/C(配列番号5)およびHN/C(配列番号6)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号10)として配置された血清型Cリンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HN ORF(配列番号17)を含んでおり、これは、配列番号18に示される配列のタンパク質を発現する。
【0170】
(実施例5 − 血清型A活性化配列を伴うLC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の調製)
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/C(配列番号5)およびHN/C(配列番号6)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号7)として配置された血清型Aリンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HN ORF(配列番号19)を含んでおり、これは、配列番号20に示される配列のタンパク質を発現する。
【0171】
(実施例6 − LC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質の調製)
metエンケファリンリガンドのサイズが小さい(5アミノ酸)ため、LC/A−metエンケファリン−HN/A融合物を、鋳型としてLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号13)を用いる部位特異的変異誘発[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]によって作製する。YGGFM metエンケファリンペプチドをコードし、標準的な大腸菌コドン利用を維持して付加的な制限部位が組み込まれないようにし、ノシセプチン部分のいずれかの側のLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号13)のリンカー領域に相補的な配列が隣接されるようにするオリゴヌクレオチドを設計する。SDM産物を配列決定により確認し、そして最終構築物は、LC−リンカー−metエンケファリン−スペーサー−HN ORF(配列番号21)を含んでおり、これは、配列番号22に示される配列のタンパク質を発現する。
【0172】
(実施例7 − LC/A−βエンドルフィン−HN/A融合タンパク質の調製)
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/A(配列番号1)およびHN/A(配列番号2)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−βエンドルフィン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号11)として配置された血清型A βエンドルフィンリンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−βエンドルフィン−スペーサー−HN ORF(配列番号23)を含んでおり、これは、配列番号24に示される配列のタンパク質を発現する。
【0173】
(実施例8 − LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の調製)
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/A(配列番号1)およびHN/A(配列番号2)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン改変体−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号12)として配置された血清型Aノシセプチン改変体リンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN ORF(配列番号25)を含んでおり、これは、配列番号26に示される配列のタンパク質を発現する。
【0174】
(実施例9 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の精製法)
25ml 50mM HEPES(pH 7.2)、200mM NaClおよび約10gの大腸菌BL21細胞ペーストを含むファルコン管を解凍する。この融解した細胞ペーストを50mM HEPES(pH 7.2)、200mM NaClで80mlまでにし、そして氷上にて、22ミクロンのパワーで30秒間オン、30秒間オフを10サイクルで超音波処理し、試料を冷却したままにする。溶解した細胞を18000rpmで4℃にて30分間遠心分離する。この上清を、50mM HEPES(pH 7.2)、200mM NaClで平衡化しておいた0.1M NiSO4荷電キレートカラム(20〜30mlカラムが十分である)に流す。10mMおよび40mMのイミダゾールのステップグラジエントを用いて、非特異的結合タンパク質を洗い流し、そして融合タンパク質を100mMイミダゾールで溶出する。溶出した融合タンパク質を5Lの50mM HEPES(pH 7.2)、200mM NaClに対して4℃にて終夜透析し、そして透析した融合タンパク質のODを測定する。100μg融合タンパク質当たり1単位の第Xa因子を添加し、そして25℃にて終夜静置インキュベートする。50mM HEPES(pH 7.2)、200mM NaClで平衡化しておいた0.1M NiSO4荷電キレートカラム(20〜30mlカラムが十分である)に流す。50mM HEPES(pH 7.2)、200mM NaClでベースラインまでカラムを洗浄する。10mMおよび40mMのイミダゾールのステップグラジエントを用いて、非特異的結合タンパク質を洗い流し、そして融合タンパク質を100mMイミダゾールで溶出する。溶出した融合タンパク質を5Lの50mM HEPES(pH 7.2)、200mM NaClに対して4℃にて終夜透析し、そしてこの融合物を約2mg/mlに濃縮し、試料を小分けし、そして−20℃にて凍結する。OD、BCA、純度分析、およびSNAP−25評価を用いて精製タンパク質を試験する。
【0175】
(実施例10 − 神経細胞培養物からのサブスタンスPの放出の測定によるTMアゴニスト活性の確認)
(材料)
サブスタンスP EIAはR&D Systems, UKから入手。
【0176】
(方法)
eDRGの初代神経細胞培養物を、既述(Dugganら, 2002)のようにして樹立させる。この培養物からのサブスタンスP放出を、本質的には、既述(Dugganら, 2002)のようにして、EIAによって評価する。目的のTMを(処理前に少なくとも2週間の間樹立させた)神経細胞培養物に添加する;TMの代わりにビヒクルを添加することにより、コントロール培養を並行して行う。全細胞溶解物含量と共に、サブスタンスPの刺激された(100mM KCl)放出および基底の放出を、コントロール培養およびTM処理培養の両方について得る。サブスタンスP免疫反応性を、サブスタンスP酵素免疫アッセイキット(Cayman Chemical Company, USAまたはR&D Systems, UK)を製造者の指示書に従って用いて測定する。
【0177】
目的のTMの存在下での神経細胞により放出されたサブスタンスPの量を、100mM KClの存在または不在下で得られる放出と比較する。基底放出を上回る目的のTMによるサブスタンスP放出の刺激によって、目的のTMが本明細書中で定義した「アゴニストリガンド」であることが確立される。所望の場合、目的のTMによるサブスタンスP放出の刺激を、天然のORL−1レセプターリガンドであるノシセプチン(Tocris)を用いて作成した標準サブスタンスP放出曲線と比較し得る。
【0178】
(実施例11 − フォルスコリン刺激cAMP生産の測定によるORL1レセプター活性化の確認)
所与のTMがORL1レセプターを介して作用することの確認は、以下の試験によって提供される。ここでは、TMがフォルスコリン刺激cAMP生産を阻害する能力を評価する。
【0179】
(材料)
[3H]アデニンおよび[14C]cAMPはGE Healthcareから入手。
【0180】
(方法)
この試験は、本質的には、Meunierら[Isolation and structure of the endogenous agonist of opioid receptor-like ORL1 receptor. Nature 377: 532-535, 1995]によって既述されるようにして、24ウェルプラスチックプレート上に播種した無傷のトランスフェクトCHO細胞において行う。
【0181】
細胞に、0.4mlの培養培地中で[3H]アデニン(1.0μCi)を添加する。細胞を37℃にて2時間静置して細胞内ATPプールにアデニンを取り込ませる。2時間後、細胞を、以下を含有するインキュベーション緩衝液で1回洗浄する:130mM NaCl、4.8mM KCl、1.2mM KH2PO4、1.3mM CaCl2、1.2mM MgSO4、10mMグルコース、1mg/ml ウシ血清アルブミン、および25mM HEPES pH 7.4。そしてこれを、目的のTMを含むまたは含まない、フォルスコリン(10μM)およびイソブチルメチルキサンチン(50μM)を含有する緩衝液と置き換える。10分後、培地を吸引して0.5mlの0.2M HClと置き換える。約1000cpmの[14C]cAMPを各ウェルに添加し、これを内部標準として使用する。次いで、ウェルの中身を0.65g乾燥アルミナ粉末のカラムに移す。カラムを4mlの5mM HCl、0.5mlの0.1M酢酸アンモニウム、次いでさらに2mlの酢酸アンモニウムで溶出する。最終溶出物をシンチレーションバイアルに集めて14Cおよびトリチウムについて計数する。集めた量を[14C]cAMPの回収率に対して補正する。ORL1レセプターでアゴニストであるTMは、フォルスコリンに応じて生産されるcAMPのレベルの減少を引き起こす。
【0182】
(実施例12 − GTPγS結合機能アッセイを用いるORL1レセプター活性化の確認)
所与のTMがORL1レセプターを介して作用することの確認は、以下の試験、GTPγS結合機能アッセイによっても提供される。
【0183】
(材料)
[35S]GTPγSはGE Healthcareから入手。
小麦胚凝集素コーティング(SPA)ビーズはGE Healthcareから入手。
【0184】
(方法)
このアッセイは、本質的には、TraynorおよびNahorski[Modulation by μ-opioid agonists of guanosine-5-O-(3-[35S]thio)triphosphate binding to membranes from human neuroblastoma SH-SY5Y cells. Mol. Pharmacol. 47: 848-854, 1995]によって記載されるようにして行う。
【0185】
細胞を、組織培養皿からかき取って20mM HEPES、1mM エチレンジアミン四酢酸に入れ、次いで500×gで10分間遠心分離する。細胞をこの緩衝液に再懸濁してPolytron Homogenizerでホモジナイズする。
【0186】
ホモジネートを27,000×gで15分間遠心分離し、そしてペレットを緩衝液A(20mM HEPES、10mM MgCl2、100mM NaCl、pH 7.4を含有する)に再懸濁する。懸濁液を20,000×gで再度遠心分離し、もう一度緩衝液Aに懸濁する。結合アッセイのために、膜(8〜15μgタンパク質)を、総容量1.0mlで目的のTMと共におよびそれなしで[35S]GTP S(50pM)、GDP(10μM)と25℃にて60分間インキュベートする。試料をガラスファイバーフィルターで濾過し、結合アッセイについて記載したように計数する。
【0187】
(実施例13 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の調製)(ノシセプチンがHN鎖のN末端側にある)
リンカー−ノシセプチン−スペーサー挿入片を、実施例2に記載のように調製する。
【0188】
(LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物の調製)
LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HN構築物(配列番号13)を作製するために、リンカー(配列番号7)をコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、同様にBamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号1)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをBamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてpMALベクター(NEB)のようなBamHI、SalI、PstI、およびHindIIIに対する独自のマルチプルクローニング部位を含むベクターを同様に切断して、これにLC/A−リンカーフラグメントを挿入する。次いで、HN/AのDNA(配列番号2)をPstIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてこれを同様に切断したpMAL−LC/A−リンカー構築物に挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HN ORF(配列番号13)を含んでおり、これは、配列番号14に示される配列のタンパク質を発現する。
【0189】
(実施例14 − ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の調製)(ノシセプチンがLC鎖のN末端側にある)
ノシセプチン−スペーサー−LC/A−HN/A構築物を作製するために、活性化のために第Xa因子部位を付加した、BamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−リンカー−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号8)として配置された血清型Aリンカーを、実施例13に記載のように合成する。このリンカーをコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、同様にBamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号1)の挿入および連結用のレシピエントとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをBamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、そして合成N末端提示ノシセプチン挿入片(配列番号9)を含む同様に切断したベクターにLC/A−リンカーフラグメントを挿入する。次いで、この構築物をAvaIおよびHindIIIで切断し、pMALプラスミド(NEB)のような発現ベクターに挿入する。次いで、HN/A DNA(配列番号2)をPstIおよびHindIII制限酵素で切断し、そして同様に切断したpMAL−ノシセプチン−LC/A−リンカー構築物に挿入する。最終構築物は、ノシセプチン−スペーサー−LC/A−HN/A ORF(配列番号51)を含んでおり、これは、配列番号52に示される配列のタンパク質を発現する。
【0190】
(実施例15 − 可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質ファミリーの調製および精製)
実施例2で用いたのと同じストラテジーを用いて、ノシセプチンおよび可変スペーサー内容をコードする種々のDNAリンカーを調製した。種々の逆翻訳ソフトウェアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0 (Entelechon)]の1つを用いて、リンカー−リガンド−スペーサー領域をコードするDNA配列を決定する。次いで、制限部位をDNA配列に組み込み、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号53から配列番号57)として配置させ得る。スペーサー、ノシセプチン、および制限配列について正しい読み枠を維持し、そしてDAMメチル化を生じ得るので塩基TCがXbaI配列の前にならないようにすることが重要である。このDNA配列を、制限配列組み込みについてスクリーニングし、そしてこの残っている配列から付加配列を手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウェアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、この最適化したDNA配列は商業的に合成され(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供される。
【0191】
作製したスペーサーは、以下を含んだ:
【0192】
【表1】
【0193】
例示のために、LC/A−CPN(GS15)−HN/A融合構築物(配列番号58)を作製するために、リンカー(配列番号54)をコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、同様にBamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号1)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをBamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてpMALベクター(NEB)のようなBamHI、SalI、PstI、およびHindIIIに対する独自のマルチプルクローニング部位を含むベクターを同様に切断して、これにLC/A−リンカーフラグメントを挿入する。次いで、HN/AのDNA(配列番号2)をPstIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてこれを同様に切断したpMAL−LC/A−リンカー構築物に挿入する。最終構築物は、LC/A−CPN(GS15)−HN/A ORF(配列番号58)を含んでおり、これは、配列番号59に示される配列のタンパク質を発現する。
【0194】
さらなる例として、LC/A−CPN(GS25)−HN/A融合構築物(配列番号60)を作製するために、リンカー(配列番号55)をコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、BamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号1)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをBamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてpMALベクター(NEB)のようなBamHI、SalI、PstI、およびHindIIIに対する独自のマルチプルクローニング部位を含むベクターを同様に切断して、これにLC/A−リンカーフラグメントを挿入する。次いで、HN/AのDNA(配列番号2)をPstIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてこれを同様に切断したpMAL−LC/A−リンカー構築物に挿入する。最終構築物は、LC/A−CPN(GS25)−HN/A ORF(配列番号60)を含んでおり、これは、配列番号61に示される配列のタンパク質を発現する。
【0195】
GS10、GS30およびHX27からなるLC/A−CPN−HN/A融合物の改変体も同様に作製する。実施例9に記載の精製法を用いて、融合タンパク質を大腸菌細胞ペーストから精製する。図9は、LC/A−CPN(GS10)−HN/A、LC/A−CPN(GS15)−HN/A、LC/A−CPN(GS25)−HN/A、LC/A−CPN(GS30)−HN/AおよびLC/A−CPN(HX27)−HN/Aの場合に得られた精製産物を示している。
【0196】
(実施例16 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物のインビトロ効力の評価)
実施例2および9に従って調製した融合タンパク質をeDRG神経細胞モデルにおいて評価した。
【0197】
サブスタンスP放出の阻害およびSNAP−25の切断に関するアッセイは、以前に報告されている(Dugganら, 2002, J. Biol. Chem., 277, 34846-34852)。簡潔にいえば、背根神経節神経細胞を15日齢胎児Sprague-Dawleyラットから摘出し、そして解離した細胞を、Matrigelでコーティングされた24ウェルプレート上に、1×106細胞/ウェルの密度で播種した。播種の1日後、細胞を10μM シトシンβ−D−アラビノフラノシドで48時間処理する。細胞を、5%熱不活性化ウシ胎児血清、5mM L−グルタミン、0.6% D−グルコース、2% B27補充物、および100ng/ml 2.5Sマウス神経成長因子を加えたダルベッコ最小必須培地中に維持する。試験物質を添加する前、培養物を95%空気/5%CO2中に37℃にて2週間維持する。
【0198】
eDRGからのサブスタンスPの放出を酵素結合免疫吸着アッセイによって評価する。簡潔にいえば、eDRG細胞を低カリウム平衡塩類溶液(BSS:5mM KCl、137mM NaCl、1.2mM MgCl2、5mMグルコース、0.44mM KH2PO4、20mM HEPES、pH 7.4、2mM CaCl2)で2回洗浄する。基本試料を、各ウェルを1mlの低カリウムBSSと5分間インキュベートすることにより得る。この緩衝液を除去した後、1mlの高カリウム緩衝液(上記BSSに対して100mM KClを含む(NaClで等張平衡化)ように改変した)と5分間インキュベートすることにより、細胞を放出に対して刺激する。サブスタンスPのアッセイ前に、全ての試料を氷上のチューブに移す。250μlの2M酢酸/0.1%トリフルオロ酢酸を添加して細胞を溶解し、遠心分離にてエバポレートし、そして500μlのアッセイ緩衝液に再懸濁することにより、全細胞溶解物を調製する。希釈した試料を、サブスタンスP含量について評価する。サブスタンスP免疫反応性を、サブスタンスP酵素免疫アッセイキット(Cayman Chemical CompanyまたはR&D Systems)を製造者の指示書に従って用いて測定する。サブスタンスPは、並行して実行した標準サブスタンスP曲線に対してpg/mlで表す。
【0199】
SDS-PAGEおよびウェスタンブロット分析を、標準プロトコル(Novex)を用いて実施した。SNAP−25タンパク質を12%Tris/グリシンポリアクリルアミドゲル(Novex)上で分離し、引き続いてニトロセルロース膜に転写した。この膜を、切断されたSNAP−25および完全なSNAP−25を認識するモノクローナル抗体(SMI−81)でプローブした。ペルオキシダーゼ結合二次抗体および化学発光検出系を用いて特異的結合を可視化した。SNAP−25の切断を、走査デンシトメトリー(Molecular Dynamics Personal SI, ImageQuantデータ解析ソフトウェア)によって定量した。SNAP−25の切断パーセントを、以下の式に従って算定した:(切断されたSNAP−25/(切断されたSNAP−25+完全なSNAP−25))×100。
【0200】
LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN−Aと称する)へのeDRG神経細胞の曝露後、サブスタンスP放出の阻害とSNAP−25の切断との両方が観察されている(図10)。融合物への24時間の曝露後、6.3±2.5nMの融合物濃度で、最大の50%のSNAP−25切断が生じている。
【0201】
融合物の効果は、CPN−AへのeDRGの16時間曝露後の所定の時点でも評価している。図11は、CPN−A融合タンパク質の長期にわたる作用期間を示しており、曝露後28日でもなお、測定可能な活性が観察されている。
【0202】
(実施例17 − LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物のインビトロ効力の評価)
実施例8および9に従って調製した融合タンパク質を、実施例16に記載の方法を用いて、eDRG神経細胞モデルにおいて評価した。
【0203】
LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv−Aと称する)へのeDRG神経細胞の曝露後、サブスタンスP放出の阻害とSNAP−25の切断との両方が観察されている。融合物への24時間の曝露後、1.4±0.4nMの融合物濃度で、最大の50%のSNAP−25切断が生じている(図12)。
【0204】
融合物の効果は、CPN−AへのeDRGの16時間曝露後の所定の時点でも評価している。図13は、CPN−A融合タンパク質の長期にわたる作用期間を示しており、曝露後24日でもなお、測定可能な活性が観察されている。
【0205】
また、CPNv−A融合タンパク質の結合能を、CPN−A融合物と比較して評価している。図14は、ORL−1レセプターでの結合効力を決定するための競合実験の結果を示している。CPNv−Aが[3H]−ノシセプチンを置き換えることが示され、それにより、中心提示フォーマットのリガンドを用いて、レセプターへの接近が可能であることが確認される。
【0206】
(実施例18 − エンテロキナーゼでの処理により活性化されるLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の調製)
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/A(配列番号1)およびHN/A(配列番号2)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−エンテロキナーゼプロテアーゼ部位−ノシセプチン改変体−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号62)として配置された血清型Aノシセプチン改変体リンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN ORF配列(配列番号63)を含んでおり、これは、配列番号64に示される配列のタンパク質を発現する。この融合タンパク質をCPNv(Ek)−Aと称する。図15は、活性化のために100μgの融合タンパク質当たり0.00064μgでエンテロキナーゼを用いたこと以外は実施例9で使用した方法に従って行った、大腸菌からのCPNv(Ek)−Aの精製を示している。
【0207】
(実施例19 − エンテロキナーゼでの処理により活性化されているLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物のインビトロ効力の評価)
実施例18で調製したCPNv(Ek)−Aを精製形態で得て、eDRG細胞モデルに適用してSNAP−25の切断を評価する(実施例16からの方法を用いる)。図16は、CPNv(Ek)−AへのeDRGの24時間曝露後のSNAP−25の切断を示している。切断の効率は、実施例17に報告したような第Xa因子切断物で得られるのと同様であることが観察される。
【0208】
(実施例20 − 血清型Aに由来する第Xa因子活性化リンカーを伴うLC/C−ノシセプチン改変体−HN/C融合タンパク質の調製)
実施例4で使用した方法に従って、LC/C(配列番号5)およびHN/C(配列番号6)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−ノシセプチン改変体−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号65)として配置された血清型Aノシセプチン改変体リンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN ORF配列(配列番号66)を含んでおり、これは、配列番号67に示される配列のタンパク質を発現する。この融合タンパク質をCPNv−C(act.A)と称する。図17は、実施例9で使用した方法に従って行った、大腸菌からのCPNv−C(act.A)の精製を示している。
【0209】
(実施例21 − LC/C−ノシセプチン改変体−HN/C融合タンパク質のインビトロ効力の評価)
実施例9で使用した方法に従って、実施例20で調製したCPNv−C(act.A)を精製形態で得て、eDRG細胞モデルに適用してSNAP−25の切断を評価する(実施例16からの方法を用いる)。融合物への24時間曝露後、3.1±2.0nMの融合物濃度で、最大の50%のシンタキシン切断が生じている。図18は、CPNv−C(act.A)へのeDRGの24時間曝露後のシンタキシンの切断を示している。
【0210】
(実施例22 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物のインビボ効力の評価)
LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN/A)が急性カプサイシン誘発機械的異痛を抑制する能力を、ラット後肢足蹠への皮下足底内注入により評価する。試験動物を、研究に参加させる前;CPN/Aでの皮下処置後カプサイシン投与前;およびCPN/Aの注射後カプサイシン追加投与後(15分および30分での応答の平均)の10gのVon Freyフィラメントによる一連の刺激(10刺激×3試行)に応じた足逃避率(PWF%)について評価する。カプサイシン追加投与を10μLの0.3%溶液の注射によって行う。試料希釈液を0.5%BSA/生理食塩水中で調製する。図19は、LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物の種々の濃度での動物の前処置により得られる機械的異痛の逆転を示している。
【0211】
LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN/A)がラットにおいてストレプトゾトシン(STZ)誘発機械的(触覚)異痛を抑制する能力を評価する。ラットにおけるSTZ誘発機械的異痛をストレプトゾトシンの注射(腹腔内または静脈内)によって生じさせる。これにより、膵臓β細胞が破壊され、インスリン生産の喪失が生じ、代謝ストレスを併発する(高血糖および高脂血症)。このように、STZは、I型糖尿病を誘発する。さらに、STZ処置により神経障害の進行性の発症が生じ、これは、痛覚過敏および異痛を伴う慢性疼痛のモデルとなり、これは、ヒト糖尿病患者で観察される徴候(末梢糖尿病性神経障害)を反映し得る。
【0212】
Sprague-Dawley雄ラット(250〜300g)をクエン酸緩衝液中65mg/kgのSTZで(静脈内)処置し、そして毎週、血中のグルコースおよび脂質を測定して、モデルの準備ができていることを確認する。足逃避閾値(PWT)を所定の期間にわたりVon Freyフィラメントによる一連の刺激に応じて測定する。異痛は、2つの連続した試験日(1週間空ける)でのPWTがスケールで6gを下回って測定された場合に確立されるとする。この時点で、ラットを生理食塩水群(陰性効力コントロール)、ガバペンチン群(陽性効力コントロール)または試験群(CPN/A)に無作為に振り分ける。試験物質(20〜25μl)を1回の注射で皮下注入し(ガバペンチンを除く)、PWTを処置後1日目およびその後2週間にわたって定期的に測定する。ガバペンチン(3ml/kg注入容量で30mg/kg腹腔内)は、毎日、PWT試験開始の2時間前に注射する。図20は、750ngのCPN/Aでの動物の前処置により得られる異痛の逆転を示している。データは、CPN/Aの単回注射後2週間にわたって得た。
【0213】
(実施例23 − LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物のインビボ効力の評価)
LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv/A)がカプサイシン誘発機械的異痛を抑制する能力を、ラット後肢足蹠への皮下足底内注入により評価する。試験動物を、研究に参加させる前(処置前);CPNv/Aでの皮下足底内処置後カプサイシン投与前(CAP前);およびCPNv/Aの注射後カプサイシン追加投与後(15分および30分での応答の平均;CAP)の10gのVon Freyフィラメントによる一連の刺激(10刺激×3試行)に応じた足逃避率(PWF%)について評価する。カプサイシン追加投与を10μLの0.3%溶液の注射によって行う。試料希釈液を0.5%BSA/生理食塩水中で調製する。
【0214】
図21は、LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物の種々の濃度での動物の前処置により得られる機械的異痛の逆転を、LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物の添加で得られた逆転と比較して示している。これらのデータを、正規化足逃避率差として表し、これは、ピーク応答(カプサイシン後)とベースライン応答(カプサイシン前)との間の差を百分率にて示す。この分析にて、CPNv/Aは、CPN/Aよりも強力であることが理解され得る。これは、CPNv/Aでは、CPN/Aで見られるのと同様の鎮痛効果を生じるのに必要とする投薬量が、より少ないからである。
【0215】
(実施例24 − LC/A−leuエンケファリン−HN/A融合タンパク質の調製)
leuエンケファリンリガンドのサイズが小さい(5アミノ酸)ため、LC/A−leuエンケファリン−HN/A融合物を、鋳型としてLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号13)を用いる部位特異的変異誘発[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]によって作製する。YGGFL leuエンケファリンペプチドをコードし、標準的な大腸菌コドン利用を維持して付加的な制限部位が組み込まれないようにし、ノシセプチン部分のいずれかの側のLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号13)のリンカー領域に相補的な配列が隣接するオリゴヌクレオチドを設計する。SDM産物を配列決定により確認し、そして最終構築物は、LC−リンカー−leuエンケファリン−スペーサー−HN ORF(配列番号68)を含んでおり、これは、配列番号69に示される配列のタンパク質を発現する。この融合タンパク質をCPLE−Aと称する。図22は、実施例9で使用した方法に従って行った、大腸菌からのCPLE−Aの精製を示している。
【0216】
(実施例25 − LC/A−βエンドルフィン−HN/A融合タンパク質の発現および精製)
実施例9で使用した方法に従って、そして実施例7で作製したLC/A−βエンドルフィン−HN/A融合タンパク質(CPBE−Aと称する)を用いて、CPBE−Aを大腸菌から精製する。図23は、精製したタンパク質をSDS-PAGEによる分析にて示している。
【0217】
(実施例26 − LC/A−ノシセプチン変異体−HN/A融合タンパク質の調製)
1位をPheからTyrにするようにノシセプチン配列を変異させるのに必要な単一アミノ酸改変のために、LC/A−ノシセプチン変異体−HN/A融合物を、鋳型としてLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号13)を用いる部位特異的変異誘発[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]によって作製する。ノシセプチン配列の1位でチロシンをコードし、標準的な大腸菌コドン利用を維持して付加的な制限部位が組み込まれないようにし、ノシセプチン部分のいずれかの側のLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号13)のリンカー領域に相補的な配列が隣接するオリゴヌクレオチドを設計する。SDM産物を配列決定により確認し、そして最終構築物は、LC/A−ノシセプチン変異体−スペーサー−HN/A融合物ORF(配列番号70)を含んでおり、これは、配列番号71に示される配列のタンパク質を発現する。この融合タンパク質をCPOP−Aと称する。図24は、実施例9で使用した方法に従って行った、大腸菌からのCPOP−Aの精製を示している。
【0218】
(実施例27 − LC/A−ノシセプチン改変体変異体−HN/A融合タンパク質の調製および評価)
1位をPheからTyrにするようにノシセプチン配列を変異させるのに必要な単一アミノ酸改変のために、LC/A−ノシセプチン改変体変異体−HN/A融合物を、鋳型としてLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(配列番号25)を用いる部位特異的変異誘発[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]によって作製する。ノシセプチン配列の1位でチロシンをコードし、標準的な大腸菌コドン利用を維持して付加的な制限部位が組み込まれないようにし、ノシセプチン部分のいずれかの側のLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(配列番号25)のリンカー領域に相補的な配列が隣接するオリゴヌクレオチドを設計する。SDM産物を配列決定により確認し、そして最終構築物は、LC/A−ノシセプチン変異体−スペーサー−HN/A融合物ORF(配列番号72)を含んでおり、これは、配列番号73に示される配列のタンパク質を発現する。この融合タンパク質をCPOPv−Aと称する。図25は、実施例9で使用した方法に従って行った、大腸菌からのCPOPv−Aの精製を示している。
【0219】
実施例16に記載の方法を用いて、CPOPv−AをeDRG細胞モデルでSNAP−25を切断する能力について評価する。図26は、CPOPv−AがeDRGモデルでSNAP−25を切断できることを示しており、約5.9nMの融合物に細胞を24時間曝露した後、最大の50%のSNAP−25切断を生じている。
【0220】
(実施例28 − IgAプロテアーゼ−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の調製)
IgAプロテアーゼアミノ酸配列を、自由に利用可能なデータベースソース(例えば、GenBank(アクセッション番号P09790))から入手した。N. GonorrhoeaeIgAプロテアーゼ遺伝子の構造に関する情報は、文献で入手可能である(Pohlnerら, Gene structure and extracellular secretion of Neisseria gonorrhoeae IgA protease, Nature, 1987, 325(6103), 458-62)。Backtranslation tool v2.0(Entelechon)を用いて、大腸菌発現のために改変したIgAプロテアーゼをコードするDNA配列を決定した。BamHI認識配列をIgA DNAの5’末端に組み込み、システインアミノ酸をコードするコドンおよびSalI認識配列をIgA DNAの3’末端に組み込んだ。DNA配列を、逆翻訳の間に組み込まれた制限酵素切断配列について、MapDraw,(DNASTAR Inc.)を用いてスクリーニングした。クローニングに必要とされる配列と共通であることが見出されている切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)によって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表を参照することによって評価した。次いで、IgAオープンリーディングフレーム(ORF)を含むこの最適化したDNA配列(配列番号74)は商業的に合成される。
【0221】
IgA(配列番号74)を、BamHIおよびSalI制限酵素を用いてLC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN ORF(配列番号25)に挿入して、LCをIgAプロテアーゼDNAに置換する。最終構築物は、IgA−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN ORF(配列番号75)を含んでおり、これは、配列番号76に示される配列のタンパク質を発現する。
【0222】
(実施例29 − 取り外し可能なヒスチジン精製タグを伴うノシセプチン標的エンドペプチダーゼ融合タンパク質の調製および評価)
第Xa因子の取り外し可能なhisタグ(his6)をコードするDNAを調製したが、エンテロキナーゼのような別のプロテアーゼ部位およびもっと長いヒスチジンタグのような別の精製タグもまた可能であることが明らかである。種々の逆翻訳ソフトウェアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0(Entelechon)]の1つを用いて、第Xa因子の取り外し可能なhisタグ領域をコードするDNA配列を決定する。次いで、制限部位をこのDNA配列に組み込み、NheI−リンカー−SpeI−PstI−HN/A−XbaI−LEIEGRSGHHHHHH停止コドン−HindIII(配列番号77)として配置させ得る。このDNA配列を、組み込まれた制限配列についてスクリーニングし、そしてこの残っている配列から付加配列を手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウェアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、この最適化したDNA配列は商業的に合成され(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供される。CPNv−A−FXa−HT(配列番号78、取り外し可能なhisタグ構築物)を作製するために、取り外し可能なhisタグをコードしているpCR 4ベクターをNheIおよびHindIIIで切断する。次いで、NheI−HindIIIフラグメントを、同様にNheIおよびHindIIIによって切断しておいたLC/A−CPNv−HN/Aベクター(配列番号25)に挿入する。最終構築物は、LC/A−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN−FXa−Hisタグ−HindIII ORF配列(配列番号78)を含んでおり、これは、配列番号79に示される配列のタンパク質を発現する。図27は、実施例9で使用した方法に従って行った、大腸菌からのCPNv−A−FXa−HTの精製を示している。
【0223】
(実施例30 − ジフテリア毒素由来トランスロケーションドメインを含むleuエンケファリン標的エンドペプチダーゼ融合タンパク質の調製)
DNA配列を、種々の逆翻訳ソフトウェアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0(Entelechon)]の1つを用いて、ジフテリア毒素のトランスロケーションドメインのアミノ酸配列(自由に利用可能なデータベースソース(例えば、GenBank(アクセッション番号1XDTT))から入手)の逆翻訳によって設計する。次いで、制限部位をこのDNA配列に組み込み、NheI−リンカー−SpeI−PstI−ジフテリアトランスロケーションドメイン−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号80)として配置させ得る。PstI/XbaI認識配列を、配列のトランスロケーションドメインの5’末端および3’末端のそれぞれに組み込み、正しい読み枠を維持する。このDNA配列を、逆翻訳の間に組み込まれた制限酵素切断配列について、(MapDraw(DNASTAR Inc.)のようなソフトウェアを用いて)スクリーニングする。クローニング系に必要とされる配列と共通であることが見出されている切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウェアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、ジフテリアトランスロケーションドメインを含むこの最適化したDNA配列は、NheI−リンカー−SpeI−PstI−ジフテリアトランスロケーションドメイン−XbaI−停止コドン−HindIIIとして商業的に合成され(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター(Invitrogen)中に提供される。ジフテリアトランスロケーションドメインをコードしているpCR 4ベクターをNheIおよびXbaIで切断する。次いで、NheI−XbaIフラグメントを、同様にNheIおよびXbaIによって切断しておいたLC/A−CPLE−HN/Aベクター(配列番号68)に挿入する。最終構築物は、LC/A−leuエンケファリン−スペーサー−ジフテリアトランスロケーションドメインのORF配列(配列番号81)を含んでおり、これは、配列番号82に示される配列のタンパク質を発現する。
【0224】
(実施例31 − 破傷風菌毒素由来LCドメインを含むノシセプチン改変体標的エンドペプチダーゼ融合タンパク質の調製)
DNA配列を、種々の逆翻訳ソフトウェアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0(Entelechon)]の1つを用いて、破傷風菌毒素LCアミノ酸配列(自由に利用可能なデータベースソース(例えば、GenBank(アクセッション番号X04436))から入手)の逆翻訳によって設計する。BamHI/SalI認識配列を、配列の5’末端および3’末端のそれぞれに組み込み、正しい読み枠を維持する(配列番号83)。このDNA配列を、逆翻訳の間に組み込まれた制限酵素切断配列について、(MapDraw(DNASTAR Inc.)のようなソフトウェアを用いて)スクリーニングする。クローニング系に必要とされる配列と共通であることが見出されている切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウェアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、破傷風菌毒素LCのオープンリーディングフレーム(ORF)を含むこの最適化したDNA配列は、商業的に合成され(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター(Invitrogen)中に提供される。TeNT LCをコードしているpCR 4ベクターをBamHIおよびSalIで切断する。次いで、BamHI−SalIフラグメントを、同様にBamHIおよびSalIによって切断しておいたLC/A−CPNv−HN/Aベクター(配列番号25)に挿入する。最終構築物は、TeNT LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN ORF配列(配列番号84)を含んでおり、これは、配列番号85に示される配列のタンパク質を発現する。
【0225】
(実施例32 − 第Xa因子切断を受けやすい天然型血清型Cリンカーを伴うLC/C−ノシセプチン改変体−HN/C融合タンパク質の調製)
実施例4で使用した方法に従って、LC/C(配列番号5)およびHN/C(配列番号6)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−ノシセプチン改変体−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号86)として配置された血清型Cノシセプチン改変体リンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN ORF配列(配列番号87)を含んでおり、これは、配列番号88に示される配列のタンパク質を発現する。この融合タンパク質をCPNv−C(act.C)と称する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、非細胞傷害性融合タンパク質および鎮痛分子としてのその治療的適用に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、毒素は、標的細胞に対して有する効果のタイプに従って2つの群に分けられ得る。より詳細には、第一の毒素群は、それらの天然の標的細胞を殺傷し、このため、細胞傷害性毒素分子として知られる。この毒素群は、とりわけ、植物毒素(例えば、リシンおよびアブリン)および細菌毒素(例えば、ジフテリア毒素およびシュードモナス外毒素A)によって例示される。細胞傷害性毒素は、細胞性障害および状態(例えば、癌)の治療のために「魔法の弾丸」(例えば、免疫結合体;これは、細胞傷害性毒素構成部分と標的細胞上の特異的マーカーに結合する抗体とを含む)の設計に多くの関心をひきつけている。細胞傷害性毒素は、代表的には、タンパク質合成の細胞プロセスを阻害することにより、それらの標的細胞を殺傷する。
【0003】
第二の毒素群は、非細胞傷害性毒素として知られ、(これらの名称が証明するとおり)それらの天然の標的細胞を殺傷しない。非細胞傷害性毒素は、それらの細胞傷害性のものほどには商業上の関心をひきつけず、そしてタンパク質合成以外の細胞プロセスを阻害することにより、標的細胞に対してそれらの効果を発揮する。非細胞傷害性毒素は、種々の植物および種々の微生物(例えば、Clostridium sp.およびNeisseria sp.)から生成される。
【0004】
クロストリジウム神経毒素は、代表的には150kDaの程度の分子量を有するタンパク質である。それらは、種々の細菌種、特に、クロストリジウム属の細菌、最も重要にはC. tetaniおよびC. botulinumの数株、C. butyricum、およびC. argentinenseによって生成される。現在、クロストリジウム神経毒素の8つの異なるクラスが存在し(すなわち、破傷風菌毒素およびボツリヌス菌神経毒素(その血清型A、B、C1、D、E、FおよびG))、そしてそれらは全て、類似の構造および作用様式を共有する。
【0005】
クロストリジウム神経毒素は、非細胞傷害性毒素分子の主要な群を代表し、そして単一ポリペプチドとして宿主細菌によって合成され、この単一ポリペプチドは、タンパク質分解切断事象によって翻訳後修飾されて、ジスルフィド結合によって互いに結合された2つのポリペプチド鎖を形成する。これらの2つの鎖は、重鎖(H鎖)(これは、約100kDaの分子量を有する)および軽鎖(L鎖)(これは、約50kDaの分子量を有する)と称される。
【0006】
L鎖は、プロテアーゼ機能(亜鉛依存性エンドペプチダーゼ活性)を有し、そしてエキソサイトーシスプロセスに関与する小胞および/または原形質膜会合タンパク質に対する高い基質特異性を示す。異なるクロストリジウム種または血清型に由来するL鎖は、3つの基質タンパク質(すなわち、シナプトブレビン、シンタキシン、またはSNAP−25)の1つにおいて、異なるが特定のペプチド結合を加水分解し得る。これらの基質は、神経分泌機構の重要な構成部分である。
【0007】
Neisseria sp.(N. gonorrhoeaeの種の中から最も重要である)は、機能的に類似する非細胞傷害性プロテアーゼを生産する。このようなプロテアーゼの一例は、IgAプロテアーゼである(WO99/58571を参照のこと)。
【0008】
毒素分子が、その毒素の天然の標的細胞ではない細胞にリターゲティングされ得ることが当該分野において十分に書き記されている。そのようにリターゲティングされたとき、改変毒素は、所望の標的細胞に結合し得、そしてそれに続くサイトゾルへのトランスロケーション後、標的細胞にその効果を発揮し得る。該リターゲティングは、毒素の天然のターゲティング部分(TM)を異なるTMと置き換えることによって達成される。これに関して、TMは、それが所望の標的細胞に結合し、そして標的細胞内のエンドソームへの改変毒素の引き続く通過を可能にするように選択される。改変毒素はまた、非細胞傷害性プロテアーゼの細胞サイトゾルへの侵入を可能にするトランスロケーションドメインを含む。このトランスロケーションドメインは、毒素の天然のトランスロケーションドメインであり得るか、またはトランスロケーション活性を有する微生物タンパク質から得られる別のトランスロケーションドメインであり得る。
【0009】
例えば、WO94/21300は、改変クロストリジウム神経毒素分子を記載しており、この分子は、標的細胞の細胞表面に存在する膜貫通タンパク質(IMP)密度を調節し得る。したがって、この改変神経毒素分子は、標的細胞の細胞活性(例えば、グルコース取り込み)を制御し得る。WO96/33273およびWO99/17806は、末梢感覚求心性神経をターゲティングする改変クロストリジウム神経毒素分子を記載している。したがって、この改変神経毒素分子は、鎮痛効果を示し得る。WO00/10598は、粘液過分泌細胞(または該粘液過分泌細胞を制御する神経細胞)をターゲティングする改変クロストリジウム神経毒素分子の調製を記載している。この改変神経毒素は、該細胞からの過分泌を阻害し得る。WO01/21213は、広範な異なるタイプの非神経細胞標的細胞をターゲティングする改変クロストリジウム神経毒素分子を記載している。したがって、この改変分子は、標的細胞からの分泌を妨害し得る。リターゲティングされる毒素分子の技術分野におけるさらなる刊行物としては、以下が挙げられる:WO00/62814;WO00/04926;US5,773,586;WO93/15766;WO00/61192;およびWO99/58571。
【0010】
上記TM置換は、当業者に周知の従来の化学的結合体化技術によって行われ得る。これに関して、Hermanson, G.T. (1996), Bioconjugate techniques, Academic Press, およびWong, S.S. (1991), Chemistry of protein conjugation and cross-linking, CRC Pressに言及されている。
【0011】
しかし、化学的結合体化は、しばしば不正確である。例えば、結合体化によって、TMは、1つより多くの付着部位でその結合体の残りの部分に結合され得る。
【0012】
また、化学的結合体化は制御するのが困難である。例えば、TMは、プロテアーゼ構成部分および/またはトランスロケーション構成部分上の付着部位で改変毒素の残りの部分に結合され得る。これは、該構成部分の一方のみへの(好ましくは単一の部位での)付着が治療効力のために望まれる場合、問題となる。
【0013】
したがって、化学的結合体化は、改変毒素分子の混合集団を生じ、これは望ましくない。
【0014】
化学的結合体化の代替として、単一ポリペプチド融合タンパク質の組換え調製によってTM置換が行われ得る(WO98/07864を参照のこと)。この技術は、天然型クロストリジウム神経毒素(すなわち、ホロ毒素)が調製されるインビボの細菌機構に基づいており、そして以下の構造配置を有する融合タンパク質を生じる:
NH2−[プロテアーゼ構成部分]−[トランスロケーション構成部分]−[TM]−COOH
【0015】
WO98/07864によれば、TMは、融合タンパク質のC末端の方に配置される。次いで、この融合タンパク質がプロテアーゼでの処理によって活性化される。このプロテアーゼは、プロテアーゼ構成部分とトランスロケーション構成部分との間の部位で切断する。したがって、二本鎖のタンパク質が生成される。この二本鎖タンパク質は、TMを加えたトランスロケーション構成部分を含む別のポリペプチド単鎖に(ジスルフィド架橋を介して)共有結合されたポリペプチド単鎖としてプロテアーゼ構成部分を含む。WO98/07864の方法は、(融合タンパク質の構造配置の点で)クロストリジウムホロ毒素の天然発現系に従うが、本発明者らは、この系が、意図した標的細胞に対する結合能が実質的に減少されたある種の融合タンパク質の生成を生じ得ることを見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、非細胞傷害性融合タンパク質の構築系を別に見出すか、または改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、以下を含む単鎖ポリペプチド融合タンパク質を提供することによって、上記の問題点の1つ以上を解消している。単鎖ポリペプチド融合タンパク質は、
a.非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントであって、侵害受容感覚求心性神経細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る、プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメント;
b.該侵害受容感覚求心性神経細胞上の結合部位に結合し得るターゲティング部分であって、該結合部位が、エンドサイトーシスを受けて該侵害受容感覚求心性神経細胞内のエンドソームに取り込まれ得る、ターゲティング部分;
c.プロテアーゼ切断部位であって、該部位でプロテアーゼにより該融合タンパク質が切断され得、該プロテアーゼ切断部位が、該非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントと該ターゲティング部分との間に位置している、プロテアーゼ切断部位;および
d.トランスロケーションドメインであって、エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性神経細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをトランスロケートさせ得る、トランスロケーションドメイン
を含む。
【0018】
WO98/07864の系は、標的細胞上の結合部位との相互作用のためにC末端ドメインを必要とするTMを有する結合体の調製のために十分に作用している。これに関して、WO98/07864は、標的細胞上の結合部位と相互作用するのに「フリー」であるC末端ドメインを有する融合タンパク質を提供している。本発明者らは、この構造配置が全てのTMに適しているわけではないことを見出した。TMの1つのこのようなカテゴリーは、侵害受容感覚求心性神経細胞に結合するTM群である。より詳細には、本発明者らは、WO98/07864の融合タンパク質系は、侵害受容感覚求心性神経細胞上の結合部位と相互作用するためにN末端側ドメインを必要とするTMには最適ではないことを見出した。特に、この問題点は、侵害受容感覚求心性神経細胞上の結合部位と相互作用するために、特定のN末端アミノ酸残基またはこの特定のN末端アミノ酸残基を含むアミノ酸残基からなる特定配列を必要とするTMにとって重大である。
【0019】
WO98/07864とは対照的に、本発明は、結合体のTM構成部分が、TMの内部ドメインまたは中間部の方に位置している(すなわち、直鎖状ペプチド配列の)アミノ酸配列、好ましくはTMのN末端の方に位置しているアミノ酸配列、より好ましくはN末端にまたはその付近に位置しているアミノ酸配列内に、関連結合ドメインを含む、非細胞傷害性結合体を調製するためのシステムを提供する。N末端側ドメインは、侵害受容感覚求心性神経細胞上の結合部位に結合し得、そしてTMは、好ましくは、アミノ酸残基の特定の所定の配列がそのN末端で「フリー」であるとの要件を有している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の精製を示す。
【図2】ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の精製を示す。
【図3】LC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の精製を示す。
【図4】LC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質の精製を示す。
【図5】LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質とノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質との結合効力の比較を示す。
【図6】LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ触媒活性を示す。
【図7】LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の精製を示す。
【図8】LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質とLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質との結合効力の比較を示す。
【図9】可変スペーサー長産物を有する発現/精製LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質ファミリーを示す。
【図10】CPN−AによるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断を示す。
【図11】CPN−AへのDRGの曝露後長期間にわたるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断を示す。
【図12】CPNv−AによるSNAP−25の切断を示す。
【図13】CPNv−AへのDRGの曝露後長期間にわたるSNAP−25の切断を示す。
【図14】[3H]−ノシセプチン結合のCPNv−A融合物媒介置換を示す。
【図15】発現/精製CPNv(Ek)−A産物を示す。
【図16】CPNv(Ek)−AによるSNAP−25の切断を示す。
【図17】発現/精製CPNv−C産物を示す。
【図18】CPNv−Cによるシンタキシンの切断を示す。
【図19】急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPN−A効力を示す。
【図20】ストレプトゾトシン(STZ)誘発末梢糖尿病性神経障害(神経因性疼痛)モデルにおけるCPN−A効力を示す。
【図21】急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPNv−A効力を示す。
【図22】発現/精製LC/A−CPLE−HN/A産物を示す。
【図23】発現/精製LC/A−CPBE−HN/A産物を示す。
【図24】発現/精製CPOP−A産物を示す。
【図25】発現/精製CPOPv−A産物を示す。
【図26】DRG細胞モデルにおけるインビトロSNAP−25切断を示す。
【図27】発現/精製CPNv−A−FXa−HT(取り外し可能hisタグ)を示す。
【図28】リガンド競合アッセイにより評価した可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力を示す。
【図29】インビトロSNAP−25切断により評価した可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分は、非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントであり、このプロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントは、侵害受容感覚求心性神経細胞のエキソサイトーシス融合器官の3つの基質タンパク質、すなわち、シナプトブレビン、シンタキシン、またはSNAP−25の1つにおいて、異なるが特定のペプチド結合を切断し得る。これらの基質は、神経分泌機構の重要な構成部分である。本発明の非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分は、好ましくは、ナイセリアIgAプロテアーゼもしくはそのフラグメントまたはクロストリジウム神経毒素L鎖もしくはそのフラグメントである。特に好ましい非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分は、ボツリヌス神経毒素(BoNT)L鎖またはそのフラグメントである。
【0022】
本発明のトランスロケーション構成部分は、プロテアーゼ活性の機能的発現が標的細胞のサイトゾル内で生じるように、標的細胞への非細胞傷害性プロテアーゼ(またはそのフラグメント)のトランスロケーションを可能にする。トランスロケーション構成部分は、好ましくは、低pH条件下で脂質膜中にイオン透過孔を形成し得る。好ましくは、エンドソーム膜内の孔形成が可能なタンパク質分子の部分のみを使用することが見出されている。トランスロケーション構成部分は、微生物タンパク質供給源(特に、細菌またはウイルスタンパク質供給源)から得られ得る。したがって、1つの実施態様では、トランスロケーション構成部分は、細菌毒素またはウイルスタンパク質のような酵素のトランスロケーションドメインである。本発明のトランスロケーション構成部分は、好ましくは、クロストリジウム神経毒素H鎖またはそのフラグメントである。最も好ましくは、それは、HNドメイン(またはその機能的構成部分)である。HNは、H鎖のアミノ末端側半分にほぼ等価なクロストリジウム神経毒素のH鎖の一部またはフラグメント、または完全なH鎖中のそのフラグメントに対応するドメインを意味する。
【0023】
本発明のTM構成部分は、本発明の結合体の標的細胞上の結合部位への結合を担う。したがって、TM構成部分は、単に、選択された標的細胞に対して本発明の結合体が結合するリガンドである。
【0024】
本発明においては、標的細胞は、侵害受容感覚求心性神経細胞、好ましくは、一次侵害受容求心性神経細胞(例えば、A線維(例えば、Aδ線維)またはC線維)である。したがって、本発明の結合体は、侵害受容感覚求心性神経細胞の分離した集団からの神経伝達物質または神経調節物質[例えば、グルタミン酸塩、サブスタンスP、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、および/またはニューロペプチドY]の放出を阻害し得る。使用に際して、結合体は、末梢から中枢疼痛線維への感覚求心性シグナル(例えば、神経伝達物質または神経調節物質)の伝達を減少または妨害し、したがって、疼痛(特に慢性疼痛)の治療用の治療分子としての適用を有する。
【0025】
TMが侵害受容感覚求心性神経細胞に結合することを確認することは通常の技術によってなされる。例えば、侵害受容感覚求心性神経細胞の代表となる組織または細胞(例えば、DRG)が、過剰な非標識リガンドの存在下で標識(例えば、トリチウム化)リガンドに曝露される簡単な放射能置換実験が、用いられ得る。このような実験において、非特異的結合および特異的結合の相対的割合を求め、それにより、リガンドが侵害受容感覚求心性神経標的細胞に結合することの確認が可能になり得る。必要に応じて、アッセイは、1つ以上の結合アンタゴニストを含み得、そしてこのアッセイは、リガンド結合の喪失を観察する工程をさらに含み得る。このタイプの実験の例は、Hulme, E.C. (1990), Receptor-binding studies, 概要, 303〜311頁, Receptor biochemistry, A Practical Approach, E.C. Hulme編, Oxford University Pressに見出され得る。
【0026】
本発明の融合タンパク質は、概して、対応する「フリー」なTMと比較した場合、侵害受容感覚求心性神経標的細胞に対して(100倍までの範囲で)低下した結合親和性を示している。しかし、この観察にも関わらず、本発明の融合タンパク質は、驚くべきことに、良好な効力を示している。これは、2つの主要な特徴に帰するものであり得る。第一に、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分は、触媒性である。したがって、少数のこのような分子の治療効果が迅速に増幅される。第二に、侵害受容感覚求心性神経細胞上に存在するレセプターは、治療剤の侵入のための出入口としてのみ作用する必要があり、必ずしもリガンド−レセプター媒介薬理学的応答を達成するために必要とされるレベルまで刺激される必要はない。したがって、本発明の融合タンパク質は、他のタイプの鎮痛分子(例えば、NSAIDS、モルヒネ、およびガバペンチン)について用いられるよりもずっと低い投薬量で投与され得る。後者のタイプの分子は、代表的には、高マイクログラムからミリグラム(数百ミリグラムまででさえある)量で投与される。これに対して、本発明の融合タンパク質は、ずっとより低い投薬量(代表的には少なくとも10倍低く、そしてより代表的には100倍低い)で投与され得る。
【0027】
TMは、好ましくは最大で50アミノ酸残基、より好ましくは最大で40アミノ酸残基、特に好ましくは最大で30アミノ酸残基、そして最も好ましくは最大で20アミノ酸残基を含む。
【0028】
オピオイドは、本発明のTMの好ましい群を代表する。このペプチドファミリー内には、エンケファリン(metおよびleu)、エンドモルフィン1および2、β−エンドルフィンおよびダイノルフィンが含まれる。オピオイドペプチドは、侵害受容器および疼痛応答に関与する他の細胞に対する活性を改変するために、臨床で頻繁に使用されている。世界保健機構の三段階徐痛ラダー(three-step World Health Organisation Analgesic Ladder)によって例示されるように、オピオイドは、全ての三段階で慢性癌および非癌性の疼痛の薬理治療への進入点を有し、このことが、疼痛の治療に対するそれらの重要性の根底にある。オピオイドという場合、侵害受容感覚求心性神経細胞に結合する能力を保持する限り、それらのフラグメント、改変体、および誘導体も包含する。
【0029】
本発明のTMはまた、侵害受容感覚求心性神経細胞、より特定すると一次侵害受容求心性神経細胞上に存在するレセプターの1つ以上で「アゴニスト」として作用する分子であり得る。従来、アゴニストは、細胞内で活性を増大または減少のいずれかを行い得る任意の分子、すなわち、単に細胞活性の変化を引き起こす任意の分子であると考えられてきた。例えば、アゴニストの従来の意味は、細胞上のレセプターと結合して反応または活性を開始させ得る化学物質、またはレセプターの活性化により活性な応答(その応答が細胞活性の増大または減少のいずれであっても)を誘発する薬物を含み得た。
【0030】
しかし、本発明の目的では、アゴニストは、標的細胞におけるエキソサイトーシス融合のプロセスを刺激し得る分子であるとしてより特定して定められる。このプロセスは、該標的細胞におけるエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得るプロテアーゼ(またはそのフラグメント)による阻害を受けやすい。
【0031】
したがって、本発明のアゴニストの特別な定義は、アゴニストとして従来考えられてきた多くの分子を排除し得る。例えば、神経成長因子(NGF)は、TrkAレセプターへの結合を介して神経細胞分化を促進する能力の点でアゴニストである。しかし、NGFは、エキソサイトーシス融合の主要となる誘発因子ではないので、上記基準によって評価する場合アゴニストではない。さらに、NGFが刺激するプロセス(すなわち、細胞分化)は、非細胞傷害性毒素分子のプロテアーゼ活性による阻害を受けにくい。
【0032】
侵害受容求心性神経細胞上のレセプターに結合するTMのアゴニスト特性は、実施例10に記載の方法を用いて確認され得る。
【0033】
本発明の好ましい実施態様では、TMの標的はORL1レセプターである。このレセプターは、Gタンパク質結合クラスのレセプターのメンバーであり、そして7回膜貫通ドメイン構造を有する。ORL1レセプターの特性は、MogilおよびPasternak (2001), Pharmacological Reviews, 53巻, 3号, 381-415頁に詳細に考察されている。
【0034】
1つの実施態様では、TMは、ORL1レセプターに結合する(好ましくは特異的に結合する)分子である。より好ましくは、TMは、ORL1レセプターの「アゴニスト」である。この文脈での用語「アゴニスト」は、上で定義したとおりである。
【0035】
ORL1レセプターに結合するTMのアゴニスト特性は、実施例10に記載の方法を用いて確認され得る。これらの方法は、以前の実験(Inoueら, 1998 [Proc. Natl. Acad. Sci., 95, 10949-10953]を参照のこと)に基づいており、ORL1レセプターの天然アゴニストであるノシセプチンが、一次侵害受容求心性神経細胞からのサブスタンスP放出の誘発を引き起こすことを確認している。これは、以下の事実によって支持されている:
ノシセプチン誘発応答は、特異的NK1レセプター(サブスタンスPレセプター)アンタゴニストによって撤廃される;および
カプサイシンでの細胞の前処理(直径の小さい一次求心性神経細胞からサブスタンスPを枯渇させる)によって、ノシセプチン誘発応答は減弱する。
【0036】
同様に、Inoueらは、ボツリヌス菌神経毒素A型の足底内への注射によりノシセプチン誘発応答が撤廃されることを確認している。BoNTが、一次求心性神経細胞からのサブスタンスPの放出を阻害することが公知である(Welchら, 2000, Toxicon, 38, 245-258)ので、これにより、ノシセプチン−ORL1相互作用とそれに続くサブスタンスPの放出との間の関係が確認される。
【0037】
したがって、TMは、それが侵害受容感覚求心性神経細胞からのサブスタンスPの放出において誘発を引き起こすのであれば、ORL1レセプターにアゴニスト活性を有するとされ得る(実施例10を参照のこと)。
【0038】
本発明の特に好ましい実施態様では、TMは、ノシセプチン(ORL1レセプターの天然リガンド)である。ノシセプチンは、高い親和力でORL1レセプターをターゲティングする。他の好ましいTMの例は、以下を含む:
【0039】
【数1】
【0040】
[1] MogilおよびPasternak, 2001, Pharmacol. Rev., 53, 381-415
[2] Maileら, 2003, Neurosci. Lett., 350, 190-192
[3] Rizziら, 2002, J. Pharmacol. Exp. Therap., 300, 57-63
[4] Okadaら, 2000, Biochem. Biophys. Res. Commun., 278, 493-498
[5] Dooleyら, 1997, J Pharmacol Exp Ther. 283(2), 735-41。
【0041】
上記「改変体」TMは、侵害受容感覚求心性神経細胞に対して特に良好な結合親和性(天然ノシセプチンと比較した場合)を示している。これは、そのアミノ酸改変がTMのN末端から離れた位置で生じているので、驚くべきことである。さらに、改変は、TMのほぼC末端にあり、続いて、大きなポリペプチド配列(すなわち、トランスロケーションドメイン)が付着されている。一般的にいえば、TM含有融合タンパク質は、TMそれ自体と比較してほぼ100倍の結合能の低下を示す。上記「改変体」TMそれ自体は、天然ノシセプチンと比較して、(例えば、ORL1レセプターを介する)侵害受容感覚求心性神経細胞に対する結合能の約3〜10倍の増大を示す。したがって、「改変体」TM含有融合物は、「フリー」ノシセプチンと比較して、(例えば、ORL1レセプターを介する)侵害受容感覚求心性神経細胞に対する結合能の約10倍の減少を示すと予想され得る。しかし、本発明者らは、このような「改変体」TM含有融合タンパク質が、(最も驚くべきことに)「フリー」ノシセプチンの結合能を密に反映している結合能を示すことを実証した−図14を参照のこと。
【0042】
本発明においては、オピオイドまたはORL1レセプターのアゴニスト(例えば、ノシセプチンまたは上記表中に列挙したペプチドのいずれか)との用語は、該オピオイドまたはアゴニストと少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%の相同性を有する分子を包含する。アゴニストホモログは、ORL1レセプターでノシセプチンのアゴニスト特性を保持し、これは、実施例10に提供する方法を用いて調べられ得る。同様に、オピオイドホモログは、オピオイドの結合機能を実質的に保持し、オピオイドと高い相同性を示している。
【0043】
本発明はまた、上記TMのいずれかのフラグメント、改変体、および誘導体を包含する。これらのフラグメント、改変体、および誘導体は、該TMが有する特性を実質的に保持している。
【0044】
上記オピオイドおよび非オピオイドクラスのTMに加えて、種々の他のポリペプチドが、侵害受容感覚求心性神経細胞(例えば、侵害受容体)に本発明の結合体をターゲティングさせることに適している。これに関して、特に、ガラニンおよびガラニンの誘導体について述べられる。ガラニンレセプターは、DRGでシナプス前およびシナプス後に見られ(LiuおよびHokfelt, (2002), Trends Pharm. Sci., 23(10), 468-74)、そして神経障害性疼痛状態の間、発現が増強される。プロテイナーゼ活性化レセプター(PAR)もまた、本発明のTMの好ましい群である(最も特にPAR−2)。PAR−2のアゴニストは、神経性機構を部分的に介して、急性炎症を誘発/惹起することが知られる。PAR2は、一次脊髄求心性神経細胞によって発現され、そしてPAR2アゴニストは、末梢組織においてサブスタンスP(SP)およびカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の放出を刺激する。
【0045】
本発明のTMの特に好ましいセットは、以下を含む:
【0046】
【数2】
【0047】
本発明のプロテアーゼ切断部位は、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分とTM構成部分との間の位置での融合タンパク質の切断(好ましくは制御された切断)を可能にする。この切断反応は、融合タンパク質を単鎖ポリペプチドからジスルフィド結合で連結された二本鎖ポリペプチドに変換するものである。
【0048】
本発明の好ましい実施態様によれば、TMは、TMのC末端から離れて位置しているドメインまたはアミノ酸配列を介して結合する。例えば、関連結合ドメインとしては、TMの内部ドメインまたは中間部の方に位置している(すなわち、直鎖状ペプチド配列の)アミノ酸配列が挙げられ得る。好ましくは、関連結合ドメインは、TMのN末端の方に、より好ましくは、N末端にまたはその付近に、位置している。
【0049】
1つの実施態様では、単鎖ポリペプチド融合物は、1つより多くのタンパク質分解切断部位を含み得る。しかし、2つ以上のこのような部位が存在する場合、それらは、別のものであり、それにより、単一のプロテアーゼの存在下で複数の切断事象が生じることが実質的に防止される。別の実施態様では、単鎖ポリペプチド融合物は、単一のプロテアーゼ切断部位を有することが好ましい。
【0050】
プロテアーゼ切断配列は、従来の手段(例えば、部位特異的変異誘発)によってDNAレベルで導入(および/または任意の固有切断配列が除去)され得る。切断配列の存在を確認するためのスクリーニングは、手動またはコンピューターソフトウェア(例えば、DNASTAR, Inc.によるMapDrawプログラム)の補助のもとに実施され得る。
【0051】
任意のプロテアーゼ切断部位が用いられ得るが、以下が好ましい:
エンテロキナーゼ(DDDDK↓)
第Xa因子(IEGR↓/IDGR↓)
TEV(タバコエッチウイルス)(ENLYFQ↓G)
トロンビン(LVPR↓GS)
PreScission(LEVLFQ↓GP)。
【0052】
用語「プロテアーゼ切断部位」には、インテイン(これは自己切断性配列である)も包含される。自己スプライシング反応は、例えば、存在する還元剤の濃度を変更することによって、制御可能である。
【0053】
使用に際して、プロテアーゼ切断部位は切断されて、TMのN末端側領域(好ましくはN末端)が露出されるようになる。生じたポリペプチドは、結合体の残りの部分から実質的にフリーであるN末端側ドメインまたは内部ドメインを伴うTMを有する。この配置によって、TMのN末端側構成部分(または内部ドメイン)が、標的細胞上の結合部位と直接的に相互作用し得ることが確実となる。
【0054】
好ましい実施態様では、TMとプロテアーゼ切断部位とは、融合タンパク質中で、多くとも10アミノ酸残基、より好ましくは多くとも5アミノ酸残基、そして最も好ましくは0アミノ酸残基離れて位置している。したがって、プロテアーゼ切断部位の切断によって、結合体は、結合体の残りの部分から実質的にフリーであるN末端側ドメインを有するTMを提供する。この配置によって、ターゲティング部分のN末端側構成部分が、標的細胞上の結合部位と直接的に相互作用し得ることが確実となる。
【0055】
上記活性化工程に伴う1つの利点は、一旦融合タンパク質のタンパク質分解による切断が生じた場合にTMのみがN末端分解を受けるようになることである。さらに、特定プロテアーゼ切断部位の選択によって、二本鎖構造となるようにポリペプチド融合物の選択的活性化を可能にする。
【0056】
本発明の単鎖ポリペプチド融合物の構築は、TMと非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分との間にプロテアーゼ切断部位を配置する。
【0057】
単鎖融合物において、TMが、プロテアーゼ切断部位とトランスロケーション構成部分との間に位置していることが好ましい。これにより、TMが、トランスロケーションドメインに付着されることが確実となる(すなわち、天然型クロストリジウムホロ毒素で生じるように)が、本発明の場合、これらの2つの構成部分の順序が天然型ホロ毒素に対して逆である。この配置に伴うさらなる利点は、TMが、融合タンパク質の露出されたループ領域内に位置していることである。これは、融合タンパク質の構造に対して構成による影響を最小限とする。これに関して、該ループは、リンカー、活性化ループ、ドメイン間リンカー、または単に表面露出ループと種々に呼ばれる(Schiavoら, 2000, Phys. Rev., 80, 717-766;Turtonら, 2002, Trends Biochem. Sci., 27, 552-558)。
【0058】
1つの実施態様では、単鎖ポリペプチドにおいて、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分とトランスロケーション構成部分とが、ジスルフィド結合によって一緒に連結されている。したがって、プロテアーゼ切断部位の切断によって、ポリペプチドは、二本鎖構造をとる。ここでは、プロテアーゼ構成部分とトランスロケーション構成部分とが、ジスルフィド結合によって一緒に連結されたままである。この目的のために、プロテアーゼ構成部分とトランスロケーション構成部分とは、単鎖融合タンパク質において、最大で100アミノ酸残基、より好ましくは最大で80アミノ酸残基、特に好ましくは最大で60アミノ酸残基、そして最も好ましくは最大で50アミノ酸残基、互いに離れて位置していることが好ましい。
【0059】
1つの実施態様では、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分は、融合タンパク質のトランスロケーション構成部分とジスルフィド結合を形成する。例えば、ジスルフィド結合を形成するプロテアーゼ構成部分のアミノ酸残基は、プロテアーゼ構成部分の最後の20アミノ酸、好ましくは最後の10アミノ酸のC末端側アミノ酸残基内に位置している。同様に、ジスルフィド結合の第二部分を形成するトランスロケーション構成部分内のアミノ酸残基は、トランスロケーション構成部分の最初の20アミノ酸、好ましくは最初の10アミノ酸のN末端側アミノ酸残基内に位置し得る。
【0060】
あるいは、単鎖ポリペプチドにおいて、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分とTMとが、ジスルフィド結合によって一緒に連結され得る。これに関して、ジスルフィド結合を形成するTMのアミノ酸残基は、好ましくは、TMのN末端から離れて、より好ましくは、TMのC末端の方に、位置している。
【0061】
1つの実施態様では、非細胞傷害性プロテアーゼ構成部分は、融合タンパク質のTM構成部分とジスルフィド結合を形成する。これに関して、ジスルフィド結合を形成するプロテアーゼ構成部分のアミノ酸残基は、好ましくは、プロテアーゼ構成部分の最後の20アミノ酸、より好ましくは最後の10アミノ酸のC末端側アミノ酸残基内に位置している。同様に、ジスルフィド結合の第二部分を形成するTM構成部分内のアミノ酸残基は、好ましくは、TMの最後の20アミノ酸、より好ましくは最後の10アミノ酸のC末端側アミノ酸残基内に位置している。
【0062】
上記ジスルフィド結合配置は、プロテアーゼ構成部分およびトランスロケーション構成部分が、天然型クロストリジウム神経毒素に類似する様式で配置されるという利点を有する。比較のために、天然型クロストリジウム神経毒素の一次アミノ酸配列に関して、それぞれのシステインアミノ酸残基は、8〜27アミノ酸残基離れて位置している−Popoff, MRおよびMarvaud, J-C, 1999, Structural & genomic features of clostridial neurotoxins, 第9章, The Comprehensive Sourcebook of Bacterial Protein Toxins. AloufおよびFreer編より抜粋。
【0063】
【数3】
【0064】
融合タンパク質は、1つ以上の精製タグを含み得る。これらの精製タグは、プロテアーゼ構成部分に対してN末端側および/またはトランスロケーション構成部分に対してC末端側に位置している。
【0065】
任意の精製タグが用いられ得るが、以下が好ましい:
His−タグ(例えば、6×ヒスチジン)、好ましくはC末端タグおよび/またはN末端タグとして
MBP−タグ(マルトース結合タンパク質)、好ましくはN末端タグとして
GST−タグ(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、好ましくはN末端タグとして
His−MBP−タグ、好ましくはN末端タグとして
GST−MBP−タグ、好ましくはN末端タグとして
チオレドキシンタグ、好ましくはN末端タグとして
CBD−タグ(キチン結合ドメイン)、好ましくはN末端タグとして。
【0066】
本発明のさらなる実施態様によれば、融合タンパク質中に、1つ以上のペプチドスペーサー分子が含まれ得る。例えば、精製タグと融合タンパク質分子の残りとの間(例えば、N末端精製タグと本発明のプロテアーゼ構成部分との間;および/またはC末端精製タグと本発明のトランスロケーション構成部分との間)に、ペプチドスペーサーが用いられ得る。本発明のTM構成部分とトランスロケーション構成部分との間にも、ペプチドスペーサーは用いられ得る。
【0067】
種々の異なるスペーサー分子が、本発明の融合タンパク質のいずれかに用いられ得る。このようなスペーサー分子の例は、図28および図29に図示したものを含む。特に、ここでは、GS15、GS20、GS25、およびHx27が述べられる−図28および図29を参照のこと。
【0068】
予想外に、本発明者らは、スペーサーの大きさが、(使用に際して)TMのC末端とトランスロケーション構成部分のN末端とが互いに40〜105オングストローム、好ましくは50〜100オングストローム、そしてより好ましくは50〜90オングストローム離れているように選択される場合、本発明の融合タンパク質(例えば、CPNv/A)が、侵害受容感覚求心性神経細胞に対する結合活性の改善を示し得ることを見出した。別の実施態様では、好ましいスペーサーは、11〜29アミノ酸残基、好ましくは15〜27アミノ酸残基、そしてより好ましくは20〜27アミノ酸残基のアミノ酸配列を有する。適切なスペーサーは、Crasto, C.J.およびFeng, J.A. (2000) 5月; 13(5);309-312頁(http://www.fccc./edu/research/labs/feng/limker.html.もまた参照のこと)に従って、通常通りに同定および入手され得る。
【0069】
本発明の第二の局面によれば、上記単鎖ポリペプチドをコードするDNA配列が提供される。本発明の好ましい局面では、このDNA配列は、DNAベクターの一部として調製される。このベクターは、プロモーターおよびターミネーターを含む。
【0070】
好ましい実施態様では、ベクターは、以下から選択されるプロモーターを有する:
【0071】
【数4】
【0072】
本発明のDNA構築物は、好ましくは、コンピュータ上で設計され、次いで従来のDNA合成技術によって合成される。
【0073】
上記DNA配列情報は、必要に応じて、用いられる最終宿主細胞(例えば、大腸菌)発現系に従ったコドン偏位のために改変される。
【0074】
DNAバックボーンは、好ましくは、任意の固有核酸配列についてスクリーニングされる。この固有核酸配列は、転写および翻訳されたときに、第二のペプチドコード配列によってコードされるプロテアーゼ切断部位に相当するアミノ酸配列を生じ得る。このスクリーニングは、手動またはコンピューターソフトウェア(例えば、DNASTAR, Inc.によるMapDrawプログラム)の補助のもとで実施され得る。
【0075】
本発明のさらなる実施態様によれば、非細胞傷害性薬剤を調製する方法が提供され、この方法は、以下の工程を含む:
a.本発明の単鎖ポリペプチド融合タンパク質と、プロテアーゼ切断部位を切断し得るプロテアーゼとを接触させる工程;
b.プロテアーゼ切断部位を切断し、そしてそれにより二本鎖融合タンパク質を形成する工程。
【0076】
この局面は、二本鎖ポリペプチドを提供し、これは、概して、クロストリジウムホロ毒素の構造を模倣している。より詳細には、得られた二本鎖ポリペプチドは、代表的には、以下のような構造を有する:
a.第一鎖は、非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントを含み、このプロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントは、侵害受容感覚求心性神経細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る;
b.第二鎖は、TMおよびトランスロケーションドメインを含み、トランスロケーションドメインは、エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性神経細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをトランスロケートさせ得る;そして
第一鎖および第二鎖は、一緒にジスルフィド結合で連結されている。
【0077】
本発明のさらなる局面によれば、疼痛の治療、予防、または緩和用の医薬品の製造のための、本発明の単鎖または二本鎖のポリペプチドの使用が提供される。
【0078】
関連した局面によれば、患者の疼痛を治療、予防、または緩和する方法が提供され、該方法は、本発明の単鎖または二本鎖のポリペプチドの治療有効量を該患者に投与する工程を含む。
【0079】
本発明は、広範な疼痛状態、特に慢性疼痛状態を解消する。好ましくは、状態としては、癌性および非癌性疼痛、炎症性疼痛、および神経障害性疼痛が挙げられる。本出願のオピオイド融合物は、炎症性疼痛の解消に特に適しているが、神経障害性疼痛の解消にも適し得る。ガラニン融合物は、神経障害性疼痛の解消に、より適している。
【0080】
使用に際して、本発明のポリペプチドは、代表的には、薬学的キャリア、希釈剤および/または賦形剤と共に、薬学的組成物の形態で用いられる。組成物の的確な形態は、投与様式に合わせられ得る。投与は、好ましくは哺乳動物に、より好ましくはヒトに対してである。
【0081】
ポリペプチドは、例えば、関節内投与または頭蓋内投与用に滅菌溶液の形態で用いられ得る。脊髄注射(例えば、硬膜外注射もしくは髄腔内注射)が好ましい。
【0082】
本発明のポリペプチドの投与のための投薬量範囲は、所望の治療効果を生じる投薬量範囲である。必要投薬量範囲は、構成部分の正確な性質、投与経路、処方の性質、患者の年齢、患者の状態の性質、程度、もしくは重篤度、禁忌(ある場合)、および主治医の判断に依存することが理解される。
【0083】
適切な一日投薬量は、0.0001〜1mg/kg、好ましくは0.0001〜0.5mg/kg、より好ましくは0.002〜0.5mg/kg、および特に好ましくは0.004〜0.5mg/kgの範囲内である。単位投薬量は、1μg未満から30mgまでの間で変動し得るが、代表的には一投与あたり0.01〜1mgの範囲内であり、これは、毎日、または好ましくは頻度を下げて(例えば、毎週または半年毎に)投与され得る。
【0084】
特に好ましい投薬レジメは、1×の用量として2.5ngの融合タンパク質(例えば、CPNv/A)に基づく。これに関して、好ましい投薬量は、1×〜100×(すなわち、2.5〜250ng)の範囲内である。この投薬量範囲は、他のタイプの鎮痛性分子(例えば、NSAIDS、モルヒネ、およびガバペンチン)で用いられるよりも有意に低い(すなわち、少なくとも10倍、代表的には100倍低い)。さらに、上記差異は、モル基準で同じ比較がなされる場合に相当に拡大される。これは、本発明の融合タンパク質が、従来の「小さな」分子治療剤よりも相当に大きなMwを有するからである。
【0085】
しかしながら、必要投薬量に広範な変動があることは、構成部分の正確な性質および種々の投与経路の異なる効率に依存して予想されることである。
【0086】
これらの投薬量レベルの変動は、当該分野で周知であるように、最適化のために標準的な経験的作業を用いて調整され得る。
【0087】
注射に適した組成物は、溶液、懸濁液、もしくは乳濁液、または使用前に適切なビヒクル中に溶解もしくは懸濁される乾燥粉末の形態であり得る。
【0088】
液状単位投薬剤形は、代表的には、発熱性物質除去滅菌ビヒクルを利用して調製される。活性成分は、使用するビヒクルおよび濃度に依存して、そのビヒクル中に溶解または懸濁され得る。
【0089】
投与可能な溶液を調製する際、ポリペプチドはビヒクル中に溶解され得、溶液は、必要に応じて塩化ナトリウムの添加により等張にされる。そして無菌技術を用いて滅菌フィルタを通して濾過することにより滅菌され、次いで適切な滅菌バイアルまたはアンプル中に充填し、密封され得る。あるいは、溶液安定性が十分である場合、その密封容器中の溶液は、オートクレーブによって滅菌され得る。
【0090】
好都合には、添加剤(例えば、緩衝化剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤もしくは殺菌剤、懸濁化剤もしくは乳化剤)がビヒクル中に溶解され得る。
【0091】
使用前に適切なビヒクル中に溶解または懸濁される乾燥粉末は、滅菌区域で無菌技術を用いて、予め滅菌しておいた薬物および他の成分を滅菌容器中に充填することにより調製され得る。
【0092】
あるいは、ポリペプチドおよび他の成分が水性ビヒクル中に溶解され得、この溶液は、濾過により滅菌され、そして滅菌区域で無菌技術を用いて適切な容器中に分配される。製品は、次いで凍結乾燥され、そして容器は、無菌下で密封される。
【0093】
筋内注射、皮下注射、または皮内注射に適切な非経口投与用懸濁液は、滅菌構成部分を溶解する代わりに滅菌ビヒクル中に懸濁しそして滅菌が濾過によって達成できないことを除いて、実質的に同様にして調製される。構成部分は、滅菌状態で単離され得るか、あるいは単離後に(例えば、ガンマ照射によって)滅菌され得る。
【0094】
好都合には、懸濁化剤(例えば、ポリビニルピロリドン)が、構成部分の均一な分布を促進するために、組成物中に含まれる。
【0095】
(定義の節)
ターゲティング部分(TM)は、薬剤と標的細胞の表面との間に物理的会合を引き起こすように、結合部位と機能的に相互作用する薬剤と会合する任意の化学的構造を意味する。本発明においては、標的細胞は、侵害受容感覚求心性神経細胞である。TMとの用語は、結合部位が内在化(例えば、エンドソーム形成)−レセプター媒介エンドサイトーシスとも呼ばれる−を行い得る、標的細胞上の結合部位に結合し得る任意の分子(すなわち、天然に存在する分子またはそれらの化学的/物理的に改変された改変体)を含む。TMは、エンドソーム膜トランスロケーション機能を保有し得、この場合、本発明の薬剤に、TM構成部分とトランスロケーションドメイン構成部分とが別々に存在する必要はない。
【0096】
本発明のTMは、侵害受容感覚求心性神経細胞(例えば、一次侵害受容求心性神経細胞)に結合(好ましくは特異的に結合)する。これに関して、特異的に結合するとは、TMが侵害受容感覚求心性神経細胞(例えば、一次侵害受容求心性神経細胞)に、それが、他の神経細胞(例えば、非侵害受容求心性神経細胞)および/または運動神経細胞(すなわち、クロストリジウム神経毒素ホロ毒素の天然の標的)に結合するよりも大きな親和力で結合することを意味する。用語「特異的に結合する」とはまた、所与のTMが、所与のレセプター(例えば、ORL1レセプター)に、106M−1以上、好ましくは107M−1以上、より好ましくは108M−1以上、および最も好ましくは109M−1以上の結合親和力(Ka)で結合することも意味し得る。
【0097】
本発明の目的では、アゴニストは、標的細胞におけるエキソサイトーシス融合のプロセスを刺激し得る分子であると定められる。このプロセスは、該標的細胞におけるエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得るプロテアーゼ(またはそのフラグメント)による阻害を受けやすい。
【0098】
したがって、本発明のアゴニストの特別な定義は、アゴニストとして従来考えられてきた多くの分子を排除し得る。
【0099】
例えば、神経成長因子(NGF)は、TrkAレセプターへの結合を介して神経細胞分化を促進する能力の点でアゴニストである。しかし、NGFは、エキソサイトーシス融合の主要となる誘発因子ではないので、上記基準によって評価する場合アゴニストではない。さらに、NGFが刺激するプロセス(すなわち、細胞分化)は、非細胞傷害性毒素分子のプロテアーゼ活性による阻害を受けやすいわけではない。
【0100】
用語「フラグメント」は、タンパク質に関して用いる場合、問題のタンパク質のうちの少なくとも35、好ましくは少なくとも25、より好ましくは少なくとも20、および最も好ましくは少なくとも10のアミノ酸残基を有するペプチドを意味する。
【0101】
用語「改変体」は、タンパク質に関して用いる場合、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例えば、非天然アミノ酸)または置換結合を含むタンパク質のペプチドまたはペプチドフラグメントを意味する。
【0102】
用語「誘導体」は、タンパク質に関して用いる場合、問題のタンパク質およびさらなるペプチド配列を含むタンパク質を意味する。このさらなるペプチド配列は、好ましくは、元のタンパク質の基本折りたたみを妨害せず、したがって立体構造を妨害しない。2つ以上のペプチド(またはフラグメント、または改変体)が一緒に結合されて、誘導体を形成し得る。あるいは、ペプチド(またはフラグメント、または改変体)が非関連分子(例えば、第二の非関連ペプチド)に結合され得る。誘導体は、化学合成され得るが、代表的には、組換え核酸法によって調製される。脂質成分、および/または多糖成分、および/またはポリケチド成分のような付加成分が含まれていてもよい。
【0103】
本明細書全体にわたって、「ORL1レセプター」という場合は、ORL1レセプターファミリーの全てのメンバーを包含する。ORL1レセプターファミリーのメンバーは、代表的には、7回膜貫通ドメイン構造を有し、そしてGiおよびG0ファミリーのGタンパク質に結合される。ORL1レセプターのリガンドのGタンパク質刺激活性を決定するための方法を実施例12に示す。ORL1活性化後の細胞cAMPレベルの減少を測定するための方法を実施例11に示す。ORL1レセプターファミリーのメンバーのさらなる特徴は、それらが代表的にはノシセプチン(ORL1の天然リガンド)に結合し得るということである。一例として、ORL1レセプターの全ての代替スプライシング改変体は、ORL1レセプターファミリーのメンバーである。
【0104】
用語「非細胞傷害性」は、問題のプロテアーゼ分子が、それがリターゲティングされた標的細胞を殺傷しないことを意味する。
【0105】
本発明のプロテアーゼは、真核生物細胞においてエキソサイトーシス融合器官の1つ以上のタンパク質を切断し得る、全ての天然に存在する非細胞傷害性プロテアーゼを含む。
【0106】
本発明のプロテアーゼは、好ましくは、細菌プロテアーゼ(またはそのフラグメント)である。より好ましくは、細菌プロテアーゼは、クロストリジウム属またはナイセリア属から選択される(例えば、クロストリジウムL鎖、またはナイセリアIgAプロテアーゼ(好ましくは、N. gonorrhoeae由来))。
【0107】
本発明はまた、改変非細胞傷害性プロテアーゼを含み、この改変プロテアーゼは、上記プロテアーゼ活性をなお示す限り、天然に存在しないアミノ酸配列および/または合成アミノ酸残基を含む。
【0108】
本発明のプロテアーゼは、好ましくは、セリンまたはメタロプロテアーゼ活性(例えば、エンドペプチダーゼ活性)を示す。プロテアーゼは、好ましくは、SNAREタンパク質(例えば、SNAP−25、シナプトブレビン/VAMP、またはシンタキシン)に特異的である。
【0109】
特に、神経毒素のプロテアーゼドメイン(例えば、細菌神経毒素のプロテアーゼドメイン)について述べられる。したがって、本発明は、天然に存在する神経毒素ドメインの使用、ならびに該天然に存在する神経毒素の組換え調製型を包含する。
【0110】
例示の神経毒素は、クロストリジウム属によって生成される。そして用語「クロストリジウム神経毒素」は、C. tetaniによって生成される神経毒素(TeNT)およびC. botulinumによって生成される神経毒素(BoNT)血清型A〜G、ならびにC. baratiiおよびC. butyricumにより生成される密に関連したBoNT様神経毒素を含む。上記の略語は、本明細書中を通じて使用する。例えば、BoNT/Aとの名称は、神経毒素の供給源がBoNT(血清型A)であることを示す。他のBoNT血清型に対しても、対応する名称が適用される。
【0111】
用語「L鎖フラグメント」は、神経毒素のL鎖の一構成部分を意味し、このフラグメントは、メタロプロテアーゼ活性を示し、そして細胞エキソサイトーシスに関与する小胞および/または原形質膜に会合したタンパク質をタンパク質分解により切断し得る。
【0112】
トランスロケーションドメインは、プロテアーゼ活性の機能的発現が標的細胞のサイトゾル内で生じるように、標的細胞へのプロテアーゼ(またはそのフラグメント)のトランスロケーションを可能にする分子である。どの分子(例えば、タンパク質またはペプチド)が保有するのであっても、本発明の必要なトランスロケーション機能は、多数の従来アッセイの任意の1つによって確認され得る。
【0113】
例えば、Shone C.(1987)は、試験分子でチャレンジされるリポソームを用いるインビトロアッセイを記載している。必要なトランスロケーション機能の存在は、K+および/または標識NADのリポソームからの放出によって確認され、これは容易にモニタリングされ得る[Shone C. (1987) Eur. J. Biochem; 167(1)巻: 175-180頁を参照のこと]。
【0114】
さらなる例は、Blaustein R.(1987)によって提供される。これは、平面リン脂質二層膜を用いる単純なインビトロアッセイを記載している。この膜を試験分子でチャレンジし、そして必要なトランスロケーション機能は、該膜を横断する伝導の増大によって確認される[Blaustein (1987) FEBS Letts; 226巻, 1号: 115-120頁を参照のこと]。
【0115】
膜融合の評価、およびしたがって、本発明での使用に適したトランスロケーションドメインの同定を可能にするさらなる方法は、Methods in Enzymology 220巻および221巻, Membrane Fusion Techniques, A部およびB部, Academic Press 1993によって提供される。
【0116】
トランスロケーションドメインは、好ましくは、低pH条件下で脂質膜中にイオン透過孔を形成し得る。好ましくは、エンドソーム膜内の孔形成が可能なタンパク質分子の部分のみを使用することが見出されている。
【0117】
トランスロケーションドメインは、微生物タンパク質供給源(特に、細菌またはウイルスタンパク質供給源)から得られ得る。したがって、1つの実施態様では、トランスロケーションドメインは、細菌毒素またはウイルスタンパク質のような酵素のトランスロケーションドメインである。
【0118】
細菌毒素分子のある種のドメインがこのような孔を形成し得ることは、十分に書き記されている。また、ウイルス発現膜融合タンパク質のある種のトランスロケーションドメインがこのような孔を形成し得ることも公知である。このようなドメインは、本発明において用いられ得る。
【0119】
トランスロケーションドメインは、クロストリジウム属起源であり得、すなわち、HNドメイン(またはその機能的構成部分)であり得る。HNは、H鎖のアミノ末端側半分にほぼ等価なクロストリジウム神経毒素のH鎖の一部またはフラグメント、または完全なH鎖中のそのフラグメントに対応するドメインを意味する。H鎖が、H鎖のHC構成部分の天然の結合機能を実質的に欠損していることが好ましい。これに関して、HC機能は、(ヌクレアーゼまたはプロテアーゼ処理によってDNA合成レベルまたは合成後レベルのいずれかの)HCアミノ酸配列の欠失によって除去され得る。あるいは、HC機能は、化学的処理または生物学的処理によって不活性化され得る。したがって、H鎖は、好ましくは、天然型クロストリジウム神経毒素(すなわち、ホロ毒素)が結合する標的細胞上の結合部位に結合し得ない。
【0120】
1つの実施態様では、トランスロケーションドメインは、クロストリジウム神経毒素のHNドメイン(またはそのフラグメント)である。適切なクロストリジウムトランスロケーションドメインの例は、以下を含む:
ボツリヌス菌A型神経毒素−アミノ酸残基(449〜871)
ボツリヌス菌B型神経毒素−アミノ酸残基(441〜858)
ボツリヌス菌C型神経毒素−アミノ酸残基(442〜866)
ボツリヌス菌D型神経毒素−アミノ酸残基(446〜862)
ボツリヌス菌E型神経毒素−アミノ酸残基(423〜845)
ボツリヌス菌F型神経毒素−アミノ酸残基(440〜864)
ボツリヌス菌G型神経毒素−アミノ酸残基(442〜863)
破傷風菌神経毒素−アミノ酸残基(458〜879)。
【0121】
ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)および破傷風菌(C. tetani)における毒素生成の遺伝的基礎に関するさらなる詳細については、Hendersonら (1997) The Clostridia: Molecular Biology and Pathogenesis, Academic pressを参照のこと。
【0122】
用語「HN」は、天然に存在する神経毒素HN部、および天然に存在しないアミノ酸配列および/または合成アミノ酸残基を有する改変HN部(但し、改変HN部が上記トランスロケーション機能をなお示す限り)を含む。
【0123】
あるいは、トランスロケーションドメインは、非クロストリジウム属起源であり得る(表4を参照のこと)。非クロストリジウムトランスロケーションドメイン起源の例は、以下を含むが、これらに限定されない:ジフテリア毒素のトランスロケーションドメイン[O'Keefeら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89, 6202-6206;Silvermanら, J. Biol. Chem. (1993) 269, 22524-22532;およびLondon, E. (1992) Biochem. Biophys. Acta., 1112, 25-51頁]、シュードモナス外毒素A型のトランスロケーションドメイン[Priorら, Biochemistry (1992) 31, 3555-3559]、炭疽菌毒素のトランスロケーションドメイン[Blankeら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1996)93, 8437-8442]、トランスロケーション機能の種々の融合性または疎水性ペプチド[Plankら, J. Biol. Chem. (1994) 269, 12918-12924;およびWagnerら, (1992) PNAS, 89, 7934-7938頁]、および両親媒性ペプチド[Murataら, (1992) Biochem., 31, 1986-1992頁]。トランスロケーションドメインは、天然に存在するタンパク質に存在するトランスロケーションドメインを反映し得るか、またはその変化がトランスロケーションドメインのトランスロケーション能を破壊しない限り、アミノ酸変化を含み得る。
【0124】
本発明での使用に適したウイルストランスロケーションドメインの具体的な例には、ウイルス発現膜融合タンパク質のある種のトランスロケーションドメインが含まれる。例えば、Wagnerら(1992)およびMurataら(1992)は、インフルエンザウイルスヘマグルチニンのN末端領域に由来する多数の融合性および両親媒性のペプチドのトランスロケーション(すなわち、膜融合および小胞形成)機能を記載している。所望のトランスロケーション活性を有することが公知の他のウイルス発現膜融合タンパク質は、セムリキ森林ウイルス(SFV)の融合性ペプチドのトランスロケーションドメイン、水疱性口内炎ウイルス(VSV)糖タンパク質Gのトランスロケーションドメイン、SERウイルスFタンパク質のトランスロケーションドメインおよび泡沫状ウイルスエンベロープ糖タンパク質のトランスロケーションドメインである。ウイルスがコードする「スパイクタンパク質(Aspike proteins)」は、本発明においては特別な適用を有し、例えば、SFVのE1タンパク質およびVSVのGタンパク質のGタンパク質である。
【0125】
表(以下)に列挙したトランスロケーションドメインの使用は、それらの配列改変体の使用を含む。改変体は、1つ以上の保存的な核酸置換および/または核酸欠失もしくは挿入を含み得る。但し、この改変体は、必要なトランスロケーション機能を保有する。改変体はまた、この改変体が必要なトランスロケーション機能を保有する限り、1つ以上のアミノ酸置換および/またはアミノ酸欠失もしくは挿入を含み得る。
【0126】
【数5】
【0127】
(図面)
図1 LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の精製
図2 ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の精製
図3 LC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の精製
図4 LC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質の精製
図5 LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質とノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質との結合効力の比較
図6 LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ触媒活性
図7 LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の精製
図8 LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質とLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質との結合効力の比較
図9 可変スペーサー長産物を有する発現/精製LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質ファミリー
図10 CPN−AによるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断
図11 CPN−AへのDRGの曝露後長期間にわたるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断
図12 CPNv−AによるSNAP−25の切断
図13 CPNv−AへのDRGの曝露後長期間にわたるSNAP−25の切断
図14 [3H]−ノシセプチン結合のCPNv−A融合物媒介置換
図15 発現/精製CPNv(Ek)−A産物
図16 CPNv(Ek)−AによるSNAP−25の切断
図17 発現/精製CPNv−C産物
図18 CPNv−Cによるシンタキシンの切断
図19 急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPN−A効力
図20 ストレプトゾトシン(STZ)誘発末梢糖尿病性神経障害(神経因性疼痛)モデルにおけるCPN−A効力
図21 急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPNv−A効力
図22 発現/精製LC/A−CPLE−HN/A産物
図23 発現/精製LC/A−CPBE−HN/A産物
図24 発現/精製CPOP−A産物
図25 発現/精製CPOPv−A産物
図26 DRG細胞モデルにおけるインビトロSNAP−25切断
図27 発現/精製CPNv−A−FXa−HT(取り外し可能hisタグ)
図28 リガンド競合アッセイにより評価した可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力
図29 インビトロSNAP−25切断により評価した可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力
【0128】
図面について、より詳細に説明する。
【0129】
(図1 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の精製)
実施例9に示した方法を用いて、大腸菌BL21細胞からLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質を精製した。簡潔にいえば、細胞破壊後に得た可溶性産物をニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS-PAGE(パネルA)およびウェスタンブロッティング(パネルB)によって評価した。抗ノシセプチン抗血清(Abcamから入手)をウェスタンブロッティングの一次抗体として使用した。還元剤の不在下および存在下での最終精製物を、それぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0130】
(図2 − ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の精製)
実施例9に示した方法を用いて、大腸菌BL21細胞からノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質を精製した。簡潔にいえば、細胞破壊後に得た可溶性産物をニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS-PAGE(パネルA)およびウェスタンブロッティング(パネルB)によって評価した。抗ノシセプチン抗血清(Abcamから入手)をウェスタンブロッティングの一次抗体として使用した。還元剤の不在下および存在下での最終精製物を、それぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0131】
(図3 − LC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の精製)
実施例9に示した方法を用いて、大腸菌BL21細胞からLC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質を精製した。簡潔にいえば、細胞破壊後に得た可溶性産物をニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS-PAGE(パネルA)およびウェスタンブロッティング(パネルB)によって評価した。抗ノシセプチン抗血清(Abcamから入手)をウェスタンブロッティングの一次抗体として使用した。還元剤の不在下および存在下での最終精製物を、それぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0132】
(図4 − LC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質の精製)
実施例9に示した方法を用いて、大腸菌BL21細胞からLC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質を精製した。簡潔にいえば、細胞破壊後に得た可溶性産物をニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS-PAGEによって評価した。還元剤の不在下および存在下での最終精製物を、それぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0133】
(図5 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質とノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質との結合効力の比較)
ノシセプチン融合物がORL1レセプターに結合する能力を、簡易競合アッセイを用いて評価した。背根神経節(DRG)の初代培養物を、1nMの[3H]−ノシセプチンの存在下で種々の濃度の試験物質に曝露した。放射性標識リガンドの特異的結合の減少をシンチレーション計数によって評価し、そして非標識リガンド(Tocrisノシセプチン)の効力と比較してプロットした。ORL1レセプターとの相互作用は、LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物が、ノシセプチン−LC/A−HN/A融合物よりもずっと優れることが明らかである。
【0134】
(図6 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ触媒活性)
精製LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロエンドペプチダーゼ活性を、本質的には、Chaddockら, 2002, Prot. Express Purif. 25, 219-228に記載されるようにして決定した。簡潔にいえば、ELISAプレートに固定化したSNAP−25ペプチドを、種々の濃度の融合タンパク質に37℃にて1時間曝露した。一連の洗浄後、切断されたSNAP−25ペプチドの量を、特異的抗血清との反応性によって定量した。
【0135】
(図7 − LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の精製)
実施例9に示した方法を用いて、大腸菌BL21細胞からLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質を精製した。簡潔にいえば、細胞破壊後に得た可溶性産物をニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに供した。結合したタンパク質を100mMイミダゾールで溶出し、第Xa因子で処理して融合タンパク質を活性化してマルトース結合タンパク質(MBP)タグを除去し、次いで第2のニッケル荷電アフィニティー捕捉カラムに再度供した。この精製手順から得た試料をSDS-PAGEによって評価した。還元剤の不在下および存在下での最終精製物を、それぞれ[−]および[+]で記したレーン中に同定する。
【0136】
(図8 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質とLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質との結合効力の比較)
ノシセプチン融合物がORL1レセプターに結合する能力を、簡易競合アッセイを用いて評価した。背根神経節(DRG)の初代培養物を、1nMの[3H]−ノシセプチンの存在下で種々の濃度の試験物質に曝露した。放射性標識リガンドの特異的結合の減少をシンチレーション計数によって評価し、そして非標識リガンド(Tocrisノシセプチン)の効力に比較してプロットした。ORL1レセプターとの相互作用は、LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv−LHA)が、LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN−LHA)よりも優れることが明らかである。
【0137】
(図9 − 可変スペーサー長産物を有する発現/精製LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質ファミリー)
実施例9に示した方法を用いて、大腸菌細胞ペーストから、GS10、GS30およびHX27からなるLC/A−CPN−HN/A融合物の改変体を精製する。LC/A−CPN(GS10)−HN/A、LC/A−CPN(GS15)−HN/A、LC/A−CPN(GS25)−HN/A、LC/A−CPN(GS30)−HN/AおよびLC/A−CPN(HX27)−HN/Aの精製からの試料を、クマシーブルーで染色する前にSDS-PAGEにより評価した。この電気泳動プロフィールは、CPBE−Aの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。上のパネル:M=分子量マーカー標線;S=大腸菌タンパク質全可溶性画分;FT=Ni2+−荷電セファロースカラムに結合しなかったタンパク質;融合物=イミダゾールの添加により溶出された融合タンパク質。下のパネル:レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+−荷電セファロースの初期捕捉後の精製物;レーン4=Ni2+−荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン5=第Xa因子での活性化後の精製最終物(5μl);レーン6=第Xa因子での活性化後の精製最終物(10μl);レーン7=第Xa因子での活性化後の精製最終物(20μl);レーン8=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(5μl);レーン9=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(10μl);レーン10=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(20μl)。
【0138】
(図10 − CPN−AによるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断)
簡潔にいえば、背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPN−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合をデンシトメトリー分析によって算定し、そして融合物濃度に対してプロットした(破線)。また、材料を回収して、特異的EIAキットを用いるサブスタンスP含量の分析を行った。サブスタンスP放出の阻害を、実線にて示す。50%最大SNAP−25切断に達するのに必要な融合物濃度は、6.30±2.48nMであると概算される。
【0139】
(図11 − CPN−AへのDRGの曝露後長期間にわたるSP放出の阻害およびSNAP−25の切断)
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPN−Aに24時間曝露した。ボツリヌス菌神経毒素(BoNT/A)をコントロールとして使用した。この初期曝露後、細胞外物質を洗浄によって除去し、そして細胞を種々の期間にわたって37℃にてインキュベートした。特定の時点で、細胞タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合をデンシトメトリー分析によって算定し、破線にて示した。また、材料を回収して、特異的EIAキットを用いるサブスタンスP含量の分析を行った。サブスタンスP放出の阻害を、実線にて示す。
【0140】
(図12 − CPNv−AによるSNAP−25の切断)
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPNv−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合をデンシトメトリー分析によって算定した。50%最大SNAP−25切断に達するのに必要な融合物濃度は、1.38±0.36nMであると概算される。
【0141】
(図13 − CPNv−AへのDRGの曝露後長期間にわたるSNAP−25の切断)
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPNv−Aに24時間曝露した。CPN−Aをコントロールとして使用した。この初期曝露後、細胞外物質を洗浄によって除去し、そして細胞を種々の期間にわたって37℃にてインキュベートした。特定の時点で、細胞タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合をデンシトメトリー分析によって算定した。
【0142】
(図14 − [3H]−ノシセプチン結合のCPNv−A融合物媒介置換)
ノシセプチン融合物がORL1レセプターに結合する能力を、簡易競合アッセイを用いて評価した。背根神経節(DRG)の初代培養物を、1nMの[3H]−ノシセプチンの存在下で種々の濃度の試験物質に曝露した。放射性標識リガンドの特異的結合の減少をシンチレーション計数によって評価し、そして非標識リガンド(Tocrisノシセプチン)の効力と比較してプロットした。ORL1レセプターとの相互作用は、LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv−LHnAと示す)が、LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN−LHnAと示す)よりも優れることが明らかである。
【0143】
(図15 − 発現/精製CPNv(Ek)−A産物)
タンパク質をSDS-PAGEに供した後、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPNv(Ek)−Aの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+−荷電セファロースの初期捕捉後の精製物;レーン4=エンテロキナーゼでの活性化後の精製最終物(5μl);レーン5=エンテロキナーゼでの活性化後の精製最終物(10μl);レーン6=エンテロキナーゼでの活性化後の精製最終物(20μl);レーン7=エンテロキナーゼでの活性化後の精製最終物+DTT(5μl);レーン8=エンテロキナーゼでの活性化後の精製最終物+DTT(10μl);レーン9=エンテロキナーゼでの活性化後の精製最終物+DTT(20μl)。
【0144】
(図16 − CPNv(Ek)−AによるSNAP−25の切断)
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPNv(Ek)−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合をデンシトメトリー分析によって算定した。実施例9において調製したCPNv−Aを比較目的に使用した。CPNv(Ek)−A(En活性化と示す)およびCPNv−A(Xa活性化と示す)によるSNAP−25の切断割合を示す。
【0145】
(図17 − 発現/精製CPNv−C産物)
タンパク質をSDS-PAGEに供した後、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPNv−Cの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+−荷電セファロースの初期捕捉後の精製物;レーン4=Ni2+−荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン5=Ni2+−荷電セファロースの第2の捕捉後の精製物;レーン6=最終精製物;レーン7=最終精製物+DTT;レーン8=分子量マーカー標線。
【0146】
(図18 − CPNv−Cによるシンタキシンの切断)
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPNv−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗シンタキシンでプローブしてシンタキシン切断の評価を容易にした。切断されたシンタキシンの割合をデンシトメトリー分析によって算定した。50%最大シンタキシン切断に達するのに必要な融合物濃度は、3.13±1.96nMであると概算される。
【0147】
(図19 − 急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPN−A効力)
LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN/A)がカプサイシン誘発機械的異痛を抑制する能力を、ラット後肢足蹠への皮下足底内注入により評価した。試験動物を、研究に参加させる前(処置前);CPN/Aでの皮下足底内処置後カプサイシン投与前(CAP前);およびCPN/Aの注射後カプサイシン追加投与後(15分および30分での応答の平均;CAP)に、10gのVon Freyフィラメントによる一連の刺激(10刺激×3試行)に応じた足逃避率(PWF%)について評価した。カプサイシン追加投与を10μLの0.3%溶液の注射によって行った。試料希釈液を0.5%BSA/生理食塩水中で調製した。
【0148】
(図20 − ストレプトゾトシン(STZ)誘発末梢糖尿病性神経障害(神経因性疼痛)モデルにおけるCPN−A効力)
Sprague-Dawley雄ラット(250〜300g)をクエン酸緩衝液中65mg/kgのSTZで(静脈内)処置し、そして毎週、血中のグルコースおよび脂質濃度を測定して、モデルの準備ができていることを確認する。足逃避閾値(PWT)を所定の期間にわたりVon Freyフィラメントによる一連の刺激に応じて測定する。異痛は、2つの連続した試験日(1週間空ける)でのPWTがスケールで6gを下回って測定された場合に確立されるとする。この時点で、ラットを生理食塩水群(陰性効力コントロール)、ガバペンチン群(陽性効力コントロール)または試験群(CPN/A)に無作為に振り分ける。試験物質(20〜25μl)を1回の注射で皮下注入し(ガバペンチンを除く)、PWTを処置後1日目およびその後2週間にわたって定期的に測定する。ガバペンチン(3ml/kg注入容量で30mg/kg腹腔内)は、毎日、PWT試験開始の2時間前に注射する。
【0149】
(図21 − 急性カプサイシン誘発機械的異痛モデルにおけるCPNv−A効力)
LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv/A)がカプサイシン誘発機械的異痛を抑制する能力を、ラット後肢足蹠への皮下足底内注入により評価した。試験動物を、研究に参加させる前(処置前);CPNv/Aでの皮下足底内処置後カプサイシン投与前(CAP前);およびCPNv/Aの注射後カプサイシン追加投与後(15分および30分での応答の平均;CAP)の10gのVon Freyフィラメントによる一連の刺激(10刺激×3試行)に応じた足逃避率(PWF%)について評価した。カプサイシン追加投与を10μLの0.3%溶液の注射によって行った。試料希釈液を0.5%BSA/生理食塩水中で調製した。これらのデータを、正規化足逃避率差として表し、これは、ピーク応答(カプサイシン後)とベースライン応答(カプサイシン前)との間の差を百分率にて示す。この分析にて、CPNv/Aは、CPN/Aよりも強力であることが理解され得る。これは、CPNv/Aでは、CPN/Aで見られるのと同様の鎮痛効果を生じるのに必要とする投薬量が、より少ないからである。
【0150】
(図22 − 発現/精製LC/A−CPLE−HN/A産物)
タンパク質をSDS-PAGEに供した後、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPLE−Aの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+−荷電セファロースの初期捕捉後の精製物;レーン4=Ni2+−荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン5=Ni2+−荷電セファロースの第2の捕捉後の精製物;レーン6=最終精製物;レーン7=最終精製物+DTT。
【0151】
(図23 − 発現/精製LC/A−CPBE−HN/A産物)
タンパク質をSDS-PAGEに供した後、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPBE−Aの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン2=Ni2+−荷電セファロースの初期捕捉後の精製物;レーン3=Ni2+−荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン4=第Xa因子での活性化後の精製最終物(5μl);レーン5=第Xa因子での活性化後の精製最終物(10μl);レーン6=第Xa因子での活性化後の精製最終物(20μl);レーン7=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(5μl);レーン8=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(10μl);レーン9=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(20μl);レーン10=分子量マーカー標線。
【0152】
(図24 − 発現/精製CPOP−A産物)
タンパク質をSDS-PAGEに供した後、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPOP−Aの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=Ni2+−荷電セファロースの初期捕捉後の精製物;レーン3=Ni2+−荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン4=Ni2+−荷電セファロースの第二の捕捉後の精製物;レーン5=第Xa因子での活性化後の精製最終物(5μl);レーン6=第Xa因子での活性化後の精製最終物(10μl);レーン7=第Xa因子での活性化後の精製最終物(20μl);レーン8=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(5μl);レーン9=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(10μl);レーン10=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(20μl)。
【0153】
(図25 − 発現/精製CPOPv−A産物)
タンパク質をSDS-PAGEに供した後、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPOPv−Aの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+−荷電セファロースの初期捕捉後の精製物;レーン4=Ni2+−荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン5=第Xa因子での活性化後の精製最終物(5μl);レーン6=第Xa因子での活性化後の精製最終物(10μl);レーン7=第Xa因子での活性化後の精製最終物(20μl);レーン8=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(5μl);レーン9=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(10μl);レーン10=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT(20μl)。
【0154】
(図26 − DRG細胞モデルにおけるインビトロSNAP−25切断)
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度のCPOPv−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合をデンシトメトリー分析によって算定した。
【0155】
(図27 − 発現/精製CPNv−A−FXa−HT(取り外し可能hisタグ))
タンパク質をSDS-PAGEに供した後、クマシーブルーで染色した。この電気泳動プロフィールは、CPNv−A−FXa−HTの推定分子量のジスルフィド結合した二本鎖種の精製を示している。レーン1=分子量マーカー標線;レーン2=大腸菌タンパク質全可溶性画分;レーン3=Ni2+−荷電セファロースの最終捕捉前の第Xa因子処理物;レーン4=第Xa因子での活性化後の精製最終物;レーン5=第Xa因子での活性化後の精製最終物+DTT。
【0156】
(図28 − リガンド競合アッセイにより評価した可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力)
可変スペーサー長のLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物がORL1レセプターに結合する能力を、簡易競合アッセイを用いて評価した。背根神経節(DRG)の初代培養物を、1nMの[3H]−ノシセプチンの存在下で種々の濃度の試験物質に曝露した。放射性標識リガンドの特異的結合の減少をシンチレーション計数によって評価し、そして非標識リガンド(Tocrisノシセプチン)の効力と比較してプロットした。上のパネルは、GS0、GS20、GS30およびHx27のスペーサーの置換の特徴を示している。一方、下のパネルは、GS10、GS15、およびGS25のスペーサーによる融合タンパク質により得られる置換を示している。ORL1レセプターからノシセプチンを置き換えるのに、GS0およびGS30スペーサーは有効でなく、そしてGS10は有効性に乏しいと結論される。
【0157】
(図29 − インビトロSNAP−25切断により評価した可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質のインビトロ効力)
背根神経節(DRG)の初代培養物を、種々の濃度の(可変スペーサー長の)CPN−Aに24時間曝露した。細胞タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ウェスタンブロットに供し、そして抗SNAP−25でプローブしてSNAP−25切断の評価を容易にした。切断されたSNAP−25の割合をデンシトメトリー分析によって算定した。GS10スペーサーによる融合タンパク質の結合特性の効力が乏しいこと(図28を参照のこと)は、細胞内SNAP−25の切断を生じるのに必要とされる融合物の濃度がより高いことにおいて反映されている。GS0およびGS30のスペーサーによる融合タンパク質は、完全に有効でなかった(データは示さず)。GS15、GS20、およびGS25のスペーサーによる融合タンパク質は、同様に有効であった。
【0158】
(配列番号)
配列番号1 LC/AのDNA配列
配列番号2 HN/AのDNA配列
配列番号3 LC/BのDNA配列
配列番号4 HN/BのDNA配列
配列番号5 LC/CのDNA配列
配列番号6 HN/CのDNA配列
配列番号7 CPN−AリンカーのDNA配列
配列番号8 AリンカーのDNA配列
配列番号9 N末端側提示ノシセプチン挿入片のDNA配列
配列番号10 CPN−CリンカーのDNA配列
配列番号11 CPBE−AリンカーのDNA配列
配列番号12 CPNvar−AリンカーのDNA配列
配列番号13 LC/A−CPN−HN/A融合物のDNA配列
配列番号14 LC/A−CPN−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号15 N−LC/A−HN/A融合物のDNA配列
配列番号16 N−LC/A−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号17 LC/C−CPN−HN/C融合物のDNA配列
配列番号18 LC/C−CPN−HN/C融合物のタンパク質配列
配列番号19 LC/C−CPN−HN/C(Aリンカー)融合物のDNA配列
配列番号20 LC/C−CPN−HN/C(Aリンカー)融合物のタンパク質配列
配列番号21 LC/A−CPME−HN/A融合物のDNA配列
配列番号22 LC/A−CPME−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号23 LC/A−CPBE−HN/A融合物のDNA配列
配列番号24 LC/A−CPBE−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号25 LC/A−CPNv−HN/A融合物のDNA配列
配列番号26 LC/A−CPNv−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号27 LC/A−CPN[1−11]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号28 LC/A−CPN[1−11]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号29 LC/A−CPN[[Y10]1−11]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号30 LC/A−CPN[[Y10]1−11]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号31 LC/A−CPN[[Y11]1−11]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号32 LC/A−CPN[[Y11]1−11]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号33 LC/A−CPN[[Y14]1−17]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号34 LC/A−CPN[[Y14]1−17]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号35 LC/A−CPN[1−13]−HN/A融合物のDNA配列
配列番号36 LC/A−CPN[1−13]−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号37 CPN[1−17]のDNA配列
配列番号38 CPN[1−17]のタンパク質配列
配列番号39 CPN[1−11]のDNA配列
配列番号40 CPN[1−11]のタンパク質配列
配列番号41 CPN[[Y10]1−11]のDNA配列
配列番号42 CPN[[Y10]1−11]のタンパク質配列
配列番号43 CPN[[Y11]1−11]のDNA配列
配列番号44 CPN[[Y11]1−11]のタンパク質配列
配列番号45 CPN[[Y14]1−17]のDNA配列
配列番号46 CPN[[Y14]1−17]のタンパク質配列
配列番号47 CPN[1−13]のDNA配列
配列番号48 CPN[1−13]のタンパク質配列
配列番号49 CPNv(N[[R14K15]1−17]としても公知)のDNA配列
配列番号50 CPNv(N[[R14K15]1−17]としても公知)のタンパク質配列
配列番号51 ノシセプチン−スペーサー−LC/A−HN/A融合物のDNA配列
配列番号52 ノシセプチン−スペーサー−LC/A−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号53 CPN−A GS10リンカーのDNA配列
配列番号54 CPN−A GS15リンカーのDNA配列
配列番号55 CPN−A GS25リンカーのDNA配列
配列番号56 CPN−A GS30リンカーのDNA配列
配列番号57 CPN−A HX27リンカーのDNA配列
配列番号58 LC/A−CPN(GS15)−HN/A融合物のDNA配列
配列番号59 LC/A−CPN(GS15)−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号60 LC/A−CPN(GS25)−HN/A融合物のDNA配列
配列番号61 LC/A−CPN(GS25)−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号62 CPNvar−Aエンテロキナーゼ活性化リンカーのDNA配列
配列番号63 LC/A−CPNv(Ek)−HN/A融合物のDNA配列
配列番号64 LC/A−CPNv(Ek)−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号65 CPNvar−AリンカーのDNA配列
配列番号66 LC/C−CPNv−HN/C融合物(act.A)のDNA配列
配列番号67 LC/C−CPNv−HN/C融合物(act.A)のタンパク質配列
配列番号68 LC/A−CPLE−HN/A融合物のDNA配列
配列番号69 LC/A−CPLE−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号70 LC/A−CPOP−HN/A融合物のDNA配列
配列番号71 LC/A−CPOP−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号72 LC/A−CPOPv−HN/A融合物のDNA配列
配列番号73 LC/A−CPOPv−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号74 IgAプロテアーゼのDNA配列
配列番号75 IgA−CPNv−HN/A融合物のDNA配列
配列番号76 IgA−CPNv−HN/A融合物のタンパク質配列
配列番号77 FXa−HTのDNA配列
配列番号78 CPNv−A−FXa−HTのDNA配列
配列番号79 CPNv−A−FXa−HT融合物のタンパク質配列
配列番号80 DTトランスロケーションドメインのDNA配列
配列番号81 CPLE−DT−AのDNA配列
配列番号82 CPLE−DT−A融合物のタンパク質配列
配列番号83 TeNT LCのDNA配列
配列番号84 CPNv−TeNT LCのDNA配列
配列番号85 CPNv−TeNT LC融合物のタンパク質配列
配列番号86 CPNvar−CリンカーのDNA配列
配列番号87 LC/C−CPNv−HN/C融合物(act.C)のDNA配列
配列番号88 LC/C−CPNv−HN/C融合物(act.C)のタンパク質配列
【実施例】
【0159】
(実施例1 − LC/AおよびHN/Aバックボーンクローンの調製)
以下の手順によって、マルチドメイン融合物発現用の構成部分バックボーンとして使用するためのLCおよびHNフラグメントを作製する。本実施例は、血清型Aベースのクローン(配列番号1および配列番号2)の調製に基づいているが、手順および方法は他の血清型にも同等に適用可能である[血清型B(配列番号3および配列番号4)ならびに血清型C(配列番号5および配列番号6)については配列表に図示]。
【0160】
(クローニングベクターおよび発現ベクターの調製)
pCR 4(Invitrogen)は、構築物の確認を容易にするために、ベクター内の制限配列の欠損および隣接する配列決定プライマー部位によって選択した、選り抜きの標準的なクローニングベクターである。この発現ベクターは、pMAL(NEB)発現ベクターに基づいており、これは、構築物の挿入のために正しい方向でマルチプルクローニング部位内に所望の制限配列を有する(BamHI-SalI-PstI-HindIII)。非動員性プラスミドを作製するため、発現ベクターのフラグメントが除去されており、そして精製の選択肢を増大させるため、種々の異なる融合タグが挿入されている。
【0161】
(プロテアーゼ(例えば、LC/A)挿入片の調製)
LC/A(配列番号1)を、二通りの方法の一方によって作製する:
DNA配列を、[種々の逆翻訳ソフトウェアツール(例えば、EditSeq best E. coli reverse translation (DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0 (Entelechon))の1つを用いて、GenBank(アクセッション番号P10845)またはSwissprot(アクセッション位置BXA1_CLOBO)のような自由に利用可能なデータベースソースから得られる]LC/Aアミノ酸配列の逆翻訳によって設計する。BamHI/SalI認識配列を、配列の5’末端および3’末端のそれぞれに組み込み、正しい読み取り枠を維持する。DNA配列を、逆翻訳の間に組み込んだ制限酵素切断配列について(MapDraw, DNASTAR Inc.のようなソフトウェアを用いて)スクリーニングする。クローニング系によって必要とされる配列と共通であることが見出されている切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser (Geneart)のようなソフトウェアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、LC/Aオープンリーディングフレーム(ORF)を含有するこの最適化したDNA配列は商業的に合成され(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供される。
【0162】
別の方法は、それぞれ5’および3’のPCRプライマーに組み込んだBamHI制限酵素配列およびSalI制限酵素配列を用いる既存DNA配列からのPCR増幅を使用することである。相補的オリゴヌクレオチドプライマーは、製造業者(例えば、MWGまたはSigma-Genosys)によって、各対が、クロストリジウム標的DNAの範囲(ストレッチ)に隣接する向かい合った鎖に対して、これらの2つのDNA鎖の各々に1つのオリゴヌクレオチドを(互いに「向かって」3’末端の向きに)ハイブリダイズする能力を有するように、化学合成される。PCR産物を生成するために、クロストリジウムDNA配列に特異的な短いオリゴヌクレオチドプライマーの対を、クロストリジウムDNA鋳型および他の反応成分と混合し、そして反応チューブのインキュベーション温度を自動変更し得る機器(「PCR機器」)中に配置し、約94℃(変性用)、55℃(オリゴヌクレオチドアニーリング用)、および72℃(合成用)のサイクルにかける。PCR産物の増幅に必要な他の試薬には、DNAポリメラーゼ(例えば、TaqまたはPfuポリメラーゼ)、DNAの4つのヌクレオチドdNTP構築ブロックの等モル量(50〜200μM)の各々、およびMg2+濃度(0.5〜5mM)に最適化した酵素に適した緩衝液が含まれる。
【0163】
増幅産物を、Taq PCR産物に対してTOPO TAクローニングまたはPfu PCR産物に対してZero Blunt TOPOクローニング(両キットともInvitrogenより市販されている)のいずれかを用いて、pCR 4にクローニングする。得られたクローンを配列決定により確認する。次いで、クローニング系と適合可能でない付加制限配列を、部位特異的変異誘発を用いて[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]取り除く。
【0164】
(トランスロケーション(例えばHN)挿入片の調製)
HN/A(配列番号2)を、二通りの方法の一方によって作製する:
DNA配列を、種々の逆翻訳ソフトウェアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0 (Entelechon)]の1つを用いて、[GenBank(アクセッション番号P10845)またはSwissprot(アクセッション位置BXA1_CLOBO)のような自由に利用可能なデータベースソースから得られる]HN/Aアミノ酸配列の逆翻訳によって設計する。N末端にPstI制限配列を、そしてC末端にXbaI−停止コドン−HindIIIを付加し、正しい読み取り枠を維持するようにする。DNA配列を、逆翻訳の間に組み込んだ制限酵素切断配列について(MapDraw, DNASTAR Inc.のようなソフトウェアを用いて)スクリーニングする。クローニング系によって必要とされる配列と共通であることが見出されている配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウェアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、この最適化したDNA配列は商業的に合成され(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供される。
【0165】
別の方法は、それぞれ5’および3’のPCRプライマーに組み込んだPstI制限酵素配列およびXbaI−停止コドン−HindIII制限酵素配列を用いる既存DNA配列からのPCR増幅を使用することである。PCR増幅は、上記のように行う。このPCR産物をpCR 4ベクターに挿入し、そして配列決定によって確認する。次いで、クローニング系と適合可能でない付加制限配列を、部位特異的変異誘発を用いて[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]取り除く。
【0166】
(実施例2 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の調製)(ノシセプチンがHN鎖のN末端側にある)
(リンカー−ノシセプチン−スペーサー挿入片の調製)
LC−HNリンカーを、リンカーについての既存配列情報を鋳型として用いて、第一の原則から設計し得る。例えば、血清型Aリンカー(この場合、LCとHNとの間のジスルフィド架橋のシステイン間に存在するドメイン間ポリペプチド領域として定義される)は、23アミノ酸長であり、そして配列VRGIITSKTKSLDKGYNKALNDLを有する。この配列内で、天然でのタンパク質分解による活性化により、配列ALNDLのN末端を有するHNドメインが生じると理解される。この配列情報は、GenBank(アクセッション番号P10845)またはSwissprot(アクセッション位置BXA1_CLOBO)のような利用可能なデータベースソースから自由に入手可能である。このリンカーに、第Xa因子部位、ノシセプチンおよびスペーサーを組み込み、そして種々の逆翻訳ソフトウェアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation (DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0 (Entelechon)]の1つを用いて、リンカー−リガンド−スペーサー領域をコードするDNA配列を決定する。次いで、制限部位をこのDNA配列に組み込み、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号7)として配置させ得る。スペーサー、ノシセプチン、および制限配列について正しい読み枠を維持し、そしてDAMメチル化を生じ得るので塩基TCがXbaI配列の前にならないようにすることが重要である。このDNA配列を、制限配列の組み込みについてスクリーニングし、そしてこの残っている配列から付加配列を手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウェアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、この最適化したDNA配列は商業的に合成され(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供される。
【0167】
(LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物の調製)
LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HN構築物(配列番号13)を作製するために、リンカー(配列番号7)をコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、BamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号1)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをPstIおよびXbaI制限酵素で切断し、そしてPstIおよびXbaIで切断したHN/AのDNA(配列番号2)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HN ORF(配列番号13)を含んでおり、これは、発現ベクターに移入され、配列番号14に示される配列の融合タンパク質が発現される。
【0168】
(実施例3 − ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の調製)(ノシセプチンがLC鎖のN末端側にある)
LC/A−HN/Aバックボーンを、活性化のために第Xa因子部位を付加し、BamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−リンカー−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号8)として配置された合成血清型Aリンカーを用いて、実施例2に記載のように構築する。LC/A−HN/Aバックボーンおよび合成したN末端側提示ノシセプチン挿入片(配列番号9)を、BamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、ゲル精製し、そして一緒に連結してノシセプチン−スペーサー−LC−リンカー−HNを作製する。次いで、ORF(配列番号15)を制限酵素AvaIおよびXbaIを用いて切断し、これを、発現ベクターに移入して、配列番号16に示される配列の融合タンパク質が発現される。
【0169】
(実施例4 − LC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の調製)
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/C(配列番号5)およびHN/C(配列番号6)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号10)として配置された血清型Cリンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HN ORF(配列番号17)を含んでおり、これは、配列番号18に示される配列のタンパク質を発現する。
【0170】
(実施例5 − 血清型A活性化配列を伴うLC/C−ノシセプチン−HN/C融合タンパク質の調製)
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/C(配列番号5)およびHN/C(配列番号6)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号7)として配置された血清型Aリンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HN ORF(配列番号19)を含んでおり、これは、配列番号20に示される配列のタンパク質を発現する。
【0171】
(実施例6 − LC/A−metエンケファリン−HN/A融合タンパク質の調製)
metエンケファリンリガンドのサイズが小さい(5アミノ酸)ため、LC/A−metエンケファリン−HN/A融合物を、鋳型としてLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号13)を用いる部位特異的変異誘発[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]によって作製する。YGGFM metエンケファリンペプチドをコードし、標準的な大腸菌コドン利用を維持して付加的な制限部位が組み込まれないようにし、ノシセプチン部分のいずれかの側のLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号13)のリンカー領域に相補的な配列が隣接されるようにするオリゴヌクレオチドを設計する。SDM産物を配列決定により確認し、そして最終構築物は、LC−リンカー−metエンケファリン−スペーサー−HN ORF(配列番号21)を含んでおり、これは、配列番号22に示される配列のタンパク質を発現する。
【0172】
(実施例7 − LC/A−βエンドルフィン−HN/A融合タンパク質の調製)
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/A(配列番号1)およびHN/A(配列番号2)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−βエンドルフィン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号11)として配置された血清型A βエンドルフィンリンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−βエンドルフィン−スペーサー−HN ORF(配列番号23)を含んでおり、これは、配列番号24に示される配列のタンパク質を発現する。
【0173】
(実施例8 − LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の調製)
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/A(配列番号1)およびHN/A(配列番号2)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン改変体−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号12)として配置された血清型Aノシセプチン改変体リンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN ORF(配列番号25)を含んでおり、これは、配列番号26に示される配列のタンパク質を発現する。
【0174】
(実施例9 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の精製法)
25ml 50mM HEPES(pH 7.2)、200mM NaClおよび約10gの大腸菌BL21細胞ペーストを含むファルコン管を解凍する。この融解した細胞ペーストを50mM HEPES(pH 7.2)、200mM NaClで80mlまでにし、そして氷上にて、22ミクロンのパワーで30秒間オン、30秒間オフを10サイクルで超音波処理し、試料を冷却したままにする。溶解した細胞を18000rpmで4℃にて30分間遠心分離する。この上清を、50mM HEPES(pH 7.2)、200mM NaClで平衡化しておいた0.1M NiSO4荷電キレートカラム(20〜30mlカラムが十分である)に流す。10mMおよび40mMのイミダゾールのステップグラジエントを用いて、非特異的結合タンパク質を洗い流し、そして融合タンパク質を100mMイミダゾールで溶出する。溶出した融合タンパク質を5Lの50mM HEPES(pH 7.2)、200mM NaClに対して4℃にて終夜透析し、そして透析した融合タンパク質のODを測定する。100μg融合タンパク質当たり1単位の第Xa因子を添加し、そして25℃にて終夜静置インキュベートする。50mM HEPES(pH 7.2)、200mM NaClで平衡化しておいた0.1M NiSO4荷電キレートカラム(20〜30mlカラムが十分である)に流す。50mM HEPES(pH 7.2)、200mM NaClでベースラインまでカラムを洗浄する。10mMおよび40mMのイミダゾールのステップグラジエントを用いて、非特異的結合タンパク質を洗い流し、そして融合タンパク質を100mMイミダゾールで溶出する。溶出した融合タンパク質を5Lの50mM HEPES(pH 7.2)、200mM NaClに対して4℃にて終夜透析し、そしてこの融合物を約2mg/mlに濃縮し、試料を小分けし、そして−20℃にて凍結する。OD、BCA、純度分析、およびSNAP−25評価を用いて精製タンパク質を試験する。
【0175】
(実施例10 − 神経細胞培養物からのサブスタンスPの放出の測定によるTMアゴニスト活性の確認)
(材料)
サブスタンスP EIAはR&D Systems, UKから入手。
【0176】
(方法)
eDRGの初代神経細胞培養物を、既述(Dugganら, 2002)のようにして樹立させる。この培養物からのサブスタンスP放出を、本質的には、既述(Dugganら, 2002)のようにして、EIAによって評価する。目的のTMを(処理前に少なくとも2週間の間樹立させた)神経細胞培養物に添加する;TMの代わりにビヒクルを添加することにより、コントロール培養を並行して行う。全細胞溶解物含量と共に、サブスタンスPの刺激された(100mM KCl)放出および基底の放出を、コントロール培養およびTM処理培養の両方について得る。サブスタンスP免疫反応性を、サブスタンスP酵素免疫アッセイキット(Cayman Chemical Company, USAまたはR&D Systems, UK)を製造者の指示書に従って用いて測定する。
【0177】
目的のTMの存在下での神経細胞により放出されたサブスタンスPの量を、100mM KClの存在または不在下で得られる放出と比較する。基底放出を上回る目的のTMによるサブスタンスP放出の刺激によって、目的のTMが本明細書中で定義した「アゴニストリガンド」であることが確立される。所望の場合、目的のTMによるサブスタンスP放出の刺激を、天然のORL−1レセプターリガンドであるノシセプチン(Tocris)を用いて作成した標準サブスタンスP放出曲線と比較し得る。
【0178】
(実施例11 − フォルスコリン刺激cAMP生産の測定によるORL1レセプター活性化の確認)
所与のTMがORL1レセプターを介して作用することの確認は、以下の試験によって提供される。ここでは、TMがフォルスコリン刺激cAMP生産を阻害する能力を評価する。
【0179】
(材料)
[3H]アデニンおよび[14C]cAMPはGE Healthcareから入手。
【0180】
(方法)
この試験は、本質的には、Meunierら[Isolation and structure of the endogenous agonist of opioid receptor-like ORL1 receptor. Nature 377: 532-535, 1995]によって既述されるようにして、24ウェルプラスチックプレート上に播種した無傷のトランスフェクトCHO細胞において行う。
【0181】
細胞に、0.4mlの培養培地中で[3H]アデニン(1.0μCi)を添加する。細胞を37℃にて2時間静置して細胞内ATPプールにアデニンを取り込ませる。2時間後、細胞を、以下を含有するインキュベーション緩衝液で1回洗浄する:130mM NaCl、4.8mM KCl、1.2mM KH2PO4、1.3mM CaCl2、1.2mM MgSO4、10mMグルコース、1mg/ml ウシ血清アルブミン、および25mM HEPES pH 7.4。そしてこれを、目的のTMを含むまたは含まない、フォルスコリン(10μM)およびイソブチルメチルキサンチン(50μM)を含有する緩衝液と置き換える。10分後、培地を吸引して0.5mlの0.2M HClと置き換える。約1000cpmの[14C]cAMPを各ウェルに添加し、これを内部標準として使用する。次いで、ウェルの中身を0.65g乾燥アルミナ粉末のカラムに移す。カラムを4mlの5mM HCl、0.5mlの0.1M酢酸アンモニウム、次いでさらに2mlの酢酸アンモニウムで溶出する。最終溶出物をシンチレーションバイアルに集めて14Cおよびトリチウムについて計数する。集めた量を[14C]cAMPの回収率に対して補正する。ORL1レセプターでアゴニストであるTMは、フォルスコリンに応じて生産されるcAMPのレベルの減少を引き起こす。
【0182】
(実施例12 − GTPγS結合機能アッセイを用いるORL1レセプター活性化の確認)
所与のTMがORL1レセプターを介して作用することの確認は、以下の試験、GTPγS結合機能アッセイによっても提供される。
【0183】
(材料)
[35S]GTPγSはGE Healthcareから入手。
小麦胚凝集素コーティング(SPA)ビーズはGE Healthcareから入手。
【0184】
(方法)
このアッセイは、本質的には、TraynorおよびNahorski[Modulation by μ-opioid agonists of guanosine-5-O-(3-[35S]thio)triphosphate binding to membranes from human neuroblastoma SH-SY5Y cells. Mol. Pharmacol. 47: 848-854, 1995]によって記載されるようにして行う。
【0185】
細胞を、組織培養皿からかき取って20mM HEPES、1mM エチレンジアミン四酢酸に入れ、次いで500×gで10分間遠心分離する。細胞をこの緩衝液に再懸濁してPolytron Homogenizerでホモジナイズする。
【0186】
ホモジネートを27,000×gで15分間遠心分離し、そしてペレットを緩衝液A(20mM HEPES、10mM MgCl2、100mM NaCl、pH 7.4を含有する)に再懸濁する。懸濁液を20,000×gで再度遠心分離し、もう一度緩衝液Aに懸濁する。結合アッセイのために、膜(8〜15μgタンパク質)を、総容量1.0mlで目的のTMと共におよびそれなしで[35S]GTP S(50pM)、GDP(10μM)と25℃にて60分間インキュベートする。試料をガラスファイバーフィルターで濾過し、結合アッセイについて記載したように計数する。
【0187】
(実施例13 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質の調製)(ノシセプチンがHN鎖のN末端側にある)
リンカー−ノシセプチン−スペーサー挿入片を、実施例2に記載のように調製する。
【0188】
(LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物の調製)
LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HN構築物(配列番号13)を作製するために、リンカー(配列番号7)をコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、同様にBamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号1)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをBamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてpMALベクター(NEB)のようなBamHI、SalI、PstI、およびHindIIIに対する独自のマルチプルクローニング部位を含むベクターを同様に切断して、これにLC/A−リンカーフラグメントを挿入する。次いで、HN/AのDNA(配列番号2)をPstIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてこれを同様に切断したpMAL−LC/A−リンカー構築物に挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン−スペーサー−HN ORF(配列番号13)を含んでおり、これは、配列番号14に示される配列のタンパク質を発現する。
【0189】
(実施例14 − ノシセプチン−LC/A−HN/A融合タンパク質の調製)(ノシセプチンがLC鎖のN末端側にある)
ノシセプチン−スペーサー−LC/A−HN/A構築物を作製するために、活性化のために第Xa因子部位を付加した、BamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−リンカー−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号8)として配置された血清型Aリンカーを、実施例13に記載のように合成する。このリンカーをコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、同様にBamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号1)の挿入および連結用のレシピエントとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをBamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、そして合成N末端提示ノシセプチン挿入片(配列番号9)を含む同様に切断したベクターにLC/A−リンカーフラグメントを挿入する。次いで、この構築物をAvaIおよびHindIIIで切断し、pMALプラスミド(NEB)のような発現ベクターに挿入する。次いで、HN/A DNA(配列番号2)をPstIおよびHindIII制限酵素で切断し、そして同様に切断したpMAL−ノシセプチン−LC/A−リンカー構築物に挿入する。最終構築物は、ノシセプチン−スペーサー−LC/A−HN/A ORF(配列番号51)を含んでおり、これは、配列番号52に示される配列のタンパク質を発現する。
【0190】
(実施例15 − 可変スペーサー長を有するLC/A−ノシセプチン−HN/A融合タンパク質ファミリーの調製および精製)
実施例2で用いたのと同じストラテジーを用いて、ノシセプチンおよび可変スペーサー内容をコードする種々のDNAリンカーを調製した。種々の逆翻訳ソフトウェアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0 (Entelechon)]の1つを用いて、リンカー−リガンド−スペーサー領域をコードするDNA配列を決定する。次いで、制限部位をDNA配列に組み込み、そしてBamHI−SalI−リンカー−プロテアーゼ部位−ノシセプチン−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号53から配列番号57)として配置させ得る。スペーサー、ノシセプチン、および制限配列について正しい読み枠を維持し、そしてDAMメチル化を生じ得るので塩基TCがXbaI配列の前にならないようにすることが重要である。このDNA配列を、制限配列組み込みについてスクリーニングし、そしてこの残っている配列から付加配列を手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウェアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、この最適化したDNA配列は商業的に合成され(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供される。
【0191】
作製したスペーサーは、以下を含んだ:
【0192】
【表1】
【0193】
例示のために、LC/A−CPN(GS15)−HN/A融合構築物(配列番号58)を作製するために、リンカー(配列番号54)をコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、同様にBamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号1)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをBamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてpMALベクター(NEB)のようなBamHI、SalI、PstI、およびHindIIIに対する独自のマルチプルクローニング部位を含むベクターを同様に切断して、これにLC/A−リンカーフラグメントを挿入する。次いで、HN/AのDNA(配列番号2)をPstIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてこれを同様に切断したpMAL−LC/A−リンカー構築物に挿入する。最終構築物は、LC/A−CPN(GS15)−HN/A ORF(配列番号58)を含んでおり、これは、配列番号59に示される配列のタンパク質を発現する。
【0194】
さらなる例として、LC/A−CPN(GS25)−HN/A融合構築物(配列番号60)を作製するために、リンカー(配列番号55)をコードするpCR 4ベクターを、BamHIおよびSalI制限酵素で切断する。次いで、この切断したベクターを、BamHIおよびSalIで切断したLC/AのDNA(配列番号1)の挿入および連結用のレシピエントベクターとして使用する。次いで、得られたプラスミドDNAをBamHIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてpMALベクター(NEB)のようなBamHI、SalI、PstI、およびHindIIIに対する独自のマルチプルクローニング部位を含むベクターを同様に切断して、これにLC/A−リンカーフラグメントを挿入する。次いで、HN/AのDNA(配列番号2)をPstIおよびHindIII制限酵素で切断し、そしてこれを同様に切断したpMAL−LC/A−リンカー構築物に挿入する。最終構築物は、LC/A−CPN(GS25)−HN/A ORF(配列番号60)を含んでおり、これは、配列番号61に示される配列のタンパク質を発現する。
【0195】
GS10、GS30およびHX27からなるLC/A−CPN−HN/A融合物の改変体も同様に作製する。実施例9に記載の精製法を用いて、融合タンパク質を大腸菌細胞ペーストから精製する。図9は、LC/A−CPN(GS10)−HN/A、LC/A−CPN(GS15)−HN/A、LC/A−CPN(GS25)−HN/A、LC/A−CPN(GS30)−HN/AおよびLC/A−CPN(HX27)−HN/Aの場合に得られた精製産物を示している。
【0196】
(実施例16 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物のインビトロ効力の評価)
実施例2および9に従って調製した融合タンパク質をeDRG神経細胞モデルにおいて評価した。
【0197】
サブスタンスP放出の阻害およびSNAP−25の切断に関するアッセイは、以前に報告されている(Dugganら, 2002, J. Biol. Chem., 277, 34846-34852)。簡潔にいえば、背根神経節神経細胞を15日齢胎児Sprague-Dawleyラットから摘出し、そして解離した細胞を、Matrigelでコーティングされた24ウェルプレート上に、1×106細胞/ウェルの密度で播種した。播種の1日後、細胞を10μM シトシンβ−D−アラビノフラノシドで48時間処理する。細胞を、5%熱不活性化ウシ胎児血清、5mM L−グルタミン、0.6% D−グルコース、2% B27補充物、および100ng/ml 2.5Sマウス神経成長因子を加えたダルベッコ最小必須培地中に維持する。試験物質を添加する前、培養物を95%空気/5%CO2中に37℃にて2週間維持する。
【0198】
eDRGからのサブスタンスPの放出を酵素結合免疫吸着アッセイによって評価する。簡潔にいえば、eDRG細胞を低カリウム平衡塩類溶液(BSS:5mM KCl、137mM NaCl、1.2mM MgCl2、5mMグルコース、0.44mM KH2PO4、20mM HEPES、pH 7.4、2mM CaCl2)で2回洗浄する。基本試料を、各ウェルを1mlの低カリウムBSSと5分間インキュベートすることにより得る。この緩衝液を除去した後、1mlの高カリウム緩衝液(上記BSSに対して100mM KClを含む(NaClで等張平衡化)ように改変した)と5分間インキュベートすることにより、細胞を放出に対して刺激する。サブスタンスPのアッセイ前に、全ての試料を氷上のチューブに移す。250μlの2M酢酸/0.1%トリフルオロ酢酸を添加して細胞を溶解し、遠心分離にてエバポレートし、そして500μlのアッセイ緩衝液に再懸濁することにより、全細胞溶解物を調製する。希釈した試料を、サブスタンスP含量について評価する。サブスタンスP免疫反応性を、サブスタンスP酵素免疫アッセイキット(Cayman Chemical CompanyまたはR&D Systems)を製造者の指示書に従って用いて測定する。サブスタンスPは、並行して実行した標準サブスタンスP曲線に対してpg/mlで表す。
【0199】
SDS-PAGEおよびウェスタンブロット分析を、標準プロトコル(Novex)を用いて実施した。SNAP−25タンパク質を12%Tris/グリシンポリアクリルアミドゲル(Novex)上で分離し、引き続いてニトロセルロース膜に転写した。この膜を、切断されたSNAP−25および完全なSNAP−25を認識するモノクローナル抗体(SMI−81)でプローブした。ペルオキシダーゼ結合二次抗体および化学発光検出系を用いて特異的結合を可視化した。SNAP−25の切断を、走査デンシトメトリー(Molecular Dynamics Personal SI, ImageQuantデータ解析ソフトウェア)によって定量した。SNAP−25の切断パーセントを、以下の式に従って算定した:(切断されたSNAP−25/(切断されたSNAP−25+完全なSNAP−25))×100。
【0200】
LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN−Aと称する)へのeDRG神経細胞の曝露後、サブスタンスP放出の阻害とSNAP−25の切断との両方が観察されている(図10)。融合物への24時間の曝露後、6.3±2.5nMの融合物濃度で、最大の50%のSNAP−25切断が生じている。
【0201】
融合物の効果は、CPN−AへのeDRGの16時間曝露後の所定の時点でも評価している。図11は、CPN−A融合タンパク質の長期にわたる作用期間を示しており、曝露後28日でもなお、測定可能な活性が観察されている。
【0202】
(実施例17 − LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物のインビトロ効力の評価)
実施例8および9に従って調製した融合タンパク質を、実施例16に記載の方法を用いて、eDRG神経細胞モデルにおいて評価した。
【0203】
LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv−Aと称する)へのeDRG神経細胞の曝露後、サブスタンスP放出の阻害とSNAP−25の切断との両方が観察されている。融合物への24時間の曝露後、1.4±0.4nMの融合物濃度で、最大の50%のSNAP−25切断が生じている(図12)。
【0204】
融合物の効果は、CPN−AへのeDRGの16時間曝露後の所定の時点でも評価している。図13は、CPN−A融合タンパク質の長期にわたる作用期間を示しており、曝露後24日でもなお、測定可能な活性が観察されている。
【0205】
また、CPNv−A融合タンパク質の結合能を、CPN−A融合物と比較して評価している。図14は、ORL−1レセプターでの結合効力を決定するための競合実験の結果を示している。CPNv−Aが[3H]−ノシセプチンを置き換えることが示され、それにより、中心提示フォーマットのリガンドを用いて、レセプターへの接近が可能であることが確認される。
【0206】
(実施例18 − エンテロキナーゼでの処理により活性化されるLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の調製)
実施例1および2で使用した方法に従って、LC/A(配列番号1)およびHN/A(配列番号2)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−エンテロキナーゼプロテアーゼ部位−ノシセプチン改変体−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号62)として配置された血清型Aノシセプチン改変体リンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN ORF配列(配列番号63)を含んでおり、これは、配列番号64に示される配列のタンパク質を発現する。この融合タンパク質をCPNv(Ek)−Aと称する。図15は、活性化のために100μgの融合タンパク質当たり0.00064μgでエンテロキナーゼを用いたこと以外は実施例9で使用した方法に従って行った、大腸菌からのCPNv(Ek)−Aの精製を示している。
【0207】
(実施例19 − エンテロキナーゼでの処理により活性化されているLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物のインビトロ効力の評価)
実施例18で調製したCPNv(Ek)−Aを精製形態で得て、eDRG細胞モデルに適用してSNAP−25の切断を評価する(実施例16からの方法を用いる)。図16は、CPNv(Ek)−AへのeDRGの24時間曝露後のSNAP−25の切断を示している。切断の効率は、実施例17に報告したような第Xa因子切断物で得られるのと同様であることが観察される。
【0208】
(実施例20 − 血清型Aに由来する第Xa因子活性化リンカーを伴うLC/C−ノシセプチン改変体−HN/C融合タンパク質の調製)
実施例4で使用した方法に従って、LC/C(配列番号5)およびHN/C(配列番号6)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−ノシセプチン改変体−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号65)として配置された血清型Aノシセプチン改変体リンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN ORF配列(配列番号66)を含んでおり、これは、配列番号67に示される配列のタンパク質を発現する。この融合タンパク質をCPNv−C(act.A)と称する。図17は、実施例9で使用した方法に従って行った、大腸菌からのCPNv−C(act.A)の精製を示している。
【0209】
(実施例21 − LC/C−ノシセプチン改変体−HN/C融合タンパク質のインビトロ効力の評価)
実施例9で使用した方法に従って、実施例20で調製したCPNv−C(act.A)を精製形態で得て、eDRG細胞モデルに適用してSNAP−25の切断を評価する(実施例16からの方法を用いる)。融合物への24時間曝露後、3.1±2.0nMの融合物濃度で、最大の50%のシンタキシン切断が生じている。図18は、CPNv−C(act.A)へのeDRGの24時間曝露後のシンタキシンの切断を示している。
【0210】
(実施例22 − LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物のインビボ効力の評価)
LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN/A)が急性カプサイシン誘発機械的異痛を抑制する能力を、ラット後肢足蹠への皮下足底内注入により評価する。試験動物を、研究に参加させる前;CPN/Aでの皮下処置後カプサイシン投与前;およびCPN/Aの注射後カプサイシン追加投与後(15分および30分での応答の平均)の10gのVon Freyフィラメントによる一連の刺激(10刺激×3試行)に応じた足逃避率(PWF%)について評価する。カプサイシン追加投与を10μLの0.3%溶液の注射によって行う。試料希釈液を0.5%BSA/生理食塩水中で調製する。図19は、LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物の種々の濃度での動物の前処置により得られる機械的異痛の逆転を示している。
【0211】
LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(CPN/A)がラットにおいてストレプトゾトシン(STZ)誘発機械的(触覚)異痛を抑制する能力を評価する。ラットにおけるSTZ誘発機械的異痛をストレプトゾトシンの注射(腹腔内または静脈内)によって生じさせる。これにより、膵臓β細胞が破壊され、インスリン生産の喪失が生じ、代謝ストレスを併発する(高血糖および高脂血症)。このように、STZは、I型糖尿病を誘発する。さらに、STZ処置により神経障害の進行性の発症が生じ、これは、痛覚過敏および異痛を伴う慢性疼痛のモデルとなり、これは、ヒト糖尿病患者で観察される徴候(末梢糖尿病性神経障害)を反映し得る。
【0212】
Sprague-Dawley雄ラット(250〜300g)をクエン酸緩衝液中65mg/kgのSTZで(静脈内)処置し、そして毎週、血中のグルコースおよび脂質を測定して、モデルの準備ができていることを確認する。足逃避閾値(PWT)を所定の期間にわたりVon Freyフィラメントによる一連の刺激に応じて測定する。異痛は、2つの連続した試験日(1週間空ける)でのPWTがスケールで6gを下回って測定された場合に確立されるとする。この時点で、ラットを生理食塩水群(陰性効力コントロール)、ガバペンチン群(陽性効力コントロール)または試験群(CPN/A)に無作為に振り分ける。試験物質(20〜25μl)を1回の注射で皮下注入し(ガバペンチンを除く)、PWTを処置後1日目およびその後2週間にわたって定期的に測定する。ガバペンチン(3ml/kg注入容量で30mg/kg腹腔内)は、毎日、PWT試験開始の2時間前に注射する。図20は、750ngのCPN/Aでの動物の前処置により得られる異痛の逆転を示している。データは、CPN/Aの単回注射後2週間にわたって得た。
【0213】
(実施例23 − LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物のインビボ効力の評価)
LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(CPNv/A)がカプサイシン誘発機械的異痛を抑制する能力を、ラット後肢足蹠への皮下足底内注入により評価する。試験動物を、研究に参加させる前(処置前);CPNv/Aでの皮下足底内処置後カプサイシン投与前(CAP前);およびCPNv/Aの注射後カプサイシン追加投与後(15分および30分での応答の平均;CAP)の10gのVon Freyフィラメントによる一連の刺激(10刺激×3試行)に応じた足逃避率(PWF%)について評価する。カプサイシン追加投与を10μLの0.3%溶液の注射によって行う。試料希釈液を0.5%BSA/生理食塩水中で調製する。
【0214】
図21は、LC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物の種々の濃度での動物の前処置により得られる機械的異痛の逆転を、LC/A−ノシセプチン−HN/A融合物の添加で得られた逆転と比較して示している。これらのデータを、正規化足逃避率差として表し、これは、ピーク応答(カプサイシン後)とベースライン応答(カプサイシン前)との間の差を百分率にて示す。この分析にて、CPNv/Aは、CPN/Aよりも強力であることが理解され得る。これは、CPNv/Aでは、CPN/Aで見られるのと同様の鎮痛効果を生じるのに必要とする投薬量が、より少ないからである。
【0215】
(実施例24 − LC/A−leuエンケファリン−HN/A融合タンパク質の調製)
leuエンケファリンリガンドのサイズが小さい(5アミノ酸)ため、LC/A−leuエンケファリン−HN/A融合物を、鋳型としてLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号13)を用いる部位特異的変異誘発[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]によって作製する。YGGFL leuエンケファリンペプチドをコードし、標準的な大腸菌コドン利用を維持して付加的な制限部位が組み込まれないようにし、ノシセプチン部分のいずれかの側のLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号13)のリンカー領域に相補的な配列が隣接するオリゴヌクレオチドを設計する。SDM産物を配列決定により確認し、そして最終構築物は、LC−リンカー−leuエンケファリン−スペーサー−HN ORF(配列番号68)を含んでおり、これは、配列番号69に示される配列のタンパク質を発現する。この融合タンパク質をCPLE−Aと称する。図22は、実施例9で使用した方法に従って行った、大腸菌からのCPLE−Aの精製を示している。
【0216】
(実施例25 − LC/A−βエンドルフィン−HN/A融合タンパク質の発現および精製)
実施例9で使用した方法に従って、そして実施例7で作製したLC/A−βエンドルフィン−HN/A融合タンパク質(CPBE−Aと称する)を用いて、CPBE−Aを大腸菌から精製する。図23は、精製したタンパク質をSDS-PAGEによる分析にて示している。
【0217】
(実施例26 − LC/A−ノシセプチン変異体−HN/A融合タンパク質の調製)
1位をPheからTyrにするようにノシセプチン配列を変異させるのに必要な単一アミノ酸改変のために、LC/A−ノシセプチン変異体−HN/A融合物を、鋳型としてLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号13)を用いる部位特異的変異誘発[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]によって作製する。ノシセプチン配列の1位でチロシンをコードし、標準的な大腸菌コドン利用を維持して付加的な制限部位が組み込まれないようにし、ノシセプチン部分のいずれかの側のLC/A−ノシセプチン−HN/A融合物(配列番号13)のリンカー領域に相補的な配列が隣接するオリゴヌクレオチドを設計する。SDM産物を配列決定により確認し、そして最終構築物は、LC/A−ノシセプチン変異体−スペーサー−HN/A融合物ORF(配列番号70)を含んでおり、これは、配列番号71に示される配列のタンパク質を発現する。この融合タンパク質をCPOP−Aと称する。図24は、実施例9で使用した方法に従って行った、大腸菌からのCPOP−Aの精製を示している。
【0218】
(実施例27 − LC/A−ノシセプチン改変体変異体−HN/A融合タンパク質の調製および評価)
1位をPheからTyrにするようにノシセプチン配列を変異させるのに必要な単一アミノ酸改変のために、LC/A−ノシセプチン改変体変異体−HN/A融合物を、鋳型としてLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(配列番号25)を用いる部位特異的変異誘発[例えば、Quickchange(Stratagene Inc.)を用いて]によって作製する。ノシセプチン配列の1位でチロシンをコードし、標準的な大腸菌コドン利用を維持して付加的な制限部位が組み込まれないようにし、ノシセプチン部分のいずれかの側のLC/A−ノシセプチン改変体−HN/A融合物(配列番号25)のリンカー領域に相補的な配列が隣接するオリゴヌクレオチドを設計する。SDM産物を配列決定により確認し、そして最終構築物は、LC/A−ノシセプチン変異体−スペーサー−HN/A融合物ORF(配列番号72)を含んでおり、これは、配列番号73に示される配列のタンパク質を発現する。この融合タンパク質をCPOPv−Aと称する。図25は、実施例9で使用した方法に従って行った、大腸菌からのCPOPv−Aの精製を示している。
【0219】
実施例16に記載の方法を用いて、CPOPv−AをeDRG細胞モデルでSNAP−25を切断する能力について評価する。図26は、CPOPv−AがeDRGモデルでSNAP−25を切断できることを示しており、約5.9nMの融合物に細胞を24時間曝露した後、最大の50%のSNAP−25切断を生じている。
【0220】
(実施例28 − IgAプロテアーゼ−ノシセプチン改変体−HN/A融合タンパク質の調製)
IgAプロテアーゼアミノ酸配列を、自由に利用可能なデータベースソース(例えば、GenBank(アクセッション番号P09790))から入手した。N. GonorrhoeaeIgAプロテアーゼ遺伝子の構造に関する情報は、文献で入手可能である(Pohlnerら, Gene structure and extracellular secretion of Neisseria gonorrhoeae IgA protease, Nature, 1987, 325(6103), 458-62)。Backtranslation tool v2.0(Entelechon)を用いて、大腸菌発現のために改変したIgAプロテアーゼをコードするDNA配列を決定した。BamHI認識配列をIgA DNAの5’末端に組み込み、システインアミノ酸をコードするコドンおよびSalI認識配列をIgA DNAの3’末端に組み込んだ。DNA配列を、逆翻訳の間に組み込まれた制限酵素切断配列について、MapDraw,(DNASTAR Inc.)を用いてスクリーニングした。クローニングに必要とされる配列と共通であることが見出されている切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)によって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表を参照することによって評価した。次いで、IgAオープンリーディングフレーム(ORF)を含むこの最適化したDNA配列(配列番号74)は商業的に合成される。
【0221】
IgA(配列番号74)を、BamHIおよびSalI制限酵素を用いてLC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN ORF(配列番号25)に挿入して、LCをIgAプロテアーゼDNAに置換する。最終構築物は、IgA−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN ORF(配列番号75)を含んでおり、これは、配列番号76に示される配列のタンパク質を発現する。
【0222】
(実施例29 − 取り外し可能なヒスチジン精製タグを伴うノシセプチン標的エンドペプチダーゼ融合タンパク質の調製および評価)
第Xa因子の取り外し可能なhisタグ(his6)をコードするDNAを調製したが、エンテロキナーゼのような別のプロテアーゼ部位およびもっと長いヒスチジンタグのような別の精製タグもまた可能であることが明らかである。種々の逆翻訳ソフトウェアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0(Entelechon)]の1つを用いて、第Xa因子の取り外し可能なhisタグ領域をコードするDNA配列を決定する。次いで、制限部位をこのDNA配列に組み込み、NheI−リンカー−SpeI−PstI−HN/A−XbaI−LEIEGRSGHHHHHH停止コドン−HindIII(配列番号77)として配置させ得る。このDNA配列を、組み込まれた制限配列についてスクリーニングし、そしてこの残っている配列から付加配列を手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウェアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、この最適化したDNA配列は商業的に合成され(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター中に提供される。CPNv−A−FXa−HT(配列番号78、取り外し可能なhisタグ構築物)を作製するために、取り外し可能なhisタグをコードしているpCR 4ベクターをNheIおよびHindIIIで切断する。次いで、NheI−HindIIIフラグメントを、同様にNheIおよびHindIIIによって切断しておいたLC/A−CPNv−HN/Aベクター(配列番号25)に挿入する。最終構築物は、LC/A−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN−FXa−Hisタグ−HindIII ORF配列(配列番号78)を含んでおり、これは、配列番号79に示される配列のタンパク質を発現する。図27は、実施例9で使用した方法に従って行った、大腸菌からのCPNv−A−FXa−HTの精製を示している。
【0223】
(実施例30 − ジフテリア毒素由来トランスロケーションドメインを含むleuエンケファリン標的エンドペプチダーゼ融合タンパク質の調製)
DNA配列を、種々の逆翻訳ソフトウェアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0(Entelechon)]の1つを用いて、ジフテリア毒素のトランスロケーションドメインのアミノ酸配列(自由に利用可能なデータベースソース(例えば、GenBank(アクセッション番号1XDTT))から入手)の逆翻訳によって設計する。次いで、制限部位をこのDNA配列に組み込み、NheI−リンカー−SpeI−PstI−ジフテリアトランスロケーションドメイン−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号80)として配置させ得る。PstI/XbaI認識配列を、配列のトランスロケーションドメインの5’末端および3’末端のそれぞれに組み込み、正しい読み枠を維持する。このDNA配列を、逆翻訳の間に組み込まれた制限酵素切断配列について、(MapDraw(DNASTAR Inc.)のようなソフトウェアを用いて)スクリーニングする。クローニング系に必要とされる配列と共通であることが見出されている切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウェアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、ジフテリアトランスロケーションドメインを含むこの最適化したDNA配列は、NheI−リンカー−SpeI−PstI−ジフテリアトランスロケーションドメイン−XbaI−停止コドン−HindIIIとして商業的に合成され(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター(Invitrogen)中に提供される。ジフテリアトランスロケーションドメインをコードしているpCR 4ベクターをNheIおよびXbaIで切断する。次いで、NheI−XbaIフラグメントを、同様にNheIおよびXbaIによって切断しておいたLC/A−CPLE−HN/Aベクター(配列番号68)に挿入する。最終構築物は、LC/A−leuエンケファリン−スペーサー−ジフテリアトランスロケーションドメインのORF配列(配列番号81)を含んでおり、これは、配列番号82に示される配列のタンパク質を発現する。
【0224】
(実施例31 − 破傷風菌毒素由来LCドメインを含むノシセプチン改変体標的エンドペプチダーゼ融合タンパク質の調製)
DNA配列を、種々の逆翻訳ソフトウェアツール[例えば、EditSeq best E. coli reverse translation(DNASTAR Inc.)またはBacktranslation tool v2.0(Entelechon)]の1つを用いて、破傷風菌毒素LCアミノ酸配列(自由に利用可能なデータベースソース(例えば、GenBank(アクセッション番号X04436))から入手)の逆翻訳によって設計する。BamHI/SalI認識配列を、配列の5’末端および3’末端のそれぞれに組み込み、正しい読み枠を維持する(配列番号83)。このDNA配列を、逆翻訳の間に組み込まれた制限酵素切断配列について、(MapDraw(DNASTAR Inc.)のようなソフトウェアを用いて)スクリーニングする。クローニング系に必要とされる配列と共通であることが見出されている切断配列を、提案したコード配列から手動で切り出し、通常の大腸菌コドン利用が維持されるようにする。大腸菌コドン利用を、Graphical Codon Usage Analyser(Geneart)のようなソフトウェアプログラムを参照することによって評価し、そしてGC含量%およびコドン利用比を、公開されているコドン利用表(例えば、GenBank Release 143, 2004年9月13日)を参照することによって評価する。次いで、破傷風菌毒素LCのオープンリーディングフレーム(ORF)を含むこの最適化したDNA配列は、商業的に合成され(例えば、Entelechon、GeneartまたはSigma-Genosysによる)、そしてpCR 4ベクター(Invitrogen)中に提供される。TeNT LCをコードしているpCR 4ベクターをBamHIおよびSalIで切断する。次いで、BamHI−SalIフラグメントを、同様にBamHIおよびSalIによって切断しておいたLC/A−CPNv−HN/Aベクター(配列番号25)に挿入する。最終構築物は、TeNT LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN ORF配列(配列番号84)を含んでおり、これは、配列番号85に示される配列のタンパク質を発現する。
【0225】
(実施例32 − 第Xa因子切断を受けやすい天然型血清型Cリンカーを伴うLC/C−ノシセプチン改変体−HN/C融合タンパク質の調製)
実施例4で使用した方法に従って、LC/C(配列番号5)およびHN/C(配列番号6)を作製し、そしてBamHI−SalI−リンカー−ノシセプチン改変体−NheI−スペーサー−SpeI−PstI−XbaI−停止コドン−HindIII(配列番号86)として配置された血清型Cノシセプチン改変体リンカーに挿入する。最終構築物は、LC−リンカー−ノシセプチン改変体−スペーサー−HN ORF配列(配列番号87)を含んでおり、これは、配列番号88に示される配列のタンパク質を発現する。この融合タンパク質をCPNv−C(act.C)と称する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単鎖ポリペプチド融合タンパク質であって:
a.非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントであって、侵害受容感覚求心性神経細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る、プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメント;
b.該侵害受容感覚求心性神経細胞上の結合部位に結合し得るターゲティング部分であって、該結合部位が、エンドサイトーシスを受けて該侵害受容感覚求心性神経細胞内のエンドソームに取り込まれ得る、ターゲティング部分;
c.プロテアーゼ切断部位であって、該部位でプロテアーゼにより該融合タンパク質が切断され得、該プロテアーゼ切断部位が、該非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントと該ターゲティング部分との間に位置している、プロテアーゼ切断部位;および
d.トランスロケーションドメインであって、エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性神経細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをトランスロケートさせ得る、トランスロケーションドメイン
を含み、
該ターゲティング部分が、該プロテアーゼ切断部位と該トランスロケーションドメインとの間に位置しており、
そして該ターゲティング部分および該プロテアーゼ切断部位が、多くとも10アミノ酸残基離れており、
そして該ターゲティング部分および該プロテアーゼ切断部位が、0アミノ酸残基離れたものでない、融合タンパク質。
【請求項2】
前記ターゲティング部分および前記プロテアーゼ切断部位が、多くとも5アミノ酸残基離れている、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記非細胞傷害性プロテアーゼが、クロストリジウム神経毒素L鎖またはIgAプロテアーゼである、前記請求項のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記トランスロケーションドメインが、クロストリジウム神経毒素のHNドメインである、前記請求項のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記ターゲティング部分が、多くとも50アミノ酸残基、好ましくは多くとも40アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも30アミノ酸残基、および最も好ましくは多くとも20アミノ酸残基を含む、前記請求項のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記ターゲティング部分が、
(i)オピオイドである;
(ii)侵害受容感覚求心性神経細胞上に存在するレセプターのアゴニスト、好ましくは、一次侵害受容感覚求心性神経細胞上に存在するレセプターのアゴニストである;
(iii)ORL1レセプターに結合する、好ましくは、ORL1レセプターに特異的に結合する、より好ましくは、ORL1レセプターのアゴニストである、
請求項1から5のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記ターゲティング部分が、配列番号38またはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有する、または前記ターゲティング部分が、配列番号38またはそのフラグメントに対して少なくとも80%の相同性を有する、または前記ターゲティング部分が、配列番号38またはそのフラグメントに対して少なくとも90%の相同性を有する、または前記ターゲティング部分が、配列番号38またはそのフラグメントに対して少なくとも95%の相同性を有する、または前記ターゲティング部分が、配列番号38またはそのフラグメントである、または前記ターゲティング部分が、配列番号40、42、44、46、48または50のいずれかである、または前記ターゲティング部分が、ノシセプチンである、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記ターゲティング部分が、ノシセプチン、β−エンドルフィン、エンドモルフィン−1、エンドモルフィン−2、ダイノルフィン、met−エンケファリン、leu−エンケファリン、ガラニン、およびPAR−2ペプチドからなる群から選択される、請求項1から5のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記融合タンパク質が精製タグを含み;
好ましくは、前記融合タンパク質が精製タグを含み、該精製タグが該融合タンパク質のN末端および/またはC末端に存在する;
より好ましくは、該精製タグが、ペプチドスペーサー分子によって該融合タンパク質に結合されている、前記請求項のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記トランスロケーションドメインが、ペプチドスペーサー分子によって前記ターゲティング部分から離されている、前記請求項のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項11】
配列番号14、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、59、61、64、67、69、71、73、76、79、82、85または88のいずれか1つを含む、請求項1に記載のポリペプチド融合タンパク質。
【請求項12】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチド融合タンパク質をコードする核酸配列であり;
好ましくは、該核酸分子が、配列番号1から13、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、58、60、63、66、68、70、72、75、78、81、84または87のいずれか1つを含む核酸配列;あるいは
その相補DNA鎖。
【請求項13】
プロモーター、請求項12に記載の核酸配列、およびターミネーターを含むDNAベクターであって、該DNA配列が、該プロモーターの下流に位置し、そして該ターミネーターが、該DNA構築物の下流に位置している、ベクター。
【請求項14】
請求項1から11のいずれかに記載の単鎖ポリペプチド融合タンパク質を調製するための方法であって、請求項12に記載の核酸配列、または請求項13に記載のDNAベクターを宿主細胞で発現させる工程を含む、方法。
【請求項15】
非細胞傷害性薬剤を調製する方法であって、該方法が、
a.請求項1から11のいずれかに記載の単鎖ポリペプチド融合タンパク質と、前記プロテアーゼ切断部位を切断し得るプロテアーゼとを接触させる工程;
b.該プロテアーゼ切断部位を切断し、そしてそれにより二本鎖融合タンパク質を形成する工程
を含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法により得られ得る非細胞傷害性ポリペプチドであって、該ポリペプチドが二本鎖ポリペプチドであり、そして
a.第一鎖が前記非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントを含み、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントが侵害受容感覚求心性神経細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得;
b.第二鎖が前記TMおよび前記トランスロケーションドメインを含み、該トランスロケーションドメインが、エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性神経細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをトランスロケートさせ得;そして
該第一鎖および第二鎖が一緒にジスルフィド結合で連結されている、
非細胞傷害性ポリペプチド。
【請求項17】
疼痛、好ましくは慢性疼痛の治療、予防、または緩和用の医薬品の製造のための、請求項1から11のいずれかに記載の融合タンパク質または請求項16に記載のポリペプチドの使用。
【請求項18】
患者の疼痛、好ましくは慢性疼痛を治療、予防、または緩和に用いるための、請求項1から11のいずれかに記載の融合タンパク質または請求項16に記載のポリペプチド。
【請求項19】
患者の疼痛、好ましくは慢性疼痛を治療、予防、または緩和する方法であって、該方法が、請求項1から11のいずれかに記載の融合タンパク質または請求項16に記載のポリペプチドの治療有効量を該患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項1】
単鎖ポリペプチド融合タンパク質であって:
a.非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントであって、侵害受容感覚求心性神経細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得る、プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメント;
b.該侵害受容感覚求心性神経細胞上の結合部位に結合し得るターゲティング部分であって、該結合部位が、エンドサイトーシスを受けて該侵害受容感覚求心性神経細胞内のエンドソームに取り込まれ得る、ターゲティング部分;
c.プロテアーゼ切断部位であって、該部位でプロテアーゼにより該融合タンパク質が切断され得、該プロテアーゼ切断部位が、該非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントと該ターゲティング部分との間に位置している、プロテアーゼ切断部位;および
d.トランスロケーションドメインであって、エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性神経細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをトランスロケートさせ得る、トランスロケーションドメイン
を含み、
該ターゲティング部分が、該プロテアーゼ切断部位と該トランスロケーションドメインとの間に位置しており、
そして該ターゲティング部分および該プロテアーゼ切断部位が、多くとも10アミノ酸残基離れており、
そして該ターゲティング部分および該プロテアーゼ切断部位が、0アミノ酸残基離れたものでない、融合タンパク質。
【請求項2】
前記ターゲティング部分および前記プロテアーゼ切断部位が、多くとも5アミノ酸残基離れている、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記非細胞傷害性プロテアーゼが、クロストリジウム神経毒素L鎖またはIgAプロテアーゼである、前記請求項のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記トランスロケーションドメインが、クロストリジウム神経毒素のHNドメインである、前記請求項のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記ターゲティング部分が、多くとも50アミノ酸残基、好ましくは多くとも40アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも30アミノ酸残基、および最も好ましくは多くとも20アミノ酸残基を含む、前記請求項のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記ターゲティング部分が、
(i)オピオイドである;
(ii)侵害受容感覚求心性神経細胞上に存在するレセプターのアゴニスト、好ましくは、一次侵害受容感覚求心性神経細胞上に存在するレセプターのアゴニストである;
(iii)ORL1レセプターに結合する、好ましくは、ORL1レセプターに特異的に結合する、より好ましくは、ORL1レセプターのアゴニストである、
請求項1から5のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記ターゲティング部分が、配列番号38またはそのフラグメントに対して少なくとも70%の相同性を有する、または前記ターゲティング部分が、配列番号38またはそのフラグメントに対して少なくとも80%の相同性を有する、または前記ターゲティング部分が、配列番号38またはそのフラグメントに対して少なくとも90%の相同性を有する、または前記ターゲティング部分が、配列番号38またはそのフラグメントに対して少なくとも95%の相同性を有する、または前記ターゲティング部分が、配列番号38またはそのフラグメントである、または前記ターゲティング部分が、配列番号40、42、44、46、48または50のいずれかである、または前記ターゲティング部分が、ノシセプチンである、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記ターゲティング部分が、ノシセプチン、β−エンドルフィン、エンドモルフィン−1、エンドモルフィン−2、ダイノルフィン、met−エンケファリン、leu−エンケファリン、ガラニン、およびPAR−2ペプチドからなる群から選択される、請求項1から5のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記融合タンパク質が精製タグを含み;
好ましくは、前記融合タンパク質が精製タグを含み、該精製タグが該融合タンパク質のN末端および/またはC末端に存在する;
より好ましくは、該精製タグが、ペプチドスペーサー分子によって該融合タンパク質に結合されている、前記請求項のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記トランスロケーションドメインが、ペプチドスペーサー分子によって前記ターゲティング部分から離されている、前記請求項のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項11】
配列番号14、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、59、61、64、67、69、71、73、76、79、82、85または88のいずれか1つを含む、請求項1に記載のポリペプチド融合タンパク質。
【請求項12】
前記請求項のいずれかに記載のポリペプチド融合タンパク質をコードする核酸配列であり;
好ましくは、該核酸分子が、配列番号1から13、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、58、60、63、66、68、70、72、75、78、81、84または87のいずれか1つを含む核酸配列;あるいは
その相補DNA鎖。
【請求項13】
プロモーター、請求項12に記載の核酸配列、およびターミネーターを含むDNAベクターであって、該DNA配列が、該プロモーターの下流に位置し、そして該ターミネーターが、該DNA構築物の下流に位置している、ベクター。
【請求項14】
請求項1から11のいずれかに記載の単鎖ポリペプチド融合タンパク質を調製するための方法であって、請求項12に記載の核酸配列、または請求項13に記載のDNAベクターを宿主細胞で発現させる工程を含む、方法。
【請求項15】
非細胞傷害性薬剤を調製する方法であって、該方法が、
a.請求項1から11のいずれかに記載の単鎖ポリペプチド融合タンパク質と、前記プロテアーゼ切断部位を切断し得るプロテアーゼとを接触させる工程;
b.該プロテアーゼ切断部位を切断し、そしてそれにより二本鎖融合タンパク質を形成する工程
を含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法により得られ得る非細胞傷害性ポリペプチドであって、該ポリペプチドが二本鎖ポリペプチドであり、そして
a.第一鎖が前記非細胞傷害性プロテアーゼまたはそのフラグメントを含み、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントが侵害受容感覚求心性神経細胞のエキソサイトーシス融合器官のタンパク質を切断し得;
b.第二鎖が前記TMおよび前記トランスロケーションドメインを含み、該トランスロケーションドメインが、エンドソームの内部から該エンドソームの膜を横断して該侵害受容感覚求心性神経細胞のサイトゾルへと、該プロテアーゼまたはプロテアーゼフラグメントをトランスロケートさせ得;そして
該第一鎖および第二鎖が一緒にジスルフィド結合で連結されている、
非細胞傷害性ポリペプチド。
【請求項17】
疼痛、好ましくは慢性疼痛の治療、予防、または緩和用の医薬品の製造のための、請求項1から11のいずれかに記載の融合タンパク質または請求項16に記載のポリペプチドの使用。
【請求項18】
患者の疼痛、好ましくは慢性疼痛を治療、予防、または緩和に用いるための、請求項1から11のいずれかに記載の融合タンパク質または請求項16に記載のポリペプチド。
【請求項19】
患者の疼痛、好ましくは慢性疼痛を治療、予防、または緩和する方法であって、該方法が、請求項1から11のいずれかに記載の融合タンパク質または請求項16に記載のポリペプチドの治療有効量を該患者に投与する工程を含む、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
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【図4】
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【図18】
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【図24】
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【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2013−63071(P2013−63071A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−236094(P2012−236094)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【分割の表示】特願2007−543906(P2007−543906)の分割
【原出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(308037845)
【出願人】(507179656)アラガン,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【分割の表示】特願2007−543906(P2007−543906)の分割
【原出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(308037845)
【出願人】(507179656)アラガン,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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