血圧測定用カフ
【課題】カフズレを防止すると共に、容易にカフの着脱ができる血圧測定用カフを提供する。
【解決手段】本発明に係る血圧測定用カフ1は、患者の血圧測定部位に巻き回される帯状の本体2と、本体2の一方の面に設けられ、フック状構造を有するフック面41と、本体2の他方の面に設けられ、フック状構造を有するフック面42と、を有し、本体2を患者の血圧測定部位に巻き回した際にフック面41とフック面42とが相互に固定し合うことを特徴とする。
【解決手段】本発明に係る血圧測定用カフ1は、患者の血圧測定部位に巻き回される帯状の本体2と、本体2の一方の面に設けられ、フック状構造を有するフック面41と、本体2の他方の面に設けられ、フック状構造を有するフック面42と、を有し、本体2を患者の血圧測定部位に巻き回した際にフック面41とフック面42とが相互に固定し合うことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血圧測定時のカフズレを防止する血圧測定用カフに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の血圧測定では腕部に装着したカフの腕帯圧力を最高血圧以上まで昇圧後、徐々に降圧していく際にカフに生じる脈動による圧力振動を検出して血圧値等を算出する降圧時ステップダウン方式が多く採用されている。降圧時ステップダウン方式では、最高血圧を測定できるように、腕帯の昇圧を通常の最高血圧より高く、例えば180mmHg程度にまで昇圧させている。このため、腕部への負荷が大きくなってしまうといった問題がある。
【0003】
これに対し、カフの腕帯圧力をリニアに上昇させながら、昇圧時に血圧を測定するリニア昇圧方式の血圧計が開発されている。昇圧時には、カフの空気袋に空気が充填されて締め付けられることで、カフを固定する面ファスナーの周方向にファスナーの固定を解除しようとする剪断力が働く。
【0004】
これにより、カフの面ファスナーは周方向の剥離開始側にずれたり、面ファスナーを構成するフック面とループ面の固定が剥がれる、といった現象が起こる。上記カフズレ等により、カフには面ファスナーの剥離音が発生すると共に振動が発生する。カフズレ等による振動は血流による振動(オシレーション)ではないため、発生すればノイズとしてオシレーション波形に重畳し、測定精度を低下させてしまうことや、測定できなくなる、という問題がある。
【0005】
カフズレによるノイズを防止するために下記特許文献1では、カフを縮径させる締付けベルトを有し、カフの一端部と他端部の擦れ合う表面の少なくとも一方の表面に、締付けベルトが重なる領域にクッション部材を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4157148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の血圧計は、カフの外周に締付けベルトやつまみ、締付けベルトを通す金属製の基台、開放レバー等を設けている。カフの外側には上述した複数の部材が突出しているため、オペ室でカフを装着する場合、患者に既に取り付けられたチューブ等の配線にひっかかり、配線を外してしまうおそれがある。また、特許文献1のカフでは締付けベルトを基台の中に通して、つまみによって締付け状態を決定する必要がある。オペ室のような緊急時の場合、締付けベルトを基台の中に通すといった作業は煩雑であり、カフの固定が容易ではなかった。
【0008】
そこで本発明は、カフズレを防止すると共に、容易にカフの着脱ができる血圧測定用カフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、以下の手段により達成される。
【0010】
(1)患者の血圧測定部位に巻き回される帯状の本体と、前記本体の一方の面に設けられ、フック状構造を有する第1フック面と、前記本体の他方の面に設けられ、フック状構造を有する第2フック面と、を有し、前記本体を患者の血圧測定部位に巻き回した際に前記第1フック面と前記第2フック面とが相互に固定し合うことを特徴とする血圧測定用カフ。
【0011】
(2)前記一方の面には、前記第1フック面に加えて、ループ状構造を有するループ面がさらに設けられていることを特徴とする(1)に記載の血圧測定用カフ。
【0012】
(3)前記第1フック面は、前記本体から前記ループ面より離間して設けられていることを特徴とする(2)に記載の血圧測定用カフ。
【0013】
(4)前記第1フック面は、前記カフの剥離開始側に設けられていることを特徴とする(2)に記載の血圧測定用カフ。
【0014】
(5)前記本体の幅方向における前記第1フック面には前記ループ面が隣接して設けられていることを特徴とする(4)に記載の血圧測定用カフ。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フック面同士によって面ファスナーを構成することでカフズレを防止して、カフズレによるノイズを低減し、リニア昇圧方式においても正確な血圧測定を実施することができる。
【0016】
さらに本発明によれば、締付けベルト等の複雑な構成を使用せず、面ファスナーのフック面によってカフを固定している。そのため、特許文献1のような煩雑な作業を行うことなく、従来の取付け方法により容易にカフを着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る血圧計のブロック図である。
【図2】本発明に係る血圧計用カフの斜視図である。
【図3】空気袋の平面図である。
【図4】カフを展開した際の平面図である。
【図5】図4のカフを反対方向から見た場合の平面図である。
【図6】面ファスナーを構成するフック面の拡大図である。
【図7】面ファスナーを構成するループ面の拡大図である。
【図8】本発明に係るカフを用いて開閉試験を行わずにリニア昇圧方式で血圧測定を行った場合の波形図である。
【図9】本発明に係るカフを用いて開閉試験を500回行った後にリニア昇圧方式で血圧測定を行った場合の波形図である。
【図10】従来のカフを用いて開閉試験を行わずにリニア昇圧方式で血圧測定を行った場合の波形図である。
【図11】従来のカフを用いて開閉試験を500回行った後にリニア昇圧方式で血圧測定を行った場合の波形図である。
【図12】小児用カフの一例である。
【図13】成人用カフの一例である。
【図14】大腿部用カフの一例である。
【図15】本発明の変形例に係るカフを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
図1は、本実施形態に係るカフを用いた血圧計のブロック図、図2は本実施形態に係る血圧測定用カフの斜視図である。本実施形態に係る血圧計はオシロメトリック式の電子血圧計であって、カフの昇圧時に取得した波形を演算処理することで最高血圧や最低血圧等を算出する。血圧計はポンプ11、制御弁12、圧力センサ13、制御部14、表示器15と、を含む。
【0020】
ポンプ11は所定流量の空気をカフ1に供給する。制御弁12は制御部14により動作開始時に閉塞される。圧力センサ13はポンプ11の昇圧時に腕部の圧力を検出して制御部14に当該圧力信号を送出する。制御部14は圧力センサ13から取得した現状の腕部圧力から腕部に負荷する圧力値を演算処理してポンプ11の流量を制御する。血圧測定の処理が終了すると制御部14は制御弁12を開放し、ポンプ11を停止させる。表示器15には制御部14により演算処理された最高血圧、最低血圧等の種々の結果が表示される。
【0021】
図2においてカフ1は、血圧測定用カフの本体2、空気袋3、面ファスナーを構成するフック面41、42とループ面5と、を含む。本体2はポリエステルやナイロン等の合成樹脂繊維等からなり、縫製により外周を固定する。本体2は展開時に帯状(矩形状)となるように構成されている。
【0022】
本体2の外周は、空気袋3を収納することができるように外周の一部が縫製されていない状態になっている。また、縫製されていない箇所からは血圧計本体からのチューブ6が突出できるようになっている。
【0023】
図3は空気袋3を示す図である。空気袋3は本体2とほぼ同形状をしており、本体2の外周において縫製されていない部分から空気袋3を折り曲げ等して本体2に収納する。チューブ6は空気袋3の一辺に接合されている。チューブ6は血圧計内のカフ1や圧力センサ13等の種々の構成との接続を行う。
【0024】
図4はカフを展開して一方の面から見た場合の平面図、図5は図4とは反対面から見たカフの平面図である。カフ1の固定手段であり、面ファスナーを構成するフック面41とループ面5は図2〜4に示すようにフック面42と別の面に設けられている。フック面41、42は同一のロール状部材から構成されており、フック面41が腕部への巻き付け時に内側、フック面42が外側となる。
【0025】
フック面41、42及びループ面5はロール状の部材から必要量を切り取って本体2に縫製させている。
【0026】
ループ面5及びフック面42は血圧測定部位、例えば腕部に巻き付けた際に、ループ面5とフック面42とが対向して固定ができるように本体2各面の長手方向端部に縫製されている。フック面42は、患者の腕部への巻き付け時に腕部の周長の個人差に耐えられるようにループ面5より円周方向に長く形成されている。フック面42とループ面5は、本体2の幅方向に同じ幅に形成されている。
【0027】
図2、4に示すように、フック面41は面ファスナーを腕部から剥離する際の剥離開始側の位置に配置されている。また、図2,4に示すように、フック面41は本体2の幅方向の両側にループ面5が配置されるように長さが調整されている。フック面41は本実施形態において、ループ面5の上から縫製されており、ループ面5より本体2から離間している。
【0028】
次に本実施形態に係るカフ1を用いた血圧測定について説明する。カフ1は血圧測定時に患者の左右いずれかの上腕部に巻き回して取付けられ、ポンプ11により空気袋を内包するカフ1を膨張させる。本実施形態に係るカフ1は昇圧時にオシレーション波形を取得しており、昇圧時にはカフ1が膨張することでカフ1の面ファスナー部分にはファスナーの固定を解除しようとする剪断力が腕部の周方向に働く。
【0029】
この時、面ファスナーを構成するフック面とループ面は若干ながらもその固定が少しずつ解除されるおそれがある。フック面とループ面による固定が若干でも解除されると上述のように剥離音と振動が発生し、ノイズとしてオシレーション波形に重畳してしまう。
【0030】
上記ノイズの発生要因は、カフのズレ、面ファスナーの剥がれ、及び空気袋とカフの摩擦によるものであり、主たる発生要因として考えられるのが面ファスナーのズレによって生じるものである。
【0031】
そのため、リニア昇圧方式では昇圧時の面ファスナー部分の固定解除を防止する必要がある。
【0032】
図6はフック面を構成するフック形状の拡大図であり、図7はループ面を構成するループ形状の拡大図である。面ファスナーを構成するフック面は図6に示すように無数の鍵状構造(フック状構造)を有するのに対して、ループ面は図7に示すように無数のループ状構造を有する。
【0033】
面ファスナーに生じる力は大別してファスナー面に垂直方向の力と、ファスナー面に沿った剪断力に分類できる。一般的に考えれば、垂直方向の力及び剪断力のいずれについても、フック面とループ面の組み合わせの固定力がフック面とループ面の他の組み合わせより一番強固であるように思われる。しかし、剪断力についてはフック面とループ面よりフック面同士の方が強固な固定力を有することが明らかになった。
【0034】
従って、カフ1の両面にはフック面41,42を設けることで、フック面42とループ面5の組み合わせだけでは対抗しにくい剪断力にも対応できる。これにより、カフズレを防止してリニア昇圧方式の測定精度を確保することができる。また、本実施形態に係るカフは従来の面ファスナー方式であるため、煩雑な作業を必要とせず、容易に患者の腕部に装着できる。
【0035】
また、リニア昇圧方式では昇圧時のカフ圧を監視しているため、必要以上にカフ圧を上昇させる必要がなく、使用者の腕部への負担を軽減することができる。
【0036】
また、降圧時ステップダウン方式では、昇圧が終わるのを待ってから測定を行う必要があるが、昇圧時に測定を行うことができればそのようなタイムロスが発生せず、迅速に測定を行うことができる。
【0037】
そのため、本実施形態に係るカフ1を利用することにより、測定精度を維持しつつ、従来の降圧時ステップダウン方式より短時間で血圧測定を終えることができ、合わせて患者の身体的負担を軽減することができる。
【0038】
カフ1は、図4,5に示すように展開時に帯状(矩形状)であるため、展開時に円錐形状のカフに比べ左右の腕部でカフを区別する必要がなく、容易に腕部に装着できる。
【0039】
(実施例)
次に本実施形態に係るカフの耐久試験の結果について説明する。
【0040】
本試験はオープンクローズ試験(開閉試験)であって、擬似腕にカフを装着させ、0から300mmHgまで昇圧し、圧力を解放した後にカフを擬似腕から外す。そして、上記動作を100回単位で行って出力データを取得し、終了後波形を確認しながらノイズ波形の様子等を確認するものである。
【0041】
本実施例では本発明に係るカフとして、一方の面にフック面とループ面が設けられ、他方の面にフック面が設けられたカフを使用した。また、比較例として一方の面にフック面のみが設けられ、他方の面にループ面のみが設けられた従来のカフを用いて以下の実験を行った。
【0042】
図8は本実施例におけるカフについて、開閉試験を0回、つまり新品のカフで血圧測定した際の波形図、図9は開閉試験を500回行った後にリニア昇圧方式で血圧測定を行った際の波形図である。図10は比較例として、従来のカフにおいて開閉試験を行っていない状態でのオシレーション波形図、図11は従来のカフについて開閉試験を500回行った後に血圧測定を行った際の波形図である。
【0043】
図8〜11において波形A、D、G及びJはオシレーション波形であり、これにより脈を認識する。波形B,E,H及びKは波形A,D,G及びJの差分波形、つまりオシレーション波形を一次微分したもので、ノイズ成分を表す。波形C,F、I、及びLはポンプによる昇圧時の圧力波形を表す。
【0044】
図8〜11では、波形B,E,H及びKの振幅が大きい程ノイズが大きくなる。本実施例に係るカフでは、図8,9を比較すればわかるように、500回開閉試験を行っても、ノイズ成分の振幅はほとんど変化せず、測定精度が良好であることが確認できる。
【0045】
これに対し、従来のカフの場合、図10、11に示すように500回開閉試験を行うとノイズ成分の振幅が大きくなり、測定精度が低下していることが確認できる。
【0046】
図9と図11を比較すると、図11では図9では見られない周期的なノイズが発生している。比較例に係るカフは、本実施例のようにループ面側にはフック面が設けられておらず、周期的なノイズが発生している。つまり、従来のカフは固定・解除を繰り返すことによりループ面が傷んだために、フック面とループ面との固定が徐々に解除され、図11に示すような周期的なノイズが発生していると考えられる。
【0047】
本実施形態に係るカフを使用すれば、従来のフック面とループ面との固定では比較的弱い剪断力にも強固に対抗でき、ファスナー解除によるノイズの発生を抑制して測定精度を確保することができる。このように、実際の試験結果からも本実施形態に係るカフによりリニア昇圧方式の測定精度が十分に確保されていることが確認できる。
【0048】
(変形例)
上記実施形態の変形例としては以下のようなものが挙げられる。すなわち、フック面が設けられた面のいずれかにはフック面だけでなく、ループ面がさらに設けられていることが望ましい。上述のようにフック面同士は、フック面とループ面より剪断力には強いものの、面に垂直方向の力にはフック面とループ面より弱いことがわかっている。
【0049】
そのため、いずれかのフック面にはループ面を合わせて設けることで剪断力だけでなく、面に垂直方向にかかる力にも対抗でき、カフズレを強固に防止できる。
【0050】
また、フック面とループ面による固定解除が一旦始まると、たとえフック面同士が上流および中流に配置されていた場合、固定解除を止めるのは容易でないことがわかっている。そのため、フック面とループ面が共に設けられている場合、フック面の位置は図2に示すように面ファスナーの剥離開始側に配置することで効果的にカフズレを防止できる。なお、隔離開始側とは、腕部に固定された面ファスナーの腕部の周方向に煎断力がかかったときに面ファスナーの剥離が開始する側をいう。
【0051】
また、フック面の剥離開始位置にはフック面だけでなく、図2,4に示すように本体2の幅方向におけるフック面41の両側にループ面5が設けられていることが望ましい。上述のように剥離開始側にフック面を配置することで剪断力には対抗できるものの、フック面は垂直方向の力には比較的弱い。そのため、剥離開始位置にループ面をフック面と共に設けることで剥離開始を確実に防止してカフズレを強固に防止できる。
【0052】
さらにループ面と共に設けられたフック面は、図2,4に示すようにフック面41を構成する長辺と短辺のうち、長辺が剥離開始側に配置されることが望ましい。従来の面ファスナーでは比較的剪断力に対抗する力が不足していたため、剥離開始側にフック面の長辺を配置することで剪断力に重点的に対抗して、カフズレを効果的に防止できる。
【0053】
また、フック面はループ面より本体から離間していることが望ましい。つまり、腕部に巻いた際にフック面の方がループ面より径方向に高い位置に設けられていることが望ましい。
【0054】
上記位置関係により、フック面とループ面の両方が配置されている場合でも、固定の際には必ずフック面はもう一方のフック面と接触する。そのため、フック面同士による固定を確実に作用させて、カフズレを防止することができる。また、フック面とループ面を並べて配置する場合、フック面のフックを長くし腕部に巻いた際フック面のフックがループ面よりも径方向に1〜数ミリ高い位置にすることにより同様な効果を得ることが可能である。
【0055】
また、上記変形例に係るカフを使用すれば、カフにかかる剪断力や垂直方向の力に十分に対抗できることで、固定に必要なフック面とループ面の接触面積を減少させることができる。
【0056】
図15は本発明の変形例に係るカフを示す正面図である。図4に示すフック面及びループ面は、それぞれロール状部材から切り出して形成した。これに代えて、いわゆるフック・ループ混在型の面ファスナーを用いてもよい。フック・ループ混在型の面ファスナーとは、一枚のファスナー面にフックとループとが所定の割合で並べられた面ファスナーのことである。面ファスナーは、例えば、図15に示すように、片側にフック面43、他側にループ面51をそれぞれ配置できる。また、列単位でフック面とループ面を交互に並べたり、面ファスナーを一定の領域に区切って、領域ごとにフック面およびループ面をそれぞれ配置したりしてもよい。なお、フック・ループ混在型面ファスナーを用いた場合でも、腕部にカフを固定する際にフック面とフック面との固定の組み合わせが含まれる点については、上述した実施形態と同様である。
【0057】
フック・ループ混在型の面ファスナーを採用する場合、フックを剥離開始側に配置したり、隔離開始側の辺にフックをループよりも数多く設けたりできる。また、フックをループよりも高く形成してもよい。一つのファスナー面としてフックとループが調整されているので、ロール状部材から切り出したフック面とループ面を貼り合わせる必要がない。
【0058】
フック・ループ混在型面ファスナーでは、フック面とループ面を貼り付ける場合よりも、フック面とループ面をより小さな単位で並べて配置することができる。そのため、ファスナー面にかかる垂直な力やせん断力に対してファスナー面を最適化でき、強固な固定力を得ることができる。
【0059】
また、本発明は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲において種々の改変が可能である。
【0060】
図12〜14は上記実施形態に係るカフ1について、カフ1の大きさに合わせてフック面とループ面を構成した図であり、図12は例えば小児用カフ、図13は成人用カフ、図14は大腿用カフである。
【0061】
図12においてカフ1は固定時にa1とa2とが対向し、図13ではa3とa4とが対向し、図14ではa5とa6とが固定時に対向する。
【0062】
上記実施形態では、従来のロール状部材を用いて図4,5に示すように面ファスナーが構成されると述べたが、これに限定されない。
【0063】
また、上記実施形態ではフック面42とループ面5は、本体2の幅方向に同じ幅に形成されていると述べたが、これに限定されず、各々の幅は異なっていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態ではカフ1が本体2と空気袋3とから構成されていると述べた。しかし、カフ1は本体と空気袋とが一体となったもので構成してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 カフ、
2 本体、
3 空気袋、
41,42、43 フック面、
5、51 ループ面、
6 チューブ、
11 ポンプ、
12 制御弁、
13 圧力センサ、
14 制御部、
15 表示器。
【技術分野】
【0001】
本発明は血圧測定時のカフズレを防止する血圧測定用カフに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の血圧測定では腕部に装着したカフの腕帯圧力を最高血圧以上まで昇圧後、徐々に降圧していく際にカフに生じる脈動による圧力振動を検出して血圧値等を算出する降圧時ステップダウン方式が多く採用されている。降圧時ステップダウン方式では、最高血圧を測定できるように、腕帯の昇圧を通常の最高血圧より高く、例えば180mmHg程度にまで昇圧させている。このため、腕部への負荷が大きくなってしまうといった問題がある。
【0003】
これに対し、カフの腕帯圧力をリニアに上昇させながら、昇圧時に血圧を測定するリニア昇圧方式の血圧計が開発されている。昇圧時には、カフの空気袋に空気が充填されて締め付けられることで、カフを固定する面ファスナーの周方向にファスナーの固定を解除しようとする剪断力が働く。
【0004】
これにより、カフの面ファスナーは周方向の剥離開始側にずれたり、面ファスナーを構成するフック面とループ面の固定が剥がれる、といった現象が起こる。上記カフズレ等により、カフには面ファスナーの剥離音が発生すると共に振動が発生する。カフズレ等による振動は血流による振動(オシレーション)ではないため、発生すればノイズとしてオシレーション波形に重畳し、測定精度を低下させてしまうことや、測定できなくなる、という問題がある。
【0005】
カフズレによるノイズを防止するために下記特許文献1では、カフを縮径させる締付けベルトを有し、カフの一端部と他端部の擦れ合う表面の少なくとも一方の表面に、締付けベルトが重なる領域にクッション部材を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4157148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の血圧計は、カフの外周に締付けベルトやつまみ、締付けベルトを通す金属製の基台、開放レバー等を設けている。カフの外側には上述した複数の部材が突出しているため、オペ室でカフを装着する場合、患者に既に取り付けられたチューブ等の配線にひっかかり、配線を外してしまうおそれがある。また、特許文献1のカフでは締付けベルトを基台の中に通して、つまみによって締付け状態を決定する必要がある。オペ室のような緊急時の場合、締付けベルトを基台の中に通すといった作業は煩雑であり、カフの固定が容易ではなかった。
【0008】
そこで本発明は、カフズレを防止すると共に、容易にカフの着脱ができる血圧測定用カフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、以下の手段により達成される。
【0010】
(1)患者の血圧測定部位に巻き回される帯状の本体と、前記本体の一方の面に設けられ、フック状構造を有する第1フック面と、前記本体の他方の面に設けられ、フック状構造を有する第2フック面と、を有し、前記本体を患者の血圧測定部位に巻き回した際に前記第1フック面と前記第2フック面とが相互に固定し合うことを特徴とする血圧測定用カフ。
【0011】
(2)前記一方の面には、前記第1フック面に加えて、ループ状構造を有するループ面がさらに設けられていることを特徴とする(1)に記載の血圧測定用カフ。
【0012】
(3)前記第1フック面は、前記本体から前記ループ面より離間して設けられていることを特徴とする(2)に記載の血圧測定用カフ。
【0013】
(4)前記第1フック面は、前記カフの剥離開始側に設けられていることを特徴とする(2)に記載の血圧測定用カフ。
【0014】
(5)前記本体の幅方向における前記第1フック面には前記ループ面が隣接して設けられていることを特徴とする(4)に記載の血圧測定用カフ。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フック面同士によって面ファスナーを構成することでカフズレを防止して、カフズレによるノイズを低減し、リニア昇圧方式においても正確な血圧測定を実施することができる。
【0016】
さらに本発明によれば、締付けベルト等の複雑な構成を使用せず、面ファスナーのフック面によってカフを固定している。そのため、特許文献1のような煩雑な作業を行うことなく、従来の取付け方法により容易にカフを着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る血圧計のブロック図である。
【図2】本発明に係る血圧計用カフの斜視図である。
【図3】空気袋の平面図である。
【図4】カフを展開した際の平面図である。
【図5】図4のカフを反対方向から見た場合の平面図である。
【図6】面ファスナーを構成するフック面の拡大図である。
【図7】面ファスナーを構成するループ面の拡大図である。
【図8】本発明に係るカフを用いて開閉試験を行わずにリニア昇圧方式で血圧測定を行った場合の波形図である。
【図9】本発明に係るカフを用いて開閉試験を500回行った後にリニア昇圧方式で血圧測定を行った場合の波形図である。
【図10】従来のカフを用いて開閉試験を行わずにリニア昇圧方式で血圧測定を行った場合の波形図である。
【図11】従来のカフを用いて開閉試験を500回行った後にリニア昇圧方式で血圧測定を行った場合の波形図である。
【図12】小児用カフの一例である。
【図13】成人用カフの一例である。
【図14】大腿部用カフの一例である。
【図15】本発明の変形例に係るカフを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
図1は、本実施形態に係るカフを用いた血圧計のブロック図、図2は本実施形態に係る血圧測定用カフの斜視図である。本実施形態に係る血圧計はオシロメトリック式の電子血圧計であって、カフの昇圧時に取得した波形を演算処理することで最高血圧や最低血圧等を算出する。血圧計はポンプ11、制御弁12、圧力センサ13、制御部14、表示器15と、を含む。
【0020】
ポンプ11は所定流量の空気をカフ1に供給する。制御弁12は制御部14により動作開始時に閉塞される。圧力センサ13はポンプ11の昇圧時に腕部の圧力を検出して制御部14に当該圧力信号を送出する。制御部14は圧力センサ13から取得した現状の腕部圧力から腕部に負荷する圧力値を演算処理してポンプ11の流量を制御する。血圧測定の処理が終了すると制御部14は制御弁12を開放し、ポンプ11を停止させる。表示器15には制御部14により演算処理された最高血圧、最低血圧等の種々の結果が表示される。
【0021】
図2においてカフ1は、血圧測定用カフの本体2、空気袋3、面ファスナーを構成するフック面41、42とループ面5と、を含む。本体2はポリエステルやナイロン等の合成樹脂繊維等からなり、縫製により外周を固定する。本体2は展開時に帯状(矩形状)となるように構成されている。
【0022】
本体2の外周は、空気袋3を収納することができるように外周の一部が縫製されていない状態になっている。また、縫製されていない箇所からは血圧計本体からのチューブ6が突出できるようになっている。
【0023】
図3は空気袋3を示す図である。空気袋3は本体2とほぼ同形状をしており、本体2の外周において縫製されていない部分から空気袋3を折り曲げ等して本体2に収納する。チューブ6は空気袋3の一辺に接合されている。チューブ6は血圧計内のカフ1や圧力センサ13等の種々の構成との接続を行う。
【0024】
図4はカフを展開して一方の面から見た場合の平面図、図5は図4とは反対面から見たカフの平面図である。カフ1の固定手段であり、面ファスナーを構成するフック面41とループ面5は図2〜4に示すようにフック面42と別の面に設けられている。フック面41、42は同一のロール状部材から構成されており、フック面41が腕部への巻き付け時に内側、フック面42が外側となる。
【0025】
フック面41、42及びループ面5はロール状の部材から必要量を切り取って本体2に縫製させている。
【0026】
ループ面5及びフック面42は血圧測定部位、例えば腕部に巻き付けた際に、ループ面5とフック面42とが対向して固定ができるように本体2各面の長手方向端部に縫製されている。フック面42は、患者の腕部への巻き付け時に腕部の周長の個人差に耐えられるようにループ面5より円周方向に長く形成されている。フック面42とループ面5は、本体2の幅方向に同じ幅に形成されている。
【0027】
図2、4に示すように、フック面41は面ファスナーを腕部から剥離する際の剥離開始側の位置に配置されている。また、図2,4に示すように、フック面41は本体2の幅方向の両側にループ面5が配置されるように長さが調整されている。フック面41は本実施形態において、ループ面5の上から縫製されており、ループ面5より本体2から離間している。
【0028】
次に本実施形態に係るカフ1を用いた血圧測定について説明する。カフ1は血圧測定時に患者の左右いずれかの上腕部に巻き回して取付けられ、ポンプ11により空気袋を内包するカフ1を膨張させる。本実施形態に係るカフ1は昇圧時にオシレーション波形を取得しており、昇圧時にはカフ1が膨張することでカフ1の面ファスナー部分にはファスナーの固定を解除しようとする剪断力が腕部の周方向に働く。
【0029】
この時、面ファスナーを構成するフック面とループ面は若干ながらもその固定が少しずつ解除されるおそれがある。フック面とループ面による固定が若干でも解除されると上述のように剥離音と振動が発生し、ノイズとしてオシレーション波形に重畳してしまう。
【0030】
上記ノイズの発生要因は、カフのズレ、面ファスナーの剥がれ、及び空気袋とカフの摩擦によるものであり、主たる発生要因として考えられるのが面ファスナーのズレによって生じるものである。
【0031】
そのため、リニア昇圧方式では昇圧時の面ファスナー部分の固定解除を防止する必要がある。
【0032】
図6はフック面を構成するフック形状の拡大図であり、図7はループ面を構成するループ形状の拡大図である。面ファスナーを構成するフック面は図6に示すように無数の鍵状構造(フック状構造)を有するのに対して、ループ面は図7に示すように無数のループ状構造を有する。
【0033】
面ファスナーに生じる力は大別してファスナー面に垂直方向の力と、ファスナー面に沿った剪断力に分類できる。一般的に考えれば、垂直方向の力及び剪断力のいずれについても、フック面とループ面の組み合わせの固定力がフック面とループ面の他の組み合わせより一番強固であるように思われる。しかし、剪断力についてはフック面とループ面よりフック面同士の方が強固な固定力を有することが明らかになった。
【0034】
従って、カフ1の両面にはフック面41,42を設けることで、フック面42とループ面5の組み合わせだけでは対抗しにくい剪断力にも対応できる。これにより、カフズレを防止してリニア昇圧方式の測定精度を確保することができる。また、本実施形態に係るカフは従来の面ファスナー方式であるため、煩雑な作業を必要とせず、容易に患者の腕部に装着できる。
【0035】
また、リニア昇圧方式では昇圧時のカフ圧を監視しているため、必要以上にカフ圧を上昇させる必要がなく、使用者の腕部への負担を軽減することができる。
【0036】
また、降圧時ステップダウン方式では、昇圧が終わるのを待ってから測定を行う必要があるが、昇圧時に測定を行うことができればそのようなタイムロスが発生せず、迅速に測定を行うことができる。
【0037】
そのため、本実施形態に係るカフ1を利用することにより、測定精度を維持しつつ、従来の降圧時ステップダウン方式より短時間で血圧測定を終えることができ、合わせて患者の身体的負担を軽減することができる。
【0038】
カフ1は、図4,5に示すように展開時に帯状(矩形状)であるため、展開時に円錐形状のカフに比べ左右の腕部でカフを区別する必要がなく、容易に腕部に装着できる。
【0039】
(実施例)
次に本実施形態に係るカフの耐久試験の結果について説明する。
【0040】
本試験はオープンクローズ試験(開閉試験)であって、擬似腕にカフを装着させ、0から300mmHgまで昇圧し、圧力を解放した後にカフを擬似腕から外す。そして、上記動作を100回単位で行って出力データを取得し、終了後波形を確認しながらノイズ波形の様子等を確認するものである。
【0041】
本実施例では本発明に係るカフとして、一方の面にフック面とループ面が設けられ、他方の面にフック面が設けられたカフを使用した。また、比較例として一方の面にフック面のみが設けられ、他方の面にループ面のみが設けられた従来のカフを用いて以下の実験を行った。
【0042】
図8は本実施例におけるカフについて、開閉試験を0回、つまり新品のカフで血圧測定した際の波形図、図9は開閉試験を500回行った後にリニア昇圧方式で血圧測定を行った際の波形図である。図10は比較例として、従来のカフにおいて開閉試験を行っていない状態でのオシレーション波形図、図11は従来のカフについて開閉試験を500回行った後に血圧測定を行った際の波形図である。
【0043】
図8〜11において波形A、D、G及びJはオシレーション波形であり、これにより脈を認識する。波形B,E,H及びKは波形A,D,G及びJの差分波形、つまりオシレーション波形を一次微分したもので、ノイズ成分を表す。波形C,F、I、及びLはポンプによる昇圧時の圧力波形を表す。
【0044】
図8〜11では、波形B,E,H及びKの振幅が大きい程ノイズが大きくなる。本実施例に係るカフでは、図8,9を比較すればわかるように、500回開閉試験を行っても、ノイズ成分の振幅はほとんど変化せず、測定精度が良好であることが確認できる。
【0045】
これに対し、従来のカフの場合、図10、11に示すように500回開閉試験を行うとノイズ成分の振幅が大きくなり、測定精度が低下していることが確認できる。
【0046】
図9と図11を比較すると、図11では図9では見られない周期的なノイズが発生している。比較例に係るカフは、本実施例のようにループ面側にはフック面が設けられておらず、周期的なノイズが発生している。つまり、従来のカフは固定・解除を繰り返すことによりループ面が傷んだために、フック面とループ面との固定が徐々に解除され、図11に示すような周期的なノイズが発生していると考えられる。
【0047】
本実施形態に係るカフを使用すれば、従来のフック面とループ面との固定では比較的弱い剪断力にも強固に対抗でき、ファスナー解除によるノイズの発生を抑制して測定精度を確保することができる。このように、実際の試験結果からも本実施形態に係るカフによりリニア昇圧方式の測定精度が十分に確保されていることが確認できる。
【0048】
(変形例)
上記実施形態の変形例としては以下のようなものが挙げられる。すなわち、フック面が設けられた面のいずれかにはフック面だけでなく、ループ面がさらに設けられていることが望ましい。上述のようにフック面同士は、フック面とループ面より剪断力には強いものの、面に垂直方向の力にはフック面とループ面より弱いことがわかっている。
【0049】
そのため、いずれかのフック面にはループ面を合わせて設けることで剪断力だけでなく、面に垂直方向にかかる力にも対抗でき、カフズレを強固に防止できる。
【0050】
また、フック面とループ面による固定解除が一旦始まると、たとえフック面同士が上流および中流に配置されていた場合、固定解除を止めるのは容易でないことがわかっている。そのため、フック面とループ面が共に設けられている場合、フック面の位置は図2に示すように面ファスナーの剥離開始側に配置することで効果的にカフズレを防止できる。なお、隔離開始側とは、腕部に固定された面ファスナーの腕部の周方向に煎断力がかかったときに面ファスナーの剥離が開始する側をいう。
【0051】
また、フック面の剥離開始位置にはフック面だけでなく、図2,4に示すように本体2の幅方向におけるフック面41の両側にループ面5が設けられていることが望ましい。上述のように剥離開始側にフック面を配置することで剪断力には対抗できるものの、フック面は垂直方向の力には比較的弱い。そのため、剥離開始位置にループ面をフック面と共に設けることで剥離開始を確実に防止してカフズレを強固に防止できる。
【0052】
さらにループ面と共に設けられたフック面は、図2,4に示すようにフック面41を構成する長辺と短辺のうち、長辺が剥離開始側に配置されることが望ましい。従来の面ファスナーでは比較的剪断力に対抗する力が不足していたため、剥離開始側にフック面の長辺を配置することで剪断力に重点的に対抗して、カフズレを効果的に防止できる。
【0053】
また、フック面はループ面より本体から離間していることが望ましい。つまり、腕部に巻いた際にフック面の方がループ面より径方向に高い位置に設けられていることが望ましい。
【0054】
上記位置関係により、フック面とループ面の両方が配置されている場合でも、固定の際には必ずフック面はもう一方のフック面と接触する。そのため、フック面同士による固定を確実に作用させて、カフズレを防止することができる。また、フック面とループ面を並べて配置する場合、フック面のフックを長くし腕部に巻いた際フック面のフックがループ面よりも径方向に1〜数ミリ高い位置にすることにより同様な効果を得ることが可能である。
【0055】
また、上記変形例に係るカフを使用すれば、カフにかかる剪断力や垂直方向の力に十分に対抗できることで、固定に必要なフック面とループ面の接触面積を減少させることができる。
【0056】
図15は本発明の変形例に係るカフを示す正面図である。図4に示すフック面及びループ面は、それぞれロール状部材から切り出して形成した。これに代えて、いわゆるフック・ループ混在型の面ファスナーを用いてもよい。フック・ループ混在型の面ファスナーとは、一枚のファスナー面にフックとループとが所定の割合で並べられた面ファスナーのことである。面ファスナーは、例えば、図15に示すように、片側にフック面43、他側にループ面51をそれぞれ配置できる。また、列単位でフック面とループ面を交互に並べたり、面ファスナーを一定の領域に区切って、領域ごとにフック面およびループ面をそれぞれ配置したりしてもよい。なお、フック・ループ混在型面ファスナーを用いた場合でも、腕部にカフを固定する際にフック面とフック面との固定の組み合わせが含まれる点については、上述した実施形態と同様である。
【0057】
フック・ループ混在型の面ファスナーを採用する場合、フックを剥離開始側に配置したり、隔離開始側の辺にフックをループよりも数多く設けたりできる。また、フックをループよりも高く形成してもよい。一つのファスナー面としてフックとループが調整されているので、ロール状部材から切り出したフック面とループ面を貼り合わせる必要がない。
【0058】
フック・ループ混在型面ファスナーでは、フック面とループ面を貼り付ける場合よりも、フック面とループ面をより小さな単位で並べて配置することができる。そのため、ファスナー面にかかる垂直な力やせん断力に対してファスナー面を最適化でき、強固な固定力を得ることができる。
【0059】
また、本発明は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲において種々の改変が可能である。
【0060】
図12〜14は上記実施形態に係るカフ1について、カフ1の大きさに合わせてフック面とループ面を構成した図であり、図12は例えば小児用カフ、図13は成人用カフ、図14は大腿用カフである。
【0061】
図12においてカフ1は固定時にa1とa2とが対向し、図13ではa3とa4とが対向し、図14ではa5とa6とが固定時に対向する。
【0062】
上記実施形態では、従来のロール状部材を用いて図4,5に示すように面ファスナーが構成されると述べたが、これに限定されない。
【0063】
また、上記実施形態ではフック面42とループ面5は、本体2の幅方向に同じ幅に形成されていると述べたが、これに限定されず、各々の幅は異なっていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態ではカフ1が本体2と空気袋3とから構成されていると述べた。しかし、カフ1は本体と空気袋とが一体となったもので構成してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 カフ、
2 本体、
3 空気袋、
41,42、43 フック面、
5、51 ループ面、
6 チューブ、
11 ポンプ、
12 制御弁、
13 圧力センサ、
14 制御部、
15 表示器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血圧測定部位に巻き回される帯状の本体と、
前記本体の一方の面に設けられ、フック状構造を有する第1フック面と、
前記本体の他方の面に設けられ、フック状構造を有する第2フック面と、を有し、
前記本体を患者の血圧測定部位に巻き回した際に前記第1フック面と前記第2フック面とが相互に固定し合うことを特徴とする血圧測定用カフ。
【請求項2】
前記一方の面には、前記第1フック面に加えて、ループ状構造を有するループ面がさらに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の血圧測定用カフ。
【請求項3】
前記第1フック面は、前記本体から前記ループ面より離間して設けられていることを特徴とする請求項2に記載の血圧測定用カフ。
【請求項4】
前記第1フック面は、前記カフの剥離開始側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の血圧測定用カフ。
【請求項5】
前記本体の幅方向における前記第1フック面には前記ループ面が隣接して設けられていることを特徴とする請求項4に記載の血圧測定用カフ。
【請求項1】
患者の血圧測定部位に巻き回される帯状の本体と、
前記本体の一方の面に設けられ、フック状構造を有する第1フック面と、
前記本体の他方の面に設けられ、フック状構造を有する第2フック面と、を有し、
前記本体を患者の血圧測定部位に巻き回した際に前記第1フック面と前記第2フック面とが相互に固定し合うことを特徴とする血圧測定用カフ。
【請求項2】
前記一方の面には、前記第1フック面に加えて、ループ状構造を有するループ面がさらに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の血圧測定用カフ。
【請求項3】
前記第1フック面は、前記本体から前記ループ面より離間して設けられていることを特徴とする請求項2に記載の血圧測定用カフ。
【請求項4】
前記第1フック面は、前記カフの剥離開始側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の血圧測定用カフ。
【請求項5】
前記本体の幅方向における前記第1フック面には前記ループ面が隣接して設けられていることを特徴とする請求項4に記載の血圧測定用カフ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−63257(P2013−63257A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−182617(P2012−182617)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
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