説明

血液検査における検体粒子の洗浄方法及び装置

【課題】 遠心分離法以外の方法により、検体粒子の回収率の低下を伴わずに検体中に存在する不純物を効率的に除去可能にすることにより自動化を可能にする検体粒子の洗浄方法及び装置を提供する。
【解決手段】 検体と試薬とを免疫学的に反応させた反応液を洗浄液と共に精密フィルタ2からなる濾過部を備えた容器1に入れ、該濾過部の吐出側に減圧を負荷して洗浄液を濾過する操作と該容器1へ新たに洗浄液を補給する操作とを反復繰り返すようにする。好ましくは、濾過操作の途中で精密フィルタ2の濾過面を間欠的または連続的に更新する操作を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、血液検査における検体粒子の洗浄方法及び装置に関し、さらに詳しくは遠心分離法によらない洗浄により洗浄の自動化を可能にした検体粒子の洗浄方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】血液検査には、血液型検査、梅毒検査、ウィルス検査、血球計数検査などがある。このうち血液型検査は、ABO式血液型判定検査、Rh式血液型判定検査、その他の血液型判定の抗体スクリーニング検査などがある。これらの血液検査のなかで、抗体スクリーニング検査は不規則抗体スクリーニングと呼ばれ、規則抗体(抗A抗体,抗B抗体)以外の抗体で、なんらかの抗原刺激により産生された抗体を検出する方法であって、検出しようとする抗体の種類により生理食塩水法、ブロメリン法、アルブミン法、間接抗グロブリン試験(クームス試験)などがある。しかし、このうちのクームス試験だけが未だに全自動化されていないのが実情である。
【0003】クームス試験は、検体中の赤血球に対するIgG抗体を検出するために行われるが、IgG抗体のみでは赤血球の凝集が起こらないので、検体と赤血球との反応後にクームス血清(抗ヒトIgG抗体)を加えて凝集させ、その凝集パターンにより判定を行うようにしている。そのため、検体と赤血球を反応させたのち、検体中に多量に存在する他のIgG抗体を出来るだけ除く必要がある。
【0004】しかしながら、現行の用法によるクームス試験では、遠心分離による洗浄方法が採用されているため操作が煩雑になることが避けられず、洗浄の自動化を含めたクームス試験の全自動化の実現が望まれている。また、現在、洗浄工程のみを自動化した遠心分離法による装置は販売されているが、この装置では洗浄効率を上げるために洗浄回数を増やすと、赤血球の回収率が低下してしまうなどの問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、検体と試薬との免疫学的凝集反応を原理とする血液検査における検体粒子の洗浄において、遠心分離法以外の方法により検体粒子の回収率の低下を伴わずに検体中に存在する不純物を効率的に除去可能にすることにより自動化を可能にした洗浄方法及び装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明の血液検査における検体粒子の洗浄方法は、検体と試薬とを免疫学的に反応させた反応液を洗浄液と共に精密フィルタからなる濾過部を備えた容器に入れ、該濾過部の吐出側に減圧を負荷して前記洗浄液を濾過する操作と該容器へ新たに洗浄液を補給する操作とを反復繰り返すようにすることを特徴とするものである。さらに好ましくは、前記減圧濾過の工程途中で、前記精密フィルタの濾過面を更新する操作を組合せるようにしたものである。
【0007】このように精密フィルタからなる濾過部を備えた容器を利用し、その中に反応液と洗浄液とを入れて、濾過部の吐出側に減圧を負荷しながら洗浄液を濾過する操作と、その容器に新たな洗浄液を補給する操作とを反復繰り返すことにより、反応液(検体)中の不純物を効率的に除去することが可能になる。さらに精密フィルタの濾過面を随時更新することにより、一層検体中の不純物の除去を効率的にすることができる。
【0008】また、上記目的を達成する本発明の血液検査における検体粒子の洗浄装置は、精密フィルタからなる濾過部を備え、検体と試薬とを免疫学的に反応させた反応液を洗浄液と共に保持する容器と、該濾過部の吐出側に減圧を負荷する手段と、前記容器へ洗浄液を補給する手段とから構成されてなるものである。このように構成された洗浄装置によれば、上述の血液検査における検体粒子の洗浄方法を実施することが可能になる。
【0009】
【発明の実施の形態】図1は、本発明による検体粒子の洗浄方法のフローチャートの一例を示す。このフローチャートにおいて、工程A〜Eは本発明の洗浄方法に使用する精密フィルタ付き容器自体を洗浄する予備工程を示す。この予備工程は本発明において必ずしも必要とするものではない。
【0010】本発明による検体粒子の洗浄方法は、上記予備工程に続いて工程F〜Mにより、次のように実施される。まず、検体血清と試薬血球とを免疫学的に反応させることにより感作血球を含む反応液を作る。次いで、この反応液の一定量を、精密フィルタが底部に取り付けられた容器に分注し(工程F)、さらにこの反応液に対して、洗浄回数に応じた量の洗浄液を加える(工程G)。或いは、この工程F,Gとしては、別の試験管で一定量の反応液と洗浄液とを混合した混合液を予め作っておき、それを上記精密フィルタ付き容器に分注するようにしてもよい。
【0011】精密フィルタ付き容器に一定量の混合液が充填されたら、精密フィルタ(濾過部)の吐出側(下流側)を減圧し、容器内の洗浄液を吸引・排出して濾過を行う(工程H)。この減圧濾過を一定時間継続すると、やがて精密フィルタの濾過面に細胞が徐々に蓄積されて濾過面が目詰まり閉塞するようになる。このような閉塞状態が生じたら、濾過面の更新操作によって細胞を再浮遊させ、濾過面を更新するようにするとよい(工程I)。
【0012】濾過面更新操作は、ノズル或いはピペットにより洗浄液を供給する操作、或いは容器中に補給された洗浄液を吸引・排水する反復操作、或いは洗浄液の供給と吸引・排水との組合せ操作などによって行うことが好ましく、これらの操作により発生する水流の運動エネルギを利用する。この濾過面更新操作としては、好ましくは濾過部の洗浄液の吸引・排出の繰り返しを、減圧濾過中に1ステップで連続的に行うとか、或いは吸引・排出を数ステップ、好ましくは5ステップ以下の頻度で間欠的に行い、減圧濾過終了後に洗浄液の追加供給を行うようにするものであってもよく、また、減圧濾過を行いながら洗浄液の追加供給を1ステップで連続的に行うか、或いは数ステップ、好ましくは5ステップ以下で間欠的に行うようにしてもよく、後者の場合には、さらに効率的な濾過面更新および洗浄を可能にする。
【0013】洗浄液の追加供給は、減圧濾過中に液面を常に感知しながら連続的に供給するようにするか、或いは予め定めた一定のレベルまで液面が低下したことを感知したら予め定めた量を供給するようにするか、或いは一定時間間隔ごと(好ましくは10秒以下)供給するようにするとよい。さらには、上記洗浄液の追加供給を一定時間間隔(好ましくは10秒以下)ごとに行う場合、洗浄液の追加停止の間に、濾過部の洗浄液の吸引・排出の繰り返しを1ステップで連続的に行うか、或いは吸引・排出を数ステップ、好ましくは5ステップ以下で間欠的に行うようにするとよい。また、上記洗浄液の追加供給を数ステップ、好ましくは5ステップ以下で間欠的に行い、洗浄液の排出を減圧濾過により数ステップ、好ましくは5ステップ以下で間欠的に行うようにして、減圧濾過と濾過面更新操作とを同時に行うようにしてもよい。
【0014】上記濾過面更新操作は、工程Hの減圧濾過の継続時間を予め一定時間に設定し、その一定時間を経過した時点で定期的に実施するようにすればよい。また、この濾過面更新操作に当たっては、減圧濾過を停止すると共に、精密フィルタ(濾過部)の吐出側を加圧することにより加圧力を濾過面に作用させるか、或いは精密フィルタ(濾過部)の吐出側に液体、好ましくは0.85〜0.9%の塩化ナトリウム水溶液を満たし、重力による自然濾過を止めた状態ですることが望ましい。
【0015】上記減圧濾過操作と濾過面更新操作とを繰り返すことにより、洗浄液は精密フィルタ付き容器から次第に排出されていくため、容器内の液面は次第に低下していき、元の反応液だけが残る状態になる。このように容器内の液面が元の反応液だけの量に相当するレベルまで低下したら、再び計算量の洗浄液を補給し、上記減圧濾過と濾過面更新操作を再び液面が元の反応液だけの量に相当するレベルになるまで繰り返す。このような洗浄液の減圧濾過と新たな洗浄液の補給の操作を所期の洗浄効率が達成されるまで繰り返す(工程K,L)。
【0016】上記のような減圧濾過操作を繰り返すことによって、反応液中の検体粒子をほぼ完全に近い状態に洗浄することができる。勿論、必要により上記減圧濾過操作を更に繰り返すことは差し支えない。このように洗浄を終わった反応液は精密フィルタ付き容器から回収し(工程M)、それをマイクロタイタウェルまたは試験管に分注し(工程N)、クームス検査に供するものとする。
【0017】洗浄済みの反応液を回収した後は、容器を取外したり(工程O)、容器や精密フィルタ等の洗浄を行ったりすることにより(工程P)、洗浄工程を終了する。本発明の洗浄方法において、減圧濾過のために濾過部の吐出側に負荷する減圧度としては、0〜70mmHgの範囲、さらに好ましくは20〜70mmHgの範囲にすることが好ましい。このような範囲の減圧度にすることにより、血球細胞が精密フィルタを通過しないようにし、かつ血球細胞の破壊を防止することができるので、所望の洗浄効果を上げることができる。
【0018】また、本発明において使用する精密フィルタは、孔径が500Å〜10μm、より好ましくは0.1〜10μm、さらに好ましくは0.3〜5μm、特に好ましくは0.6〜3μmの範囲の細孔集合体を使用するのがよい。このような細孔集合体の材質としては、タンパク質などの非特異的な吸着が少なく、血球細胞への毒性もなく、血球細胞の吸着がない物質が望ましい。例えば、ポリスルホン、ポリカーボネイト、硝酸セルロース、酢酸セルロース、ポリ弗化ビニリデンなどの多孔体、或いは天然繊維や合成繊維などの不織布や編織物を使用することができる。
【0019】また、本発明の洗浄方法において、精密フィルタ付き容器に入れた反応液に対して加える洗浄液の量としては、容器の容量と必要とする洗浄効率(2000倍以上)により決められる。しかし、洗浄効率を非常に高くしても洗浄効果はほぼ飽和状態に達し、洗浄時間が長くなるだけであって効率的でなくなる。また、濾過部に負荷する検体粒子の濃度(即ち、洗浄する検体の実質の容積(希釈液を除いた)を濾過面積で割った量)としては、12μl/cm2 以下、さらに望ましくは9μl/cm2 以下にするのがよい。
【0020】本発明において減圧濾過操作すると、血球細胞は精密フィルタの濾過面に集積され、濾過面を次第に閉塞するようになるが、この濾過閉塞は減圧濾過を連続的または随時停止し、濾過更新操作により細胞を浮遊させて解除することができる。この濾過面更新操作は洗浄液を吸排するノズルを濾過面の近傍に配置すれば、容易に実施することができる。
【0021】また、この濾過面更新操作を行うときは、減圧濾過操作を停止し、精密フィルタの吐出側から濾過とは逆方向に弱い加圧力を作用させるようにするとよい。このような加圧力の負荷によって、重力による自然濾過を防ぐことができるので、このような状態で濾過面更新操作を行うと、濾過面の更新を一層効果的にすることができる。
【0022】図2は、本発明の洗浄方法を実施するための装置の一例を示す。この装置の使用によって、前述した図1の洗浄操作を円滑に行うことができる。図2において、1は反応液と洗浄液との混合液を入れるための容器であり、フレーム10上に固定具11によって着脱自在に固定されている。容器1の底部には、精密フィルタ2が焼結ガラスフィルタ3により下側から支えられるように継手12により着脱自在に固定されている。
【0023】容器1の内側には、保持台6に支持された洗浄液供給ノズル4と濾過面更新用ノズル5とが下向きに挿入されている。保持台6はケーブル15の駆動によって上下動し、この保持台6の上下動により上記洗浄液供給ノズル4とフィルタ表面更新用ノズル5とが、容器1の内外に出し入れされるようになっている。洗浄液供給ノズル4には、三方弁7を介して洗浄液供給ポンプ8と洗浄液タンク9とが連結されている。洗浄液供給ポンプ8は、ピストン8aを上方へストロークすることにより、洗浄液タンク9から一定量の洗浄液を三方弁7を介してポンプ8内に吸引し、次いでピストン8aを下方にストロークすることにより、その洗浄液を三方弁7を介して容器1へ供給するようになっている。
【0024】濾過面更新用ノズル5には、吸排用ポンプ16が連結されている。この吸排用ポンプ16は、ピストン16aを図の右側にストロークすることにより、濾過面更新用ノズル5の先端から洗浄液をポンプ内に吸引し、次いで左側にストロークすると上記吸い込んだ洗浄液を精密フィルタ2の濾過面に向けて噴射し、濾過面上部を攪拌して濾過面の更新を行うようにしている。また、濾過面更新用ノズル5の上端には駆動モータ17が連結され、その駆動モータ17の回転駆動によって濾過面更新用ノズル5をノズル軸を中心に回転させ、攪拌効果を上げるようにしている。
【0025】精密フィルタ2,焼結フィルタ3が取り付けられた容器1の底部にはポンプヘッド18が取り付けられ、そのポンプヘッド18はリフト22の上下動により着脱自在になっている。また、ポンプヘッド18には三方弁19を介して吸引ポンプ20と大気開放弁21とが連結されており、リフト22には廃液タンク23が連結され、その底部に廃液弁24が取り付けられている。
【0026】三方弁19は、吸引ポンプ20のピストン20aが吸気側(図の右側)にストロークするときと、吐出側(図の左側)にストロークするときとで、その連通先を大気開放弁21側とポンプヘッド18とに交互に切り替えるように構成されている。そして、この三方弁19が、吸引ポンプ20がピストン20aを図の右側にストロークするときポンプヘッド18側に連通し、かつ左側にストロークするとき大気開放弁21側に連通するように交互に作用すると、上記吸引ポンプ20の作動によって精密フィルタ2(焼結フィルタ3)の吐出側を減圧し、容器1内の洗浄液を減圧濾過するようになっている。
【0027】他方、上記三方弁19が、吸引ポンプ20がピストン20aを図の右側にストロークするとき大気開放弁21側に連通し、かつ左側にストロークするときポンプヘッド18側に連通するように交互に作用すると、上記吸引ポンプ20の作動によって精密フィルタ2(焼結フィルタ3)の吐出側を加圧し、その加圧力を精密フィルタ2の濾過面に作用させて自然濾過を阻止し、それによって濾過面更新操作に際しての濾過面の更新作用を促進するようになっている。
【0028】濾過面更新操作に使用される濾過面更新用ノズル5は、洗浄液を吸排するとともに、排出時の噴射力によって濾過面を閉塞する血球細胞を浮遊させる作用を有するものであれば特に限定されない。例えば、図3〜図7に示すようなものを例示することができる。いずれの濾過面更新用ノズル5も、洗浄液の噴射によって濾過面上の攪拌効果を上げるように工夫されている。
【0029】図3(A),(B) 〜図4(A),(B) に示す濾過面更新用ノズル5は、それぞれ先端に複数の細孔5aを設け、その噴射方向をいずれも斜めに傾斜させるようにしたもので、外周側位置の細孔5aは中心側に向け、また中心側位置の細孔5aは外周側に向けるようになっている。また、図5(A),(B) 〜図6(A),(B) に示す濾過面更新用ノズル5は、それぞれ先端に複数の細孔5aを設け、そのうち外周側に配置した細孔5aを、それぞれ更にノズルの斜め外側に向けて傾斜するようにしている。図7(A),(B) に示す濾過面更新用ノズル5は、中心の細孔5aは下側に向いているが、その外周側に設けた細孔5aは、噴射流が周方向に旋回するように設けられている。
【0030】図9は、本発明の洗浄装置の他の実施態様を示すものである。図9において、底面に精密フィルタを備えた精密フィルタ付容器30は、回転可能に設置された円盤状のターンテーブル31の複数の開口部31a〜31dに嵌まるように搭載され、押さえ具32によってターンテーブル31上に着脱自在に固定される。ターンテーブル31の開口部31aにおいて、精密フィルタ付容器30の内側には、洗浄液を供給すると共に濾過面を更新するための洗浄液供給・濾過面更新用ノズル33と液面センサ34とが下向きに挿入されており、これらが一体的に容器30の内外に出し入れされるようになっている。
【0031】洗浄液供給・濾過面更新用ノズル33は、洗浄液供給・濾過面更新用ポンプ35に直接連結されていると共に、電磁弁36を介して洗浄液タンク37に連結されている。また、洗浄液タンク37は加圧ポンプ38に連結されている。加圧ポンプ38により加圧された洗浄液タンク37内の洗浄液は、電磁弁36の開閉により洗浄液供給・濾過面更新用ポンプ35と洗浄液供給・濾過面更新用ノズル33との間に導かれ、この洗浄液供給・濾過面更新用ポンプ35の圧力によって精密フィルタ付容器30内に濾過面に向けて噴射される。
【0032】ターンテーブル31の開口部31aにセットされた精密フィルタ付容器30の底部には、上下方向に着脱自在のチャンバ39が配置されている。このチャンバ39の上部と精密フィルタ付容器30の下部とはパッキン等の介在によりシールされる。チャンバ39は圧力センサ40を備えていると共に、加減圧ポンプ41に連結されている。圧力センサ40の測定値は加減圧ポンプ41を制御するコントローラ42に入力され、この圧力センサ40の測定値に基づいてチャンバ39内の圧力が制御される。また、チャンバ39は廃液タンク43に連結され、その底部の排水バルブ44から廃液を排出するようになっている。
【0033】一方、ターンテーブル31の開口部31bにセットされた精密フィルタ付容器30の底部には、上下方向に着脱自在の加圧水槽45が配置されている。この加圧水槽45は電磁弁46を介して加圧ポンプ38に連結されている。ターンテーブル31の開口部31dの外側には、複数の試験管47を並列に格納する試験管ラック48が配置されている。試験管ラック48とターンテーブル31の開口部31dとの間には、分注ポンプ50に連結された分注ノズル49が両者間を移動可能に設置されている。この分注ノズル49は、試験管47内の反応液を採取し、これを精密フィルタ付容器30内に注入する。
【0034】一方、ターンテーブル31の開口部31bの外側には、複数の試験管51を並列に格納する試験管ラック52が配置されている。試験管ラック52とターンテーブル31の開口部31bとの間には、移液ポンプ54に連結された移液ノズル53が両者間を移動可能に設置されている。この移液ノズル53は、精密フィルタ付容器30内の反応液を採取し、これを試験管51内に注入する。
【0035】また、分注ノズル49及び移液ノズル53の下方には、それぞれノズル洗浄槽55,56が設けられている。ノズル洗浄槽55,56はそれぞれポンプ57,58及び電磁弁59,60を介して洗浄液タンク61から洗浄液が供給されるようになっている。上述のように構成された洗浄装置を使用して検体粒子の洗浄を行う場合、試験管47内に、検体血清と試薬血球とを免疫学的に反応させることにより作った感作血球を含む反応液を保持し、その一定量を分注ノズル49によってターンテーブル31に開口部31dに位置する精密フィルタ付容器30に分注する(工程F)。分注後、ターンテーブル31を所定の角度だけ回転させ、反応液を分注した精密フィルタ付容器30をチャンバ39の上方に移動させる。このとき、押さえ具32が下降し、かつチャンバ39が上昇して精密フィルタ付容器30を固定する。
【0036】次に、洗浄液タンク37から供給された洗浄液を洗浄液供給・濾過面更新用ノズル33を介してある一定量だけ精密フィルタ付容器30内に分注する(工程G)。その際、洗浄液供給・濾過面更新用ノズル33は、精密フィルタ付容器30内のある定められた深さまで、好ましくは、反応液の一定量をQ(mm3 )、濾過面の面積をS(mm2 )とすると、濾過面からQ/S(mm)以内に降下し、洗浄が終了するまでその位置に留まる。
【0037】次に、精密フィルタ付容器30の吐出側であるチャンバ39を加減圧ポンプで減圧し、容器内の洗浄液を濾過する(工程H)。そして、圧力センサ40で常にチャンバ39に負荷する減圧を検知しながら圧力を制御する。チャンバ39に負荷する減圧は、好ましくは0〜70mmHg、さらに好ましくは20〜70mmHgの範囲にするとよい。
【0038】本実施態様からなる装置では、洗浄液の追加供給は、減圧濾過中に液面を常に感知しながら連続的に行うようにしている。減圧濾過を一定時間継続すると精密フィルタの濾過面に細胞が徐々に蓄積されて濾過面が目詰まりによって閉塞するようになる。このような閉塞状態が生じたら、洗浄液供給・濾過面更新用ポンプ35を駆動源にして、洗浄液供給・濾過面更新用ポンプ33から洗浄液を吸排して濾過面の更新操作を行い、細胞を再浮遊させる。この濾過面更新操作に当たっては、減圧濾過を停止すると共に、チャンバ39を加減圧ポンプ41により加圧することにより濾過面に加圧力を作用させ、重力による自然濾過を強制的に止めた状態にする。
【0039】上記減圧濾過操作と濾過面更新操作とを予め定めた回数繰り返した後、液面センサ34により液面を検知し、液面がもとの反応液の量に相当するレベルになったところで減圧濾過を停止する。洗浄終了後、押さえ具32を上昇させ、かつチャンバ39を下降させて精密フィルタ付容器30を解放する。次に、ターンテーブル31を所定の角度だけ回転させ、加圧水槽45の上方まで移動させると、押さえ具32が下降し、かつ加圧水槽45が上昇して精密フィルタ付容器30が固定される。そして、加圧ポンプ38で水圧による加圧力を濾過面に作用させ、濾過面に付着した細胞を再浮遊させる。
【0040】次に、上記のように細胞を再浮遊させた反応液を移液ポンプ54及び移液ノズル53を使用して試験管51に移液する。なお、試験管51の替わりにマイクロプレートを使用してもよい。また、使用済みの精密フィルタ付容器30は、押さえ具32を上昇させ、かつ加圧水槽45を下降させた後、手で廃棄するか、或いは機械的にターンテーブル31から取り外して廃棄する。
【0041】一方、使用した分注ノズル49は分注直後に、移液ノズル53は移液直後にそれぞれノズル洗浄槽55,56において洗浄し、検体による汚染を防止する。また、濾過によって廃液タンク43に溜まった廃液は排水バルブ44から排出する。上述の実施態様では、精密フィルタ付容器30の移送手段としてターンテーブル31を使用しているが、この移送手段は特に限定されるものではない。
【0042】図10は精密フィルタ付容器30の移送手段の他の態様を示すものである。図10において、プラスチック製のプレート70は、上面に多数の開口部を有し、これら開口部に多数の精密フィルタ付容器30が嵌まるように搭載される。このプレート70はベルト、爪等の機械的な駆動源によって二次元方向に移動可能となっており、所定の精密フィルタ付容器30を分注部、チャンバ部、移液部まで移送するようになっている。プレート70における精密フィルタ付容器30の配列は、X軸方向に1〜24個、さらに好ましくは2〜12個とし、Y軸方向に1〜10個とすることが好ましい。このような範囲で精密フィルタ付容器30を配列させることにより洗浄作業を効率良く行うことができる。
【0043】
【実施例】図8に示す実験装置を洗浄装置として使用し、下記手順によって洗浄実験を行った。なお、実験装置の精密フィルタ1としては、孔径0.8μm,0.2μm,0.45μmの硝酸セルロース膜を使用する場合、孔径0.8μmのポリスルホン膜を使用する場合、孔径0.65μmのポリ弗化ビニリデン膜を使用する場合の5通りを使用した。
【0044】(1)生理食塩水で2%に希釈したO型スクリーニング血球と、予め抗E抗体の存在が確認されている血清とを1:2の割合で総量300μlに混合した混合液を試験管に分注する。
(2)次いで、上記混合液を37℃で60分感作させる。
(3)上記感作血球を容器1に移す。
【0045】(4)上記容器1に洗浄液として生理食塩水5.7ccを加え、攪拌後に真空ポンプ20により元圧60mmHgで減圧しながら濾過し、液量が400μlになるまで濃縮する。すなわち、容器1に予め400μlの位置に印を付けておき、この印まで液面レベルが低下するまで減圧濾過を行う。
(5)上記(4)の操作を再度2回繰り返す。
【0046】(6)容器1内に残された被洗浄液をよく攪拌した後、90μlを試験管に分注する。
(7)試験管にクームス血清を2滴添加して、3400回転,15秒遠心して凝集の有無を確認する。
(8)AB血清(陰性血清)についても、上記(1)〜(7)の手順で実験を行い、非特異凝集のないことを確認する。
【0047】一方、上記本発明の洗浄方法の比較方法として、上記と同一検体で、血球30μl、血清60μlを分注し、感作した感作血球を用い、市販の遠心分離式の血球洗浄器を使用して洗浄を行ったのち、クームス血清を2滴添加して、3400回転,15秒遠心して凝集の有無を確認した。上記各実験の結果は、本発明の方法で洗浄した抗E抗体感作血球は、各種の精密フィルタで実施したいずれ実験の場合も、凝集を確認することができた。また、陰性血清については凝集せず、非特異凝集の可能性がないことを確認することができた。特に、孔径0.8μmの硝酸セルロース膜、孔径0.8μmのポリスルホン膜は洗浄速度が早く優れていた。
【0048】他方、市販の遠心分離式洗浄器で洗浄した検体も同様の結果が得られ、遠心分離法を使用しない本発明による洗浄方法の有効性を確認することができた。
【0049】
【発明の効果】上述したように、本発明の洗浄方法及び装置によれば、遠心分離法によらずに検体中の不純物を効率的に除去することができる。さらに精密フィルタの濾過面更新操作をしながら行うようにすれば、本発明による検体中の不純物除去効果を一層効率的にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するフローチャートの一例を示す図である。
【図2】本発明の洗浄方法を実施する装置の概略図である。
【図3】(A),(B)は、それぞれ本発明に使用される濾過面更新用ノズルの横断面図と、(A)図におけるA−A矢視断面図である。
【図4】(A),(B)は、それぞれ本発明に使用される他の実施態様からなる濾過面更新用ノズルの横断面図及び(A)図におけるA−A矢視断面図である。
【図5】(A),(B)は、それぞれ本発明に使用される更に他の実施態様からなる濾過面更新用ノズルの横断面図及び(A)図におけるA−A矢視断面図である。
【図6】(A),(B)は、それぞれ本発明に使用される更に他の実施態様からなる濾過面更新用ノズルの横断面図及び(A)図におけるA−A矢視断面図である。
【図7】(A),(B)は、それぞれ本発明に使用される更に他の実施態様からなる濾過面更新用ノズルの横断面図及び(A)図におけるA−A矢視断面図である。
【図8】本発明の実施例で使用した実験装置の概略図である。
【図9】(A),(B)は、それぞれ本発明の洗浄装置の他の実施形態を示す概略図及び(A)図におけるA−A矢視断面図である。
【図10】(A),(B)は、それぞれ本発明の洗浄装置に使用する精密フィルタ付容器の保持プレートの平面図及び(A)図の側面図である。
【符号の説明】
1 容器
2 精密フィルタ
3 焼結ガラスフィルタ
4 洗浄液供給ノズル
5 濾過面更新用ノズル
12 継手
18 ポンプヘッド
20 吸引ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 検体と試薬とを免疫学的に反応させた反応液を洗浄液と共に精密フィルタからなる濾過部を備えた容器に入れ、該濾過部の吐出側に減圧を負荷して前記洗浄液を濾過する操作と該容器へ新たに洗浄液を補給する操作とを反復繰り返すようにする血液検査における検体粒子の洗浄方法。
【請求項2】 前記洗浄液の濾過操作の途中で前記精密フィルタの濾過面を間欠的または連続的に更新する操作を行う請求項1に記載の血液検査における検体粒子の洗浄方法。
【請求項3】 前記濾過面の更新操作をノズルまたはピペットで行う請求項2に記載の血液検査における検体粒子の洗浄方法。
【請求項4】 前記精密フィルタの孔径が500Å〜10μmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液検査における検体粒子の洗浄方法。
【請求項5】 前記減圧の負荷が0〜70mmHgである請求項1〜4のいずれか1項に記載の血液検査における検体粒子の洗浄方法。
【請求項6】 前記濾過面の更新操作に際し、前記精密フィルタの吐出側から濾過面に向けて加圧力を作用させるか、または吐出側を液体で満たすようにする請求項2〜5のいずれか1項に記載の血液検査における検体粒子の洗浄方法。
【請求項7】 前記濾過面に負荷する検体粒子の濃度が単位面積当たり12μl/cm2 以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の血液検査における検体粒子の洗浄方法。
【請求項8】 精密フィルタからなる濾過部を備え、検体と試薬とを免疫学的に反応させた反応液を洗浄液と共に保持する容器と、該濾過部の吐出側に減圧を負荷する手段と、前記容器へ洗浄液を補給する手段とから構成されてなる血液検査における検体粒子の洗浄装置。
【請求項9】 前記容器内における前記洗浄液の液面レベルを検知・制御する手段と、前記濾過部の吐出側に負荷する減圧の減圧度を検知・制御する手段とを有する請求項8に記載の血液検査における検体粒子の洗浄装置。
【請求項10】 前記精密フィルタの孔径が500Å〜10μmである請求項8又は9のいずれか1項に記載の血液検査における検体粒子の洗浄装置。
【請求項11】 前記精密フィルタの濾過面を更新する手段を有する請求項8〜10のいずれか1項に記載の血液検査における検体粒子の洗浄装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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