血液試料測定方法及び装置
【課題】血液試料を吸引管で吸引する際の定量精度を向上させることができる血液試料測定方法を提供する。
【解決手段】栓体により内部が密封された密封容器内の血液試料を吸引して測定する方法。前記栓体を吸引管で穿刺して当該吸引管の先端を密封容器内に挿入し、この密封容器内を大気と連通させる工程と、前記密封容器から吸引管を引き抜き、ついで吸引管の基端側から希釈液を供給して吸引管内に希釈液を充填する工程と、前記栓体を吸引管で再度穿刺して当該吸引管を密封容器内に挿入し、この密封容器内の血液試料を吸引する工程と、吸引した血液試料を測定試料調製容器に吐出する工程と、測定試料調製容器で調製された測定試料を測定する工程と、を有している。
【解決手段】栓体により内部が密封された密封容器内の血液試料を吸引して測定する方法。前記栓体を吸引管で穿刺して当該吸引管の先端を密封容器内に挿入し、この密封容器内を大気と連通させる工程と、前記密封容器から吸引管を引き抜き、ついで吸引管の基端側から希釈液を供給して吸引管内に希釈液を充填する工程と、前記栓体を吸引管で再度穿刺して当該吸引管を密封容器内に挿入し、この密封容器内の血液試料を吸引する工程と、吸引した血液試料を測定試料調製容器に吐出する工程と、測定試料調製容器で調製された測定試料を測定する工程と、を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液試料測定方法及び装置に関する。さらに詳しくは、栓体で密封されている密封容器中の血液試料(以下、単に試料ともいう)を吸引して測定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴムキャップ等の栓体により密封された試料容器内の液体試料を吸引するための試料吸引管として、試料を吸引するための吸引用細管と、吸引時に容器内の通気を行うための通気用細管とを備えており、両細管を前記栓体に穿刺して用いるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されている試料吸引管は、自動試料検査装置に密封管内の試料を吸引して供給する試料供給装置の主要な構成要素であり、2本の細管が同軸に配設された同軸構造を有している。すなわち、中心通孔を有する吸引用細管の外周に、この吸引用細管と同軸に通気用細管が設けられており、前記中心通孔を介して密封管内の試料が吸引され、一方、前記吸引用細管と通気用細管との間の流路を介して、試料吸引時に密封管内を大気に通気することが行われる。
【0003】
しかしながら、前記試料吸引管は、2本の細管を同軸に配置する構造であるため、製造が難しく、またこれに起因して高コストであった。さらに、2本の細管の外周を洗浄する必要があるため、洗浄工程が複雑であるという問題があった。
一方、キャップで密閉された試料容器内の液体試料を吸引針により吸引・吐出する試料吸引・吐出装置として、キャップを吸引針で穿刺して容器内の大気開放を行い、その後吸引針をキャップから抜いて、吸引針の外部および内部を洗浄し、再度吸引針でキャップを穿刺して液体試料を吸引するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭58−76765号公報
【特許文献2】特開2001−153762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2記載の装置においては、微量の液体試料を定量しながら吸引する場合、その定量精度が不十分であるという問題があった。
また、前記試料吸引・吐出装置は、キャップが下になるように密封容器を保持し、下から上に向かって吸引針でキャップを穿刺して大気開放を行い、吸引針をキャップから抜いた後で、吸引針を反転させて洗浄槽内に先端を漬けて吸引針内部の洗浄を行った後、再度吸引針でキャップを穿刺して液体試料の吸引を行っている。このため、吸引管の外側を洗浄する洗浄装置と、吸引管の内部を洗浄するための洗浄槽とが必要となり、装置構成及び液体試料を吸引するシーケンスが複雑であった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、血液試料を吸引管で吸引する際の定量精度を向上させることができる血液試料測定方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の血液試料測定方法は、栓体により内部が密封された密封容器内の血液試料を吸引して測定する方法であって、
前記栓体を吸引管で穿刺して当該吸引管の先端を密封容器内に挿入し、この密封容器内を大気と連通させる工程と、
前記密封容器から吸引管を引き抜き、ついで吸引管の基端側から希釈液を供給して吸引管内に希釈液を充填する工程と、
前記栓体を吸引管で再度穿刺して当該吸引管を密封容器内に挿入し、この密封容器内の血液試料を吸引する工程と、
吸引した血液試料を測定試料調製容器に吐出する工程と、
測定試料調製容器で調製された測定試料を測定する工程と、
を有することを特徴としている。
【0008】
本発明の血液試料測定方法では、栓体を吸引管で穿刺して密封容器内を大気と連通させた後に当該吸引管を密封容器から引き抜き、ついで吸引管の基端側から希釈液を供給して吸引管内に希釈液を充填している。そして、この状態で、栓体を吸引管で再度穿刺して当該吸引管を密封容器内に挿入し、この密封容器内の血液試料を吸引している。このように、吸引管内に液体(希釈液)を充填した状態で密封容器内の血液試料を吸引しているので、定量精度を向上させることができ、微量の血液試料であっても正確に所定量を吸引することができる。
【0009】
前記希釈液充填工程と前記吸引工程との間に、前記吸引管の基端側から吸引を行い、吸引管内の先端側にエアギャップを形成する工程を備えることができる。吸引管内の希釈液の先端側にエアギャップを形成することにより、続く工程で血液試料を吸引管内に吸引したときに、この血液試料が希釈液と接触、混合して、その濃度が小さくなるのを防止することができる。これにより、定量精度が低下するのを防止することができる。
【0010】
前記吸引工程と前記吐出工程との間に、栓体から吸引管を抜きながら、当該吸引管の外側を希釈液で洗浄する工程を備えることができる。この構成によれば、吸引工程時に吸引管の外周に血液試料が付着したとしても、栓体から吸引管を抜きながら、当該吸引管の外側を希釈液で洗浄しているので、前記付着した血液試料が装置内の他の箇所に落下するなどして装置内が汚染されるのを防ぐことができる。
【0011】
前記吐出工程の後に、吸引管の外側を希釈液で洗浄する工程と、当該吸引管の基端側から希釈液を供給し、吸引管の内側を希釈液で洗浄する工程と、を備えるのが好ましい。この場合、吸引管を用いた一連の工程が終了した後に、すぐに当該吸引管の洗浄をしているので、次の検体(血液試料)を用いた測定を連続して開始することができる。
【0012】
前記吐出工程が、吸引した血液試料の一部を測定試料調製容器に吐出する工程であり、この吐出工程の後に、血液試料を第2測定試料調製容器に吐出する第2吐出工程と、当該第2測定試料調製容器で調製された第2測定試料を測定する第2測定工程と、を備えることができる。一度に吸引した血液試料を用いて2種類の測定を行うことで、効率的に血液試料の測定を行うことができる。
【0013】
前記第2吐出工程の後に、吸引管の外側を希釈液で洗浄する工程と、当該吸引管の基端側から希釈液を供給し、吸引管の内側を希釈液で洗浄する工程と、を備えるのが好ましい。この場合も、吸引管を用いた一連の工程が終了した後に、すぐに当該吸引管の洗浄をしているので、次の検体(血液試料)を用いた測定を連続して開始することができる。
前記測定工程において、赤血球数の測定、白血球数の測定、ヘモグロビンの測定および白血球の分類の少なくとも一つを行うことができる。
【0014】
本発明の血液試料測定装置は、密封容器内を密封する栓体を穿刺して、当該密封容器内の血液試料を吸引する吸引管と、
前記密封容器の外部の所定位置、前記密封容器内を大気開放する大気開放位置、及び前記密封容器内の血液試料を吸引する吸引位置のいずれかの位置に前記吸引管の吸引口が位置するように当該吸引管を移動させる吸引管移動機構と、
大気開放された第1流路、希釈液を収容する希釈液収容部、前記吸引管を前記希釈液収容部に接続し得る第2流路、前記希釈液収容部に収容された希釈液を、前記第2流路を介して吸引管に供給可能な第1ポンプ、及び前記密封容器内の血液試料を、前記第2流路を介して吸引および吐出可能な第2ポンプを有しており、前記第1及び第2流路を吸引管に選択的に連通可能な流体機構と、
血液試料と試薬とを混合して測定用試料を調製するための測定試料調製容器と、
前記測定試料調製容器で調製された分析試料を測定する測定部と、
前記吸引管の吸引口を外部位置から大気開放位置に移動させ、前記第1流路を介して前記密封容器内を大気開放した後、前記吸引管の吸引口を前記大気開放位置から外部位置に移動させて第2流路を介して当該吸引管内に希釈液を供給し、ついで前記吸引管の吸引口を外部位置から吸引位置に移動させ、前記第2流路を介して密封容器内の血液試料を吸引するように、前記吸引管移動機構及び流体機構を制御する制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0015】
本発明の血液試料測定装置では、前記制御部により前記吸引管移動機構及び流体機構を制御して、栓体を吸引管で穿刺して密封容器内を大気と連通させた後に当該吸引管を密封容器から引き抜き、ついで吸引管の基端側から希釈液を供給して吸引管内に希釈液を充填している。そして、この状態で、栓体を吸引管で再度穿刺して当該吸引管を密封容器内に挿入し、この密封容器内の血液試料を吸引している。このように、吸引管内に液体(希釈液)を充填した状態で密封容器内の血液試料を吸引しているので、定量精度を向上させることができ、微量の血液試料であっても正確に所定量を吸引することができる。
【0016】
前記密封容器を、栓体が上部に位置するように保持する容器保持具と、吸引管を上下方向に移動自在に受け入れる貫通孔、貫通孔内に希釈液を供給する供給路、および貫通孔内に供給された希釈液を吸引排出するための排出路を有する洗浄装置とを備え、この洗浄装置が密封容器の上方で吸引管の洗浄が可能であり、前記流体機構が、洗浄装置の供給路に希釈液を供給可能であり、且つ洗浄装置の排出路からの吸引が可能であるのが好ましい。この構成によれば、吸引管を上下方向に移動させるだけで当該吸引管外周の洗浄が可能であり、吸引管洗浄のための吸引管の移動機構及び移動操作を簡略化することができる。
【0017】
前記吸引管移動機構が、吸引管を保持した状態で垂直方向に移動可能な垂直摺動部を含んでおり、前記装置が、前記洗浄装置及び前記垂直摺動部を保持する保持部材と、この保持部材を移動させる第2移動機構とを有するのが好ましい。この場合、吸引管と洗浄装置とを一緒に移動させることができ、所望のタイミングでロスタイムなく吸引管の洗浄を行うことができる。
前記第2移動機構を、吸引管が血液試料を吸引した後、吸引管の位置が、密閉容器の上方から測定試料調製容器の上方になるように前記保持部材を水平移動させるように構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の血液試料測定方法及び装置によれば、血液試料を吸引管で吸引する際の定量精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の血液試料測定方法及び装置の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る血液試料測定装置を含む試料分析装置Sの全体斜視図であり、図2は、この試料分析装置Sの、ケーシング1を除去した状態の斜視図であり、図3は、同じくケーシングを除去した状態の正面説明図である。
【0020】
前記試料分析装置Sは、ディスプレイ、入力装置、CPU、メモリ等を有する処理装置PC(典型的には、必要なコンピュータプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータ)と通信可能に接続され(図14参照)、試料分析装置Sと処理装置PCとによって試料分析システムが構成されている。処理装置PCは、試料分析装置Sの操作、分析に関する各種設定、分析結果の表示等を行うための試料分析装置用ソフトウェアがインストールされており、試料分析装置Sとの間での通信により、試料分析装置Sに対して指令を与えたり、試料分析装置Sから測定データを受信したりすることができる。
試料分析装置Sは、密封容器(試料の初期収容容器)である採血管3内に収容されている血液(試料)の測定を行う装置(血液分析装置)であり、装置本体2と、この装置本体2を収納するケーシング1とで主に構成されている。
【0021】
ケーシング1は合成樹脂や防錆処理が施された鋼板等で作製されており、ボルト等の固着手段を用いて装置本体2に固定されている。ケーシング1の一面(図1において左側の側面)の右下部分には開口部5が形成されており、この開口部5を介して採血管3を装置本体2内に挿入できるようになっている。すなわち、装置本体2の下部一端側には、その端部付近に前記採血管3を載置するための載置台6が設けられたスライダー7が、前記開口部5から出没自在に配設されている。また、前記スライダー7の先端には前記開口部5を閉じるカバー8が回動自在に設けられており、このカバー8は、図示しないバネによって所定角度だけ外側に傾斜するように付勢されている(図1参照)。装置が非稼動の状態(この状態は、前記ケーシング1の一面に設けられたボタン15内のランプを非点灯にすることで外部に表示することができる)で、このボタン15を押すと、前記スライダー7が装置本体2外方に進出する。その際、装置が非稼動の状態では前記開口部5はカバー8により閉止されているが、スライダー7が装置本体2外方に進出することで、当該カバー8の突出部8aと前記開口部5の周辺に形成された凹所9との係合が解除されて、カバー8が開放される。また、前記突出部8aと凹所9との係合が解除されることで、前記カバー8はバネの付勢力によって所定角度だけ外側に傾斜する。
【0022】
載置台6は、採血管3の栓体3aが上部に位置するように当該採血管3を保持する容器保持具として機能し、その上面には採血管3の下部を挿入することができる凹部(図示せず)が形成されている。この凹部に採血管3の下部を挿入し、前記ボタン15を押すと、前記スライダー7が装置本体2内に後退し、前記採血管3を所定の位置にセットする。ついで、バネの付勢力に抗して前記カバー8を起立させて、開口部5をカバー8で閉止する。その際、前記突出部8aと凹所9とが係合するので、カバー8が開放するのが防止される。そして、開口部5がカバー8により確実に閉止されたことを、マイクロスイッチ等の検出手段で検出することで、以後の試料吸引工程等が可能となるように設定されている。
なお、ケーシング1の側面の一部(図1において右側の側面)は、装置本体2内の点検やメンテナンス等を容易に行えるように、ボルト10で装置本体2に固定されている。また、図1において、16は主として装置本体2内で発生した熱をファン(図示せず)で外部に放出するための排気口である。
【0023】
装置本体2は、前記採血管3を装置内の所定の位置にセットするための試料セット部4と、採血管3内の血液を定量、希釈等して分析用の混合試料を調整するための試料調製部と、希釈等された血液の測定(検出)を行う検出部D1、D2、D3と、前記試料調整部及び検出部を電気的に駆動制御する制御部とを備えている。本発明の血液試料測定装置は、前記試料調整部、検出部及び制御部のうち、密封容器から試料を吸引し、測定用試料を調整し、そして当該試料を測定するための要素ないしは機構からなっている。
【0024】
試料セット部4は、内部に試料(血液)が密封状態で収容されている採血管3を装置本体2内の所定の位置にセットするための部位であり、前述した載置台6、スライダー7及びこのスライダー7を駆動させるステッピングモータ等の駆動源(図示せず)とで構成されている。
【0025】
前記試料調製部は、採血管3内から所定量の血液を吸引して第1混合チャンバMC1又は第2混合チャンバMC2(測定試料調整容器)内で試薬と混合することにより各種分析用の混合試料を調整する部位であり、採血管3内を密封する栓体3aを穿刺して、当該採血管3内の試料を吸引する吸引管13と、この吸引管13を水平に移動させる水平駆動部20と、前記吸引管13を垂直に移動させる垂直駆動部60と、前記採血管3内を大気に開放するとともに当該採血管3内の試料を吸引、吐出するための流体機構と、前記水平駆動部、垂直駆動部及び流体機構の動作を制御するための制御部とを備えている。本実施の形態に係る試料調製部は、また、前記水平駆動部20により水平に移動される垂直摺動部40を備えており、この垂直摺動部40は、前記吸引管13を保持するとともに、そのガイド機構により垂直移動可能にされている。
【0026】
前記吸引管13は、内部に長手方向に延びる流路を有するとともに、試料又は空気を吸引する吸引口が先端付近に形成されたものであれば、本発明において特に限定されることなく用いることができる。
また、図5及び図6の流体回路図に示すように、装置本体2には、試薬を収容するための試薬容器が設けられている。具体的には、試薬容器としては、希釈液(洗浄液)EPKを収容するための希釈液容器EPK−V、ヘモグロビン溶血剤SLSを収容するためのヘモグロビン溶血剤容器SLS−V、白血球分類用溶血剤FFDを収容するための白血球分類用溶血剤容器(第1試薬容器)FFD−V、及び、白血球分類用染色液FFSを収容するための白血球分類用染色液容器(第2試薬容器)FFS−Vが備わっている。
【0027】
図4は図1に示される試料分析装置の水平駆動部の正面説明図であり、水平駆動部20は、図示されているように、前記垂直摺動部40(詳細は後述する)及び後述する洗浄スピッツCSを保持する保持部材である移動パネル21と、この移動パネル21を水平移動させる駆動機構(第2移動機構)22と、前記移動パネル21の水平移動をガイドするガイド機構23とを備えている。前記移動パネル21は、金属又は合成樹脂で作製された縦長の板体からなっており、その上部及び下部には、垂直摺動部40を固定するためのビス孔24が形成されている。駆動機構22は、支持パネル25の表面(図4において手前側の面)上に回動自在に設けられた駆動プーリ26及び従動プーリ27と、前記支持パネル25の裏面側に配設され、前記駆動プーリ26を回転駆動するステッピングモータ28と、前記駆動プーリ26及び従動プーリ27間に張設されたタイミングベルト29と、このタイミングベルト29の内周面と前記移動パネル21の裏面の両面に固定された連結部材30とで構成されている。
【0028】
支持パネル25の上端縁には、前記移動パネル21の上端をガイドする上部ガイド31が設けられており、一方、当該支持パネル25の表面であって前記タイミングベルト29の下方には、移動パネル21の下部をガイドする下部ガイド32が設けられている。そして、前記ガイド機構23は、この上部ガイド31と下部ガイド32とで構成されている。上部ガイド31は、支持パネル25の上端縁から表面側に突出した水平部31aと、この水平部31aの先端から下方に垂下された垂直部31bとからなっており、移動パネル21の上端付近に形成された裏面側挟持片33と、同じく上端付近において表面側に突出して形成された断面略C字状の表面側挟持片34とで前記垂直部31bを挟持するようになっている。一方、下部ガイド32は、タイミングベルト29の下方において当該タイミングベルト29の移動方向と平行に配設されたガイドシャフト35と、このガイドシャフト35が摺動可能な通路を内部に有する摺動部材36とを備えており、この摺動部材36は、前記移動パネル21の裏面に固定されている。
【0029】
かかる構成において、ステッピングモータ28を駆動させると、タイミングベルト29に固定されている連結部材30が図3において左又は右方向に移動し、これにより当該連結部材30に固定されている移動パネル21を左又は右方向に移動させることができる。この場合に、移動パネル21は、上端及び下部付近を前記上部ガイド31及び下部ガイド32でそれぞれガイドされているので、移動に際し前後左右又は上下方向にがたつくことなくスムーズに移動させることができる。
【0030】
つぎに垂直摺動部40について詳述する。図5は図1に示される試料分析装置Sの垂直摺動部の正面説明図、図6は同じく垂直摺動部と水平駆動部の正面説明図、及び図7は同じく垂直摺動部と水平駆動部の左側面説明図である。垂直摺動部40は、図5〜7に示されるように、支持体41と、この支持体41に垂直に支持されたガイドシャフト42と、前記吸引管13を保持するとともに前記ガイドシャフト42上を摺動する吸引管保持部43とを備えている。
【0031】
前記支持体41は、前記移動パネル21又は支持パネル25と平行な縦長の奥面部41aと、この奥面部41aと垂直に設けられており、同じく縦長の側面部41bと、前記奥面部41aの上下端において当該奥面部41aと垂直に設けられた上面部41c及び下面部41dとで構成されている。そして、前記側面部41bには、吸引管保持部43から水平方向に突出するガイド棒44を案内する縦長のガイドスリット45が形成されている。また、前記上面部41cと下面部41dとの間にガイドシャフト42が垂直に支持されている。なお、46は、垂直摺動部40を前記水平駆動部20の移動パネル21に固定するビスを貫通させるために前記奥面部41aに形成された切欠き部である。
【0032】
吸引管保持部43は略立方体からなる摺動部43aと、この摺動部43aの一面(図5において左側の面)に形成された係合部43bとを備えている。係合部43bは、図7に示されるように、断面が十字状であり、後述する垂直駆動部のアームの断面十字状の凹部と係合し、吸引管13を垂直に移動させる。摺動部43aの他の面(図5において紙面手前側の面)には、軸47が突設されており、この軸47にはガイドローラ48が回転自在に装着されている。このガイドローラ48は、後述する垂直駆動部60のガイドアームと係合し、当該ガイドアームに連動して吸引管保持部43が垂直方向に移動するようになっている。
【0033】
前記支持体41の下面部41dには、ブラケット49を介して、吸引管13の内外周を洗浄するための洗浄スピッツCSが固定されている。また、支持体41の側面部41bの下部には、給排液用ニップル50、51、52が固定されており、それぞれチューブ53、54、55を介して吸引管13の基端及び洗浄スピッツCSに接続されている。
56は、板状のスペーサであり、ビス57によって前記摺動部43aの下面に設けられた固定部58及び支持体41の側面部41bに突設された突起部59に固定されている。前記スペーサ56は、吸引管保持部43を支持体41の最上部に固定し、吸引管13の鋭利な先端が洗浄スピッツCSから出るのを防止している。
すなわち、垂直摺動部40を水平駆動部20に搭載するに際し、当該垂直摺動部40は、前記スペーサ56を装着した状態で前記水平駆動部20の移動パネル21に当接させられ、前記切欠き部46を介してビス孔24へビスで固定された後、ビス57を緩めることによりスペーサ56が除去される。これにより、作業者が吸引管の先端で傷つくことなく、安全に垂直摺動部40を水平駆動部20に搭載することができる。また、吸引管13に詰まり等の不具合が生じた場合、当該吸引管13を含む垂直摺動部40全体が交換されるが、その場合にも、スペーサ56を使用することで交換作業を安全に行うことができる。通常、スペーサ56は、工場出荷時や垂直摺動部40全体の交換時に取り付けられるが、それ以外の装置の稼動時等においては、取り外されている(図6参照)。
【0034】
つぎに吸引管13の垂直駆動部60について詳述する。図8は図1に示される試料分析装置Sの垂直駆動部の左側面説明図であり、図9は図8のC−C矢視断面図である。垂直駆動部60は、前述した垂直摺動部40とともに、本発明の血液試料測定装置における吸引管移動機構を構成し、図8に示されるように、水平方向に沿って配設された細長体からなるアーム61と、このアーム61を直交方向(垂直方向)に貫通し、支持パネル62に配設された軸受63に回転自在に支持されたネジ軸64と、このネジ軸64と螺合するネジ部を有しており、前記アーム61に固定されたナット部65と、前記ネジ軸64と平行になるように支持パネル62に配設されたスライドレール66と、前記アーム61の一端部(装置本体2内部側端部)に設けられ、前記スライドレール66と摺動自在に係合して当該アーム61を垂直方向に案内する摺動部材67と、前記支持パネル62に固定されたステッピングモータ68とを備えている。
【0035】
前記ネジ軸64の上端とステッピングモータ68の出力軸には、それぞれプーリ69、70が固定されており、これらプーリ69、70間にタイミングベルト71が張設されている。また、前記アーム61の他端(装置本体2表面側端部)には、前記垂直摺動部40のガイドローラ48と係合する(図8参照)断面コの字状のガイドアーム72が水平に(図8において紙面に垂直に)固定されている。
前記アーム61は、また、前記ガイドアーム72側の端部付近であって前記吸引管保持部43の断面十字状の係合部43bと対向する面に断面十字状の凹部73を有している。前記係合部43bは、図9に示されるように、矢印X方向から適度なクリアランスを保ちつつ前記断面十字状の凹部73に嵌入されるようになっている。この嵌入した状態において、吸引管13が採血管3の直上にくるように位置決めされており、吸引管13が採血管3の栓体3aを穿刺する際、アーム61の上下運動の力が直接吸引管保持部43に伝達されるようになっている。
【0036】
以上説明をした水平駆動部20のステッピングモータ28及び垂直駆動部60のステッピングモータ68の駆動を前記装置本体2の制御部により適宜制御することで、吸引管保持部43、すなわち吸引管13を水平又は垂直に駆動して、採血管3から試料を吸引したり、後述する混合チャンバに試料を供給したりすることができる。そして、試料吸引時には、吸引管13が採血管3の栓体3aを穿刺する動作が含まれるため、吸引管保持部43の係合部43bがアーム61の断面十字状の凹部73と嵌合し、大きな力が当該吸引管保持部43に伝達される。一方、吸引管13が混合チャンバ上に移動し、当該混合チャンバに試料を供給する際には、垂直駆動部60のステッピングモータ68の駆動力は、アーム61、ガイドアーム72及びガイドローラ48を介して吸引管保持部43に伝達される。
【0037】
本実施の形態にかかわる試料分析装置Sは、図2〜3に示されるように、赤血球、ヘモグロビン及び血小板に関する測定をするための混合試料を調整する第1混合チャンバMC1、白血球に関する測定をするための混合試料を調整する第2混合チャンバMC2、赤血球に関する測定を行う第1検出部D1、ヘモグロビンに関する測定を行う第2検出部D2、及び白血球に関する測定を行う第3検出部D3を備えている。
【0038】
前記装置本体2は、図14に示されるように、前記試料調製部及び測定部D1、D2、D3を制御する制御部100を備えている。また、装置本体2は、試料調製部等を構成する流体回路中の電磁弁SV1〜SV33、SV40、SV41や各種ポンプ・モータ28、68、SP1、SP2、P、V、DP1、DP2、DP3、DP4、DP5等を駆動するための駆動回路部110も備えており、制御部100は、駆動回路部110を介して前記電磁弁等を駆動する。
制御部100は、図示しない通信インターフェースを介して、処理装置PCと通信可能であり、各種信号やデータなどを処理装置PCとの間でやり取りすることができる。
【0039】
つぎに図10〜13に示される流体回路図及び図15に示されるフローチャートを参照しつつ、本発明の血液試料測定方法の実施の形態について説明する。なお、図10〜13において、SP1及びSP2は試料(血液)の吸引及び供給をするためのシリンジポンプであり、CSは吸引管の洗浄をするための洗浄スピッツであり、DP1〜DP5は希釈液、溶血剤、染色液等の液体を定量するためのダイヤフラムポンプである。また、WC1〜WC2は排液チャンバであり、EPK−CはEPK(希釈液)収容容器であり、SV1〜SV33は流路開閉用の電磁バルブである。これらのバルブSV1〜SV33は、通常は閉じられている、常閉タイプのバルブである。
【0040】
本実施の形態に係る血液試料測定方法は、栓体3aを吸引管13で穿刺して当該吸引管13の先端を密封容器3内に挿入し、この密封容器3内を大気と連通させる工程と、前記密封容器3から吸引管13を引き抜き、ついで吸引管13の基端側から希釈液を供給して吸引管内に希釈液を充填する工程と、前記栓体3aを吸引管13で再度穿刺して当該吸引管13を密封容器3内に挿入し、この密封容器3内の血液試料を吸引する工程と、吸引した血液試料を測定試料調製容器に吐出する工程と、測定試料調製容器で調製された測定試料を測定する工程とを含むものであるが、以下、順に説明をする。
【0041】
(1)装置の電源をON状態にし、希釈液を希釈液収容容器EPK−Cに移送する等所定の予備工程が完了すると、スタンバイの表示がなされる。この状態で採血管3を装置本体2内にセットし、モードの選択をし、ついでスタートボタンを押すと試料の吸引工程が開始される。
(2)まず、バルブSV14を開き、排液チャンバWC1内を陰圧状態にする。なお、連続測定時は前回の測定終了時においてバルブSV14は開いており、排液チャンバWC1内は陰圧状態になっている。ついで、バルブSV15を開き、吸引管13内の希釈液(EPK)を吸引し、当該吸引管13内を空の状態にする。つぎに、バルブSV15を閉じ、バルブSV23を開いて、第1混合チャンバMC1及びその排出ラインを空にする(ステップS1)。
(3)ついで、バルブSV14を閉じて、排液チャンバWC1を大気開放状態にし、その後バルブSV15を開いて、吸引管の吸引口から排液チャンバWC1を経て第1混合チャンバMC1に至る、第1流路を含むラインを大気開放状態にする(ステップS2)。
(4)前記ステップS1及びステップS2において、吸引管13は、採血管3の外部の位置にあるが、ステップS2終了後、吸引管13が採血管3の栓体3aを穿刺し、その先端の吸引口が試料上方に位置する大気開放位置まで当該吸引管13を降下させる。これにより、採血管3内が前記吸引管の吸引口から排液チャンバWC1を経て第1混合チャンバMC1に至るラインを通して大気開放される(ステップS3(第1挿入工程))。
(5)ついで、バルブSV15及びバルブSV23を閉じ、バルブSV14を開いて、第1排液チャンバWC1を陰圧状態にする。
(6)その後、吸引管13を前記第2位置から上昇させ、当該吸引管13の先端が採血管3の栓体3aから抜けると同時にバルブSV11及びバルブSV51を開き、吸引管13の上昇動作と並行して当該吸引管13の外周を洗浄する(ステップS4)。
(7)ついで、バルブSV21、バルブSV15及びバルブSV16を開き、0.2秒後にバルブSV15を閉じる。これにより、第1ポンプである希釈液用の1.0mLダイヤフラムポンプDP1に陽圧をかけ、第2流路を含む試料吸引ライン及び吸引管13内を希釈液で満たす(ステップS5(液体充填工程))。なお、吸引管13の吸引口から出る余分の希釈液は、洗浄スピッツCSより吸引される。
(8)バルブSV11及びバルブSV51を閉じ、吸引管13の洗浄を終了させる。
(9)吸引管13の上昇動作が完了した後、再度当該吸引管13を数ミリ程度降下させ、吸引管13先端の吸引口を洗浄スピッツCSから出し、ついでシリンジポンプSP1で3uL吸引し、吸引管13先端にエアギャップを形成する(ステップS6)。
(10)ついで吸引管13を採血管3内の試料吸引位置まで降下させ、吸引口を試料中に入れる。そして、この状態で第2ポンプであるシリンジポンプSP1により所定量の試料を吸引する(ステップS7(第2挿入工程))。このように、吸引管内に液体(希釈液)を充填した状態で血液試料を吸引することで、定量精度を向上させることができ、微量の血液試料であっても正確に所定量を吸引することができる。また、ステップS6において吸引管13先端にエアギャップを形成することで、続く工程で血液試料を吸引管13内に吸引したときに、この血液試料が希釈液と接触、混合して、その濃度が小さくなるのを防止することができる。これにより、定量精度が低下するのを防止することができる。
【0042】
以上のステップS1〜S7により、試料の吸引工程が終了し、引き続き吸引管13内に吸引された試料を用いて第1混合チャンバMC1又は第2混合チャンバMC2内にて分析用の混合試料が調整され、この分析用混合試料を用いて、第1検出部D1、第2検出部D2又は第3検出部D3にて赤血球数、ヘモグロビン、白血球数等の測定が行われる。
具体的には、ステップS7で試料を吸引した後、吸引管13を上昇させ、当該吸引管13の先端が採血管3の栓体3aから抜けると同時にバルブSV11及びバルブSV51を開き、吸引管13の上昇動作と並行して当該吸引管13の外周を洗浄する。これにより、吸引工程時に吸引管の外周に血液試料が付着したとしても、栓体3aから吸引管13を抜きながら、当該吸引管13の外側を希釈液で洗浄しているので、前記付着した血液試料が装置内の他の箇所に落下するなどして装置内が汚染されるのを防ぐことができる。
吸引管13の洗浄の終了後、水平駆動部20により、吸引管13および洗浄スピッツCSを保持した移動パネル21を水平方向に移動させ、第1混合チャンバMC1の上方で停止させる。吸引管13から所定量の試料を第1混合チャンバMC1に吐出する。
次に、水平駆動部20により、吸引管13および洗浄スピッツCSを保持した移動パネル21を水平方向に移動させ、第2混合チャンバMC2の上方で停止させる。吸引管13から所定量の試料を第2混合チャンバMC2に吐出する。このようにして、一度に吸引した血液試料を用いて2種類の測定を行うことで、効率的に血液試料の測定を行うことができる。
吐出終了後、吸引管13を上昇させて洗浄スピッツCSにより吸引管13の外周を洗浄し、吸引管13の先端が洗浄スピッツCS内に来た時に上昇を停止させる。チューブ53から希釈液を吸引管13に供給して吸引管13の内側を洗浄する。吸引管13の吸引口から吐出される希釈液はチューブ54を介して廃液される。吸引管を用いた一連の工程が終了した後に、すぐに当該吸引管の洗浄をすることにより、次の検体(血液試料)を用いた測定を連続して開始することができる。
なお、前記の実施の形態においては、ステップS4で吸引管の外周の洗浄を行ったが、必ずしも吸引管の外周の洗浄を行う必要はなく、省略しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態に係る血液試料測定装置を含む試料分析装置の全体斜視図である。
【図2】図1に示される試料分析装置の、ケーシングを除去した状態の斜視図である。
【図3】図1に示される試料分析装置の、ケーシングを除去した状態の正面説明図である。
【図4】図1に示される試料分析装置の水平駆動部の正面説明図である。
【図5】図1に示される試料分析装置の垂直摺動部の正面説明図である。
【図6】図1に示される試料分析装置の垂直摺動部と水平駆動部の正面説明図である。
【図7】図1に示される試料分析装置の垂直摺動部と水平駆動部の左側面説明図である。
【図8】図1に示される試料分析装置の垂直駆動部の左側面説明図である。
【図9】図8のC−C矢視断面図である。
【図10】図1に示される試料分析装置の流体回路図の前半部分である。
【図11】図1に示される試料分析装置の流体回路図の後半部分である。
【図12】排液チャンバ回りの流体回路図である。
【図13】ダイヤフラムポンプ回りの流体回路図である。
【図14】図1に示される試料分析装置の制御ブロック図である。
【図15】本発明の一実施の形態にかかわる液体試料吸引方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1ケーシング
2装置本体
3採血管
4試料セット部
13吸引管
20水平駆動部
21移動パネル
22駆動機構
23ガイド機構
28ステッピングモータ
40垂直摺動部
41支持体
42ガイドシャフト
43吸引管保持部
60垂直駆動部
61アーム
64ネジ軸
65ナット部
66スライドレール
67摺動部材
68ステッピングモータ
72ガイドアーム
S試料分析装置
【技術分野】
【0001】
本発明は血液試料測定方法及び装置に関する。さらに詳しくは、栓体で密封されている密封容器中の血液試料(以下、単に試料ともいう)を吸引して測定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴムキャップ等の栓体により密封された試料容器内の液体試料を吸引するための試料吸引管として、試料を吸引するための吸引用細管と、吸引時に容器内の通気を行うための通気用細管とを備えており、両細管を前記栓体に穿刺して用いるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載されている試料吸引管は、自動試料検査装置に密封管内の試料を吸引して供給する試料供給装置の主要な構成要素であり、2本の細管が同軸に配設された同軸構造を有している。すなわち、中心通孔を有する吸引用細管の外周に、この吸引用細管と同軸に通気用細管が設けられており、前記中心通孔を介して密封管内の試料が吸引され、一方、前記吸引用細管と通気用細管との間の流路を介して、試料吸引時に密封管内を大気に通気することが行われる。
【0003】
しかしながら、前記試料吸引管は、2本の細管を同軸に配置する構造であるため、製造が難しく、またこれに起因して高コストであった。さらに、2本の細管の外周を洗浄する必要があるため、洗浄工程が複雑であるという問題があった。
一方、キャップで密閉された試料容器内の液体試料を吸引針により吸引・吐出する試料吸引・吐出装置として、キャップを吸引針で穿刺して容器内の大気開放を行い、その後吸引針をキャップから抜いて、吸引針の外部および内部を洗浄し、再度吸引針でキャップを穿刺して液体試料を吸引するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭58−76765号公報
【特許文献2】特開2001−153762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2記載の装置においては、微量の液体試料を定量しながら吸引する場合、その定量精度が不十分であるという問題があった。
また、前記試料吸引・吐出装置は、キャップが下になるように密封容器を保持し、下から上に向かって吸引針でキャップを穿刺して大気開放を行い、吸引針をキャップから抜いた後で、吸引針を反転させて洗浄槽内に先端を漬けて吸引針内部の洗浄を行った後、再度吸引針でキャップを穿刺して液体試料の吸引を行っている。このため、吸引管の外側を洗浄する洗浄装置と、吸引管の内部を洗浄するための洗浄槽とが必要となり、装置構成及び液体試料を吸引するシーケンスが複雑であった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、血液試料を吸引管で吸引する際の定量精度を向上させることができる血液試料測定方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の血液試料測定方法は、栓体により内部が密封された密封容器内の血液試料を吸引して測定する方法であって、
前記栓体を吸引管で穿刺して当該吸引管の先端を密封容器内に挿入し、この密封容器内を大気と連通させる工程と、
前記密封容器から吸引管を引き抜き、ついで吸引管の基端側から希釈液を供給して吸引管内に希釈液を充填する工程と、
前記栓体を吸引管で再度穿刺して当該吸引管を密封容器内に挿入し、この密封容器内の血液試料を吸引する工程と、
吸引した血液試料を測定試料調製容器に吐出する工程と、
測定試料調製容器で調製された測定試料を測定する工程と、
を有することを特徴としている。
【0008】
本発明の血液試料測定方法では、栓体を吸引管で穿刺して密封容器内を大気と連通させた後に当該吸引管を密封容器から引き抜き、ついで吸引管の基端側から希釈液を供給して吸引管内に希釈液を充填している。そして、この状態で、栓体を吸引管で再度穿刺して当該吸引管を密封容器内に挿入し、この密封容器内の血液試料を吸引している。このように、吸引管内に液体(希釈液)を充填した状態で密封容器内の血液試料を吸引しているので、定量精度を向上させることができ、微量の血液試料であっても正確に所定量を吸引することができる。
【0009】
前記希釈液充填工程と前記吸引工程との間に、前記吸引管の基端側から吸引を行い、吸引管内の先端側にエアギャップを形成する工程を備えることができる。吸引管内の希釈液の先端側にエアギャップを形成することにより、続く工程で血液試料を吸引管内に吸引したときに、この血液試料が希釈液と接触、混合して、その濃度が小さくなるのを防止することができる。これにより、定量精度が低下するのを防止することができる。
【0010】
前記吸引工程と前記吐出工程との間に、栓体から吸引管を抜きながら、当該吸引管の外側を希釈液で洗浄する工程を備えることができる。この構成によれば、吸引工程時に吸引管の外周に血液試料が付着したとしても、栓体から吸引管を抜きながら、当該吸引管の外側を希釈液で洗浄しているので、前記付着した血液試料が装置内の他の箇所に落下するなどして装置内が汚染されるのを防ぐことができる。
【0011】
前記吐出工程の後に、吸引管の外側を希釈液で洗浄する工程と、当該吸引管の基端側から希釈液を供給し、吸引管の内側を希釈液で洗浄する工程と、を備えるのが好ましい。この場合、吸引管を用いた一連の工程が終了した後に、すぐに当該吸引管の洗浄をしているので、次の検体(血液試料)を用いた測定を連続して開始することができる。
【0012】
前記吐出工程が、吸引した血液試料の一部を測定試料調製容器に吐出する工程であり、この吐出工程の後に、血液試料を第2測定試料調製容器に吐出する第2吐出工程と、当該第2測定試料調製容器で調製された第2測定試料を測定する第2測定工程と、を備えることができる。一度に吸引した血液試料を用いて2種類の測定を行うことで、効率的に血液試料の測定を行うことができる。
【0013】
前記第2吐出工程の後に、吸引管の外側を希釈液で洗浄する工程と、当該吸引管の基端側から希釈液を供給し、吸引管の内側を希釈液で洗浄する工程と、を備えるのが好ましい。この場合も、吸引管を用いた一連の工程が終了した後に、すぐに当該吸引管の洗浄をしているので、次の検体(血液試料)を用いた測定を連続して開始することができる。
前記測定工程において、赤血球数の測定、白血球数の測定、ヘモグロビンの測定および白血球の分類の少なくとも一つを行うことができる。
【0014】
本発明の血液試料測定装置は、密封容器内を密封する栓体を穿刺して、当該密封容器内の血液試料を吸引する吸引管と、
前記密封容器の外部の所定位置、前記密封容器内を大気開放する大気開放位置、及び前記密封容器内の血液試料を吸引する吸引位置のいずれかの位置に前記吸引管の吸引口が位置するように当該吸引管を移動させる吸引管移動機構と、
大気開放された第1流路、希釈液を収容する希釈液収容部、前記吸引管を前記希釈液収容部に接続し得る第2流路、前記希釈液収容部に収容された希釈液を、前記第2流路を介して吸引管に供給可能な第1ポンプ、及び前記密封容器内の血液試料を、前記第2流路を介して吸引および吐出可能な第2ポンプを有しており、前記第1及び第2流路を吸引管に選択的に連通可能な流体機構と、
血液試料と試薬とを混合して測定用試料を調製するための測定試料調製容器と、
前記測定試料調製容器で調製された分析試料を測定する測定部と、
前記吸引管の吸引口を外部位置から大気開放位置に移動させ、前記第1流路を介して前記密封容器内を大気開放した後、前記吸引管の吸引口を前記大気開放位置から外部位置に移動させて第2流路を介して当該吸引管内に希釈液を供給し、ついで前記吸引管の吸引口を外部位置から吸引位置に移動させ、前記第2流路を介して密封容器内の血液試料を吸引するように、前記吸引管移動機構及び流体機構を制御する制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0015】
本発明の血液試料測定装置では、前記制御部により前記吸引管移動機構及び流体機構を制御して、栓体を吸引管で穿刺して密封容器内を大気と連通させた後に当該吸引管を密封容器から引き抜き、ついで吸引管の基端側から希釈液を供給して吸引管内に希釈液を充填している。そして、この状態で、栓体を吸引管で再度穿刺して当該吸引管を密封容器内に挿入し、この密封容器内の血液試料を吸引している。このように、吸引管内に液体(希釈液)を充填した状態で密封容器内の血液試料を吸引しているので、定量精度を向上させることができ、微量の血液試料であっても正確に所定量を吸引することができる。
【0016】
前記密封容器を、栓体が上部に位置するように保持する容器保持具と、吸引管を上下方向に移動自在に受け入れる貫通孔、貫通孔内に希釈液を供給する供給路、および貫通孔内に供給された希釈液を吸引排出するための排出路を有する洗浄装置とを備え、この洗浄装置が密封容器の上方で吸引管の洗浄が可能であり、前記流体機構が、洗浄装置の供給路に希釈液を供給可能であり、且つ洗浄装置の排出路からの吸引が可能であるのが好ましい。この構成によれば、吸引管を上下方向に移動させるだけで当該吸引管外周の洗浄が可能であり、吸引管洗浄のための吸引管の移動機構及び移動操作を簡略化することができる。
【0017】
前記吸引管移動機構が、吸引管を保持した状態で垂直方向に移動可能な垂直摺動部を含んでおり、前記装置が、前記洗浄装置及び前記垂直摺動部を保持する保持部材と、この保持部材を移動させる第2移動機構とを有するのが好ましい。この場合、吸引管と洗浄装置とを一緒に移動させることができ、所望のタイミングでロスタイムなく吸引管の洗浄を行うことができる。
前記第2移動機構を、吸引管が血液試料を吸引した後、吸引管の位置が、密閉容器の上方から測定試料調製容器の上方になるように前記保持部材を水平移動させるように構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の血液試料測定方法及び装置によれば、血液試料を吸引管で吸引する際の定量精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の血液試料測定方法及び装置の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る血液試料測定装置を含む試料分析装置Sの全体斜視図であり、図2は、この試料分析装置Sの、ケーシング1を除去した状態の斜視図であり、図3は、同じくケーシングを除去した状態の正面説明図である。
【0020】
前記試料分析装置Sは、ディスプレイ、入力装置、CPU、メモリ等を有する処理装置PC(典型的には、必要なコンピュータプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータ)と通信可能に接続され(図14参照)、試料分析装置Sと処理装置PCとによって試料分析システムが構成されている。処理装置PCは、試料分析装置Sの操作、分析に関する各種設定、分析結果の表示等を行うための試料分析装置用ソフトウェアがインストールされており、試料分析装置Sとの間での通信により、試料分析装置Sに対して指令を与えたり、試料分析装置Sから測定データを受信したりすることができる。
試料分析装置Sは、密封容器(試料の初期収容容器)である採血管3内に収容されている血液(試料)の測定を行う装置(血液分析装置)であり、装置本体2と、この装置本体2を収納するケーシング1とで主に構成されている。
【0021】
ケーシング1は合成樹脂や防錆処理が施された鋼板等で作製されており、ボルト等の固着手段を用いて装置本体2に固定されている。ケーシング1の一面(図1において左側の側面)の右下部分には開口部5が形成されており、この開口部5を介して採血管3を装置本体2内に挿入できるようになっている。すなわち、装置本体2の下部一端側には、その端部付近に前記採血管3を載置するための載置台6が設けられたスライダー7が、前記開口部5から出没自在に配設されている。また、前記スライダー7の先端には前記開口部5を閉じるカバー8が回動自在に設けられており、このカバー8は、図示しないバネによって所定角度だけ外側に傾斜するように付勢されている(図1参照)。装置が非稼動の状態(この状態は、前記ケーシング1の一面に設けられたボタン15内のランプを非点灯にすることで外部に表示することができる)で、このボタン15を押すと、前記スライダー7が装置本体2外方に進出する。その際、装置が非稼動の状態では前記開口部5はカバー8により閉止されているが、スライダー7が装置本体2外方に進出することで、当該カバー8の突出部8aと前記開口部5の周辺に形成された凹所9との係合が解除されて、カバー8が開放される。また、前記突出部8aと凹所9との係合が解除されることで、前記カバー8はバネの付勢力によって所定角度だけ外側に傾斜する。
【0022】
載置台6は、採血管3の栓体3aが上部に位置するように当該採血管3を保持する容器保持具として機能し、その上面には採血管3の下部を挿入することができる凹部(図示せず)が形成されている。この凹部に採血管3の下部を挿入し、前記ボタン15を押すと、前記スライダー7が装置本体2内に後退し、前記採血管3を所定の位置にセットする。ついで、バネの付勢力に抗して前記カバー8を起立させて、開口部5をカバー8で閉止する。その際、前記突出部8aと凹所9とが係合するので、カバー8が開放するのが防止される。そして、開口部5がカバー8により確実に閉止されたことを、マイクロスイッチ等の検出手段で検出することで、以後の試料吸引工程等が可能となるように設定されている。
なお、ケーシング1の側面の一部(図1において右側の側面)は、装置本体2内の点検やメンテナンス等を容易に行えるように、ボルト10で装置本体2に固定されている。また、図1において、16は主として装置本体2内で発生した熱をファン(図示せず)で外部に放出するための排気口である。
【0023】
装置本体2は、前記採血管3を装置内の所定の位置にセットするための試料セット部4と、採血管3内の血液を定量、希釈等して分析用の混合試料を調整するための試料調製部と、希釈等された血液の測定(検出)を行う検出部D1、D2、D3と、前記試料調整部及び検出部を電気的に駆動制御する制御部とを備えている。本発明の血液試料測定装置は、前記試料調整部、検出部及び制御部のうち、密封容器から試料を吸引し、測定用試料を調整し、そして当該試料を測定するための要素ないしは機構からなっている。
【0024】
試料セット部4は、内部に試料(血液)が密封状態で収容されている採血管3を装置本体2内の所定の位置にセットするための部位であり、前述した載置台6、スライダー7及びこのスライダー7を駆動させるステッピングモータ等の駆動源(図示せず)とで構成されている。
【0025】
前記試料調製部は、採血管3内から所定量の血液を吸引して第1混合チャンバMC1又は第2混合チャンバMC2(測定試料調整容器)内で試薬と混合することにより各種分析用の混合試料を調整する部位であり、採血管3内を密封する栓体3aを穿刺して、当該採血管3内の試料を吸引する吸引管13と、この吸引管13を水平に移動させる水平駆動部20と、前記吸引管13を垂直に移動させる垂直駆動部60と、前記採血管3内を大気に開放するとともに当該採血管3内の試料を吸引、吐出するための流体機構と、前記水平駆動部、垂直駆動部及び流体機構の動作を制御するための制御部とを備えている。本実施の形態に係る試料調製部は、また、前記水平駆動部20により水平に移動される垂直摺動部40を備えており、この垂直摺動部40は、前記吸引管13を保持するとともに、そのガイド機構により垂直移動可能にされている。
【0026】
前記吸引管13は、内部に長手方向に延びる流路を有するとともに、試料又は空気を吸引する吸引口が先端付近に形成されたものであれば、本発明において特に限定されることなく用いることができる。
また、図5及び図6の流体回路図に示すように、装置本体2には、試薬を収容するための試薬容器が設けられている。具体的には、試薬容器としては、希釈液(洗浄液)EPKを収容するための希釈液容器EPK−V、ヘモグロビン溶血剤SLSを収容するためのヘモグロビン溶血剤容器SLS−V、白血球分類用溶血剤FFDを収容するための白血球分類用溶血剤容器(第1試薬容器)FFD−V、及び、白血球分類用染色液FFSを収容するための白血球分類用染色液容器(第2試薬容器)FFS−Vが備わっている。
【0027】
図4は図1に示される試料分析装置の水平駆動部の正面説明図であり、水平駆動部20は、図示されているように、前記垂直摺動部40(詳細は後述する)及び後述する洗浄スピッツCSを保持する保持部材である移動パネル21と、この移動パネル21を水平移動させる駆動機構(第2移動機構)22と、前記移動パネル21の水平移動をガイドするガイド機構23とを備えている。前記移動パネル21は、金属又は合成樹脂で作製された縦長の板体からなっており、その上部及び下部には、垂直摺動部40を固定するためのビス孔24が形成されている。駆動機構22は、支持パネル25の表面(図4において手前側の面)上に回動自在に設けられた駆動プーリ26及び従動プーリ27と、前記支持パネル25の裏面側に配設され、前記駆動プーリ26を回転駆動するステッピングモータ28と、前記駆動プーリ26及び従動プーリ27間に張設されたタイミングベルト29と、このタイミングベルト29の内周面と前記移動パネル21の裏面の両面に固定された連結部材30とで構成されている。
【0028】
支持パネル25の上端縁には、前記移動パネル21の上端をガイドする上部ガイド31が設けられており、一方、当該支持パネル25の表面であって前記タイミングベルト29の下方には、移動パネル21の下部をガイドする下部ガイド32が設けられている。そして、前記ガイド機構23は、この上部ガイド31と下部ガイド32とで構成されている。上部ガイド31は、支持パネル25の上端縁から表面側に突出した水平部31aと、この水平部31aの先端から下方に垂下された垂直部31bとからなっており、移動パネル21の上端付近に形成された裏面側挟持片33と、同じく上端付近において表面側に突出して形成された断面略C字状の表面側挟持片34とで前記垂直部31bを挟持するようになっている。一方、下部ガイド32は、タイミングベルト29の下方において当該タイミングベルト29の移動方向と平行に配設されたガイドシャフト35と、このガイドシャフト35が摺動可能な通路を内部に有する摺動部材36とを備えており、この摺動部材36は、前記移動パネル21の裏面に固定されている。
【0029】
かかる構成において、ステッピングモータ28を駆動させると、タイミングベルト29に固定されている連結部材30が図3において左又は右方向に移動し、これにより当該連結部材30に固定されている移動パネル21を左又は右方向に移動させることができる。この場合に、移動パネル21は、上端及び下部付近を前記上部ガイド31及び下部ガイド32でそれぞれガイドされているので、移動に際し前後左右又は上下方向にがたつくことなくスムーズに移動させることができる。
【0030】
つぎに垂直摺動部40について詳述する。図5は図1に示される試料分析装置Sの垂直摺動部の正面説明図、図6は同じく垂直摺動部と水平駆動部の正面説明図、及び図7は同じく垂直摺動部と水平駆動部の左側面説明図である。垂直摺動部40は、図5〜7に示されるように、支持体41と、この支持体41に垂直に支持されたガイドシャフト42と、前記吸引管13を保持するとともに前記ガイドシャフト42上を摺動する吸引管保持部43とを備えている。
【0031】
前記支持体41は、前記移動パネル21又は支持パネル25と平行な縦長の奥面部41aと、この奥面部41aと垂直に設けられており、同じく縦長の側面部41bと、前記奥面部41aの上下端において当該奥面部41aと垂直に設けられた上面部41c及び下面部41dとで構成されている。そして、前記側面部41bには、吸引管保持部43から水平方向に突出するガイド棒44を案内する縦長のガイドスリット45が形成されている。また、前記上面部41cと下面部41dとの間にガイドシャフト42が垂直に支持されている。なお、46は、垂直摺動部40を前記水平駆動部20の移動パネル21に固定するビスを貫通させるために前記奥面部41aに形成された切欠き部である。
【0032】
吸引管保持部43は略立方体からなる摺動部43aと、この摺動部43aの一面(図5において左側の面)に形成された係合部43bとを備えている。係合部43bは、図7に示されるように、断面が十字状であり、後述する垂直駆動部のアームの断面十字状の凹部と係合し、吸引管13を垂直に移動させる。摺動部43aの他の面(図5において紙面手前側の面)には、軸47が突設されており、この軸47にはガイドローラ48が回転自在に装着されている。このガイドローラ48は、後述する垂直駆動部60のガイドアームと係合し、当該ガイドアームに連動して吸引管保持部43が垂直方向に移動するようになっている。
【0033】
前記支持体41の下面部41dには、ブラケット49を介して、吸引管13の内外周を洗浄するための洗浄スピッツCSが固定されている。また、支持体41の側面部41bの下部には、給排液用ニップル50、51、52が固定されており、それぞれチューブ53、54、55を介して吸引管13の基端及び洗浄スピッツCSに接続されている。
56は、板状のスペーサであり、ビス57によって前記摺動部43aの下面に設けられた固定部58及び支持体41の側面部41bに突設された突起部59に固定されている。前記スペーサ56は、吸引管保持部43を支持体41の最上部に固定し、吸引管13の鋭利な先端が洗浄スピッツCSから出るのを防止している。
すなわち、垂直摺動部40を水平駆動部20に搭載するに際し、当該垂直摺動部40は、前記スペーサ56を装着した状態で前記水平駆動部20の移動パネル21に当接させられ、前記切欠き部46を介してビス孔24へビスで固定された後、ビス57を緩めることによりスペーサ56が除去される。これにより、作業者が吸引管の先端で傷つくことなく、安全に垂直摺動部40を水平駆動部20に搭載することができる。また、吸引管13に詰まり等の不具合が生じた場合、当該吸引管13を含む垂直摺動部40全体が交換されるが、その場合にも、スペーサ56を使用することで交換作業を安全に行うことができる。通常、スペーサ56は、工場出荷時や垂直摺動部40全体の交換時に取り付けられるが、それ以外の装置の稼動時等においては、取り外されている(図6参照)。
【0034】
つぎに吸引管13の垂直駆動部60について詳述する。図8は図1に示される試料分析装置Sの垂直駆動部の左側面説明図であり、図9は図8のC−C矢視断面図である。垂直駆動部60は、前述した垂直摺動部40とともに、本発明の血液試料測定装置における吸引管移動機構を構成し、図8に示されるように、水平方向に沿って配設された細長体からなるアーム61と、このアーム61を直交方向(垂直方向)に貫通し、支持パネル62に配設された軸受63に回転自在に支持されたネジ軸64と、このネジ軸64と螺合するネジ部を有しており、前記アーム61に固定されたナット部65と、前記ネジ軸64と平行になるように支持パネル62に配設されたスライドレール66と、前記アーム61の一端部(装置本体2内部側端部)に設けられ、前記スライドレール66と摺動自在に係合して当該アーム61を垂直方向に案内する摺動部材67と、前記支持パネル62に固定されたステッピングモータ68とを備えている。
【0035】
前記ネジ軸64の上端とステッピングモータ68の出力軸には、それぞれプーリ69、70が固定されており、これらプーリ69、70間にタイミングベルト71が張設されている。また、前記アーム61の他端(装置本体2表面側端部)には、前記垂直摺動部40のガイドローラ48と係合する(図8参照)断面コの字状のガイドアーム72が水平に(図8において紙面に垂直に)固定されている。
前記アーム61は、また、前記ガイドアーム72側の端部付近であって前記吸引管保持部43の断面十字状の係合部43bと対向する面に断面十字状の凹部73を有している。前記係合部43bは、図9に示されるように、矢印X方向から適度なクリアランスを保ちつつ前記断面十字状の凹部73に嵌入されるようになっている。この嵌入した状態において、吸引管13が採血管3の直上にくるように位置決めされており、吸引管13が採血管3の栓体3aを穿刺する際、アーム61の上下運動の力が直接吸引管保持部43に伝達されるようになっている。
【0036】
以上説明をした水平駆動部20のステッピングモータ28及び垂直駆動部60のステッピングモータ68の駆動を前記装置本体2の制御部により適宜制御することで、吸引管保持部43、すなわち吸引管13を水平又は垂直に駆動して、採血管3から試料を吸引したり、後述する混合チャンバに試料を供給したりすることができる。そして、試料吸引時には、吸引管13が採血管3の栓体3aを穿刺する動作が含まれるため、吸引管保持部43の係合部43bがアーム61の断面十字状の凹部73と嵌合し、大きな力が当該吸引管保持部43に伝達される。一方、吸引管13が混合チャンバ上に移動し、当該混合チャンバに試料を供給する際には、垂直駆動部60のステッピングモータ68の駆動力は、アーム61、ガイドアーム72及びガイドローラ48を介して吸引管保持部43に伝達される。
【0037】
本実施の形態にかかわる試料分析装置Sは、図2〜3に示されるように、赤血球、ヘモグロビン及び血小板に関する測定をするための混合試料を調整する第1混合チャンバMC1、白血球に関する測定をするための混合試料を調整する第2混合チャンバMC2、赤血球に関する測定を行う第1検出部D1、ヘモグロビンに関する測定を行う第2検出部D2、及び白血球に関する測定を行う第3検出部D3を備えている。
【0038】
前記装置本体2は、図14に示されるように、前記試料調製部及び測定部D1、D2、D3を制御する制御部100を備えている。また、装置本体2は、試料調製部等を構成する流体回路中の電磁弁SV1〜SV33、SV40、SV41や各種ポンプ・モータ28、68、SP1、SP2、P、V、DP1、DP2、DP3、DP4、DP5等を駆動するための駆動回路部110も備えており、制御部100は、駆動回路部110を介して前記電磁弁等を駆動する。
制御部100は、図示しない通信インターフェースを介して、処理装置PCと通信可能であり、各種信号やデータなどを処理装置PCとの間でやり取りすることができる。
【0039】
つぎに図10〜13に示される流体回路図及び図15に示されるフローチャートを参照しつつ、本発明の血液試料測定方法の実施の形態について説明する。なお、図10〜13において、SP1及びSP2は試料(血液)の吸引及び供給をするためのシリンジポンプであり、CSは吸引管の洗浄をするための洗浄スピッツであり、DP1〜DP5は希釈液、溶血剤、染色液等の液体を定量するためのダイヤフラムポンプである。また、WC1〜WC2は排液チャンバであり、EPK−CはEPK(希釈液)収容容器であり、SV1〜SV33は流路開閉用の電磁バルブである。これらのバルブSV1〜SV33は、通常は閉じられている、常閉タイプのバルブである。
【0040】
本実施の形態に係る血液試料測定方法は、栓体3aを吸引管13で穿刺して当該吸引管13の先端を密封容器3内に挿入し、この密封容器3内を大気と連通させる工程と、前記密封容器3から吸引管13を引き抜き、ついで吸引管13の基端側から希釈液を供給して吸引管内に希釈液を充填する工程と、前記栓体3aを吸引管13で再度穿刺して当該吸引管13を密封容器3内に挿入し、この密封容器3内の血液試料を吸引する工程と、吸引した血液試料を測定試料調製容器に吐出する工程と、測定試料調製容器で調製された測定試料を測定する工程とを含むものであるが、以下、順に説明をする。
【0041】
(1)装置の電源をON状態にし、希釈液を希釈液収容容器EPK−Cに移送する等所定の予備工程が完了すると、スタンバイの表示がなされる。この状態で採血管3を装置本体2内にセットし、モードの選択をし、ついでスタートボタンを押すと試料の吸引工程が開始される。
(2)まず、バルブSV14を開き、排液チャンバWC1内を陰圧状態にする。なお、連続測定時は前回の測定終了時においてバルブSV14は開いており、排液チャンバWC1内は陰圧状態になっている。ついで、バルブSV15を開き、吸引管13内の希釈液(EPK)を吸引し、当該吸引管13内を空の状態にする。つぎに、バルブSV15を閉じ、バルブSV23を開いて、第1混合チャンバMC1及びその排出ラインを空にする(ステップS1)。
(3)ついで、バルブSV14を閉じて、排液チャンバWC1を大気開放状態にし、その後バルブSV15を開いて、吸引管の吸引口から排液チャンバWC1を経て第1混合チャンバMC1に至る、第1流路を含むラインを大気開放状態にする(ステップS2)。
(4)前記ステップS1及びステップS2において、吸引管13は、採血管3の外部の位置にあるが、ステップS2終了後、吸引管13が採血管3の栓体3aを穿刺し、その先端の吸引口が試料上方に位置する大気開放位置まで当該吸引管13を降下させる。これにより、採血管3内が前記吸引管の吸引口から排液チャンバWC1を経て第1混合チャンバMC1に至るラインを通して大気開放される(ステップS3(第1挿入工程))。
(5)ついで、バルブSV15及びバルブSV23を閉じ、バルブSV14を開いて、第1排液チャンバWC1を陰圧状態にする。
(6)その後、吸引管13を前記第2位置から上昇させ、当該吸引管13の先端が採血管3の栓体3aから抜けると同時にバルブSV11及びバルブSV51を開き、吸引管13の上昇動作と並行して当該吸引管13の外周を洗浄する(ステップS4)。
(7)ついで、バルブSV21、バルブSV15及びバルブSV16を開き、0.2秒後にバルブSV15を閉じる。これにより、第1ポンプである希釈液用の1.0mLダイヤフラムポンプDP1に陽圧をかけ、第2流路を含む試料吸引ライン及び吸引管13内を希釈液で満たす(ステップS5(液体充填工程))。なお、吸引管13の吸引口から出る余分の希釈液は、洗浄スピッツCSより吸引される。
(8)バルブSV11及びバルブSV51を閉じ、吸引管13の洗浄を終了させる。
(9)吸引管13の上昇動作が完了した後、再度当該吸引管13を数ミリ程度降下させ、吸引管13先端の吸引口を洗浄スピッツCSから出し、ついでシリンジポンプSP1で3uL吸引し、吸引管13先端にエアギャップを形成する(ステップS6)。
(10)ついで吸引管13を採血管3内の試料吸引位置まで降下させ、吸引口を試料中に入れる。そして、この状態で第2ポンプであるシリンジポンプSP1により所定量の試料を吸引する(ステップS7(第2挿入工程))。このように、吸引管内に液体(希釈液)を充填した状態で血液試料を吸引することで、定量精度を向上させることができ、微量の血液試料であっても正確に所定量を吸引することができる。また、ステップS6において吸引管13先端にエアギャップを形成することで、続く工程で血液試料を吸引管13内に吸引したときに、この血液試料が希釈液と接触、混合して、その濃度が小さくなるのを防止することができる。これにより、定量精度が低下するのを防止することができる。
【0042】
以上のステップS1〜S7により、試料の吸引工程が終了し、引き続き吸引管13内に吸引された試料を用いて第1混合チャンバMC1又は第2混合チャンバMC2内にて分析用の混合試料が調整され、この分析用混合試料を用いて、第1検出部D1、第2検出部D2又は第3検出部D3にて赤血球数、ヘモグロビン、白血球数等の測定が行われる。
具体的には、ステップS7で試料を吸引した後、吸引管13を上昇させ、当該吸引管13の先端が採血管3の栓体3aから抜けると同時にバルブSV11及びバルブSV51を開き、吸引管13の上昇動作と並行して当該吸引管13の外周を洗浄する。これにより、吸引工程時に吸引管の外周に血液試料が付着したとしても、栓体3aから吸引管13を抜きながら、当該吸引管13の外側を希釈液で洗浄しているので、前記付着した血液試料が装置内の他の箇所に落下するなどして装置内が汚染されるのを防ぐことができる。
吸引管13の洗浄の終了後、水平駆動部20により、吸引管13および洗浄スピッツCSを保持した移動パネル21を水平方向に移動させ、第1混合チャンバMC1の上方で停止させる。吸引管13から所定量の試料を第1混合チャンバMC1に吐出する。
次に、水平駆動部20により、吸引管13および洗浄スピッツCSを保持した移動パネル21を水平方向に移動させ、第2混合チャンバMC2の上方で停止させる。吸引管13から所定量の試料を第2混合チャンバMC2に吐出する。このようにして、一度に吸引した血液試料を用いて2種類の測定を行うことで、効率的に血液試料の測定を行うことができる。
吐出終了後、吸引管13を上昇させて洗浄スピッツCSにより吸引管13の外周を洗浄し、吸引管13の先端が洗浄スピッツCS内に来た時に上昇を停止させる。チューブ53から希釈液を吸引管13に供給して吸引管13の内側を洗浄する。吸引管13の吸引口から吐出される希釈液はチューブ54を介して廃液される。吸引管を用いた一連の工程が終了した後に、すぐに当該吸引管の洗浄をすることにより、次の検体(血液試料)を用いた測定を連続して開始することができる。
なお、前記の実施の形態においては、ステップS4で吸引管の外周の洗浄を行ったが、必ずしも吸引管の外周の洗浄を行う必要はなく、省略しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態に係る血液試料測定装置を含む試料分析装置の全体斜視図である。
【図2】図1に示される試料分析装置の、ケーシングを除去した状態の斜視図である。
【図3】図1に示される試料分析装置の、ケーシングを除去した状態の正面説明図である。
【図4】図1に示される試料分析装置の水平駆動部の正面説明図である。
【図5】図1に示される試料分析装置の垂直摺動部の正面説明図である。
【図6】図1に示される試料分析装置の垂直摺動部と水平駆動部の正面説明図である。
【図7】図1に示される試料分析装置の垂直摺動部と水平駆動部の左側面説明図である。
【図8】図1に示される試料分析装置の垂直駆動部の左側面説明図である。
【図9】図8のC−C矢視断面図である。
【図10】図1に示される試料分析装置の流体回路図の前半部分である。
【図11】図1に示される試料分析装置の流体回路図の後半部分である。
【図12】排液チャンバ回りの流体回路図である。
【図13】ダイヤフラムポンプ回りの流体回路図である。
【図14】図1に示される試料分析装置の制御ブロック図である。
【図15】本発明の一実施の形態にかかわる液体試料吸引方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1ケーシング
2装置本体
3採血管
4試料セット部
13吸引管
20水平駆動部
21移動パネル
22駆動機構
23ガイド機構
28ステッピングモータ
40垂直摺動部
41支持体
42ガイドシャフト
43吸引管保持部
60垂直駆動部
61アーム
64ネジ軸
65ナット部
66スライドレール
67摺動部材
68ステッピングモータ
72ガイドアーム
S試料分析装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栓体により内部が密封された密封容器内の血液試料を吸引して測定する方法であって、
前記栓体を吸引管で穿刺して当該吸引管の先端を密封容器内に挿入し、この密封容器内を大気と連通させる工程と、
前記密封容器から吸引管を引き抜き、ついで吸引管の基端側から希釈液を供給して吸引管内に希釈液を充填する工程と、
前記栓体を吸引管で再度穿刺して当該吸引管を密封容器内に挿入し、この密封容器内の血液試料を吸引する工程と、
吸引した血液試料を測定試料調製容器に吐出する工程と、
測定試料調製容器で調製された測定試料を測定する工程と、
を有することを特徴とする血液試料測定方法。
【請求項2】
前記希釈液充填工程と前記吸引工程との間に、前記吸引管の基端側から吸引を行い、吸引管内の先端側にエアギャップを形成する工程を備えた請求項1に記載の血液試料測定方法。
【請求項3】
前記吸引工程と前記吐出工程との間に、栓体から吸引管を抜きながら、当該吸引管の外側を希釈液で洗浄する工程を備えた請求項1又は2に記載の血液試料測定方法。
【請求項4】
前記吐出工程の後に、吸引管の外側を希釈液で洗浄する工程と、当該吸引管の基端側から希釈液を供給し、吸引管の内側を希釈液で洗浄する工程と、を備えた請求項1〜3の何れか1項に記載の血液試料測定方法。
【請求項5】
前記吐出工程が、吸引した血液試料の一部を測定試料調製容器に吐出する工程であり、この吐出工程の後に、血液試料を第2測定試料調製容器に吐出する第2吐出工程と、当該第2測定試料調製容器で調製された第2測定試料を測定する第2測定工程と、を備えた請求項1〜3の何れか1項に記載の血液試料測定方法。
【請求項6】
前記第2吐出工程の後に、吸引管の外側を希釈液で洗浄する工程と、当該吸引管の基端側から希釈液を供給し、吸引管の内側を希釈液で洗浄する工程と、を備えた請求項5に記載の血液試料測定方法。
【請求項7】
前記測定工程において、赤血球数の測定、白血球数の測定、ヘモグロビンの測定および白血球の分類の少なくとも一つが行われる請求項1〜4の何れか1項に記載の血液試料測定方法。
【請求項8】
密封容器内を密封する栓体を穿刺して、当該密封容器内の血液試料を吸引する吸引管と、
前記密封容器の外部の所定位置、前記密封容器内を大気開放する大気開放位置、及び前記密封容器内の血液試料を吸引する吸引位置のいずれかの位置に前記吸引管の吸引口が位置するように当該吸引管を移動させる吸引管移動機構と、
大気開放された第1流路、希釈液を収容する希釈液収容部、前記吸引管を前記希釈液収容部に接続し得る第2流路、前記希釈液収容部に収容された希釈液を、前記第2流路を介して吸引管に供給可能な第1ポンプ、及び前記密封容器内の血液試料を、前記第2流路を介して吸引および吐出可能な第2ポンプを有しており、前記第1及び第2流路を吸引管に選択的に連通可能な流体機構と、
血液試料と試薬とを混合して測定用試料を調製するための測定試料調製容器と、
前記測定試料調製容器で調製された分析試料を測定する測定部と、
前記吸引管の吸引口を外部位置から大気開放位置に移動させ、前記第1流路を介して前記密封容器内を大気開放した後、前記吸引管の吸引口を前記大気開放位置から外部位置に移動させて第2流路を介して当該吸引管内に希釈液を供給し、ついで前記吸引管の吸引口を外部位置から吸引位置に移動させ、前記第2流路を介して密封容器内の血液試料を吸引するように、前記吸引管移動機構及び流体機構を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする血液試料測定装置。
【請求項9】
前記密封容器を、栓体が上部に位置するように保持する容器保持具と、吸引管を上下方向に移動自在に受け入れる貫通孔、貫通孔内に希釈液を供給する供給路、および貫通孔内に供給された希釈液を吸引排出するための排出路を有する洗浄装置とを備え、この洗浄装置が密封容器の上方で吸引管の洗浄が可能であり、前記流体機構が、洗浄装置の供給路に希釈液を供給可能であり、且つ洗浄装置の排出路からの吸引が可能である請求項8に記載の血液試料測定装置。
【請求項10】
前記吸引管移動機構が、吸引管を保持した状態で垂直方向に移動可能な垂直摺動部を含んでおり、前記装置が、前記洗浄装置及び前記垂直摺動部を保持する保持部材と、この保持部材を移動させる第2移動機構とを有する請求項9に記載の血液試料測定装置。
【請求項11】
前記第2移動機構は、吸引管が血液試料を吸引した後、吸引管の位置が、密閉容器の上方から測定試料調製容器の上方になるように前記保持部材を水平移動させる請求項10に記載の血液試料測定装置。
【請求項1】
栓体により内部が密封された密封容器内の血液試料を吸引して測定する方法であって、
前記栓体を吸引管で穿刺して当該吸引管の先端を密封容器内に挿入し、この密封容器内を大気と連通させる工程と、
前記密封容器から吸引管を引き抜き、ついで吸引管の基端側から希釈液を供給して吸引管内に希釈液を充填する工程と、
前記栓体を吸引管で再度穿刺して当該吸引管を密封容器内に挿入し、この密封容器内の血液試料を吸引する工程と、
吸引した血液試料を測定試料調製容器に吐出する工程と、
測定試料調製容器で調製された測定試料を測定する工程と、
を有することを特徴とする血液試料測定方法。
【請求項2】
前記希釈液充填工程と前記吸引工程との間に、前記吸引管の基端側から吸引を行い、吸引管内の先端側にエアギャップを形成する工程を備えた請求項1に記載の血液試料測定方法。
【請求項3】
前記吸引工程と前記吐出工程との間に、栓体から吸引管を抜きながら、当該吸引管の外側を希釈液で洗浄する工程を備えた請求項1又は2に記載の血液試料測定方法。
【請求項4】
前記吐出工程の後に、吸引管の外側を希釈液で洗浄する工程と、当該吸引管の基端側から希釈液を供給し、吸引管の内側を希釈液で洗浄する工程と、を備えた請求項1〜3の何れか1項に記載の血液試料測定方法。
【請求項5】
前記吐出工程が、吸引した血液試料の一部を測定試料調製容器に吐出する工程であり、この吐出工程の後に、血液試料を第2測定試料調製容器に吐出する第2吐出工程と、当該第2測定試料調製容器で調製された第2測定試料を測定する第2測定工程と、を備えた請求項1〜3の何れか1項に記載の血液試料測定方法。
【請求項6】
前記第2吐出工程の後に、吸引管の外側を希釈液で洗浄する工程と、当該吸引管の基端側から希釈液を供給し、吸引管の内側を希釈液で洗浄する工程と、を備えた請求項5に記載の血液試料測定方法。
【請求項7】
前記測定工程において、赤血球数の測定、白血球数の測定、ヘモグロビンの測定および白血球の分類の少なくとも一つが行われる請求項1〜4の何れか1項に記載の血液試料測定方法。
【請求項8】
密封容器内を密封する栓体を穿刺して、当該密封容器内の血液試料を吸引する吸引管と、
前記密封容器の外部の所定位置、前記密封容器内を大気開放する大気開放位置、及び前記密封容器内の血液試料を吸引する吸引位置のいずれかの位置に前記吸引管の吸引口が位置するように当該吸引管を移動させる吸引管移動機構と、
大気開放された第1流路、希釈液を収容する希釈液収容部、前記吸引管を前記希釈液収容部に接続し得る第2流路、前記希釈液収容部に収容された希釈液を、前記第2流路を介して吸引管に供給可能な第1ポンプ、及び前記密封容器内の血液試料を、前記第2流路を介して吸引および吐出可能な第2ポンプを有しており、前記第1及び第2流路を吸引管に選択的に連通可能な流体機構と、
血液試料と試薬とを混合して測定用試料を調製するための測定試料調製容器と、
前記測定試料調製容器で調製された分析試料を測定する測定部と、
前記吸引管の吸引口を外部位置から大気開放位置に移動させ、前記第1流路を介して前記密封容器内を大気開放した後、前記吸引管の吸引口を前記大気開放位置から外部位置に移動させて第2流路を介して当該吸引管内に希釈液を供給し、ついで前記吸引管の吸引口を外部位置から吸引位置に移動させ、前記第2流路を介して密封容器内の血液試料を吸引するように、前記吸引管移動機構及び流体機構を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする血液試料測定装置。
【請求項9】
前記密封容器を、栓体が上部に位置するように保持する容器保持具と、吸引管を上下方向に移動自在に受け入れる貫通孔、貫通孔内に希釈液を供給する供給路、および貫通孔内に供給された希釈液を吸引排出するための排出路を有する洗浄装置とを備え、この洗浄装置が密封容器の上方で吸引管の洗浄が可能であり、前記流体機構が、洗浄装置の供給路に希釈液を供給可能であり、且つ洗浄装置の排出路からの吸引が可能である請求項8に記載の血液試料測定装置。
【請求項10】
前記吸引管移動機構が、吸引管を保持した状態で垂直方向に移動可能な垂直摺動部を含んでおり、前記装置が、前記洗浄装置及び前記垂直摺動部を保持する保持部材と、この保持部材を移動させる第2移動機構とを有する請求項9に記載の血液試料測定装置。
【請求項11】
前記第2移動機構は、吸引管が血液試料を吸引した後、吸引管の位置が、密閉容器の上方から測定試料調製容器の上方になるように前記保持部材を水平移動させる請求項10に記載の血液試料測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−292732(P2006−292732A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68576(P2006−68576)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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