説明

衛生マスクの口元層基材

【課題】 本発明は、花粉、ダストなどの捕集性、通気性に優れ、衛生マスクを長時間使用した際の不快感を低減する衛生マスク用の口元層基材を提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくとも外層、内層、口元層の3層構造からなる衛生マスクの口元層基材において、該口元層基材が格子状、水玉状、あるいは多角形状のメッシュ処理を施されていることを特徴とする衛生マスクの口元層基材。特に、メッシュの開口面積は0.5〜8.0mm2であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも外層−内層−口元層の3層が積層された衛生マスクに使用される口元層の基材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に衛生マスクは、外層−内層−口元層の少なくとも3層から構成されている。外層に保護材としてのスパンボンド不織布、その内層にエレクトレット処理を施したメルトブロー(MB)不織布、口元層(最内層)には、スパンボンドまたはスパンレースまたは乾式製法不織布が用いられている。内層は、花粉、ダストを吸着することが重要であり、外層及び口元層は衛生マスクの形状の保持や取り扱い時に破損しない強度を付与させるとともに、口元層には使用中に口元層が口元に貼り着かないようにすることも重要である。また、衛生マスクとしては長時間着用時の快適性、具体的には、通気性の低下による息苦しさや、吐気がマスクと顔面の隙間から上昇して、メガネを曇らすことなどが発生しないことが求められている。
これらの要求に対して、特許文献1には、外層/内層/外層の3層の不織布をエンボス加工で一体化し、マスク用基材に「腰」を付与するとともに、特に内層の不織布基材として、エレクトレット処理されたスパンボンド/メルトブロー(SM)複合不織布やスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)複合不織布などを用い、さらに、内層のメルトブロー不織布の目付を低減することにより、低圧損化と高捕集性のマスク用基材及びそれを用いたマスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−106468
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された衛生マスクでは、通気性が不十分であるとともに、衛生マスクの長時間使用にあたっては、口元の不快感が発生する問題があった。
そこで、本発明は、花粉、ダストなどの捕集性、通気性に優れ、衛生マスクを長時間使用した際の不快感を低減する衛生マスク用の口元層基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、従来の問題点を解決するために鋭意検討した結果、少なくとも外層、内層、口元層の3層構造からなる衛生マスクの口元層基材において、該口元層基材がメッシュ処理を施されていることを特徴とすることによって、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、花粉、ダストなどの捕集性、通気性に優れ、衛生マスクを長時間使用した際の不快感を低減する衛生マスク用の口元層基材を提供することができる。さらに、本発明の口元基材を用いた衛生マスクは、その形状の保持や取り扱い時に破損しない強度を有している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、少なくとも外層、内層、口元層の3層構造からなる衛生マスクの口元層基材において、該口元層基材がメッシュ処理を施されていることを特徴とする衛生マスクの口元層基材に関する。
【0008】
本発明において、口元層のメッシュの形状としては、格子状、水玉状、多角形状などを具体的な形状として挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0009】
たとえば、メッシュの形状を格子状とした場合、メッシュの開口面積は0.5〜8.0mm2であることが好ましく、1.0〜5.0mm2であることが更に好ましい。また、メッシュの開口部の間隔は1.0〜4.0mmであることが好ましい。
【0010】
開口面積が0.5mm2より小さいと、十分な通気性を得ることができない。一方、開口面積が8.0mm2より大きくなると、十分な通気性は得られるものの、この口元層基材を用いた衛生マスクは十分な強度を有していないため、取り扱い時に破損するなどの問題がある。
【0011】
なお、本発明において、格子状とは、「−」、「+」、「×」などの直線あるいは直線を組み合わせて形成される形状を意味する。
【0012】
また、メッシュの形状を水玉状、多角形状とした場合、メッシュの開口面積は1〜15mm2であることが好ましく、3〜12mm2であることが更に好ましい。また、メッシュの開口部の間隔は1〜5mmであることが好ましい。
【0013】
開口面積がより1mm2より小さいと、十分な通気性を得ることができない。一方、開口面積が15mm2より大きくなると、十分な通気性は得られるものの、この口元層基材を用いた衛生マスクは十分な強度を有していないため、取り扱い時に破損するなどの問題がある。
【0014】
なお、本発明において、水玉状とは、円、楕円、あるいはこれらを組み合わせて形成される形状を意味し、多角形状とは、三角形、四角形、五角形、あるいはこれらを組み合わせて形成された形状を意味する。
【0015】
本発明において、メッシュの開口部の配列はランダムでも、たて、よこ、斜めなどに規則正しく配列されていてもかまわない。ランダムに配列されている場合は、この口元層基材を用いた衛生マスクの通気性を均一にするという意味において、見た目の密度が均一であることが好ましい。
【0016】
本発明において口元層基材の開孔率は、1〜60%であることが好ましく、より好ましくは10〜30%である。開孔率が1%に満たないと十分な通気性が得ることができない。一方、開孔率が60%を越えると、この口元層基材を用いた衛生マスクは十分な強度を有していないばかりでなく、花粉やダストなどの捕集性を損なうため好ましくない。

口元層基材の開孔率は、基材の単位面積当たりの開孔部の面積の総和であらわされる。
【0017】
本発明において、口元層基材としては、パルプ、麻、綿、レーヨン、各種合成繊維を使用した湿式不織布、乾式不織布、スパンレース、スパンボンド、メルトボンド、ニードルパンチ、ステッチボンド等の不織布や、ポリエステル、アクリル、ナイロン、アセテート、レーヨン、ウール、綿、綿混紡等の織物、編物や、上記した原材料を用いた和紙、洋紙そして、などを用いることができるが、口元の不快感を低減させる点から、パルプ、麻、合成繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)を原料とした和紙あるいは洋紙を使用することが好ましい。
【0018】
本発明において、口元層基材にメッシュ処理を施す方法は湿式抄紙機において円網シリンダーにメッシュパターンワイヤーを使用する方法及び短網で湿紙を形成後に湿紙を挟むようにメッシュワイヤーを併走させ、メッシュワイヤーを通して高圧シャワー処理を行う方法がある。また、二層で抄造し、二層のうちの一層をメッシュワイヤー、一層を通常のワイヤーとし、穴の大きさを制御する方法もある。
【0019】
本発明において、メッシュ処理を施した口元基材に、アクリル樹脂、ポリエチレングリコールを塗布・含浸させることが可能であり、アクリル酸エステル及びポリエチレングリコールを塗布することは口元不快感を減少させる点から好ましい。
【0020】
本発明において、メッシュ構造を有する口元層基材の物性としては、坪量10〜20g/m、厚さ45〜65μm、密度0.15〜0.45g/cmであることが好ましい。また、衛生マスクの形状維持、取り扱い時の破損に対して、口元層基材の引張強度が3.0N/15mm以上、伸びが2.0%以上、湿潤引張強さ(自社法)が1.00N/15mm以上であれば、実用上問題ないレベルである。
【0021】
本発明において、外層に使用される外層基材は、上記した口元基材と同様なものを使用することができ、またメッシュ処理を施すことは、通気性の点から好ましい。
【0022】
本発明において、内層は、花粉、ダストを吸着する能力があればよく、特に限定されるものではないが、スパンボンド/メルトブロー(SM)複合不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)複合不織布、スパンボンド/スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SSMS)複合不織布、スパンボンド/メルトブロー/メルトブロー/スパンボンド(SMMS)複合不織布などのポリプロピレン製スパンボンド不織布とメルトブロー不織布が組み合わされた複合不織布を例示することができる。また、複合不織布は、それらの一種でも、それらを組み合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0023】
(引張強さおよび伸びの測定方法)
試料を巾15mm×長さ100mm以上に裁断した紙片を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下にてJAPAN TAPPI No.71に従って測定した。
【0024】
(湿潤引張強さの測定方法)
試料を巾15mm×長さ100mm以上に裁断した紙片の中央部を水に浸漬させた後に過剰の水を拭取った後、JAPAN TAPPI No.71に従い測定を行い、湿潤引張り強さとした。
【0025】
(通気度の測定方法)
フィルトローナ社製通気度測定器(PPM100型)を用いて、差圧100mmHOの時の、試料1cmの面積を通過する空気の容積を求め、通気度とした。
【0026】
[実施例1]
カナダ標準ろ水度700〜730CSFまで叩解したNBKPを50重量%と、カナダ標準ろ水度700〜730CSFまで叩解したアバカパルプを30重量%と、繊度1.2dtex、繊維長5mmの未延伸ポリエステル繊維(PET繊維)を20重量%とを混合し抄紙用紙料とした。
【0027】
(口元層基材の製造方法)
ワイヤーに1mm×2mmの直線形状の目止めを上下左右0.5mm間隔で行ったワイヤーを作製した。このワイヤーをTAPPI標準型手すき機にセットし、ワイヤー上に坪量15g/m相当量の紙料を形成させて得られた湿紙を乾燥し格子状メッシュを持つシートを作製した。次いで、アクリル樹脂およびポリエチレングリコールを含浸加工し本発明の口元層基材を得た。
【0028】
(マスクの作製および口元不快感の評価方法)
外層基材として坪量20g/mのスパンボンド不織布と、内層基材として坪量20g/mのMB不織布と、口元層基材として上記で作製したシートとを重ね合わせマスクを作製した。
【0029】
上記マスクを用い、1時間使用したときのマスクの湿り気や息苦しさの程度を次の基準で口元不快感として官能評価した。使用後に不快感を感じないものを○、不快感を感じるものを×として評価した。
【0030】
上記の格子状メッシュを持つ口元層基材は十分な強度と通気性をもち、これを使用したマスクは口元不快感のないものであった。
【0031】
[実施例2]
ワイヤーに直径4mmの丸形状の目止めを上下左右4mm間隔で水玉状に行ったワイヤーを使用し、水玉状メッシュを持つシートを作製した以外は実施例1と同様にして本発明の口元層基材を得た。
【0032】
[比較例1]
TAPPI標準型手すき機に通常の平織りワイヤーを使用した以外は実施例1と同様にしてシートを作製し、口元層基材をえた。
この口元層基材を用いて作製したマスクの使用感は、使用中に口元にべたつきが発生し、不快なものであった。
【0033】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外層、内層、口元層の3層構造からなる衛生マスクの口元層基材において、該口元層基材がメッシュ処理を施されていることを特徴とする衛生マスクの口元層基材。

【公開番号】特開2013−70825(P2013−70825A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211752(P2011−211752)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000176637)日本製紙パピリア株式会社 (26)
【Fターム(参考)】