説明

衝撃検知・記録装置

【課題】無電源で加わった衝撃を検知し、記録することができ、しかも小型化を図り得る衝撃検知・記録装置を提供する。
【解決手段】衝撃検知・記録装置1は、衝撃による機械的エネルギーを電気エネルギーに変換し出力する圧電素子4を有する衝撃センサ2に並列に強誘電体メモリ3が接続されており、強誘電体メモリ3が、強誘電体層を介して対向する第1,第2の電極を有し、強誘電体メモリ3が衝撃が加わった際に圧電素子が変位する部分以外の衝撃センサ部分に一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から加わった衝撃を検知し、記録する衝撃検知・記録装置に関し、より詳細には、衝撃センサと、該衝撃センサで検知された衝撃を記録する強誘電体メモリとを有する衝撃検知・記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器や車両などにおいて、衝撃を検知し、記録するための様々なセンサが提案されている。下記の特許文献1には、振動エネルギーを電気エネルギーに変換する電荷発生用圧電体と、発生した電荷により分極反転を繰り返す強誘電体メモリとを備える圧電振動エネルギーセンサが開示されている。衝撃等の振動が加わると、圧電体が電荷を発生する。この電荷により強誘電体メモリが分極反転する。多数の振動が繰り返し与えられた場合、分極反転が繰り返され、疲労により残留分極が低下する。そのとき、残留分極の低下度合いにより、加えられた振動の回数を求めることができる。また、上記圧電振動エネルギーセンサは、圧電体と強誘電体メモリとを備えるものであるため、無電源で加えられた振動の回数を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−61347
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、特許文献1には、無電源で、加えられた振動の回数を測定し得る圧電振動エネルギーセンサが開示されている。しかしながら、特許文献1では、電荷発生用圧電体により出力された電気エネルギーを強誘電体メモリに加えて記録を行う旨の原理が記載されているだけである。すなわち、特許文献1には、電荷発生用圧電体の具体的な構造、並びに強誘電体メモリ自体の具体的な構造については示されていない。また、電荷発生用圧電体と強誘電体メモリとを組み合わせた具体的な構造についても記載されていない。
【0005】
衝撃を検知し、記録する装置においても他の電子部品と同様に小型化が強く求められているが、上記の通り、特許文献1には、このような要求を満たす具体的な構造は示されていない。
【0006】
本発明の目的は、無電源で外部からの衝撃を検知し、記録することを可能とし、しかも小型化を図り得る衝撃検知・記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る衝撃検知・記録装置は、衝撃センサと、強誘電体メモリとを備える。衝撃センサは、衝撃による機械的エネルギーを電気エネルギーに変換し、出力する圧電素子を有する。強誘電体メモリは、衝撃センサに一体的に構成されており、強誘電体層と、強誘電体層を介して対向するように設けられた第1,第2の電極を有する。強誘電体メモリは、上記圧電素子に並列に接続されている。本発明では、上記強誘電体メモリは、圧電素子が圧電効果により変位する部分以外の衝撃センサ部分に一体に構成されている。
【0008】
本発明に係る衝撃検知・記録装置のある特定の局面では、前記衝撃センサが、前記圧電素子と、該圧電素子を直接または間接に支持している支持部材とを有する。そして、前記支持部材の一面に前記強誘電体メモリの第1の電極及び第2の電極のうち少なくとも一方の電極が形成されて前記強誘電体メモリが前記衝撃センサに一体化されている。この場合には、衝撃センサにおいて、支持部材は衝撃が加わった際の圧電効果による変位の影響を受け難い。従って、圧電素子の変形による強誘電体メモリへの影響を効果的に抑制することができる。しかも、第1及び第2の電極のうち少なくとも一方の電極が支持部材の一面に形成されているため、衝撃検知・記録装置のより一層の小型化を図ることができる。
【0009】
本発明に係る衝撃検知・記録装置の他の特定の局面では、前記支持部材が、前記圧電素子を支持している第1の支持部材と、前記第1の支持部材に接合された第2の支持部材とを有し、前記強誘電体メモリの第1及び第2の電極のうち少なくとも一方の電極が前記第2の支持部材に形成されており、該第2の支持部材において強誘電体メモリが一体化されている。このように、強誘電体メモリは、第2の支持部材に一体化されていてもよく、従って、強誘電体メモリは、圧電素子を間接的に支持している第2の支持部材に一体化されていてもよい。
【0010】
本発明に係る衝撃検知・記録装置のさらに他の特定の局面では、前記衝撃センサの前記圧電素子の検知面に対し、前記強誘電体メモリの前記強誘電体層の主面が非平行とされている。圧電素子の検知面は、予想される外力を最も大きく受ける方向に位置することが望ましい。従って、検知面に対し、強誘電体層の主面が非平行である場合、強誘電体層に大きな外力が加わり難い。そのため、強誘電体メモリにおける記録状態の劣化を効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明に係る衝撃検知・記録装置のさらに別の特定の局面では、前記支持部材が、前記圧電素子を挟持している一対の第1の支持部材と、前記一対の第1の支持部材に接合された第2の支持部材とを有し、前記一対の第1の支持部材を結ぶ方向と直交する方向に対し、前記検知面が交差する方向となるように前記圧電素子が前記一対の第1の支持部材に挟持されている。この場合には、検知面が一対の第1の支持部材を結ぶ方向と直交する方向に対して傾斜されているので、一対の第1の支持部材を結ぶ方向や、該結ぶ方向と直交する方向などの様々な方向から加わる衝撃を効果的に検知することができる。
【0012】
本発明のさらに他の特定の局面では、前記一対の第1の支持部材の前記圧電素子を挟持している面が一対の支持部材を結ぶ方向と直交する方向に対して傾斜しており、前記一対の支持部材のそれぞれにおいて、前記圧電素子を挟持している面とは反対側の面である外側面が、前記一対の支持部材を結ぶ方向と直交する方向と平行とされており、前記外側面に前記強誘電体メモリが一体に構成されている。この場合には、圧電素子の検知面が一対の第1の支持部材を結ぶ方向と直交する方向に対して傾斜しているため、様々な方向から加わる外力を効果的に検知することができる。しかも、一対の支持部材のそれぞれにおいて、圧電素子を挟持している面と反対側の面である外側面が一対の支持部材を結ぶ方向と直交する方向と平行とされているので、外側面に強誘電体メモリを容易に一体化することが可能とされている。
【0013】
本発明に係る衝撃検知・記録装置のさらに別の特定の局面では、前記衝撃センサと前記強誘電体メモリとの間に充填されたアンダーフィル層を有する。この場合には、衝撃検知・記録装置の機械的強度を高めることができる。
【0014】
本発明に係る衝撃検知・記録装置に用いられる圧電素子は特に限定されないが、好ましくはバイモルフ型の圧電素子が用いられる。それによって、衝撃が加わった際に、より大きな出力を取り出すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る衝撃検知・記録装置によれば、圧電素子を有する衝撃センサに、強誘電体メモリが、圧電素子が圧電効果により変位する部分以外の衝撃センサ部分に一体に構成されているため、1つの部品で衝撃を検知し、記録し得る衝撃検知・記録装置を提供することができる。しかも、強誘電体メモリが衝撃センサに一体に構成されているため、衝撃検知・記録装置の小型化を図ることができる。また、強誘電体メモリは、圧電効果により変位する部分以外の衝撃センサ部分に一体に構成されているため、衝撃を高感度で検知し、確実に記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る衝撃検知・記録装置の外観を示す斜視図及び衝撃センサ部分の要部を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る衝撃検知・記録装置において、強誘電体メモリが支持部材に一体に構成されている部分の要部を示す部分切欠平面断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の衝撃検知・記録装置の等価回路を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る衝撃検知・記録装置の外観を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る衝撃検知・記録装置の正面断面図である。
【図6】第2の実施形態の衝撃検知・記録装置の変形例を示す正面断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る衝撃検知・記録装置の外観を示す斜視図である。
【図8】第3の実施形態の衝撃検知・記録装置の等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0018】
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る衝撃検知・記録装置の外観を示す斜視図である。
【0019】
図1(a)に示すように、衝撃検知・記録装置1は、衝撃センサ2と、強誘電体メモリ3とを有する。衝撃センサ2は、圧電バイモルフ素子からなる圧電素子4を有する。圧電素子4は、図1(b)に示すように、一対の第1の支持部材5,6により挟持されている。圧電素子4は第1,第2の圧電体層4a,4bを積層した構造を有する圧電バイモルフ素子からなり、略板状の形状を有する。衝撃により外部から機械的エネルギーが加わった際に、圧電体層4a,4bがその主面と直交する方向において互いに逆方向に変位する。この変位に基づき、圧電効果によって圧電体層4a,4bに電荷が発生する。この電荷が、図示しない一対の電極により取り出される。一方の電極は、圧電素子4の長さ方向一端4c側に引き出されている。他方の電極が、他端4d側に引き出されている。
【0020】
上記圧電素子4は、主面である検知面4e,4fが、斜め方向に傾斜している。言い換えれば、第1の支持部材5,6を結ぶ方向と直交し、かつ圧電素子4の長さ方向と直交する方向Zに対して、検知面4e,4fが傾斜している。上記圧電素子4を構成する材料は特に限定されない。圧電体層4a,4bは、例えばPZT系セラミックスなどの周知のセラミックスを用いて形成することができる。また上記電極についても、Ag、Auなどの適宜の金属により形成することができる。
【0021】
一対の第1の支持部材5,6は、アルミナなどの絶縁性セラミックス、あるいは合成樹脂などの絶縁性材料により形成することができる。
【0022】
第1の支持部材5は、検知面4eと空間を隔てて配置されており、かつ圧電素子4の長さ方向と平行に延びる本体部5aを有する。本体部5aの両端から、それぞれ、圧電素子4側に向かって挟持部5b,5cが延ばされている。挟持部5b,5cの先端面は、圧電素子4に接合されている。従って、この先端面は、上記方向Zに対して傾斜されている。他方、本体部5aの外側面5a1は、上記方向Z、すなわち上下方向に対して平行とされている。
【0023】
よって、本実施形態では、衝撃検知・記録装置1の上下方向に延びる側面の一部が、外側面5a1で構成されている。そして、直方体状の衝撃センサ2内において、前述したように、上下方向に対して傾斜する検知面4e,4fを有するように、バイモルフ素子からなる圧電素子4を支持することが可能とされている。
【0024】
なお、第1の支持部材6も、第1の支持部材5と同様に構成されている。
【0025】
第1の支持部材5,6の上面には、板状の第2の支持部材7が接合されている。同様に、第1の支持部材5,6の下面にも、板状の第2の支持部材8が接合されている。それによって、圧電素子4が衝撃センサ2内に内蔵されている。
【0026】
第2の支持部材7,8は、アルミナなどの適宜の絶縁性セラミックスまたは合成樹脂により形成することができる。
【0027】
図1(a)に示すように、衝撃センサ2では、外部電極9,10が形成されている。外部電極9は、圧電素子4の一端4cを覆うように形成されており、前述した圧電素子4の一方の電極に電気的に接続されている。外部電極10は、圧電素子4の他端4dを覆うように形成されており、それによって、圧電素子4の前述した他方の電極に電気的に接続されている。
【0028】
外部電極9,10についても、前述した電極と同様の適宜の金属により形成することができる。
【0029】
強誘電体メモリ3は、上記衝撃センサ2に一体に構成されている。
【0030】
より具体的には、図2に示すように、強誘電体メモリ3は、強誘電体層11を有する。強誘電体層11は、SrBiTa、Pb(Zr,Ti)O、(Bi,La)Ti12、BiFeOなどの適宜の強誘電体からなる。本実施形態では、強誘電体としてSrBiTaが用いられる。
【0031】
本実施形態では、強誘電体層11は、シリコン基材18の一方主面上に形成されている。シリコン基材18の他方主面上には、電極12が略全面に形成されている。強誘電体層11のシリコン基材18とは反対側の面上には、第1の電極13が形成されている。第1の電極13は、強誘電体層11及びシリコン基材18を介して電極12と対向している。
【0032】
シリコン基材18には、強誘電体層11が形成されていない部分において、シリコン基材18を一方主面から他方主面へと貫通するビア導体19が設けられている。シリコン基材18の一方主面上には、ビア導体19が設けられている部分をおおうように、第2の電極14が形成されている。第2の電極14は、シリコン基材18を介して電極12と対向しており、ビア導体19を介して電極12に電気的に接続されている。
【0033】
第1の電極13と第2の電極14との間に電圧を印加することにより、強誘電体層11の電子分極を反転させることができ、強誘電体層11を一方方向に電子分極された「0」の状態または一方方向とは逆の方向に電子分極された「1」の状態とすることができる。それによって、記録を行うことができる。
【0034】
電極12、第1及び第2の電極13,14は、Ag、Auなどの適宜の金属もしくは合金により形成することができる。
【0035】
なお、本発明において、シリコン基材18及びビア導体19は必須の構成ではなく、必ずしも設けずともよい。もっとも、シリコン基材18及びビア導体19が設けられている本実施形態の構成では、圧電体からの電圧を印加するだけで強誘電体層11の電子分極を確実に反転させることができるため、好ましい。
【0036】
他方、外部電極9,10は、第2の支持部材7の外側面、第1の支持部材5,6の外側面及び第2の支持部材8の外側面にも至るように形成されている。図2に示すように、第1,第2の電極13,14は、外部電極9,10と、それぞれ、第2の支持部材7の外側面において対向されている。第1,第2の電極13,14が導電性接着剤15,16を介して、外部電極9,10に接合されている。
【0037】
第1,第2の電極13,14は、図1(a)に示す導電性接着剤15A,16Aによっても、外部電極9,10に接合されている。すなわち、本実施形態では、強誘電体メモリ3は、第2の支持部材7,8の外側面において、外部電極9,10に第1,第2の電極13,14が接合されている。すなわち、圧電素子4の変位する部分以外において強誘電体メモリが一体化されている。よって、圧電効果によって変位するに圧電素子4に対して、電気的接続部分が遠ざけられている。従って、衝撃センサ2側の変形による影響を強誘電体層11が受け難い。もっとも、第1,第2の電極13,14は、第1の支持部材5の外側面において外部電極9,10に接合されていてもよい。
【0038】
上記構成により、図3に示すように強誘電体メモリ3が、衝撃センサ2に並列に接続されている回路が形成されている。
【0039】
図2に示すように、本実施形態では、アンダーフィル層17が、強誘電体層11と、第2の支持部材7との間に充填されている。アンダーフィル層17は、第1の支持部材5及び第2の支持部材8と強誘電体層11との間の空隙にも至るように充填されている。アンダーフィル層17は、エポキシ樹脂などの適宜の接着剤硬化物からなる。それによって、強誘電体メモリ3と衝撃センサ2との接合強度が高められている。よって、衝撃検知・記録装置1全体の機械的強度が効果的に高められる。もっとも、アンダーフィル層17は設けられずともよい。
【0040】
また、本実施形態では、導電性接着剤15,16,15A,16Aを用いたが、金属バンプを用いてもよい。金属バンプとしては、Auバンプ、半田バンプ、Cuバンプなどの適宜の金属バンプを用いることができる。好ましくは、Auバンプが望ましい。それによって、衝撃センサ2側の変形による影響が強誘電体層11に至り難い。
【0041】
もっとも、上記のように、Auバンプなどの金属バンプよりも振動吸収性能に優れているため、導電性接着剤15,16,15A,16Aを用いることが望ましい。
【0042】
上記導電性接着剤15,16,15A,16Aとしては、エポキシ樹脂などの接着剤に金属粉末などの導電性粉末を分散させてなる適宜の導電性接着剤を用いることができる。
【0043】
本実施形態の衝撃検知・記録装置1では、上記のように強誘電体メモリ3が衝撃センサ2に一体化されている。従って、単一の部品として、衝撃を検知し、記録する装置を構成することができる。よって、衝撃検知・記録装置の小型化を図ることができる。
【0044】
加えて、本実施形態では、圧電素子4の検知面4e,4fが、衝撃検知・記録装置1の上下方向に対して斜め方向に傾斜している。従って、様々な方向から加わる衝撃を高感度で検出することができる。また、検知面4e,4fの向きは、予想される衝撃が最も強く加わる方向とされていることが望ましい。それによって、衝撃センサ2において、検出感度を効果的に高めることができる。この場合、強誘電体層11の主面は、検知面4e,4fと非平行とされている。従って、予想される強い衝撃による強誘電体層11の割れや欠けを効果的に抑制することができる。また、衝撃センサ2側から加わる応力による強誘電体層11の変形等も効果的に抑制することができる。よって、衝撃を高感度で検知し、記録することができる。
【0045】
図4及び図5は、本発明の第2の実施形態に係る衝撃検知・記録装置の外観を示す斜視図及び正面断面図である。衝撃検知・記録装置21では、直方体状の衝撃センサ22の上面に強誘電体メモリ23が一体化されている。
【0046】
衝撃センサ22は、バイモルフ型圧電素子からなる圧電素子24を有する。圧電素子24は、その主面すなわち検知面24aが図4において水平方向と平行とされている。バイモルフ型圧電素子からなる圧電素子24は、検知面24aが水平方向とされており、矩形板状の形状を有することを除いては、第1の実施形態の圧電素子4と同様に構成されている。
【0047】
すなわち、圧電素子24は、圧電体層24b,24cと、電極24e〜24gを有する(図5)。
【0048】
圧電素子24の上面に、第1の支持部材25が接合されている。第1の支持部材25は、矩形板状の本体部25aと本体部25aの長さ方向両端から下方に延びる一対の脚部25b,25bとを有する。脚部25b,25bは、衝撃検知・記録装置21の幅方向両端に至るように形成されている。本体部25aは、隙間Aを隔てて圧電素子24の検知面24aと対向している。脚部25b,25bの下面が圧電素子24に接合されている。
【0049】
圧電素子24の下面には、第1の支持部材26が固定されている。第1の支持部材26も、本体部25aと、本体部25aの長さ方向両端に設けられた脚部26b,26bとを有する。
【0050】
本体部26aも、空隙Aを隔てて圧電素子24に対向されている。従って、空隙A,Aにより、圧電素子24の検知面である主面の変位が妨げられ難い。
【0051】
上記圧電素子24が、第1の支持部材25,26で挟持されて、衝撃センサ22が構成されている。
【0052】
本実施形態では、水平方向に延びる検知面を有する矩形板状の圧電素子24を用意すればよい。従って、第1の実施形態の圧電素子4よりも、安価に圧電素子24を得ることができる。加えて、圧電素子24に、第1,第2の支持部材25,26を容易に接合し、衝撃センサ22を形成することができる。それによっても、コストを低減することができる。
【0053】
本実施形態の衝撃検知・記録装置21では、長さ方向一端側に第1の外部電極27が形成されており、他端側に第2の外部電極28が形成されている。第1の外部電極27は圧電素子24の電極24e,24gに接続されており、第2の外部電極28は、電極24fに接続される。
【0054】
衝撃が加わった際に圧電効果により圧電素子24に生じた電荷に基づく出力を第1,第2の外部電極27,28から取り出すことができる。
【0055】
他方、衝撃センサ22の上面、より具体的には、第1の支持部材25の上面25cの中央には、第2の外部電極28に接続されている第1の電極29が設けられている。第1の電極29は、第2の外部電極28と同じ材料で同一構成で形成することができる。
【0056】
第1の電極29は、矩形形状を有する。この第1の電極29上に、強誘電体メモリ23が搭載されている。
【0057】
強誘電体メモリ23は、シリコン基材33と、このシリコン基材33の一方主面上に形成された強誘電体層30と、強誘電体層30上に形成された第2の電極31と、シリコン基材33の他方主面上に形成された裏面電極34を備えており、第1の電極29上に導電性接着剤35を介して裏面電極34が接続されている。なお、本実施形態においては、強誘電体メモリ23の表面電極が第2の電極31を兼ねている。また、強誘電体層30は、第1の実施形態で用いた強誘電体層11と同様の材料で構成することができる。
【0058】
本実施形態の衝撃検知・記録装置21においても、外部から衝撃が加わった際に圧電効果により圧電素子24に電荷が発生する。この電荷による出力が、第1,第2の外部電極27,28を介して強誘電体メモリ23の第1の電極29及び第2の電極31に与えられる。従って、強誘電体メモリ23において、衝撃に基づく出力を記録し、保持することができる。
【0059】
本実施形態においても、強誘電体メモリ23が、衝撃センサ22に一体化されているため、小型化を図ることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、ボンディングワイヤ32を用いて、第2の電極31を第1の外部電極27と電気的に接続している。しかしながら、ボンディングワイヤ32に代えて、第1の電極29と短絡しない電極パターンを第1の支持部材25の上面25cに形成して第1の外部電極27との電気的接続を図ってもよい。
【0061】
また、ボンディングワイヤ32を保護するために、ボンディングワイヤ32による接続部分を樹脂等により被覆してもよい。
【0062】
なお、第2の実施形態では、強誘電体メモリ23は、第1の支持部材25の上面25c側に構成されていたが、図6に示す変形例のように、第1の支持部材25の本体部25aの下面側に構成してもよい。この場合には、空隙A内に強誘電体メモリ23が構成される。従って、衝撃検知・記録装置のより一層の小型化、特に低背化を果すことができる。
【0063】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る衝撃検知・記録装置の外観を示す斜視図であり、図8はその等価回路を示す図である。
【0064】
第3の実施形態の衝撃検知・記録装置41は、第1の実施形態の衝撃検知・記録装置1と同様に衝撃センサ42が構成されている。第1の実施形態と異なるところは、第2の支持部材7の上面に第2の実施形態と同様にして強誘電体メモリ23が構成されていることにある。また、本実施形態では、衝撃センサ42の側面に第3の外部電極43が形成されている。従って、第1,第2の外部電極9,10と第3の外部電極43とを有する3端子型の衝撃検知・記録装置が構成されている。第3の外部電極43は、ボンディングワイヤ44により第2の電極31に電気的に接続されている。また、第3の外部電極43は、衝撃検知・記録装置41の側面中央において上下方向に延びるように形成されている。
【0065】
図8に示すように、本実施形態によれば、強誘電体メモリ23の記録状態を第1の外部電極9と第3の外部電極43とにより読み取ることができる。
【0066】
上述した第1〜第3の実施形態及び変形例では、圧電素子としてバイモルフ型圧電素子を用いたが、ユニモルフ型圧電素子などの他の圧電素子を用いてもよい。強誘電体メモリについても、強誘電体層を介して隣り合うように第1,第2の電極が重なり合うように対向されている構造を用いたが、この構造についても特に限定されない。例えば、強誘電体層の片面において、ギャップを隔てて対向するように、第1,第2の電極を設けて強誘電体メモリを構成してもよい。
【0067】
なお、第2及び第3の実施形態では、強誘電体メモリの第1及び第2の電極の一方が支持部材の一面に形成されていたが、第1及び第2の電極の双方が支持部材の一面に形成さていてもよい。例えば、第1の実施形態の第1及び第2の電極13,14を、支持部材7,8の外表面に形成してもよい。
【0068】
また、第1の実施形態において、強誘電体メモリ3は、第2の支持部材7,8及び第1の支持部材5にまたがるように配置されていたが、第2の支持部材7または第2の支持部材8の外表面にのみ、あるいは第1の支持部材5の外表面にのみ対向するように強誘電体メモリ3が配置されていてもよい。
【0069】
本発明により得られる衝撃検知・記録装置は、衝撃検知・記録装置が搭載されている機器に加わった衝撃を記録し得る用途に好適に用いることができる。もっとも、このような用途に限定されず、例えば、電子機器を搬送する際のコンテナや梱包材に衝撃検知・記録装置を装着してもよい。それによって、間接的に電子機器に加わる衝撃を検出・記録することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…衝撃検知・記録装置
2…衝撃センサ
3…強誘電体メモリ
4…圧電素子
4a,4b…圧電体層
4c…一端
4d…他端
4e,4f…検知面
5,6…第1の支持部材
5a…本体部
5b,5c…挟持部
7,8…第2の支持部材
9…第1の外部電極
10…第2の外部電極
11…強誘電体層
12…電極
13…第1の電極
14…第2の電極
15,16,15A,16A…導電性接着剤
17…アンダーフィル層
18…シリコン基材
19…ビア導体
21…衝撃検知・記録装置
22…衝撃センサ
23…強誘電体メモリ
24…圧電素子
24a…検知面
24b,24c…圧電体層
24e〜24f…電極
25,26…第1の支持部材
25a…本体部
25b…脚部
25c…上面
26a…本体部
26b…脚部
27…第1の外部電極
28…第2の外部電極
29…第1の電極
30…強誘電体層
31…第2の電極
32…ボンディングワイヤ
33…シリコン基材
34…裏面電極
35…導電性接着剤
41…衝撃検知・記録装置
42…衝撃センサ
43…第3の外部電極
44…ボンディングワイヤ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃による機械的エネルギーを電気エネルギーに変換し、出力する圧電素子を有する衝撃センサと、
前記衝撃センサに一体に構成されており、強誘電体層と、強誘電体層を介して対向するように設けられた第1,第2の電極を有し、前記圧電素子に並列に接続されている強誘電体メモリとを備え、
前記強誘電体メモリが、前記圧電素子が圧電効果により変位する部分以外の衝撃センサ部分に一体に構成されている、衝撃検知・記録装置。
【請求項2】
前記衝撃センサが、前記圧電素子と、該圧電素子を直接または間接に支持している支持部材とを有し、前記支持部材の一面に前記強誘電体メモリの第1の電極及び第2の電極のうち少なくとも一方の電極が形成されて前記強誘電体メモリが前記衝撃センサに一体化されている、請求項1に記載の衝撃検知・記録装置。
【請求項3】
前記支持部材が、前記圧電素子を支持している第1の支持部材と、前記第1の支持部材に接合された第2の支持部材とを有し、前記強誘電体メモリの第1及び第2の電極のうち少なくとも一方の電極が前記第2の支持部材に形成されており、該第2の支持部材において強誘電体メモリが一体化されている、請求項2に記載の衝撃検知・記録装置。
【請求項4】
前記衝撃センサの前記圧電素子の検知面に対し、前記強誘電体メモリの前記強誘電体層の主面が非平行とされている、請求項1または2に記載の衝撃検知・記録装置。
【請求項5】
前記支持部材が、前記圧電素子を挟持している一対の第1の支持部材と、前記一対の第1の支持部材に接合された第2の支持部材とを有し、
前記一対の第1の支持部材を結ぶ方向と直交する方向に対し、前記検知面が交差する方向となるように前記圧電素子が前記一対の第1の支持部材に挟持されている、請求項4に記載の衝撃検知・記録装置。
【請求項6】
前記一対の第1の支持部材の前記圧電素子を挟持している面が一対の支持部材を結ぶ方向と直交する方向に対して傾斜しており、前記一対の支持部材のそれぞれにおいて、前記圧電素子を挟持している面とは反対側の面である外側面が、前記一対の支持部材を結ぶ方向と直交する方向と平行とされており、前記外側面に前記強誘電体メモリが一体に構成されている、請求項5に記載の衝撃検知・記録装置。
【請求項7】
前記衝撃センサと前記強誘電体メモリとの間に充填されたアンダーフィル層を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の衝撃検知・記録装置。
【請求項8】
前記圧電素子が、バイモルフ型の圧電素子である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の衝撃検知・記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−96931(P2013−96931A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242006(P2011−242006)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】