説明

表面処理組成物

【課題】アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体等の上に塗布、焼成等することによって防錆性能を高めることのできる表面処理組成物を提供すること。
【解決手段】少なくとも、下記成分(A)及び成分(B)
(A)チタン化合物オリゴマー(a1)に対し、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(a2)を反応させた構造又は混合させた組成を有する複合化合物
(B)溶剤
を含有することを特徴とする表面処理組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体に対する防錆効果等を発現する表面処理組成物に関し、更に詳細には、チタン化合物オリゴマーに対し、特定のシリコン化合物を反応させた構造又は混合させた組成を有するものを含有する表面処理組成物に関するものであり、アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体に対する防錆性能を向上させる表面処理組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防錆の分野において、アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体等に対する防錆性能の付与に関しては、様々な分野で検討がされており、高い防錆性能を有するものが求められている。特に、アルミニウムに関しては、アルミサッシ等の建築材料や、冷房機器中のアルミフィン等に使用されており、水の付着等によって生ずる錆の発生を抑制するために、高い防錆性能を有するものが求められている。
【0003】
アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体等の防錆性能を向上するために、クロム酸、重クロム酸又はその塩類を成分とした6価クロムを含有する処理液を使用するクロメート処理を施すことが一般的に用いられている。このクロメート処理は、耐食性に優れており、且つ比較的簡単に処理できることから経済的な処理方法である。
【0004】
しかし、クロメート処理は、公害規制物質である6価クロムを使用するものであり、近年の地球規模の環境保護意識の高まりに伴って、リサイクル社会の構築や廃棄物処理の問題の解決が必要であるといった社会的背景より、6価クロムの利用、排出の削減に取り組む動きが活発化している。
【0005】
従来のアルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体等の防錆性を高めるためには、やはり6価クロム系の防錆顔料を使用する方法があるが、先に述べたように、6価クロムは環境面で問題がある。また、その他の方法としては、有機樹脂とシランカップリング剤又は、コロイダルシリカと、リチウムシリケートを配合した処理液に浸漬し、若しくは処理液を塗布することによる皮膜を形成する方法や有機樹脂にタンニン酸等の多価フェノールカルボン酸とシランカップリング剤を形成する方法、有機樹脂とシランカップリング剤を配合した処理液により皮膜を形成する方法等がある。
【0006】
しかしながら、これらの方法、すなわちウレタン系やアクリル系等の有機樹脂を使用した場合、防錆性が十分でなかったり、タンニン酸を用いた場合では、タンニン酸に由来する着色を生じたりするといった問題点があった。
【0007】
【特許文献1】特開2000−045078号公報
【特許文献2】特開平10−209971号公報
【特許文献3】特開平8−325760号公報
【特許文献4】特開平10−209972号公報
【特許文献5】特開平11−106945号公報
【特許文献6】特開2000−319787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、クロムフリーで、アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体等の上に、塗布、焼成等することによって、著しく防錆性能等を高めることのできる表面処理組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、チタン化合物オリゴマーに対し、特定のシリコン化合物を溶媒中で混合又は反応させた複合化合物を含有する表面処理組成物を、その表面上に塗布、焼成等することにより、アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体等の防錆性能等が著しく向上することを見出して本発明を完成させた。
【0010】
すなわち本発明は、少なくとも、下記成分(A)及び成分(B)
(A)チタン化合物オリゴマー(a1)に対し、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(a2)を反応させた構造又は混合させた組成を有する複合化合物
(B)溶剤
を含有することを特徴とする表面処理組成物を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体の処理、特に好ましくは防錆処理に用いる上記の表面処理組成物を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体等の表面に対して、上記の表面処理組成物を使用して製膜してなることを特徴とする防錆皮膜を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、上記の表面処理組成物を使用して防錆されていることを特徴とする、アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表面処理組成物によれば、アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体等に対して、緻密性の高い、チタン化合物とケイ素化合物の膜を形成することができ、そのため、外気からの水蒸気等の進入を防ぎ、防錆性能を高めることができる。また、本発明の表面処理組成物は、濡れ性、製膜性、密着性、表面改質性に優れるため、より具体的には、アルミニウムやマグネシウム又はそれらの合金といった濡れにくい被着体に対して、良好な濡れ性を発揮し、密着性が良い皮膜を簡単に製膜できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0016】
本発明の表面処理組成物は、少なくとも、下記の成分(A)及び成分(B)を含有する。
(A)チタン化合物オリゴマー(a1)に対し、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(a2)を反応させた構造又は混合させた組成を有する複合化合物
(B)溶剤
【0017】
成分(A)の原料であるチタン化合物オリゴマー(a1)は特に限定はないが、下記式(1)で表されるチタンアルコキシド、又は、下記式(1)で表されるチタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物、が縮合した構造を有するものが好ましい。
【化1】

[式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示す。]
【0018】
縮合前の出発物質である「式(1)で表されるチタンアルコキシド」としては、式(1)中のR〜Rが、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基であるが、それぞれ独立に炭素数1〜8個のアルキル基であるものがより好ましく、それぞれ独立に炭素数1〜5個のアルキル基であるものが特に好ましい。
【0019】
「式(1)で表されるチタンアルコキシド」としては、以下の具体例に限定はされないが、例えば、テトラメトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラノルマルプロポキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート、テトラノルマルブトキシチタネート、テトライソブトキシチタネート、ジイソプロポキシジノルマルブトキシチタネート、ジターシャリーブトキシジイソプロポキシチタネート、テトラターシャリーブトキシチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラステアリルアルコキシチタネート等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0020】
縮合前の出発物質としては、上記した「式(1)で表されるチタンアルコキシド」のほかに、「式(1)で表されるチタンアルコキシド」に、キレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物も好ましいものとして挙げられる。キレート化剤としては特に限定はないが、β−ジケトン、β−ケトエステル、多価アルコール、アルカノールアミン及びオキシカルボン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが、チタン化合物の加水分解等に対する安定性を向上する点で好ましい。
【0021】
β−ジケトン化合物としては、2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、ジベンゾイルメタン、テノイルトリフルオロアセトン、1,3−シクロヘキサンジオン、1−フェニル1,3−ブタンジオン等が挙げられ、β−ケトエステルとしては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、メチルピバロイルアセテート、メチルイソブチロイルアセテート、カプロイル酢酸メチル、ラウロイル酢酸メチル等が挙げられ、多価アルコールとしては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ペンタンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、グリセリン、ヘキシレングリコール等が挙げられ、アルカノールアミンとしては、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ノルマルブチルエタノールアミン、N−ノルマルブチルジエタノールアミン、N−ターシャリーブチルエタノールアミンN−ターシャリーブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等が挙げられ、オキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上併用できる。
【0022】
上記「式(1)で表されるチタンアルコキシド」又は「該チタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物」が縮合することによってチタン化合物オリゴマー(a1)が得られる。ここで縮合させる方法としては特に限定はないが、チタンアルコキシド又はチタンキレート化合物を、アルコール溶液中で水を反応させることにより行うことが好ましい。
【0023】
縮合してオリゴマー化するために用いる水の量については、チタンアルコキシド及び/又はチタンキレート化合物1モルに対し、すなわちチタン原子1モルに対して、水のモル数が0.2〜2モルであることが好ましく、0.3〜1.7モルであることがより好ましく、0.5〜1.5モルであることが特に好ましい。
【0024】
加水分解による縮合時には、アルコール等の溶剤を用い、場合により還流等の熱処理を経由し、チタン化合物オリゴマー(a1)を得ることが好ましい。このとき用いられるアルコールとしては特に限定はないが、上記式(1)中のアルキル基R〜Rのアルコールが、チタン化合物オリゴマーの反応性を変化させない点で好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0025】
かかるアルコールの使用量は特に限定はないが、縮合してオリゴマー化するために用いる水の量を0.5〜20質量%の濃度になるようにアルコールを用いて希釈することが好ましく、更に好ましくは0.7〜15質量%、特に好ましくは1.0〜10質量%の濃度になるように希釈する。
【0026】
加水分解により縮合してオリゴマー化して得られたチタン化合物オリゴマー(a1)は、平均で、2〜20量体が好ましく、4〜15量体がより好ましい。
【0027】
成分(A)の原料であるチタン化合物オリゴマー(a1)は、上記したチタン化合物オリゴマーに、更にキレート化剤を配位させてなる構造を有するものであることも好ましい。すなわち、上記式(1)で表されるチタンアルコキシド、又は、それにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物が縮合した構造を有するものに、更にキレート化剤を配位させてなる構造を有するものも好ましい。すなわち、縮合前及び/又は縮合後に、キレート化剤を反応させた構造のものは、チタン化合物オリゴマーの加水分解等に対する安定性を高める点で好ましい。
【0028】
縮合後に用いるキレート化剤としては特に限定はないが、前記したキレート化剤が好適に使用できる。特に好ましくは、β−ジケトン、β−ケトエステル又はアルカノールアミンである。
【0029】
本発明の表面処理組成物に含有される成分(A)は、上記したチタン化合物オリゴマー(a1)に対し、「分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(a2)」を反応させた構造又は混合させた組成を有するものである。
【0030】
「分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(a2)」としては、特に限定はないが、シランカップリング剤や、ケイ素原子に4個のアルコキシ基が結合したシリコン化合物等が挙げられる。このうち、メチル基、アミノ基、メルカプト基又はエポキシ基を含有するものが、製膜性や防錆性を高める点で好ましい。また、ケイ素原子にアルキル基であり、特に、メチル基が結合した構造を有するものも製膜性や防錆性を高める点で好ましい。また、上記化合物の部分加水分解縮合物も好適に使用できる。
【0031】
「分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(a2)」の種類としては、以下に限定されるわけではないが、例えば、モノメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラノルマルプロポキシシラン、γ−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルアミノエチルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシシラン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0032】
成分(A)は、上記した「チタン化合物オリゴマー(a1)」に、「分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(a2)」を反応させることによって得られる構造を有することが好ましい。ここで、反応方法には特に限定はないが、(a1)、(a2)及び溶剤を混合した後、使用した溶剤の沸点にて還流し、反応を進行させることが好ましい。なお、配合の順序に規定は無い。
【0033】
「チタン化合物オリゴマー(a1)」と「分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(a2)」との使用割合は特に限定はないが、(a1)と(a2)の質量比が(a1)/(a2)=0.1/50〜50/0.1質量比が好ましく、(a1)/(a2)=0.5/25〜25/0.5より好ましく、1/20〜20/1の質量比が特に好ましい。(a1)/(a2)の比率において、(a1)が少なすぎると、製膜性、防錆性を低下させる原因となり、一方、(a1)が多すぎると、製膜性、防錆性を低下させ、加水分解性等の安定性が不足する場合がある。
【0034】
成分(A)の構造については、上記製造方法で得られる構造を有するものであれば、特定の製造方法で製造されたものには限定されない。成分(A)の構造としては、チタン化合物オリゴマー(a1)の末端であるアルコキシル基とシリコン化合物に存在するアルコキシル基が空気中の水分や未反応の水を介して反応し、Ti−O−Siのように結合した構造やシリコン化合物に存在するアミノ基、メルカプト基等の官能基がチタン原子に配位した構造が好ましい。
【0035】
成分(A)は、チタン化合物オリゴマー(a1)に対し、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(a2)を混合させた組成を有するものであってもよい。「混合させた組成」には、全量反応が進まず未反応のまま残ったものが混合している場合も含まれる。
【0036】
「成分(A)複合化合物」には、以下の5形態があり、何れでもよい。
(1)(a1)と(a2)の反応により得られる構造を有するもの
(2)(a1)と(a2)の反応により得られる構造を有するもの及び(a1)の混合物
(3)(a1)と(a2)の反応により得られる構造を有するもの及び(a2)の混合物
(4)(a1)及び(a2)の混合物
(5)(a1)と(a2)の反応により得られる構造を有するもの、(a1)及び(a2)の混合物
このうち、態様(5)の「(a1)と(a2)の反応により得られる構造を有するもの、(a1)及び(a2)の混合物」が好ましい。
【0037】
本発明の表面処理組成物は、成分(B)溶剤を必須成分として含有する。溶剤としては特に限定はないが、揮発性が高く、各種被着材に対して濡れ性の高い溶剤が好ましい。好ましい溶剤としては、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤等が挙げられる。具体的には、炭化水素系溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン等が挙げられ、エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸磯プロピル等が挙げられ、アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール等が挙げられる。溶剤の被着材に対するぬれ性、表面張力、チタン化合物オリゴマーの安定性等を考慮して、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0038】
本発明の表面処理組成物中の、成分(A)の含有割合は特に限定はないが、表面処理組成物100質量部中に成分(A)0.1〜50質量部が含有されていることが好ましく、0.5〜40質量部の含有がより好ましく、0.7〜35質量部の含有が特に好ましく、1.0〜30質量部の含有が更に好ましい。
【0039】
本発明において「表面処理組成物」は、少なくとも流通段階では、該表面処理組成物で表面を処理したものの上に、離型剤、シーリング剤、接着剤、コーティング剤等を更に設けることをせず、本発明の表面処理組成物で処理した層が最表面となるように用いられることが好ましい。その場合、本発明の「表面処理組成物」とは、上記のように定義される。具体的には、本発明の水系表面処理組成物は、防錆剤、防汚剤、撥水剤等として金属の最表面に適用されることが好ましい。
【0040】
本発明の表面処理組成物は、アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体に好適に使用できる。アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体であれば特に制限はなく使用できるが、具体的には例えば、純アルミニウム(JIS A1000系)等のアルミニウム鋼材;アルミニウム−銅系合金(JIS A2000系)、アルミニウム若しくはマグネシウム系合金(JIS A3000系)、アルミニウムーシリカ系合金(JIS A4000系)、アルミニウム若しくはマグネシウム系合金(JIS A5000系)、アルミニウム若しくはマグネシウムシリカ系合金(JIS A6000系)、マグネシウム系合金(JIS H4201)、マグネシウム−アルミニウム系合金(ATSM 100A系)、アルミニウム−亜鉛−マグネシウム系合金(JIS−A7000系)等の亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金;電気亜鉛メッキ鋼板(JIS G3313)、溶融亜鉛メッキ鋼板(JIS H8641)、亜鉛−アルミニウムメッキ鋼板(JIS G3321)、亜鉛−アルミニウム−マグネシウムメッキ鋼板、亜鉛−ニッケルメッキ鋼板、亜鉛−鉄メッキ鋼板、溶融アルミニウムめっき鋼板(JIS G3314)等の亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体;
等が挙げられる。
【0041】
アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体に用いる場合は、必要に応じて有機溶剤を用いて希釈し、塗布を行ってもよい。希釈に使用する有機溶剤については、特に限定はないが、各種被着材に対して濡れ性の高い溶剤が好ましい。好ましい溶剤としては、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤等が挙げられる。具体的には、ヘキサン、ヘプタン、トルエン等の炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸磯プロピル等のエステル系溶剤;メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。溶剤が被着材へのぬれ性、塗布液の安定性を考慮して、単独又は2種類以上混合して用いることができる。
【0042】
本発明の表面処理組成物をアルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体等の被着体に塗布する場合の塗布量は特に限定はないが、乾燥後の塗布量としては0.01〜5g/mが好ましく、0.05〜3g/mがより好ましく、0.1〜2g/mが特に好ましい。
【0043】
塗布した後に、焼成することも、防錆効果を高める点で好ましい。焼成条件は特に限定はないが、焼成温度50℃〜500℃が好ましく、100℃〜400℃が特に好ましく、焼成時間10秒〜2時間が好ましく、30秒〜2時間が特に好ましい。
【0044】
本発明の表面処理組成物は、アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体、の表面に対して用いることが好ましい。なお、上記した「鋼材」、「合金」及び「メッキ体」の中には、本発明の水系表面処理組成物が適用される表面が、自然酸化等により、その金属酸化物で被われているものも含まれる。「合金」において、合金を形成する亜鉛、アルミニウム、マグネシウム以外の金属は特に限定されない。また、「メッキ体」における被メッキ体も特に限定されない。
【0045】
本発明の表面処理組成物は、アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体等の防錆性能を高めるために用いられることが好ましい。すなわち、これらの表面の防錆用に、本発明の表面処理組成物を用いることが好ましい。本発明の表面処理組成物を使用して製膜してなる防錆皮膜は、これらの表面の防錆性能を高めることができる。
【0046】
本発明の表面処理組成物は、アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体の防錆用として好適に使用できる。本発明の表面処理組成物が、優れた防錆効果を示す作用・原理は明らかではなく、本発明は以下の作用・原理の範囲に限定されるものではないが、以下のことが考えられる。すなわち、チタンオリゴマー化合物を使用することにより、製膜される膜が緻密化されることが考えられ、また、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(a2)を併用することによって、基材である金属板との接着性を高めていると考えられる。これらの事象より、水蒸気などの錆を発生させる原因物質が金属板に直接接触する可能性が低くなり、防錆性能が高まるからと考えられる。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0048】
製 造 例 1
[チタン化合物オリゴマーA(テトラノルマルブトキシチタニウムオリゴマー)の合成]
テトラノルマルブトキシチタニウム34.0g(0.10モル)をノルマルブタール12.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)とノルマルブタノール24.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌した後、更に1時間還流し、テトラノルマルブトキシチタニウムオリゴマーを得た。これを「チタン化合物オリゴマー溶液A」とする。
【0049】
製 造 例 2
[チタン化合物オリゴマーB(テトラノルマルブトキシチタニウムオリゴマー)の合成]
テトラノルマルブトキシチタニウム34.0g(0.10モル)に対する水の量を水2.2g(0.12モル)とした以外は、製造例3と同様の方法で、テトラノルマルブトキシチタニウムオリゴマーを得た。これを「チタン化合物オリゴマー溶液B」とする。
【0050】
製 造 例 3
[チタン化合物オリゴマーC(テトライソプロポキシチタニウムオリゴマー)の合成]
テトライソプロピルチタニウム28.4g(0.10モル)をイソプロパノール60.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)とイソプロパノール100.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌し、テトライソプロポキシチタニウムオリゴマーを得た。これを「チタン化合物オリゴマー溶液C」とする。
【0051】
製 造 例 4
[チタン化合物オリゴマーD(テトライソプロポキシチタニウムオリゴマー)の合成]
テトライソプロピルチタニウム28.4g(0.10モル)に対する水の量を水2.2g(0.12モル)とした以外は、製造例3と同様の方法で、テトライソプロポキシチタニウムオリゴマーを得た。これを「チタン化合物オリゴマー溶液D」とする。
【0052】
製 造 例 4
[チタン化合物オリゴマーE(ジイソプロポキシビスアセチルアセトナートチタンオリゴマー)の合成]
ジイソプロポキシビスアセチルアセトナートチタン36.4g(0.1モル)をイソプロパノール50.0gに溶解させた後、水2.7g(0.15モル)とイソプロパノール100.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌し、更に1時間還流し、ジイソプロポキシビスアセチルアセトナートチタンオリゴマーを得た。これを「チタン化合物オリゴマー溶液E」とする。
【0053】
製 造 例 5
[チタン化合物オリゴマーF(チタンジイソプロポキシビストリエタノーリアミネートオリゴマーの合成]
チタンジイソプロポキシビストリエタノーリアミネート46.2g(0.1モル)をイソプロパノール50.0gに溶解させた後、水2.2g(0.12モル)とイソプロパノール50.0gの混合液を滴下した。滴下終了後、1時間攪拌し、更に1時間還流し、チタンジイソプロポキシビストリエタノーリアミネートオリゴマーを得た。これを「チタン化合物オリゴマー溶液F」とする。
【0054】
実 施 例1
製造例1で製造したチタン化合物オリゴマー溶液A(テトラノルマルブトキシチタニウムオリゴマー溶液)43質量%(0.09モル)、及びγーアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン13質量%(0.09モル)を混合後、トルエン44質量%を加えて表面処理組成物を得た。
【0055】
実 施 例2〜30、比 較 例1〜5及び比較例7
実施例1において、チタン化合物オリゴマー溶液(a1を含む)、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(a2)、及び、溶剤を、表1に記載の種類と量に代えた以外は、実施例1と同様にして、表面処理組成物を得た。また、比較として、表1に記載の表面処理組成物を用意した。なお、本発明における(B)溶剤には、表1中の「溶剤」欄記載のもの以外に、「チタン化合物オリゴマー溶液(a1を含む)」中の溶媒も含まれる。表1の中の数値は質量%を示す。
【0056】
比較例6
実施例1において、チタン化合物オリゴマー溶液(a1を含む)に代えて、「テトライソプロポキシチタン10質量%(0.04モル)をイソプロパノール40.2質量%に単に溶解させただけで縮合によってチタン化合物オリゴマー(a1)が生成していない溶液」合計50.2質量%、及びγーアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン5.8質量%(0.08モル)を混合後、ヘプタン44質量%を加えて表面処理組成物を得た。
【0057】
【表1】

【0058】
評 価 例 1
[防錆性能評価]
実施例1〜30、比較例1〜7で調製又は用意した表面処理組成物を、表2に記載の各種希釈溶剤にて5倍に希釈した後、厚さ0.6mmのアルミニウム板(JIS A1101)、厚さ0.6mmのアルミニウム−マグネシウムの合金板(JIS A5005)、厚さ0.6mmの電気亜鉛メッキ鋼板(JIS G3313)、厚さ0.6mmのマグネシウム合金板(JIS H4201)に、それぞれバーコーターNo.4で塗布した。その後、200℃にて60秒乾燥した。乾燥後、50g/Lの塩化ナトリウム水溶液に7日間浸漬した後、常温にて乾燥し、錆の発生の状態を以下の評価方法に従い目視観察を行った。結果を表2に示す。表2の中の数値は質量%を示す。
錆が発生しているもの:×
錆の発生が無いもの :◎
【0059】
【表2】

【0060】
実施例1〜30の表面処理組成物で各被着体の表面を処理した場合、評価した何れの被着体に対しても、防錆効果が認められた。一方、シランカップリング剤を用いて表面処理をした比較例1〜5では、良好な防錆効果を示さなかった。また、チタン化合物モノマーを用いたもの(比較例6)、シリコン化合物(a2)を用いないもの(比較例7)でも、良好な防錆効果を示さなかった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の表面処理組成物は、アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体等の被着体に対し、濡れ性、製膜性、防錆性等を著しく向上させることができるため、防錆等を必要とする産業分野に広く利用されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記成分(A)及び成分(B)
(A)チタン化合物オリゴマー(a1)に対し、分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(a2)を反応させた構造又は混合させた組成を有する複合化合物
(B)溶剤
を含有することを特徴とする表面処理組成物。
【請求項2】
該チタン化合物オリゴマー(a1)が、下記式(1)で表されるチタンアルコキシド、又は、下記式(1)で表されるチタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物、が縮合した構造を有するものである請求項1記載の表面処理組成物。
【化1】

[式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示す。]
【請求項3】
該チタン化合物オリゴマー(a1)が、下記式(1)で表されるチタンアルコキシド、又は、下記式(1)で表されるチタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物が縮合した構造を有するものに、更にキレート化剤を配位させてなる構造を有するものである請求項1記載の表面処理組成物。
【化2】

[式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に炭素数1〜18個のアルキル基を示す。]
【請求項4】
上記縮合が、チタンアルコキシド又はチタンキレート化合物を、アルコール溶液中で水を反応させることにより行われたものである請求項2又は請求項3記載の表面処理組成物。
【請求項5】
上記縮合が、チタンアルコキシド及び/又はチタンキレート化合物1モルに対し、アルコール溶液中で、水0.2〜2モルを反応させることにより行われたものである請求項2ないし請求項4の何れかの請求項記載の表面処理組成物。
【請求項6】
該キレート化剤が、β−ジケトン、β−ケトエステル、多価アルコール、アルカノールアミン及びオキシカルボン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項2ないし請求項5の何れかの請求項記載の表面処理組成物。
【請求項7】
式(1)中のR〜Rが、それぞれ独立に炭素数1〜8個のアルキル基である請求項2ないし請求項6の何れかの請求項記載の表面処理組成物。
【請求項8】
分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(a2)が、ケイ素原子にアルキル基が直接結合した構造を有するものである請求項1ないし請求項7の何れかの請求項記載の表面処理組成物。
【請求項9】
分子中に1個以上のアルコキシ基を有するシリコン化合物(a2)が、アミノ基、メルカプト基又はエポキシ基を含有するものである請求項1ないし請求項8の何れかの請求項記載の表面処理組成物。
【請求項10】
アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体の処理に用いる請求項1ないし請求項9の何れかの請求項記載の表面処理組成物。
【請求項11】
防錆用である請求項10記載の表面処理組成物。
【請求項12】
アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体の表面に対して、請求項1ないし請求項11の何れかの請求項記載の表面処理組成物を使用して製膜してなることを特徴とする防錆皮膜。
【請求項13】
請求項1ないし請求項11の何れかの請求項記載の表面処理組成物を使用して防錆されていることを特徴とする、アルミニウム鋼材、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を含有する合金、又は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムの少なくとも1つの金属成分を用いたメッキ体。

【公開番号】特開2009−185363(P2009−185363A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28720(P2008−28720)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000188939)マツモトファインケミカル株式会社 (26)
【Fターム(参考)】