説明

表面改質無機ナノ粒子を含むエマルジョン

本発明は、表面改質無機ナノ粒子を含むエマルジョンに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定化された液中液型分散体またはエマルジョンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエマルジョンは、2相すなわち、分散相と連続相とからなっている。最も一般的なエマルジョンは、水と油の2つの液体だけからなっている。O/W型(水中油型)エマルジョンは、連続した水相の中に分散された油滴からなり、W/O型(油中水型)エマルジョンは油の中に分散された水滴からなる。多相エマルジョンを形成させることも可能であって、たとえば、連続の油相の中の水滴そのものが、分散された油滴を含んでいるような場合である。乳化とは、剪断力を用いて、大きな液滴をより小さな液滴に分裂させることからなる。典型的には、乳化剤を使用して、界面張力を低下させることによって、エマルジョンを安定化させる。連続相の粘度を高くすることによっても、エマルジョンの相分離を抑制することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
1つの態様においては、本発明は、個々の粒径が約100ナノメートル未満の表面改質無機分子を含む連続液相と、分散液相とを含む、エマルジョンを提供する。
【0004】
別な実施態様においては、本発明のエマルジョンは界面活性剤を含まないか、または、表面張力を低下させる化合物を含まない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明のエマルジョンは、液中液型分散体である。連続相と分散相とを含むエマルジョンは、その組成物中に、有効量の表面改質ナノ粒子を組み入れることによって、維持される。連続相−分散相の界面における表面張力を低下させなくても、その表面改質ナノ粒子がエマルジョンを安定化させる。
【0006】
また別な実施態様においては、本発明のエマルジョンは、本質的に、連続液相および分散液相、ならびにその連続相の中に組み入れた表面改質無機ナノ粒子からなる。
【0007】
本発明のエマルジョンは、従来から使用されている、界面活性剤、洗剤、タンパク質、および乳化剤、ならびに、その他の、表面張力を低下させることによってエマルジョンを安定化させるような化合物類を含んでいなくてもよい。本発明のエマルジョンは典型的には、一定の温度では、数日から数年は安定である。
【0008】
本発明のエマルジョンは、水中油型または油中水型エマルジョン(これらの用語は、当業者によって一般的に定義されているものである)であっても、あるいは多相エマルジョンであってもよい。多相エマルジョンの1例を挙げれば、連続油相の中の水中油型エマルジョン(分散相)であってもよいし、これとは逆の多相エマルジョンであってもよい。本発明の多相エマルジョンでは、別な分散相を含むそれぞれの相で、別なタイプの表面改質有機分子または有機ポリマー微小球が存在しているか、または存在させる必要がある。
【0009】
この表面改質ナノ粒子は、分散相と連続相との界面における表面張力を低下させることなく、エマルジョンを安定化させる。連続液相が分散相液滴の間から排出されるにつれて、表面改質ナノ粒子が、濃度を高めながら、分散相液滴の間に位置するようになる、という理論がたてられている。分散相液滴の間の表面改質ナノ粒子の濃度が高くなると、分散された液滴が互いに接触して合着することが妨げられる。
【0010】
連続液相の例を挙げれば、水、有機液体たとえば、酸、アルコール、ケトン、アルデヒド、アミン、アミド、エステル、グリコール、エーテル、炭化水素、ハロ炭素、モノマー、オリゴマー、潤滑油、植物油(モノ−、ジ−、およびトリ−グリセリド)、シリコーンオイル、保湿オイル(たとえば、鉱油およびホホバ油)、重油、燃料(灯油、ガソリン、ディーゼル燃料を含む)、エチレングリコールのオリゴマー、アルキルおよびアリールニトロ化合物、部分フッ素化または完全フッ素化化合物、ならびにポリマーなどがある。
【0011】
本発明の安定化されたエマルジョンには、表面改質無機ナノ粒子が含まれる。その表面改質ナノ粒子は典型的には、独立した、会合していない(すなわち、アグリゲートしていない)ナノ粒子で、連続相全体に分散されていて、互いに不可逆的に会合しないのが好ましい。「会合する」という用語には、たとえば、共有結合すること、水素結合すること、静電引力、ロンドン力、および疎水性相互作用が含まれる。
【0012】
表面改質ナノ粒子を選択することによって、それと共に形成される組成物が、その組成物の所望の性質に支障をきたすような、粒子のアグロメレーションまたはアグリゲーションの程度にはならないようにする。その表面改質ナノ粒子は、連続相と共存しうる(compatible)ように選択する。
【0013】
表面改質ナノ粒子の連続相に対する共存性(compatibility、適合性)を評価するための1つの有用な方法には、表面改質ナノ粒子と連続相を組み合わせる段階と、その表面改質ナノ粒子がその連続層の中に溶解したように見えるかどうかを観察する段階とが含まれる。
【0014】
表面改質粒子の無機粒子成分の性質のために、表面改質粒子が実際に連続相の中に溶解することは妨げられる、すなわち、表面改質ナノ粒子が連続層の中に分散されることは妨げられるが、しかしながら、その表面基と連続相との共存性によって、表面改質ナノ粒子が連続相の中に溶解したかのように見える。表面改質ナノ粒子の径が大きくなるにつれて、その連続層の曇りも一般に強くなる。好適な表面改質ナノ粒子を選択して、連続相から粒子が沈降しないようにする。連続相と表面改質ナノ粒子の間の共存性を評価する次の段階では、その連続相の中に分散させる液体をさらに加えたときに、その組成物が安定なエマルジョンを形成するかどうか、を調べる。
【0015】
表面基と連続相の溶解パラメーターを基準にして、適切な表面基を選択することもできる。表面基、またはその表面基を誘導するための反応剤が、連続相の溶解パラメーターと類似の溶解パラメーターを有しているのが好ましい。たとえば、連続相が疎水性である場合には、当業者ならば、各種の疎水性表面基の中から選択して、その疎水性連続相と共存しうるような表面改質粒子を達成することが可能である。同様にして、連続相が親水性である場合には、当業者は、親水性の表面基から選択することができるし、また、その連続相がフルオロカーボンの場合ならば、当業者は、各種の共存しうる表面基の中から選択することができる。そのナノ粒子には、少なくとも2種の異なった表面基を与えることも可能であって、それらを組み合わせることによって、ナノ粒子が、連続相の溶解パラメーターと類似の溶解パラメーターを持つようにすることができる。表面改質ナノ粒子は、両親媒性にはしない。
【0016】
その表面基は、統計的に平均化され、ランダムに表面改質された粒子を与えるように、選択するのがよい。
【0017】
表面基は、その後で、アグリゲーションを起こすことなく連続相の中に分散させることができるような表面改質ナノ粒子を与えるのに充分な量で、粒子の表面上に存在させる。表面基は、ナノ粒子の表面上に、単分子層、好ましくは連続の単分子層を形成させるのに充分な量で存在させるのが好ましい。
【0018】
表面改質基は、表面改質剤から誘導することができる。概略的には、表面改質剤は式A−Bで表すことができ、ここでA基は、粒子の表面に結合することが可能であり、そしてB基は、共存化基(compatibilizing group)であって、その基は、連続相の成分とは反応性があっても、反応性がなくてもよい。共存化基を選択して、その粒子の、極性をより高くしたり、極性をより低くしたり、あるいはより非極性にしたりすることができる。
【0019】
表面改質剤の好適なタイプとしては、たとえばシラン、有機酸、有機塩基、およびアルコールなどが挙げられる。
【0020】
特に有用な表面改質剤としては、シランを挙げることができる。有用なシランの例を挙げれば、オルガノシラン、たとえば、アルキルクロロシラン、アルコキシシランたとえば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ポリトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ(tーブトキシ)シラン、ビニルトリス(イソブトキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペノキシ)シランおよびビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン;トリアルコキシアリールシラン;イソオクチルトリメトキシ−シラン;N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート;N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート;シラン官能性(メタ)アクリレート、たとえば、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)メチルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)メチルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロペニルトリメトキシシラン、および3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン;ポリジアルキルシロキサンたとえば、ポリジメチルシロキサン、アリールシランたとえば、置換および非置換のアリールシラン、アルキルシランたとえば、置換および非置換のアルキルシランたとえば、メトキシおよびヒドロキシ置換したアルキルシラン、ならびにそれらの組合せなどがある。
【0021】
シラン官能性(メタ)アクリレートを使用してシリカを表面改質する方法は、たとえば、米国特許第4,491,508号明細書および米国特許第4,455,205号明細書(オルセン(Olsen)ら);米国特許第4,478,876号明細書および米国特許第4,486,504号明細書(チャン(Chung));ならびに米国特許第5,258,225号明細書(カツァムベリス(Katsamberis))などに記載されている。
【0022】
有用な有機酸表面改質剤としては、たとえば、炭素のオキシ酸(たとえばカルボン酸)、硫黄およびリンのオキシ酸、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0023】
カルボン酸官能基を有する極性の表面改質剤の代表例を挙げれば、CH3O(CH2CH2O)2CH2COOH(以後、MEEAAと呼ぶ)、およびCH3OCH2CH2OCH2COOHの化学構造を有する2−(2−メトキシエトキシ)酢酸(以後MEAAと呼ぶ)、およびモノ(ポリエチレングリコール)スクシネートなどがある。
【0024】
カルボン酸官能基を有する非極性表面改質剤の代表例としては、オクタン酸、ドデカン酸、およびオレイン酸が挙げられる。
【0025】
好適なリン含有酸の例としては、ホスホン酸たとえば、オクチルホスホン酸、ラウリルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、およびオクタデシルホスホン酸が挙げられる。
【0026】
有用な有機塩基表面改質剤としては、たとえば、アルキルアミンたとえば、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、およびオクタデシルアミンが挙げられる。
【0027】
その他有用な非シラン系の表面改質剤の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ベータ−カルボキシエチルアクリレート、モノ−2−(メタクリロイルオキシエチル)スクシネート、およびそれらの組合せが挙げられる。極性とナノ粒子に対する反応性との両方を付与するのに有用な表面改質剤は、モノ(メタクリロイルオキシポリエチレングリコール)スクシネートである。
【0028】
好適な表面改質アルコールの例を挙げれば、たとえば、脂肪族アルコールたとえば、オクタデシル、ドデシル、ラウリルおよびフルフリルアルコール、脂環式アルコールたとえば、シクロヘキサノール、および芳香族アルコールたとえば、フェノールおよびベンジルアルコール、ならびにそれらの組合せなどがある。
【0029】
連続相に、芳香族環を含むエポキシ樹脂が含まれている場合には、有用な表面改質基として芳香族環を挙げることができる。エポキシ樹脂組成物に対して特に好適な表面改質基の例は、米国特許第5,648,407号明細書(ゲッツ(Goetz)ら)に記載されている。
【0030】
各種の方法が、ナノ粒子の表面を変性させるために使用可能であるが、たとえば、(たとえば、粉体またはコロイド状の分散体の形態の)ナノ粒子に表面改質剤を添加する工程と、表面改質剤をそのナノ粒子と反応させる工程とが含まれる。その他有用な表面改質プロセスは、たとえば、米国特許第2,801,185号明細書(イラー(Iler))および米国特許第4,522,958号明細書(ダス(Das)ら)に記載がある。
【0031】
ナノ粒子は無機物である。好適な無機ナノ粒子の例を挙げれば、シリカ、および金属酸化物ナノ粒子たとえば、ジルコニア、チタニア、セリア、アルミナ、酸化鉄、バナジア、酸化アンチモン、酸化スズ、アルミナ/シリカ、それらの組合せなどがある。そのナノ粒子の平均粒径は、約100nm;約50nm以下;約3nm〜約50nm;約3nm〜約20nm;または約3nm〜約10nmである。本発明のエマルジョンにおいて使用されるナノ粒子は、典型的にはアグリゲートしていない。ナノ粒子がアグリゲートしているような場合には、アグリゲートした粒子の最大断面寸法を、本明細書の好ましいとする範囲内に入るようにする。
【0032】
有用な表面改質ジルコニアナノ粒子には、その粒子の表面上に吸着された有機酸たとえばオレイン酸およびアクリル酸が含まれる。
【0033】
有用な表面改質シリカナノ粒子には、シラン表面改質剤を用いて表面改質したシリカナノ粒子が含まれるが、そのような表面改質剤の例を挙げれば、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、およびそれらの組合せがある。シリカナノ粒子は、各種の表面改質剤を用いて処理することができるが、そのようなものとしては、たとえばアルコール、オルガノシランたとえば、アルキルトリクロロシラン、トリアルコキシアリールシラン、トリアルコキシ(アルキル)シラン、およびそれらの組合せ、ならびにオルガノチタネートおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0034】
ナノ粒子は、コロイド状分散体の形態をとっていてもよい。市販されている未変性のシリカ出発原料の有用なものの例としては、ナノサイズのコロイド状シリカで、イリノイ州ネーパービル(Naperville,IL)のナルコ・ケミカル・カンパニー(Nalco Chemical Co.)から入手可能な製品の、ナルコ(NALCO)1040、1050、1060、2326、2327、および2329コロイド状シリカが挙げられる。
【0035】
有用な金属酸化物のコロイド状分散体としては、コロイド状酸化ジルコニウム(その好適な例は、米国特許第5,037,579号明細書に記載されている)、およびコロイド状酸化チタン(その有用な例は、PCT国際特許公開第00/06495号パンフレット、発明の名称「ナノサイズ・メタル・オキサイド・パーティクルズ・フォア・プロデューシング・トランスペアレント・メタル・オキサイド・コロイズ・アンド・セラマーズ(Nanosize Metal Oxide Particles for Producing Transparent Metal Oxide Colloids and Ceramers)」(アーニー(Arney)ら、1998年7月30日出願)に記載されている)などが挙げられる。
【0036】
本発明のエマルジョンには、連続液相の中に分散された分散液相が含まれる。その分散液相には、1種または複数の混和性または可溶性の液体が含まれ、それが連続液相の中に分散されている。好適な分散液相を挙げれば、水および、先に連続相として使用できるとして挙げたすべての有機原料がある。
【0037】
それぞれの相にはさらに、所望の効果を得るための、たとえば、塩、反応剤、染料、難燃剤など、その他の溶解された化合物もしくは可溶性化合物または成分が含まれていてもよい。
【0038】
本発明のエマルジョンにはさらに、表面改質無機ナノ粒子と組み合わせて、表面改質有機分子および有機ポリマー微小球が含まれていてもよい。表面改質有機分子および有機ポリマー微小球については、米国特許出願第10/335,495号明細書(代理人整理番号第58311US002号、出願2002年12月31日)に記載がある。
【0039】
本発明のエマルジョンは通常、複数の相をブレンド、混合することによって得られる。本発明のエマルジョンを製造するためのまた別な方法としては、表面改質有機分子または有機ポリマー微小球またはそれらの組合せを、連続相(または、多相エマルジョンの場合には、他の相)とブレンドし、次いで撹拌しながら分散相を添加する方法もある。
【0040】
本発明のエマルジョンは、食品、化粧品、医薬品などにおいて有用である。
【0041】
以下の実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0042】
特に断らない限り、すべての溶媒と反応剤は、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI)のアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)から入手したものである。特に断らない限り、すべてのパーセントと量は、重量基準である。
【0043】
ポリ(アルキレンオキシド)置換シリカナノ粒子(シリカ−1230)の調製
100gのナルコ(Nalco)2326コロイド状シリカ(ナルコ・ケミカル・カンパニー(Nalco Chemical Co.)から入手可能)、100gの水、および19.82gのガンマ−ポリ(アルキレンオキシド)プロピルトリメトキシシラン(ニューヨーク州エンディコット(Endicott,NY)のOSi・スペシャルティズ・インコーポレーテッド(OSi Specialties Inc.)から、商品名シルケスト(SILQUEST)A−1230として得られるもの)との混合物を密封したガラス容器に入れ、加熱炉の中で80℃で18時間加熱した。その生成物を、さらに精製することなく使用した。
【0044】
イソ−オクチル置換シリカナノ粒子(i−C8−シリカ)の調製
イソ−オクチル置換シリカナノ粒子を、米国特許第6,586,483号明細書(コルブ(Kolb)ら)の、表面改質ナノ粒子を調製するための記載に従って調製した。
【0045】
実施例1
ねじ蓋付きガラスバイアルの中に、1mLのフルオリナート(FLUORINERT)FC−75と、1mLのi−C8−シリカとトルエンの2%混合物を加え、15秒間そのバイアルを手で激しく振盪することにより、トルエンとフルオロカーボン(フルオリナート(FLUORINERT)FC−75、ミネソタ州セントポール(St.Paul,MN)の3M・カンパニー(3M Company)から入手可能)とのエマルジョンを調製した。そのエマルジョンには、50容積パーセント未満のトルエンしか含まれないが、それは、そのエマルジョン相から、均質なトルエン相が分離することによって確かめられた。
【0046】
実施例2
主として、自体水の中に乳化されているトルエン中に水が分散されたエマルジョンを含む多相エマルジョンを調製したが、それには、5gの0.5%i−C8−シリカ(トルエン中)と5gの1.5%シリカ−1230(水中)との混合物をバイアル中で組み合わせることによって、調製した。その混合物を、5/8インチ筒状組立粉砕用ヘッドインペラーを取り付けたシルバーソン(Silverson)モデルL2Rミキサー(マサチューセッツ州イースト・ロングメドウ(East Longmeadow,MA)のシルバーソン・マシンズ・インコーポレーテッド(Silverson Machines Inc.)から入手可能)を用いて5分間撹拌することにより、曇りのある液体を得た。その液体を光学顕微鏡で調べると、圧倒的に「水中トルエン中水(water−in−toluene−in−water)」型の多相エマルジョンが形成されていることがわかった。
【0047】
実施例3
主として、自体トルエンの中に乳化されている水中にトルエンが分散されたエマルジョンを含む多相エマルジョンを調製したが、それには、5gの1.5%i−C8−シリカ(トルエン中)と5gの0.5%シリカ−1230(水中)との混合物をバイアル中で組み合わせることによって、調製した。その混合物を、5/8インチ筒状組立粉砕用ヘッドインペラーを取り付けたシルバーソン(Silverson)モデルL2Rミキサー(シルバーソン・マシンズ・インコーポレーテッド(Silverson Machines Inc.)から入手可能)を用いて5分間撹拌することにより、曇りのある液体を得た。その液体を光学顕微鏡で調べると、圧倒的に「トルエン中水中トルエン(toluene−in−water−in−toluene)」型の多相エマルジョンが形成されていることがわかった。
【0048】
実施例4
主として、自体水中に乳化されたトルエン中にフルオロカーボン(フルオリナート(FLUORINERT)FC−75)が分散されたエマルジョンを含む多相エマルジョンを調製したが、それには、1gのフルオロカーボン(フルオリナート(FLUORINERT)FC−75、5gの1.5%シリカ−1230(水中)および4gの0.5%i−C8−シリカ混合物(トルエン中)の混合物をバイアル中で組み合わせた。その混合物を、5/8インチ筒状組立粉砕用ヘッドインペラーを取り付けたシルバーソン(Silverson)モデルL2Rミキサー(シルバーソン・マシンズ・インコーポレーテッド(Silverson Machines Inc.)から入手可能)を用いて5分間撹拌することにより、曇りのある液体を得た。その液体を光学顕微鏡で調べると、圧倒的に「水中トルエン中フルオリナート(FLUORINERT)FC−75」型の多相エマルジョンが形成されていることがわかった。
【0049】
本発明の予測可能な修正と変更は、本発明の範囲と精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。説明を目的として本明細書において記述された実施態様に、本発明が限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続相の中に分散された約100ナノメートル未満の粒径を有する、表面改質無機ナノ粒子を多数含む連続液相;および
前記連続相の中に分散された分散液相を含む、エマルジョン。
【請求項2】
前記個々のナノ粒子が、約50ナノメートル以下の粒径を有する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項3】
前記個々のナノ粒子が、約3ナノメートル〜約50ナノメートルの範囲の粒径を有する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項4】
前記個々のナノ粒子が、約20ナノメートル以下の粒径を有する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項5】
前記個々のナノ粒子が、約3ナノメートル〜約20ナノメートルの範囲の粒径を有する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項6】
前記個々のナノ粒子が、約3ナノメートル〜約10ナノメートルの範囲の粒径を有する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項7】
前記ナノ粒子が、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、バナジア、セリア、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化スズ、アルミニウム/シリカ、およびそれらの組合せ、からなる群より選択される、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項8】
前記ナノ粒子が、疎水性基、親水性基、およびそれらの組合せ、からなる群より選択される表面基を含む、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項9】
前記ナノ粒子が、シラン、有機酸、有機塩基、およびそれらの組合せ、からなる群より選択される反応剤から誘導される表面基を含む、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項10】
前記ナノ粒子が、アルキルシラン、アリールシラン、アルコキシシラン、およびそれらの組合せ、からなる群より選択される反応剤から誘導されるオルガノシリル表面基を含む、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項11】
前記ナノ粒子が、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、およびそれらの組合せ、からなる群より選択される反応剤から誘導される表面基を含む、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項12】
前記連続相が、水、有機酸、アルコール、ケトン、アルデヒド、アミン、アミド、エステル、グリコール、エーテル、炭化水素、ハロ炭素、モノマー、オリゴマー、潤滑油、植物油、シリコーンオイル、鉱物油およびホホバ油、重油、灯油、ガソリン、ディーゼル燃料、エチレングリコールのオリゴマー、アルキルおよびアリールニトロ化合物、部分フッ素化または完全フッ素化化合物、ポリマー、ならびにそれらの組合せ、からなる群より選択される、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項13】
前記分散相が、水、有機酸、アルコール、ケトン、アルデヒド、アミン、アミド、エステル、グリコール、エーテル、炭化水素、ハロ炭素、モノマー、オリゴマー、潤滑油、植物油、シリコーンオイル、鉱物油およびホホバ油、重油、灯油、ガソリン、ディーゼル燃料、エチレングリコールのオリゴマー、アルキルおよびアリールニトロ化合物、部分フッ素化または完全フッ素化化合物、ポリマー、ならびにそれらの組合せ、からなる群より選択される、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項14】
第2の連続相の内部に分散されている、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項15】
界面活性剤を含まない、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項16】
表面張力を低下させる化合物を含まない、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項17】
前記連続相が、表面改質有機分子、有機ポリマー微小球、またはそれらの組合せ、をさらに含む、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項18】
前記連続相が水である、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項19】
前記連続相が有機物質である、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項20】
前記分散相が水である、請求項1に記載のエマルジョン。

【公表番号】特表2006−515308(P2006−515308A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564852(P2004−564852)
【出願日】平成15年11月3日(2003.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/034931
【国際公開番号】WO2004/060349
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】