説明

被膜形成方法

【課題】着色被膜を透明被膜で保護する被膜形成方法において、効率的に透明被膜を形成する。さらには形成被膜の美観性を高める。
【解決手段】下地に対し、着色被膜を形成する第1工程、透明被膜が形成可能な結合材、及び退色性色素を含有する被覆液を、前記着色被膜の上に塗付する第2工程を行う。第1工程における着色被膜は、2色以上の着色領域が混在するものであり、当該着色領域の少なくとも1色は、第2工程における退色性色素の退色前の色調が視認できるように着色されたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物等に適用可能な被膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁面等を構成する材料として、各種材料が用いられている。このような材料には、美観性を高めるため、種々の色彩が付与されている。さらに、その色彩による美観性を長期にわたり維持するため、透明被膜によって汚れ等を防ぐことが行われている。
【0003】
例えば、特開2001−149855号公報(特許文献1)には、窯業系建材やコンクリート壁等の基材の上に、高耐候性結着剤を塗膜形成要素として含む着色被膜を設け、さらにその上に、光触媒性の透明被膜を設けることが記載されている。また特開2008−246340号公報(特許文献2)には、外装材の表面に、シーラー被膜、着色被膜、及び透明被膜を順に設けることが記載されている。
【0004】
しかし、上記特許文献の方法では、透明被膜を形成する際に、塗り残し、塗りムラ等の不具合が生じるおそれがある。このような不具合が生じると均一な透明被膜が形成されず、着色被膜の保護が不十分となってしまうため、不具合が生じないよう慎重な作業が必要となる。
また、上記特許文献の方法で得られる色彩は単一色であり、美観性の点においても改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−149855号公報
【特許文献2】特開2008−246340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、着色被膜を透明被膜で保護する被膜形成方法において、効率的に透明被膜を形成すること、さらには形成被膜の美観性を高めることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、下地に対し、特定条件の着色領域が混在する着色被膜を形成した後、退色性色素等を含む被覆液を用いて透明被膜を形成する方法に想到し、本発明を完成させるに到った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.着色被膜を透明被膜で保護する被膜形成方法であって、
下地に対し、着色被膜を形成する第1工程、
透明被膜が形成可能な結合材、及び退色性色素を含有する被覆液を、前記着色被膜の上に塗付する第2工程を含み、
第1工程における着色被膜は、2色以上の着色領域が混在するものであり、当該着色領域の少なくとも1色は、第2工程における退色性色素の退色前の色調が視認できるように着色されたものである
ことを特徴とする被膜形成方法。
2.前記第1工程における着色領域の少なくとも1色は、L値が80以上、a値が−3〜3、b値が−3〜15であることを特徴とする1.記載の被膜形成方法。
3.前記第2工程における被覆液は、透明被膜が形成可能な結合材、退色性色素、水性媒体、及び金属イオンを含有するものであることを特徴とする1.または2.記載の被膜形成方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、効率的に透明被膜が形成でき、透明被膜によって着色被膜を確実に保護することができる。さらに本発明では、色彩豊かな仕上外観が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明は、着色被膜を透明被膜で保護する被膜形成方法であり、まず第1工程として、下地に対し着色被膜を形成する。
【0012】
本発明で塗装対象となる下地は、主に建築物、土木構造物等の壁面である。このような下地を構成する材料としては、例えば、コンクリート、モルタル、セメントボード、押出成形板、スレート板、PC板、ALC板、繊維強化セメント板、金属系サイディングボード、窯業系サイディングボード、セラミック板、珪酸カルシウム板、石膏ボード、プラスチックボード、硬質木片セメント板、塩ビ押出サイディングボード、合板等が挙げられる。これらは、何らかの表面処理(フィラー処理、パテ処理、サーフェーサー処理、シーラー処理等)が施されたもの、あるいは既に被膜が形成されたものや、壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。
【0013】
また、このような下地は、線状凹部による目地模様を有するもの、例えば、陶磁器タイルで構成された壁面、目地模様を有するテクスチャーが付与された塗膜面、あるいは、目地模様を有する無機質建材で構成された壁面等であってもよい。
【0014】
本発明では、上述のような下地に対し着色被膜を形成する。この着色被膜は、2色以上の着色領域が混在し、当該着色領域の少なくとも1色は、第2工程における退色性色素の退色前の色調が視認できるように着色されたものである。本発明では、このような着色領域を有する着色被膜を形成することにより、第2工程における被覆液塗付時に、その塗装状態を所定の箇所で確認することができる。そのため、透明被膜形成時の作業効率が高まり、塗り残し、塗りムラ等の不具合発生が抑制され、透明被膜によって着色被膜を確実に保護することができる。また、複数の着色領域が混在することにより、美観性を高めることもできる。
【0015】
着色被膜中の各着色領域の色調は、少なくとも1色が上記条件を満たすようにすればよい。本発明では、着色領域の少なくとも1色が、L値80以上、a値−3〜3、b値−3〜15であることが好ましく、L値85以上、a値−2.5〜2.5、b値−2.5〜13であることがより好ましい。このような着色領域を有する着色被膜は、本発明の効果発現の点で好適である。なお、本発明におけるL、a、bは、CIE L色空間における値であり、分光光度計により測定されるものである。
【0016】
2色以上の着色領域が混在する着色被膜は、例えば以下の方法によって形成できる。
(1)色調が異なる2種以上の着色被覆材を使用する方法
(2)色調が異なる2種以上の着色粒子を含む被覆材を使用する方法
【0017】
まず、上記(1)の方法について説明する。
上記(1)の方法では、色調が異なる2種以上の着色被覆材を用いて、2色以上の着色領域が混在するように着色被膜を形成すればよい。具体的には、
・第1着色被覆材を全体に塗付後、部分的に第2着色被覆材を塗付する方法
・第1着色被覆材及び第2着色被覆材をそれぞれ部分的に塗付する方法
等が挙げられる。着色被膜を正面から見たときの各着色領域の形状は、特に限定されず、例えば正方形、長方形、円形、楕円形、三角形、菱形、多角形、不定形、筋状、格子状等の形状が挙げられる。
【0018】
上記(1)における着色被覆材としては、結合材、及び着色顔料を必須成分として含む被覆材を使用すればよい。このうち結合材としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。合成樹脂としては、水分散性樹脂(樹脂エマルション)、水溶性樹脂等の水性樹脂が好適である。
【0019】
着色顔料としては、公知のものが使用でき、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。着色被覆材の色調は、このような着色顔料の種類、混合量等を調整することにより適宜設定することができる。上記(1)では、着色被覆材の1種以上を、第2工程における退色性色素の初期色調が視認できる色調に調色すればよい。
【0020】
下地が、線状凹部による目地模様を有するものである場合は、線状凹部とそれ以外の部分において異なる色に塗り分けることも可能である。このような塗り分けは、線状凹部に現れる色調の着色被覆材(第1着色被覆材)を全面に塗装した後、その被覆材とは異色の着色被覆材(第2着色被覆材)で線状凹部以外の部分をローラー塗りする方法等により行うことができる。この場合、第1着色被覆材、第2着色被覆材のいずれか一方または両方を、第2工程における退色性色素の初期色調が視認できる色調に着色すればよい。
【0021】
着色被覆材の塗装には、例えばスプレー、ローラー、刷毛等の公知の塗付具が使用できる。着色被覆材の塗付け量は、被覆材や着色領域の形態にもよるが、固形分換算で好ましくは20〜400g/m程度である。塗装時には水等の希釈剤を混合して粘性を適宜調製することもできる。着色被覆材の乾燥は通常、常温で行えばよい。
【0022】
次に、上記(2)の方法について説明する。
上記(2)の方法では、色調が異なる2種以上の着色粒子を含む被覆材を用いて、2色以上の着色領域が混在するように着色被膜を形成すればよい。この(2)の方法によれば、1回の塗装で、2色以上の着色領域が混在する着色被膜が形成できる。着色粒子としては、着色被膜中で扁平状であるものが好適である。
【0023】
上記(2)における被覆材としては、具体的には、
・結合材を含む分散媒中に、非造膜性の着色粒子が分散した被覆材
・分散媒中に、造膜性の着色粒子が分散した被覆材
等が挙げられる。着色被膜を正面から見たときの各着色領域の形状は、塗装後の着色粒子の形状等に依存し、例えば円形、楕円形、不定形等の形状が挙げられる。
【0024】
上記(2)の被覆材中の着色粒子としては、ゲル状または液状のものが好適である。このような着色粒子は、結合材及び着色顔料を含む着色材をゲル状またはカプセル化することによって得ることができる。非造膜性の着色粒子としては、着色材がゲル化されたゲル状の着色粒子が使用でき、造膜性の着色粒子としては、液状の着色材を内包するカプセル状の着色粒子が使用できる。結合材、着色顔料としては、上記(1)と同様のものが使用できる。着色材をゲル化またはカプセル化する方法としては、公知の方法を採用すればよい。
【0025】
上記(2)における被覆材の塗装では、例えばスプレー、ローラー等の公知の塗付具が使用できる。このような被覆材の塗付け量は、被覆材の形態にもよるが、固形分換算で好ましくは50〜800g/m程度である。塗装時には水等の希釈剤を混合して粘性を適宜調製することもできる。被覆材の乾燥は通常、常温で行えばよい。
【0026】
本発明の第2工程では、透明被膜が形成可能な結合材、及び退色性色素を含有する被覆液を、上述の着色被膜の上に塗付する。
本発明では、この第2工程において、退色性色素の色調によって、被覆液の塗装状態を確認することができる。そして、被覆液が被膜を形成した後、光等の影響により、退色性色素は経時的に退色し、被膜は無色透明なものに変化する。これにより、着色被膜を保護し、かつ着色被膜の美観性を阻害しない透明被膜が形成される。
【0027】
第2工程の被覆液としては、透明被膜が形成可能な結合材、及び退色性色素を含有するものであればよいが、その媒体が水性媒体であるものが、作業性、安全性等の点で好適である。
【0028】
被覆液における結合材としては、透明被膜が形成可能なものであればよく、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。このような結合材としては、特に水分散性樹脂(樹脂エマルション)、水溶性樹脂等の水性樹脂が好適である。
【0029】
退色性色素は、光、pH、温度等(好ましくは光)の外部刺激によって、経時的に退色する色素である。
退色性色素としては、例えば、化合物中に少なくともハロゲン基、硫酸基、硫酸水素基、硝酸基、リン酸基、リン酸水素基、炭酸基、炭酸水素基、カルボン酸基から選ばれる1種以上のアニオン性基を含むものが好ましい。このような退色性色素は、イオン解離の作用により、水性媒体に容易に溶解できる。
退色性色素の具体例としては、例えば、食用青色1号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用緑色3号等の食用染料等が挙げられる。
被覆液中の退色性色素の濃度は、好ましくは0.01〜100mg/L、より好ましくは0.05〜80mg/Lである。退色性色素の濃度がこのような範囲内であれば、退色前の色素の色調が視認されやすく、退色に要する時間を早めることもできる。
【0030】
水性媒体は、水を主成分とするものであり、必要に応じ、低級アルコール、多価アルコール、アルキレンオキサイド含有化合物等の水溶性化合物が混合されていてもよい。水性媒体中の水の比率は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
【0031】
第2工程の被覆液は、上記成分に加え、金属イオンを含有することが望ましい。これにより、退色性色素の退色を一層早めることができ、早期に透明な被膜を得ることができる。このような効果が生じる理由は明確ではないが、退色性色素にアニオン性基が含まれる場合、金属イオンとアニオン性基が何らかの相互作用を起こし、色素の退色を促進しているものと考えられる。
【0032】
被覆液中の金属イオンの濃度は、好ましくは1〜1000mg/L、より好ましくは10〜800mg/Lである。金属イオンの濃度がこのような範囲内であれば、被膜物性に大きな影響を及ぼさずに、色素の退色を早めることができる。なお、金属イオンの濃度は、水性媒体1リットル中に含まれる金属イオン(mol/L)を重量換算したものであり、公知の測定方法にて測定できる。
【0033】
金属イオンは、水性媒体中で金属イオンとなるものであり、第1族元素、第2族元素、遷移元素から選ばれる1種以上の金属元素を含むものである。
第1族元素としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等、第2族元素としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。遷移元素は周期表における第3族元素から第11族元素に属する金属元素であり、例えば、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、銀等が挙げられる。
特に、前記退色性色素が、ハロゲン基、カルボン酸基、硫酸基等の1価のアニオン基を有する場合、金属イオンとして第2族元素、遷移元素から選ばれる2価以上の金属元素を含む金属イオンが好ましい。さらに安全性等の点から、第2族元素の金属元素を含む金属イオンがより好ましい。
【0034】
第2工程の被覆液は、さらに上記以外の成分を含むこともできる。このような成分としては、例えば、無機粒子、増粘剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、造膜助剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒、光触媒、架橋剤、繊維等が挙げられる。また、この被覆液は、本発明の効果を損なわない程度であれば、退色性色素以外の着色剤(染料、顔料等)で着色することも可能である。被覆液の固形分は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは0.1重量%以上10重量%以下である。
【0035】
上記成分のうち、無機粒子としては、特に、平均一次粒子径が1nm以上200nm以下(好ましくは3nm以上100nm以下)のマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、白金、金、シリコン、ゲルマニウム、錫等の金属元素を含む無機粒子が好適である。このような無機粒子は、上記粒子径の範囲で透明性を有し、また退色性色素の退色をより早める効果も有する。
このような無機粒子としては特に、シリコン元素を含むものが好ましい。シリコン元素を含む無機粒子としては、例えば、シリカゾル等が挙げられる。これらは、珪酸ソーダ、シリケート化合物を原料として製造することができ、酸性タイプ〜塩基性タイプ(好ましくは、中性タイプ〜塩基性タイプ)のもの、また何らかの表面処理が施されたものでもよい。
【0036】
第2工程では、上記成分を含む被覆液を、着色被膜上の全面に塗付すればよい。塗装器具としては、例えば、刷毛、ローラー、スプレー等の公知のものを用いることができる。透明被膜を形成する際の被覆材の塗付け量は、固形分換算で、好ましくは0.1〜50g/m、より好ましくは0.5〜20g/mである。被覆液の乾燥は通常、常温で行えばよい。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0038】
(着色被覆材)
着色被覆材として、表1に示す各色調に着色したアクリル樹脂系エマルションペイントを用意した。
【0039】
【表1】

【0040】
(透明被膜用被覆液)
表2に示す配合にて、下記に示す樹脂、退色性色素、媒体を混合し、透明被膜用被覆液を作製した。
・樹脂A:アクリルシリコンエマルション(組成:2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメタクリレート、メタクリル酸)、固形分45wt%、媒体:純水(金属イオン0mg/L)
・退色性色素A:食用赤色3号(エリスロシン、アニオン基:ヨード基、カルボン酸基)
・退色性色素B:食用青色1号(フリリアントブルーFCF、アニオン基:スルホン酸基)
・退色性色素C:食用赤色104号(フロキシン、アニオン基:クロロ基、ブロモ基、カルボン酸基)
・媒体A:純水(金属イオン0mg/L)
なお、媒体Aに、塩化ナトリウム(1価の金属イオン)、塩化カルシウム(2価の金属イオン)、硫酸アルミニウム(3価の金属イオン)等を混合し、表2に示す金属イオン濃度となるように調製した。
【0041】
【表2】

【0042】
<試験I>
基材として窯業系サイディングボートを用意した。この窯業系サイディングボードは、表面にタイル調凹凸模様を有するものである。
この基材の全面に対し、第1着色被覆材を塗付け量80g/m(固形分)でスプレー塗装し、3時間乾燥後、タイル調凹凸模様の凸部のみに、第2着色被覆材を塗付け量80g/m(固形分)でローラー塗装して着色被膜を形成した。次いで1日間養生後、透明被膜用被覆液を塗付け量3g/m(固形分)でスプレー塗装した。なお、塗装、養生はすべて標準状態(気温23℃、相対湿度50%)下で行った。
ここで、透明被膜用被覆液の塗装作業性を評価した。評価基準は、塗装した箇所の確認が容易であったものを「A」、塗装した箇所の確認が困難であったものを「C」とする3段階(A>B>C)で行った。
使用した着色被覆材、透明被膜用被覆液の組み合わせと、評価結果を表3に示す。試験例1〜20では良好な結果が得られた。
【0043】
<試験II>
上記試験Iで得られた試験板を、直射日光が当たらない北面屋内の窓内側(気温25℃)にて48時間静置させ、塗装直後と48時間静置後の表面色を評価した。評価基準は、退色性色素の色が消えていたものを「A」、退色性色素の色が残存していたものを「C」とする3段階(A>B>C)で行った。評価結果を表3に示す。
【0044】
【表3】













【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色被膜を透明被膜で保護する被膜形成方法であって、
下地に対し、着色被膜を形成する第1工程、
透明被膜が形成可能な結合材、及び退色性色素を含有する被覆液を、前記着色被膜の上に塗付する第2工程を含み、
第1工程における着色被膜は、2色以上の着色領域が混在するものであり、当該着色領域の少なくとも1色は、第2工程における退色性色素の退色前の色調が視認できるように着色されたものである
ことを特徴とする被膜形成方法。
【請求項2】
前記第1工程における着色領域の少なくとも1色は、L値が80以上、a値が−3〜3、b値が−3〜15であることを特徴とする請求項1記載の被膜形成方法。
【請求項3】
前記第2工程における被覆液は、透明被膜が形成可能な結合材、退色性色素、水性媒体、及び金属イオンを含有するものであることを特徴とする請求項1または2記載の被膜形成方法。

【公開番号】特開2013−56314(P2013−56314A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197130(P2011−197130)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(599071496)ベック株式会社 (98)
【Fターム(参考)】