説明

複合バルブ

【課題】減速機を用いずに、仕切弁と放散弁を同一の駆動源で開閉駆動できる、複合バルブを提供することである。
【解決手段】熱風炉へ可燃ガスを導入するガス導入管の熱風炉直前に設けられる仕切弁と、ガス導入管の仕切弁の上流側のガスを大気へ放散する放散弁を有し、仕切弁と放散弁は共通の駆動源で開閉駆動される複合バルブにおいて、放散弁の弁体は全開と全閉の間の往復回転のみ可能とされ、放散弁はトルクリミッターを介して駆動源で開閉駆動される構成を採用した。この複合バルブによれば減速機を用いずに、仕切弁と放散弁を同一の駆動源で開閉駆動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単一の駆動源で開閉駆動する仕切弁と放散弁を有する熱風炉へのガス導入管用複合バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス管等を遮断するバルブには遮断したときに該ガス管に残留するガスを放散する放散弁を備え、複合バルブとして設置されるものがある。(例えば特許文献1)。
【0003】
そのような複合バルブが用いられるガス管として、図5に示すような製鉄所などの高炉の熱風炉1に可燃ガスを導入するガス導入管2がある。このガス導入管には可燃ガスを確実に遮断するための第一のバルブ3が設置されるが、それとは別に、ガス導入管2を遮断時に行う熱風炉1の送風工程中のガス導入管2への空気の逆流を防ぎ、その高圧を受けると共に、遮断する時に上流側のガスへの引火をより安全に防ぐために、第一のバルブ3の熱風炉側に仕切弁である第二のバルブ4を設置し、可燃ガスを遮断する時にはまず第二のバルブ4でガス導入管2を遮断してから第一のバルブ3を遮断し、可燃ガスを安全確実に遮断している。
【0004】
ところで可燃ガスの遮断の際はまず第二のバルブ4でガス導入管2を遮断し、次に第一のバルブ3でもガス導入管2を遮断するから、ガス導入管2の第二のバルブ4と第一のバルブ3の間には可燃ガスが残留してしまう。可燃ガスの残留は安全上好ましくないため、分岐管6を設け、分岐管6に放散弁5が設置される。
【0005】
第一、第二のバルブと放散弁は熱風炉近傍という設置環境と開閉頻度の高さからモータ等の駆動源によって駆動される。
【0006】
放散弁5は可燃ガスを熱風炉1に導入中(第一及び第二のバルブがともに全開のとき)は全閉とされ、第二のバルブ4が閉駆動されると同時に開駆動され、第二のバルブ4が開駆動されると同時に閉駆動されるのが望ましいので、駆動のタイミングは第二のバルブ4と同時であり、同一の駆動源を用いてコスト低減と保守管理の単純化を計ることが考えられる。
【0007】
しかし、仕切弁である第二のバルブ4に対し、放散弁5はボール弁又はバタフライ弁が使用される場合が多く、それらを同一の駆動源で開閉駆動するには第二のバルブ4の駆動量に従って駆動源を駆動し、放散弁の開閉駆動の為に高価な減速機を備える必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−153249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の課題は減速機を用いずに、熱風炉から前記ガス導入管への熱風炉内ガスの逆流を防止する仕切弁と放散弁を同一の駆動源で開閉駆動できる、熱風炉へのガス導入管用複合バルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は熱風炉へ可燃ガスを導入するガス導入管の熱風炉直前に設けられ、可燃ガスの導入を停止した時に、熱風炉から前記ガス導入管への熱風炉内ガスの逆流を防止する仕切弁と、ガス導入管の仕切弁の上流側のガスを大気へ放散する放散弁を有し、仕切弁と放散弁は共通の駆動源で開閉駆動される複合バルブにおいて、放散弁の弁体は全開と全閉の間の往復回転のみ可能とされ、放散弁はトルクリミッターを介して駆動源で開閉駆動される構成を採用した。
【発明の効果】
【0011】
本発明の複合バルブは、放散弁の弁体は全開と全閉の間の往復回転のみ可能とされ、放散弁はトルクリミッターを介して駆動源で開閉駆動される構成を採用することで、仕切弁を全開から全閉、又は全閉から全開へ開閉駆動するために駆動源を運転しても、放散弁は全閉から全開、又は全開から全閉へ必要量だけ駆動され、その後は放散弁が回転できないため、トルクリミッターはそのリミットトルクを超えて空転させることができるので、減速機を用いずに、仕切弁と放散弁を同一の駆動源で開閉駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の複合バルブの全体正面図
【図2】図1のB−B線断面側面図
【図3】本発明のトルクリミッターの断面図
【図4】図3の要部拡大図
【図5】複合バルブの設置例図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態を説明する。図1乃至図4は本実施形態を示す。この複合弁は、図5に示すような製鉄所などの熱風炉1に可燃ガスを導入するガス導入管2に適用され、熱風炉1の直前に設けられる仕切弁である第二のバルブ4と、ガス導入管2を遮断した際に内部の可燃ガスを放散する為に分岐管6に設けた放散弁5とからなる。
【0014】
第二のバルブ4はその熱風炉1とは反対側に設置する第一のバルブ3とともに、可燃ガスの熱風炉1への導入および停止の指令により、ガス導入管2を開閉するために設置される。第一のバルブ3はガス可燃ガスを確実に遮断するため、2枚弁体の仕切弁とされている。第二のバルブ4はガス導入管2の遮断時にガス導入管2を遮断時に行う熱風炉1の送風工程中のガス導入管2への空気の逆流を防ぎ、その高圧を受けると共に、遮断する時に上流側のガスへの引火をより安全に防止するため、第一のバルブ3の遮断以前にその熱風炉側でガス導入管2を遮断する仕切弁である。
【0015】
図1乃至図2に示すように、仕切弁4(以下単に仕切弁と言う場合は第二のバルブを指す)はガス導入管2を接続する弁箱41と、弁箱内部で上下動しガス導入管2を遮断する図示しない弁体と、弁体の上部に一端を固定され他端を弁箱上部に設けた弁棒挿入孔を通過して弁箱外部に突出させた弁棒42と、弁棒42を上下動する弁駆動部43からなり、弁棒42を弁駆動部43で上端(図2の点線位置X)まで引き上げることでガス導入管2を全開とし、弁棒42を下端(図2の実線位置Y)まで引き下げることでとガス導入管2を遮断し全閉とする。
【0016】
弁棒42はその上端にガス導入管2と平行に伸びるT字部42aを有し、弁駆動部43はモータ43aと、モータにより回転されるモータスプロケット43bと、モータスプロケット43bに巻き掛けられ、両端を弁棒2のT字部42bに固着されたチェーン43cと、チェーン43cを弁棒42の上下動経路延長線上に誘導する従動スプロケット43d、43eとからなり、モータ43aによるモータスプロケット43bの回転運動を従動スプロケット43d、43eによってチェーン43cの上下運動に変換し、弁棒42を上下動するようにされている。なお各スプロケット43b、43d、43eは簡単のため図中では円で示すが、実際は歯車状であり、チェーン43cは点線で示すが、実際は各スプロケットに噛み合う金属のローラーチェーンである。
【0017】
ここで弁棒42をバランスよく上下動できるように、モータスプロケット43b及びチェーン43c、上下の従動スプロケット43d、43eはガス導入管2と平行な方向の弁箱41の両側にそれぞれ設けられ、チェーン43cは弁棒42のT字部42aの両端に固着され、弁棒42と弁棒に固着された弁体はスムーズに上下動することができる。
【0018】
なお、図示と詳細な説明は省略するが、本実施形態の仕切弁4の弁駆動部43はチェーンが各スプロケット43b、43d、43eから外れないようにテンショナーも有している。
【0019】
ガス導入管2の仕切弁4の熱風炉1とは反対側には分岐管6が接続されている。放散弁5は仕切弁4の弁駆動部43の近傍に位置するように、分岐管6の途中に設置されている。
【0020】
放散弁5はボール弁とされ、分岐管6を接続する弁箱51と、内部に流体の通過を許容する孔が開けられた球体で、弁箱内部にあり、その回転により分岐管6を遮断する図示しない弁体と、弁体にその一端を固定され他端は弁箱外部に突出させた弁棒52と、放散弁スプロケット53と、放散弁スプロケット53から回転が入力され弁棒52を回転するトルクリミッター54とからなる。なお放散弁スプロケット53は図中では簡単のため円としているが、実際はチェーン43cと噛み合う歯車状である。
【0021】
詳細説明は省略するが、放散弁の弁棒52は、弁体の孔がその一次側と二次側の流路を連通し流路を開放する位置となる全開状態と、全開状態から図2における時計回り方向(矢印T)に90度回転して弁体の孔が流路と垂直な方向となり流路を遮断する位置となる全閉状態の、往復回転のみ可能とされており、全開状態よりも反時計回り及び、全閉状態よりも時計回りには回転されないようにされている。
【0022】
放散弁スプロケット53は図1に示すように、仕切弁4の熱風炉1とは反対側(図1の右側)のチェーンが巻き掛けられ、側面視すると図2に示すとおり、2本のチェーンは仕切弁を挟んで放散弁スプロケット53の箇所のみ異なる経路を通ることとなる。そのため、チェーンの43cの長さは異なる。
【0023】
トルクリミッター54を図3及び図4に基づいて説明する。図3はトルクリミッターの放散弁の弁棒52に垂直な面での断面図である。トルクリミッター54は、弁箱51に回転不能に固定された円筒状のボディー541と、放散弁スプロケット53と固定されて共回りする輪状の外輪子542と、弁棒52が挿通され共回りするようにキー部544を設けた輪状の内輪子543と、外輪子542と内輪子543の間の伝達機構545とからなる。
【0024】
図4にその要部を拡大して示すように、外輪子542はその内周に窪み部542aを90度毎に4カ所有し、内輪子543はその外周に円筒状のバネ収容部543aを90度毎に4カ所有している。
【0025】
伝達機構545は内輪子のバネ収容部543aに圧縮状態で収容される圧縮バネ545aと、圧縮バネ545aの反発力を受けるボール座545bと、ボール座545bを介して圧縮バネ545aにより外輪子542に押さえつけられるボール545cと、円筒状でその側面には90度おきにボール545c同士の相対的な移動を規制する丸穴545dが空いる規制部材545eとからなる。
【0026】
圧縮バネ545aとボール座545bとボール545cは、バネ収容部543aに対応して90度毎に4つ配置される。
【0027】
以下、本実施形態の作用を説明する。図5に示すような熱風炉へのガス導入管への複合弁の設置例において、熱風炉1に可燃ガスを導入中は、仕切弁4は全開状態である。このとき仕切弁4の弁棒42は図2に点線でしめす位置(X)である。また放散弁は全閉状態であり、弁棒52は図2における時計回り方向(矢印T)の限界位置である。
【0028】
可燃ガスの導入を中断する場合はモータスプロケット43bをモータ43aで回転させ、仕切弁4の弁棒42が図2に実線で示す位置(Y)である全閉位置となるまで、チェーンを図2で反時計回り方向(矢印H)に駆動する。
【0029】
その際、放散弁5は、放散弁スプロケット53が図2で半時計回り方向(矢印H)に回転すると、トルクリミッター54の外輪子542も共回りし、ボール545cが外輪子542の窪み部542aに到達すると、圧縮バネ545aの力でボール545cが窪み部542aに押さえつけられて、外輪子542と内輪子543が共回りする伝達状態となり、内輪子543とキー部544で共回りするようにされた弁棒に固着された弁体も、図2で半時計回り方向(矢印H)に回転して、全開状態に達する。
【0030】
その後も仕切弁4が全閉となるまで放散弁スプロケット53は回転するが、放散弁5の弁棒52はそれ以上回転しないため、トルクリミッター54のボール545cは圧縮バネ545aを圧縮して、窪み部542aを脱出し、放散弁スプロケット53は弁棒52と相対的に空転して、放散弁5は全開状態にとどまることができる。つまり仕切弁4は全閉、放散弁5は全開に駆動される。
【0031】
さらに、可燃ガスの導入を再開する場合は、詳細な説明は省略するが上記と逆のステップで、仕切弁4は全開、放散弁5は全閉に駆動することができる。
【0032】
本実施形態は放散弁をボール弁としたが、本発明の放散弁はバタフライ弁や他の種類のバルブとしてもよい。
【0033】
本発明のトルクリミッターは本実施形態のものにかぎらず、放散弁の駆動及び、空転状態での仕切弁の駆動が可能なものであればよい。
【符号の説明】
【0034】
1 熱風炉
2 ガス導入管
3 第一のバルブ
4 第二のバルブ(仕切弁)
5 放散弁
6 分岐管
41 仕切弁弁箱
42 仕切弁弁棒
42a T字部
43 弁駆動部
43a モータ
43b モータスプロケット
43c チェーン
43d、43e 従動スプロケット
51 放散弁弁箱
52 放散弁弁棒
53 放散弁スプロケット
54 トルクリミッター
541 ボディー
542 外輪子
542a 窪み部
543 内輪子
543a バネ収容部
544 キー部
545 伝達機構
545a 圧縮バネ
545b ボール座
545c ボール
545d 丸孔
545e 規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱風炉へ可燃ガスを導入するガス導入管の熱風炉直前に設けられ、可燃ガスの導入を停止した時に、熱風炉から前記ガス導入管への熱風炉内ガスの逆流を防止する仕切弁と、前記ガス導入管の前記仕切弁の上流側のガスを大気へ放散する放散弁を有する複合バルブにおいて、前記仕切弁と前記放散弁は共通の駆動源で開閉駆動され、前記放散弁の弁体は全開と全閉の間の往復回転のみ可能とされ、前記放散弁はトルクリミッターを介して前記駆動源で開閉駆動されることを特徴とする、複合バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−68240(P2013−68240A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205679(P2011−205679)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】