説明

複合フィルタ及びこれを用いた複合フィルタ構造体

【課題】本発明の目的は、原価コストを上昇させずに、優れた難燃性及び耐熱性を有する複合フィルタを提供することである。
【解決手段】本発明は、複数の繊維層を重ねて構成された積層布からなる複合フィルタにおいて、前記積層布の少なくとも最外繊維層がレーヨン繊維糸から形成されるレーヨン層であり、前記積層布の中間層の1層以上がナイロン繊維糸から形成されるナイロン層及び/又はエステル繊維糸から形成されるエステル層であり、前記レーヨン層の表面に難燃剤が担持される及び/又は前記レーヨン繊維糸が難燃剤を含有する複合フィルタ及びこれを用いた複合フィルタ構造体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台所、調理場、厨房などに設けられたレンジフードや換気扇等に配設されるフィルタに関し、更に詳細には、複数の繊維層を重ねて構成された積層布からなる複合フィルタ及び複合フィルタ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
レストランの厨房や各家庭の台所に配設されるレンジフードや換気扇には、フィルタが装着されており、排気中の油分や塵埃等の汚れをフィルタで捕集し、このフィルタを交換することにより、レンジフードや換気扇の汚れを除去することが可能である。このようなフィルタは、売切商品として販売されると共に、装着ホルダと一体に構成されたフィルタ構造体等がレンタル商品として広範囲に実用化されている。
【0003】
特開平11−319443号公報(特許文献1)には、レンジフード用のフィルタの難燃性を高めるべく、ガラス繊維からなるフィルタに塗布される難燃剤組成等についての検討がなされている。即ち、特許文献1において、フィルタの素材には、高温の油分による変質・燃焼を防止するためにガラス繊維が使用され、捕集された油剤の燃焼を防止するために、フィルタ表面に難燃剤が担持されている。しかしながら、フィルタに担持される難燃剤が長期の使用によって剥落する傾向にあった。難燃剤が剥落すると、繊維表面に付着した油分が引火により燃焼する危険性を有することである。つまり、バインダ剤を繊維に強固に結合させ、同時に難燃剤を繊維表面に強固に担持させる技術の開発が課題となっていた。
【0004】
本発明者らの一部は、難燃剤と難燃剤付着用バインダ剤を混ぜた混合剤の混合条件を鋭意検討した結果、ガラス繊維同士が固く結合した表面繊維層及び裏面繊維層の層間に、ガラス繊維同士が柔軟に結合した中間繊維層を介在させた3層繊維構造を有した複合フィルタにおいて好適な難燃剤付着状態を得ることのできる混合条件を見出すことに成功しており、特開2010−221177号公報(特許文献2)に開示されている。
図6は、特許文献2に記載される従来の複合フィルタの概略図である。表面繊維層120及び裏面繊維層128の層間に、ガラス繊維同士が柔軟に結合した中間繊維層124を介在させた3層繊維構造を有した複合フィルタにおいて、前記表面繊維層120及び前記裏面繊維層128に、難燃剤とバインダ剤の混合剤が好適な混合条件で吹付塗着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−319443号公報
【特許文献2】特開2010−221177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2のように、難燃剤を使用する場合、難燃剤の塗布量は多ければ多いほど難燃性や耐熱性は向上するものの、原料コストを上昇させていた。更に、特許文献2の複合フィルタにおいて、担持される難燃剤が長期の使用によって一部が剥落する等により、難燃性や耐熱性が低下することがあり、フィルタを形成する繊維糸自体の耐熱性や難燃性を向上させることが課題となっていた。
【0007】
従って、本発明の目的は、原価コストを上昇させずに、優れた難燃性や耐熱性を有するフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために発明されたものであり、本発明の第1の形態は、複数の繊維層を重ねて構成された積層布からなる複合フィルタにおいて、前記積層布の少なくとも最外繊維層がレーヨン繊維糸から形成されるレーヨン層であり、前記積層布の中間層の1層以上がナイロン繊維糸から形成されるナイロン層及び/又はエステル繊維糸から形成されるエステル層であり、前記レーヨン層の表面に難燃剤が担持される及び/又は前記レーヨン繊維糸が難燃剤を含有する複合フィルタである。
【0009】
本発明の第2の形態は、第1の形態において、前記最外繊維層の前記レーヨン層と前記中間層の前記ナイロン層及び/又は前記エステル層を結合させる結合繊維部又は結合繊維構造を有する複合フィルタである。
【0010】
本発明の第3の形態は、第1又は第2の形態において、前記積層布を1段以上に重畳する複合フィルタである。
【0011】
本発明の第4の形態は、第3の形態において、前記重畳が前記積層布を1回以上折り返して形成された袋状フィルタからなる複合フィルタである。
【0012】
本発明の第5の形態は、第1〜4のいずれかの形態において、前記積層布が表編地と裏編地を有する編物からなり、前記レーヨン繊維糸により前記表編地と前記裏編地を編成して前記レーヨン層を形成し、前記ナイロン繊維糸及び/又は前記エステル繊維糸により前記表編地と前記裏編地を結合して前記ナイロン層及び/又は前記エステル層を形成した複合フィルタである。
【0013】
本発明の第6の形態は、第1〜5のいずれかの形態において、前記レーヨン繊維糸が複数のレーヨン単繊維から形成され、前記レーヨン単繊維の繊維径が1dtex〜10dtexの範囲にあり、前記レーヨン繊維糸を形成するレーヨン単繊維のフィラメント数が20〜100fである複合フィルタである。
【0014】
本発明の第7の形態は、第1〜6のいずれかの形態において、前記ナイロン繊維糸及び/又は前記エステル繊維糸が単繊維であり、前記ナイロン繊維糸及び/又は前記エステル繊維糸の繊維径が20dtex〜85dtexの範囲にある複合フィルタである。
【0015】
本発明の第8の形態は、第1〜7のいずれかの形態において、前記積層布を形成する前記ナイロン繊維糸及び/又は前記エステル繊維糸の質量Mに対する前記レーヨン繊維糸の質量MRの比率である質量比MR/Mが0.1〜0.7の範囲にある複合フィルタである。
【0016】
本発明の第9の形態は、第1〜8のいずれかの形態の複合フィルタとこれを張設して保持する枠体とからなる複合フィルタ構造体である。
【0017】
本発明の第10の形態は、第9の形態において、前記複合フィルタが前記積層布を1回以上折り返して形成された袋状フィルタであり、前記袋状フィルタに前記枠体が挿入される複合フィルタ構造体である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の形態によれば、複数の繊維層を重ねて構成された積層布からなる複合フィルタにおいて、前記積層布の少なくとも最外繊維層がレーヨン繊維糸から形成されるレーヨン層であるから、優れた耐熱性を有している。即ち、レーヨンが有する優れた耐熱性を複合フィルタに付与することができる。更に、前記レーヨン層の表面に難燃剤が担持される及び/又は前記レーヨン繊維糸が難燃剤を含有するから、優れた耐熱性を有すると共に、難燃性を有し、高温の排気や油分等により、複合フィルタが損傷することや変形することを防止することができる。前記レーヨン層の表面部分が炭化することにより、複合フィルタ全体が燃焼することを防ぐことができる。
更に、前記積層布の中間層の1層以上がナイロン繊維糸から形成されるナイロン層であるから、洗浄しても腰が強く、形状を保持することができる。即ち、ナイロンは、優れた弾性や復元力を有しており、水で洗浄しても複合フィルタの形状を保持することができる。また、エステルは、洗浄時の収縮率が極めて小さく、より安定して複合フィルタの形状を保持することができる。
従って、複合フィルタがレンタル商品の場合など、前記レーヨン層が高温の排気や油分等により加熱されても、炭化されて燃焼することを防止することができると共に、洗浄時に変形することが殆ど無いことから、何回も複合フィルタを使用することができ、コストを低減化することができる。
前記最外繊維層や前記中間層は、織物、編物及び不織布から適宜に形成される繊維構造を選択することができる。
【0019】
本発明の第2の形態によれば、前記最外繊維層の前記レーヨン層と前記中間層の前記ナイロン層を結合させる結合繊維部又は結合繊維構造を有するから、前記最外繊維層の前記レーヨン層と前記中間層を強固に結合させることができる。例えば、最外繊維層や前記中間層が不織布から形成される場合、前記結合繊維部には、複数の繊維層を結合させるバインダ剤を用いることができる。または別部材により複数の繊維層を挟み込んでも良い。更に、前記結合繊維構造としては、ダブルラッセルなどの立体織物や編物等の構造を用いることができる。
【0020】
本発明の第3の形態によれば、前記積層布を1段以上に重畳するから、複合フィルタの厚みが増大し、より優れた油分や塵埃の保持捕集性能を複合フィルタに付与することができる。重畳する段数は、複合フィルタが配置される環境に応じて、適宜に選択することができる。
【0021】
本発明の第4の形態によれば、前記重畳が前記積層布を1回以上折り返して形成された袋状フィルタからなるから、比較的簡単に前記積層布を重畳させることができ、且つ袋状フィルタの開口部以外を結合して所望の厚さを有する複合フィルタを容易に形成することができる。更に、袋状フィルタの開口部からフィルタの形状を保持する種々の部材を挿入することができる。
【0022】
本発明の第5の形態によれば、前記積層布が表編地と裏編地を有する編物からなり、前記レーヨン繊維糸により前記表編地と前記裏編地を編成して前記レーヨン層を形成し、前記ナイロン繊維糸及び/又は前記エステル繊維糸により前記表編地と前記裏編地を結合して前記ナイロン層及び/又は前記エステル層を形成するから、最外繊維層であるレーヨン層と中間層であるナイロン層及び/又はエステル層をより強固に結合させることができる。更に、複合フィルタに編物の好適な伸縮性を付与することができる。
【0023】
本発明の第6の形態によれば、前記レーヨン繊維糸が複数のレーヨン単繊維から形成され、前記レーヨン単繊維の繊維径が1dtex〜10dtexの範囲にあり、前記レーヨン繊維糸を形成するレーヨン単繊維のフィラメント数が20〜100fであるから、油蒸気や塵埃の保持捕集率と繊維フィルタ前後の圧力損失が好適なバランスを有している。即ち、油蒸気・塵埃を高効率に保持捕集できると共に、好適に排気を行うことができる。
嵩高と目付を一定にして前記繊維径を変化させたとき、前記レーヨン単繊維の繊維径が1dtex未満では、圧力損失が増大し過ぎることが分かっている。また、前記レーヨン単繊維の繊維径を10dtexより大きくなると、保持捕集性能が大幅に低下する結果が得られている。また、前記レーヨン繊維糸を形成するレーヨン単繊維のフィラメント数が20f未満の場合、保持捕集性能が低下し、フィルタ製品として用いることができなくなる。前記フィラメント数が100fを越えると、圧力損失が増大し過ぎるという結果が得られている。
更に、「繊維径×フィラメント数」を「トータルdtex」としたとき、トータルdtexは、20〜200dtexの範囲にあることが好ましく、40〜150dtexの範囲にあることがより好ましい。
【0024】
本発明の第7の形態によれば、前記ナイロン繊維糸及び/又は前記エステル繊維糸が単繊維であり、前記ナイロン繊維糸及び/又は前記エステル繊維糸の繊維径が20dtex〜85dtexの範囲にあるから、複合フィルタが好適な腰の強さ、即ち、好ましい弾性や復元力を有する、もしくは洗浄時の収縮率が極めて小さく、より安定して複合フィルタの形状を保持することができる。
嵩高と目付を一定にして前記繊維径を変化させたとき、前記ナイロン繊維糸の繊維径が20dtex未満では、弾性力が小さすぎるという結果が得られている。更に、前記ナイロン繊維糸の繊維径を85dtexより大きくなると、柔軟性や伸張性が低下し過ぎるという結果が得られている。前記エステル繊維糸の場合、前記繊維径が20dtex未満では、洗浄時における収縮の抑制効果が十分に得られなくなり、前記繊維径を85dtexより大きくなると、柔軟性や伸張性が低下し過ぎるという結果が得られている。
前記ナイロン繊維糸及び/又は前記エステル繊維糸の繊維径は、35dtex〜75dtexの範囲にあることが好ましく、45dtex〜65dtexの範囲にあることがより好ましい。
【0025】
本発明の第8の形態によれば、前記積層布を形成する前記ナイロン繊維糸及び/又は前記エステル繊維糸の質量Mに対する前記レーヨン繊維糸の質量MRの比率である質量比MR/Mが0.1〜0.7の範囲にあるから、洗浄したときの腰の強さや洗浄時における好適な収縮率を保持することができ、且つ好適な耐熱性や難燃性を複合フィルタに付与することができる。質量比MR/Mが0.1未満では、レーヨン層が薄くなり、好適な耐熱性や難燃性を付与できないという試験結果が得られている。更に、質量比MR/Mが0.7を越えると、ナイロン繊維糸の場合、腰の強さが低下し、エステル繊維糸の場合、洗浄時における収縮率が大きくなり、形状を保持することが困難になる。さらに、質量比MR/Mは、0.2〜0.6の範囲にあることが好ましく、0.3〜0.5の範囲にあることがより好ましい。
【0026】
本発明の第9の形態によれば、第1〜8のいずれかの形態の複合フィルタとこれを張設して保持する枠体とからなるから、複合フィルタの形状が保持され、複合フィルタ構造体を交換することにより、複合フィルタの交換をより簡単に行うことができる。
【0027】
本発明の第10の形態によれば、前記複合フィルタが前記積層布を1回以上折り返して形成された袋状フィルタであり、前記袋状フィルタに前記枠体が挿入されるから、枠体により複合フィルタの形状が保持されると共に、枠体を取り出すことにより、複合フィルタを簡単に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明に係る複合フィルタの概略図である。
【図2】図2は、本発明に係る表編地の構造を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明に係る袋状の複合フィルタと枠体の説明図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施形態に係る袋状の複合フィルタ2及びそれを用いた複合フィルタ構造体1の概略図である。
【図5】図5は、本発明に係る袋状の複合フィルタ構造体をアルミ外枠に設置する説明図である。
【図6】図6は、従来の複合フィルタの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明に係る複合フィルタ2の概略図である。図1の複合フィルタ2は、開口部6が設けられた袋状の構造を有しており、第1積層布4と第2積層布5が重畳され、縫い代部16において縫い合わされている。この縫い代部16は、帯状部材を縫合したものであり、スパンデックスやウーリーナイロンが用いられている。同様に、縫い代部17も上述の帯状部材が用いられている。前記第1積層布4と第2積層布5は3層構造を有しており、後述する。前記開口部6には、綴じ代部11が設けられ、この綴じ代部11に取り付けられた面ファスナ12と開口部端部10に設けられた面ファスナ12を係合させるにより、袋状の複合フィルタ2を閉じた状態で保持することができる。また、複合フィルタ2の両側には、後述する枠体の突起を突出させる突出口18が2箇所づつ設けられている。
【0030】
図2は、本発明に係る積層布の構造を示す概略図である。(2A)は、積層布を構成する表編地20の表面は、地編糸22により、図のような構造を有している。(2B)に示すように、積層布は、表編地20と裏編地28を有する布帛からなり、レーヨン繊維糸からなる地編糸22及び地編糸30により、表編地20及び裏編地28がそれぞれ編成され、最外繊維層のレーヨン層が形成されている。更に、ナイロン繊維糸からなる結合糸26により表編地20と裏編地28を結合してナイロン層の中間層24が形成されている。柄23の形状は、菱型に限定されるものではなく、六角形など種々の形状に形成してもよい。
【0031】
図3は、本発明に係る袋状の複合フィルタ2と枠体32の説明図である。(3A)に示す枠体32は、弾性部材から形成され、突起34が4箇所設けられている。この枠体32は、袋状の複合フィルタ2における開口部6から挿入される。(3B)に示すように、前記各突起34は、各突出口18から突出し、後述する排気口に係止される。尚、枠体32が弾性部材から形成されることにより、簡単に枠体32を脱着できると共に、排気口に係止させることができる。さらに、(3A)の面ファスナ12、12を係合し、(3B)に示すように、綴じ代11を閉じて、枠体32を袋状の複合フィルタ2内に固定し、複合フィルタ構造物が構成されている。
【0032】
図4は、本発明の他の実施形態に係る袋状の複合フィルタ2及びそれを用いた複合フィルタ構造体1の概略図である。(4A)に示した袋状の複合フィルタ2では、図1に示した袋状の複合フィルタ2と異なり、図1の綴じ代部11が設けられていない。(4A)の袋状の複合フィルタ2では、縫い代部17の開口部内面8、9に対向する3対の面ファスナ12が取り付けられている。開口部6に図3の(3A)に示した枠体34を挿入することにより、(4B)に示す複合フィルタ構造体1が構成される。
【0033】
図5は、本発明に係る袋状の複合フィルタ構造体1をアルミ外枠36に設置する説明図である。(5A)に示すように、アルミ外枠36には、上下に嵌め込み突条38とガイド部39が設けられ、更に、ガイド部40、44、46が設けられている。前記嵌め込み突条38とガイド部39の間には、図3に示した突起34が嵌め込まれ、図5の(5B)に示すように、複合フィルタ2に前記枠体32を挿入した複合フィルタ構造体1が取付けられている。(5B)に示すように、複合フィルタ構造体1には、矢印の向きに排気42が通過し、排気42に含まれる油蒸気や塵埃が除去される。アルミ外枠36に複合フィルタ構造体1を取付け、台所や調理場等に配設することができる。
【0034】
【表1】

【0035】
表1は、積層布を形成するナイロン繊維糸の質量Mに対するレーヨン繊維糸の質量MRの比率である質量比MR/Mと、洗浄後の腰の強さ及び耐熱性を評価したものである。二重丸◎は、優れた性能を有するもの、丸〇は製品として使用可能な性能を有するもの、三角△は、製品として使用することが困難なものとして評価している。洗浄後の腰の強さは、水で洗浄し、評価している。捕集性能は、図5に示した排気口に袋状の複合フィルタを配置して、油蒸気を排気して評価している。表1に示すように、質量比MR/Mが0.7を越えると、製品として利用できない程度に、洗浄時後の腰の強さが低下している。また、質量比MR/Mが0.1未満となると、捕集性能が製品として利用できない程度に低下している。
また、表には示していないが、ナイロン繊維糸の換わりにエステル繊維糸を用いた場合、前記質量比MR/Mが0.7を越えると、洗浄時における収縮の抑制効果が十分に得られなくなっている。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、台所、調理場、厨房などに設けられたレンジフードや換気扇等に配設される複合フィルタに関し、優れた耐熱性を有する複合フィルタを提供することができる。前記積層布の少なくとも最外繊維層がレーヨン繊維糸から形成されるレーヨン層であるから、優れた耐熱性を有している。即ち、レーヨンが有する優れた耐熱性を複合フィルタに付与することができる。更に、前記レーヨン層の表面に難燃剤が担持される及び/又は前記レーヨン繊維糸が難燃剤を含有するから、優れた耐熱性を有すると共に、難燃性を有し、高温の排気や油分等により、複合フィルタが損傷することや変形することを防止することができる。前記レーヨン層の表面部分が炭化することにより、複合フィルタ全体が燃焼することを防ぐことができる。
更に、前記積層布の中間層の1層以上がナイロン繊維糸から形成されるナイロン層であるから、洗浄しても腰が強く、形状を保持することができる。即ち、ナイロンは、優れた弾性や復元力を有しており、水で洗浄しても複合フィルタの形状を保持することができる。また、エステルは、洗浄時の収縮率が極めて小さく、より安定して複合フィルタの形状を保持することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 複合フィルタ構造体
2 複合フィルタ
4 第1積層布
5 第2積層布
6 開口部
8 開口部内面
9 開口部内面
10 開口部端部
11 綴じ代部
12 面ファスナ
16 縫い代部
17 縫い代部
18 突出口
20 表編地
22 地編糸
24 中間層
26 結合糸
28 裏編地
30 地編糸
32 枠体
34 突起
36 アルミ外枠
38 嵌め込み突条
39 ガイド部
40 ガイド部
44 ガイド部
46 ガイド部
104 複合フィルタ
120 表面繊維層
124 中間繊維層
128 裏面繊維層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維層を重ねて構成された積層布からなる複合フィルタにおいて、前記積層布の少なくとも最外繊維層がレーヨン繊維糸から形成されるレーヨン層であり、前記積層布の中間層の1層以上がナイロン繊維糸から形成されるナイロン層及び/又はエステル繊維糸から形成されるエステル層であり、前記レーヨン層の表面に難燃剤が担持される及び/又は前記レーヨン繊維糸が難燃剤を含有することを特徴とする複合フィルタ。
【請求項2】
前記最外繊維層の前記レーヨン層と前記中間層の前記ナイロン層及び/又は前記エステル層を結合させる結合繊維部又は結合繊維構造を有する請求項1に記載の複合フィルタ。
【請求項3】
前記積層布を1段以上に重畳する請求項1又は2に記載の複合フィルタ。
【請求項4】
前記重畳が前記積層布を1回以上折り返して形成された袋状フィルタからなる請求項3に記載の複合フィルタ。
【請求項5】
前記積層布が表編地と裏編地を有する編物からなり、前記レーヨン繊維糸により前記表編地と前記裏編地を編成して前記レーヨン層を形成し、前記ナイロン繊維糸及び/又は前記エステル繊維糸により前記表編地と前記裏編地を結合して前記ナイロン層及び/又は前記エステル層を形成した請求項1〜4のいずれかに記載の複合フィルタ。
【請求項6】
前記レーヨン繊維糸が複数のレーヨン単繊維から形成され、前記レーヨン単繊維の繊維径が1dtex〜10dtexの範囲にあり、前記レーヨン繊維糸を形成するレーヨン単繊維のフィラメント数が20〜100fである請求項1〜5のいずれかに記載の複合フィルタ。
【請求項7】
前記ナイロン繊維糸及び/又は前記エステル繊維糸が単繊維であり、前記ナイロン繊維糸及び/又は前記エステル繊維糸の繊維径が20dtex〜85dtexの範囲にある請求項1〜6のいずれかに記載の複合フィルタ。
【請求項8】
前記積層布を形成する前記ナイロン繊維糸及び/又は前記エステル繊維糸の質量Mに対する前記レーヨン繊維糸の質量MRの比率である質量比MR/Mが0.1〜0.7の範囲にある請求項1〜7のいずれかに記載される複合フィルタ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の複合フィルタとこれを張設して保持する枠体とからなることを特徴とする複合フィルタ構造体。
【請求項10】
前記複合フィルタが前記積層布を1回以上折り返して形成された袋状フィルタであり、前記袋状フィルタに前記枠体が挿入される請求項9に記載の複合フィルタ構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−210597(P2012−210597A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78042(P2011−78042)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000133445)株式会社ダスキン (119)
【Fターム(参考)】