説明

複合吸着剤ビーズ、その製造法、ガス分離法およびガス吸着床

複合吸着剤ビーズが、少なくとも1つの無機物質を含む多孔性および非吸着性コア、ならびに、コア表面上の、多孔性吸着性物質を含有する少なくとも1つの吸着性層を含む多孔性および吸着性シェルを有する。コアは、好ましくは、周囲凝集吸着剤粒子の平均粒度と同じかまたはそれより小さい平均粒度を有する凝集無機粒子を含む。ビーズは、好ましくは、非焼結コアおよび吸着性層を共に焼成することによって製造される。ビーズを吸着カラムの出口端で使用して、性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス混合物から少なくとも1つのガス成分を分離するための複合吸着剤ビーズに関し、限定するものではないが、特に、PSAおよび/またはTSA法を使用するガス精製法に適用できる。特に、本発明は、向上した複合吸着剤ビーズ、複合吸着剤ビーズの製造法、ならびに複合吸着剤ビーズを使用するガス分離法および吸着剤床を提供する。
【背景技術】
【0002】
ガスの分離および精製のための吸着剤の適用は、多くの化学工程にとって、ますます重要になっている。吸着ガス分離法において、ガス混合物を吸着剤に接触させる。1つのガス成分が優先的に吸着され、それによって、それほど強く吸着されない成分に富む気相を生じる。吸着剤が飽和した際に、圧力を下げ、および/または温度を上げ、それによって、優先的に吸着されたガス成分が放出されて、優先的に吸着された成分に富む脱着ガス流を生じる。
【0003】
分離法は、吸着剤粒子の物質移動速度および/または吸着容量を増加させることによって、向上させることができる。ガス分離法の性能を決定する他の重要な要素は、吸着剤粒子の物理的強度および密度である。吸着剤粒子が充分な機械的強度を有していなければ、吸着剤粒子が高いガス速度、圧力変化および温度変化にさらされる吸着処理中に、吸着剤粒子が崩壊しうる。さらに、吸着剤密度が、吸着工程の特定のガス速度および粒径に対して小さすぎる場合、吸着性物質が流動化し、ガス流と共に分離工程から出て行きうる。従って、有用な吸着性物質は、それらが砕け、圧力低下の増加を生じるのを防止するために、良好な機械的(破砕)強度を保持しつつ、良好な物質移動特性を示すべきである。さらに、それらは流動化に抵抗性であるべきであり、それは物質の高い嵩密度(吸着剤の重量/吸着容器の単位体積)によって補助される。
【0004】
そのような方法のために、複合吸着剤ビーズがFR−A−2794993から既知である。これらの複合吸着剤ビーズの不利点は、それらが0.1mmより大きい粒子を分離する篩において、焼結クレーの大きい塊を破砕し篩にかけることによって得られる焼結クレー粒子で開始して、回転パンアグロメレーターで製造されるので、それらが100μmの焼結クレー粒子を含むことである。従って、特に、複合吸着剤ビーズの平均粒度が小さい場合、例えば数百ミクロンまたはそれ以下である場合、非吸着性コアは低い真球度、低い表面積および/または高い粒度分布比D90/D50を有する。複合吸着剤ビーズのコアの破砕強度、表面積または粒度分布に関して、何ら記載されていない。
【0005】
EP−A−1080771は、非多孔性および非吸着性物質、例えば焼結クレー、例えばカオリン、またはアルミナを含む内部コア、および吸着性物質を含む少なくとも1つの外層を有する複合吸着剤粒子を使用するガス分離法を記載している。非多孔性および非吸着性物質のコアは全て、不透過性である。それらの複合ビーズを使用して、ビーズの粒度を減少させずに吸着工程における物質移動を向上させることができる。非多孔性コアを有する複合ビーズは、不活性コアを有し、一般に、周知の市販均質吸着剤ビーズと少なくとも同量の不活性無機結合物質をシェル中に含有するので、均質吸着剤ビーズと比較して低い活性吸着剤含有量を有する。しかし、より低い吸着容量という不利点は、向上した物質移動速度によって相殺される。向上した物質移動速度は、粒子中のガス拡散距離が減少することによるものであり、即ち、吸着剤ビーズのシェル(活性吸着剤)を通る拡散距離が、均質ビーズにおける拡散距離(これは粒子半径である)より短い。非多孔性コアを有する複合ビーズは、適用される200℃〜600℃の高温での焼結および活性化工程中に外層がひび割れする傾向があるという課題を有する。これは、非多孔性物質(例えば、ケイ砂、気泡ガラスまたは予備焼結無機凝集物)のコアが、多孔性吸着剤外層と異なる熱膨張率を有することによるものと考えられる。
【0006】
活性吸着性物質の破砕強度は、無機結合物質を添加することによって向上させることができるが、これは、吸着容量をさらに減少させ、従って、複合吸着剤粒子の性能を減少させる。不活性コアにより、既に低い吸着容量を有している複合吸着剤ビーズに関して、できるだけ高い吸着容量を維持するために、少ない無機結合剤を使用することが望ましい。
【0007】
EP−A−1080771において、複合吸着剤の真球度および粒度分布のいずれに関しても、何ら記載されていない。
【0008】
中実不透過性非多孔性コアを有する複合ビーズの他の課題は、それらを小さく製造することの難しさに関する。0.7mm未満の大きさおよび狭い粒度分布を有する中実コアを容易に得ることができないので、1mmまたはそれ以下の平均粒径を有する複合ビーズを製造することは極めて困難である。
【0009】
吸着処理における物質移動性能の重要性は周知である。圧力スイング吸着ガス分離法において、より高い物質移動性能を有するより小さい吸着剤粒子を、吸着カラムの出口(製品)端に配置することができ、一方、より大きい吸着剤粒子は供給端に配置される(例えば、US−A−4964888参照)。この方法の重大な欠点は、稼働中に、小さい粒子がカラム内により高い圧力低下を生じることである。このより高い圧力低下は、吸着工程の性能を低下させ(再生の間のより高い圧力は全体的性能を損なわせる)、かつ、より小さい粒子の流動化を生じうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】FR−A−2794993
【特許文献2】EP−A−1080771
【特許文献3】US−A−4964888
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、先行技術の不利点を克服し、対応する均質吸着剤と比較して増加した物質移動性能、増加した嵩密度を有し、かつ/または充分に高い比(即ち、断面)破砕強度、ならびに製造またはガス分離処理中のより低いひび割れ傾向を有する複合吸着剤ビーズを提供することであり、該ビーズは広範囲の粒度で提供しうる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この技術的課題は、多孔性および非吸着性コアを有する複合吸着剤ビーズを形成することによって解決される。
【0013】
技術的課題は、下記によって解決される:請求項1に記載の特徴を有する複合吸着剤ビーズ;請求項11および12に記載の特徴を有する複合吸着剤ビーズの製造法;請求項14に記載の乾燥多孔性および非吸着性コア;請求項15に記載の特徴を有するガス分離法;請求項16に記載の特徴を有する複合吸着剤ビーズの使用;および請求項17に記載の特徴を有する吸着容器。他の従属請求項は、好ましい実施形態を記載している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】複合ビーズにおけるコア物質の総合多孔度の関数として、種々の吸着剤の窒素拡散率のプロットを示す図である。
【図2】コア物質の多孔度の関数として、粒子破砕強度のプロットを示す図である。
【図3】窒素拡散率に対する、コアの窒素細孔容積のプロットを示す図である。
【図4】層状床における供給速度に対する、酸素製造速度のプロットを示す図である。
【図5】酸素回収率に対する、酸素製造のプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第一の態様によれば、本発明は、ガス混合物から少なくとも1つのガス成分を分離するための複合吸着剤ビーズを提供し、該吸着剤ビーズは、少なくとも1つの無機物質を含む少なくとも1つの多孔性および非吸着性コア、ならびに、コア表面上の、多孔性吸着性物質を含有する少なくとも1つの層を含む多孔性および吸着性シェルを有する。
【0016】
この態様の好ましい実施形態において、コアは、前記の層を形成する周囲凝集吸着剤粒子の平均粒度と同じかまたはそれより小さい平均粒度を有する凝集無機粒子を含む。
【0017】
第二の態様によれば、本発明は、第一態様の複合吸着剤ビーズの製造法を提供し、該方法は下記の工程を含む:
a) 0.1wt%〜25wt%の範囲の湿分(含水率)を有し、有機結合剤(有機バインダー)を含む、乾燥多孔性非吸着性コアを製造する工程;
b) 吸着性物質を含む多孔性層を適用する工程;および
c) 少なくとも1つの加熱工程であって、それによって有機結合物質が除去される工程。
【0018】
第三の態様によれば、本発明は、第二態様の方法による複合吸着剤ビーズの製造用の中間製品として好適な、乾燥多孔性および非吸着性コアを提供し、該コアは、0.05μm〜5μmの範囲の粒度を有する凝集クレー粒子、有機結合剤、および0.1wt%〜25wt%の範囲の湿分を含む。
【0019】
第四の態様によれば、本発明は、ガス混合物から少なくとも1つのガス成分を分離するガス分離法を提供し、該方法は、下記の工程を含む:第一態様の複合吸着剤ビーズの床を含む吸着容器に、少なくとも2つのガス成分を含むガス混合物を供給する工程;および、ガス混合物から分離すべき少なくとも1つのガス成分の吸着を可能にする条件に、ガス混合物を暴露する工程。
【0020】
第五の態様によれば、本発明は、層状吸着床における、好ましくは圧力スイングまたは熱スイング吸着法における、および好ましくは床の出口端における層としての、第一態様の複合吸着剤ビーズの使用を提供する。
【0021】
第六の態様によれば、本発明は、第一態様の複合吸着剤ビーズを含む吸着床を有する吸着容器を提供する。
【0022】
第七の態様によれば、本発明は、下記の工程を含む複合吸着剤ビーズの製造法を提供する:ヒドロキシル基を有する無機物質および有機結合剤を含む非焼結コアを形成する工程;ヒドロキシル基を有する吸着性物質、有機結合剤および2〜20wt%の無機結合剤(無機バインダー)を含む層で、該コアを被覆する工程;および、該被覆コアを加熱して、該有機結合剤を除去し、該コアおよび該層を共に焼成する工程。
【0023】
文脈により特に明示されない限り、「ビーズ」という用語およびその変化形は、「粒子」およびその変化形と同義に使用される。
【0024】
本発明における多孔度は、総物質容積に対する物質中の総空隙容積(空隙容積/粒子容積)の比率(一般にパーセンテージで示される)として定義される。多孔度は、ASTM法D4284に従って水銀圧入多孔度測定法によって測定することができ、これは透過多孔度と称される場合もある。粒子容積は、粒子によって覆われている容積として定義される。空隙容積は、77Kにおける窒素吸着によって測定することができ、本明細書に記載されている実験データはそれによって測定された(cm空隙/g固体)。次に、物質の結晶密度は、水ピクノメトリーによって得ることができ、本明細書に記載されている実験データは、それによって得た(g固体/cm固体)。次に、粒子密度は、結晶密度および空隙容積から算出することができる。例えば、コアの結晶密度が2.6g固体/cm固体であり、細孔容積が0.1cm空隙/g固体であった場合、2.6g固体は0.26cm空隙を含有していた。次に、粒子または外被密度は、2.6g固体/(1cm結晶+0.26cm空隙)=2.06g固体/cm粒子によって得られる。次に、総合多孔度は、細孔容積に粒子密度を掛けることによって求められる(cm空隙/g固体×g固体/cm粒子=cm空隙/cm粒子)。
【0025】
コア物質は、多孔性、好ましくは透過性であるが、非吸着性であるべきである。本発明における非吸着性は、シェル物質と比較して、101kPaの圧力および30℃においてシェル物質より少なくとも20倍低い窒素容量を有するものとして定義される。
【0026】
本発明の複合ビーズは、先行技術の前記課題を解決するものである。床の出口における同じ大きさかまたはより大きい直径のビーズは、物質移動特性の増加に伴って使用することができる(複合ビーズシェルにおける短い拡散距離による)。同じ大きさのビーズを使用した場合、処理中に圧力低下という不利益が生じない。より大きい粒子を使用した場合、床の出口における、より速い物質移動およびより少ない圧力低下の両方が可能である。さらに、複合ビーズは、均質吸着剤粒子より高い密度を有する。このより高い密度は、主要均質吸着剤より小さい吸着剤粒子が使用された場合でも、流動化の開始前に工程におけるより速いガス速度を可能にする。これは、本発明の複合ビーズを層状床(床出口における複合吸着剤)に使用して、2つの方法のいずれにおいても吸着処理を向上しうることを意味する。第一に、主要均質吸着剤と同じ大きさかまたはより大きい直径の複合ビーズを、吸着装置の出口に配置して、物質移動を向上させ、おそらくは床圧力低下を減少させることができる。先行技術法は、床圧力低下を増加させるが、この解決策は、圧力低下を変化させずに維持するか、または圧力低下を減少させる場合さえある。第二に、本発明の複合ビーズは、均質吸着剤と比較して増加した密度により、より高い圧力低下にも拘らず流動化しない。
【0027】
本発明の複合吸着剤ビーズは、「活性」床ホールドダウン物質としても使用することができる。多くの気相吸着法において、大直径、高密度ビーズが、床の出口(上部)に配置される。これらの高密度ビーズの機能は、ガスが床を通って流れる際に、該高密度ビーズの下にある(床の供給端により近い)より小さい粒子「活性」吸着剤が、流動化または回転しないようにすることである。一般に、これらのホールドダウンビーズは、それらの下にある活性吸着剤より大きい直径であり、それらの密度を高めるために非多孔性である。それらの非多孔性により、これらの現在のホールドダウンビーズは、不純物除去のための吸着容量を有さず、従って「不活性」である。本発明の複合吸着剤ビーズは、物理的ホールドダウン(下にある活性吸着剤より大きい直径およびより高い密度)およびガス吸着用の活性吸着剤の両方として作用することができる。これは、不活性ホールドダウンビーズを、不純物用の吸着容量および高い物質移動を有する複合吸着剤ビーズで置き換えることによって、全体的吸着処理を助ける。
【0028】
これらの提示解決策は、プラント改良(plant retrofit)またはプラント脱ボトルネッキング(plant debottlenecking)において、特に重要である。既存吸着プラントの性能を向上(生産増加または回収率増加)させたい場合、既存吸着床の直径および長さによって制約される。多くの場合、より小さい粒子を床出口に添加するという先行技術の解決策は可能ではなく、なぜなら、プラントの既存操作パラメーターは、より小さい粒子の流動化を生じるからである。本解決策(同じ大きさまたはより大きい粒子および/またはより高い密度の粒子)は、先行技術解決策の流動化および圧力低下の増加を防止する。
【0029】
提示されている実施例は、コア物質が有意な多孔度(10〜50%)および細孔容積(0.05〜0.3cm/g)を有する場合、複合ビーズの物質移動性能が増すことを示している。ビーズの良好な破砕強度は、コアにおけるこれらの高い多孔度レベルにおいても維持される。実施例は、コアおよびシェル物質を共に焼成した場合に、最終複合ビーズの向上した破砕強度が得られることも示している。これは、「焼結した」コアが教示されている先行技術に反する。
【0030】
本発明ビーズの物質移動性能は、表1に示されるように、同じ粒径の周知の同等均質吸着剤より2倍以上高く、かつ、本発明の複合吸着剤ビーズは、広範囲の大きさで、破砕されることなく、工業用吸着カラムに適用されて、それらの驚異的に向上した性能を付与することが見出された。提示されている実施例は、複合ビーズを、圧力スイング法および熱スイング法の両方に使用できることも示している。実施例は、複合ビーズを、単一分離層として、または吸着容器の出口(製品)端に複合ビーズを有する層状床システムにおいて、使用できることも示している。層状床法において、均質吸着剤、および床の出口における複合吸着剤のシェルは、好ましくは、同じ吸着性物質である。
【0031】
本発明の他の重要な態様は、吸着処理の苛酷さに耐えるのに充分な機械的強度を有する吸着剤ビーズを製造できることである。中空吸着剤球体は吸着の間に良好な物質移動特性を示すが、それらは圧力または温度スイング吸着法に使用するために必要とされる機械的強度が不足している。破砕強度は、吸着剤ビーズの規格のために測定される標準パラメーターである。本出願の解釈上、比破砕強度は、複合吸着剤ビーズの断面積で割ったASTM D−4179法による破砕強度である。Zeochemによって市販されている2mm LiLSXビーズ(Zeochem(登録商標)Z10−05−03)の破砕強度は11.1Nである。対応する比破砕強度は3.5N/mmである(表1参照)。この測定に基づいて、吸着処理用のビーズの最低所望比破砕強度は、3N/mmであると考えられる。
【0032】
本発明によって、シェルが20%(wt/wt)未満の少なくとも1つの無機結合物質を含み、しかも3N/mmより高い比破砕強度を有する複合吸着剤ビーズを提供できることは驚くべきことであった。無機結合剤は、複合吸着剤ビーズの吸着容量を減少させ、従って、シェル物質中にできるだけ少ない無機結合剤を使用するのが望ましい。
【0033】
好ましい実施形態において、複合吸着剤ビーズは、560〜2000kg/m、より好ましくは600〜1500kg/m、特に800〜1500kg/mの嵩密度を有する。複合吸着剤ビーズの嵩密度は、同じ組成および本質的に同じ直径を有するビーズの集合物から成る所定容積に含有される吸着剤の重量として定義される。その嵩密度は、好ましくは、シェルの密度より高い。本明細書の解釈上、嵩密度はASTM D6683に従って測定される。
【0034】
少なくとも1つのコアが実質的に球形であることがさらに好ましく、少なくとも1つのコアが0.7〜1の範囲の真球度を有することが特に好ましい。吸着剤粒子の真球度は形状係数であって、それは、(所定吸着剤粒子と同じ容積を有する球体の表面積)/(粒子の表面積)の比率を与える。低真球度(0.7未満)のコアの場合、高い嵩密度を達成することは困難であることが見出された。
【0035】
少なくとも1つのコアが、50〜100wt%の凝集クレー粒子、特に、アタパルジャイト、ベントナイトまたはカオリンクレーを含むことが好ましい。これらの物質のコアを有する複合吸着剤ビーズは、特に良好な破砕強度および嵩密度を示す。最良の結果が、0.01〜5μmの範囲の直径を有する凝集クレー粒子を含む多孔性コアにおいて見出しうる。
【0036】
他の好ましい実施形態において、少なくとも1つのコアは、黒鉛または金属(好ましくは、Mg、Fe、Ni、Co、Cu、Zn、Al、Sn、Pbおよびその合金から成る群から選択される)から形成される。
【0037】
好ましくは、少なくとも1つのコアは、1〜450W/mKの範囲の熱伝導率を有する。
【0038】
少なくとも1つの吸着性物質は、好ましくは、下記から成る群から選択される:活性アルミナ、活性炭およびゼオライト、好ましくは、ZSM、チャバザイト、X、AまたはY型ゼオライト、より好ましくは低シリカX型、およびEP−A−1080771(p.7、[0043]〜p.9、[0049])に記載されているゼオライト。
【0039】
シェル物質の少なくとも1つの層が、20wt%未満、より好ましくは2〜20wt%の少なくとも1つの無機結合物質(好ましくは、シリカ、クレー、酸化アルミニウム、アルミノリン酸塩、ポリシロキサンおよびそれらの混合物から成る群から選択される)を含むのがさらに好ましい。均質吸着剤ビーズと比較して、全ての複合吸着剤ビーズは単位重量当たりの減少した吸着容量を示し、なぜなら、非吸着性物質の不活性コアが有意な吸着容量を有さないからである。従って、多孔性および吸着性シェル物質は、最少限の不活性および非吸着性結合物質のみを含むことが重要であり、それによって、複合吸着剤ビーズは、充分に高い破砕強度を有し、しかも吸着容量の限定的減少のみを有する。比破砕強度は少なくとも3N/mmであるべきであり、そうでなければ、複合吸着剤ビーズは、工業用吸着床に適用された場合に、破砕しうる。
【0040】
本発明の複合吸着剤ビーズは、0.1〜5mm、より好ましくは0.25〜4mm、特に0.25〜3mmの直径を有するのがさらに好ましい。最良の結果が、0.5mm〜3mmの範囲の外径の場合に得られる。
【0041】
向上した吸着性能は、0.5〜0.98の範囲、好ましくは0.6〜0.8の範囲の、コア直径/複合ビーズ直径の比率を有する複合吸着剤ビーズによって達成できる。
【0042】
コア物質は、10〜50%の範囲、好ましくは20〜40%の範囲の総合多孔度を有するのが好ましい。コア物質の好ましい細孔容積は、0.02〜0.3cm/g、より好ましくは0.05〜0.2cm/gの範囲である。コア物質の好ましいBET表面積は、20〜400m/g、より好ましくは40〜200m/g、特に40〜150m/gである。
【0043】
複合吸着剤ビーズは、40%より高い総合多孔度を有するのが好ましい。
【0044】
複合吸着剤ビーズの内部は、多くのコア(それらは全て共に外層によって被覆されている)から形成されるのも好ましい。一般に、3〜100個のコアを、1個の吸着剤ビーズ内に組み込むことができる。
【0045】
複合吸着剤ビーズは、圧力低下を増加させずに、圧力スイング吸着法において向上した容積生産性を与えるという点で、均質吸着剤ビーズより有利である。しかし、吸着剤粒子の粒度がより小さい、かつ/または粒度分布比D90/D50がより高い場合、圧力低下は増加する。従って、好適な粒度および低い粒度分布の両方を有する複合吸着剤ビーズの集合物を提供することが重要である。粒子の特定の集合物を篩によって分級する場合、高い真球度を有する粒子の集合物は、より低い粒度分布比を有する集合物を与える。従って、複合吸着剤ビーズの集合物の製造において高効率を達成するために、複合吸着剤の真球度が高いことが重要である。
【0046】
高い粒度分布比の課題を克服するために、狭い粒度分布比を与える方法が開発された。該方法は、例えばMichael JacobらのWIPO特許出願公開第WO−A−2004/101132号に定義されているような噴出床凝集法である。この噴出床は、高い真球度および低値粒度分布比D90/D50を有する凝集物を与える。しかし、好適な真球度および粒度分布を有する凝集物を製造できる他の方法を使用することができる。
【0047】
本発明の他の重要な特徴は、シェル物質の添加前に熱処理されていないコア物質を有する複合ビーズの形成である。この方法において、シェル物質(一般に、ゼオライト)およびコア物質(一般に、クレー)を共に燃やすかまたは焼成する。該複合ビーズの製造に使用される一般的な焼成温度は、200〜600℃である。同時焼成法は、コア物質とシェル物質とのより良好な付着を可能にすると考えられる。焼成中にコア物質とシェル物質との間に形成される結合は、コア物質およびシェル物質に存在するヒドロキシド基の反応によって形成される酸素結合である。予期される反応の型は、次の通りである:Al−OH + Si−OH + 熱 = Al−O−Si + HO。例えば、Al−OHの形態におけるゼオライト上の表面ヒドロキシルが、焼成の間に、Si−OHの形態のコア物質上の表面ヒドロキシルと反応して、Al−O−Si + HOを形成することができる。これは、コア物質表面のヒドロキシル基の数が増加するのに伴う、コア物質とシェル物質とのより良好な結合、従って、複合粒子のより良好な破砕強度も説明しうる。表面ヒドロキシルの総数は、コアの表面積および多孔度の増加と共に増加する。従って、コアにおいてある程度の多孔度を有すること、ならびに未焼成コアおよびシェル物質を同時焼成することは、必要とされる物質移動および破砕強度特性を有する有用な複合吸着剤ビーズの製造に重要な側面である。高温(600℃より高い)でのコア物質の焼成または焼結は、コア表面のヒドロキシル基を相互に反応させ、それによってシェル物質との結合に必要とされる表面部位を除去する。コアおよびシェル物質を1つの同じ熱処理に付すことも重要であり、それによって、コアは、複合ビーズを熱処理に付す前に有機結合物質をまだ含んでいて、充分に良好な破砕強度が得られる。
【0048】
狭い粒度分布比を有するコアから製造された複合吸着剤ビーズは、同じかまたは極めて近似した粒度分布および高い真球度を有する複合吸着剤ビーズを与えることが見出された。その効果は、前記の特性を有する複合吸着剤ビーズを提供できることである。
【0049】
多孔性および非吸着性コアは、好ましくは、0.01μm〜5μmの範囲の粒度を有する凝集クレー粒子ならびに有機および/または無機結合剤を含む。粒度は、好ましくは0.05μm〜2μmの範囲である。クレー物質は、好ましくは、カオリン、アタパルジャイトおよびベントナイトから成る群から選択される。有機結合物質は、好ましくは、ポリビニルアルコール、改質デンプンまたは改質セルロースから成る水溶性ポリマーである。
【0050】
本出願の解釈上、クレーは4〜5μmより小さい粒度を有する微細土粒子から成るという堆積学者によるクレーの一般的定義を使用する。これは、KM 242(Keramische Masse)で形成されたコアは、そのD50が4μmであるので、50wt%またはそれ以上のクレーから成ることを意味する。
【0051】
コアにおける非吸着性粒子の平均粒度は、好ましくは、吸着性シェルの平均粒度と近似しているべきなので、破砕強度を減少しうる不均質性を防止するために、非吸着性クレー粒子の最大平均粒度もD50=5μm以下であるべきである。0.01μm未満の平均粒度は望ましくなく、なぜなら、それは向上した真球度を与えず、かつ、凝集装置のフィルターをつまらせるので配合するのが困難だからである。
【0052】
吸着剤は、吸着剤配合の当業者に既知の方法に従って配合(処方)すべきである。高無機残渣を残す高レベルの有機結合剤、例えばポリシロキサンは、適用すべきでない。微細残渣は、ゼオライトのような吸着剤の細孔を塞ぎうる。
【0053】
周囲ゼオライト層と極めて近似したD50および粒度分布を有する凝集クレー粒子100%を含むコアを有する複合吸着剤ビーズは、多孔性外部吸着性層と近似した、またはそれより高い多孔度および透過性を有することが明らかである。
【0054】
本発明は、好ましくは、特に、下記の側面の1つまたは任意組合せを含む:
・コア物質は、10〜50%、好ましくは20〜40%の範囲の多孔度を有する;
・コア物質は、透過性である;
・コア物質は、0.02〜0.3cm/g、好ましくは0.05〜0.2cm/gの範囲の細孔容積を有する;
・コア物質は、20〜400m/g、好ましくは40〜200m/g、特に40〜150m/gのBET表面積を有する;
・コアは、1.6未満、好ましくは1.4未満、より好ましくは1.1未満の、粒度分布比D90/D50を有する;
・コア物質は、1〜450W/mKの範囲の熱伝導率を有する;
・0.5〜0.98の範囲、好ましくは0.6〜0.8の範囲の、(コア直径)/(複合吸着剤ビーズの直径)の比率;
・コアは、0.7〜1の真球度を有する;
・吸着剤ビーズは、560〜2000kg/mの範囲の嵩密度を有する;
・吸着剤ビーズは、1〜7N/mmの範囲の比破砕強度を有する;
・吸着剤ビーズは、0.1〜5mm、好ましくは0.25〜3mmの直径を有する;
・吸着剤ビーズは、40%より高い総合多孔度を有する;
・吸着剤ビーズは、0.7〜1の真球度を有する;
・吸着剤ビーズは、1.6未満、好ましくは1.4未満、より好ましくは1.1未満の粒度分布比D90/D50を有する;
・吸着剤ビーズは、350〜800m/gの範囲、好ましくは600〜800m/gの範囲の比表面積を有する;
・少なくとも1つのコアは、50〜100wt%の凝集クレー粒子(好ましくは、カオリン、アタパルジャイトおよびベントナイトから成る群から選択される)、および任意に、0〜50wt%の黒鉛または金属(好ましくは、Mg、Fe、Ni、Cu、Zn、Al、Sn、Zn、Al、Sn、Pbおよびその合金から成る群から選択される)を含む;
・0.01〜5μmの直径を有する粒子から形成されたコア;
・少なくとも1つの吸着性物質は、ゼオライト、好ましくはZSM、チャバザイト、X、YまたはA型ゼオライト、より好ましくは低シリカXから成る群から選択される;
・少なくとも1つの層は、2〜20wt%の少なくとも1つの無機結合物質(好ましくは、シリカ、クレー、酸化アルミニウム、アルミノリン酸塩、ポリシロキサンまたはそれらの混合物から成る群から選択される)を含む。
【0055】
本発明は、好ましい実施形態に関して先に記載した詳細に限定されるものではなく、下記の特許請求の範囲において規定される本発明の趣旨および範囲を逸脱せずに、多くの改変および変更を加えうるものと理解される。特に、本発明はPSAおよび/またはTSA法を使用するガス精製に特に用途を有するが、本発明は、他の処理、例えばクロマトグラフィー(それにおいて、1つまたはそれ以上のガスが、精製、分析等のために混合物から分離される)に用途を有する。
【0056】
本発明を下記の図面および実施例に関して詳しく説明するが、それらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0057】
Fa.GoergおよびSchneiderタイプMasse Nr.242から得られる3μm〜7μmの粒度を有するクレー粉末を、Glattローター・コーター・タイプSRユニットでペレット化した。クレー粉末をローターコーターで流動化し、固形分20wt%を有するポリビニルアルコール(Mowiol(登録商標)4/88;Ter Hell & Co.GmbH)溶液を、4.3gポリビニルアルコール/100gクレー粉末の量で、流動床に吹き付けた。ある湿潤レベルに達した後、この過程で生じる加速力が、凝集物の形成を生じ、次に、該凝集物を均一かつ高密度のペレットに丸め、流動床で乾燥させた。
【0058】
第二段階において、得られた乾燥クレーコアを篩で分級して、ペレットの平均直径の標準偏差を±22%〜±10%に減少させた。例えば、2500μm、1400μm、350μm、200μmおよび150μmの平均直径が製造可能である。
【0059】
次に、必要とされるコア分級物を、Glatt SRローターコーターに装填し、2wt%無機結合剤(Evonik Aerosil 380)および6.5% PVA(Mowiol(登録商標)4/88)/kgゼオライトおよび2wt%のグリセリン/kgゼオライトを含有するゼオライト懸濁液を吹き付けた。目標平均吸着剤粒度に達するまで、コーティングを継続した。ゼオライト粉末タイプ5AはUOPから得、ゼオライト粉末タイプLiLSXはChemie Werk Bad Koestrizから得た。
【0060】
種々のバッチのコアの寸法は、下記の表1に示す通りであった。
【0061】
次に、複合ビーズを、以下の手順に従って熱処理に付した:
9mLのビーズを、内径8mmのステンレス鋼管に入れる;
該管を炉に入れ、50ppmV未満のCOおよび10ppmV未満のHOを含有する空気流を390mL/分で管に通す;
炉内の温度を、周囲温度から500℃に1℃/分の速度で上昇させ、500℃で4時間維持する。
【0062】
このようにして試料参照番号317−13および317−20を作製した。試料参照番号321−20の場合、前記の熱処理の前に、50ppmV未満のCOおよび10ppmV未満のHOを含有する乾燥空気流によってガスシールしたオーブンで試料を乾燥させた。乾燥は、一連の温度(50、90、110、130、150、170、190、210および230℃)に加熱し、各温度で少なくとも45分間維持することによって行なった。熱処理を行なう前に、試料を周囲空気に曝さなかった。
【0063】
破砕強度はASTM法ASTM 4179に従って測定し、嵩密度はASTM D6683に従って測定した。破砕強度は、最終熱処理後の作製物において測定した。複合ビーズおよび対応する均質ビーズの試験結果を、表1に示す。
【0064】
表1は、各吸着剤のN容量、ならびにN物質移動係数を含む。40℃および101kPa NにおけるN容量を、熱重量分析器において重量取り込み(weight uptake)によって測定した。吸着剤の物質移動特性は、標準容積測定吸着装置を使用して評価した。実験は、最初に真空および30℃において存在する吸着剤試料を、760トル(101kPa)における測定量のNに暴露することから成った。次に、圧力の変化を、時間の関数として追跡した。吸着剤試料の代わりに同重量の石英ビーズを使用した同様の圧力履歴を、圧力−時間データから引いて、時間の関数としての吸着N量のプロットを得る。取り込み曲線の初期傾斜から、逆転時間の単位(秒−1)におけるN拡散パラメーターを得ることができる。
【0065】
拡散パラメーターの導出の背後にある理論は、Ruthven(Ruthven,D.M.,Principles of Adsorption and Adsorption Processes,John Wiley & Sons,New York(1984))の第6章、セクション6.2に記載されている。
【0066】
表1の結果は、全ての複合ビーズ試料の比破砕強度が、3N/mmより高かったことを示す。さらに、本発明の複合吸着剤ビーズは、同じ直径の均質ビーズより著しく向上した物質移動性能を有する。5A物質の場合、2.1mm複合ビーズは、2.0mm均質ビーズ(Grace Davison グレード522)より6倍高い(1.28/0.50)窒素物質移動係数を有していた。LiLSXのシェルを有する2mm複合ビーズは、2mm均質LiLSX(試料305−22、Zeochem(登録商標)Z10−05−03)より2.6倍高い窒素物質移動係数を示した。
【0067】
表1の結果は、多孔性コアを有する小さい粒子も製造できることを示す。試料317−20、5Aシェルを有する0.5mm複合ビーズは、2.03秒−1の窒素物質移動係数を示した。全ての場合において、本発明に従って作製した複合ビーズ試料の密度は、それらに対応する均質吸着剤より高い嵩密度を有する。2mmの5A試料の場合、密度増加は約14%であり、LiLSXの場合、密度増加は約24%である。
【表1】

【実施例2】
【0068】
0.35μmの平均粒度を有するカオリン粉末(Omya Kaolin Nr.86)を室温で水に懸濁させ、ウルトラ・ソラックス・ミキサーで混合して、38wt%の懸濁液にした。5gポリビニルアルコール(Mowiol(登録商標)4/88)/100gカオリン粉末、および10gグリセリン/100gカオリン粉末を添加した。
【0069】
この懸濁液を、噴出床ユニット、タイプGF3に吹き入れ、平均直径1000μmを有する乾燥カオリンコアを作製した。入口空気温度は100℃〜140℃に維持し、出口空気温度は30℃〜60℃に維持した。
【0070】
コアは0.5wt%の湿分を有していた。次に、コアをGlatt SRローターコーターに装填し、2wt%無機結合剤(シリカ粉末Aerosil(登録商標))および6.5% PVA(Mowiol(登録商標)4/88)/kgゼオライトおよび2wt%グリセリン/kgゼオライトを含有するゼオライト懸濁液を吹き付けた。ゼオライトは、Chemie Werk Bad Koestrizから得た標準ゼオライト粉末であった。
【0071】
クレーコアの平均粒度D50およびD90は、Retsch Camsizer(登録商標)で測定した。平均粒度D50は1005μmであり、D10は867μmであり、D90は1244μmであった。真球度は0.9であった。真球度のより低い値は、層の厚さの変動を有するシェルを生じるので、低い破砕強度を生じうる。1.6以下の粒度分布比および0.7より高い真球度を有するコアを、どのような有意な篩分けも行なわずに、噴出床法によって製造することができる。向上した粒度分布および真球度は、過大および過小分級物を連続的に再循環させることによって得ることができる。過大分級物は、破砕し、連続的に工程に再循環させることができる。凝集物における高摩耗により、真球度が同時に向上する。
【0072】
本発明の例示複合吸着剤の全てのコアは、50〜100wt%の範囲の、0.01〜5μmの直径を有する凝集クレー粒子を含有する。これも、0.7より高い真球度を与える。0.7より高い真球度を有するコアは、5μmより高い粒度を有するクレー粒子で凝集を開始し、これらを50wt%の量の極めて微細なクレー粒子でコーティングして、0.7より高い真球度を得ることによって製造することもできる。
【0073】
本発明の優れた複合吸着剤ビーズは、吸着剤の平均粒度と同じかまたはそれより小さい平均粒度を有する90%より多いクレーを使用して製造することができる。5μmより大きい直径を有する粒子は、より低い真球度を生じうるので、好ましくは存在すべきでない。
【0074】
4μmの平均粒度D50を有するクレー(KM242)および4.5μmのD50を有するLiLSXゼオライト粉末または3.1μmのD50を有する5Aゼオライト粉末を適用することによって、良好な破砕強度、真球度および粒度分布を有する複合吸着剤ビーズも作製した。5μmより大きい平均粒度を有する吸着剤粉末は、より長いミクロ細孔を通るより低い物質移動を与えるので、極めて望ましくない。従って、吸着剤の平均粒度は、好ましくは、5μm以下にすべきである。
【実施例3】
【0075】
この実施例は、実施例1に記載のように作製した複合吸着剤の破砕強度における、コア物質の真球度およびクレー粒度の重要性を示す(表2)。
【表2】

【0076】
両方の複合吸着剤ビーズが、同じ大きさ同じ吸着性物質の最新技術の均質製品と比較して、向上した容積生産性を示した。複合吸着剤ビーズの真球度は、層状化工程中の吸着剤適用の間に、さらに向上した。
【実施例4】
【0077】
焼成の間のコア物質とシェル物質との結合の形成が、破砕強度を向上させるという仮説を検証するために、コア直径0.3mmを有する直径0.48mmの複合ビーズを、前記実施例1に記載のように作製した。両方の場合に使用したクレーはカオリンであり、無機結合剤は2wt% Evonik Aerosil(登録商標)380であった。一方の場合に、複合ビーズ形成前にクレーコアを900℃に熱処理し、他方の場合に、コアおよびシェルを500℃で同時焼成した。両最終ビーズの破砕強度を測定した。焼結コア(900℃に事前加熱)を使用して形成したビーズの測定破砕強度は0.8N/mmであり、同時焼成した複合ビーズの該数値は3.6N/mmであった。同時焼成した複合ビーズは、焼結コアを使用して製造したビーズより実質的に高い破砕強度を有していた。この実施例は、向上した破砕強度のビーズを製造するために、同時焼成が重要であることを示している。
【実施例5】
【0078】
この実施例は、高密度複合ビーズを本発明の製造法によって形成できることを示す。さらに、少量の無機結合剤をシェル物質に使用することができ、適切な破砕強度を維持できる。このような、シェル中のより少ない結合剤含有量は、複合ビーズの総合能力を向上させる。
【0079】
80/20wt%の比率のゼオライトおよび無機結合剤の外層を有する同じGlatt SRローターコーターでコーティングしたケイ砂のコアを、本発明の複合吸着剤ビーズの試料と比較した。多孔性クレーコアを使用して、98/2%のゼオライト/無機結合剤の外層を有する複合ビーズを作製した。両方の場合に、外部シェルに使用した無機結合剤は、アタパルジャイトクレーであった。使用したコーティングおよび熱処理方法は、実施例1に記載した方法である。
【0080】
表3は、本質的に同じ粒径を有する、均質ビーズ、中実非多孔性コア(砂)を有する複合ビーズおよび多孔性コア(クレー)を有する複合ビーズの、特性の比較を示す。結果は、多孔性クレーコアを使用して作製した複合ビーズが、均質ビーズ、または非多孔性砂コアを使用して作製したビーズより高い破砕強度を有することを示す。
【0081】
この意外な結果は、非多孔性ケイ砂コアがより低い真球度を有し、従って外部吸着性層がコアの縁との間に極めて低い密度しか有さないことによって、部分的に説明しうる。吸着剤粒子の真球度は形状係数であり、それは、(所定の吸着剤粒子と同じ体積を有する球の表面積)/(該粒子の表面積)の比率を与える。ケイ砂コアの真球度は、0.8より高い真球度を有していた多孔性クレーコアより低かった。0.7未満の真球度を有する中実非多孔性コアは、0.7より高い真球度を有するものより低い破砕強度を有することが見出された。
【表3】

【実施例6】
【0082】
図1は、複合ビーズにおけるコア物質の総合多孔度の関数としての、種々の吸着剤について測定した窒素拡散率のプロットを示す。全ての複合ビーズを、実施例1に記載のように製造した。cm/秒の単位における窒素拡散率は、秒−1の単位における窒素物質移動係数(実施例1に記載のように測定)に、吸着剤シェルの厚さの2乗を掛ける(秒−1×(cm))ことによって求めた。窒素拡散率は、窒素物質移動速度の測度である。より高い窒素拡散率は、より速い物質移動速度、および吸着処理におけるより優れた吸着剤性能に対応する。窒素拡散率は、窒素物質移動係数に対する性能パラメーターとして使用され、なぜなら、わずかに異なるシェル厚さのビーズを試験し、窒素拡散率の数値がその違いを補うからである。総合多孔度は、前記のように求めた。窒素細孔容積(およびBET表面積)は、相対圧力0.98での77Kにおける窒素吸着によって求めた。総合細孔容積は、Gurvichルールを使用して算出した。使用したユニットは、MicromeriticsからのASAP 2010であった。コアの結晶密度は、水ピクノメトリーによって測定した(ASTM D 854−00)。多孔性クレーコアの結晶密度は2.48〜2.64g/cmであり、砂コアは2.22g/cmの結晶密度を示した。
【0083】
試験されるコア物質を、完成複合ビーズから取り出した。コアは、シェルが裂けてコアから取れるまで、2枚のアルミニウム板の間で複合ビーズ物質を回転させることによって得た。この時点におけるコアは、いくらかのシェル物質を含有していた。次に、コアを脱イオン水で3〜4回洗浄して、どのような残留シェル物質もコアから除去した。次に、400℃への空気活性化の前に、コアを100℃で乾燥させた。コア物質についての窒素BET表面積および細孔容積を、空気活性物質において77Kで得た。
【0084】
図1の結果は、コアの多孔度が増加すると共に、窒素拡散率が増加することを示す。先行技術は、非多孔性コアの使用を示しているが、図1の結果は、明らかに、多孔性コアが非多孔性コアより高い物質移動特性を示すことを示している。100%の多孔度を有するビーズは、優れた吸着物質移動特性を示す中空コア物質である。残念ながら、図2に示すように、中空コア物質の破砕強度はあまりにも低すぎて工業的用途に使用できない。先行技術に従って作製した2つの複合ビーズ(1.3〜1.9%の総合多孔度を有する非多孔性砂コア)は、低い物質移動性能を示す。17〜33%の多孔度を有する3つの多孔性クレーコアは、対応する非多孔性コア物質より少なくとも2倍高い窒素拡散率を示す。
【0085】
図2は、コア物質の多孔度の関数としての粒子破砕強度のプロットを示す。結果は、1.3〜33%のコア多孔度であれば、複合ビーズの比破砕強度は工業的用途(3N/mm)に充分であることを示す。さらに、30%を超えるコア多孔度を有するビーズは、1.3%のコア多孔度を有するビーズと実質的に同じ破砕強度を有する。そのように高い多孔度を有するビーズがそのように高い破砕強度を有することは驚きである。データの多項および線形適合の両方に基づいて、破砕強度が容認できないレベルに達する前に、ほぼ90%の多孔度のコアを使用しうる。
【0086】
図1の結果は、表の形式でも表わすことができる。表4は、種々のコア物質の、多孔度、窒素細孔容積およびBET表面積、ならびに、そのコアを使用して形成した複合ビーズの対応する窒素拡散率および破砕強度を示す。中空コア物質は、その良好な物質移動性能にも拘らず、循環吸着法に使用するのに不十分な機械的強度を有する。他の注目点は、多孔性コア試料の有意な多孔度にも拘らず、破砕強度が高レベルに維持されることである。従って、多孔性コアは、向上した物質移動特性、向上した嵩密度、および吸着処理に充分な破砕強度を与える。
【0087】
図3は、窒素拡散率に対する、コアにおける窒素細孔容積のプロットを示す。該プロットは、明らかに、より大きい窒素細孔容積を有するコアが向上した物質移動特性を有する複合ビーズを生じることを示している。
【表4】

【実施例7】
【0088】
コア、シェルおよび複合粒子の総合多孔度を、前記のように窒素細孔容積および水ピクノメトリーによって測定した。表5は、実施例1に従って作製した2つの物質(但し、2種類のコア物質を使用)について、複合ビーズ、コアおよびシェルの、総合多孔度を示す。両方のシェル物質は5Aゼオライトであり、粒径は2.1mmであり、粒径/コア径の比率は0.68であった。コアおよびシェル物質は、実施例6に記載したように分離した。
【表5】

【0089】
この実施例の結果は、多孔性クレーコアの場合、コアの多孔度はシェル物質の多孔度の63%(33%/52%)であることを示す。これは明らかに、コアが高度に多孔性であることを示す。砂コアの場合、コアの多孔度はシェル物質の多孔度の2.4%(1.3%/54%)にすぎない。
【実施例8】
【0090】
本発明の主要な側面は、複合ビーズのコア物質が多孔性かつ非吸着性であることである。実施例6は明らかに、コア物質の多孔性が、非多孔性コアと比較して、向上した物質移動吸着剤を生じることを示している。しかし、コア物質はできるだけ少ないガスを吸着するのが望ましい。なぜなら、コア物質において起こる吸着が多いほど、拡散経路長がより長くなり、物質移動がより遅くなるからである。コアの多孔度は、先に示したように、複合ビーズの破砕強度および密度を向上させるのを助けるが、多孔性コアへのバルク拡散のための付加的推進力を生じることによって、物質移動も向上させうる。
【0091】
コアおよびシェル物質の吸着容量を調べるために、窒素吸着等温線を標準容積測定吸着装置(Micromeritics ASAP 2010)で30℃および101kPa圧力において測定した。吸着測定の前に、試料を真空中400℃で活性化した。表6は、表1の試料317−13からの多孔性クレーコア、均質5A(Grace グレード522)および均質LiLSX(Zeochem Z10−03−05)の、窒素容量を示す。
【表6】

【0092】
表6の結果は、クレーコアは多孔性(窒素細孔容積0.119cm/g)であっても、窒素吸着容量は均質5AまたはLiLSXの窒素吸着容量より300倍を超える低さであることを明らかに示している。この結果は、多孔性コアは多孔性を与えるが、それは認識できる程度に吸着工程に関与しないことを示している。
【実施例9】
【0093】
水素PSAパイロットユニット試験を行なって、実施例1に記載した方法に従って製造した本発明の5Aゼオライト複合吸着剤ビーズ(0.5mm;0.3mmのコアを有する)と、Shanghai Hengye Corporationから得た均質5Aゼオライト吸着剤ビーズ(0.35mm)との性能を比較した。4/1/1のサイクル(4床システムおよび1供給床および1均等化;US−A−3430418)を使用して、73%H、18%CO、5%CH、3%COおよび1%Nから成る135psig(10.3バール絶対圧力)供給ガスを処理した。各床は、内径0.87インチ(2.2cm)、長さ5フィート(150cm)を有し、床の製品端において50vol% 5A、および50vol% 0.75mmカーボン(Kureha BAC)を充填された。H製品純度は、1ppm COで制御した。2つの5A試料を、H回収率(1サイクル当たりの製造H/1サイクル当たりの供給流中のH)、および床サイズ係数(BSF)に関して比較した。BSF単位は、1000Nm/hのHを製造するために必要とされる全吸着剤の立方メートルである。明らかに、より高いH回収率(より高い効率)およびより小さい床サイズ係数(所定量のHを製造するための、より小さい床)を生じさせる吸着剤が好ましい。試験の結果は、10秒の供給(吸着)時間において、均質吸着剤は68.9%のH回収率および0.80のBSFを示したことを示している。本発明の5A複合吸着剤ビーズの対応する結果は、70.9%のH回収率および0.74のBSFを示す。これらの結果は、本発明の多孔性複合吸着剤ビーズが、均質吸着剤より高い回収率および低いBSFを示すことを示している。
【0094】
この結果は、対応する均質ビーズより大きい直径の複合ビーズでも得られた。大きい直径のビーズは、より少ない圧力低下および向上した処理性能を与える。この実施例は、本発明の複合吸着剤ビーズが、吸着容器における全ての均質吸着剤ビーズを該複合吸着剤ビーズで置き換えた圧力スイング吸着用途において、均質吸着剤より優れた性能を有しうることを示す。
【実施例10】
【0095】
実施例9は、PSA用途における本発明の複合吸着剤ビーズの有用性を示す。PSA用途における物質移動性能の重要性は、文書により充分に立証されている(例えば、US−A−4964888)。US−A−4964888は、高物質移動吸着剤を、不純物物質移動区域が存在する床の製品末端だけに配置する必要があることを示している。US−A−4964888は、物質移動区域における物質移動速度を向上させるという課題を、より小さい吸着剤粒子を使用することによって解決している。小さい粒子を使用することに伴う問題は、1)それらが、望ましくないシステム中の圧力低下を増加させ、2)それらが、PSA処理中の操作流速下に流動化しうることである。本発明の複合吸着剤ビーズは、US−A−4964888に提示されている物質より粒度が大きく、嵩密度が高いので、これらの問題を解決する。しかし、物質移動は、TSA(温度スイング吸着)法、特に、大きい吸着剤粒子(2mmおよびそれ以上)が使用されるTSAシステムにおいても重要であり、なぜなら、吸着剤粒子が大きいほど、物質移動区域を含有する床のパーセンテージがより大きくなるからである。
【0096】
TSA用途における本発明の複合吸着剤ビーズの有用性を試験するために、ヘリウム・キャリヤー・ガス中のN漏出曲線を測定した。全ての実験の前に、ビーズを、流動Heにおいて150℃で8時間にわたって10標準リットル/分の流量で再生した。これらの試験において、直径0.87インチ(2.21cm)および長さ6フィート(189cm)のカラムを使用した。供給ガスはHe中の500ppm Nであり、供給条件は以下の通りであった:350psig(25MPa絶対圧力)、25℃、および流量4718Nm/m断面積/時間(h)。試験した吸着剤は、均質5Aビーズ(Grace グレード522、直径2.0mm、711kg/m)、本発明の5A複合ビーズ(試料317−13、直径2.1mm、1042kg/m)、ならびに床の供給端における均質5Aビーズ(77%、140.8cm)および床の製品端における複合5A吸着剤ビーズ(23%、42.1cm)を有する床を包含した。漏出試験の結果を下記の表7に示す。
【表7】

【0097】
平衡容量は、N漏出の中間点までの時間(流量×ガス中の窒素のモル分率×中間点までの時間/床の容量)によって算出され、未使用床の長さ(LUB)は、式LUB=L[1−(t/t)]によって算出され、式中、Lは床の長さ、tは1ppm漏出までの時間、tは250ppm漏出までの時間である。動的容量は、初期N漏出(1ppm)までの時間によって算出される。表における結果は、均質5Aビーズは複合5Aビーズより高い平衡および動的容量を有するが、複合5Aビーズはより短いLUB(物質移動区域の長さの半分)を有することを示す。均質5Aビーズおよび複合5Aビーズの分離床を使用した場合、動的容量が最も高い。これは、均質5Aビーズ(高い平衡容量のため)および本発明の5A複合吸着剤ビーズ(より短い物質移動区域長さのため)の分割床が、TSAシステムの動的容量を増加させうることを意味する。TSAシステムの動的容量は、床のオンストリーム時間が初期不純物漏出によって制限されるので、重要である。従って、均質5Aビーズおよび複合5Aビーズの分割床は、1ppm窒素漏出前に、3.5%(0.0090mmol/cm/0.0087mmol/cm)多い供給ガスを処理することができる。この実施例は、熱スイング吸着法における、および層状床配置における、本発明の複合ビーズの有用性を示している。
【実施例11】
【0098】
以下の実施例は、本発明の複合ビーズが、PVSA(圧力真空スイング吸着)法において適用しうることを示し、該方法において、複合吸着剤ビーズが床の出口に配置される。66.55mmの床内径を有する単一床PVSA(圧力真空スイング吸着)システムに、2層の吸着剤を充填した。供給端で開始して、129mm層のアルキャンアルミナAA300、8x14メッシュを装填した。アルキャンアルミナの充填床密度は、846.1グラム/リットルであった。次に、301mm層のCWK(Chemiewerk Bad Koestritz)からのKoestrolith(登録商標)LiLSX、1.6〜2.5mm直径ビーズ(以下、均質LiLSX)を装填した。均質LiLSXの質量加重平均粒度は1.86mmであり、充填床密度は660.9グラム/リットルであった。
【0099】
システムは、以下の3段階から成る基本サイクルで稼働する:供給(供給に伴う再加圧を含む)、排気、およびパージ(製品タンクからのガスを使用)。排気時間は8.0秒であり、パージ時間は4.0秒であった。種々の供給量における一連の実験を行なった。供給量は、圧縮機と吸着装置床の間のバイパスバルブを調節することによって設定した。バイパスバルブを閉めると共に、供給空気流量が増加した。吸着剤床の供給端は、40〜140kPaの圧力範囲で稼働する。供給時間を調節することによって、種々の供給流量において140kPaレベルを維持した。均質LiLSXの場合、供給時間は11.4秒であった。必要であれば、真空バイパスバルブを使用して、40.7kPaの最低圧力を維持した。製品流量は、製品純度を90±0.5%に維持するように調節した。
【0100】
システムを、179.8〜240.8mm/秒の3つの異なる線速度で稼働させた。線速度は、カラムの供給端への実際容積流量を空カラムの断面積で割って算出され、それは供給段階の間の単純平均である。21℃および101kPaの標準条件における製品流量、および製品における酸素回収率について得られた数値が、表8ならびに図4および図5に示されている。充填吸着剤床の全高さにおける圧力低下を、二方向差圧変換器によって測定した。排気段階の間に、吸着剤床における平均圧力低下は、12.24インチ水(3.05kPa)であった。均質LiLSXの性能は、最新技術を代表している。
【0101】
前記と同じPVSAシステムを、床の出口における本発明による複合LiLSXビーズの層を試験するのに使用した。吸着剤床に3層の吸着剤を装填した。供給端で開始して、129mm層のアルキャンアルミナAA300、8×14メッシュを装填した。アルキャンアルミナの充填床密度は861.2グラム/リットルであった。次に、150mm層の均質LiLSXを装填した。均質LiLSXの充填床密度は666.8グラム/リットルであった。最後に、150mm層の、平均コア径1.4mmおよび平均全径2.0mmの不活性コアLiLSXビーズ(試料321−22)を装填した。不活性コアLiLSX層の充填床密度は808.9グラム/リットルであった。
【0102】
試料321−22を、熱処理を除いて試料321−20と同じ方法で、作製した。熱処理は、350mLバッチを装填したより大きいステンレス鋼管(41.3mm内径)で行ない、該管に、流量17リットル/分の空気(50ppmV未満のCOおよび10ppmV未満のHOを含有)を通した。該管を炉に入れ、1℃/分の速度で、周囲温度から250℃に加熱し、250℃で5時間維持した。次に、1℃/分の速度で500℃に再び加熱し、500℃で5時間維持した。次に、炉を止め、試料を冷却し、その間、17リットル/分の空気流を維持した。
【0103】
排気時間は8.0秒であり、パージ時間は4.0秒であった。吸着剤床の供給端は、40〜140kPaの圧力範囲で稼働する。140kPaレベルは、供給時間を調節することによって、種々の供給流量で維持された。この層状主要吸着剤組合せについて、供給時間は9.2秒であった。製品流量は、製品純度を90±0.5%に維持するように調節した。
【0104】
システムを、前記のように算出した210.3〜448.1mm/秒の4つの異なる線速度で稼働させた。前記のように、結果が表8ならびに図3および図4に示されている。製造速度および酸素回収率の両方において、均質LiLSX、次に容器出口における不活性コアLiLSXビーズの層状化は、均質LiLSXだけの床充填よりかなり優れている。約210mm/秒の供給速度において、層状床は約50%の酸素回収率を示したが、均質LiLSXの単一層の酸素回収率は約29%にすぎない。酸素回収率におけるこの大きい差は、所定量の酸素を製造するために必要とされる電力を有意に減少させる。さらに、層状床法は、図4に示すように、酸素生産性を増加させる。約32%の酸素回収率において、均質LiLSX床は約1.2標準リットル酸素/分を製造できるが、層状床は1.8標準リットル酸素/分より多く製造できる。この結果は、所定床サイズにおいて、層状吸着剤法がより多くの酸素を製造できることを示す。このように、酸素PVSAにおける層状床法は、酸素回収率(より低い操業コスト)および酸素製造/床単位体積の両方を向上させ、従って、より低い資本コストを与える。
【0105】
中実コアLiLSXが均質LiLSXより大きいビーズ直径であっても、この酸素PVSA性能の向上が層状床において得られた。排気段階の間に、層状法における吸着剤床の平均圧力低下は、10.61インチ水(2.64kPa)であった。より小さい直径の均質LiLSXの場合、対応する圧力低下は12.24インチ水(3.05kPa)であった。より大きい不活性コアビーズによって可能になるより低い圧力低下は、均質LiLSXビーズと比較して、付加的節電を与える。
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス混合物から少なくとも1つのガス成分を分離するための複合吸着剤ビーズであって、少なくとも1つの無機物質を含む少なくとも1つの多孔性および非吸着性コア、ならびに、コア表面上の、多孔性吸着性物質を含有する少なくとも1つの層を含む多孔性および吸着性シェルを有する複合吸着剤ビーズ。
【請求項2】
コア物質が、10〜50%、好ましくは20〜40%の範囲の多孔度、および/または、0.02〜0.3cm/g、好ましくは0.05〜0.2cm/gの範囲の細孔容積を有する、請求項1に記載の複合吸着剤ビーズ。
【請求項3】
コアが、前記層を形成する周囲凝集吸着剤粒子の平均粒度と同じかまたはそれより小さい平均粒度を有する凝集無機粒子を含む、請求項1に記載の複合吸着剤ビーズ。
【請求項4】
コアが、1.6未満、好ましくは1.4未満、より好ましくは1.1未満の粒度分布比D90/D50、および0.7〜1の真球度を有する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の複合吸着剤ビーズ。
【請求項5】
コアが、下記の明細事項の1つまたは任意組合せに合致する、請求項1〜4のいずれか1つに記載の複合吸着剤ビーズ:
・1〜450W/mKの範囲の熱伝導率;
・0.7〜1の真球度;
・20〜400m/g、好ましくは40〜200m/g、特に40〜150m/gのBET表面積;
・0.01〜5μmの範囲の直径を有する粒子から形成されたコア;
・1.6未満、好ましくは1.4未満、より好ましくは1.1未満の粒度分布比D90/D50
・10〜50%、好ましくは20〜40%の範囲の多孔度;
・透過性;および/または
・0.02〜0.3cm/g、好ましくは0.05〜0.2cm/gの範囲の細孔容積。
【請求項6】
下記の明細事項の1つまたは任意組合せに合致する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の複合吸着剤ビーズ:
・560〜2000kg/m、好ましくは600〜1500kg/m、特に800〜1500kg/mの範囲の嵩密度;
・1〜7N/mmの範囲の比破砕強度;
・0.1〜5mm、好ましくは0.25〜4mm、より好ましくは0.5〜3mmの直径;
・0.5〜0.98の範囲、好ましくは0.6〜0.8の範囲の、(コア直径)/(複合吸着剤ビーズの直径)の比率;
・40%より高い総合多孔度;
・0.7〜1の真球度;
・1.6未満、好ましくは1.4未満、より好ましくは1.1未満の粒度分布比D90/D50
・350〜800m−1の範囲、好ましくは600〜800m−1の範囲の比表面積;および/または
・吸着性層における、20wt%未満、好ましくは2〜20wt%の、少なくとも1つの無機結合物質。
【請求項7】
少なくとも1つのコアが下記を含む、請求項1〜6のいずれか1つに記載の複合吸着剤ビーズ:
・50〜100wt%の凝集クレー粒子(好ましくは、カオリン、アタパルジャイトおよびベントナイトから成る群から選択される);および
・0〜50wt%の黒鉛または金属(好ましくは、Mg、Fe、Ni、Cu、Zn、Al、Sn、Zn、Al、Sn、Pbおよびその合金から成る群から選択される)。
【請求項8】
少なくとも1つの吸着性物質が、ゼオライト、好ましくはZSM、チャバザイト、X、YまたはA型ゼオライト、好ましくは低シリカXから成る群から選択される、請求項1〜7のいずれか1つに記載の複合吸着剤ビーズ。
【請求項9】
少なくとも1つの層が、2〜20wt%の少なくとも1つの無機結合物質(好ましくは、シリカ、クレーおよび酸化アルミニウムから成る群から選択される)を含む、請求項1〜8のいずれか1つに記載の複合吸着剤ビーズ。
【請求項10】
コアおよびシェル物質が共に焼成されている、請求項1〜9のいずれか1つに記載の複合吸着剤ビーズ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の複合吸着剤ビーズの製造法であって、下記の工程を含む方法:
a) 0.1wt%〜25wt%の範囲の湿分を有し、有機結合剤を含む、乾燥多孔性非吸着性コアを製造する工程;
b) 吸着性物質を含む層を適用する工程;および
c) 少なくとも1つの加熱工程であって、それによって有機結合物質が除去される工程。
【請求項12】
複合吸着剤ビーズの製造法であって、下記の工程を含む方法:
ヒドロキシル基を有する無機物質および有機結合剤を含む非焼結コアを形成する工程;
ヒドロキシル基を有する吸着性物質、有機結合剤および2〜20wt%の無機結合剤を含む層で、該コアを被覆する工程;および、
該被覆コアを加熱して、該有機結合剤を除去し、該コアおよび該層を共に焼成する工程。
【請求項13】
無機コア物質が、クレーであり、好ましくは、カオリン、アタパルジャイトおよびベントナイトから成る群から選択され;吸着性物質が、ゼオライト、好ましくはZSM、チャバザイト、X、YまたはA型ゼオライト、好ましくは低シリカXから成る群から選択され;無機結合剤が、シリカおよびクレーから成る群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
複合吸着剤ビーズの製造用の中間製品として好適な、乾燥多孔性および非吸着性コアであって、0.05μm〜5μmの範囲の粒度を有する凝集クレー粒子および有機結合剤を含むコア。
【請求項15】
ガス混合物から少なくとも1つのガス成分を分離するガス分離法であって、下記の工程を含む方法:
請求項1〜10のいずれか1つに記載の複合吸着剤ビーズの床を含む吸着容器に、少なくとも2つのガス成分を含むガス混合物を供給する工程;および、
該ガス混合物から分離すべき少なくとも1つのガス成分の吸着を可能にする条件に、該ガス混合物を暴露する工程。
【請求項16】
層状吸着床、好ましくは圧力スイングまたは熱スイング吸着法における、請求項1〜10のいずれか1つに記載の複合吸着剤ビーズの使用。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の複合吸着剤ビーズを含む吸着床を有する吸着容器。
【請求項18】
吸着床が、吸着容器の出口端における複合吸着剤ビーズ、および/または該容器の入口端における均質吸着剤ビーズを含む、請求項17に記載の吸着容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−513295(P2012−513295A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541233(P2011−541233)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/009227
【国際公開番号】WO2010/072404
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(398036003)グラット ジステムテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (4)
【氏名又は名称原語表記】Glatt Systemtechnik GmbH
【出願人】(399124761)エアー プロダクツ エンド ケミカルズ インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】