説明

複合粉体およびそれを配合した化粧料

【課題】 本発明は、感触が良好で、透明感があり、紫外線防御効果が高い複合粉体を提供することで、広く皮膚外用の化粧料や医薬品等への応用を可能とする。
【課題を解決するための手段】 本発明は母粒子として多孔質球状ポリアクリル樹脂、子粒子として樹枝状酸化チタンを用い、母粒子の表面に子粒子を被覆した複合粉体による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用感がよく、透明性が高く、UV防御効果の高い複合粉体及びそれを配合した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
母粒子にナイロン末やポリメタクリル酸メチルを選択したUV防御効果の高い複合素材は過去にも存在している。例えばアクリル樹脂粒子や無機中空粒子などの比重0.3〜2.8の粉体核粒子の表面に複数の屈折率の異なる薄い被膜層(二酸化チタン膜、チタニア膜、ポリスチレン膜、金属銀膜など)を有することを特徴とする粉体(特許文献1)。また、母粒子に多孔質粉体を用いると、無孔質の粉体を母粒子に使用する場合と比較し、その多孔質形状により吸油量の増加や乱反射によるソフトフォーカス性の向上が期待できるものの、母粒子を被覆する子粒子に酸化チタンを選択した場合、それを60%程度しか均一に複合化することは出来なかった。また、子粒子に酸化チタンを選択した複合素材は過去にも存在しているが、粒子径の小さいもの(100nm以下)が通常であり、長軸粒子径が0.2〜0.3μm(200nm〜300nm)の大きいものが複合されることはなかった。
【0003】
複合化素材による更なるUV防御効果向上を検討した際、既存の機能を上回る素材を開発することは困難なことであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−328412号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、感触が良好で、透明感があり、紫外線防御効果が高く、広く皮膚外用の化粧料や医薬品等への応用が可能な複合粉体及びそれを配合した化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、母粒子として、多孔質球状ポリアクリル樹脂を25〜35%、子粒子として、短軸粒子径が0.04〜0.07μm、長軸粒子径が0.2〜0.3μmの酸化チタンを65〜75%にて被覆された複合粉体が上記課題を解決することを見出し本発明を完成するに至った。(尚%は質量%を表します。)
【発明の効果】
【0007】
本発明は、感触が良好で、透明感があり、紫外線防御効果が高い複合粉体を提供することにより、広く皮膚外用の化粧料や医薬品等への応用が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明の構成について詳述する。
【0009】
本発明で用いる多孔質球状ポリアクリル樹脂はアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体であり、一般にPMMAと呼ばれるポリメタクリル酸メチル樹脂等も含まれる。特にアクリレーツクロスポリマーや、メタクリル酸メチルクロスポリマー等架橋したものがより好ましい。
平均粒子径は5〜10μmのものが好ましく、平均粒子径が8μmのものがより好ましい。
平均粒子径が小さくなると複合粉体とした際の紫外線防御効果が低くなり、平均粒子径が大きくなると、皮膚上でのすべりが悪くなる等官能面で不都合が生じる。
比表面積は3〜15cm/cmが好ましく、比表面積が12cm/cmのものがより好ましい。
Micro Pore Volumeは0.01〜0.1ml/gのものが好ましく、0.02ml/gのものがより好ましい。
屈折率は1.49〜1.60が好ましく、1.50がより好ましい。
吸油量(亜麻仁油を使用)は140ml〜180mlが好ましく、170mlがより好ましい。
これらを満たすものとしては、市販品としてガンツ化成のガンツパール(商標)GMP−0820(平均粒子径8μm、比表面積12cm/cm、Micro Pore Volume 0.02ml/g、屈折率1.50、吸油量170ml/g)やガンツパール(商標)GMP−830(平均粒子径8μm、比表面積3.5cm/cm、Micro Pore Volume 0.02ml/g、屈折率1.49、吸油量150ml/g)等があげられる。
【0010】
本発明に用いる酸化チタンは樹枝状酸化チタンで短軸0.04〜0.07μm、長軸0.2〜0.3μmの粒子径を有する酸化チタンが好ましい。また、上記形状であれば酸化チタン単独でも水酸化アルミニウムや酸化ジルコニウム、ステアリン酸を被覆した複合化酸化チタンを用いても良い。
このような樹枝状の酸化チタンとして、石原産業株式会社製 商品名TTO−D−1、TTO−D−2等があげられる。
【0011】
本発明の複合粉体は母粒子として多孔質球状ポリアクリル樹脂を、母粒子の表面を覆う子粒子として樹枝状酸化チタンとを用いた複合粉体である。
母粒子:子粒子の割合は25:75〜35:65が好ましく、子粒子の割合が少なくなるとUV防御能が低くなり、逆にこれ以上の割合(母粒子:子粒子の割合が2:8)では均一安定な複合粉体を得ることが出来ない。
【0012】
母粒子に子粒子を被覆させる方法としては湿式法、乾式法を問わず通常公知の粉体被覆処理技術を用いることが可能である。具体的には、流動層コートによる処理方法、メカノケミカルによる表面被覆処理方法、高速攪拌混合による表面被覆処理方法、若しくは、母粒子に溶媒を添加してスラリーとし、これに子粒子を混合後、減圧下加熱して溶剤を留去する方法などが挙げられる。
なかでも本発明では、メカノケミカルによる表面被覆処理方法、高速攪拌混合による表面被覆処理方法が好ましい。
【0013】
本発明の日焼け止め化粧料の剤型は、パウダータイプ、乳化タイプ、油性タイプである。
【0014】
本発明の日焼け止め化粧料は、広く皮膚外用の化粧料や医薬品等への応用が可能である。
【実施例】
【0015】
次に実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれにより限定されるものではない。配合量は質量%である。
【0016】
日焼け止めパウダー実施例1及び比較例1〜5の処方を表1に示す。
【0017】
【表1】

【0018】
表1の複合素材Aとは多孔質球状アクリレーツクロスポリマー:樹枝状酸化チタン=3:7にて複合化した粉体。
多孔質球状アクリレーツクロスポリマーは平均粒子径8μm、比表面積12cm/cm、Micro Pore Volume 0.02ml/g、屈折率1.50、吸油量170ml/gのもの(ガンツ化成株式会社製ガンツパール(商標)GMP−0820)を用いた。
樹枝状酸化チタン(酸化チタン79%、水酸化アルミニウム12.5%、酸化ジルコニウム2.5%、ステアリン酸6.0%)は短軸粒子径が平均0.05μm、長軸粒子径が平均0.3μm、のもの(石原産業株式会社製TTO−D−2)を用いた。
複合素材Bとは多孔質球状アクリレーツクロスポリマー:樹枝状酸化チタン=4:6にて複合化した粉体。
多孔質球状アクリレーツクロスポリマーは粒子径8μm、比表面積12cm/cm、Micro Pore Volume 0.02ml/g、屈折率1.50、吸油量170ml/gのもの(ガンツ化成株式会社製ガンツパール(商標)GMP−0820)を用いた。
樹枝状酸化チタン(酸化チタン79%、水酸化アルミニウム12.5%、酸化ジルコニウム2.5%、ステアリン酸6.0%)は短軸粒子径が0.05μm、長軸粒子径が0.3μmのもの(石原産業株式会社製TTO−D−2)を用いた。
複合素材Cとは多孔質球状アクリレーツクロスポリマー:酸化チタン=3:7にて複合化した粉体。
多孔質球状アクリレーツクロスポリマーは粒子径8μm、比表面積12cm/cm、Micro Pore Volume 0.02ml/g、屈折率1.50、吸油量170ml/gのもの(ガンツ化成株式会社製ガンツパール(商標)GMP−0820)を用いた。
酸化チタンは平均粒子径0.25μmのもの(石原産業株式会社製CR−50)を用いた。
複合素材Dとは多孔質球状アクリレーツクロスポリマー:酸化チタン=3:7にて複合化した粉体。
多孔質球状アクリレーツクロスポリマーは粒子径8μm、比表面積12cm/cm、Micro Pore Volume 0.02ml/g、屈折率1.50、吸油量170ml/gのもの(ガンツ化成株式会社製ガンツパール(商標)GMP−0820)を用いた。
酸化チタンは平均粒子径0.015μmのもの(石原産業株式会社製TTO−S−4)を用いた。
比較例4で用いた多孔質球状アクリレーツクロスポリマーは粒子径8μm、比表面積12cm/cm、Micro Pore Volume 0.02ml/g、屈折率1.50、吸油量170ml/gのもの(ガンツ化成株式会社製ガンツパール(商標)GMP−0820)を、樹枝状酸化チタン(酸化チタン79%、水酸化アルミニウム12.5%、酸化ジルコニウム2.5%、ステアリン酸6.0%)は短軸粒子径が0.05μm、長軸粒子径が0.3μmのもの(石原産業株式会社製TTO−D−2)を用いた。
比較例5で用いた球状ポリメタクリル酸メチルは平均粒子径6μmのもの(ガンツ化成株式会社製ガンツパール(商標)GM−0600W)を、酸化チタンは平均粒子径0.015μmのもの( 石原産業株式会社製TTO−S−4 )を用いた。
また、別途多孔質球状アクリレーツクロスポリマー:樹枝状酸化チタン=2:8にて複合化した粉体の作成を試みたが、均一で安定な複合粉体は得られなかった。
使用した多孔質球状アクリレーツクロスポリマーは平均粒子径8μm、比表面積12cm/cm、Micro Pore Volume 0.02ml/g、屈折率1.50、吸油量170ml/gのもの(ガンツ化成株式会社製ガンツパール(商標)GMP−0820)を用いた。樹枝状酸化チタン(酸化チタン79%、水酸化アルミニウム12.5%、酸化ジルコニウム2.5%、ステアリン酸6.0%)は短軸粒子径が平均0.05μm、長軸粒子径が平均0.3μmのもの(石原産業株式会社製TTO−D−2)を用いた。
【0019】
[製法]実施例1、比較例1〜5の製法は以下の通りである。
Aをミキサーにて高速攪拌し均一混合する。次にそれを低速攪拌しながらBを徐添し、AとBを均一に混合する。最後に再び高速攪拌にて混合し、後にアトマイザーにて粉砕。一定の篩を通したものを試料とした。
【0020】
[評価方法]実施例1と比較例1〜5のパウダーの使用感をパネル10名で、塗布時ののび、なめらかさ共に優れる試料を5点、やや優れる試料を4点、可・不可のない試料を3点、やや劣る試料を2点、劣る試料を1点とする5段階評価にて評価し、各々の合計値から得られる平均値を評価の指標とした。
【0021】
[結果]結果を表2に示す。
【表2】

以上のごとく、比較例2の使用感評価が著しく悪い評価となった。
【0022】
[評価方法]実施例1と比較例1〜5のパウダーの塗布膜の白さを人工皮膚(サプラーレ 出光テクノファイン(株)製)の一定面積(5cm×5cm)に0.02gの試料を均一となるように塗布し、色差計( カラーテスターSC-3 スガ試験機(株)製 )でのL値を指標として評価した。
【0023】
[結果]結果を表3に示す。
【表3】

以上のごとく、比較例2の白さが際立つ結果となった。
【0024】
[評価方法]実施例1と比較例1〜5のパウダーのSPF値をトランスポアTMサージカルテープ(スリーエムヘルスケア(株)製)の一定面積(4cm×5cm)に試料を0.04g均一塗布し、SPF Analyzer UV-1000S(Labsphere社製)にて評価した。
【0025】
[結果]結果を表4に示す。
【表4】

以上のごとく、実施例1のSPF値が顕著に高いものとなった。
【0026】
実施例2 W/O型サンスクリーン乳液
(粉体)
実施例1の複合粉体 7%
タルク 1%
酸化亜鉛 1%
(油相)
オクタメチルシクロテトラシロキサン 25%
パーフルオロポリエーテル 10%
ジメチルポリシロキサン・ポリオキシアルキレン重合体 1%
(水相)
グリセリン 2%
エタノール 2%
防腐剤 適量
酸化防止剤 適量
精製水 残余
合計 100%
【0027】
油相を加熱溶解した後、粉体を分散させた。加熱溶解した水相を徐々に加えて80℃で乳化し、これを攪拌しながら室温まで冷却して、サンスクリーン乳液を得た。

【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明により、感触が良好で、透明感があり、紫外線防御効果が高い複合粉体を提供することで、皮膚外用の化粧料や医薬品等への応用が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母粒子として多孔質球状ポリアクリル樹脂を25〜35%、子粒子として樹枝状酸化チタンを65〜75%含み、母粒子の表面に子粒子を被覆した複合粉体。
【請求項2】
多孔質球状ポリアクリル樹脂が平均粒子径は5〜10μm、比表面積は3〜15cm/cm、Micro Pore Volumeは0.01〜0.1ml/g、屈折率は1.49〜1.60、吸油量が140ml〜180mlの多孔質球状架橋ポリメタクリル酸メチル樹脂であり、子粒子が樹枝状酸化チタンで短軸0.04〜0.07μm、長軸0.2〜0.3μmの粒子径である請求項1の複合粉体。
【請求項3】
請求項1〜2の複合粉体を含む化粧料。
【請求項4】
日焼け止め化粧料である請求項3の化粧料。


【公開番号】特開2013−112635(P2013−112635A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259426(P2011−259426)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(591230619)株式会社ナリス化粧品 (200)
【Fターム(参考)】