説明

複数のカップを備えた衣類

【課題】装着快適性を増すように、ワイヤを備えた公知の衣類、特にブラジャーをさらに改善すること。
【解決手段】各々女性の胸一つを受け入れるために適した二つのカップ3を備えた衣類、特にブラジャーであって、各カップは胸に面している内部側とその反対側の外部側とを有し、胸底部に面する各カップの下部縁13領域には堅いワイヤ17を配置した衣類において、各カップは少なくとも下部縁の領域で内部側と外部側との間に発泡体層11を有し、且つ、下部縁に沿って各カップに凹み部18が一体成形され、ワイヤが上記凹み部内に配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカップを備えた衣類に関連しており、各カップはそれぞれ一つの女性の胸を受け入れるのに適しており、当該衣類は、胸に面している内部側と、反対の外部側とを有しており、胸装着部に面している各カップの下部縁領域内には堅いワイヤが配置される。
【背景技術】
【0002】
このような衣類として、世界中で膨大な種類が用いられているブラジャーの形をしたものが主に知られている。ブラジャーは、中央ブリッジを介して互いに接合され得る二つの胸カップから基本的に成る前ピースを有する構造体である。前ピースの外部側縁には、それぞれ側面ピースが接合され、その自由端は、背部締め具を介してブラジャー装着者それぞれの背部領域内で結合され得る。側面ピースは前ピースに縫いつけられ得る、又は単一ピースとして設計してもよい。更なる支持のために、胸カップを側面ピースの背後部と繋ぐ肩紐が備えられてもよい。同様にブラジャー様部品を有する、本発明の観念に含まれるさらなる衣料は、コルセット、ボディーストッキング、ネグリジェ、ビキニ、水着等である。
【0003】
これらの衣類の基本的な機能は、高い装着快適性と外見満足を組み合わせた、胸の支持、位置調整、ならびに好都合な成形を有している。
【0004】
胸の特に好都合な支持及び成形のために、ブラジャーは、胸底部に面している各カップの下部縁に沿って堅いワイヤが配置されることが知られている。金属又はプラスチックのような比較的堅くて柔軟な弾性材料で構成されるこれらワイヤの各々は、布材料の細長いポケット、所謂カップの縁に沿って延びるワイヤ導管内に挿入される。それらの剛直な形状の結果、ワイヤは胸底部の曲線を再現する。さらに当該ワイヤは、カップがその全幅に渡って均一に胸を支持及び装着することを確保する。ワイヤの無いブラジャーと比較して、この分類のブラジャーは、このようにより良い支持及び成形機能によって特徴づけられている。
【0005】
しかしながら、ワイヤが装着快適性を損ない得ることが判明した。カップの内部側にワイヤ導管を取り付けることによって、内部側の残り部分と比べて盛り上がった領域が形成されるのである。背部締め具が締められると、側面ピースから生じる引張力が、当該盛り上がり部領域内に圧力集中をもたらし、その結果喜ばしくない圧覚点を経験することになる。
【0006】
当然、過去にはワイヤ導管製造中に柔軟な材料を用いたり、又は、ワイヤ導管を発泡体又はシリコーンによって衝撃を和らげたりすることによって、これら圧覚点を防ぐ試みが成されたが、基本的な問題、つまりカップ内部側のワイヤ導管が高い接触圧を有する盛り上がり領域を常に形成するということは、このようにして解決することはできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この背景に対し、本発明は装着快適性を増すように、ワイヤを備えた公知のブラジャーをさらに改善するというゴールに基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴構成を備えたブラジャーによって解決されるだろう。
【0009】
有利な実施形態は、従属請求項から結果として生じるだろう。
【0010】
本発明の基本的な概念は複数のカップを作成することから構成され、少なくとも胸底部に面している下部縁領域内の、予め決められた厚み材料の外において、縁に沿った凹み部を形成可能にするのである。この凹み部は、ワイヤを収容するため、又はワイヤを中に封入した状態のワイヤ導管を収容するために用いられる。
【0011】
凹み深さが、ワイヤの厚み又はワイヤ導管+ワイヤの厚みと同じであるか、僅かに大きいならば特に有利であり、それによってワイヤ又はワイヤ導管の挿入及び固定後に、カップ内部側を越える突出が生じなくなる。このようにしてカップの内部側に本質的に平滑表面が結果として生じ、圧力を均一に分散することによって圧覚点を回避するのである。しかしながら、凹み深さがワイヤ又はワイヤ導管の厚みよりも小さい実施形態の場合であっても、カップ内部側を越えるワイヤ又はワイヤ導管の突出は依然として減少しており、それによって圧覚点の形成は減少される。したがって本発明に係る衣類は、全体的により高い装着快適性によって特徴づけられる。このことは購入に対する関心を増し、及び購買者によるワイヤ付き衣類の採用を増し、本発明の経済的成功への基礎を作ることになる。
【0012】
有利には、カップが、少なくともその下部縁領域内において熱可塑性変形を生じることが可能な発泡体、例えばポリウレタンを有している。この発泡体は、内部側及び/又は外部側で一層の布によって覆うことが可能である。この実施形態は凹み部が成形中に既に作られ得る、つまり、予め決められた型内で圧力と熱を加えることによって、局所的材料圧密及び焼き締めによって作られ得るという利点をもたらす。このようにして、作業工程追加による費用増加を排除する。
【0013】
好ましくは凹み部はカップの内部側に配置される、というのは、これによって装着中に見えず、これによって衣類の外観を損なうことがないからである。
【0014】
当該凹みを、カップの下部縁から所定の横方向距離をおいて配置するという可能性があり、それによってワイヤ又はワイヤ導管が、カップ内の両側に埋め込まれる。さらに当該凹み部を当該縁から距離をあけない設計も可能であり、その結果、挿入したワイヤ又はワイヤ導管は、カップの下部端を形成し、それによって胸底部に直接沿って進行する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、ワイヤは布材料で作られたワイヤ導管に縫いこまれ、当該凹み部内に挿入され、そこでかかる組み合わせ物として固定される。固定は例えば縫製、糊付け、又は溶接によって行うことが可能である。
【0016】
しかしこれは、ワイヤ導管の無いワイヤも凹み部内に据えることが可能であるという可能性を除外してはいない。この目的に適したワイヤは、鋭い縁を避けるように、好ましくはプラスチック製ジャケットによって覆うことが可能である。ワイヤの固定が、次にプラスチック製ジャケットを胸カップへ糊付け又は熱溶接することによって実施することが可能である。
【0017】
凹み部内におけるワイヤ又はワイヤ導管の位置をさらに固定するが、ブラジャー内部側の外観をより魅力的にするために、適切な場所にあるワイヤ又はワイヤ導管を備えた凹み部を追加の布層で覆うことができる。
【0018】
次に、図中に示したブラジャーの形態の実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るブラジャーの前面図である。
【図2】図1中に示したブラジャーのうち一つのカップだけの内部側図である。
【図3】図1及び2中に示したブラジャーの、線III−IIIに沿った断面図である。
【図4】図3中に示したブラジャーの、凹み部領域内の詳細図である。
【図5】本発明のさらなる実施形態の、一つのカップ内部側の部分図である。
【図6】図5中に示した実施形態の、線V−Vに沿った断面図である。
【図7】図6中に示したブラジャーの、凹み部領域内の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜4は、本発明の第1実施形態を表している。図1中には、本発明に係るブラジャー1が前面図において示されており、図2中には、内部側から見た図が、つまり装着者に面している側を示している。ブラジャー1は、胸を受け入れるための二つの胸カップ3を備えた前ピース2を有している。二つの胸カップ3は、この実施例では概ね台形をした中央ブリッジ4によって互いに接合されている。胸カップ3の側面縁にはそれぞれ側面ピース7が取り付けられ、図中のその左側面ピース7は、その自由端に鉤フックストリップ8を有しており、他の側面ピース7にはアイフックストリップ(Oesenband)9が設けられている。鉤フックストリップ8とアイフックストリップ9とは相互に作用して背部締め具を形成する。カップ3の上部縁12から側面ピース7の自由端まで延びる吊紐10も見える。胸カップ3の設計は図3及び図4から特に明らかである。胸カップ3はポリウレタン発泡体コア11を有しており、その下部縁13の領域内は数ミリメーター厚みの、例えば5mm厚みを有しており、カップ3の上部縁12に向かって連続的に薄くなっていく。カップ3の内部側は、発泡体コア11を内張りする布層14によって形成される。反対側の、カップ3の前側には発泡体コア11表面上に布層がゆるく置かれ、その縁にそって内部側布層14及び発泡体コア11と接合される。カップ3は成形型によって製造される、つまり、雄型部と雌型部の間で圧力及び熱を加えることによって3次元形状を実現するのである。
【0021】
図1及び図2から明らかなように、内部にワイヤ17を封入したワイヤ導管16が、カップ3の下部縁13に沿って延びる。ワイヤ導管16は堅調な布材料で構成されており、金属又はプラスチックで作られたワイヤ17を全ての側で取り囲んでいる。ワイヤ17を有するワイヤ導管16を受け入れるために、カップ3の内部側から下部縁13に沿って延びる凹み部18が一体成形され、その幅はワイヤ導管16の幅と概ね等しく、且つその高さはその厚みと概ね等しいのです。凹み部18は、カップの下部縁13によって終わっており、これにより、底部に向かって開いている(図3+図4)。凹み部18は、有利にはカップ3の成型中に作り出されて材料焼き締め及び圧密が加圧下及び加熱下で生じる。次にワイヤ17を備えたワイヤ導管16が、このようにして製造された凹み部18内に導入されて、例えばワイヤ導管16の縁に沿って縫製することによって又は糊付けすることによってその中に固定することが可能である。
【0022】
出来上がった状態において、カップ3の内部側はワイヤ導管16の側面領域と同一平面上にあり、それによって本発明に係るブラジャー内部側において盛り上がった領域は除かれ、これによって生じる圧覚点という問題は解消される。
【0023】
図5、図6及び図7は、本発明の部分修正した実施形態を示しており、同一の参照記号が同一の、又は類似の名前の付いた構成要素に用いられている。図5及び図6は、全体としては図1及び図2中に示した本発明に係るブラジャーの部分領域のみを示しており、従ってそこで成された説明が同様に当てはまる。再度ではあるが、上部縁12及び下部縁13を備えた胸カップ3が見える。胸カップは、発泡体コア11を取り囲む、外部側布層15と内部側布層14によって形成されている。この範囲までは、上述した本発明の実施形態と一致している。
【0024】
同様にワイヤ17を備えたワイヤ導管16は胸カップ3の下部縁13に沿って進行するが、本発明のこの実施形態では、ワイヤ17を備えたワイヤ導管16の位置が、下部縁13から所定の横方向距離を維持している。したがって、凹み部18’は下部縁13に向かって開いているのではなく、内部側布層14を有する発泡体コア11によって範囲を定められているのである。このようにして製造された長方形の断面を有する凹み部18’は、再度ではあるがその中に置かれ且つ適切な所に固定されたワイヤ17を備えたワイヤ導管16を受け入れるために用いられる。ここでも出来上がった状態において、カップ3の内部側とワイヤ導管16の側表面の間で同一表面位置が形成され、装着快適性の増加に寄与する。
【0025】
図示してはいないが本発明の範囲内にある、本発明に係るブラジャーの実施形態は、ワイヤがワイヤ導管なくして直接的に凹み部18、18’内に置かれてそこで固定されるというものである。この種類のワイヤは、ケガの危険性を減じるため且つ凹み部内での固定を容易にするために、プラスチック製ジャケットで覆われ得る。適切な材料が覆い用に用いられる場合には、そのようなワイヤは、熱を加えることによって凹み部底部に単に溶接され得るか、糊付けされてもよい。
【0026】
同様に本発明の有利な実施形態にしたがうと、ワイヤ導管16及び/又はその中に置かれたワイヤ17を備えた凹み部18、18’を、図示してはいないが布ストリップであって、その縁でもってカップ3の内部側と接合された布ストリップによって閉じることがもたらされる。
【符号の説明】
【0027】
1 ブラジャー
3 カップ
11 発泡体層
13 下部縁
16 ワイヤ導管
17 ワイヤ
18、18’ 凹み部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類、特にブラジャー(1)であって、二つのカップ(3)を有しており各々一つの女性の胸を受け入れるのに適しており、各カップは胸に面している内部側とそれとは反対側の外部側とを有しており、胸底部に面している各カップの下部縁(13)の領域内に堅いワイヤ(17)が配置された衣類において、
各カップ(3)は、少なくとも下部縁(13)の領域内において内部側と外部側との間に発泡体層(11)を有しており、且つ、下部縁(13)に沿って各カップ(3)に凹み部(18、18’)が一体成形され、上記ワイヤ(17)が上記凹み部(18、18’)内に配置されることを特徴とする、衣類。
【請求項2】
凹み部(18、18’)が一体成形され、カップ(3)の内部側から始まることを特徴とする、請求項1に記載の衣類。
【請求項3】
凹み部(18’)が、カップ(3)の下部縁(13)から所定の距離をおいて進行することを特徴とする、請求項1又は2に記載の衣類。
【請求項4】
凹み部(18)が、カップ(3)の下部縁(13)で直接始まることを特徴とする、請求項1又は2に記載の衣類。
【請求項5】
ワイヤ(17)がワイヤ導管(16)内に置かれ、且つワイヤ(17)を備えたワイヤ導管(16)が凹み部(18、18’)内に置かれることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の衣類。
【請求項6】
ワイヤ(17)を備えた凹み部(18、18’)が、カップ(3)の内部側において布層で閉じられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の衣類。
【請求項7】
凹み部(18、18’)が成型によって作り出されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の衣類。
【請求項8】
ワイヤ(17)がプラスチックで被覆されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の衣類。
【請求項9】
被覆用に用いられるプラスチックが軟質であることを特徴とする、請求項8に記載の衣類。
【請求項10】
ワイヤ(17)又はワイヤ導管(16)が凹み部(18、18’)内に、縫製、糊付け又は溶接によって固定されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の衣類。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−248685(P2010−248685A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−91256(P2010−91256)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(508123319)トリンフ インタートレード アーゲー (16)
【Fターム(参考)】