説明

複素環化合物

【課題】本発明は、公知の定型抗精神病薬及び非定型抗精神病薬に比べて、より広い治療スペクトラムを有し、副作用が少なく、忍容性及び安全性に優れた抗精神病薬になり得る複素環化合物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の複素環化合物は、(1) 7−{4−[4−(7−ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン−1−イル]ブトキシ}−1H−キノリン−2−オン、(2) 7−{4−[4−(1−オキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン−1−イル]ブトキシ}−1H−キノリン−2−オン、(3) (3S,4R)−7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−3,4−ジヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な複素環化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
統合失調症を始め双極性障害、気分障害及び感情障害の病因は、ヘテロジーナス(heterogeneous:異種)であることが知られている。それ故、薬剤に広い治療スペクトラムを発現させるためには、複数の薬理作用を併有していることが望まれている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2は、D2受容体パーシャルアゴニスト作用、5−HT2A受容体アンタゴニスト作用、α1受容体アンタゴニスト作用及びセロトニン取り込み阻害作用を併有し、広い治療スペクトラムを有する化合物について開示している。しかしながら、これらの特許文献には、本発明の複素環化合物について全く開示されていない。
【特許文献1】WO2006/112464A1
【特許文献2】WO2007/026959A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、公知の定型抗精神病薬及び非定型抗精神病薬に比べて、より広い治療スペクトラムを有し、副作用が少なく、忍容性及び安全性に優れた抗精神病薬を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ドパミンD2受容体パーシャルアゴニスト作用(D2受容体パーシャルアゴニスト作用)、セロトニン5−HT2A受容体アンタゴニスト作用(5−HT2A受容体アンタゴニスト作用)及びアドレナリンα1受容体アンタゴニスト作用(α1受容体アンタゴニスト作用)を有し、更にそれらの作用に加えてセロトニン取り込み阻害作用(あるいはセロトニン再取り込み阻害作用)を併有する新規複素環化合物を合成することに成功した。本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
【0006】
本発明は、下記(1)〜(8)に示す複素環化合物またはその塩及びその製造方法を提供する。
(1) 7−{4−[4−(7−ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン−1−イル]ブトキシ}−1H−キノリン−2−オン、
(2) 7−{4−[4−(1−オキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン−1−イル]ブトキシ}−1H−キノリン−2−オン、
(3) (3S,4R)−7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−3,4−ジヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン、
(4) (3R,4R)−7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−3,4−ジヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン、
(5) 7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−3−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン、
(6) 7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−4−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン、
(7) 7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−1−オキシピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン、及び
(8) 7−{4−[4−(1,1−ジオキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン−1−イル]ブトキシ}−1H−キノリン−2−オン
以下に、本発明により得られる化合物(1)〜(8)もしくはそれらの塩の製造法を詳細に説明する。化合物(1)〜(8)もしくはそれらの塩は、種々の方法により製造され得るが、その一例を示せば、例えば本明細書の参考例1〜27及び実施例1〜8に記載されている方法に従って製造することができる。
【0007】
化合物(1)〜(8)の好適な塩は、薬理的に許容される塩であって、例えば、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等)等の金属塩、アンモニウム塩、炭酸アルカリ金属(例えば、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等)、炭酸水素アルカリ金属(例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等)等の無機塩基の塩;例えば、トリ(低級)アルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン等)、ピリジン、キノリン、ピペリジン、イミダゾール、ピコリン、ジメチルアミノピリジン、ジメチルアニリン、N−(低級)アルキル−モルホリン(例えば、N−メチルモルホリン等)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1、8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等の有機塩基の塩;塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩;ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩、ピクリン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、グルタミン酸塩等の有機酸の塩等が挙げられる。
【0008】
また、化合物(1)〜(8)に溶媒和物(例えば、水和物、エタノレート等)が付加された形態の化合物も、本発明の複素環化合物に包含される。好ましい溶媒和物としては、水和物が挙げられる。
【0009】
上記製造方法で得られる各々の目的化合物は、反応混合物を、例えば、冷却した後、濾過、濃縮、抽出等の単離操作によって粗反応生成物を分離し、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の通常の精製操作によって、反応混合物から単離精製することができる。
【0010】
本発明の化合物(1)〜(8)には、幾何異性体、立体異性体、光学異性体等の異性体も当然に包含される。
【0011】
化合物(1)〜(8)及びそれらの塩は、一般的な医薬製剤の形態で用いられる。製剤は通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の希釈剤あるいは賦形剤を用いて調製される。この医薬製剤としては各種の形態が治療目的に応じて選択でき、その代表的なものとして錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、注射剤(液剤、懸濁剤等)等が挙げられる。
【0012】
錠剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分野で従来よりよく知られている各種のものを広く使用することができる。その例としては、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
【0013】
丸剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用できる。その例としては、例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。
【0014】
坐剤の形態に成形するに際しては、担体として従来公知のものを広く使用できる。その例としては、例えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセライド等を挙げることができる。
【0015】
カプセル剤は常法に従い通常有効成分化合物を上記で例示した各種の担体と混合して硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセル等に充填して調製される。
【0016】
注射剤として調製される場合、液剤、乳剤及び懸濁剤は殺菌され、且つ血液と等張であるのが好ましく、これらの形態に成形するに際しては、希釈剤としてこの分野において慣用されているものをすべて使用でき、例えば水、エチルアルコール、マクロゴール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を使用できる。
【0017】
なお、この場合等張性の溶液を調製するに充分な量の食塩、ブドウ糖あるいはグリセリンを医薬製剤中に含有せしめてもよく、また通常の溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤等を添加してもよい。更に必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を医薬製剤中に含有させることもできる。
【0018】
本発明の医薬製剤中に含有されるべき化合物(1)〜(8)又はそれらの塩の量としては、特に限定されず広範囲から適宜選択されるが、通常製剤組成物中に約1〜70重量%、好ましくは約1〜30重量%とするのがよい。
【0019】
本発明の医薬製剤の投与方法は特に制限はなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等に応じた方法で投与される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤の場合には、経口投与される。また注射剤の場合には単独で又はブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与され、更に必要に応じて単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与される。坐剤の場合には直腸内投与される。
本発明医薬製剤の投与量は、用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等により適宜選択されるが、通常有効成分化合物の量が、1日当り体重1kg当り、約0.1〜10mg程度とするのがよい。また投与単位形態の製剤中には有効成分化合物が約1〜200mgの範囲で含有されるのが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の化合物は、D2受容体パーシャルアゴニスト作用、5−HT2A受容体アンタゴニスト作用及びセロトニン取り込み阻害作用(あるいはセロトニン再取り込み阻害作用)を有している。
【0021】
D2受容体パーシャルアゴニスト作用は、ドパミン(DA)作動性神経伝達が亢進している場合にはこれを抑制し、一方、DA作動性神経伝達が低下している場合にはこれを促進してDA神経伝達を正常な状態へ安定化させる働き(dopamine system stabilizer、ドパミンシステムスタビライザー)を有している。この働きにより、副作用を発現することなく、DA神経伝達異常(亢進及び低下)に基づく症状に対して、優れた臨床改善作用、例えば、陽性及び陰性症状改善作用、認知障害改善作用、うつ症状改善作用等を発現する(融道男:精神医学,第46巻,第855〜864頁(2004)、菊地哲朗及び廣瀬毅:脳の科学,第25巻,第579〜583頁(2004)及びHarrison, T. S. and Perry, C. M.: Drugs 64: 1715-1736, 2004 参照)。
【0022】
5−HT2A受容体アンタゴニスト作用は、錐体外路系副作用を軽減すると共に、優れた臨床効果を発現し、例えば、陰性症状改善、認知障害改善、うつ症状改善、不眠改善等に有効である(石郷岡純及び稲田健:臨床精神薬理,第4巻,第1653〜1664頁(2001)、村崎光邦:臨床精神薬理,第1巻,第5〜22頁(1998)、Pullar, I.A. et al., : Eur. J. Pharmacol., 407:_39-46, 2000及びMeltzer, H. Y. et al.: Prog. Neuro-psychopharmacol. Biol. Psychiatry 27: 1159-1172, 2003 参照)。
【0023】
セロトニン取り込み阻害作用(あるいはセロトニン再取り込み阻害作用)は、例えば、うつ症状の改善に有効である(村崎光邦:臨床精神薬理,第1巻,第5〜22頁(1998)参照)。
【0024】
本発明の化合物は、これら3つの作用が全て優れているか、又はこれら作用のうち1つ又は2つが顕著に優れている。
【0025】
また、本発明の化合物のうちのあるものは、上記作用に加えて、α1受容体アンタゴニスト作用を有している。α1受容体アンタゴニスト作用は、統合失調症の陽性症状の改善に有効である(Svensson, T. H.: Prog. Neuro-psychopharmacol. Biol. Psychiatry 27:1145-1158, 2003 参照)。
【0026】
そのため、本発明の化合物は、統合失調症及び他の中枢神経疾患に対して広い治療スペクトラムを有し、優れた臨床効果を備えている。
【0027】
従って、本発明の化合物は、統合失調症、治療抵抗性、難治性又は慢性統合失調症、失調感情障害、精神病性障害、気分障害、双極性障害(例えば、双極性I型障害及び双極性II型障害)、うつ病、内因性うつ病、大うつ病、メランコリー及び治療抵抗性うつ病、気分変調性障害、気分循環性障害、不安障害(例えば、パニック発作、パニック障害、広場恐怖、社会恐怖、強迫性障害、外傷後ストレス障害、全般性不安障害、急性ストレス障害等)、身体表現性障害(例えば、ヒステリー、身体化障害、転換性障害、疼痛性障害、心気症等)、虚偽性障害、解離性障害、性障害(例えば、性機能不全、性的欲求障害、性的興奮障害、勃起障害等)、摂食障害(例えば、神経性無食欲症、神経性大食症等)、睡眠障害、適応障害、物質関連障害(例えば、アルコール乱用、中毒及び薬物耽溺、覚醒剤中毒、麻薬中毒等)、無快感症(快感消失症、anhedonia、例えば医原性無快感症、心理的、精神的な原因での無快感症、鬱病に伴う無快感症、統合失調症に伴う無快感症等)、せん妄、認知障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、その他の神経変性疾患に伴う認知障害、アルツハイマー病、パーキンソン病及び関連障害の神経変性疾患に起因した認知障害、統合失調症の認知障害、治療抵抗性、難治性又は慢性統合失調症等に起因する認知障害、嘔吐、乗物酔い、肥満、偏頭痛、疼痛、精神遅滞、自閉性障害(自閉症)、トウレット障害、チック障害、注意欠陥多動性障害、行為障害、ダウン症候群等、中枢神経系の種々の障害の改善に極めて有効である。
【0028】
更に、本発明の化合物は、副作用が殆どなく、忍容性及び安全性の点において優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、参考例、実施例及び薬理試験例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。
【0030】
参考例1
4−ブロモ−7−メトキシベンゾ[b]チオフェン10.4g(42.8ミリモル)のジクロロメタン溶液(200ml)にアルゴン雰囲気下、0℃で三ふっ化ほう素ジメチルスルフィド錯体13.5ml(128ミリモル)を加えて、室温で20時間撹拌した。反応液を0℃に冷却し、500mlの水を加えて撹拌した。不溶物を濾去し、濾液にジクロロメタンを加えて分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。残渣を中圧液体クロマトグラフィー(シリカゲル、n−ヘキサン:酢酸エチル=9:1→8:2)で精製した。精製物を減圧下に濃縮乾固して、淡褐色粉末の4−ブロモベンゾ[b]チオフェン−7−オール7.3g(収率75%)を得た。
【0031】
参考例2
4−ブロモベンゾ[b]チオフェン−7−オール1.8g(7.9ミリモル)及び3,4−ジヒドロ−2H−ピラン3.6ml(39ミリモル)のジクロロメタン溶液(14ml)にp−トルエンスルホン酸ピリジニウム197mg(0.78ミリモル)を加えて、室温で一夜撹拌した。反応液に水とジクロロメタンとを加えて分液し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。残渣を中圧液体クロマトグラフィー(シリカゲル、n−ヘキサン:酢酸エチル=100:0→93:7)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、淡黄色油状物の2−(4−ブロモ-ベンゾ[b]チオフェン−7−イルオキシ)テトラヒドロピラン1.7g(収率68%)を得た。
【0032】
参考例3
ピペラジン11.4g(132ミリモル)、rac−2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル2.06g(3.3ミリモル)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)1.01g(1.1ミリモル)及びナトリウムt−ブトキシド3.18g(33.1ミリモル)のトルエン溶液140mlに2−(4−ブロモ−ベンゾ[b]チオフェン−7−イルオキシ)テトラヒドロピラン6.9g(22ミリモル)のトルエン溶液(70ml)を加えてアルゴン雰囲気中、4時間加熱還流下に撹拌した。室温まで冷却し、反応液に水及び酢酸エチルを加えてセライト濾過した。濾液を分液し、有機層を水及び飽和食塩水の順で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=100:0→30:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、黄色無定形固体の1−[7−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)ベンゾ[b]チオフェン−4−イル]ピペラジン5.4g(収率77%)を得た。
【0033】
参考例4
7−(4−クロロブトキシ)−1H−キノリン−2−オン4.3g(17ミリモル)、1−[7−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)ベンゾ[b]チオフェン−4−イル]ピペラジン5.4g(17ミリモル)、炭酸カリウム2.8g(20ミリモル)及び沃化ナトリウム2.6g(17ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF)45mlに加えて、80℃で4時間撹拌した。室温まで冷却し、反応液に水と酢酸エチルとを加え、析出する結晶を濾取した。結晶をエタノールから再結晶して、白色粉末の7−(4−{4−[7−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)ベンゾ[b]チオフェン−4−イル]ピペラジン−1−イル}ブトキシ)−1H−キノリン−2−オン6.9g(収率71%)を得た。
【0034】
参考例5
4−(ベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル5.0g(16ミリモル)のヘキサフルオロイソプロパノール溶液(100ml)に0℃で、m−クロロ過安息香酸(75%)10.8g(47ミリモル)を加えて36時間撹拌した。反応液にNHシリカゲル150mlを加えてNHシリカゲル800mlを用いてカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮し、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=100:0→10:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、淡黄色無定形固体の4−(1−オキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)−4−オキシピペラジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル4.1g(収率75%)を得た。
【0035】
参考例6
4−(1−オキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)−4−オキシピペラジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル2.0g(5.7ミリモル)のジクロロメタン溶液(20ml)にトリフルオロ酢酸10mlを加えて室温で1時間撹拌した。減圧下に濃縮し、残渣をメタノールに溶解し、NHシリカゲルで中和(固相抽出)した。減圧下に濃縮後、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=100:0→5:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、黄色無定形固体の1−(1−オキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン 1−オキシド1.4g(収率98%)を得た。
【0036】
参考例7
1−(1−オキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン 1−オキシド1.4g(5.6ミリモル)をジクロロメタンとメタノールとの1:1混合溶液(18ml)に溶解し、0℃でトリフルオロ酢酸0.46ml(6.2ミリモル)及びトリフェニルホスフィン1.8g(6.9ミリモル)を加えて室温で30分間撹拌した。反応液をNHシリカゲルで中和(固相抽出)した。減圧下に濃縮後、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=100:0→50:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、黄色無定形固体の1−(1−オキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン1.0g(収率77%)を得た。
【0037】
参考例8
4−(4−クロロブトキシ)−2−ニトロベンズアルデヒド5.2g(20ミリモル)、エチレングリコール3.4ml(60ミリモル)及びp−トルエンスルホン酸0.4g(2ミリモル)のトルエン溶液をDean-starkで5時間加熱還流した。室温まで冷却し、反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlに注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮し、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、n−ヘキサン:酢酸エチル=100:0→75:25)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、黄色油状物の2−[4−(4−クロロブトキシ)−2−ニトロフェニル]−[1,3]ジオキソラン5.7g(収率95%)を得た。
【0038】
参考例9
2−[4−(4−クロロブトキシ)−2−ニトロフェニル]−[1,3]ジオキソラン5.7g(19ミリモル)、1−ベンゾ[b]チオフェン−4−イルピペラジン5.2g(24ミリモル)、炭酸カリウム3.1g(22ミリモル)及び沃化ナトリウム2.8g(19ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF)50mlに加えて、80℃で2時間撹拌した。室温まで冷却し、反応液に水を加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を水で2回、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮し、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、n−ヘキサン:酢酸エチル=90:10→60:40)で精製した。精製物を減圧下に濃縮乾固して、黄色固体の1−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−4−[4−(4−[1,3]ジオキソラン−2−イル−3−ニトロフェノキシ)ブチル]ピペラジン8.4g(収率89%)を得た。
【0039】
参考例10
1−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−4−[4−(4−[1,3]ジオキソラン−2−イル−3−ニトロフェノキシ)ブチル]ピペラジン2.8g(5.8ミリモル)のジクロロメタン溶液にトリフルオロ酢酸4.4ml(59ミリモル)を加えて室温で2時間撹拌した。反応液を5N−水酸化ナトリウム水溶液20mlと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlとに注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮し、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン:酢酸エチル=90:10→60:40)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、褐色油状物の4−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−2−ニトロベンズアルデヒド2.5g(収率98%)を得た。
【0040】
参考例11
4−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−2−ニトロベンズアルデヒド4.4g(10ミリモル)及びジエチルホスホノ酢酸エチル2.2ml(11ミリモル)のアセトニトリル溶液(90ml)に塩化リチウム517mg(12ミリモル)及びN−エチルジイソプロピルアミン1.9ml(11ミリモル)を加えて室温で1.5日撹拌した。反応液を減圧下に濃縮し、残渣に5%炭酸カリウム水溶液を加えてジクロロメタンで抽出した。有機層を水及び飽和食塩水の順で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮し、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、ジクロロメタン)で精製した。精製物を減圧下に濃縮し、残渣をジクロロメタン−n−ヘキサン混合溶媒から再結晶して、黄色粉末の(E)−3−{4−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−2−ニトロフェニル}アクリル酸エチルエステル3.7g(収率73%)を得た。
【0041】
参考例12
(E)−3−{4−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−2−ニトロフェニル}アクリル酸エチルエステル2.0g(3.9ミリモル)のジクロロメタン溶液にm−クロロ過安息香酸(75%)1.4g(6.1ミリモル)を加えて30分間撹拌した。反応液をNHシリカゲルで中和(固層抽出、ジクロロメタン:メタノール=100:0→30:1)し、溶出液を減圧下に濃縮した。残渣ををジクロロメタン80mlに溶解し、4−メチルモルホリン N-オキシド1.4g(12ミリモル)及び4%四酸化オスミウム水溶液5ml(0.8ミリモル)を加えて室温で17時間撹拌した。反応液に2−メチル−2−ブテン2.1ml(20ミリモル)を加えて室温で1時間撹拌した。反応液に水100mlを加えてジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮し、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=100:0→30:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮し、残渣を再度中圧液体クロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=50:1→15:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮乾固して、黄色粉末の(2S,3R)−3−{4−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル-ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−2−ニトロフェニル}−2,3−ジヒドロキシプロピオン酸エチルエステル1.4g(収率67%)を得た。
【0042】
参考例13
ジフェニルホスホノ酢酸エチル2.0g(7.6ミリモル)のテトラヒドロフラン(THF)溶液(50ml)にアルゴン雰囲気下、ヘキサメチルジシラザンナトリウム(1M−THF溶液)7.7ml(7.7ミリモル)を加えて撹拌した。0℃で4−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−2−ニトロベンズアルデヒド3.35g(7.6ミリモル)のTHF溶液(50ml)を加え、室温で18時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮し、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、n−ヘキサン:酢酸エチル=70:30)で精製した。精製物を減圧下に濃縮し、褐色油状物の(Z)−3−{4−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−2−ニトロフェニル}アクリル酸 エチル エステル2.58g(収率66%)を得た。
【0043】
参考例14
(Z)−3−{4−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−2−ニトロフェニル}アクリル酸エチルエステル1.1g(2.0ミリモル)のジクロロメタン溶液(20ml)にm−クロロ過安息香酸(75%)1.04g(4.5ミリモル)を加えて1時間撹拌した。反応液をNHシリカゲルで中和(固層抽出、ジクロロメタン:メタノール=100:0→30:1)し、溶出液を減圧下に濃縮した。残渣をジクロロメタン50mlに溶解し、4−メチルモルホリン N−オキシド805mg(6.9ミリモル)及び4%四酸化オスミウム水溶液1.4ml(0.23ミリモル)を加えて室温で24時間撹拌した。反応液に2−メチル−2−ブテン2.4ml(22ミリモル)を加えて室温で1夜撹拌した。反応液をNHシリカゲルで中和(固層抽出、ジクロロメタン:メタノール=100:0→30:1)し、溶出液を減圧下に濃縮した。残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=100:0→30:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮乾固して、黄色無定形固体の(2R,3R)−3−{4−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−2−ニトロフェニル}−2,3−ジヒドロキシプロピオン酸 エチル エステル0.83g(収率65%)を得た。
【0044】
参考例15
4−(4−クロロブトキシ)−2−ニトロベンズアルデヒド2.0g(7.8ミリモル)、1,3−プロピレングリコール1.7ml(24ミリモル)及びp−トルエンスルホン酸1水和物147mg(0.8ミリモル)のトルエン溶液(40ml)をDean-starkで2時間加熱還流した。室温まで冷却し、反応液を1N−水酸化ナトリウム水溶液1ml及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlに注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮し、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、n−ヘキサン:酢酸エチル=100:0→75:25)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、黄色油状物の2−[4−(4−クロロブトキシ)−2−ニトロフェニル]−[1,3]ジオキサン2.6g(収率定量的)を得た。
【0045】
参考例16
2−[4−(4−クロロブトキシ)−2−ニトロフェニル]−[1,3]ジオキサン2.6g(8.2ミリモル)の酢酸エチル溶液(30ml)に10%パラジウム炭素0.6gを加えて室温常圧で接触還元した。セライト濾過して触媒を除去し、濾液を減圧下に濃縮した。残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、n−ヘキサン:酢酸エチル=80:20→50:50)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、黄色油状物の5−(4−クロロブトキシ)−2−[1,3]ジオキサン−2−イル−フェニルアミン1.4g(収率60%)を得た。
【0046】
参考例17
5−(4−クロロブトキシ)−2−[1,3]ジオキサン−2−イル−フェニルアミン1.4g(4.9ミリモル)及びピリジン1.0ml(12ミリモル)のジクロロメタン溶液(15ml)に0℃で塩化クロロアセチル0.47ml(5.9ミリモル)を加えて0℃で15分間、室温で45分間撹拌した。0℃で反応液に0.24N−塩酸50mlとジクロロメタン40mlを加えて撹拌後、分液した。有機層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮し、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、n−ヘキサン:酢酸エチル=80:20→60:40)で精製した。精製物を減圧下に濃縮乾固して、白色粉末の2−クロロ−N−[5−(4−クロロブトキシ)−2−[1,3]ジオキサン−2−イル−フェニル]−アセトアミド1.06g(収率59%)を得た。
【0047】
参考例18
2−クロロ−N−[5−(4−クロロブトキシ)−2−[1,3]ジオキサン−2−イル−フェニル]−アセトアミド503mg(1.66ミリモル)のアセトニトリル溶液(14ml)にモルホリン0.22ml(2.5ミリモル)及びトリエチルアミン0.23ml(1.7ミリモル)を加えて2時間加熱還流下に撹拌した。反応液を減圧下に濃縮し、残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮し、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、n−ヘキサン:酢酸エチル=70:30→40:60)で精製した。精製物を減圧下に濃縮乾固して、白色固体のN−[5−(4−クロロブトキシ)−2−[1,3]ジオキサン−2−イル−フェニル]−2−モルホリン−4−イル−アセトアミド612mg(収率89%)を得た。
【0048】
参考例19
N−[5−(4−クロロブトキシ)−2−[1,3]ジオキサン−2−イル−フェニル]−2−モルホリン−4−イル−アセトアミド604mg(1.46ミリモル)のジクロロメタン溶液(9ml)に水ml及びトリフルオロ酢酸1.1ml(15ミリモル)を加えて室温で2時間撹拌した。反応液に1N−水酸化ナトリウム水溶液15ml及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液80mlを加えてジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮し、淡黄色油状物のN−[5−(4−クロロブトキシ)−2−ホルミルフェニル]−2−モルホリン−4−イル−アセトアミド524mg(収率定量的)を得た。
【0049】
参考例20
N−[5−(4−クロロブトキシ)−2−ホルミルフェニル]−2−モルホリン−4−イル−アセトアミド524mg(1.48ミリモル)のt−ブチルアルコール溶液(40ml)にナトリウムt−ブトキシド182mg(1.62ミリモル)を加えて3時間加熱還流下に撹拌した。反応液に水と1N−塩酸1.6mlとを加えてジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮し、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=50:1→20:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮乾固して、淡黄色粉末の7−(4−クロロブトキシ)−3−モルホリン−4−イル−1H−キノリン−2−オン335mg(収率67%)を得た。
【0050】
参考例21
7−(4−クロロブトキシ)−3−モルホリン−4−イル−1H−キノリン−2−オン326mg(0.97ミリモル)の酢酸溶液(3.2ml)に濃塩酸9.6mlを加えて36時間加熱還流下に撹拌した。反応液に水を加えてジクロロメタンで抽出した。有機層を水及び飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮し、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=30:1→10:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮乾固して、白色粉末の7−(4−クロロブトキシ)−3−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン91mg(収率35%)を得た。
【0051】
参考例22
1.1M−ビス(トリメチルシリル)アミドリチウム・テトラヒドロフラン溶液19ml(2.1ミリモル)のTHF溶液(10ml)を−80℃に冷却し、アルゴン雰囲気下、酢酸エチル1.9ml(19ミリモル)を加えて同温度で30分間撹拌した。4−(4−クロロブトキシ)−2−ニトロベンズアルデヒド2.0g(7.8ミリモル)のTHF溶液(10ml)をカニューラを用いて滴下した。同温度で30分間撹拌し、2時間で室温まで昇温した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮し、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(シリカゲル、n−ヘキサン:酢酸エチル=80:20→50:50)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、褐色油状物の3−[4−(4−クロロブトキシ)−2−ニトロフェニル]−3−ヒドロキシプロピオン酸 エチル エステル1.6g(収率59%)を得た。
【0052】
参考例23
3−[4−(4−クロロブトキシ)−2−ニトロフェニル]−3−ヒドロキシプロピオン酸エチルエステル1.4g(4.3ミリモル)の酢酸エチル溶液(20ml)にo−ヨードキシ安息香酸2.3g(8.2ミリモル)を加えて3時間加熱還流下に撹拌した。室温まで冷却し、不溶物を濾別した。濾液を炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下に濃縮した。残渣を中圧液体クロマトグラフィー(シリカゲル、n−ヘキサン:ジクロロメタン:酢酸エチル=70:30:0→63:27:10)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して黄色油状物の3−[4−(4−クロロブトキシ)−2−ニトロフェニル]−3−オキソプロピオン酸 エチル エステル1.2g(収率81%)を得た。
【0053】
参考例24
3−[4−(4−クロロブトキシ)−2−ニトロフェニル]−3−オキソプロピオン酸エチルエステル1.0g(2.9ミリモル)をエタノール35mlに懸濁し、酢酸アンモニウム2.2g(29ミリモル)の水溶液(10ml)及び亜鉛粉末5.7g(87ミリモル)を加えて還流下20分間撹拌した。反応液をセライト濾過し、濾物を熱エタノールで洗浄した。濾液と洗液とを合わせて減圧下に濃縮した。残渣をメタノールで洗浄後、乾燥して白色粉末の7−(4−クロロブトキシ)−4−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン578mg(収率74%)を得た。
【0054】
参考例25
4−(ベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル952mg(3ミリモル)のヘキサフルオロイソプロパノール溶液(20ml)に0℃で、m−クロロ過安息香酸(75%)3.44g(26.5ミリモル)を加えて24時間撹拌した。反応液にNHシリカゲル30mlを加えてNHシリカゲル300mlを用いてカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮し、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=100:0→20:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、淡黄色無定形固体の4−(1,1−ジオキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)−4−オキシピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル918mg(収率84%)を得た。
【0055】
参考例26
4−(1,1−ジオキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)−4−オキシピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル2.0g(5.5ミリモル)をメタノールと二硫化炭素との1:1混合溶液(40ml)に溶解し、50〜60℃で4時間撹拌した。反応液を室温まで冷却した。減圧下に濃縮し、残渣をメタノールで洗浄後、乾燥して、黄色粉末の4−(1,1−ジオキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸 tert−ブチル エステル1.3g(収率67%)を得た。
【0056】
参考例27
4−(1,1−ジオキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル5.3g(15ミリモル)のジクロロメタン溶液(25ml)にトリフルオロ酢酸25mlを加えて室温で1時間撹拌した。減圧下に濃縮し、残渣をメタノールに溶解し、NHシリカゲルで中和(固相抽出)した。減圧下に濃縮後、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=100:0→5:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、黄色無定形固体の4−(1,1−ジオキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン1.4g(収率98%)を得た。
【0057】
実施例1
7−(4−{4−[7−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)ベンゾ[b]チオフェン−4−イル]ピペラジン−1−イル}ブトキシ)−1H−キノリン−2−オン4.0g(7.2ミリモル)をエタノール150mlに加えて加熱溶解した。室温まで冷却し、1N−塩化水素エタノール溶液40mlを加えて室温で20時間撹拌した。析出する結晶を濾取し、エタノールで洗浄後、乾燥して白色粉末の7−{4−[4−(7−ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン−1−イル]ブトキシ}−1H−キノリン−2−オン・塩酸塩3.4g(収率97%)を得た。
融点267℃(分解)。
【0058】
実施例2
1−(1−オキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン1.0g(4.3ミリモル)をジクロロメタン20ml及びメタノール20mlの混合溶液に溶解し、4−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−7−イルオキシ)ブチルアルデヒド900mg(3.9ミリモル)を加えて0℃に冷却した。酢酸0.49ml(8.6ミリモル)及びシアノトリヒドロほう酸ナトリウム536mg(8.5ミリモル)を加えて室温で3時間撹拌した。反応液に1N−水酸化ナトリウム水溶液8.6ml、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200ml及びジクロロメタン200mlを加えて撹拌後、セライト濾過した。濾液を分液し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸アトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮し、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=100:0→5:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、黄色無定形固体の7−{4−[4−(1−オキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン−1−イル]ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン561mg(収率32%)を得た。
融点175−179℃(分解)。
【0059】
実施例3
(2S,3R)−3−{4−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル-ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−2−ニトロフェニル}−2,3−ジヒドロキシプロピオン酸エチルエステル1.6g(2.9ミリモル)をエタノール60mlに懸濁し、酢酸アンモニウム2.3g(30ミリモル)の水溶液(20ml)及び亜鉛粉末5.8g(89ミリモル)を加えて還流下10分間撹拌した。反応液をセライト濾過し、濾物をエタノールで洗浄した。濾液と洗液を合わせて減圧下に濃縮した。残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=100:0→30:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮し、残渣をジクロロメタンから再結晶して白色粉末の(3S,4R)−7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−3,4−ジヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン1.2g(収率90%)を得た。
融点147−151℃。
【0060】
実施例4
(2R,3R)−3−{4−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−2−ニトロフェニル}−2,3−ジヒドロキシプロピオン酸エチルエステル878mg(1.6ミリモル)をエタノール35mlに懸濁し、酢酸アンモニウム1.2g(16ミリモル)の水溶液(10ml)及び亜鉛粉末3.2g(50ミリモル)を加えて還流下10分間撹拌した。反応液をセライト濾過し、濾物をエタノールで洗浄した。濾液と洗液とを合わせて減圧下に濃縮した。残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=100:0→10:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮し、残渣をジクロロメタンから再結晶して白色粉末の(3R,4R)−7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−3,4−ジヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン536mg(収率71%)を得た。
融点150−155℃。
【0061】
実施例5
7−(4−クロロブトキシ)−3−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン400mg(1.49ミリモル)、1−ベンゾ[b]チオフェン−4−イルピペラジン489mg(2.24ミリモル)、炭酸カリウム496mg(3.6ミリモル)及び沃化ナトリウム224mg(1.49ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF)5mlに加えて、80℃で14時間撹拌した。室温まで冷却し、反応液に水を加えて析出した固体を濾取した。濾液に1N−塩酸3.6mlを加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を水で2回、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮し、残渣と濾物とを合わせて中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=30:1→10:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮乾固して、白色粉末の7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−3−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン225mg(収率34%)を得た。
【0062】
実施例6
7−(4−クロロブトキシ)−4−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン400mg(1.49ミリモル)、1−ベンゾ[b]チオフェン−4−イルピペラジン489mg(2.24ミリモル)、炭酸カリウム496mg(3.6ミリモル)及び沃化ナトリウム224mg(1.49ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF)8mlに加えて、80℃で14時間撹拌した。室温まで冷却し、反応液に水を加えて析出した固体を濾取した。濾液に1N−塩酸3.6mlを加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を水で2回、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮し、残渣と濾物とを合わせて中圧液体クロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=20:1→10:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮乾固して、白色粉末の7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−4−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン93mg(収率14%)を得た。
【0063】
実施例7
7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イルピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン2.0g(4.6ミリモル)のジクロロメタン溶液(40ml)に0℃で、m−クロロ過安息香酸(75%)1.1g(4.8ミリモル)を加えて1時間撹拌した。反応液にNHシリカゲル20mlを加えてNHシリカゲル100mlを用いてカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮し、残渣を中圧液体クロマトグラフィー(NHシリカゲル、ジクロロメタン:メタノール=100:0→10:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮して、ジクロロメタン:メタノールから結晶化して白色粉末の7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−1−オキシピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン1.6g(収率77%)を得た。
融点176−179℃(分解)。
【0064】
実施例8
7−(4−クロロブトキシ)−1H−キノリン−2−オン4.3g(17ミリモル)、4−(1,1−ジオキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン5.4g(17ミリモル)、炭酸カリウム2.8g(20ミリモル)及び沃化ナトリウム2.6g(17ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF)45mlに加えて、80℃で4時間撹拌した。室温まで冷却し、反応液に水と酢酸エチルを加え、析出する結晶を濾取した。濾液を分液し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下に濃縮した。残渣と先に濾取した不溶物を合わせてシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=30:1→10:1)で精製した。精製物を減圧下に濃縮し、残渣をジクロロメタン−メタノールから再結晶して、白色粉末の7−{4−[4−(1,1−ジオキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン−1−イル]ブトキシ}−1H−キノリン−2−オン6.9g(収率71%)を得た。
融点146−151℃。
【0065】
薬理試験1
1)ドパミンD2受容体結合実験
Kohlerらの方法(Kohler C, Hall H, Ogren SO and Gawell L. Specific in vitro and in vivo binding of 3H-raclopride. A potent substituted benzamide drug with high affinity for dopamine D-2 receptors in the rat brain. Biochem. Pharmacol., 1985; 34: 2251-2259)に従って、実験を行った。
【0066】
ウイスター系雄性ラットを断頭し、脳をすみやかに取り出し、線条体を摘出した。組織重量の50倍量の50mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)−塩酸緩衝液(pH:7.4)中で高速回転刃によるホモジナイザーを用いてホモジナイズし、4℃、48,000×gで10分間遠心した。得られた沈渣を再度組織重量の50倍量の上記緩衝液で懸濁し、37℃で10分間インキュベーションした後、上記条件で遠心した。得られた沈渣を組織重量の25倍量の50mMトリス−塩酸緩衝液(120mM NaCl、5mM KCl、2mM CaCl2、1mM MgCl2含有、pH:7.4)で懸濁し、これらを膜標本として結合実験に用いるまで−85℃で凍結保存した。
【0067】
結合実験は、膜標本40μl、[3H]−ラクロプライド20μl(最終濃度1−2nM)、試験化合物20μl及び50mMトリス−塩酸緩衝液(120mMNaCl、5mM KCl、2mM CaCl2、1mM MgCl2含有、pH:7.4)で全容量200μlにして行った(最終ジメチルスルホキシド濃度1%)。反応は室温で1時間行い、セルハーベスターを用い、グラスファイバー製フィルタープレートに吸引濾過することにより終了した。グラスファイバー製フィルタープレートを50mMトリス−塩酸緩衝液(pH:7.4)で洗浄した後、乾燥後、マイクロプレート液体シンチレーションカクテルを加えて、マイクロプレートシンチレーションカウンターで放射活性を測定した。10μM(+)−塩酸ブタクラモール存在下での放射活性を非特異結合とした。
IC50値は、濃度依存性反応から非線形解析プログラムを用いて算出した。Ki値は、Cheng-Prussoff 式を用いてIC50値から算出した。その結果、実施例3の化合物は0.1nMを示した。
【0068】
2)セロトニン5−HT2A受容体結合実験
Leysen JEらの方法(Leysen JE, Niemegeers CJE, Van Nueten JM, and Laduron PM. [3H]Ketanserin (R 41 468), a selective 3H-ligand for serotonin 2 receptor binding sites. Mol. Pharmacol., 1982; 21: 301-314)に従って、実験を行った。
【0069】
ウイスター系雄性ラットを断頭し、脳をすみやかに取り出し、前頭皮質を摘出した。組織重量の10倍量の0.25Mショ糖中でテフロン(登録商標)ガラスホモジナイザーを用いてホモジナイズし、4℃、1,000×gで10分間遠心した。得られた上清を別の遠心管に移し、沈渣を組織重量の5倍量の0.25Mショ糖で懸濁し、上記条件で遠心した。得られた上清を先に得られた上清と合わせ50mMトリス−塩酸緩衝液(pH:7.4)で組織重量の40倍量に調製し、4℃、35,000×gで10分間遠心した。得られた沈渣を再度組織重量の40倍量の上記緩衝液で懸濁し、上記条件で遠心した。得られた沈渣を組織重量の20倍量の上記緩衝液で懸濁し、これらを膜標本として結合実験に用いるまで−85℃で凍結保存した。
【0070】
結合実験は、膜標本40μl、[3H]−ケタンセリン20μl(最終濃度1−3nM)、試験化合物20μl及び50mMトリス−塩酸緩衝液(pH:7.4)で全容量200μlにして行った(最終ジメチルスルホキシド濃度1%)。反応は37℃で20分間行い、セルハーベスターを用い、グラスファイバー製フィルタープレートに吸引濾過することにより終了した。
【0071】
グラスファイバー製フィルタープレートを50mMトリス−HCl緩衝液(pH:7.4)で洗浄した後、乾燥後、マイクロプレート液体シンチレーションカクテルを加えて、マイクロプレートシンチレーションカウンターで放射活性を測定した。10μMスピペロン存在下での放射活性を非特異結合とした。
【0072】
IC50値は、濃度依存性反応から非線形解析プログラムを用いて算出した。Ki値は、Cheng-Prussoff 式を用いてIC50値から算出した。その結果、実施例3の化合物は1.9nMを示した。
【0073】
3)アドレナリンα1受容体結合実験
Grob Gらの方法(Grob G, Hanft G, and Kolassa N. Urapidil and some analogues with hypotensive properties show high affinities for 5-hydroxytryptamine (5-HT) binding sites of the 5-HT1A subtype and for a1-adrenoceptor binding sites. Naunyn-Schmiedeberg's Arch Pharmacol, 1987; 336: 597-601)に従って、実験を行った。
【0074】
ウイスター系雄性ラットを断頭し、脳をすみやかに取り出し、大脳皮質を摘出した。組織重量の20倍量の50mMトリス−塩酸緩衝液(100mM NaCl、2mM エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム含有、pH:7.4)中で高速回転刃によるホモジナイザーを用いてホモジナイズし、4℃、80,000×gで20分間遠心した。得られた沈渣を組織重量の20倍量の上記緩衝液で懸濁し、37℃で10分間インキュベーションした後、上記条件で遠心した。得られた沈渣を再度組織重量の20倍量の上記緩衝液で懸濁し、上記条件で遠心した。得られた沈渣を組織重量の20倍量の50mMトリス−塩酸緩衝液(1mM エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム含有、pH:7.4)で懸濁し、これらを膜標本として結合実験に用いるまで−85℃で凍結保存した。
【0075】
結合実験は、膜標本40μl、[3H]−プラゾシン20μl(最終濃度0.2−0.5nM)、試験化合物20μl及び50mMトリス−塩酸緩衝液(1mM EDTA含有、pH:7.4)で全容量200μlにして行った(最終ジメチルスルホキシド濃度1%)。反応は30℃で45分間行い、セルハーベスターを用い、グラスファイバー製フィルタープレートに吸引濾過することにより終了した。
【0076】
グラスファイバー製フィルタープレートを50mMトリス−塩酸緩衝液(pH:7.4)で洗浄した後、乾燥後、マイクロプレート液体シンチレーションカクテルを加えて、マイクロプレートシンチレーションカウンターで放射活性を測定した。10μM塩酸フェントールアミン存在下での放射活性を非特異結合とした。
【0077】
IC50値は、濃度依存性反応から非線形解析プログラムを用いて算出した。Ki値は、Cheng-Prussoff 式を用いてIC50値から算出した。その結果、実施例3の化合物は0.3nMを示した。
【0078】
薬理試験2
ドパミンD2受容体発現細胞を用いたドパミンD2受容体に対する部分作動性(パーシャルアゴニスト性)
フォルスコリン刺激して環状アデノシン3',5'−一リン酸(サイクリックAMP)産生を誘導したドパミンD2受容体発現細胞において、測定化合物のサイクリックAMP産生抑制作用を定量することによって、ドパミンD2受容体に対するパーシャルアゴニスト性を評価した。
【0079】
ヒト型ドパミンD2受容体発現チャイニーズハムスター卵巣/DHFR(−)細胞を培地(イスコブ修飾ダルベッコ培地(IMDM培地),10%牛胎仔血清,50I.U./ml ペニシリン,50μg/ml ストレプトマイシン,200μg/ml ジェネティシン,0.1mM ヒポキサンチンナトリウム,16μM チミジン)中、37℃、5%炭酸ガス条件で培養した。ポリ−L−リジン塗布された96穴マイクロプレートに104細胞/ウェルの細胞を播き、2日間同条件下で培養した。各ウェルを洗浄液100μl(IMDM培地,0.1mMヒポキサンチンナトリウム,16μMチミジン)で洗浄し、試験化合物3μMを溶解した試験化合物添加培地50μl(IMDM培地,0.1%アスコルビン酸ナトリウム,0.1mMヒポキサンチンナトリウム,16μMチミジン)に置換した。37℃、5%炭酸ガス条件で20分静置した後、同試験化合物3μMを溶解した試験化合物添加フォルスコリン刺激培地100μl(IMDM培地,0.1%アスコルビン酸ナトリウム,0.1mMヒポキサンチンナトリウム,16μMチミジン,10μMフォルスコリン,500μM3−イソブチル−1−メチルキサンチン)に置換し、37℃、5%炭酸ガス条件で10分間静置した。培地を除去後、リシス(Lysis)1B水溶液200μl(アマシャムバイオサイエンス サイクリックAMP バイオトラック エンザイムイムノアッセイシステム添付試薬)を分注し、約10分間振盪した。各ウェル中の水溶液を測定サンプルとした。4倍希釈した測定サンプルを上記エンザイムイムノアッセイシステムを用いてサイクリックAMP量の測定を行った。試験化合物を加えていないウェルのサイクリックAMP量を100%として各試験化合物の抑制率を計算した。この実験系において、対照薬として用いたドパミンは最大活性として、サイクリックAMP量を約10%まで抑制した。
【0080】
上記試験において、実施例3の化合物がドパミンD2受容体に対するパーシャルアゴニスト性を有していることを確認した。
【0081】
試験化合物がドパミンD2受容体に対するパーシャルアゴニスト性を有していることにより、統合失調症患者においてドパミン神経伝達を正常な状態へ安定化させることができ、その結果、副作用を発現することなく、例えば陽性及び陰性症状改善作用、認知障害改善作用等の臨床改善作用を発現することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 7−{4−[4−(7−ヒドロキシベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン−1−イル]ブトキシ}−1H−キノリン−2−オン、
(2) 7−{4−[4−(1−オキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン−1−イル]ブトキシ}−1H−キノリン−2−オン、
(3) (3S,4R)−7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−3,4−ジヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン、
(4) (3R,4R)−7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−3,4−ジヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン、
(5) 7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−3−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン、
(6) 7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−ピペラジン−1−イル)ブトキシ]−4−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン、
(7) 7−[4−(4−ベンゾ[b]チオフェン−4−イル−1−オキシピペラジン−1−イル)ブトキシ]−1H−キノリン−2−オン、及び
(8) 7−{4−[4−(1,1−ジオキソベンゾ[b]チオフェン−4−イル)ピペラジン−1−イル]ブトキシ}−1H−キノリン−2−オン
からなる群から選ばれた複素環化合物またはその塩。

【公開番号】特開2011−136906(P2011−136906A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108733(P2008−108733)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】