説明

角栓再生抑制方法および角栓再生抑制キット

【課題】肌荒れを起こさずに効果的に角栓の再生を抑制し得る角栓再生抑制剤を提供する。
【解決手段】ポリオキシエチレン脂肪酸エステルを含む皮膚洗浄料を肌へ適用した後に、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、サリチル酸、ピロリドンカルボン酸、グリコール酸、およびそれらの塩の中から選ばれる1種または2種以上を含む角栓再生抑制剤を皮膚へ適用することを特徴とする角栓再生抑制方法、および上記皮膚洗浄料と角栓再生抑制剤とからなるキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は角栓再生抑制方法および角栓再生抑制キットに関する。さらに詳しくは、非常に高い角栓再生抑制効果を奏する角栓再生抑制方法および角栓再生抑制キットに関する。
【背景技術】
【0002】
角栓の悩みは、女性の肌悩みの中でも上位に挙げられる項目である。角栓は、皮脂と剥離した角層の混合物が毛孔に詰まったものであり(非特許文献1)、これが成長すると白く詰まり、あるいは産毛や汚れを含むと黒く詰まって、ブツブツ状となって目立ち、見た目にもまた触感としてもざらついて好ましくない。また、これを放置すると肌トラブルにもつながるといわれている。
【0003】
対応策としては、洗浄料やパックなどで除去するのが一般的であり、非常に多くの商品が販売されている。角栓除去に関する従来技術文献も数多く、例えばN−アシルアミノ酸塩を含むもの(特許文献1)や、ラウロイルサルコシンなどを含むもの(特許文献2)、常温液状油分とN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、ノニオン界面活性剤などの組合せ(特許文献3)、ダイマー酸のジエステルとモノ脂肪酸ポリグリセリルの組合せ(特許文献4)、ダイマー酸のジエステルとポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルの組合せ(特許文献5)、炭素原子数6〜20の二塩基酸ジエステル(特許文献6)などが挙げられる。しかしながら、その除去効率はあまり高いものではなく、除去してもまた1週間程度で再生してきてしまうこともあり、パックでの処理を繰り返すことで肌荒れしてしまうことも多かった。
【0004】
これまでに、角栓の再生抑制に関しては、タンニン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、グルタミン酸などの有機酸類およびその塩に効果があることが知られている(特許文献7〜8参照)。しかしながら、その効果はなかなか実感しにくいのが実情で、市場においても、収斂化粧水など毛穴の引き締めをうたう商品はあるものの、角栓を再生しにくくすることをうたった商品は存在していなかった。また、有機酸単独では肌荒れや感覚刺激が起こる場合があり、化粧品として一般的に使用することは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3857182号公報
【特許文献2】特許第4058399号公報
【特許文献3】特許第4285699号公報
【特許文献4】特開2007−119393号公報
【特許文献5】特開2007−119394号公報
【特許文献6】特開2007−230929号公報
【特許文献7】特開平4−360834号公報
【特許文献8】特開平4−360830号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】栃尾 巧、フレグランスジャーナル、2008年8月号、28−32頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、肌荒れを起こさずに、極めて効果的に角栓の再生を抑制することができる方法、および該方法に用いられる角栓再生抑制キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者らは研究を重ねた結果、特定の洗浄料と特定の角栓再生抑制剤とを用いることで、肌荒れを起こさずに、角栓の再生抑制効果が非常に高まることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルを含む皮膚洗浄料を肌へ適用した後に、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、サリチル酸、ピロリドンカルボン酸、グリコール酸、およびそれらの塩の中から選ばれる1種または2種以上を含む角栓再生抑制剤を皮膚へ適用することを特徴とする、角栓再生抑制方法に関する。
【0010】
また本発明は、角栓抑制剤中にさらに脂肪酸石鹸、高級アルキル硫酸エステル塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシル低級アルキルタウリン塩、ベタイン系界面活性剤、およびポリオキシアルキレンフィトステロールの中から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤を含む、上記角栓再生抑制方法に関する。
【0011】
また本発明は、角栓抑制剤中にさらに抗肌荒れ剤を含む、上記角栓再生抑制方法に関する。
【0012】
また本発明は、抗肌荒れ剤が、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン/ジメチルエーテル(=「PEG/PPGジメチルエーテル」)、トラネキサム酸、およびパントテニルエチルエーテルの中から選ばれる1種または2種以上である、上記角栓再生抑制方法に関する。
【0013】
また本発明は、上記の皮膚洗浄料と角栓再生抑制剤とからなる、角栓再生抑制キットに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、非常に高い角栓再生抑制効果を奏する角栓再生抑制方法および角栓再生抑制キットが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳述する。
【0016】
<皮膚洗浄料>
本発明に用いられる皮膚洗浄料は、有効成分としてポリオキシエチレン脂肪酸エステルを含む。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、オレイン酸残基、イソステアリン酸残基、ラウリン酸残基から選ばれる1種以上の脂肪酸残基を有する、POEソルビタン脂肪酸エステル、POE脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油系界面活性剤、ソルビタン系界面活性剤、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEイソステアリルエーテル等が挙げられる。ただしこれら例示に限定されるものでない。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルは1種または2種以上を用いることができる。
【0017】
皮膚洗浄料中におけるポリオキシエチレン脂肪酸エステルの配合量は1〜60質量%が好ましく、より好ましくは5〜40質量%である。上記配合量範囲とすることで、角栓再生抑制剤との併用において、極めて優れた角栓再生抑制効果を得ることができる。配合量が1質量%未満では成分としての効果を十分に発揮することができず、一方、60質量%を超えて配合しても、配合量に見合った効果の増大は望めない。
【0018】
皮膚洗浄料は、オイルタイプ、フォームタイプ、液状タイプ等のいずれの基剤を用いてもよい。本発明では特にオイルタイプの液状製剤(クレンジングオイル等)が好ましく用いられる。オイルタイプの洗浄料(油性洗浄料)の場合、上記必須成分の他に、常温で液状の油分が主成分として配合される。このような液状油分としては、例えば、流動パラフィン(ミネラルオイル)、スクワラン、オリフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン等の炭化水素油;2−エチルヘキサン酸トリグリセリド、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、パルミチン酸2−エチルヘキシル、イソノナン酸イソセチル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;ホホバ油、オリーブ油、マカデミアナッツ油、綿実油、茶実油、サフラワー油、米ヌカ油等の天然系植物油;デカメチルペンタシクロシロキサン、オクタメチルテトラシクロシロキサン、ジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン等のシリコーン油などが挙げられる。
【0019】
液状油分を配合する場合、皮膚洗浄料中に50〜95質量%の範囲で配合するのが好ましく、より好ましくは60〜80質量%である。配合量が50質量%では成分としての効果を十分に発揮することはできず、一方、95質量%を越えて配合しても、配合量に見合った効果の増大は望めない。
【0020】
またこれら液状油分の他に配合され得る成分として、通常、化粧料や医薬品の分野で配合されている各種成分を、本発明効果を損なわない範囲で添加することができる。このような成分としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、アニオン性界面活性剤、N−アルキル−N,N−ジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド等の両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、殺菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、水等が挙げられる。
【0021】
<角栓再生抑制剤>
[有機酸類]
本発明に用いられる角栓再生抑制剤は、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、サリチル酸、ピロリドンカルボン酸、グリコール酸の中から選ばれる有機酸、あるいはそれらの塩を含む。塩としては、一般に化粧料に用いられ得るものであれば特に限定するものでなく、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、等)、アンモニウム塩、有機アミン塩(モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、等)などが挙げられる。中でも乳酸、コハク酸、サリチル酸、ピロリドンカルボン酸、またはこれらの塩が好ましい。これら有機酸類は1種または2種以上を用いることができる。
【0022】
上記有機酸類の配合量は、本発明で用いる角栓再生抑制剤中に0.001〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜5質量%である。0.001質量%未満では(a)成分としての効果を十分に発揮することができず、一方、20質量%を超えて配合しても、配合量に見合った効果の増大は望めない。
【0023】
[界面活性剤]
本発明で用いる角栓再生抑制剤には、上記有機酸類の他に、脂肪酸石鹸、高級アルキル硫酸エステル塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシル低級アルキルタウリン塩、ベタイン系界面活性剤、およびポリオキシアルキレンフィトステロールの中から選ばれる界面活性剤を含有するのが好ましい。
【0024】
脂肪酸石鹸としては、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム等が挙げられる。
【0025】
高級アルキル硫酸エステル塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等が挙げられる。
【0026】
N−アシルグルタミン酸塩としては、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸カリウム、N−ココイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ココイルグルタミン酸時カリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸モノカリウム等が挙げられる。
【0027】
N−アシル低級アルキルタウリン塩としては、特にN−アシルメチルタウリン塩が好ましく、具体例として、N−ヤシ油脂肪酸−N−メチルタウリンナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸−N−メチルタウリントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸−N−メチルタウリンマグネシウム等が挙げられる。
【0028】
ベタイン系界面活性剤としては、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酪酸ベタイン、アルキルベタイン(例えば、ラウリルベタイン等)、アミドベタイン、スルホベタイン等が挙げられる。またそれらの塩が挙げられる。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられるが、これら例示に限定されるものでない。
【0029】
ポリオキシアルキレンフィトステロールとして、POE付加モル数20〜50程度のものが好ましい。
【0030】
これら界面活性剤としては、特にポリオキシエチレンフィトステロール、ラウリン酸カリウム、ラウリルベタイン等が好ましい。
【0031】
これら界面活性剤の配合量は、角栓再生抑制剤中に0.001〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜5質量%である。0.001質量%未満では配合成分としての効果を十分に発揮することができず、一方、20質量%を超えて配合しても、配合量に見合った効果の増大は望めない。
【0032】
[抗肌荒れ剤]
本発明で用いる角栓再生抑制剤には、さらに抗肌荒れ剤を配合するのが好ましい。抗肌荒れ剤としては、一般に皮膚外用剤に用いられ得る抗肌荒れ効果を奏する成分であれば特に限定されるものでなく、例えば、トラネキサム酸、トラネキサム酸メチルアミド、1−ピペリジンプロピオン酸、ビタミンE−アセテート、グリセリン、キシリトール、エリスリトール、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン/ジメチルエーテル(=「PEG/PPGジメチルエーテル」)、パントテニルエチルエーテル、あるいはこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)が挙げられる。また植物エキス(オトギリソウ、カミツレ等)も挙げられる。中でも、トラネキサム酸(塩)、PEG/PPGジメチルエーテル、パントテニルエチルエーテル等が好ましい。なおPEG/PPGジメチルエーテルは、PEGとPPGのモル比が、それぞれ1:2〜5:1程度のものが好ましく用いられる。
【0033】
抗肌荒れ剤の配合量は、角栓再生抑制剤中に0.001〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜5質量%である。0.001質量%未満では抗肌荒れ成分としての効果を十分に発揮することができず、一方、20質量%を超えて配合しても、配合量に見合った効果の増大は望めない。
本発明に用いる角栓再生抑制剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常、化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の任意添加成分、例えば、油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン油、水溶性高分子、キレート剤、低級アルコール、多価アルコール、pH調整剤、酸化防止剤、粉末成分、香料、水等を必要に応じて適宜配合することができる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
【0034】
本発明に用いる角栓再生抑制剤の剤型は、特に限定されるものでなく、液状製剤、ゲル状製剤、クリーム、シート含浸製剤等として用いることができるが、特に液状製剤が好ましい。なお角栓再生抑制剤はpH3.0〜8.0程度とするのが好ましい。
【0035】
<本発明の角栓再生抑制方法およびキット>
本発明では、上記皮膚洗浄料を用いて皮膚を洗浄した後、上記角栓再生抑制剤を皮膚に適用することで、極めて効果的に角栓再生を抑制することができる。肌への適用方法は、コットン等に含浸させて塗布する、スプレー等で噴霧する、等、剤型に応じて適宜行うことができる。また上記洗浄料と角栓再生抑制剤をセットにした化粧料キットとして販売することにより、簡便に使用することができる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限りすべて質量%である。
【0037】
(実施例1:ヒト試験による、皮膚洗浄料と角栓再生抑制剤の相乗効果)
1.試料
本実施例で用いた皮膚洗浄料、角栓再生抑制剤は以下のとおりである。
【0038】
≪皮膚洗浄料(洗浄オイル)≫
ミネラルオイル 67.54(質量%)
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 2
エタノール 1
イソステアリルアルコール 1
イソオクタン酸セチル 20
ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール−12 5
ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール−8 1
モノステアリン酸ポリエチレングリコール−10 2
テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン 0.01
ジブチルヒドロキシトルエン 0.05
イオン交換水 0.4
【0039】
≪角栓再生抑制剤(「製剤1」)。pH4.1≫
コハク酸 0.5(質量%)
乳酸 1
トラネキサム酸 1
エタノール 5
グリセリン 5
ジプロピレングリコール 5
PEG/PPG−14/7−ジメチルエーテル 1
水酸化カリウム 0.135
ポリオキシエチレンフィトステロール 2
グリシン 0.1
イオン交換水 残余
【0040】
2.評価試験方法
[試験(1):製剤1のみ使用]
30代〜40代の比較的角栓の目立つ男性4名により、角栓の再生抑制試験を実施した。角栓の観察は、鼻頂部の適当なエリアに枠紙を貼り、ビデオマイクロスコープ(VMS。「キーエンス VHX−100」)観察にて行った。上記領域に対して、スライドグラス(マツナミ APSコート付き、s8444)に接着剤(「アロンアルファA」;三共)を数滴たらした後、その接着剤塗布面側を密着させた。10分間経過後にゆっくりとスライドグラスを剥離して角栓を除去した。再度VMS観察によって、完全に角栓を除去できた毛穴を特定し、これら特定した毛穴について、以降、角栓が再生してくる経過を観察した。ここで、製剤を使用しない状態(コントロール)での角栓再生の経過と、製剤を連用塗布したときの角栓再生の経過を比較した。
【0041】
製剤1:1日2回、2mLずつコットン(資生堂ビューティーアップコットン)に取り、VMS観察部位である鼻頂部を含む小鼻および頬を中心とした半顔に塗布し、3週間連用した。
【0042】
[試験(2):皮膚洗浄料と製剤1との併用]
上記製剤1に皮膚洗浄料を組み合せた試験(2)を、上記試験(1)と同様に塗布する実験を、同一の被験者4名で実施した。皮膚洗浄料は、充分、成分をふき取った後に、製剤(1)を適用した。
【0043】
なお、4名のうち1名についてはVMSでの観察を実施せず、連用塗布のみを行った。
【0044】
<評価>
経時で同一毛穴の角栓の成長を比較し、製剤1(試験(2)では皮膚洗浄料併用。以下同)を使用しない状態(コントロール)での角栓成長に比べ、製剤1を塗布したときの角栓成長(=毛穴が詰まる)が遅かったものを勝ち、コントロールと製剤1塗布時とで角栓成長がほぼ同じ程度のものを引き分け、製剤1を使用しない状態(コントロール)での角栓成長に比べ、製剤1を塗布したときの角栓成長(=毛穴が詰まる)が速かったものを負けとして、4名分の比較を行った。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
なお、最初に角栓が完全に除去でき比較できる毛穴の数が試験によって異なるため、試験(1)と試験(2)で評価した毛穴の数は異なっている。被験者4名合計で、試験(1)では22勝3敗8分けであったものが、試験(2)において洗浄オイルとの組み合せることにより、43勝4敗8分けとなった。表2に勝ちのみの率を算出した結果を示すが、その率が66.7%から78.2%へと上昇しており、特に若い被験者、例えばNo.2とNo.3で効果が高まっていた。
【0047】
【表2】

【0048】
また、角栓のVMS観察を実施しなかった被験者1名を加えての問診(計5名)の結果では、3週間後に角栓が詰まるのが遅くなったと実感できた人数は、製剤1の塗布だけでは5名中1名のみであった。一方、洗浄料と組合せることで角栓の詰まるのが遅くなったと実感できたのは、5名中1週間後で2名、2週間後で3名、3週間後では4名となり、実効感がかなり高まったことが分かった。肌状態についても、小鼻および頬について塗布側ですべすべする、うるおうといった声があり、肌状態についても良くなっていた。
【0049】
(実施例2:角栓再生抑制剤のスクリーニング)
実施例1で記載の方法に準じて得られた角栓を用いて、以下の表3に示す評価薬剤を用いて、角栓再生抑制効果についてスクリーニングを行った。
【0050】
すなわち、スライドグラスに接着剤(「アロンアルファA」)を数滴たらした後、その接着剤塗布面側を被験者の鼻頂部の一部領域に密着させた。10分間経過後にゆっくりとスライドグラスを剥離して角栓を得た。
【0051】
このようにして得たスライドグラス上の角栓を、カッター等で接着面から切り出し、カバーグラス上に敷いた両面テープの上に接着させた。それを5mLシャーレに入れ、表3に示す評価薬剤を含む水溶液(1%水溶液)を加えた。実体顕微鏡、SEMにより、角栓の経時での変化を観察し、角栓の崩壊程度に応じその形態を以下の4段階で評価した。なお評価は実体顕微鏡法、SEM法による評価を総合評価した。
(評価基準)
ランク0:変化なし(角栓の表面に全く変化が認められない)
ランク1:やや変化が認められる(角栓の表面が若干不鮮明になるなど若干の変化が認められる)
ランク2:変化あり(角栓の表面に明らかな変化が認められる)
ランク3:かなり変化あり(角栓の表面が崩れるなど、凹凸変化が顕著である)
(評価液)
評価液は表3に示す評価薬剤含む水溶液(1質量%含有水溶液)を用いた。
【0052】
【表3】

【0053】
以下に、さらに本発明の処方例を示す。
<皮膚洗浄料(処方例1〜2)>
(処方例1:皮膚洗浄料)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)流動パラフィン 62.0
(2)2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール 10.0
(3)POE(8)オレエート(HLB=9、液状) 10.0
(4)POE(20)グリセリルトリイソステアレート 10.0
(HLB=7、液状)
(5)N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)
エチレンジアミン 3.0
(6)精製水 5.0
【0054】
(処方例2:皮膚洗浄料)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)スクワラン 残 余
(2)2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン 10.0
(3)POE(12)オレエート(HLB=7、液状) 2.0
(4)POE(20)グリセリルトリイソステアレート 8.0
(HLB=7、液状)
(5)POE(50)硬化ヒマシ油モノイソステアレート 3.0
(HLB=12、ペースト状)
(6)N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)
エチレンジアミン 0.1
(7)ビタミンE 0.05
(8)BHT 0.05
(9)精製水 2
(製法)
室温にて常温液状油分と界面活性剤とを混合・攪拌して均一にした後、水性成分を添加し混合・攪拌し均一にしてサンプルを調製する。
【0055】
<角栓再生抑制剤(処方例3〜11)>
(処方例3:化粧水)
(配 合 成 分) (質量%)
A.
エタノール 5.0
ポリオキシエチレンフィトステロール 2.0
PPG−13デシルテトラデセス−24 0.2
2−エチルヘキシル−P−ジメチルアミノベンゾエート 0.18
香料 0.05
B.
1,3−ブチレングリコール 9.5
ピロリドンカルボン酸ナトリウム 0.5
キシリトール 0.5
ニコチン酸アミド 0.3
グリセリン 5.0
トリメチルグリシン 5.0
トラネキサム酸 1.0
リジン 0.05
コハク酸 0.5
精製水 残 余
(製法)
Aのアルコール相をBの水相に添加し、可溶化して化粧水を得る。
【0056】
(処方例4:乳液(ペムラン乳化系))
(配 合 成 分) (質量%)
A.油相
ジメチルポリシロキサン 0.5
デカメチルシクロペンタシロキサン 1
ホホバ油 0.5
ポリオキシエチレンフィトステロール 0.2
B.水相
トラネキサム酸 1
ニンジンエキス 0.5
アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.05
カルボキシビニルポリマー 0.3
アラビアガム 0.05
エチルアルコール 8
エデト酸三ナトリウム 0.1
メチルパラベン 0.1
フェノキシエタノール 0.2
クエン酸 0.05
イオン交換水 残 余
C.中和
水酸化カリウム 0.15
(製法)
溶解した(B)相に、溶解した(A)相を添加し、乳化後、(C)相で中和し、乳液を得る。
【0057】
(処方例5:乳液)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)ステアリン酸 2.0
(2)ラウリン酸 0.5
(3)セチルアルコール 1.5
(4)ワセリン 5.0
(5)流動パラフィン 10.0
(6)POE(10モル)モノオレイン酸エステル 2.0
(7)ポリエチレングリコール(1500) 3.0
(8)トリエタノールアミン 1.0
(9)水酸化カリウム 0.05
(10)カルボキシビニルポリマー 0.05
(11)亜硫酸水素ナトリウム 0.01
(12)防腐剤 適 量
(13)香料 適 量
(14)クエン酸 0.05
(15)1−ピペリジンプロピオン酸 0.05
(16)イオン交換水 残 余
(製法)
(16)の一部に(10)を溶解する(A相)。残りの(16)に(7)、(8)、(9)、(11)、(14)、(15)を加え、加熱溶解した70℃に保つ(水相)。一方、(1)〜(6)、(12)、(13)を混合し加熱融解して70℃に保つ(油相)。水相に油相を加え予備乳化を行い、A相を加えホモミキサーで均一に乳化し、乳化後よくかき混ぜながら30℃まで冷却して乳液を得る。
【0058】
(処方例6:乳液)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)マイクロクリスタリンワックス 1.0
(2)ミツロウ 2.0
(3)ラノリン 20.0
(4)流動パラフィン 10.0
(5)スクワラン 5.0
(6)ソルビタンセスキオレイン酸エステル 4.0
(7)POE(20モル)ソルビタンモノオレイン酸エステル 1.0
(8)ラウリルベタイン 0.1
(9)プロピレングリコール 7.0
(10)L−アルギニン塩酸塩 5.0
(11)グリセリン 3.0
(12)グリコール酸 0.05
(13)亜硫酸水素ナトリウム 0.01
(14)防腐剤 適 量
(15)香料 適 量
(16)イオン交換水 残 余
(製法)
(16)に(8)〜(13)を加え、加熱して70℃に保つ(水相)。一方、(1)〜(7)、(14)、(15)を混合し加熱融解して70℃に保つ(油相)。油相をかき混ぜながら水相を徐々に加え、ホモミキサーで均一に乳化した後、よくかき混ぜながら30℃まで冷却し、乳液を得る。
【0059】
(処方例7:乳液(W/O乳化タイプ))
(配 合 成 分) (質量%)
(1)イソプロピルアルコール 10.0
(2)ジイソステアリン酸ジグリセリル 0.5
(3)POE変性ジメチルポリシロキサン 1.0
(4)ポリオキシエチレンフィトステロール 0.5
(5)オクタメチルシクロテトラシロキサン 25.0
(6)デカメチルシクロペンタシロキサン 15.0
(7)トリメチルシロキシケイ酸 5.0
(8)ユーカリ油 3.0
(9)香料 0.05
(10)ジプロピレングリコール 2.0
(11)フェノキシエタノール 0.3
(12)エデト酸3ナトリウム 0.1
(13)イオン交換水 残 余
(14)塩化カリウム 0.5
(15)トラネキサム酸 0.5
(16)乳酸 0.05
(製法)
(1)〜(9)を加熱溶解し(油相)、(10)〜(16)を溶解し(水相)、油相に水相を添加し、乳化し、乳液を得る。
【0060】
(処方例8:ゼリー)
(配 合 成 分) (質量%)
(A相)
95%エチルアルコール 10.0
POE(20モル)オクチルドデカノール 1.0
パントテニルエチルエーテル 0.1
ラウリルベタイン 0.05
ビタミンE−アセテート 0.05
防腐剤 適 量
(B相)
水酸化カリウム 0.1
(C相)
グリセリン 5.0
ジプロピレングリコール 10.0
亜硫酸水素ナトリウム 0.03
クエン酸 0.05
L−アルギニンマグネシウム塩 0.05
カルボキシビニルポリマー 0.2
イオン交換水 残 余
(製法)
A相、C相をそれぞれ均一に溶解し、C相にA相を加えて可溶化する。次いでB相を加えた後充填を行い、ゼリーを得る。
【0061】
(処方例9:O/Wクリーム)
(配 合 成 分) (質量%)
A.油相
セタノール 4.0
ワセリン 7.0
イソプロピルミリステート 8.0
スクワラン 15.0
ステアリン酸モノグリセリンエステル 2.2
POE(20)ソルビタンモノステアレート 2.8
ラウリルベタイン 0.05
5−エトキシサリチル酸 0.01
ビタミンEニコチネート 2.0
香料 0.3
酸化防止剤 適 量
防腐剤 適 量
B.水相
グリセリン 10.0
ヒアルロン酸ナトリウム 0.02
キシリトール 1.0
ジプロピレングリコール 4.0
PEG/PPG−14/7ジメチルエーテル 1.0
アラニン 3.0
エデト酸二ナトリウム 0.01
クエン酸 1.0
精製水 残 量
(製法)
A(油相)とB(水相)をそれぞれ70℃に加熱し、完全溶解した。次いで、Aを
Bに加えて、乳化機で乳化した。さらに、乳化物を熱交換機を用いて冷却して、
クリームを得る。
【0062】
(処方例10:W/Oクリーム)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)塩化ジメチルジステアリルアンモニウム処理ヘクトライト 2.0
(2)ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン重合体 0.1
(3)ラウリルベタイン 0.5
(4)流動パラフィン 10.0
(5)ワセリン 5.0
(6)オクタン酸セチル 20.0
(7)Lーグルタミン酸ソーダ 0.01
(8)ジプロピレングリコール 5.0
(9)メチルパラベン 0.2
(10)サリチル酸 1.0
(11)キシリトール 2.0
(12)イオン交換水 残 量
(製法)
(2)(3)(4)(6)を50℃に昇温した後、(5)を加え完全に溶解した油相パーツに(1)を加えて均一に分散を行ったものに、(12)へ(7)(8)(9)(10)(11)を溶解させた水相パーツを50℃に加温して添加を行い、HMにて均一分散した後、室温まで冷却し、W/Oクリームを得る。
【0063】
(処方例11:白濁化粧水)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)α−オレフィンオリゴマー 2.0
(2)イソステアリルアルコール 0.5
(3)イソステアリン酸 0.8
(4)セスキイソステアリン酸ソルビタン 0.1
(5)POE(14)・POP(7)ジメチルエーテル 1.0
(6)ポリオキシエチレンフィトステロール 1.0
(7)酢酸DL−α−トコフェロール 0.05
(8)香料 適 量
(9)1,3−ブチレングリコール 5.0
(10)エタノール 5.0
(11)キサンタンガム 0.1
(12)コハク酸 0.5
(13)ジプロピレングリコール 5.0
(14)トラネキサム酸 1.0
(15)ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
(16)ピロ亜硫酸ナトリウム 0.005
(17)フェノキシエタノール 0.5
(18)メタリン酸ナトリウム 0.05
(19)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 0.2
(20)水酸化カリウム 0.2
(21)乳酸 1.0
(22)濃グリセリン 5.0
(23)精製水 残 量
(製法)
(1)から(8)を、70℃に加熱溶解し、攪拌混合し、温度を70℃に維持して攪拌を行いながら、(23)を徐々に添加して乳化を行い、水中油型乳化組成物を得る。得られた水中油型乳化組成物を、さらに(9)から(22)を含む水性処方中に添加し、攪拌により均一分散させて白濁化粧水を得る。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明により、非常に高い角栓再生抑制効果を奏する角栓再生抑制方法および角栓再生抑制キットが提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシエチレン脂肪酸エステルを含む皮膚洗浄料を肌へ適用した後に、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、サリチル酸、ピロリドンカルボン酸、グリコール酸、およびそれらの塩の中から選ばれる1種または2種以上を含む角栓再生抑制剤を皮膚へ適用することを特徴とする、角栓再生抑制方法。
【請求項2】
角栓抑制剤中にさらに脂肪酸石鹸、高級アルキル硫酸エステル塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシル低級アルキルタウリン塩、ベタイン系界面活性剤、およびポリオキシアルキレンフィトステロールの中から選ばれる1種または2種以上の界面活性剤を含む、請求項1記載の角栓再生抑制方法。
【請求項3】
角栓抑制剤中にさらに抗肌荒れ剤を含む、請求項1または2記載の角栓再生抑制方法。
【請求項4】
抗肌荒れ剤が、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン/ジメチルエーテル、トラネキサム酸、およびパントテニルエチルエーテルの中から選ばれる1種または2種以上である、請求項3記載の角栓再生抑制方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の皮膚洗浄料と角栓再生抑制剤とからなる、角栓再生抑制キット。

【公開番号】特開2013−32319(P2013−32319A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169751(P2011−169751)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】