説明

角速度センサ

【課題】外部からの外乱振動の影響を抑制し、かつ外乱振動によって生じる不要な回転力に起因するオフセットドリフトを低減する角速度センサを提供する。
【解決手段】角速度検出素子11を収納するパッケージ10と、パッケージ10に接続されたリード端子17と、を有し、リード端子17は、パッケージ10に接続された第1の端部と、外部と接続するための第2の端部13を有し、第1の端部と第2の端部13の間に、所定の延在方向に伸びる延在面を有する板状の延長部16を有し、リード端子17の延在面は、第1の軸を含み、且つ、基部に対して直交する面に対して、直交している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型角速度検出素子をパッケージに収納することによって形成される角速度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
この角速度センサは、たとえば自動車に搭載されて自動車に印加される角速度を検出するものとして適用されている。この角速度センサの構成として、パッケージ内にて接着剤を介して回路基板、角速度検出素子が搭載され、各部の電気的接続がボンディングワイヤにて行われるとともに、角速度検出素子と電気的に接続されたリード端子を有してなる。パッケージは、角速度検出素子および回路基板を収納するものであって、角速度センサの本体を形成する基部となる。
【0003】
また、自動車の他、航空機や船などの自動航行システムにおいても、車体制御を行う上での機体の角速度を測定をするために用いられる。またゲームや携帯電話においても、機器の動きを信号に変換することによって行われる入力方式において、機器の動きを感知するためのセンサとして用いられる。
【0004】
この種の角速度センサは、発振回路により振動体である駆動部位を振動させ、センサに外部から回転力が加わると、センサ内の振動する部位とは垂直方向にコリオリの力と呼ばれる力が発生する。コリオリの力を振動体である検出部位の変位として検出し、回路基板によって検出した出力信号を増幅して出力波形を補正処理され、角速度として出力される。またこの角速度センサは外部との電気的な接続を行うリード端子を備える。
【0005】
従来では、特許文献1のように、このような角速度センサについて、リード端子を介して基板に実装するような取付構造が提案されている。このリード端子は、パッケージの外周を取り囲むように取付部材が配置されており、パッケージの外周端部とその周囲や下部に位置する取付基板との間をリード端子によって電気的・機械的に接続したものである。
【0006】
特許文献1では、角速度センサと外部とを電気接続するためのリード端子があり、その中間部に延長部がある。リード端子のバネ性によって、この延長部が伸びる方向と直交する方向に振動可能なものであり、この振動方向は、パッケージ内にある振動体の検出振動の方向に沿った方向、すなわち、延長部は実質的に振動体の検出振動と同一方向に振動する。
【0007】
特許文献1では、角速度センサにとって耐ノイズ性/耐振動性は、誤作動無く角速度を検出するために非常に重要な要因となっている。例えば、従来の角速度センサの構造では、角速度センサと外部とを電気接続するためのリード端子があり、その中間部に延長部がある。リード端子のバネ性によって、この延長部が伸びる方向と直交する方向に振動可能なものであり、この振動方向は、パッケージ内にある角速度検出素子の検出振動の方向に沿った方向、すなわち、延長部は実質的に角速度検出素子の検出振動と同一方向に振動する。リード端子は、延長部が伸びる方向と直交する方向におけるリード端子の弾性によって振動可能なものであり、この延長部の振動方向は角速度検出素子の検出振動の方向に沿った方向となっており、リード端子の延長部の振動により、外乱振動を減衰させることにより、角速度検出素子の防振がなされている。
【0008】
一般的に、外乱振動すなわち、外部からの好ましくない振動の周波数と、素子とパッケージからなる系の共振周波数が一致した場合、素子は外乱振動の影響を受けてしまい、駆動振動の振幅変動によって感度が変化したり、駆動共振以外の振動モードが発生したりしてしまう。その結果として、回転軸を軸とした回転が発生していないにもかかわらず回転しているかのような誤差を持った出力に起因して、その誤差出力がずれるといった、大きなオフセットドリフトが発生してしまう。
【0009】
特許文献2では、角速度センサにおいて、内装パッケージと外装パッケージを連結する連結部材を有している。この連結部材は、最も外乱が伝播しやすい部位を弾性的に支持し、外乱振動を吸収する役割を果たしている。
【0010】
特許文献3では、音叉型角速度センサにおいて、検出振動方向と駆動振動方向を有しており、台座にこの音叉型角速度センサが支持具で固定されている。これにより、角速度センサの加工性や組み付け性が向上している。この支持具は防振ではなく固定を目的としている。
【0011】
図9と図10は、特許文献1に示す従来構造を、従来例として示す、角速度センサの断面図と斜視図である。従来の角速度センサにとって耐ノイズ性や耐振動性は、誤作動無く角速度を検出するために非常に重要な要因となっている。例えば、図9、図10に示す、従来の角速度センサ100の構造では、角速度センサ100と外部とを電気接続するためのリード端子170があり、その中間部に延長部160がある。
【0012】
リード端子170のバネ性によって、この延長部160が伸びる方向と直交する方向に振動可能なものであり、この振動方向は、パッケージ1内にある角速度検出素子110の検出振動の方向に沿った方向、すなわち、延長部160は実質的に角速度検出素子110の検出振動と同一方向、つまり、図9、10ではY軸方向に振動する。リード端子170は、延長部160が伸びる方向と直交する方向におけるリード端子170の弾性によって振動可能なものであり、この延長部160の振動方向であるY軸方向は角速度検出素子110の検出振動の方向であるY軸方向に沿った方向となっており、図10に示すようにリード端子170の延長部160の振動により、高周波共振周波数の外乱振動を減衰させることにより、角速度検出素子110の防振がなされている。
【0013】
一般的に、外乱振動すなわち、外部からの好ましくない振動の周波数と、素子とパッケージからなる系の共振周波数が一致した場合、素子は外乱振動の影響を受けてしまい、駆動振動の振幅変動によって感度が変化したり、駆動共振以外の振動モードが発生したりしてしまう。その結果として、回転軸を軸とした回転が発生していないにもかかわらず回転しているかのような誤差を持った出力に起因して、その誤差出力がずれるといった、大きなオフセットドリフトが発生してしまう。
【0014】
先ほどの従来例で、例えば、図9、10のように、角速度検出素子110の振動方向と検出軸が同じ方向、すなわち図9、10の例ではY軸の方向の場合、はんだ量のばらつきや素子実装ばらつきなどによる外乱振動によって、回転軸すなわち図9、10の例ではZ軸が伸びる方向の軸に不要な回転力が発生する。特にパッケージ1を構成する部材、たとえばリード端子170やパッケージ筐体1によって発生する共振周波数においては振動振幅も大きいため、発生する回転力も大きい。その結果、回転軸方向に関するモーメントが発生し、ヨー回転すなわち、Z軸を軸とした、つまりZ軸方向の回転が発生していないにもかかわらず回転しているかのような誤差を持った出力に起因して、その誤差出力がずれるといったオフセットドリフトが発生してしまう。
【0015】
従来例、例えば図9、10の場合では、角速度検出素子110のリード端子170の所定の延在方向に伸びる板状の延長部160の振動方向と検出軸であるY軸が同じ方向の場合、外乱振動によってリード端子170の延長部160が振動し、回転軸に対し、本来生じている回転と別の回転成分が発生する。その結果、不要なコリオリ力が発生し、その正常な出力値に対して出力ずれが発生するというオフセットドリフトが発生してしまい、回転が発生していないにもかかわらず回転しているかのような出力を発生するという問題がある。
【0016】
図9、図10の従来例の構造では、リード端子170の板状の延長部160の延在方向に伸びる方向と直交する方向に振動する、リード端子170の延長部160の振動方向と、検出軸であるY軸が同じ方向である場合、はんだ量のばらつきや素子実装ばらつきなどによって、検出軸方向すなわち、Y軸方向の外乱振動による不要な振動とリード端子の共振によって、パッケージ全体がY軸方向に併進運動するので検出軸方向であるY軸と、リード端子170の延長部160の振動方向は一致しないほうが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2007−064753号公報
【特許文献2】WO2006/132277号公報
【特許文献3】特開平8−114458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
角速度検出素子のリード端子の所定の延在方向に伸びる板状の延長部の振動方向と検出軸が同じ方向の場合、外乱振動によって前記リード端子が振動し、回転軸に対し、本来生じている回転と別の回転成分が発生する。その結果、不要なコリオリ力が発生し、その正常な出力値に対して出力ずれが発生するというオフセットドリフトが発生してしまい、回転が発生していないにもかかわらず回転しているかのような出力を発生するという問題がある。
【0019】
本発明は、以上の点を考慮してなされたもので、外部からの外乱振動によって生じる不要な回転力に起因するオフセットドリフトを低減する角速度センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、角速度検出素子を収納するパッケージと、前記パッケージに接続されたリード端子と、を有する角速度センサであって、前記角速度検出素子は、基部と駆動腕と検出腕を有し、前記駆動腕または前記検出腕は、前記基部から、第1の軸に沿って延在しており、前記リード端子は、前記パッケージに接続された第1の端部と、外部と接続するための第2の端部を有し、前記第1の端部と第2の端部の間に、所定の延在方向に伸びる延在面を有する板状の延長部を有し、前記リード端子の延在面は、前記第1の軸を含み、且つ、前記基部に対して直交する面に対して、直交していることを特徴とする角速度センサである。
【0021】
すなわち、検出振動方向の外乱振動の影響を受けないように、外乱振動の影響を受けない回転軸方向、と交差するパッケージの側面に相当する面の近傍に、板状の延在面を有する延長部を有するリード端子を配置した。板状の延在面が外乱振動の影響を受けないような方向に配置されたため、外乱振動の影響を抑制し、それによって生じる不要な回転力に起因するオフセットドリフトを低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によって、外部からの外乱振動によって生じる不要な回転力に起因するオフセットドリフトを低減する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1における角速度センサの斜視図である。
【図2】実施形態1における角度検出素子の斜視図である。
【図3】実施形態1における角速度センサの断面図である。
【図4】実施形態1における実装状態の図である。
【図5a】リード端子が無い角速度センサのオフセットドリフト特性グラフである。
【図5b】従来構造における角速度センサのオフセットドリフト特性グラフである。
【図5c】実施形態1における角速度センサオフセットドリフト特性グラフである。
【図6】実施形態2における角速度センサの断面図である。
【図7】実施形態3における角速度センサの断面図である。
【図8】実施形態4における角速度センサの断面図である。
【図9】従来構造の角速度センサの断面図である。
【図10】従来構造の角速度センサの斜視図である。
【図11】実施形態1における振動伝達率の共振周波数依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
【0025】
(実施形態1)
図2は実施形態1の角速度センサ101の角速度検出素子11の斜視図である。まず、角速度の検出原理について説明する。駆動腕21がX軸方向に駆動振動しているときにZ軸回りの角速度Ωが印加されると、X軸と直交する検出方向であるY軸の方向へ角速度の大きさに比例したコリオリ力により検出腕22が検出振動するようになっている。そして、検出腕22上には検出用電極が設けられ、検出腕22の検出振動によって発生した圧電薄膜25の歪を検出することにより、角速度Ωの検出が可能となっている。
【0026】
図1は実施形態1における角速度センサ101の斜視図を示している。実施形態1においては、外部からの信号に基づく共振現象によって角速度の検出を行う角速度検出素子11と、角速度検出素子11を収納するパッケージ10と、角速度検出素子11に電気的に接続されたリード端子17とを備える角速度センサ101において、角速度センサ101のリード端子17の端部は、前記パッケージ10に接続されつつ、リード端子17の延長部16の持つ弾性によって振動可能なものである。
【0027】
このリード端子17は、パッケージ10に接続された第1の端部12と、外部と接続するための第2の端部13を有し、前記第1の端部12と第2の端部13の間に、所定の延在方向に延びる延在面を有する板状の延長部16を有し、リード端子17の延在面は、第1の軸を含み、且つ、基部23に対して直交する面に対して、直交している。
【0028】
図1を用いて実施形態1における角速度センサ101全体の構成を説明する。角速度センサ101は、パッケージ10と角速度検出素子11や回路基板19やリード端子17から構成されている。パッケージ10は開口部を有し、この開口部内の底面上に角速度検出素子11や回路基板19が収納されている。パッケージの底面は各積層膜の積層方向にほぼ平行な面であり、角速度検出素子11や回路基板19とほぼ平行に配置される。また、パッケージの底面は、基板14ともほぼ平行に配置される。
【0029】
一方、パッケージ10の外側にはリード端子17が取り付けられている。パッケージ内配線およびボンディングワイヤ15を介して、角速度検出素子11や回路基板19とリード端子17とが電気的に接続されている。
【0030】
次に以下構成部材について説明する。パッケージ10は、たとえばアルミナなどのセラミック層が複数積層されており、パッケージ10の内部または表面に配線が形成されたものである。焼成温度は1500〜1600℃であり、焼成後に個片化や端子付けを行う。そして、このパッケージ10上の配線は、角速度検出素子11とリード端子17が接続されたものであり、パッケージ10上の配線の一部は、パッケージ10の開口部およびパッケージ表面に露出しており、開口部に露出する上記配線は、ボンディングワイヤ15と接続され、他面に露出する配線は、リード端子17の端部とはんだなどを介して電気的・機械的に接続されている。リード端子17とパッケージ10のパッケージ表面に露出する配線との接続は、銀(Ag)と銅(Cu)との合金などからなる銀ろう材や、融点が300℃以上の高温はんだによりろう付けするものにできる。
【0031】
図2を用いて実施形態1における角度検出素子11について説明する。図2は角度検出素子11の斜視図である。角速度検出素子11は、たとえば厚み200〜500μm程度のシリコン(Si)基板などの半導体基板に対して周知の微細加工を施すことにより形成されたものである。つまり、角速度検出素子11は、Siからなり、一般に知られている梁状構造体をなしている。角速度検出素子11は、駆動腕21と検出腕22と基部23からなる。
【0032】
図2で、駆動腕21または検出腕22は、基部23から、第1の軸方向すなわち、長手方向に相当するZ軸方向に沿って延在して伸びている。つまり、駆動腕21または検出腕22は、Z軸方向に沿って延在して伸びている。本実施形態での、回転軸はZ軸方向に沿って延在している軸である。
【0033】
図2で、角速度検出素子11は、第1の軸に沿って延在して伸びる軸すなわち、Z軸に沿って延在している軸に対して線対称な形状である。
【0034】
図1と図3に示す、リード端子17は、パッケージ10に接続された第1の端部12と、外部と接続するための第2の端部13を有し、前記第1の端部12と第2の端部13の間に、所定の延在方向に伸びる延在面を有する板状の延長部16を有し、リード端子17の延在面は、第1の軸を含み、且つ、基部23に対して直交する面に対して、直交している。
【0035】
実施形態1では、リード端子17は、図1のように配置される。第1の端部12は、パッケージ10の底面または側面に金属ろうによって接続されている。リード端子17は、回転軸すなわちZ軸が伸びる方向の軸と交差するパッケージ10の側面に相当する面、すなわち、Z軸が延びる方向の軸とほぼ直交しているパッケージ10の側面に相当する面、の近傍である底面に接続されている。パッケージ10の側面は、必ずパッケージ10の底面に対し直角であるとは限らないが、概ね直角である。すなわち、交差するとは、概ね、直交するということである。
【0036】
実施形態1のパッケージ10のリード端子17は、回転軸が伸びる方向と交差するパッケージ10の側面に相当する面の近傍に接続されているが、過度な耐熱性や気密性を必要としない場合は、プラスチックモールドパッケージを用いても同様の性能は得られる。この場合製造コストを下げることが可能となる。リード端子17はCuや42アロイなどの導電性材料からなる一般的なものであり、複数本設けられている。そして、個々のリード端子17は、細長板状のものを折り曲げ加工したものである。
【0037】
そして角速度検出素子11を振動させるため、駆動腕21と検出腕22と基部23上には、それぞれ、駆動用圧電薄膜41、検出用圧電薄膜42、基部用電極43が同じ構成、材料で形成されており、具体的には、図2の角速度検出素子11の所定位置の表面に、図3で示すように、第1の電極膜24、圧電薄膜25、第2の電極膜26がこの順で、スパッタもしくは蒸着により数千オングストローム程度の厚みに成膜されている。なお、図3は、図2のA−A断面図であり、角速度検出素子11の断面部分は基部23に相当している。
【0038】
図3は、図1のA−A断面図であり、角速度検出素子11の断面部分は基部23に相当している。図3で、角速度検出素子11の駆動腕21の表面の第1の電極膜24の材料としては、白金(Pt)−チタン(Ti)またはPt−クロム(Cr)などである。さらに第1の電極膜24の上にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電薄膜25が数ミクロン(μm)程度の厚みに成膜される。成膜方法についてはスパッタリング法、溶液法など、各種の成膜方法を用いることができる。さらにこの圧電薄膜25の上に金(Au)、Cr、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、Ti、Ptなどの材料からなる第2の電極膜26がスパッタあるいは蒸着により数千オングストローム程度の厚みに成膜される。なお、第1の電極膜は、密着層であるTiと金属薄膜Ptをこの順で成膜したものである。
【0039】
角速度検出素子11は、駆動腕21上に駆動振動を発生させるための駆動電極部(図示せず)、そして検出腕22上にはコリオリ力を検知するための検出電極部(図示せず)、さらにフィードバック検出用のモニタ電極部(図示せず)が一括形成される。電極を形成するためにはフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いている。エッチング方法はドライエッチング、ウェットエッチング、リフトオフ法などがあるが、これらは薄膜材料によって適宜選択される。
【0040】
図2に示された実施形態1の、角速度検出素子11は、検出振動方向であるY軸方向に基づいて、回転軸すなわち、Z軸方向に伸びる軸回りの方向に対する角速度Ωを検出するものである。ここで、この種の振動型の角速度センサにおいては、駆動振動および検出振動の周波数は特に決められているわけではないが、通常は、たとえば数千Hz程度である。
【0041】
角速度の検出原理であるが、駆動腕21がX軸方向に駆動振動しているときに回転軸すなわちZ軸方向に伸びる軸回りの角速度Ωが印加されると、X軸と直交する検出方向であるY軸の方向へ角速度の大きさに比例したコリオリ力により検出腕22が検出振動するようになっている。そして、検出腕22上には検出用電極が設けられ、検出腕22の検出振動によって発生した圧電薄膜25の歪を検出することにより、角速度Ωの検出が可能となっている。
【0042】
基板14は、パッケージ10を固定し、他の部品との信号のやり取りをするために接続するための配線基板である。基板14は、ガラスエポキシ材やセラミック材などが用いられることが一般的であるが、これらに限ったものではない。さらに基板14の表面や内部にはCuを材料とした信号用配線が形成されている。
【0043】
図3は、実施形態1における角速度センサ1の断面図である。なお、図3は、図1のA−A断面図であり、角速度検出素子11の断面部分は基部23に相当している。
【0044】
実施形態1では、従来例で示した図9や図10のような、検出振動方向の外乱振動の影響を受けないように、図1のような、外乱振動の影響を受けない回転軸方向、と交差するパッケージ10の側面に相当する面の近傍に、板状の延在面を有する延長部16を有し、パッケージの外側に90°折れ曲がった第2の端部13を有するリード端子17を配置した。このような配置をすることにより、外乱振動を抑制し、外乱振動によって生じる不要な回転力に起因するオフセットドリフトを低減した。
【0045】
実施形態1においては、リード端子17の第1の端部12の他端であるもう片方の、第2の端部13は、ガラスエポキシやセラミックを材料とする基板14に表面接続されるため、板状の延長部16の延在面に対して、Z軸方向外側、つまり、パッケージ10の外側に向かって折れ曲がっている。また、基板実装面つまり、XZ平面と、リードの延在方向つまりY軸方向はほぼ90°である。
【0046】
特に、実施形態1として、図3では、パッケージ10のリード端子17の延長部16の延在方向に伸びる方向と直交する方向に振動する振動方向は、回転軸方向すなわち、図1ではZ軸方向、とほぼ一致させるように形成している。
【0047】
一般的に、外乱振動すなわち、外部からの好ましくない振動の周波数と、素子とパッケージからなる系の共振周波数が一致した場合、素子は外乱振動の影響を受けてしまい、駆動振動の振幅変動によって感度が変化したり、駆動共振以外の振動モードが発生したりしてしまう。その結果として、大きなオフセットドリフトが発生してしまう。
【0048】
そこで、実施形態1では、角速度検出素子11を収納するパッケージ10と、パッケージ10に接続されたリード端子17、そして、リード端子17を固定する基板14によって構成される振動系の振動現象について考える。ωpをリード端子での振動によるパッケージ共振周波数、ωを駆動振動の周波数、ξを減衰率とすると振動伝達率Tは数1の式で記述できる。
【数1】

【0049】
減衰率ξを0.3、すなわち、ここで、ξは材料定数であるので、ξを0.3とした場合の、振動伝達率Tの周波数依存性のグラフを図11に示す。縦軸は、振動伝達率T[dB]であり、単位は、発生した振動エネルギーと減衰された後の振動エネルギー比についてlogをとってある。横軸は周波数の比ω/ωpであるが、前記パッケージ10に接続されたリード端子17とリード端子17を固定する基板14によって構成される振動系の共振周波数で規格化されている。図11で、ω/ωpが1のときに振動伝達率Tがピークをもつのは、ωとωpが近づいてしまって共振してしまい、減衰効果が無く成るということを意味している。
【0050】
図11の結果より、周波数ω/ωpが、破線で示した1.4より小さい場合は、振動伝達率Tが1を超えてしまい、振動を増幅してしまうという結果が得られた。その結果、リード端子17の第1の端部12と第2の端部13が折り曲げられていることによる駆動周波数ωは、共振モードの共振周波数ωpに比べて40%以上離すことにより、このような不具合を防止することができた。
【0051】
図4は、実施形態1に関わる実装状態を示すものであり、これを用いて、実施形態1の角速度センサ1の製造方法について説明する。
【0052】
図4に示すように、角速度検出素子11はセラミックパッケージ10にダイボンディングつまり、角速度検出素子はパッケージ10に樹脂32で接着される。ダイボンド用樹脂32はエポキシ系、アクリル系などの樹脂が用いられる。樹脂塗布装置としてディスペンサーを用いた。このときの塗布条件は50kPa、0.2secであり、塗布量は1μg程度である。さらに素子実装においてはダイボンダを使用した。チップ搭載圧力は3Nであり、圧力印加時間は3secである。この後、オーブン、ホットプレートなどによる加熱によって樹脂を硬化させた。
【0053】
次に、図4に示すように、角速度検出素子11上の電極パッド(図示せず)とセラミックパッケージ10のパッド(図示せず)間のワイヤボンディングを実施し、パッケージ10との電気的接続を行った。ワイヤ15の材料としてはAuが一般的であるが、Cu、Alなど、電気的接続を容易に確保できる材料であれば限定されるものではない。Au線の太さは25μm、超音波の強さは1kW程度、ボンド加重は30g程度である。
【0054】
ワイヤボンディングによって外部との電気的結線を得た後、外部雰囲気からの影響を低減するために図4cに示すような封止を行う。封止用リッド34は、FeとNiとCoの合金からなるコバールなどの材料が一般的であり、封止手段としてはシーム溶接法すなわち、電流を流しながら溶接する方法を用いた。5msecのパルス電流を用い、電流値は1kAであった。封止雰囲気は窒素で行った。また素子に十分な耐熱性がある場合、AuSnはんだによる加熱接合を用いることも可能である。
【0055】
実施形態1では、角速度検出素子11やパッケージ10の他に回路基板や接着剤を使用しているので、回路基板や接着剤について説明する。回路基板19は角速度検出素子11へ駆動や検出用の信号を送り、角速度検出素子11からの電気信号を処理して外部へ出力する等の機能を有する信号処理チップとして構成されたものである。このような回路基板19は、たとえばSi基板等に対してMOSトランジスタやバイポーラトランジスタ等が、周知の半導体プロセスを用いて形成されているICチップなどにより構成されたものである。
【0056】
角速度検出素子11、回路基板19およびパッケージ10の各部間はボンディングワイヤ15を介して電気的に接続されている。こうして、角速度検出素子11からの電気信号は回路基板19へ送られて、電圧信号に変換されて角速度信号として出力されるようになっている。上記角速度信号は、リード端子17を介して、外部へ出力される。リード端子17の一端部は、パッケージ10に固定されて取り付け部材に電気的に接続されている。この取り付け部材は、プリント基板、セラミック基板などの配線基板、あるいはコネクタ部材などを採用できるが、実施形態1ではプリント基板としている。そのため、角速度センサ101の角速度信号は、リード端子17を介してプリント基板としての取り付け部材に出力される。
【0057】
一方パッケージ10の開口部の底部には、回路基板19、角速度検出素子11のそれぞれが樹脂接着剤32を介して、順次搭載され固定されている。この樹脂接着剤32は、一般的な接着剤を採用することができ、たとえば、シリコーンゲルなどの樹脂接着剤やシリコン系、エポキシ系、ポリイミド系、アクリル系などの接着フィルムが用いられる。
【0058】
(実施形態2)
図6は実施形態2における角速度センサ102の断面図である。図6は特に、実施形態2のリード端子172の形状を示す。
【0059】
実施形態2に示すリード端子172の第2の端部132はパッケージ10の断面から見て内側に向かって湾曲しており、湾曲部断面はほぼ一定の曲率半径をもっている。これによって、実施形態1よりも小さい占有面積での表面実装が可能となる。またこのリード端子172の形状は振動の節が発生しにくいことから、つまり、振動の節ができると高次のパッケージ振動が発生してしまい、駆動振動と近くなってしまうから、安定した振動を得ることができる。
【0060】
リード端子172の第1の端部12はパッケージ10の底面に金属ろうによって接続されつつ、リード端子172は検出軸方向であるY軸方向に伸びており、リードのもう片方の第2の端部132はガラスエポキシやセラミックを材料とした基板14に表面接続される。
【0061】
リード端子172の第2の端部132はパッケージ10の断面方向から見て内側に湾曲しており、湾曲部断面はほぼ一定の曲率半径を維持している形状となっている。このリード端子172の延長部16の延在方向に伸びる方向と直交する方向に振動する振動方向は、角速度検出素子11の回転軸方向すなわち、概ねZ軸方向に延在する軸に沿った方向となっているので、ヨー回転によるモーメントの発生を抑えることができ、実施形態1の場合と同様のオフセットドリフト低減効果が得られる。
【0062】
実施形態2でも、実施形態1と同様に、従来例で示した図9や図10のような検出振動方向の外乱振動の影響を受けないように、図6のような、外乱振動の影響を受けない回転軸方向に交差するパッケージ10の側面に相当する面の近傍に、板状の延長部16を有し湾曲部を有する第2の端部132を有するリード端子172を配置した。このような配置をすることにより、外乱振動を抑制し、外乱振動によって生じる不要な回転力に起因するオフセットドリフトを低減した。
【0063】
(実施形態3)
図7は実施形態3における角速度センサ103の断面図である。図7は特に、実施形態3のリード端子173の形状を示す。
【0064】
リード端子173の第1の端部12はパッケージ10の底面に金属ろうによって固定されつつ、リード端子173は検出軸方向すなわち、Y軸方向に伸びており、リードのもう片方の第2の端部13はガラスエポキシやセラミックを材料とした基板14に表面実装されている。
【0065】
実施形態3におけるリード端子173の延長部163の延在方向は、概ね検出軸すなわち、図7のように、Y軸方向に伸びつつ若干パッケージの外側へ向かっている。すなわち、リード端子173はななめに伸びていることになる。
【0066】
これにより、リード端子173の延長部163の延在方向は斜めになっているため、角速度検出素子11の回転軸方向すなわち、Z軸方向へのパッケージ共振周波数が若干上昇してしまうので、抑制効果はやや損なわれてしまうものの、リード加工がしやすいので加工ばらつきが発生しにくいという利点がある。リード端子173の延長部163の延在方向に伸びる方向と直交する方向に振動する振動方向は、角速度検出素子11の回転軸方向すなわち、概ねZ軸方向に延在する軸に沿った方向となっている角速度センサとなっていることから、ヨー回転によるモーメントの発生を抑えることができ、実施形態1の場合と同様のオフセットドリフト低減効果が得られる。
【0067】
実施形態3でも、実施形態1と同様に、従来例で示した図9や図10のような検出振動方向の外乱振動の影響を受けないように、図7のような、外乱振動の影響を受けない回転軸方向に交差するパッケージ10の側面に相当する面の近傍に、パッケージの外側にななめに延びる板状の延長部163を有するリード端子173を配置した。このような配置をすることにより、外乱振動を抑制し、外乱振動によって生じる不要な回転力に起因するオフセットドリフトを低減した。
【0068】
(実施形態4)
図8は実施形態4における角速度センサ104の断面図である。図8は特に、実施形態4のリード端子174の形状を示す。
【0069】
リード端子174の第1の端部12はパッケージ10の底面に金属ろうによって接続されつつ、リード端子174は検出軸方向すなわち、Y軸方向に伸びており、リード端子174のもう片方の第2の端部134はガラスエポキシやセラミックを材料とした基板14に接続されている。
【0070】
実施形態4におけるリード端子174の第2の端部134は、ガラスエポキシ基板やセラミック基板にDIP(Dual In−line Package)実装されるため、リード端子174の延長部16と第2の端部134は真直ぐに伸びており、基板14を貫通するため、裏側からはんだづけするため、第2の端部134を折り曲げ加工する必要がない。このリード端子174の延長部16の延在方向に伸びる方向と直交する方向に振動する振動方向は、角速度検出素子11の回転軸方向すなわち、Z軸方向に延在する軸に沿った方向となっている角速度センサなので、ヨー回転によるモーメントの発生を抑えることができ、実施形態1の場合と同様のオフセットドリフト低減効果が得られる。
【0071】
実施形態4でも、実施形態1と同様に、従来例で示した図9や図10のような検出振動方向の外乱振動の影響を受けないように、図8のような、外乱振動の影響を受けない回転軸方向に交差するパッケージ10の側面に相当する面の近傍に、基板14を真直ぐに貫通する板状の延長部16を有するリード端子174を配置した。このような配置をすることにより、外乱振動を抑制し、外乱振動によって生じる不要な回転力に起因するオフセットドリフトを低減した。
【実施例】
【0072】
実施形態1の素子特性すなわち、周波数に対するオフセットドリフトに対する効果を、図5aから図5cを用いて説明する。実施形態1の効果を示すため、加振試験におけるオフセットドリフトの測定を行った。加振周波数は50Hzから20kHzであり、加振の大きさは98m/s(10G)である。
【0073】
実施形態1の角速度検出素子11を、リード端子17が無く、パッケージ10を直接基板14に実装した場合の、耐振動特性結果を図5aに示す。これによれば、加振周波数が5000Hzおよび15000Hz近傍において、リードが無いために角速度検出素子11に外部振動がそのまま加わってしまうため、15deg/secもの大きなオフセットドリフトが発生してしまう。
【0074】
さらに特許文献1の従来例、すなわち図9、図10に示したように、リード端子13の延長部16の延在方向に伸びる方向と直交する方向に振動する振動方向と、検出軸すなわちY軸方向が同じ方向、すなわち、Y軸方向で実装した場合は、図5bに示す様に、1000Hz近傍と3300Hz近傍で、10deg/sec、4deg/secものオフセットドリフトが発生するため、オフセットドリフト低減効果としては不十分である。
【0075】
しかしながら、実施形態1のように実装した場合、図5cに示すように、オフセットドリフトは、ほぼゼロであり、ノイズレベル以下だった。これは検出軸方向の不要な回転動作が発生することによる不要な出力を十分に低減できたためと考えられる。実施形態1のように実装することによって、ヨー回転の不要な振動を抑制することができ、オフセットドリフトを低減することができる。
【0076】
以上の評価結果から、実施形態1によって、従来例で示した図9や図10のような検出振動方向の外乱振動の影響を受けないように、図1のような、外乱振動のない回転軸方向に交差するパッケージ10の側面に相当する面の近傍に、板状の延長部16を有するリード端子17を配置したことにより、外乱振動を抑制し、外乱振動によって生じる不要な回転力に起因するオフセットドリフトを低減することが可能となることがわかった。

【表1】

【0077】
また、実施形態1以外にも、すなわち、実施形態2〜4までについても、前述の評価と同じ評価方法で、オフセットドリフトについて確認をおこなった。表1は、図9や図10や図5bに示された従来例と、実施形態1〜4についての、オフセットドリフトの評価結果である。すでに図5bで示した従来例の評価結果ではオフセットドリフト量が10deg/secであったが、実施形態1から4の場合はいずれも、従来例である図5bの評価結果以下であり、図5cの実施形態1の結果と同様に、ほぼゼロであって、ノイズレベル以下であった。したがって、実施形態1から4の場合はいずれも、従来例に比べて、オフセットドリフトの低減効果があることを確認できた。以上の結果からこのようなリード端子配置をすることによって外乱振動を抑制し、外乱振動によって生じる不要な回転力に起因するオフセットドリフトを低減することが可能であることがわかった。
【0078】
以上の評価結果をまとめると、すなわち、本実施形態によれば、外部からの外乱振動の影響を抑制し、かつ外乱振動によって生じる不要な回転力に起因するオフセットドリフトを低減することが可能であるということを示すことができた。
【符号の説明】
【0079】
1、10 パッケージ
100、101、102、103、104、105 角速度センサ
11、110 角速度検出素子
12 第1の端部
13、132、134 第2の端部
14 基板
15 ボンディングワイヤ
16、163 リード端子の延長部
17、170、172、173、174、175 リード端子
19 回路基板
21 駆動腕
22 検出腕
23 基部
24 第1の電極膜
25 圧電薄膜
26 第2の電極膜
32 樹脂接着剤
34 リッド
41 駆動用圧電薄膜
42 検出用圧電薄膜
43 基部用電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
角速度検出素子を収納するパッケージと、前記パッケージに接続されたリード端子と、を有する角速度センサであって、
前記角速度検出素子は、基部と駆動腕と検出腕を有し、
前記駆動腕または前記検出腕は、前記基部から、第1の軸に沿って延在しており、
前記リード端子は、前記パッケージに接続された第1の端部と、外部と接続するための第2の端部を有し、前記第1の端部と第2の端部の間に、所定の延在方向に伸びる延在面を有する板状の延長部を有し、
前記リード端子の延在面は、前記第1の軸を含み、且つ、前記基部に対して直交する面に対して、直交していることを特徴とする角速度センサ
【請求項2】
前記角速度検出素子の前記基部に対して前記駆動腕と前記検出腕が反対側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載された角速度センサ。
【請求項3】
前記駆動腕と前記検出腕はそれぞれ2本であることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の角速度センサ。
【請求項4】
前記第1の端部は、前記延長部の延在方向に対して折り曲げられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の角速度センサ。
【請求項5】
前記第1の端部および前記第2の端部は、前記延長部の延在方向に対して折り曲げられており、前記第2の端部は、前記パッケージに対して外側に向かって折り曲げられていることを特徴とする請求項4に記載の角速度センサ。
【請求項6】
前記第1の端部は、前記延長部の延在方向に対してほぼ90°折り曲げられており、前記第2の端部は、前記パッケージに対して内側に向かって湾曲されていることを特徴とすることを特徴とする請求項4に記載の角速度センサ
【請求項7】
前記角速度検出素子を収納する前記パッケージと、前記パッケージに接続されたリード端子、そして、リード端子を固定する基板によって構成される振動系の共振モードのうち、前記リード端子の第1の端部と第2の端部が折り曲げられていることによる共振モードの共振周波数は素子の駆動周波数に比べて40%以上離れていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の角速度センサ
【請求項8】
前記第2の端部は、基板に接続されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の角速度センサ




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図5c】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate