説明

触媒を用いた分析装置

【課題】ランニングコストを抑えながらも、触媒の寿命を縮めたり、応答速度を低下させたりすることなく、反応効率を高く保つことができる分析装置を提供する。
【解決手段】流体中の測定対象となる第1成分を触媒を用いて反応させて、第2成分の濃度を変化させるものであって、サンプル流路10と、サンプル流路10の終端に接続され、第2成分の濃度を測定するサンプル測定計20と、サンプル流路10に始端及び終端がそれぞれ接続された副流路13と、副流路13、又はサンプル流路10における副流路13の各接続部間に設けられた触媒30と、副流路13及びサンプル流路10の各接続部のうち、サンプル流路10における下流側の接続部から上流側の接続部へと、副流路13を経由して流体の一部を戻す流れ制御機構40とを具備するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中の測定対象となる第1成分の濃度を測定する分析装置に関し、より詳しくは、前記第1成分を触媒を介して反応させて別の第2成分に変換して、該第2成分を増加させたり、又は、前記第1成分を別の第2成分と触媒を介して反応させて該第2成分を減少させたりして、増減後の当該第2成分の濃度又は濃度の増減量から前記第1成分の濃度又は第1成分及び第2成分の合計濃度を間接的に測定するようにした分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の分析装置においては、測定精度の観点から、反応前の第1成分の濃度に対する、反応後の第2成分の濃度の増減量の比(以下、反応効率ともいう)を高く保つことが望ましい。
【0003】
例えば、特許文献1に示す、アンモニア(NH)を触媒によってNOに変換させるアンモニアガス分析計では、触媒の温度を上げて、反応を活性化させるようにしている。
【0004】
しかしながら、この分析計では、触媒の温度を上げるようにしているので、触媒の劣化がすすみ、触媒の寿命が短くなってしまったり、消費電力が上がってランニングコストがかさんでしまったりするという問題がある。
【0005】
そこで、反応効率を高めるために、触媒量を増やしたり、流体の流量を落としたりすることも考えられる。前者は、触媒量を増やして、触媒の表面積を増やし、触媒と流体との接触面積を増やそうとするものである。後者は、流体の流量を落として、触媒と流体との接触時間を長くしようとするものである。
【0006】
しかしながら、実際には、いずれの方法も、第2成分の触媒への吸着を促進してしまうので、反応効率があまり向上しないだけでなく、応答速度(既知濃度の第1成分を含む流体を分析装置に導入してから、分析装置が測定した濃度が前記既知濃度に十分近づくまで(例えば90%の値になるまで)の時間)を低下させてしまうという問題もある。さらに、流量を落とすものでは、流体が測定計に到達するまでの時間が遅くなってしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−227782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題を一挙に解決すべく図ったものであり、ランニングコストを抑えながらも、触媒の寿命を縮めたり、応答速度を低下させたりすることなく、反応効率を高く保つことができる分析装置を提供することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る分析装置は、流体中の測定対象となる第1成分を触媒を用いて反応させて、前記第1成分とは異なる第2成分の濃度を変化させる分析装置であって、前記流体が導入されるサンプル流路と、前記サンプル流路の終端に接続され、前記第2成分の濃度を測定するサンプル測定計と、前記サンプル流路に始端及び終端がそれぞれ接続された副流路と、前記副流路、又は前記サンプル流路における前記副流路の各接続部間に設けられた触媒と、前記副流路及び前記サンプル流路の各接続部のうち、前記サンプル流路における下流側の接続部から上流側の接続部へと、前記副流路を経由して流体の一部を戻す流れ制御機構とを具備するものである。
【0010】
このようなものであれば、前記サンプル流路に始端及び終端がそれぞれ接続された副流路が設けられ、その副流路を通って流体の一部が上流側に戻されて循環するとともに、流体が循環している流路、すなわち前記副流路、又は前記サンプル流路における前記副流路の各接続部間に触媒が設けられているので、触媒を通過した流体が再度触媒を通過するようにでき、反応効率を高めることができる。さらに、触媒の性能が劣化した場合であっても、副流路を経由して上流側へと戻される流体の流量(以下、循環流量ともいう)を増やすことによって、反応効率を高く保つことができるとともに、触媒の寿命を実質的に延ばすことができる。また、触媒の温度を上げる必要がないので、ランニングコストを抑えることができるとともに、触媒の劣化を加速して寿命を縮めてしまうこともない。触媒量を増やしたり、流量を落としたりする必要がないので、応答速度が低下することもない。
【0011】
前記流れ制御機構が、前記副流路に設けられた流体抵抗と、前記サンプル流路における前記副流路の各接続部間、又は前記副流路に設けられたポンプとを具備し、前記ポンプが、前記流体を前記副流路の上流側から下流側へと導くものであれば、流体抵抗を調整することにより、前記循環流量を調整することができる。
【0012】
第2成分の濃度が既知でなかったり、変化したりする場合であっても、第1成分の濃度を測定するためには、前記サンプル流路における、前記各接続部よりも上流側から分岐し、前記触媒が設けられていない参照流路と、前記参照流路の終端に設けられ、前記第2成分を測定する参照測定計とを具備し、前記サンプル測定計及び前記参照測定計から得た値を用いて前記第2成分の変化量を算出するものであり、前記流れ制御機構が、前記参照流路、及び前記サンプル流路における前記参照流路との分岐部よりも下流側にそれぞれ設けられた制御バルブを具備し、前記制御バルブが、前記サンプル流路及び前記参照流路の流量を相対的に制御することによって、前記流体が、前記サンプル流路及び前記参照流路に分流されてから、前記サンプル測定計及び前記参照測定計によって測定されるまでの時間を概略同じにするようにしているものが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
従って、本発明によれば、ランニングコストを抑えながらも、触媒の寿命を縮めたり、応答速度を低下させたりすることなく、反応効率を高く保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態における分析装置の模式的全体図。
【図2】同実施形態における触媒装置の縦断面図。
【図3】同実施形態における分析装置の応答速度を示す図。
【図4】同実施形態における触媒装置のNOの生成率を示す図。
【図5】同実施形態における触媒装置のNOの還元効率を示す図。
【図6】同実施形態における触媒装置のNHの反応効率を示す図。
【図7】本発明の別の実施形態における分析装置の模式的全体図。
【図8】本発明のさらに別の実施形態における分析装置の模式的全体図。
【図9】本発明の別の実施形態における触媒装置の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態に係る触媒装置30を用いた分析装置100について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る分析装置100は、例えば、大気の汚染度を測定するために、大気中に含まれる第1成分(ここではNH)の濃度を測定するものであり、より詳しくは、流体中の第1成分を触媒装置30を介して反応させて第2成分(ここではNO)に変換して、当該第2成分を増加させて、当該第2成分の濃度を示す測定値から当該第2成分の増加量を算出し、当該第2成分の増加量から当該第1成分の濃度を算出するものである。なお、測定値には濃度だけでなく、その濃度を示す電気信号の値等を含み、増加量には濃度の差分だけでなく、その濃度の差分を示す電気信号の値等を含む。図1に示すように、この分析装置100は、大きくは、流路機構110及びその流路機構110に係る演算処理を行う演算機構120からなる。
【0016】
図1に示すように、流路機構110は、前記触媒装置30が設けられ、前記流体が導入されるサンプル流路10と、前記サンプル流路10における前記触媒装置30の上流側から分岐し、前記触媒装置30が設けられていない参照流路12と、前記サンプル流路10及び参照流路12の終端に接続され、それら流路の第2成分の濃度を測定する測定計20(請求項でいうサンプル測定計及び参照測定計に相当する)と、前記測定計20に接続されて、流体が排出される排出流路15とを具備している。なお、ここではサンプル流路10の第2成分の濃度を測定するサンプル測定計と、参照流路12の第2成分の濃度を測定する参照測定計とは一体で設けられるものとしたが、別体で設けられるものとしてサンプル流路10及び測定流路14の終端にそれぞれ接続してもよい。また、前記サンプル流路10における、前記参照流路12との分岐部よりも上流側には制御バルブ53が設けられている。
【0017】
図2に示すように、前記触媒装置30は、内部に流体が流通する触媒管31と、前記触媒管31の全部が内部に挿入される外装体33と、前記触媒管31の温度を測定する熱センサ36とを具備している。
【0018】
前記触媒管31は、仮想軸線の周囲に同じ径で概略螺旋状に複数回巻かれた形状(つるまきバネ形状)をなし、隣り合う管同士は互いに密着している。以下、前記触媒管31の外周面31aのうち、つるまきバネ形状の外側の外周面を、外側外周面31a1ともいい、つるまきバネ形状の内側の外周面を、内側外周面31a2ともいう。前記触媒管31は、当該触媒管31を管状構造体として成り立たせるための構造体成分中に、前記流体に対する触媒作用を持つ触媒成分を略均一に分散させた材質で形成してある。ここでは、触媒管31は合金からなり、構造体成分が金属元素であるFeを含み、触媒成分はCrを含む。より詳しくは、触媒管31は、前記構造体成分としてFeを60〜72質量%、前記触媒成分としてCrを16〜18質量%含有する他に、添加成分としてNiを10〜15質量%、Moを2〜3質量%含有する。
【0019】
前記外装体33は、一端面を底板34bで閉塞した概略円筒状をなす外装体本体34(ここでは石英管)、及び前記外装体本体34の他端面を閉塞する蓋体35からなる。当該外装体本体34の他端面から前記触媒管31が挿入してある。前記蓋体35には、前記触媒管31の一端31bが接続された流体導入用の導入ポート35aと、前記外装体本体34の内部に連通する流体導出用の導出ポート35bとが設けてある。
【0020】
前記外装体本体34の内周面34a及び前記触媒管31の外周面31aの間には、隙間32が形成してあり、より詳しくは、前記外装体本体34の内周面34a及び前記触媒管31の外側外周面31a1の間と、前記外装体本体34の内周面34a及び前記触媒管31の内側外周面31a2の間とに形成されている。言い換えれば、隙間32は、触媒管31全体をつるまきバネ形状としてみた時の外側空間と、内側空間とに形成されている。この隙間32は触媒管31の他端31c(挿入端)から前記導出ポート35bまで連続している。流体は、前記導入ポート35aから導入されて、前記触媒管31の内部を通過し、前記触媒管31の挿入端31cから、前記外装体33内に流入する。続いて、流体は前記隙間32を通り、前記導出ポート35bから導出されるようにしてある。
【0021】
また、前記底板34bの内面には傾斜が設けてあり、より詳しくは、前記底板34bの内面が、その中央部が前記外装体本体34の他端面に向かって盛り上がる部分球状をなす。底板34bの内面の周辺部よりも中央部の近くに、前記触媒管31の挿入端31cが配置してある。
【0022】
前記熱センサ36は、前記外装体本体34に挿入されて、熱センサ36の周囲に前記触媒管31が巻かれるように配置してあり、ここでは熱電対である。なお、触媒装置30の外装体本体34の周囲には図示しないヒータが設けてあり、そのヒータが触媒装置30の触媒管31を所望の温度に加熱する。
【0023】
さらに、図1に示すように、流路機構110は、前記サンプル流路10の前記参照流路12との分岐部よりも下流側における前記触媒装置30の上流側及び下流側に、始端及び終端がそれぞれ接続される副流路13と、前記副流路13及び前記サンプル流路10の各接続部のうち、前記サンプル流路10における下流側の接続部から上流側の接続部へと、前記副流路13を経由して流体を戻す流れ制御機構40と、前記サンプル流路10及び前記参照流路12の流量を測定するための流量計50とを具備している。
【0024】
流れ制御機構40は、前記副流路13に設けられた流体抵抗41(ここではキャピラリ)と、前記サンプル流路10における前記副流路13の各接続部間のうち、前記触媒装置30よりも下流側に設けられた第1ポンプ42と、前記参照流路12に設けられた第2ポンプ43とを具備する。前記各ポンプ42、43は、前記サンプル流路10及び前記参照流路12の上流側から下流側へと流体を流通させるとともに、前記第1ポンプ42は、前記流体を前記副流路13の上流側から下流側へと流通させる。
【0025】
さらに、前記流れ制御機構40は、前記サンプル流路10における前記触媒装置30及び前記第1ポンプ42の間に設けられた第1制御バルブ44と、前記参照流路12における前記第2ポンプ43の上流側に設けられた第2制御バルブ45とを具備する。前記各制御バルブ44、45は、受け付けたバルブ制御信号の値に応じて開度を制御して、前記サンプル流路10及び前記参照流路12の流量を相対的に制御するものであり、ここではニードルバルブである。
【0026】
前記流量計50は、前記サンプル流路10における前記副流路13の各接続部よりも下流側、及び前記参照流路12における前記第2ポンプ43よりも下流側からそれぞれ分岐する測定流路14にそれぞれ設けられている。各測定流路14の終端は、前記排出流路15に接続してある。
【0027】
演算機構120は、汎用又は専用のコンピュータであり、メモリに所定のプログラムを格納し、当該プログラムに従ってCPUやその周辺機器を協働動作させることによって、バルブ制御部60及び濃度算出部61としての機能を発揮する。
【0028】
バルブ制御部60は、前記流量計50から受け付けた流量の値から、サンプル流路10及び参照流路12の流量の比率を算出し、その流量比率が設定比率となるようにバルブ制御信号を算出し、そのバルブ制御信号を各制御バルブ44、45に出力して、フィードバック制御する。前記設定比率は、前記流体が、前記サンプル流路10と前記参照流路12との分岐部から前記各流路10、12に分流されてから、前記サンプル測定計20及び前記参照測定計20によって測定されるまでの時間を概略同じにするように設定されており、サンプル流路10及び参照流路12の流路長や流路径(断面積)から算出される。ここでは、サンプル流路10に対する参照流路12の流路長の比率はaであり、各流路の流路径は同一なので、サンプル流量に対する参照流路12の流量の比率がaとなるように設定比率が定められている。
【0029】
濃度算出部61は、前記測定計20から、サンプル流路10及び参照流路12における第2成分の濃度を示す測定値を受け付け、各第2成分の測定値の差分(増加量)から第1成分の濃度を算出する。
【0030】
本実施形態によれば、前記サンプル流路10に始端及び終端がそれぞれ接続された副流路13と、前記サンプル流路10における前記副流路13の各接続部間に触媒装置30とが設けてあり、その副流路13を通って流体の一部が触媒装置30の上流側に戻されて循環するので、触媒装置30を通過した流体が再度触媒装置30を通過するようにでき、反応効率を高めることができる。
【0031】
さらに、触媒装置30の性能が劣化した場合であっても、副流路13の流体抵抗41を調整して、循環流量を増やすことによって、反応効率を高く保つことができるとともに、触媒装置30の寿命を実質的に延ばすことができる。また、触媒装置30の温度を上げる必要がないので、ランニングコストを抑えることができるとともに、触媒装置30の劣化を加速して寿命を縮めてしまうこともない。触媒量を増やしたり、流量を落としたりする必要がないので、応答速度が低下することもない。
【0032】
また、触媒装置30について言えば、前記触媒管31を管状構造体として成り立たせるための構造体成分中に、前記流体に対する触媒作用を持つ触媒成分を略均一に分散させた材質で、前記触媒管31が形成してあるので、触媒管31の表面が剥落した場合であっても、剥落した表面と同様に、新たに露出した表面に触媒成分が露出するようにでき、触媒性能の劣化を防止することができる。
【0033】
また、触媒管31が同一の材質で形成されているので、例えば触媒管31を高温に加熱する場合であっても、触媒管31を形成する材質の熱膨張率の違いから歪みが発生することを防止でき、触媒管31表面の剥落を低減できる。さらに、触媒管31に、例えば小球状の触媒を充填したりする必要がないので、触媒管31の内部流路を十分に広くでき、触媒と流体との接触機会を抑えることができるとともに、接触面積や接触時間を抑えることができる。従って、流体の触媒表面への吸着を低減でき、図3に示すように、応答速度を格段に向上させることができる。
【0034】
また、本実施形態における触媒装置30においては、
4NH+5O → 4NO+6H
という主反応だけでなく、以下の副反応が起こり、反応効率を低下させる要因となっている。
4NH+7O → 4NO+6H
この触媒装置30の構造体成分はFeであり、触媒成分はCrなので、副反応を抑えて、図4に示すように、従来のPt系触媒装置よりも副生成成分であるNOの生成率を約10%抑えることができ、反応効率を向上させることができる。
【0035】
また、触媒装置30では、
2NO → 2NO+O
という還元反応により、副生成成分を第2成分に還元することができる。さらに、触媒管31は添加成分としてMoを含有するので、次の還元反応も起こる。
Mo+3NO → MoO+3NO
これらの還元反応の還元効率は、図5に示すように従来のPt系触媒装置よりも約15%高く、反応効率を向上できる。従って、副反応を抑制できるとともに、還元反応を促進できるので、図6に示すように、反応効率を約5%向上させることができる。
【0036】
加えて言えば、サンプル測定計及び参照測定計が一体で測定計20として設けられているとともに、測定計20で測定した2つの値の差分から、第1成分の濃度を算出するので、測定計20に測定誤差が発生した場合であっても、差分を算出する際にその測定誤差を相殺でき、測定精度を高めることができる。
【0037】
さらに、前記外装体本体34の底板34bの内面が、その中央部が前記外装体本体34の他端面に向かって盛り上がる部分球状をなすので、触媒管31から剥落した小片を底面の傾斜にそって自動的に集めることができるだけでなく、底板34bの周辺部よりも中央部に近い位置に触媒管31の挿入端31cが開口しているので、触媒管31の挿入端31cから出た流体が、底板34bの中央部から周辺部へと流れ、その流れを利用して、前記小片を底板34bの周辺部により効果的に集めることができる。
【0038】
流量計50は、サンプル流路10及び参照流路12から分岐する測定流路14に設けられているので、流量計50に第2成分が吸着されて第2成分の濃度が変化してしまう場合であっても、濃度が変化した流体ではなく、濃度が変化していない流体を測定計20に導入することができ、測定誤差を低減することができる。
【0039】
なお、本発明はこれらの実施形態に限られるものではない。例えば、図7に示すように、流路機構110が、除湿ユニット51と、副触媒装置52とを具備するものであってもよい。前記除湿ユニット51は、前記サンプル流路10及び前記参照流路12における、前記測定流路14の分岐部よりも下流側にそれぞれ設けられている。前記副触媒装置52は、副生成成分(ここではNO)を第2成分(ここではNO)に変換するものであり、前記サンプル流路10及び前記参照流路12における前記除湿ユニット51よりも下流側にそれぞれ設けられている。このようなものであれば、副触媒装置52が設けられているので、反応効率をより高めることができる。
【0040】
また、図8に示すように、触媒装置30は副流路13に設けてもよい。要は、前記副流路13、及び前記サンプル流路10における前記副流路13の各接続部間によって形成される循環流路のどこかに触媒装置30を設ければよい。
【0041】
さらに、図9に示すように、触媒装置30の触媒管31は、直管状をなすものであってもよい。また、触媒管31は複数であってもよいし、分岐していてもよいし、蛇行するように曲がりくねっていてもよい。また、外装体本体34の底板34bの内面に、一方の側周壁から対向する側周壁へと下がる傾斜を設けてもよい。
【0042】
触媒装置を流通する流体は、触媒管内部を流通した後、触媒管外部の隙間を流通するようにするために、触媒管の挿入端から導入された流体が、前記隙間を通って、外装体の所定位置に設けられた導出ポートから導出されるようにしたが、触媒管外部の隙間を流通した後、触媒管内部を流通してもよい。より詳しくいえば、外装体の所定位置に設けられた導入ポートから導入された流体が、前記隙間を通って、前記触媒管の挿入端に導出されるようにしてもよい。また、外装体に触媒管の一部が挿入されて、触媒管の一端が外装体から突出して、その一端が触媒装置の導入ポート又は導出ポートを形成するようにしてもよい。
【0043】
加えていえば、本実施形態では、第1成分を酸化させる酸化触媒を用いたが、例えば第1成分を還元する還元触媒を用いて、第1成分を前記第1成分とは異なる第2成分と反応させて、当該第2成分を減少させて、その第2成分の減少量から当該第1成分の濃度を算出するようにしてもよい。還元触媒を用いた例としては、以下の反応が挙げられる。このとき、例えば第1成分をNH、第2成分をNOとすればよい。
4NO+4NH+O2 → 4N+6H
【0044】
本実施形態では、流体中の測定対象となる第1成分を触媒を用いて反応させて、前記第1成分とは異なる第2成分の濃度を変化させ、変化後の第2成分の濃度(濃度だけでなく濃度を示す電気信号の値等を含む)又は濃度の変化量に基づいて、第1成分の濃度を算出するものとしたが、第1成分及び第2成分の合計濃度を算出するようにしてもよい。具体的には、HS及びSOを含む流体を流路に導入して、触媒を用いて流体中のSOをHSに変換し、測定計が測定したHSの濃度に基づいて、HS及びSOの合計濃度を測定するようにしたものを挙げることができる。同様に、流体中のNOx(例えばNO及びNO)の合計濃度や、NH及びNOxの合計濃度を測定することも可能である。
【0045】
また、触媒成分はCrに限られるものではなく、例えばPtであってもよい。同様に構造体成分はアルミナ等であってもよい。
【0046】
さらに、前記サンプル流路のポンプは、前記サンプル流路における前記副流路の各接続部間、又は前記副流路に設けてもよい。
【0047】
制御バルブは、前記サンプル流路における前記触媒装置及び前記第1ポンプの間に設けられるものとしたが、これに限られるものではなく、前記サンプル流路における前記参照流路との分岐部よりも下流側と、前記参照流路とにそれぞれ設けるようにしてもよい。参照流路は、前記サンプル流路における前記副流路の各接続部よりも上流側から分岐するものであればよい。
【0048】
また、触媒管にはCrを16〜18質量%含有するSUS−316又はSUS−316Lを用いたが、これに限られるものではなく、Crを10.5質量%以上含有するステンレスを用いても良い。その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0049】
100・・・分析装置
10・・・サンプル流路
12・・・参照流路
13・・・副流路
20・・・測定計(サンプル測定計及び参照測定計)
30・・・触媒装置
32・・・隙間
33・・・外装体
36・・・熱センサ
31・・・触媒管
40・・・流れ制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中の測定対象となる第1成分を触媒を用いて反応させて、前記第1成分とは異なる第2成分の濃度を変化させる分析装置であって、
前記流体が導入されるサンプル流路と、
前記サンプル流路の終端に接続され、前記第2成分の濃度を測定するサンプル測定計と、
前記サンプル流路に始端及び終端がそれぞれ接続された副流路と、
前記副流路、又は前記サンプル流路における前記副流路の各接続部間に設けられた前記触媒と、
前記副流路及び前記サンプル流路の各接続部のうち、前記サンプル流路における下流側の接続部から上流側の接続部へと、前記副流路を経由して流体の一部を戻す流れ制御機構とを具備する分析装置。
【請求項2】
前記流れ制御機構が、前記副流路に設けられた流体抵抗と、
前記サンプル流路における前記副流路の各接続部間、又は前記副流路に設けられたポンプとを具備し、
前記ポンプが、前記流体を前記副流路の上流側から下流側へと導く請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記サンプル流路における前記各接続部よりも上流側から分岐し、前記触媒が設けられていない参照流路と、
前記参照流路の終端に接続され、前記第2成分の濃度を測定する参照測定計とを具備し、
前記サンプル測定計及び前記参照測定計から得た値を用いて前記第2成分の変化量を算出するものであり、
前記流れ制御機構が、前記参照流路、及び前記サンプル流路における前記参照流路との分岐部よりも下流側にそれぞれ設けられた制御バルブを具備し、
前記制御バルブが、前記サンプル流路及び前記参照流路の流量を相対的に制御することによって、前記流体が、前記サンプル流路及び前記参照流路に分流されてから、前記サンプル測定計及び前記参照測定計によって測定されるまでの時間を概略同じにするようにしている請求項1又は2記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−88056(P2012−88056A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232214(P2010−232214)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】