説明

許容運転時間算出装置

【課題】 本発明は、車両の運転者に許容運転時間を計算して知らせる許容運転時間算出装置に関し、今日の許容運転時間を容易に知ることを目的とする。
【解決手段】 自動車の許容運転時間に関する規則を記憶する記憶手段と、始業時刻および終業時刻を入力するための入力手段と、前記入力手段に入力された今日の始業時刻と前記記憶手段に記憶される前記規則に基づいて今日の許容運転時間を演算する演算手段と、前記演算手段で計算された前記許容運転時間を出力する出力手段と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者に許容運転時間を計算して知らせる許容運転時間算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
労働省告示第7号の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(第4条の四)」には、「運転時間は、2日(始業時刻から起算して48時間をいう)を平均して1日当たり9時間、2週間を平均し1週間当たり44時間を超えないものとする」と定められている。
【特許文献1】特開2001−118179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来、例えば前日の運転時間が予定していた運転時間より多くなった場合等に、当日に許容される運転時間を知ることが容易でないという問題があった。
【0004】
本発明は、かかる従来の問題を解決するためになされたもので、今日の許容運転時間を容易,確実に知ることができる許容運転時間算出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の許容運転時間算出装置は、自動車の許容運転時間に関する規則を記憶する記憶手段と、始業時刻および終業時刻を入力するための入力手段と、前記入力手段に入力された今日の始業時刻と前記記憶手段に記憶される前記規則に基づいて今日の許容運転時間を演算する演算手段と、前記演算手段で計算された前記許容運転時間を出力する出力手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項2の許容運転時間算出装置は、請求項1記載の許容運転時間算出装置において、前記演算手段は、前記入力手段に入力された今日の終業時刻と前記記憶手段に記憶される前記規則に基づいて明日の許容運転時間を演算することを特徴とする。
【0007】
請求項3の許容運転時間算出装置は、請求項1または請求項2記載の許容運転時間算出装置において、前記規則は、少なくとも2日平均の運転時間から1日の許容運転時間を規制する規則を有していることを特徴とする。
【0008】
請求項4の許容運転時間算出装置は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の許容運転時間算出装置において、前記規則は、少なくとも2週間平均の運転時間から1週間の許容運転時間を規制する規則を有していることを特徴とする。
【0009】
請求項5の許容運転時間算出装置は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の許容運転時間算出装置において、前記規則は、複数の規則を有していることを特徴とする。
【0010】
請求項6の許容運転時間算出装置は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の許容運転時間算出装置において、前記出力手段は、前記許容運転時間を表示する表示部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の許容運転時間算出装置では、今日の許容運転時間を容易に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の許容運転時間算出装置の一実施形態を備えた車載器を示すブロック図である。
【図2】図1の許容運転時間算出装置の動作を示す説明図である。
【図3】図2の始業計算処理のサブルーチンを示す説明図である。
【図4】第1の規則を示す説明図である。
【図5】第2の規則を示す説明図である。
【図6】図2の終業計算処理のサブルーチンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の許容運転時間算出装置の第1の実施形態が搭載される車載器を示すブロック図である。この車載器は、トラック等の車両に搭載される。
【0014】
車載器11は、デジタルタコグラフ13、CPU15、始業ボタン17、終業ボタン19、表示器21、記憶部23を有している。車載器11は、イグニッションスイッチ25のオンにより立ち上げられる。デジタルタコグラフ13は、車速センサ27からの信号を入力して車両の運行状態を記録する。CPU15には、始業ボタン17、終業ボタン19からの信号が入力される。表示器21は種々の情報を表示する。記憶部23には種々の情報が記憶されている。
【0015】
図2は、上述した車載器11に搭載される許容運転時間算出装置の動作を説明するフローチャートである。
【0016】
ステップS1:CPU15は、始業ボタン17が押下されているか否かを判断する。
【0017】
ステップA:始業ボタン17が押下されている場合には、CPU15は始業時計算処理を行う。図3は始業時計算処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0018】
労働省告示第7号の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(第4条の四)」には、「運転時間は、2日(始業時刻から起算して48時間をいう)を平均して1日当たり9時間、2週間を平均し1週間当たり、44時間を超えないものとする」と定められている。
【0019】
始業時計算処理では、この規定に基づいて今日の許容運転時間を求める。
【0020】
図4は、「運転時間は、2日(始業時刻から起算して48時間をいう)を平均して1日当たり9時間を超えないものとする」という第1の規則を説明するもので、2日平均の運転時間は、各日毎を一区切りで計算し、前の日との平均か、後の日との平均か、どちらか一方が平均9時間以内となっていれば良いとされている。そして、1日目と2日目を平均して9時間以上の場合には、3日目を9時間未満にする必要がある。1日目と2日目を平均して9時間未満の場合には、3日目は9時間以上でも良い。
【0021】
図5は、「運転時間は、2週間を平均し1週間当たり、44時間を超えないものとする」という第2の規則を説明するもので、2週間平均の運転時間は、各週毎を一区切りで計算し、前の週との平均か、後の週との平均か、どちらか一方が平均44時間以内となっていれば良いとされている。そして、1週目と2週目を平均して44時間以上の場合には、3週目を44時間未満にする必要がある。1週目と2週目を平均して44時間未満の場合には、3週目は44時間以上でも良い。
【0022】
ステップS11:一昨日と昨日の運転済時間を平均する。一昨日と昨日の平均時間は、一昨日運転した時間に昨日運転した時間を加え2で除算することで求められる。
【0023】
ステップS12:1日あたり9時間を超えたか否かを判断する。
【0024】
ステップS13:1日あたり9時間を超えた場合には、今日の運転時間を算出する。今日の運転時間は、9時間を2倍した値から昨日運転した時間を減算することにより求められる。
【0025】
ステップS14:1日あたり9時間を超えていない場合には、今日の運転時間に最大運転時間を代入する。
【0026】
最大運転時間は、「拘束時間を原則13時間以内、最大16時間までとし、連続運転4時間につき30分の非運転時間が必要である」として第3の規則に規定されている。連続運転4時間につき30分の非運転時間が必要であることから、一日の最大運転時間は、原則12時間以内、最大14時間30分になる。なお、厳密には拘束時間が15時間を超える回数は、1週間に2回以内であるが、この実施形態では考慮していない。また、特例として、2人乗務時と隔日勤務の場合は、拘束時間が増大し最大運転時間も増加するがこの実施形態では考慮していない。
【0027】
ステップS15:第1週目の運転時間と第2週目の運転時間の平均が44時間を超えているか否かを判断する。
【0028】
ステップS16:44時間以上の場合には、44時間から第2週目の運転時間と第3週目の運転時間を平均した時間を引き、第3週目の残り運転時間に代入する。なお、44時間未満の場合には、図2のステップS2に進む。
【0029】
ステップS17:今日の運転時間と第3週目の残り運転時間とを比較する。
【0030】
ステップS18:今日の運転時間が多い場合には、今日の運転時間に第3週目の残り運転時間を代入する。なお、第3週目の残り運転時間が多い場合には、図2のステップS2に進む。
【0031】
ステップAの始業時計算処理が終了したら図2のステップS2に進む。
【0032】
ステップS2:今日の運転時間が0時間より多いか否かを判断する。
【0033】
ステップS3:今日の運転時間が0時間より多い場合には、今日の運転時間を表示器21に表示する。表示器21には、例えば『始業しました。今日の運転時間は最大8時間です。』という表示が行われる。
【0034】
ステップS4:今日の運転時間が0時間の場合には、『始業しました。今日は運転時間がありません』という表示を表示器21に行う。
【0035】
ステップS5:今日の運転時間を記憶部23に記録する。
【0036】
ステップS6:終業ボタン19が押下されているか否かを判断する。
【0037】
ステップB:終業ボタン19が押下されている場合には、CPU15は、終業時計算処理を行う。図6は終業時計算処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0038】
ステップS21:昨日と今日の運転済時間を平均する。昨日と今日の平均時間は、昨日運転した時間に今日運転した時間を加え2で除算することで求められる。
【0039】
ステップS22:1日あたり9時間を超えたか否かを判断する。
【0040】
ステップS23:1日あたり9時間を超えた場合には、明日の運転時間を算出する。明日の運転時間は、9時間を2倍した値から今日運転した時間を減算することにより求められる。
【0041】
ステップS24:1日あたり9時間を超えていない場合には、明日の運転時間に最大運転時間を代入する。
【0042】
ステップS25:第1週目の運転時間と第2週目の運転時間の平均が44時間を超えているか否かを判断する。
【0043】
ステップS26:44時間以上の場合には、44時間から第2週目の運転時間と第3週目の運転時間を平均した時間を引き、第3週目の残り運転時間に代入する。なお、44時間未満の場合には、図2のステップS7に進む。
【0044】
ステップS27:明日の運転時間と第3週目の残り運転時間とを比較する。
【0045】
ステップS28:明日の運転時間が多い場合には、明日の運転時間に第3週目の残り運転時間を代入する。なお、第3週目の残り運転時間が多い場合には、図2のステップS7に進む。
【0046】
ステップBの終業時計算処理が終了したら図2のステップS7に進む。
【0047】
ステップS7:明日の運転時間が0時間より多いか否かを判断する。
【0048】
ステップS8:明日の運転時間が0時間より多い場合には、明日の運転時間を表示器21に表示する。表示器21には、例えば『終業しました。明日の運転時間は最大10時間です。』という表示が行われる。
【0049】
ステップS9:明日の運転時間が0時間の場合には、『明日は運転時間がありません』という表示を表示器21に行う。
【0050】
上述した許容運転時間算出装置では、今日の始業時刻と複数の規則に基づいて今日の許容運転時間を算出し表示器21に表示し、運転者に報知するようにしたので、今日の許容運転時間を容易,確実に知ることができる。
【0051】
また、今日の終業時刻と複数の規則に基づいて明日の許容運転時間を算出し表示器21に表示し、運転者に報知するようにしたので、明日の許容運転時間を容易,確実に知ることができる。
【0052】
そして、運転者が今日あるいは明日の許容運転時間を知ることができるため、規定時間通りに運転ができているか、無理な運転であるか等の運行計画の目安に利用することができる。これにより運転者の超過労働を抑制することが可能になり、過労による交通事故等を低減することができる。
(第2の実施形態)
前記第1の実施形態は、規則として「運転時間は、2日(始業時刻から起算して48時間をいう)を平均して1日当たり9時間を超えないものとする」という前記第1の規則と、「運転時間は、2週間を平均して1週間当たり、44時間を越えないものとする」という前記第2の規則と、最大運転時間に関する前記第3の規則を考慮しているが、これに限らず、必要に応じた規則を考慮しても良い。例えば、前記第1の規則と前記第3の規則を考慮した第2の実施形態を図1〜4及び図6を用いて述べる。
【0053】
図1については、前記第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。次に図2〜4及び図6は、図3からステップS15〜ステップS18を削除し、ステップS13またはステップS14から図2のステップS2へ進む。尚、ステップS13、ステップS14の処理内容は、前記第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。また、図6からステップS25〜ステップS28を削除し、ステップS23またはステップS24から図2のステップS7へ進む。尚、ステップS23、ステップS24の処理内容は、前記第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。また、図2〜4及び図6の他のステップの説明については、前記第1の実施形態と同じであるため省略する。
【0054】
このようにすることで、前記第2の規則を除いた、前記第1の規則、前記第3の規則を考慮した許容運転時間を算出することができる。この場合、前記第2の規則は考慮していないが、前記第1の規則、前記第3の規則を考慮した許容運転時間すら知らない場合に比べ、許容運転時間の把握に効果がある。
(実施形態の補足事項)
以上、本発明を上述した実施形態によって説明してきたが、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下のような形態でも良い。
【0055】
(1)上述した実施形態では、表示器21に許容運転時間を表示して運転者に知らせた例について説明したが、例えば、音声等で知らせるようにしても良い。
【0056】
(2)上述した実施形態では、始業時刻および終業時刻をボタンにより入力した例について説明したが、例えば、タッチパネルにより入力するようにしても良い。また、始業時刻や終業時刻の入力を他の作業(例えばイグニッションスイッチのオン,オフ)と連動させ、当該作業が行われた場合に自動的に入力させるようにしても良い。
【0057】
(3)上述した実施形態では、許容運転時間を単に表示した例について説明したが、例えば、許容運転時間に達したら、アラーム等で運転者に知らせ注意を喚起する機能を追加しても良い。
【0058】
(4)上述した実施形態では、法規に基づいた時間設定とした例について説明したが、これに限らず、会社あるいは個人等の必要に応じた時間設定としても良い。
【符号の説明】
【0059】
11 車載器
15 CPU
17 始業ボタン
19 終業ボタン
21 表示器
23 記憶部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の許容運転時間に関する規則を記憶する記憶手段と、
始業時刻および終業時刻を入力するための入力手段と、
前記入力手段に入力された今日の始業時刻と前記記憶手段に記憶される前記規則に基づいて今日の許容運転時間を演算する演算手段と、
前記演算手段で計算された前記許容運転時間を出力する出力手段と、
を有することを特徴とする許容運転時間算出装置。
【請求項2】
請求項1記載の許容運転時間算出装置において、
前記演算手段は、前記入力手段に入力された今日の終業時刻と前記記憶手段に記憶される前記規則に基づいて明日の許容運転時間を演算することを特徴とする許容運転時間算出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の許容運転時間算出装置において、
前記規則は、少なくとも2日平均の運転時間から1日の許容運転時間を規制する規則を有していることを特徴とする許容運転時間算出装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の許容運転時間算出装置において、
前記規則は、少なくとも2週間平均の運転時間から1週間の許容運転時間を規制する規則を有していることを特徴とする許容運転時間算出装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の許容運転時間算出装置において、
前記規則は、複数の規則を有していることを特徴とする許容運転時間算出装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の許容運転時間算出装置において、
前記出力手段は、前記許容運転時間を表示する表示部を有していることを特徴とする許容運転時間算出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−250724(P2010−250724A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101695(P2009−101695)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】