説明

試料を生化学的に処理及び分析するための装置

一定量の試料容積の試料を生化学的に処理及び分析するための装置が記載される。この装置は、密封容器(1)からなり、及び少なくとも1枚の穿通可能な薄膜(2)を備え、そこを通じて、前記一定量の試料容積の試料を含む毛細管(3)が前記密封容器(1)に入り込むことができることを特徴とする。前記密封容器(1)は、少なくとも1つの生化学的に反応性の物質(4)と液体(6)とをさらに含む。本発明に係る装置が分析に用いられる方法も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定量の試料容積の液体試料を生化学的に処理及び分析するための使い捨て装置に関する。本発明は、特に、ニアペイシャント測定における体液(とりわけ、血液及び尿)の定性的及び定量的な生化学分析に用いられることを意図しているが、工業プロセス制御、品質管理、並びに研究及び実験室作業における他の液体試料の分析にも用いることができる。
【背景技術】
【0002】
病院やプライマリヘルスケアにおいて、及び自宅で、多数のニアペイシャント分析が日々行われている。常用される方法では、一定量の試料容積の患者の体液(例えば、血液、血漿、尿、汗、涙液、リンパ、羊水、髄液及び糞便)を毛細管に収集して容器に移し替え、その後、体液が反応する様々な特異試薬に曝露する。最終的な定量又は定性化学分析は、透明キュベットにおいて、又は測定面上で光学式検出器を用いて行われる。手動による方法に基づく装置(例えば、Axis Shield A/S、ノルウェー国によって製造されるQuikRead)では、試料容積及び試薬溶液が人又は作業面上にこぼれ、結果として衛生上及び環境上の危険を招き得ることが含意される。また、実験上の誤った操作に起因して、分析結果が不正確となるリスクもある。自動化された方法に基づく装置(例えば、Axis Shield A/S、ノルウェー国によって製造されるAfinion)では、上述の衛生上及び環境上の危険性は低下し、また、分析結果が不正確となるリスクも低下するが、しかしこれは、高価で複雑な技術的解決策によって行われる。
【0003】
用いられる特異試薬は、生化学的に(すなわち、生物学的且つ化学的に)反応性を有するタイプの物質であり、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、酵素、無機酸化剤、無機還元剤、金属イオン、金属イオン錯体、タンパク質、ホルモン、補足因子、細菌、細胞、ウイルス、真菌、酵母、芽胞、ファージ、細胞小器官、ペプチド、DNA、RNA、凝固抑制物質、細胞溶解剤、抗生物質、界面活性剤及び活性洗浄剤からなり得る。
【0004】
体液が1つ又は複数の特異試薬と反応した後、この生物学的又は化学的事象は、物理的(光学的な、電気的な、放射性の、又は磁気的な)変化に変換され、検出器がそれを感知することができる。光学式検出器は、特に、ニアペイシャント分析に用いられる確立された免疫測定技術において一般的である。光学式検出器は、とりわけ、吸光、光散乱、蛍光、偏光の変化を測定し、透明キュベットに透明の液体試料内容物が入ることを必要とする。この結果、多くの場合に、液体試料を、それが透明キュベット又は測定面に達する前に、いくつかのステップで生化学的に処理しなければならないという欠点が生じる。電気的検出器は、液体試料と直接接触しなければならないため、体液中のアスコルビン酸などの妨害物質を感知し易い。放射性検出器は人及び環境にとって危険であるため、ニアペイシャント分析ではまれである。磁気検出器は、とりわけ透磁率を測定するもので、透明でないキュベット中の内容物を迅速且つ容易に検出することが可能であり、キュベットは、透明でない流体、懸濁液、及び毛細管を含むことが可能であるという利点を有する。かかる磁気検出器は、特許文献1、特許文献2及び非特許文献1に開示されている。
【0005】
本発明は、試料を自動的に調製する機器を使用することなく、人及び環境が汚染されるリスクを排除し、且つ測定値が不正確となるリスクを最小限に抑えながら、一定量の試料容積の液体試料を漏出なしに生化学的に処理及び分析することのできる手動操作可能な使い捨て装置をユーザに提供することによる新規の効果的な方法で、上述の問題を解決する。
【0006】
上述の市販の装置及び参考文献の特許文献1(Dario Kriz、1995年)、特許文献2(Dario Kriz、1995年)及び非特許文献1は、一定量の試料容積の液体試料を化学的に処理及び分析するために用いられる先行技術の装置及び方法を説明する。しかしながら、前記装置及び方法は、アームに固定された毛細管が挿通する穿通可能な薄膜であって、毛細管の挿入後、アームの周囲に密着する穿通可能な薄膜を含まない。本発明によれば、一定量の試料容積の液体試料を漏出なしに生化学的に処理及び分析することのできる手動操作可能な使い捨て装置が可能となり、この本発明の装置においては、試料を自動的に調製する機器を使用することなく、且つ負圧又は注入機構を必要とすることなく、人及び環境が汚染されるリスクが排除され、且つ液体の漏出に関連した試薬の喪失に起因して測定値が不正確となるリスクが最小限に抑えられる。
【0007】
他の先行技術の手法としては、特許文献3(Robert Turner及びReginald Holman、1978年)に係る液体試料収集装置が含まれる。この装置は、毛細管が貫通する穿通可能な可撓性膜を備える。この膜は毛細管の周囲に密着し、毛細管の各端部は、膜の関連する側面側にある。毛細管中の試料容積が装置に吸い込まれることを可能とするよう、装置には負圧が存在する。本発明は、毛細管の両端が膜を通り抜け、試料容積は振動によって毛細管から出されるため、負圧を必要としない。さらに、特許文献3に係る装置には、生化学的に処理及び分析される物質は含まれない。
【0008】
他の先行技術の手法としては、特許文献4(Bernd Kloth、1997年)に係る試料収集装置が含まれる。この装置は、毛細管と、生化学的に処理及び分析される物質とを含む。この装置は、毛細管が貫通する穿通可能な膜は備えない。毛細管は、装置に配置されたストッパの管路に位置決めされる。毛細管は、キャップによってストッパの中に押し込まれ(しかし、貫通はしない)、生じた正圧によって試料容積が毛細管から押し出され、装置の中まで送り込まれる。この装置には穿通可能な膜がなく、且つストッパを手動で交換(毛細管のないストッパから毛細管を有するストッパに)する必要があるため、装置の試薬溶液がいくらかこぼれ、そのために測定結果が不正確となるリスクがある。さらに、この毛細管は本発明のものほど迅速且つ効率的には排出されず、これは、本発明では毛細管中に液体を押し流す動作により毛細管が洗い流され、吸い込まれた試料溶液の残液が残ることはないためである。
【0009】
他の先行技術の手法としては、特許文献5(Bengt−Inge Broden、1986年)に係る器官の体液を取り扱うための装置が含まれる。この装置は毛細管を含むが、生化学的に処理及び分析される物質は含まない。この装置は、毛細管が貫通する穿通可能な膜は備えない。毛細管は、装置に配置されたストッパの管路に位置決めされる。噴霧器を用いて毛細管中に空気が押し通され、生じた正圧によって試料容積が毛細管から押し出され、装置の中まで送り込まれる。この装置は、化学的に処理及び分析される物質は含まず、体液試料がこぼれることによって引き起こされる汚染のリスクを低下させるように設計されている。さらに、この毛細管は本発明のものほど迅速且つ効率的には排出されず、これは、本発明では毛細管中に液体を押し流す動作により毛細管が洗い流され、吸い込まれた試料溶液の残液が残ることはないためである。
【0010】
他の先行技術の手法としては、特許文献6(Roy Ostgaardら、1997年)に係る液体の分析用の試薬と試験装置との組み合わせが含まれる。この装置は、穿通可能な膜と、生化学的に処理及び分析される物質とを含む。この装置は毛細管を備えず、及び手動で操作する(試料溶液と試薬とを混合する)ようには設計されていないものの、動作には高度な自動機器を必要とする。
【0011】
他の先行技術の手法としては、特許文献7(Dario Kriz、1999年)に係る液体の分析用使い捨て装置が含まれる。この装置は、毛細管と、生化学的に処理及び分析される物質とを含む。この装置には穿通可能な膜がなく、且つストッパを手動で交換(毛細管のないストッパから毛細管を有するストッパに)する必要があるため、装置の試薬溶液のいくらかがこぼれ、そのために測定結果が不正確となるリスクがある。さらに、この毛細管は本発明のものほど迅速且つ効率的には排出されず、これは、本発明では毛細管中に液体を押し流す動作により毛細管が洗い流され、吸い込まれた試料溶液の残液が残ることはないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】スウェーデン国特許第9502902−1号明細書
【特許文献2】米国特許第6,110,660号明細書
【特許文献3】国際公開第79/01131号パンフレット
【特許文献4】米国特許第5,833,630号明細書
【特許文献5】スウェーデン国特許第451942号明細書
【特許文献6】米国特許第5,888,826号明細書
【特許文献7】米国特許第6,319,209号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Larsson K.ら Analusis 27、78頁 1999年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って本発明は、少なくとも1枚の穿通可能な薄膜(2)を含む密封容器(1)を備え、その膜(2)を通じてアーム(9)に固定された毛細管(3)が容器に入り込むことができることを特徴とする装置に関する。アーム(9)が毛細管(3)を容器(1)に挿入すると、膜(2)の開口部がアーム(9)の後部によって封止される。密封容器(1)は、液体(6)に加え、実施される定量又は定性化学分析に応じて、少なくとも1つの生化学的に活性な物質(4)及び/又は少なくとも1つのマーカー物質(5)及び/又は沈殿した担体粒子(7)を含む。
【0015】
本発明はまた、一定量の試料容積の液体試料の生化学的処理及び分析を開始するため、本発明に係る装置を用いて、(手動及び自動の双方による)振動によって毛細管(3)の内容物を容器(1)の中に排出させる方法にも関する。本発明はさらに、様々な生体物質又は化学物質の定性分析又は定量分析の実施を目的として、振動させた後の本発明に係る装置を、物理的変化を読み取るための検出器を備える計器に置く方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】完全なままの穿通可能な膜(2)と、アーム(9)に取り付けられた毛細管(3)とを備える本発明に係る装置を示す図。
【図2】互いに押し合わされた状態の本発明に係る装置を示し、ここでは穿通可能な膜(2)が毛細管(3)によって穿通されており、穿通孔がアーム(9)によって封止され、毛細管(3)は密封容器(1)内に入っている図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一態様によれば、本装置は、密封容器(1)が0.1〜250mlの範囲の容積を有し、且つ密封容器(1)は液体(6)を含み、及び穿通される薄膜(2)の厚さが0.01〜5mmの範囲であり、穿通される薄膜(2)は、アーム(9)と密嵌するように構成された円形開口に取り付けられ、且つ0.5〜5mmの範囲の直径を有し、及び毛細管(3)が1〜30mmの範囲の長さを有し、及び毛細管(3)が0.2〜3mmの範囲の外径を有し、充填された毛細管(3)は、0.1〜200μlの範囲の一定量の試料容積を含むことができ、及び毛細管(3)の挿入を促進するカラー(8)が、1〜20mmの範囲の長さを有することを特徴とする。
【0018】
別の態様によれば、本装置は、密封容器(1)が1つ又は複数の生化学的に反応性の物質(4)を含み、この生化学的に反応性の物質(4)は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、酵素、無機酸化剤、無機還元剤、金属イオン、金属イオン錯体、タンパク質、ホルモン、補足因子、細菌、細胞、ウイルス、真菌、酵母、芽胞、ファージ、細胞小器官、ペプチド、DNA、RNA、凝固抑制物質、細胞溶解剤、抗生物質、界面活性剤、活性洗浄剤、EDTA、アデノシン5’二リン酸、リストセチン、アラキドン酸、トロンビン、エピネフリン、血小板活性化因子又はトロンビン受容体アゴニストペプチド(TRAP)からなり得ることを特徴とする。用いられる生化学的に反応性の物質(4)は、実施される分析内容に依存するとともに、一般に公知の、十分に立証された機能を有し、そうした機能としては、例えば、測定対象の生体物質又は化学物質との結合性、測定対象の生体物質又は化学物質の触媒変換、長期にわたる保管を可能とするための密封容器(1)の内容物の安定化、正確な分析結果が得られるようにするための、密封容器(1)に挿入された後の測定対象の生体物質又は化学物質の安定化、測定を妨害し得る妨害性の生体物質又は化学物質の失活化、及び正確な分析結果を得るための、測定対象の生体物質又は化学物質の細胞溶解又は細胞遊離が含まれる。
【0019】
別の態様によれば、本装置は、密封容器(1)が1つ又は複数のマーカー物質(5)を含み、このマーカー物質(5)は、磁気的に影響を及ぼすことが可能な試薬、例えば、超常磁性ナノ粒子、抗体を誘導体化した超常磁性ナノ粒子、タンパク質を誘導体化した超常磁性ナノ粒子、ポリマーを誘導体化した超常磁性ナノ粒子、ペプチドを誘導体化した超常磁性ナノ粒子、DNA又はRNAを誘導体化した超常磁性ナノ粒子、炭水化物を誘導体化した超常磁性ナノ粒子からなり得るか、
或いはマーカー物質(5)は、抗体、酵素、無機酸化剤、無機還元剤、金属イオン及び金属イオン錯体、タンパク質、ペプチド、ポリマー、炭水化物、補足因子、血液凝固因子、ホルモン、細菌、細胞、ウイルス、真菌、酵母、芽胞、ファージ、細胞小器官、DNA、RNA、凝固抑制物質、抗生物質、界面活性剤並びに活性洗浄剤をベースとする、光学的な、電気的な、又は放射性の試薬からなることを特徴とする。用いられるマーカー物質(5)は、実施される分析内容に依存するとともに、一般に公知の、十分に立証された機能を有し、そうした機能としては、測定対象の生体物質又は化学物質との相互作用、及び検出器によって感知することのできる定量化可能な物理的(光学的な、電気的な、放射性の、又は磁気的な)変化の生成が含まれる。
【0020】
さらに別の態様によれば、本装置は、密封容器(1)の内容物が、水と比べて高く、且つ1.00001<μr<10の範囲の比透磁率(μr)を有することを特徴とする。
【0021】
さらなる態様によれば、本装置は、担体粒子(7)が、抗体か、或いはレクチンか、或いはタンパク質か、或いはペプチドか、或いはDNA又はRNAを有するか、或いはその表面に何も結合しておらず、及び0.5マイクロメートル〜5mmの直径を有し、親水性シリカ、疎水性シリカ、ガラス、二酸化ケイ素、炭水化物、イオン交換体、ポリマー、セラミック材料、タンパク質、細菌からなり得ることを特徴とする。用いられる担体粒子(7)は、実施される分析内容に依存するとともに、一般に公知の、十分に立証された機能を有し、そうした機能としては、マーカー物質(5)が結合する生体物質又は化学物質の結合性及び濃縮性が含まれ、ひいては、底部の沈殿物中に、検出器によって感知することのできる定量化可能な物理的(光学的な、電気的な、放射性の、又は磁気的な)変化が蓄積する。
【0022】
別の態様によれば、本装置は、前記液体(6)が、少なくとも1つの酸性度調整剤、例えば、0.1Mのリン酸ナトリウム pH7と、少なくとも1つのイオン強度調整剤、例えば、0.1Mの塩化ナトリウムとを含む水溶液からなることを特徴とする。用いられる液体(6)は、実施される分析内容に依存するとともに、一般に公知の、十分に立証された機能を有し、そうした機能としては、例えば、タンパク質、塩及び実施される分析用の試料液体の溶解が含まれる。さらに、液体(6)は塩含有量及びpH(酸性度)に関する要件を満たし、こうした塩含有量及びpHは、生化学的に反応性の物質(4)、マーカー物質(5)及び担体粒子(7)によって、それらの官能性から基質にもたらされるもので、安定性、細胞間相互作用、細胞−リガンド相互作用、抗体−抗原相互作用、結合性、触媒能及び酵素活性に影響を及ぼす。
【0023】
さらなる態様によれば、本装置は、プラスチック製のアーム(9)を備える毛細管ホルダが取り付けられ、アーム(9)には、ガラス製の毛細管(3)が装着されるか、或いはアーム(9)は、同時に毛細管(3)の形態も有する単体であることを特徴とする。用いられる毛細管(3)は、測定される試料容積に依存するとともに、一般に公知の、十分に立証された機能を有し、そうした機能としては、生体物質又は化学物質及び分析対象の液体試料との化学材料の適合性が含まれる。
【0024】
さらに別の態様によれば、本装置は、アーム(9)を備える毛細管ホルダが取り付けられ、前記アーム(9)は、円錐形状の外径拡径部を有するか、又はカラー(10)を有し、毛細管(3)の挿入後、それによって前記穿通可能な薄膜の開口部が封止されることを特徴とする。
【0025】
さらなる態様によれば、本装置は、アーム(9)を備える毛細管ホルダが取り付けられ、前記アーム(9)は、孔(直径が0.2〜5mm)の形態か、或いは毛細管と平行に延在する間隙(0.2〜5mmの幅及び1〜20mmの長さを有する)の形態のエアベント(11)を有し、そこを通じて均圧化が起こることにより、前記毛細管(3)が充填されることを特徴とする。
【0026】
別の態様によれば、本装置は、キャップ(12)も備える毛細管ホルダが取り付けられ、このキャップ(12)は毛細管(3)の操作を容易にするもので、その高さは、1〜20mmの範囲で前記アーム(9)の長さと前記アーム(9)に対する毛細管(3)の位置とに合わせて調整され、それによって前記密封容器(1)への毛細管(3)の挿入が所定の再現可能な形で可能となることを特徴とし、これは、毛細管(3)の挿入後、円錐形状の外径拡径部か、或いはカラー(10)が、前記穿通可能な薄膜の開口部と共に、密封性の、及び/又は漏出のない封止を形成することを含意する。
【0027】
さらなる態様によれば、本発明に係る装置は、容器(1)が少なくとも1つの内部ウィング(13)を備え、これによって、一定量の試料容積の試料の生化学的処理及び分析を開始するための、(手動及び自動の双方での)振動による毛細管(3)の内容物の容器(1)中への排出が促進されることを特徴とする。毛細管の内容物の排出は、少なくとも1つの内部ウィング(13)によって引き起こされる流体の乱流の増加によって促進される。この結果、装置中の液体と試料との混合が促進される。
【0028】
一態様によれば、内部ウィング(13)は、0.2〜5mmの範囲の長さ及び幅と、0.2〜5mmの範囲の厚さとを有する。
【0029】
さらなる態様によれば、本発明に係る装置は、前記密封容器(1)、前記穿通可能な薄膜(2)、前記毛細管ホルダ及び前記毛細管(3)を作製する材料が、以下の材料、すなわち、ポリマー、例えば、Delrin、Perspex、POM、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、Teflon(登録商標)、ポリアミド、ポリアセタール、ナイロン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、及びポリプロピレンなどか、或いは、ガラス、ゴム、木材、紙及び金属などの材料の1つ又は組み合わせであることを特徴とする。
【0030】
さらなる態様によれば、本発明に係る装置は、感光性である生化学的に反応性の物質(4)が、装置の長期保管時に光によって悪影響を受けることを防止する目的で、前記密封容器(1)及び/又は前記穿通可能な薄膜(2)を作製する材料が、不透明材料、例えば黒色ポリマーであることを特徴とする。不透明材料の使用は、磁気検出器の測定プロセスを妨害することはないため、磁気検出器と適合性を有する(及び、光学式検出器とは適合性を有しない)。
【0031】
さらなる態様によれば、本発明に係る装置は、前記試料が、血液、血漿、尿、汗、涙液、リンパ、羊水、髄液及び糞便などの体液からなることを特徴とする。
【0032】
別の態様によれば、本発明に係る装置は、一定量の容積の前記試料が糞便からなるとき、それを毛細管(3)の空洞の中に、毛細管力を用いることなく手作業で押し込むことができることを特徴とする。
【0033】
図1は、本発明に係る装置の図(縮尺1:3、すなわち、図中の30mmが、実測値の10mmに相当する)である。図1に係る装置は、ポリプロピレン製の完全なままの穿通可能な膜(2)を備え、ポリカーボネート製のアーム(9)にガラス製の毛細管(3)が取り付けられている。ポリプロピレン製の密封容器(1)は、0.1Mの塩化ナトリウムを含む0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液 pH7.0と、血液凝固を防止する生化学的に活性の物質(4)(EDTA)と、超常磁性ナノ粒子と結合した抗CRPモノクローナル抗体からなるマーカー物質(5)とからなる液体(6)と、直径15〜40μmのシリカ粒子と結合した抗CRPポリクローナル抗体からなる担体粒子(7)の底部沈殿物と、ポリプロピレン製のカラー(8)とを含む。さらに図1に係る装置は、毛細管(3)を固定するアーム(9)を有する毛細管ホルダと、ポリカーボネート製のキャップ(12)とを備える。アーム(9)はまた、ポリカーボネート製のカラー(10)及びエアベント(11)も備える。
【0034】
図2は、互いに押し合わされた状態の本発明に係る装置を示し、穿通可能な膜(2)が毛細管(3)によって穿通され、穿通孔がアーム(9)のカラー(10)によって封止されている。毛細管(3)は密封容器(1)内に入っている。
【0035】
有利には、本発明に係る装置は、透磁率μか、或いは比透磁率μrか、或いは比磁化率(μr−1)を検出するため、装置を電気コイルの中に、又はそれに直ちに近接して置くことにより、磁気検出器と共に用いられ得る。
【0036】
有利には、本発明に係る装置は、光吸収、光散乱、蛍光及び偏光の変化などの光学現象を測定するため、装置を光源(例えば、電球、発光ダイオード又はレーザー)に近接して置くことにより、光学式検出器と共に用いられ得る。
【0037】
有利には、本発明に係る装置を用いて、一方で、高い透磁率を有する化学物質を、及び他方で、水とほぼ同じ比透磁率、すなわちμr=1を有する化学物質、例えば、グルコース、C反応性タンパク質(CRP及びhsCRP)、アルブミン、シスタチンC、ヘモグロビン(Hb及びHbA1C)、ミオグロビン、トロポニン(I及びT)、CK−MB、クレアチンキナーゼ(CK)、D−ダイマー、BNP、proBNP、NT−proBNP、プロトロンビン、APTT、HCG、LH、FSH、PSA、TSH、T3、T4、AFP、CEA、リポタンパク質(LDL及びHDL)、トリグリセリド、コレステロール、抗体、A群レンサ球菌(Streptococcus A)、ヘリコバクター・ピロリ(Heliobacter Pylori)、サルモネラ(Salmonella)、クラミジア(Chlamydia)、ジアルジア(Giardia)、コレラ、肝炎(A型、B型及びC型)アデノウイルス、ロタウイルス、タンパク質、ホルモン、補足因子、血液凝固因子、細胞−リガンド相互作用、細胞間相互作用、血小板凝集能、細菌、細胞、ウイルス、真菌、酵母、芽胞、ファージ、細胞、細胞小器官、DNA、RNAを検出してもよく、これらはいずれも、1つ又は複数の磁気的に影響を及ぼすことが可能な試薬との相互作用を必要とする。
【0038】
有利には、本発明に係る装置を用いて、血液、血漿、尿、汗、涙液、リンパ、髄液及び糞便などの様々なタイプの体液中の、グルコース、C反応性タンパク質(CRP及びhsCRP)、アルブミン、シスタチンC、ヘモグロビン(Hb及びHbA1C)、ミオグロビン、トロポニン(I及びT)、CK−MB、クレアチンキナーゼ(CK)、D−ダイマー、BNP、proBNP、NT−proBNP、プロトロンビン、APTT、HCG、LH、FSH、PSA、TSH、T3、T4、AFP、CEA、リポタンパク質(LDL及びHDL)、トリグリセリド、コレステロール、抗体、A群レンサ球菌(Streptococcus A)、ヘリコバクター・ピロリ(Heliobacter Pylori)、サルモネラ(Salmonella)、クラミジア(Chlamydia)、ジアルジア(Giardia)、コレラ、肝炎(A型、B型及びC型)アデノウイルス、ロタウイルス、タンパク質、ホルモン、補足因子、血液凝固因子、細胞−リガンド相互作用、細胞間相互作用、血小板凝集能、細菌、細胞、ウイルス、真菌、酵母、芽胞、ファージ、細胞、細胞小器官、DNA、RNAについて、定性的な、及びそれぞれの定量的な一時的ニアペイシャント分析(いわゆるポイント・オブ・ケア分析)を行い得る。
【0039】
有利には、様々なタイプの工業プロセス制御、品質管理、研究及び実験室作業において、本発明に係る装置を使用して、グルコース、C反応性タンパク質(CRP及びhsCRP)、アルブミン、シスタチンC、ヘモグロビン(Hb及びHbA1C)、ミオグロビン、トロポニン(I及びT)、CK−MB、クレアチンキナーゼ(CK)、D−ダイマー、BNP、proBNP、NT−proBNP、プロトロンビン、APTT、HCG、LH、FSH、PSA、TSH、T3、T4、AFP、CEA、リポタンパク質(LDL及びHDL)、トリグリセリド、コレステロール、抗体、A群レンサ球菌(Streptococcus A)、ヘリコバクター・ピロリ(Heliobacter Pylori)、サルモネラ(Salmonella)、クラミジア(Chlamydia)、ジアルジア(Giardia)、コレラ、肝炎(A型、B型及びC型)アデノウイルス、ロタウイルス、タンパク質、ホルモン、補足因子、血液凝固因子、細胞−リガンド相互作用、細胞間相互作用、血小板凝集能、細菌、細胞、ウイルス、真菌、酵母、芽胞、ファージ、細胞、細胞小器官、DNA、RNAの定性分析及びそれぞれの定量分析を行い得る。
【0040】
有利には、本発明に係る装置には、分析識別データ及び製品ロット番号、消費期限、並びに製造日などの情報が標記され得る。
【0041】
当業者には、この説明に示される寸法の情報及び容積の情報が、本発明の趣旨を変えることなく、容易に増減させて調整され得ることは明らかである。さらに、使用される化学物質が他の物質に置き換えられてもよく、及びその場合、他の分析が実施され得る。かかる修正は全て、本発明の範囲内にあると見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定量の試料容積の試料を生化学的に処理及び分析するための装置であって、
前記装置が密封容器(1)からなり、
前記装置が、少なくとも1枚の穿通可能な薄膜(2)であって、そこを通じて、前記一定量の試料容積の試料を含む毛細管(3)が前記密封容器(1)に入り込むことができる、穿通可能な薄膜(2)を備え、
前記密封容器(1)が少なくとも1つの生化学的に反応性の物質(4)を含み、及び
前記密封容器(1)が液体(6)を含む、
ことを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記容器(1)が、前記装置中の前記液体(6)と前記試料との混合を促進するための少なくとも1つの内部ウィング(13)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの内部ウィング(13)が、0.2〜5mmの範囲の長さ及び幅と、0.2〜5mmの範囲の厚さとを有することを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記密封容器(1)が、少なくとも1つのマーカー物質(5)及び/又は底部沈殿物を形成する担体粒子(7)を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記穿通可能な薄膜(2)が、前記毛細管(3)の挿入を促進するため装置の外側にあるカラー(8)によって取り囲まれることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置が、アーム(9)を有する毛細管ホルダも備え、前記アーム(9)に前記毛細管(3)が装着され、及び前記アーム(9)を用いて前記毛細管(3)が前記穿通可能な薄膜(2)に貫通され、前記密封容器(1)内に挿入されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記アーム(9)が装着された毛細管(3)を備えるか、或いは前記アーム(9)が、同時に毛細管(3)の形状も備える単体であることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記アーム(9)が、円錐形状の外径拡径部を有するか、又はカラー(10)を有し、前記毛細管(3)の挿入後、それによって前記穿通可能な薄膜の開口部が封止されることを特徴とする、請求項6〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記アーム(9)が、孔の形態か、或いは前記毛細管(3)と平行に延在する間隙の形態のエアベント(11)を有し、そこを通じて均圧化が起こることにより、前記毛細管(3)が充填されることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記毛細管ホルダが、前記毛細管の取り扱いを容易にするキャップ(12)も備え、前記キャップ(12)の高さは、前記アーム(9)の長さと前記アーム(9)に対する前記毛細管(3)の位置とに合わせて調整され、それによって前記密封容器(1)への前記毛細管(3)の挿入が所定の再現可能な形で行われることが可能となることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記密封容器(1)、前記穿通可能な薄膜(2)、前記毛細管ホルダ及び前記毛細管(3)を作製する材料が、以下の材料、すなわち、例えば、Delrin、Perspex、POM、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、Teflon(登録商標)、ポリアミド、ポリアセタール、ナイロン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、及びポリプロピレンなどの透明/不透明ポリマー、或いは、ガラス、ゴム、木材、紙及び金属などの材料のうちの1つ又は組み合わせであることを特徴とする、請求項6〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記試料が、血液、血漿、尿、汗、涙液、リンパ、羊水、髄液及び糞便などの体液からなることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記生化学的に反応性の物質(4)が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、酵素、無機酸化剤、無機還元剤、金属イオン、金属イオン錯体、タンパク質、ホルモン、補足因子、細菌、細胞、ウイルス、真菌、酵母、芽胞、ファージ、細胞小器官、ペプチド、DNA、RNA、凝固抑制物質、細胞溶解剤、抗生物質、界面活性剤、活性洗浄剤、EDTA、アデノシン5’二リン酸、リストセチン、アラキドン酸、トロンビン、エピネフリン、血小板活性化因子又はトロンビン受容体アゴニストペプチド(TRAP)からなり得ることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記液体(6)が、少なくとも1つの酸性度調整剤、例えば、0.1Mのリン酸ナトリウム pH7と、少なくとも1つのイオン強度調整剤、例えば、0.1Mの塩化ナトリウムとを含む水溶液からなることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記マーカー物質(5)が、磁気的に影響を及ぼすことが可能な試薬、例えば、超常磁性ナノ粒子、抗体を誘導体化した超常磁性ナノ粒子、タンパク質を誘導体化した超常磁性ナノ粒子、ポリマーを誘導体化した超常磁性ナノ粒子、ペプチドを誘導体化した超常磁性ナノ粒子、DNA又はRNAを誘導体化した超常磁性ナノ粒子、炭水化物を誘導体化した超常磁性ナノ粒子からなるか、
或いは前記マーカー物質(5)が、抗体、酵素、無機酸化剤、無機還元剤、金属イオン及び金属イオン錯体、タンパク質、ペプチド、ポリマー、炭水化物、補足因子、血液凝固因子、ホルモン、細菌、細胞、ウイルス、真菌、酵母、芽胞、ファージ、細胞小器官、DNA、RNA、凝固抑制物質、抗生物質、界面活性剤及び活性洗浄剤をベースとする、光学的な、電気的な、又は放射性の試薬からなることを特徴とする、請求項4〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記担体粒子(7)が、抗体か、或いはレクチンか、或いはタンパク質か、或いはペプチドか、或いはDNA又はRNAを有するか、或いはその表面に何も結合しておらず、及び0.5マイクロメートル〜5mmの直径を有し、親水性シリカ、疎水性シリカ、ガラス、二酸化ケイ素、炭水化物、イオン交換体、ポリマー、セラミック材料、タンパク質、細菌からなり得ることを特徴とする、請求項4〜15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
一定量の容積の前記試料が糞便からなるとき、それを前記毛細管(3)の空洞に、毛細管力を用いることなく手作業で押し込むことができることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
透磁率μか、或いは比透磁率μrか、或いは比磁化率(μr−1)を検出するため、請求項1〜17のいずれか一項に記載の装置が電気コイルの中に、又はそれに直ちに近接して置かれる方法。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の装置を用いて、前記密封容器内の前記液体試料を生化学的に処理することによって、血液、血漿、尿、汗、涙液、リンパ、髄液及び糞便などの様々なタイプの体液中の、グルコース、C反応性タンパク質(CRP及びhsCRP)、アルブミン、シスタチンC、ヘモグロビン(Hb及びHbA1C)、ミオグロビン、トロポニン(I及びT)、CK−MB、クレアチンキナーゼ(CK)、D−ダイマー、BNP、proBNP、NT−proBNP、プロトロンビン、APTT、HCG、LH、FSH、PSA、TSH、T3、T4、AFP、CEA、リポタンパク質(LDL及びHDL)、トリグリセリド、コレステロール、抗体、A群レンサ球菌(Streptococcus A)、ヘリコバクター・ピロリ(Heliobacter Pylori)、サルモネラ(Salmonella)、クラミジア(Chlamydia)、ジアルジア(Giardia)、コレラ、肝炎(A型、B型及びC型)アデノウイルス、ロタウイルス、タンパク質、ホルモン、補足因子、血液凝固因子、細胞−リガンド相互作用、細胞間相互作用、血小板凝集能、細菌、細胞、ウイルス、真菌、酵母、芽胞、ファージ、細胞、細胞小器官、DNA、RNAについて、定性的な、及びそれぞれの定量的なニアペイシャント一時的分析を行う方法。
【請求項20】
様々なタイプの工業プロセス制御、品質管理、研究及び実験室作業において、請求項1〜17のいずれか一項に記載の装置を用いて、前記密封容器内の前記液体試料を生化学的に処理することによって、グルコース、C反応性タンパク質(CRP及びhsCRP)、アルブミン、シスタチンC、ヘモグロビン(Hb及びHbA1C)、ミオグロビン、トロポニン(I及びT)、CK−MB、クレアチンキナーゼ(CK)、D−ダイマー、BNP、proBNP、NT−proBNP、プロトロンビン、APTT、HCG、LH、FSH、PSA、TSH、T3、T4、AFP、CEA、リポタンパク質(LDL及びHDL)、トリグリセリド、コレステロール、抗体、A群レンサ球菌(Streptococcus A)、ヘリコバクター・ピロリ(Heliobacter Pylori)、サルモネラ(Salmonella)、クラミジア(Chlamydia)、ジアルジア(Giardia)、コレラ、肝炎(A型、B型及びC型)アデノウイルス、ロタウイルス、タンパク質、ホルモン、補足因子、血液凝固因子、細胞−リガンド相互作用、細胞間相互作用、血小板凝集能、細菌、細胞、ウイルス、真菌、酵母、芽胞、ファージ、細胞、細胞小器官、DNA、RNAの定性分析及びそれぞれの定量分析を行う方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2011−503608(P2011−503608A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533993(P2010−533993)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/SE2008/051206
【国際公開番号】WO2009/064241
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(504341346)ライフアッセイズ・エービー (ピーユービーエル) (2)
【Fターム(参考)】